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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089336
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】リクライニング装置およびシート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/235 20060101AFI20240626BHJP
   A47C 1/025 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B60N2/235
A47C1/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204632
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】増村 彰吾
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B099AA05
3B099BA04
3B099CA23
(57)【要約】
【課題】複数のロックギヤのタイミングのずれを防止し、かつ、カムの小型化が可能なリクライニング装置を提供する。
【解決手段】リクライニング機構6は、ガイドブラケット20と、インターナルギヤ30と、複数のロックギヤ60(A~D)と、回転によって複数のロックギヤ60を径方向に動かすカム50と、カム50を回転付勢するロックスプリング40とを備える。カム50は、ガイドブラケット20のセンター穴22に挿入された複数の凸部53(軸部S)を有する。凸部53は、ガイドブラケットのセンター穴22の内周面22aに当接する径方向外側の面35a(外周面S1)と、係合端部53bとを有する。カム50は、複数の凸部53の径方向外側の面35aがガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接することにより回転可能に支持されるとともに、係合端部53bに係合するロックスプリング40によって回転付勢されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形のセンター穴を有する板状の部材であり、シートクッションおよびシートバックのうちの一方のフレームに固定されたガイドブラケットと、
前記ガイドブラケットと対向する位置で前記シートクッションおよび前記シートバックのうちの他方のフレームに固定され、前記ガイドブラケットに対して相対的に回転可能なインターナルギヤと、
前記インターナルギヤの内歯に噛合可能な外歯をそれぞれ備えた複数のロックギヤであって、前記ガイドブラケットに沿って前記ガイドブラケットの径方向に移動可能に配置され、かつ、前記外歯と前記内歯とが噛合する噛合位置とこれらの噛合が解除される解除位置とに変位することが可能な複数のロックギヤと、
前記ガイドブラケットに対して相対的に回転可能なカムであって、回転によって前記複数のロックギヤを前記噛合位置と前記解除位置との間で径方向に動かすカムと、
前記ロックギヤを前記解除位置から前記噛合位置へ変位させる方向に前記カムを回転付勢する少なくとも1つのロックスプリングと、
を備え、
前記ガイドブラケットは、前記センター穴の周囲に互いに周方向に離れて設けられ、前記複数のロックギヤを径方向に案内する複数のガイド部を有し、
前記カムは、前記ガイドブラケットの前記センター穴に挿入された軸部を有し、
前記軸部は、前記センター穴の内周面に当接する外周面と、前記ロックスプリングの被係合部とを有し、
前記カムは、前記軸部の外周面が前記センター穴の内周面に当接することにより、当該ガイドブラケットに対して回転可能に支持されているとともに、前記被係合部に前記ロックスプリングが係合されることにより、当該ロックスプリングによって回転付勢されている、
ことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリクライニング装置において、
前記カムは、前記複数のロックギヤのそれぞれを径方向に動かす複数の操作部分を有する本体部を有し、
前記軸部は、前記本体部から前記軸方向に突出する複数の凸部で構成されており、
前記外周面は、前記複数の凸部における径方向外側の面で構成され、
前記被係合部は、前記複数の凸部のそれぞれにおいて前記凸部の周方向の端部で構成されている、
ことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のリクライニング装置において、
前記複数の凸部のそれぞれの径方向外側の面は、当該カムの軸方向から見て円弧状に湾曲する面である、
ことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のリクライニング装置において、
前記ロックスプリングは、前記センター穴の周囲に周方向に均等に複数個配置されている、
ことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項5】
請求項4に記載のリクライニング装置において、
前記複数のロックスプリングのそれぞれは、渦巻ばねである、
ことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項6】
請求項5に記載のリクライニング装置において、
前記ガイドブラケットは、前記インターナルギヤと対向する対向面を有し、該対向面には、前記センター穴の周囲において前記インターナルギヤから退避する方向に凹んだ凹部を有する収容部が複数設けられ、それぞれの当該凹部に前記ロックスプリングが収容されている、
ことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項7】
シートクッションと、
前記シートクッションの後部に配置されてシート前後方向に傾動可能なシートバックと、
前記シートバックを任意の傾斜角度で固定する請求項1に記載のリクライニング装置と
を備えている、
ことを特徴とするシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング装置、および当該リクライニング装置を備えたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両等のシートには、シートバック(背もたれ)がシートクッション(座部)に対して前後方向に傾動可能な構造において、当該シートバックを任意の傾斜角度で固定するリクライニング装置を備えたシートがある。
【0003】
例えば、特許文献1記載のリクライニング装置は、主要部分として、シートクッションのフレームとシートバックのフレームとの連結部分において図11に示されるリクライニング機構106を備えている。リクライニング機構106は、シートの左右両側に配置される。リクライニング機構106は、シートクッションのフレームに固定されたガイドブラケット120と、シートバックのフレームに固定されたインターナルギヤ130と、インターナルギヤ130の内歯132に噛合可能な外歯63を備えた板状の複数のロックギヤ60A~60D(いわゆるロックプレート)と、複数のロックギヤ60A~60Dを径方向に動かすカム150と、ロックスプリング140とを備える。複数のロックギヤ60A~60Dおよびカム150は、ガイドブラケット120とインターナルギヤ130との間に配置されている。
【0004】
なお、カム150の本体部152は、その周囲に複数の係合突起151および段差部152bを有する。さらに、本体部152のロッド挿入孔152aには、インターナルギヤ130の貫通孔135を通して、コネクトロッド(図示せず)が連結される。
【0005】
複数のロックギヤ60A~60Dは、カム150の回転に連動して、ガイドブラケット120におけるインターナルギヤ130との対向面(内面)に設けられたガイド壁部(図示せず)に沿ってガイドブラケット120の径方向に移動し、各ロックギヤ60A~60Dの外歯63とインターナルギヤ130の内歯132とが噛合する噛合位置と噛合が解除される解除位置とに変位することが可能である。例えば、カム150が時計回りに回転すると、カム150の4個の係合突起151がロックギヤ60A~60Dの各被係合溝61に係合して、ロックギヤ60A~60Dをカム150の中心方向に引き寄せて噛合位置から解除位置へ移動させる。一方、カム150がロックスプリング140に付勢されて反時計回りに回転すると、カム150の各係合突起151および段差部152bが、ロックギヤ60A~60Dをカム150の半径方向外方に押圧し、解除位置から噛合位置へ移動させる。
【0006】
ロックスプリング140は、ロックギヤ60A~60Dを解除位置から噛合位置へ変位させる方向にカム150を回転付勢する。ロックスプリング140は、渦巻ばねであり、ガイドブラケット120の開口122の内部に配置される。ロックスプリング140は、その内側端部142がカム150の第1軸部153の係合溝153aに係合し、その外側端部141がガイドブラケット120の係合溝122aに係合した状態で組み付けられている。
【0007】
インターナルギヤ130の中央部には、軸方向に突出する第2軸部136が設けられている。一方、カム150の中央部には、当該第2軸部136に嵌合する凹部154(図12参照)が形成されている。インターナルギヤ130の第2軸部136がカム150の凹部154に嵌合することにより、カム150はインターナルギヤ130の同軸上に取り付けられる。一方、複数のロックギヤ60A~60Dは、ガイドブラケット120のインターナルギヤ130側の面(対向面)に当接した状態で上記のガイド壁部(図示せず)に取り付けられる。これにより、ロックギヤ60A~60Dの位置決めはガイドブラケット120によってなされる。
【0008】
ガイドブラケット120およびインターナルギヤ130は、図13(a)、(b)に示されるように、同軸上に重ね合わせた状態で取付リング170によって固定される。具体的には、ガイドブラケット120とインターナルギヤ130の凹状部131とを対向させ、凹状部131の周囲のフランジ部133の端面133aをガイドブラケット120の面に突き合わせ、取付リング170によって位置決めされる。これにより、複数のロックギヤ60A~60Dとカム150との軸のずれ(すなわち、カム150の回転軸に対するロックギヤ60A~60Dによって構成される面の法線とのずれ)を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-168141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1記載の構造では、複数のロックギヤ60A~60Dの位置はガイドブラケット120の位置に依存する一方、カム150の位置はインターナルギヤ130の位置に依存する。したがって、ガイドブラケット120とインターナルギヤ130が製造公差等によってこれらの相対的な位置がずれた場合には、複数のロックギヤ60A~60Dとカム150との相対的な位置も変化する。その結果、複数のロックギヤ60A~60Dのロックタイミングがずれるおそれがある。
【0011】
また、上記の構造では、カム150は、ロックスプリング140の内側端部142が取り付けられるカム150の第1軸部153と、インターナルギヤ130の第2軸部136が嵌合する凹部154とがカム150の軸方向に並んで配置された構成であり、カム150の小型化、とくに、カム150の軸方向の寸法(厚さ)を縮小することが難しいという問題がある。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、複数のロックギヤのタイミングのずれを防止し、かつ、カムの小型化が可能なリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のリクライニング装置は、円形のセンター穴を有する板状の部材であり、シートクッションおよびシートバックのうちの一方のフレームに固定されたガイドブラケットと、前記ガイドブラケットと対向する位置で前記シートクッションおよび前記シートバックのうちの他方のフレームに固定され、前記ガイドブラケットに対して相対的に回転可能なインターナルギヤと、前記インターナルギヤの内歯に噛合可能な外歯をそれぞれ備えた複数のロックギヤであって、前記ガイドブラケットに沿って前記ガイドブラケットの径方向に移動可能に配置され、かつ、前記外歯と前記内歯とが噛合する噛合位置とこれらの噛合が解除される解除位置とに変位することが可能な複数のロックギヤと、前記ガイドブラケットに対して相対的に回転可能なカムであって、回転によって前記複数のロックギヤを前記噛合位置と前記解除位置との間で径方向に動かすカムと、前記ロックギヤを前記解除位置から前記噛合位置へ変位させる方向に前記カムを回転付勢する少なくとも1つのロックスプリングと、を備え、前記ガイドブラケットは、前記センター穴の周囲に互いに周方向に離れて設けられ、前記複数のロックギヤを径方向に案内する複数のガイド部を有し、前記カムは、前記ガイドブラケットの前記センター穴に挿入された軸部を有し、前記軸部は、前記センター穴の内周面に当接する外周面と、前記ロックスプリングの被係合部とを有し、前記カムは、前記軸部の外周面が前記センター穴の内周面に当接することにより、当該ガイドブラケットに対して回転可能に支持されているとともに、前記被係合部に前記ロックスプリングが係合されることにより、当該ロックスプリングによって回転付勢されていることを特徴とする。
【0014】
かかる構成では、カムは、ガイドブラケットのセンター穴に挿入された軸部を有している。軸部は、ガイドブラケットのセンター穴の内周面に当接する外周面と、ロックスプリングの被係合部とを有している。カムは、軸部の外周面がガイドブラケットのセンター穴の内周面に当接することにより、当該ガイドブラケットに対して回転可能に支持されている。
【0015】
したがって、ガイドブラケットは、当該ガイドブラケットに沿って複数のガイド壁部によって複数のロックギヤを径方向に案内するとともに、センター穴の内周面がカムの軸部と軸合わせをする。つまり、カムの位置合わせおよび複数のロックギヤの位置合わせの両方をガイドブラケットを基準にして行うことが可能である。これにより、ガイドブラケットやカムなどの各部品に製造公差がある場合でも、ガイドブラケットとカムとの間の軸ずれが生じ難くなり、カムによって操作される複数ロックギヤのロックタイミングを合わせることが可能になる。
【0016】
また、カムの軸部は、2つの機能、すなわち、外周面によるカムブラケットに対する軸合せの機能、および被係合部によるロックスプリングとの係合の機能を両方果たすので、カムの小型化、とくにカムの軸方向の寸法(厚さ)の縮小が可能になる。
【0017】
上記のリクライニング装置において、前記カムは、前記複数のロックギヤのそれぞれを径方向に動かす複数の操作部分を有する本体部を有し、前記軸部は、前記本体部から前記軸方向に突出する複数の凸部で構成されており、前記外周面は、前記複数の凸部における径方向外側の面で構成され、前記被係合部は、前記複数の凸部のそれぞれにおいて前記凸部の周方向の端部で構成されているのが好ましい。
【0018】
かかる構成では、カムの軸部が複数の凸部で構成されているので、筒状の軸に比べて軽量化が可能である。また、複数の凸部の径方向外側の面が軸部の外周面を構成しているので、カムの複数の凸部がガイドブラケットのセンター穴の内周面に当接することにより、カムの回転が安定し、複数のロックギヤのロックタイミングのずれを抑えることが可能である。
【0019】
しかも、軸部の被係合部が複数の凸部のそれぞれにおいて凸部の周方向の端部で構成されているので、ロックスプリングを複数の凸部のいずれかの周方向端部に係合するだけでロックスプリングのカムへの係合作業を容易に行うことが可能である。
【0020】
上記のリクライニング装置において、前記複数の凸部のそれぞれの径方向外側の面は、当該カムの軸方向から見て円弧状に湾曲する面であるのが好ましい。
【0021】
かかる構成により、複数の凸部のそれぞれの径方向外側の面が当該カムの軸方向から見て円弧状に湾曲する面であるので、複数の凸部の径方向外側の面で構成される軸部の外周面は略円周面になり、軸部の外周面とガイドブラケットのセンター穴との接触面積が増えることにより、カムの回転がより安定する。したがって、複数のロックギヤとインターナルギヤの安定した噛合が可能になり、強固な噛合状態を維持できる。
【0022】
上記のリクライニング装置において、前記ロックスプリングは、前記センター穴の周囲に周方向に均等に複数個配置されているのが好ましい。
【0023】
かかる構成により、複数のスプリングからカムに与えられる回転付勢力が周方向に分散してカムに入力されるので、カムの偏心を抑えることが可能である。
【0024】
また、上記の構成では、複数のロックスプリングのそれぞれがカムに回転付勢力を与えるため、個々のロックスプリングとしてより小さいスプリング(すなわち付勢力の弱いスプリング)を採用することが可能である。そのため、ロックスプリング組付けの際は、大きな負荷を加えることなくカムの組付けを手動で行うこと可能になり、巻き込むための専用の設備が不要になる。
【0025】
上記のクライニング装置において、前記複数のロックスプリングのそれぞれは、渦巻ばねであるのが好ましい。
【0026】
かかる構成により、複数のロックスプリングのそれぞれが渦巻ばねであるので、ロックスプリングの設置スペースを小さくすることができ、複数のロックスプリングをガイドブラケットとインターナルギヤとの間に配置しやすくなり、設計自由度が拡大する。
【0027】
上記のリクライニング装置において、前記ガイドブラケットは、前記インターナルギヤと対向する対向面を有し、該対向面には、前記センター穴の周囲において前記インターナルギヤから退避する方向に凹んだ凹部を有する収容部が複数設けられ、それぞれの当該凹部に前記ロックスプリングが収容されているのが好ましい。
【0028】
かかる構成により、渦巻ばねであるロックスプリングをガイドブラケットの収容部の凹部に収容することで、ロックスプリングの作動を安定させることができる。また、ガイドブラケットの内面からのロックスプリングの突出量を減らすことができるので、リクライニング装置の薄型化を図ることが可能である。
【0029】
さらに、この構成では、ロックスプリングを収容部の凹部に収容する構成とすることで、ロックスプリングを凹部に配置した後、その上にカムを配置し、カムの中央の穴に工具等を差し込んで回転させるだけで組付け作業を容易に行うことが可能になる。
【0030】
本発明のシートは、シートクッションと、前記シートクッションの後部に配置されてシート前後方向に傾動可能なシートバックと、前記シートバックを任意の傾斜角度で固定する上記のリクライニング装置とを備えていることを特徴とする。
【0031】
かかる構成のシートでは、リクライニング装置の複数のロックギヤのタイミングのずれを防止し、かつ、カムの小型化が可能になるので、シートバックの安定した固定とともにリクライニング装置の小型化が可能になる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のリクライニング装置およびシートによれば、複数のロックギヤのタイミングのずれを防止することができる。しかも、カムの小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態に係るリクライニング装置を備えたシートの全体構成を示す斜視図である。
図2図1のコネクトロッドおよびリクライニング機構を分離した状態の斜視図である。
図3図2のリクライニング機構の分解斜視図である。
図4図3のカムの斜視図である。
図5図3のガイドブラケットを外面側から見た図である。
図6図3のガイドブラケットの内面側に2個のロックスプリングとカムが取り付けられた状態を示す図である。
図7図3のインターナルギヤ、複数のロックギヤ、カム、ガイドブラケット、および取付リングを組み合わせたリクライニング機構の完成状態を示す図であって、(a)は取付リングの外側から軸方向に見た図、(b)は(a)のA―A線断面図である。
図8図6のカムが2個のロックスプリングから受ける回転付勢力を示す図である。
図9図6のカムの2個の凸部を2個のロックスプリングの外側端部にそれぞれ係合する動作を示す図である。
図10図9の2個のロックスプリングの外側端部がカムの凸部の係合端部に係合した状態をガイドブラケットの外面側から見た図である。
図11】従来のリクライニング機構の分解斜視図である。
図12図11のカムをインターナルギヤ側から見た斜視図である。
図13図11の従来のリクライニング機構の完成状態を示す図であって、(a)は取付リングの外側から軸方向に見た図、(b)は(a)のB-B線断面図である。
図14図11のカムが1個のロックスプリングから受ける回転付勢力を示す図である。
図15図11のロックスプリングの外側端部をカムブラケットの係合溝に係合させる動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0035】
図1に示されるように、本実施形態のシート1は、車両等のシートであって、着座者の臀部を支持するシートクッション2と、着座者の背中を支持するためにシートクッション2の後部に配置され、シートクッション2に対してシート1の前後方向Xに傾動可能なシートバック3と、シートクッション2の下部に取り付けられたスライド装置4と、リクライニング装置5とを備えている。
【0036】
スライド装置4は、シートクッション2をシート1の前後方向Xにスライド可能に案内するとともに当該シートクッション2を任意の位置で固定可能な構成を有している。なお、本発明のシートではスライド装置4は必須ではなく無くてもよい。
【0037】
リクライニング装置5は、主要な構成として、シートバック3を任意の傾斜角度で固定することが可能なリクライニング機構6を有する。
【0038】
具体的には、図2~3に示されるように、本実施形態のリクライニング装置5は、一対のリクライニング機構6と、一対のリクライニング機構6に連結されるコネクトロッド7と、コネクトロッド7の両側の端部の近傍に嵌合される一対の樹脂ブッシュ8とを備えている。なお、樹脂ブッシュ8は無くてもよい。
【0039】
一対のリクライニング機構6は、シート1の幅方向Yの両側の位置に配置されている。各リクライニング機構6は、シートバック3を任意の傾斜角度で固定するためのクラッチの役目をする機構である。
【0040】
リクライニング機構6は、図3および図7(a)、(b)に示されるように、円板状のガイドブラケット20と、ガイドブラケット20に対向して配置され、内歯32を有するインターナルギヤ30と、内歯32に噛合可能な外歯63をそれぞれ有する複数(本実施形態では4枚)のロックギヤ60A~60Dと、ロックギヤ60A~60Dをガイドブラケット20の径方向に動かすカム50と、カム50を回転付勢する少なくとも1つ(本実施形態では2個)のロックスプリング40と、インターナルギヤ30をガイドブラケット20に取り付ける取付リング70とを備える。4枚のロックギヤ60A~60D、カム50、および2個のロックスプリング40は、ガイドブラケット20とインターナルギヤ30との間に配置されている。本実施形態では、ロックスプリング40として、小型の渦巻ばねが採用されている。
【0041】
ガイドブラケット20は、中央に円形のセンター穴22を有する板状の部材である。本実施形態のガイドブラケット20は、シートクッション2およびシートバック3のいずれか一方として、シートクッション2のフレーム2a(図1~2参照)(具体的にはサイドフレーム)の後部付近に固定されている。
【0042】
ガイドブラケット20は、具体的には、図3図5~6、図7(b)に示されるように、中央に円形のセンター穴22が形成された円板状の本体部21と、ロックスプリング40をそれぞれ収容する2つの収容部23と、本体部21の外周に沿って設けられたフランジ部24とを有する。
【0043】
2個の収容部23は、それぞれ、ガイドブラケット20におけるインターナルギヤ30との対向面、すなわち、本体部21の内面21bのセンター穴22の周囲においてインターナルギヤ30から退避する方向(すなわち、外面21a側)に凹んだ凹部23a(いわゆる半貫部)を有する。凹部23aは、本体部21の内面21b側に開口するとともにセンター穴22に連通しているので、ロックスプリング40の渦巻き部分が凹部23aに収容された状態で、外側端部41をセンター穴22の内部に突出させることが可能である。
【0044】
ガイドブラケット20は、さらに、図8に示されるように、本体部21の内面21b(上記の対向面)において、4枚のロックギヤ60A~60Dをガイドブラケット20の径方向に案内する複数のガイド壁部25(ガイド部)を有する。複数のガイド壁部25は、センター穴22の周囲に互いに周方向に等間隔に離れて設けられ、ガイドブラケット20の径方向にそれぞれ延びている。さらに具体的には、複数のガイド壁部25は、センター穴22を中心として一対ずつ組になって4方向に放射状に延びている。これにより、4組の一対のガイド壁部25によって、ロックギヤ60A~60Dをガイドブラケット20の径方向に案内することが可能である。
【0045】
インターナルギヤ30は、ガイドブラケット20と対向する位置で、シートクッション2およびシートバック3の他方として、シートバック3のフレーム3a(図1~2参照)(具体的にはサイドフレーム)の下部付近に固定されている。
【0046】
インターナルギヤ30は、図3および図7(a)、(b)に示されるように、インターナルギヤ30の軸方向から見て円形に形成されると共に断面略凹状に形成された凹状部31を有する。凹状部31の内周面31aには、当該内周面31aの全周にわたって内歯32が形成されている。インターナルギヤ30は、凹状部31の底面31bをガイドブラケット20の本体部21の内面21b(対向面)に対向させて配置される。凹状部31の中央には、貫通孔33が形成されている。貫通孔33は、図2に示されるように、シートバック3のフレーム3aの貫通孔3bに重なるように配置される。貫通孔33を通して、コネクトロッド7および樹脂ブッシュ8のそれぞれの端部がリクライニング機構6の内部に挿入される。
【0047】
図3および図7(b)に示されるように、ガイドブラケット20とインターナルギヤ30の凹状部31とが対向した状態で、凹状部31の周縁部がガイドブラケット20の段差部26(すなわち、図7(b)に示される本体部21とフランジ部24との間の段差部26)に嵌合される。これにより、インターナルギヤ30は、ガイドブラケット20に対しての径方向の位置決めがなされる。
【0048】
さらに、取付リング70がフランジ部24に溶接などで固定されてインターナルギヤ30の軸方向への抜け止めがなされる。これによって、インターナルギヤ30は、ガイドブラケット20に対して相対的に回転可能に連結されている。
【0049】
4個のロックギヤ60A~60Dは、図3に示されるように、インターナルギヤ30の内歯32に噛合可能な外歯63をそれぞれ備えた平面視で略長方形の形状を有する部材(いわゆるロックプレート)であり、基本的には従来のロックギヤ(図11のロックギヤ60A~60D)の構成と共通している。ロックギヤ60A~60Dは、ガイドブラケット20の内面21bに沿って、当該内面21b形成された上記のガイド壁部25によってガイドブラケット20の径方向に案内されながら移動可能に配置されている。これにより、ロックギヤ60A~60Dは、外歯63と内歯32とが噛合する噛合位置とこれらの噛合が解除される解除位置とに変位することが可能である。各ロックギヤ60A~60Dの内周面には、略円弧状に切り欠かれた被係合溝61が形成されている。被係合溝61は、後述のカム50の係合突起52と係合するための溝である。
【0050】
カム50は、ガイドブラケット20に対して相対的に回転可能なカムである。カム50は、図3~4、図6、および図7(b)に示されるように、本体部51と、本体部51からガイドブラケット20に向かって当該カム50の軸方向に突出してガイドブラケット20のセンター穴22に挿入された軸部Sとを有する。
【0051】
本体部51は、カム50の回転によって複数のロックギヤ60A~60Dを噛合位置と解除位置との間で径方向に動かすことが可能な構成として、複数のロックギヤ60A~60Dのそれぞれを径方向に動かす複数の操作部分である4つの係合突起52を有する。4つの係合突起52は、4枚のロックギヤ60A~60Dのそれぞれの被係合溝61(図3参照)に係合可能な方向に延び、さらに詳細に言えば、円周方向に等間隔に略円弧状で角状に延びる。係合突起52は、カム50の回転によって、ロックギヤ60A~60Dの被係合溝61に係合することにより、ロックギヤ60A~60Dを径方向内側へ引き込んで上記の噛合位置から解除位置へ変位させる。また、係合突起52を除いたカム50の本体部51には、各係合突起52の基部から所定角度隔てた位置に外径が大きくなるように膨出する段差部55(図4参照)が4箇所に形成されている。
【0052】
本体部51は、中央にロッド係合孔54が形成されている。ロッド係合孔54には、上記のインターナルギヤ30の貫通孔33を通して、コネクトロッド7の端部が係合している。コネクトロッド7を手動などで回転操作することによって、リクライニング機構6の内部のカム50を回転操作することが可能である。
【0053】
軸部Sは、図4および図6に示されるように、ガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接する外周面S1と、ロックスプリング40の外側端部41が係合される被係合部(後述の係合端部53b)とを有する。
【0054】
本実施形態では、軸部Sは、本体部51から軸方向に突出する複数(本実施形態では2個)の凸部53で構成されている。外周面S1は、2個の凸部53における(カム50の径方向で見て)径方向外側の面53aで構成されている。径方向外側の面53aは、当該カム50の軸方向から見て円弧状に湾曲する面である。凸部53は、カム50を成形する際に中空になるように(いわゆる半貫形状に)形成されるのが好ましい。
【0055】
また、上記の被係合部は、本実施形態では、2個の凸部53のそれぞれにおいてカム50の周方向の一方の端部である係合端部53bで構成されている。係合端部53bは、凸部53の周方向両側の端部53b、53cのうち、カム50の周方向において係合突起52がロックギヤ60A~60Dの被係合溝61に係合する回転方向(図4において時計回り)の側の端部である。
【0056】
図6および図8~10に示されるように、ロックスプリング40の外側端部41が凸部53の係合端部53bに係合することにより、ロックスプリング40は、カム50を所定の方向(図9のカム50の取付方向R1に対して反対方向)に回転付勢させる。具体的には、係合突起52および段差部55がロックギヤ60A~60Dをカム50の半径方向外方に押圧して外歯63がインターナルギヤ30の内歯32に噛み合う噛合位置へ移動させる方向に、ロックスプリング40はカム50を回転付勢させる。
【0057】
カム50は、軸部Sの外周面S1がガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接することにより、当該ガイドブラケット20に対して回転可能に支持されている。
【0058】
このように、ガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aと凸部53の径方向外側の面53a(すなわち、軸部Sの外周面S1)とが当接することにより、カム50は、ガイドブラケット20に対して径方向の位置決めがなされる。
【0059】
2個のロックスプリング40は、図3図6図8~10に示されるように、ガイドブラケット20の本体部21の内面21b側において、上記の収容部23の凹部23aに収容されることにより、センター穴22の周囲に周方向に均等に配置、すなわち、本実施形態では、センター穴22の両側に配置されている。
【0060】
本実施形態のロックスプリング40は、帯状の金属薄板が渦巻状に巻かれた渦巻ばねであり、外側端部41と、内側端部42とを有する。内側端部42は、ガイドブラケット20の収容部23の凹部23a内に設けられた係合凸部23bに係合している。
【0061】
外側端部41は、上記のカム50の凸部53の係合端部53bに係合している。これにより、2個のロックスプリング40は、それぞれ、ロックギヤ60A~60Dを解除位置から噛合位置へ変位させる方向にカム50を回転付勢することが可能である。
【0062】
上記のリクライニング機構6では、通常の状態では、渦巻きばねであるロックスプリング40の弾性によるカム50の一方向への回転(図9のカム50の取付方向R1に対して反対方向への回転)によって、ロックギヤ60A~60Dが半径方向外方に付勢されている。一方、コネクトロッド7に回転操作力が入力されたときには、ロックスプリング40の弾性力に抗して、カム50が逆方向(図9の方向R1)へ回転することによってロックギヤ60A~60Dが中心方向に変位する。すなわち、図6に示されるカム50が時計回りに回転すると、カム50の4個の係合突起52がロックギヤ60A~60Dの各被係合溝61(図3参照)に係合して、ロックギヤ60A~60Dをカム50の中心方向に引き寄せる。一方、カム50がロックスプリング40に付勢されて反時計回りに回転すると、カム50の各係合突起52および段差部55が、ロックギヤ60A~60Dをカム50の半径方向外方に押圧する。ロックギヤ60A~60Dの外周面には外歯63が形成されており、半径方向外方に押圧されるとインターナルギヤ30の内歯32に係合し、ガイドブラケット20とインターナルギヤ30とが相互回転不能にロックされる。これにより、シートバック3を任意の傾斜角度で固定することが可能になる。
【0063】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態のリクライニング装置5の主要部であるリクライニング機構6は、円形のセンター穴22および複数のガイド壁部25を有するガイドブラケット20と、インターナルギヤ30と、 インターナルギヤ30の内歯32に噛合可能な外歯63をそれぞれ備え、ガイドブラケット20のガイド壁部25に案内されてガイドブラケット20の径方向に移動可能な複数のロックギヤ60A~60Dと、ガイドブラケット20に対して相対的に回転可能なカム50であって、回転によって複数のロックギヤ60A~60Dを噛合位置と解除位置との間で径方向に動かすカム50と、ロックギヤ60A~60Dを解除位置から噛合位置へ変位させる方向にカム50を回転付勢する少なくとも1つ(本実施形態では2個)のロックスプリング40とを備える。
【0064】
カム50は、本体部51からガイドブラケット20に向かって当該カム50の軸方向に突出してガイドブラケット20のセンター穴22に挿入された軸部Sを有する。
【0065】
軸部Sは、ガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接する外周面S1と、ロックスプリング40が係合される被係合部である係合端部53bとを有する。
【0066】
カム50は、軸部Sの外周面S1がガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接することにより、当該ガイドブラケット20に対して回転可能に支持されている。それとともに、カム50は、係合端部53bにロックスプリング40が係合されることにより、当該ロックスプリング40によって回転付勢されている。
【0067】
したがって、ガイドブラケット20は、当該ガイドブラケット20に沿って、具体的には、インターナルギヤ30と対向する本体部21の内面21b(対向面)に沿って複数のガイド壁部25によって複数のロックギヤ60A~60Dを径方向に案内するとともに、センター穴22の内周面22aがカム50の軸部Sと軸合わせをする。つまり、カム50の位置合わせおよび複数のロックギヤ60A~60Dの位置合わせの両方をガイドブラケット20を基準にして行うことが可能である。これにより、ガイドブラケット20やカム50などの各部品に製造公差がある場合でも、ガイドブラケット20とカム50との間の軸ずれが生じ難くなり、カム50によって操作される複数ロックギヤ60A~60Dのロックタイミングを合わせることが可能になる。
【0068】
すなわち、上記の実施形態では、カム50の軸部S(本実施形態では複数の凸部53)の外周面S1(径方向外側の面53a)がガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接しているため、カム50の回転が安定し、複数のロックギヤ60A~60Dのロックタイミングのずれが抑えられる。
【0069】
ここで、比較例として、上記の図11~13に示される従来のリクライニング機構106を見れば、上記のように、従来のカム150の径方向の位置決めは、インターナルギヤ130の第2軸部136がカム150の凹部154に嵌合し、第2軸部136の外周面が基準となってカム150の位置決めが行われる。一方、インターナルギヤ30とガイドブラケット20の間の径方向の位置決めは、取付リング70で行われる。
【0070】
つまり、従来のリクライニング機構106では、ガイドブラケット120にて位置が規制されるロックギヤ60A~60Dに対し、カム150はその凹部154をインターナルギヤ130の第2軸部136に嵌合することで、カム150の軸ずれを防止している。しかし、ガイドブラケット20、インターナルギヤ30、およびカム150などの各部品が製造公差等によって相対的な位置がずれると、 ロックギヤ60A~60Dとカム50の相対的な位置関係も変化し、ロックギヤ60A~60Dのロックタイミングがずれるおそれがある。
【0071】
これに対し、上記の本実施形態のリクライニング機構6では、カム50の軸部S(複数の凸部53)の外周面S1(径方向外側の面53a)がガイドブラケット20のセンター穴22の内周面に当接するとともにカム50がガイドブラケット20に回転自在に支持される構造なので、カム50の位置合わせおよび複数のロックギヤ60A~60Dの位置合わせの両方がガイドブラケット20を基準にして行われる。したがって、本実施形態のリクライニング機構6では、各部品の製造公差の影響を受けにくいので、カム50によって操作される複数ロックギヤ60A~60Dのロックタイミングを合わせることが可能になることが理解される。
【0072】
(2)
また、カム50の軸部Sは、2つの機能、すなわち、外周面S1によるガイドブラケット20に対する軸合せの機能、および被係合部である係合端部53bによるロックスプリング40との係合の機能を両方果たすので、カム50の小型化、とくにカム50の軸方向の寸法(厚さ)の縮小が可能になる。
【0073】
しかも、上記の実施形態では、軸ずれ防止用のカム50の凸部53に、ロックスプリング40の外側端部41を係合させているため、ロックスプリング40の外側端部41を係合するための部品や構造を新たに設ける必要がない。
【0074】
(3)
また、本実施形態の構造では、図10に示されるように、ロックスプリング40の外側端部41は、ガイドブラケット20のセンター穴22の内側まで延びてカム50の軸部Sの被係合部である係合端部53bに係合する。したがって、カム50の軸部S(複数の凸部53)の被係合部である係合端部53bに係合したロックスプリング40の外側端部41がガイドブラケット20のセンター穴22を通してリクライニング機構6の外部から(すなわち、ガイドブラケット20の本体部21の外面21a側から)見えるようになる。そのため、リクライニング機構6の組付け後にロックスプリング40が正常にカム50に係合しているか目視確認することが可能であり、組付け性が向上する。
【0075】
(4)
本実施形態のリクライニング装置では、カム50の軸部Sは、カム50の本体部51から軸方向に突出する複数の凸部53で構成されている。外周面S1は、複数の凸部53の径方向外側の面53aで構成されている。また、ロックスプリング40の外側端部41に係合するカム50の被係合部は、複数の凸部53のそれぞれにおいて凸部53の周方向(すなわちカム50の周方向と同様の円周方向)の端部である係合端部53bで構成されている。
【0076】
このようにカム50の軸部Sが複数の凸部53で構成されているので、筒状の軸に比べて軽量化が可能である。また、複数の凸部53の径方向外側の面53aが軸部Sの外周面S1を構成しているので、カム50の複数の凸部53がガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接することにより、カム50の回転が安定し、複数のロックギヤ60A~60Dのロックタイミングのずれを抑えることが可能である。
【0077】
しかも、軸部Sの被係合部が複数の凸部53のそれぞれにおいて凸部53の周方向の端部である係合端部53bで構成されているので、ロックスプリング40を複数の凸部53のいずれかの周方向端部である係合端部53bに係合するだけでロックスプリング40のカム50への係合作業を容易に行うことが可能である。
【0078】
(5)
また、上記の構造は、カム50の凸部53をガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに摺接させる構造であり、ガイドブラケット20のセンター穴22の周囲に凸部53と摺接するための段差部などを別途設けることのないシンプルな構造である。したがって、ガイドブラケット20の加工性が良く、寸法精度が向上する。また、段差部を設けるためにガイドブラケット20を径方向外側へ拡大する必要が無いので、ガイドブラケット20の小型化が可能である。
【0079】
(6)
本実施形態のリクライニング機構6では、複数の凸部53のそれぞれの径方向外側の面53aが当該カム50の軸方向から見て円弧状に湾曲する面である。そのため、複数の凸部53の径方向外側の面53aで構成される軸部Sの外周面S1は略円周面になり、軸部Sの外周面S1とガイドブラケット20のセンター穴22との接触面積が増えることにより、カム50の回転がより安定する。したがって、複数のロックギヤ60A~60Dとインターナルギヤ30の安定した噛合が可能になり、強固な噛合状態を維持できる。
【0080】
(7)
本実施形態のリクライニング機構6では、ロックスプリング40は、ガイドブラケット20の対向面である本体部21の内面21b側においてセンター穴22の周囲に周方向に均等に複数個(本実施形態では2個)配置されている。この構成では、複数のロックスプリング40からカム50に与えられる回転付勢力が周方向に分散してカム50に入力される。例えば、図8に示されるように、カム50が2個のロックスプリング40から受ける2つの回転付勢力F1は、カム50の周方向に分散され、カム50の回転中心に対して互いに反対方向を向くので、径方向において釣り合った状態になる。その結果、カム50の偏心を抑えることが可能である。
【0081】
一方、比較例として、上記の図11とともに図14に示される従来のリクライニング機構106を見れば、1つのロックスプリング140からカム150が受ける回転付勢力F2は、カム150の偏心力となり、ガイドブラケット20に対して、カム150、インターナルギヤ30を偏心させる。
【0082】
したがって、上記の実施形態のように、ロックスプリング40を周方向に均等に複数個配置する構成にすることにより、カム50の偏心を抑えることができるが理解される。
【0083】
(8)
また、上記の実施形態の構成では、複数(2個)のロックスプリング40のそれぞれがカムに回転付勢力を与えるため、個々のロックスプリング40としてより小さいスプリング(すなわち付勢力の弱いスプリング)を採用することが可能である。そのため、ロックスプリング40組付けの際は、大きな負荷を加えることなくカム50の組付けを手動で行うこと可能になり、ロックスプリング40を巻き込むための専用の設備が不要になる。
【0084】
例えば、図9に示されるように、カム50の組付けを行う場合、まず、2個のロックスプリング40をガイドブラケット20の収容部23に収容し、その後、カム50の2個の凸部53をガイドブラケット20のセンター穴22に挿入し、カム50を所定の取付方向R1(すなわち、カム50の係合突起52がロックギヤ60A~60Dの被係合溝61に係合してロックギヤ60A~60Dを噛合位置から解除位置へ変位させる方向)に手動で回転させて凸部53の係合端部53bをロックスプリング40の外側端部41に押し付けることにより、カム50の組付けを手動で行うことが可能である。これにより、組付け後のカム50では、図3のカム50の4個の係合突起52がロックギヤ60A~60Dの被係合溝61に係合および離脱可能な位置になる。
【0085】
一方、比較例として、上記の図11とともに図15に示される従来のリクライニング機構106では、ロックスプリング140を取り付けるために、ロックスプリング140の内側端部142をカム150の第1軸部153の係合溝153aに係合し、内側端部142を巻き込むようにカム150に回転力を加えながら外側端部141をガイドブラケット120の係合溝aに係合する。このため、カム150の組付け時において、ロックスプリング140からの反力が大きいため大きな回転力を発生させる専用の巻込み設備が必要である。
【0086】
それに対して、本実施形態のリクライニング機構6では、上記のように、図9に示されるガイドブラケット20に複数(2個)のロックスプリング40とカム50を配置し、カム50を手動で回転させるだけで複数のロックスプリング40がそれぞれたわめられて弾性エネルギーを蓄えるので、複数のロックスプリング40からカム50への反力も小さい。したがって、専用の巻込み設備は不要になる。
【0087】
(9)
本実施形態のリクライニング機構6では、複数のロックスプリング40のそれぞれが渦巻ばねである。そのため、ロックスプリング40の設置スペースを小さくすることができ、複数のロックスプリング40をガイドブラケット20とインターナルギヤ30との間に配置しやすくなり、設計自由度が拡大する。
【0088】
(10)
本実施形態のリクライニング機構6では、ガイドブラケット20は、インターナルギヤ30との対向面である本体部21の内面21bのセンター穴22の周囲においてインターナルギヤ30から退避する方向に凹んだ凹部23a(いわゆる半貫部)を有する収容部23が複数設けられている。それぞれの当該凹部23aに渦巻ばねであるロックスプリング40が収容されている。
【0089】
この構成では、渦巻ばねであるロックスプリング40をガイドブラケット20の収容部23の凹部23aに収容することで、ロックスプリング40の作動を安定させることができる。また、ガイドブラケット20の内面からのロックスプリング40の突出量を減らすことができるので、リクライニング装置5の薄型化を図ることが可能である。
【0090】
さらに、この構成では、ロックスプリングを収容部23の凹部23aに収容する構成とすることで、ロックスプリング40を凹部23aに配置した後、その上にカム50を配置し、カム50の中央の穴に工具等を差し込んで回転させるだけで組付け作業を容易に行うことが可能になる。
【0091】
ここで、本実施形態と比較例を比較して詳述すれば、比較例として図15に示されるように、従来のリクライニング機構106では、カム150の係合溝153a(スリット部分)にロックスプリング140の内側端部142を合わせるようにして係合し、その係合状態の上で、外側端部141を引き上げるようにしてガイドブラケット120に係合しているので、外側端部141を引き上げる際の反力が大きくなり、専用の巻込み設備が必要となるとともに組付け作業が複雑である。それに対し、本実施形態は、図9に示されるように、シンプルな組付けが可能な構成であり、具体的には、ロックスプリング40を収容部に配置した後、カム50を配置し、カム50を矢印R2方向に回転させる(好ましくは、カム50の中央の開口部に工具を差し込んでカム50を回転させる)だけで、カム50の係合端部53bをロックスプリング40の外側端部41に係合することが可能であり、組付けを容易に行うことが可能になる。
【0092】
(11)
本実施形態のシート1は、図1に示されるように、シートクッション2と、シートクッション2の後部に配置されてシート前後方向に傾動可能なシートバック3と、シートバック3を任意の傾斜角度で固定する上記実施形態のリクライニング機構6を主要部とするリクライニング装置5とを備えている。
【0093】
かかる構成のシート1は、リクライニング装置5の主要部であるリクライニング機構6において、複数のロックギヤ60A~60Dのタイミングのずれを防止し、かつ、カム50の小型化が可能になるので、シートバック3の安定した固定とともにリクライニング装置5の小型化が可能になる。
【0094】
(変形例)
(A)
上記実施形態では、2個のロックスプリング40がガイドブラケット20の周方向に均等に配置されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも1つのロックスプリングを備えていればよい。したがって、上記のリクライニング機構6は、1個のロックスプリングを備えた構成でも、3個以上のロックスプリングを備えた構成でもよい。
【0095】
また、ロックスプリングとしては、上記実施形態のように渦巻ばねを採用するだけでなく、種々の形状のばね(板ばね、コイルスプリング、ゴムばね、空気ばねなど)を採用してもよい。
【0096】
(B)
上記実施形態では、円弧状の凸部53が例に挙げられているが、凸部53は、軸部Sの外周面S1を構成する径方向外側の面53aと、ロックスプリング40の外側端部41が係合可能な被係合部(係合端部53b)とを有していれば種々の形状であってもよい。したがって、凸部53は、円弧状以外の形状として、点またはブロック状の小さい突起であってもよい。凸部53が小さい突起であれば、より多くのロックスプリング40と係合することが可能になり、リクライニング装置の設計自由度が上がる。
【0097】
(C)
上記の実施形態では、軸部Sが複数(2つ)の凸部53で構成されている例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。軸部Sは、ガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接する外周面S1と、ロックスプリング40と係合する被係合部を有していれば、他の形態でもよい。例えば、本発明の変形例として、軸部Sは、連続した1つのリング状の凸部53にしてリングの周面にロックスプリングの端部が係合可能な穴または突起を設ける形態であってもよい。
【0098】
ただし、穴を設ける構造の場合は、カムにロックスプリングを引っ掛ける際、大きな力が必要になるため、組付け性向上を達成することが難しくなる。また、リング状凸部53の外周面S1に突起を設ける構造の場合には、ロックスプリングの外側端部41がガイドブラケット20のセンター穴22を通して外部から見えなくなる。したがって、組付け性の向上およびロックスプリングの取付けの目視確認の点から、上記の実施形態のように軸部Sは複数の凸部53で構成する方が好ましい。
【0099】
(D)
上記の実施形態では、ガイドブラケット20のセンター穴22は貫通孔である例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、底を有するくぼみでもよい。しかし、センター穴22が貫通孔であればガイドブラケット20の外部からロックスプリングがカム50の凸部53に正常に係合しているか否か目視確認できるので好ましい。
【0100】
(E)
上記実施形態では、ガイドブラケット20がシートクッション2のフレーム2aに固定され、インターナルギヤ30がシートバック3のフレーム3aに固定されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガイドブラケット20およびインターナルギヤ30を入れ替えた配置であってもよい。すなわち、インターナルギヤ30がシートクッション2のフレーム2aに固定され、ガイドブラケット20がシートバック3のフレーム3aに固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 シート
2 シートクッション
2a フレーム
3 シートバック
3a フレーム
4 スライド機構
5 リクライニング装置
6 リクライニング機構
7 コネクトロッド
20 ガイドブラケット
21 本体部
21b 内面(対向面)
22 センター穴
22a 内周面
23 収容部
23a 凹部
30 インターナルギヤ
32 内歯
40 ロックスプリング
50 カム
51 本体部
52 係合突起
53 凸部(軸部)
53a 径方向外側の面(外周面)
53b 係合端部
60A~60D ロックギヤ
63 外歯
70 取付リング
S 軸部
S1 外周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15