(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089348
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】プラスチック用プライマー
(51)【国際特許分類】
C09D 123/26 20060101AFI20240626BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20240626BHJP
C09D 161/28 20060101ALI20240626BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20240626BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240626BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20240626BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
C09D123/26
C09D133/00
C09D161/28
B05D7/02
B05D7/24 302G
B05D7/24 302P
B05D1/36 Z
B32B27/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204647
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】属 皓平
(72)【発明者】
【氏名】松藤 卓典
(72)【発明者】
【氏名】水口 克美
(72)【発明者】
【氏名】堀井 慎一
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AE06
4D075CA22
4D075DA06
4D075DA23
4D075DB31
4D075DB36
4D075EA43
4D075EB13
4D075EB22
4D075EB32
4D075EB38
4D075EB56
4D075EC01
4D075EC11
4F100AA37A
4F100AK01B
4F100AK10A
4F100AK25A
4F100AK36A
4F100AK51A
4F100AL07A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA04
4F100BA07
4F100EH46A
4F100EH46C
4F100EH46D
4F100JA07A
4F100JG01A
4F100JL10C
4F100JN01D
4F100YY00A
4J038CB081
4J038CB171
4J038CG001
4J038CH121
4J038DA161
4J038NA12
4J038PA19
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】
塩素化ポリプロピレンを使用することを少なくして、ポリプロピレン基材への付着性および貯蔵安定性を改善したプラスチック用プライマーの提供。
【解決手段】
本発明は、アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)、酸価0~5である水酸基含有アクリル樹脂(B)、前記水酸基含有アクリル樹脂(B)以外のポリオール(C)およびメラミン樹脂(D)を含有するプラスチック用プライマーであって、
アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が、塩素含有率10~30質量%の塩素化ポリプロピレン部分(a1)と、前記(a1)にグラフトしたアクリル樹脂部分(a2)とを含み、a1/a2の質量比が40/60~80/20であり、重量平均分子量が30,000~100,000を有するものであり、
前記アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が、組成物の全固形分を基準として、20~60質量%の量で含有する、
ことを特徴とするプラスチック用プライマーを提供する。
【選択図】無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)、酸価0~5である水酸基含有アクリル樹脂(B)、前記水酸基含有アクリル樹脂(B)以外のポリオール(C)およびメラミン樹脂(D)を含有するプラスチック用プライマーであって、
アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が、塩素含有率10~30質量%の塩素化ポリプロピレン部分(a1)と、前記(a1)にグラフトしたアクリル樹脂部分(a2)とを含み、a1/a2の質量比が40/60~80/20であり、重量平均分子量が30,000~100,000を有するものであり、
前記アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が、組成物の全固形分を基準として、20~60質量%の量で含有する、
ことを特徴とするプラスチック用プライマー。
【請求項2】
塩素化ポリプロピレン樹脂を含まない、請求項1記載のプラスチック用プライマー。
【請求項3】
更に、ブロックイソシアネート化合物(E)を含有する、請求項1または2記載のプラスチック用プライマー。
【請求項4】
前記アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が、ポリプロピレンにα,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物をグラフト共重合して酸変性ポリプロピレンを得た後、前記酸変性ポリプロピレンを塩素化して酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)とし、次いで、重合開始剤の存在下で、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを含む重合性不飽和モノマーをグラフト重合してアクリル樹脂部分(a2)を形成することにより調製する、請求項1または2記載のプラスチック用プライマー。
【請求項5】
前記アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が、ポリプロピレンにα,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物をグラフト共重合して酸変性ポリプロピレンを得た後、前記酸変性ポリプロピレンを塩素化して酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)とし、次いで前記酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)に水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させてエステル化し、前記酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)に二重結合を導入して二重結合導入塩素化ポリプロピレンを得た後、得られた二重結合導入塩素化ポリプロピレンに重合性不飽和モノマーをグラフト共重合してアクリル樹脂部分(a2)を導入することにより調製する、請求項1または2記載のプラスチック用プライマー。
【請求項6】
前記ポリオール(C)が、水酸基含有アクリル樹脂である、請求項1または2記載のプラスチック用プライマー。
【請求項7】
更に導電性カーボンを含有する、請求項1または2記載のプラスチック用プライマー。
【請求項8】
プラスチック成型品に、請求項1または2に記載のプラスチック用プライマーを塗装し、ついでその塗面に、着色ベース塗料及びクリヤ塗料を塗装することを特徴とするプラスチック成型品の塗装方法。
【請求項9】
プラスチック成型品に、請求項1または2に記載のプラスチック用プライマーを塗装し、ついでその塗面に、着色ベース塗料及びクリヤ塗料を塗装することにより得られる塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック用プライマー、それを用いる塗装方法およびそれから得られた塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品、特にポリプロピレンを主体とするプラスチック製品に塗料で着色する際に、ポリプロピレンへの付着性を確保するために塩素化ポリプロピレンを配合するのが一般的である。塩素化ポリプロピレンは、ポリプロピレンを塩素ガスなどで塩素化することにより形成される樹脂で、ポリプロピレンとの付着性が良い樹脂であるので使用されるが、塩素化ポリプロピレンは塗料に配合される他の樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂や、イソシアネート硬化剤などとの相溶性が悪く、分離や凝集が起こり塗料の貯蔵安定性が乏しい傾向にあった。また、溶剤規制の厳しい地域では、より低VOCのプライマーが必要とされている。
【0003】
塩素化ポリプロピレンの他の樹脂との相溶性を向上するために、塩素化ポリプロピレンを更にグラフト化する技術も存在する。例えば、特許3825241号公報(特許文献1)には、ポリオレフィンにアクリル樹脂でグラフト変性した塩素化ポリオレフィンを使用することが記載されている。しかし、特許文献1の方法では、塩素化ポリオレフィン樹脂が必須の成分として配合されているので、やはりアクリル樹脂との相溶性を長期間保つことができず、それが原因でブツや外観不良、更にはプラスチック製品との付着不良が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、アクリル変性塩素化ポリプロピレンを使用して、グラフト化していない塩素化ポリプロピレンの使用を極力減らして、場合によってはグラフト化していない塩素化ポリプロピレンを使用しないで、ポリプロピレン基材に付着性が優れ、かつ低VOCで、長期貯蔵安定性の優れたプラスチック用プライマーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は以下の態様を提供する:
[1]
アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)、酸価0~5である水酸基含有アクリル樹脂(B)、前記水酸基含有アクリル樹脂(B)以外のポリオール(C)およびメラミン樹脂(D)を含有するプラスチック用プライマーであって、
アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が、塩素含有率10~30質量%の塩素化ポリプロピレン部分(a1)と、前記(a1)にグラフトしたアクリル樹脂部分(a2)とを含み、a1/a2の質量比が40/60~80/20であり、重量平均分子量が30,000~100,000を有するものであり、
前記アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が、組成物の全固形分を基準として、20~60質量%の量で含有する、
ことを特徴とするプラスチック用プライマー。
[2]
塩素化ポリプロピレン樹脂を含まない、[1]記載のプラスチック用プライマー。
[3]
更に、ブロックイソシアネート化合物(E)を含有する、[1]または[2]記載のプラスチック用プライマー。
[4]
前記アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が、ポリプロピレンにα,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物をグラフト共重合して酸変性ポリプロピレンを得た後、前記酸変性ポリプロピレンを塩素化して酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)とし、次いで、重合開始剤の存在下で、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを含む重合性不飽和モノマーをグラフト重合してアクリル樹脂部分(a2)を形成することにより調製する、[1]または[2]記載のプラスチック用プライマー。
[5]
前記アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が、ポリプロピレンにα,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物をグラフト共重合して酸変性ポリプロピレンを得た後、前記酸変性ポリプロピレンを塩素化して酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)とし、次いで前記酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)に水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させてエステル化し、前記酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)に二重結合を導入して二重結合導入塩素化ポリプロピレンを得た後、得られた二重結合導入塩素化ポリプロピレンに重合性不飽和モノマーをグラフト共重合してアクリル樹脂部分(a2)を導入することにより調製する、[1]または[2]記載のプラスチック用プライマー。
[6]
前記ポリオール(C)が、水酸基含有アクリル樹脂である、[1]または[2]記載のプラスチック用プライマー。
[7]
更に導電性カーボンを含有する、[1]または[2]記載のプラスチック用プライマー。
[8]
プラスチック成型品に、[1]または[2]に記載のプラスチック用プライマーを塗装し、ついでその塗面に、着色ベース塗料及びクリヤ塗料を塗装することを特徴とするプラスチック成型品の塗装方法。
[9]
プラスチック成型品に、[1]または[2]に記載のプラスチック用プライマーを塗装し、ついでその塗面に、着色ベース塗料及びクリヤ塗料を塗装することにより得られる塗装物品。
【発明の効果】
【0007】
本発明のプラスチック用プライマーは、塩素化ポリプロピレンを全く使用しない状態でも、ポリプロピレン基材に対する付着性が優れていて、かつ貯蔵安定性も優れている。本発明では、プラスチック用プライマーにメラミン樹脂を加えることで、分散性が向上し、低粘度かつ高固形分を達成することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のプラスチック用プライマーは、アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)、酸価0~5であるアクリルポリオール(B)、前記アクリルポリオール(B)以外のポリオール(C)およびメラミン樹脂(D)を含有することを特徴とする。各成分について、説明する。
【0009】
アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)
アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)は、塩素含有率10~30質量%の塩素化ポリプロピレン部分(a1)と、前記(a1)にグラフトしたアクリル樹脂部分(a2)とを含み、a1/a2の質量比が40/60~80/20であり、重量平均分子量が30,000~100,000を有するものである。このアクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)は、ポリプロピレンにα,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物をグラフト共重合して酸変性ポリプロピレンを得た後、その酸変性ポリプロピレンを塩素化して酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)とし、次いで、重合開始剤の存在下で、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを含む重合性不飽和モノマーをグラフト重合してアクリル樹脂部分(a2)とする方法や、該酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)に水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させてエステル化し、酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)に二重結合を導入して二重結合導入塩素化ポリプロピレンを得た後、該二重結合導入塩素化ポリプロピレンに重合性不飽和モノマーをグラフト共重合してアクリル樹脂部分(a2)を導入する方法等がある。
【0010】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0011】
前記α,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸またはこれら不飽和カルボン酸の無水物が挙げられ、なかでも特にマレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。これらはそれぞれ単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0012】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の1個の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、なかでも特に、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらはそれぞれ単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0013】
前記重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アルキルポリエチレングリコール(メタ)アクリルレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどのアクリル系モノマー;さらにスチレンなどが挙げられ、なかでも特に、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。これらはそれぞれ単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0014】
前記グラフト共重合及びエステル化反応は、それ自体既知の方法で行うことができる。
【0015】
前記重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイドのような過酸化物系開始剤やアゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系開始剤を好ましく使用することができる。
【0016】
アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)は、前述のように、塩素含有率10~30質量%の塩素化ポリプロピレン部分(a1)と、その塩素化ポリプロピレン部分(a1)にグラフとしたアクリル樹脂部分(a2)とが、a1/a2の質量比が40/60~80/20であり、またアクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)は重量平均分子量が30,000~100,000を有するものである。
【0017】
アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)の塩素化ポリプロピレン部分(a1)の塩素含有率は、塩素化ポリプロピレン部分(a1)中の塩素の量比であり、10~30質量%、好ましくは15~30質量%、より好ましくは15~25質量%である。塩素化ポリプロピレン部分(a1)の塩素含有率が10質量%より少ないと、塗料の配合成分との相溶性が不足する。逆に、塩素含有率が30質量%を超えると、ポリプロピレン基材に対する付着性が不足し剥離の欠点を有する。塩素化ポリプロピレン部分(a1)とアクリル樹脂部分(a2)との質量比(a1/a2)は、40/60~80/20、好ましくは50/50~70/30、より好ましくは60/40~70/30である。この質量比が、40/60より少ないと、アクリル樹脂部分(a2)のグラフト化が十分ではなく、基材との密着不良の欠点を有する。逆に、a1/a2の比率が80/20を超えると、分離や沈降などの塗料の貯蔵安定性の欠点を有する。アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)の重量平均分子量は、30,000~100,000の範囲であり、好ましくは60,00~90,000の範囲であり、より好ましく70,000~80,000の範囲である。アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)の重量平均分子量が30,000より少ないと、付着性、耐水性の欠点を有し、100,000を超えると、高粘度になり平滑性などの塗装外観の欠点を有する。
【0018】
本発明のアクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)は、組成物の全樹脂固形分を基準として、20~60質量%、好ましくは30~50質量%、より好ましくは30~40質量%の量で組成物中に存在する。アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が組成物中に20質量%より少ないと、(オレフィン成分が不足するため)ポリプロピレン基材との密着性が不足し剥離が発生し、60質量%より多いと、貯蔵安定性が悪くなる。
【0019】
酸価0~5である水酸基含有アクリル樹脂(B)
水酸基含有アクリル樹脂(B)は、水酸基含有アクリルモノマー(b)を含む1種以上のアクリルモノマーの重合体であり、水酸基含有アクリルモノマー(b)は、(メタ)アクリル酸と炭素数2以上8以下の2価アルコールとのモノエステル化合物である。また、水酸基含有アクリル樹脂(B)は、酸価が0~5mgKOH/gであることを必須とし、その他の特性、例えば重量平均分子量は、5,000以上15,000以下であり、ガラス転移温度は10℃以上50℃以下であり、水酸基価は10mgKOH/g以上60mgKOH/g以下であり得る。
【0020】
水酸基含有アクリル樹脂(B)は、水酸基含有アクリルモノマー(b)を含む1種以上のモノマーを常法に従って重合することによって得られる。
【0021】
水酸基含有アクリルモノマー(b)として、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2以上8以下の2価アルコールとのモノエステル化物である。
【0022】
水酸基含有アクリル樹脂(B)は、水酸基含有アクリルモノマー(b)と水酸基含有アクリルモノマー(b)以外の他のアクリルモノマーとの重合体であってよく、この態様において、水酸基含有アクリル樹脂(B)は、水酸基含有アクリルモノマー(b)と上記他のアクリルモノマーとのモノマー混合物を重合することにより得られ、水酸基含有アクリルモノマー(b)と他のアクリルモノマーとの合計中、水酸基含有アクリルモノマー(b)が5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0023】
水酸基含有アクリルモノマー(b)以外の他のアクリルモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、クロトン酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、イソクロトン酸、α-ハイドロ-ω-((1-オキソ-2-プロペニル)オキシ)ポリ(オキシ(1-オキソ-1,6-ヘキサンジイル))、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、3-ビニルサリチル酸、3-ビニルアセチルサリチル酸、2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等の酸基含有アクリルモノマーが挙げられる。
【0024】
また、水酸基含有モノマー(b)以外の他のモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニル等)、重合性芳香族化合物(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルケトン、t-ブチルスチレン、パラクロロスチレン及びビニルナフタレン等)、重合性ニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、α-オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、ジエン(例えば、ブタジエン、イソプレン等)等が挙げられる。
【0025】
水酸基含有アクリルモノマー(b)は、1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。また、水酸基含有アクリルモノマー(b)以外の他のモノマーは、1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
水酸基含有アクリル樹脂(B)の重量平均分子量は、例えば5,000以上であってよく、15,000以下であってよい。重量平均分子量は、例えば、ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により決定してよい。
【0027】
水酸基含有アクリル樹脂(B)のガラス転移温度は、例えば、10℃以上であってよく、50℃以下であってよい。ガラス転移温度は、既知の方法により、実測又は計算したものであってよい。例えば、ガラス転移温度は、JIS K 7121に準拠して、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定してよい。
【0028】
水酸基含有アクリル樹脂(B)の水酸基価は、例えば、10mgKOH/g以上であってよく、60mgKOH/g以下であってよい。また、水酸基含有アクリル樹脂(B)の酸価は、例えば、0mgKOH/g以上であってよく、5mgKOH/g以下であってよい。水酸基価及び酸価は、既知の方法により、実測又は計算したものであってよい。例えば、水酸基価及び酸価は、JIS K 0070:1992に準拠して測定してよい。本発明では、水酸基含有アクリル樹脂(B)は酸価0~5を必須要件とする。即ち、酸価が低い水酸基含有アクリル樹脂を用いることを意味する。酸価が多く存在すると、導電性カーボン顔料の分散性が悪くなり顔料凝集などの欠点を有する。
【0029】
水酸基含有アクリル樹脂(B)は、2種以上を併用してよい。水酸基含有アクリル樹脂(B)のプラスチック用プライマーの塗料組成物中の含有量は特に限定されず、例えば、プラスチック用プライマーの塗料樹脂固形分中、15質量%以上40質量%以下であってよく、20質量%以上であってよく、35質量%以下であってよい。水酸基含有アクリル樹脂(B)が15質量%より少ないと、経時で導電性が低下するなど塗料の安定性が低下し、40質量%より多いと、ポリプロピレン基材との密着性が低下する。
【0030】
水酸基含有アクリル樹脂(B)以外のポリオール(C)
このポリオール(C)は、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であって、上記した(A)成分及び(B)成分は含まれない。具体的には、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリエステル樹脂及びアクリル樹脂などが好適に使用できる。この樹脂を配合することにより目的とする粘度の塗料を設計することができかつ酸化の高い樹脂を配合することによりリコート性が向上する。本明細書中において、「リコート性」は本明細書に記載の方法で複層塗膜を形成した後に、欠陥を検出し、それを補修するために欠陥部分を研磨した後、形成した複層塗膜と同じ塗装方法を繰り返して補修する工程での、作業性あるいは層間付着性を意味する。
【0031】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、例えば、多塩基酸と多価アルコールとをそれ自体既知の方法で、水酸基過剰でエステル化反応せしめることによって得ることができる。多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ピロメリット酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ハイミック酸、コハク酸、ヘット酸及びこれらの無水物などがあげられ屡。多価アルコールは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であって、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどがあげられる。水酸基の導入は、例えば、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールを併用することによって行なうことができる。また、ポリエステル樹脂として、大豆油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸などの脂肪酸などで変性された脂肪酸変性ポリエステル樹脂も使用できる。
【0032】
水酸基含有ポリエステル樹脂の水酸基価は10~100、特に50~85、酸価は50以下、特に1~30、数平均分子量は1,000~5,000、特に2,000~4,000の範囲内が適している。
【0033】
水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有単量体、アクリル系単量、さらに必要に応じてその他の単量体を重合することによって得られる。水酸基含有単量体は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合を有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数が2~10アルキレングリコールとのモノエステル化物があげられる。アクリル系単量は、(メタ)アクリル酸と炭素数が1~20モノアルコールとのモノエステル化物があげられ、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどがあげられる。その他の単量体は、この水酸基含有単量体及びアクリル系単量以外の、1分子中に1個以上の重合性不飽和結合を有する化合物であり、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニルなどがあげられる。これらの単量体の重合反応は既知の方法、例えば、溶液重合などにより行なうことができる。水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は10~100、特に50~80、酸価は5を超えて50以下、特に15~30、重量平均分子量は4,000~20,000、特に5,000~12,000の範囲内が適している。高酸価のポリオール成分を含有することで極性効果による下地への付着性が向上する。特に、塗装後の塗膜を補修した後のリコート付着性が向上する。
【0034】
本発明のプラスチック用プライマーは、アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)、酸価0~5であるアクリルポリオール(B)および前記アクリルポリオール(B)以外のポリオール(C)を必須成分として含有しており、これらの各成分の構成比率は目的に応じて任意に選択できるが、例えば、この3成分の合計固形分量を基準に、(A)成分は20~80質量%、特に40~60質量%、(B)成分は20~40質量%、特に30~40質量%、(C)成分は10~50質量%、特に10~30質量%の範囲内が適している。
【0035】
メラミン樹脂(D)
本発明では、メラミン樹脂(D)を添加することにより、成分の分散性が向上することが解った。メラミン樹脂(D)としては、例えば、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られる部分又は完全メチロール化メラミン樹脂を使用することができる。上記アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられ、なかでもホルムアルデヒドを好適に使用することができる。また、前記部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したアルキルエーテル化メラミン樹脂も使用することができる。
【0036】
メラミン樹脂(D)のプラスチック用プライマーへの配合量は、上記成分(A)~(C)の合計の固形分量を基準に、3~15質量%、好ましくは5~15質量%、より好ましくは5~10質量%である。メラミン樹脂(D)が3質量%より少ないと、目標とするプラスチック用プライマーの不揮発分30%での粘度が高くなり、塗装後の外観が悪い。また分散性が低下し、組成物の貯蔵安定性が若干悪くなる。メラミン樹脂(D)が20質量%より多くなるとPP素材との密着性が低下し塗膜性能が低下する。
【0037】
ブロックイソシアネート化合物(E)
本発明のプラスチック用プライマーには、塗料成分を架橋するために、ブロックイソシアネート化合物(E)を含有する。ブロックイソシアネート化合物(E)を水酸基含有アクリル樹脂(B)やポリオール(C)と共に用いることにより、塗膜強度が上がり、付着性や耐水性能が向上する。
【0038】
ブロックイソシアネート化合物(E)は、ポリイソシアネートを、ブロック剤でブロック化することによって調製することができる。
【0039】
ポリイソシアネートとして、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、ペンタメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環式ポリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物等);が挙げられる。
【0040】
ブロック剤として、例えば、n-ブタノール、n-ヘキシルアルコール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノール等の一価のアルキル(又は芳香族)アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル等のセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノール等のポリエーテル型両末端ジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のジオール類と、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等のジカルボン酸類とから得られるポリエステル型両末端ポリオール類;パラ-t-ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;及びε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムに代表されるラクタム類が好ましく用いられる。ブロック剤としては、活性水素化合物であるメチルジケトン、メチルケトエステルおよびメチルジエステル化合物、例えばアセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル等のアルキルエステルを用いてもよい。また、イミダゾール化合物、ピラゾール化合物によるブロックイソシアネートを用いてもよい。
【0041】
ブロックイソシアネート化合物(E)のブロック化率は100%であるのが好ましい。これにより、プライマー塗料組成物の貯蔵安定性がより良好になるという利点がある。
【0042】
ブロックイソシアネート化合物(E)は、2種以上を併用してよい。
ブロックイソシアネート化合物(E)の含有量は特に限定されないが、より適切に硬化反応を促進させる観点から、水酸基含有アクリル樹脂(B)およびポリオール(C)の水酸基のモル数に対するブロックイソシアネート化合物(C)のイソシアネート基のモル数との比(NCO/OH)は、0.2/1.0~0.6/1.0であってよく、好ましく0.3/1.0~0.5/1.0である。
【0043】
本発明のプラスチック用プライマーは、ブロックイソシアネート化合物(E)以外の硬化剤として、グアナミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂を含み得る。ブロックイソシアネート化合物(E)以外の他の硬化剤を含む場合、当該他の硬化剤の含有量は、プラスチック用プライマー塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、例えば、5質量部以上20質量部以下である。
【0044】
その他の成分
本発明のプラスチック用プライマーは、これらの(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分および(E)成分を有機溶剤に溶解又は分散することにより得られるが、さらに必要に応じて着色顔料、体質顔料、触媒などを含有させることも可能である。
【0045】
着色顔料として、酸化チタン、カーボンブラック、黄鉛、黄土、黄色酸化鉄、ハンザエロー、ピグメントエロー、クロムオレンジ、クロムバーミリオン、パーマネントオレンジ、アンバー、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン、ファストバイオレット、メチルバイオレットレーキ、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、ピグメントグリーン、ナフトールグリーンなどのソリッドカラー顔料などがあげられるが、これらのみに限定されない。これらは1種もしくは2種以上が使用できる。本発明のプラスチック用プライマーは、導電性を付与するために、カーボンブラック(導電性カーボンともいう。)を含有するのが好ましい。
【0046】
本発明のプラスチック用プライマーは、不揮発分が30%以上で粘度13~15秒/フォードカップ#4/20°Cに調整し、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装、浸漬塗装などによりプラスチック成型品に塗装することができる。塗装膜厚は、硬化塗膜に基いて5~20μmの範囲内が適している。本プライマーは低VOCで塗装に適した低粘度塗料で高外観の塗膜を形成する。また、本プライマーの塗膜自体は、60~120°C、好ましくは80~100°Cで、5~40分間程度加熱することにより3次元に架橋反応した硬化塗膜を形成することができる。
【0047】
プラスチック用プライマーの使用
本発明は、また、プラスチック成型品に本発明のプラスチック用プライマーを塗装し、ついでその塗面に、着色ベース塗料及びクリヤ塗料を塗装することを特徴とするプラスチック成型品の塗装方法および塗装物品を提供する。
【0048】
具体的には、上記塗装方法は、本発明のプラスチック用プライマーをプラスチック成型品に上記のようにして塗装し、その塗膜を硬化させてから、又は硬化させることなく、その塗面に上塗り塗料を塗装することによって行われる。
【0049】
上塗り塗料は、本プライマーの硬化又は未硬化の塗面に塗装する塗料であり、既知のプラスチック用塗料が使用でき、例えば、水酸基含有アクリル樹脂を含有する着色ベース塗料及び2液型アクリル樹脂系クリヤ塗料をあげることができ、この両塗料を塗装して得られる複層の上塗り塗膜が特に好適である。
【0050】
着色ベース塗料は、水酸基含有アクリル樹脂及び着色顔料を含有しており、これらを有機溶剤に混合してなる着色塗膜を形成する塗料であって、ブロックイソシアネート化合物やメラミン樹脂等の硬化剤を含んでもよい。また、イソシアネートを含む二液塗料であってもよい。更に、水性着色ベース塗料でもよい。
【0051】
水酸基含有アクリル樹脂としては、上記の本発明プラスチック用プライマーのポリオール樹脂(C)として例示した、水酸基含有単量体、アクリル系単量、さらに必要に応じてその他の単量体を重合することによって得られる水酸基含有アクリル樹脂が好適に使用でき、水酸基価は20~100、特に40~60、酸価は20下、特に5~10、重量平均分子量は4000~40000、特に6000~20000の範囲内が適している。
【0052】
着色顔料としては、本発明のプラスチック用プライマーで例示したソリッドカラー顔料に加え、さらにアルミニウム、酸化アルミニウム、蒸着アルミニウムなどの光輝性のメタリック顔料、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母フレークなどの光干渉性顔料なども包含しており、従って、着色ベース塗料による塗膜はソリッドカラー調塗膜、メタリック調塗膜、光干渉調塗膜を形成することができる。
【0053】
着色ベース塗料は、粘度10~20秒/フォードカップ#4/20°Cに調整し、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装、浸漬塗装などにより、プラスチック成型品の硬化又は未硬化の本プライマーの塗膜面に塗装することができる。塗装膜厚は、硬化塗膜に基いて10~40μmの範囲内が適している。着色ベース塗料(Y)の塗膜自体は、加熱しても3次元に架橋反応した硬化塗膜を形成することがない。
【0054】
2液型アクリル樹脂系クリヤ塗料は、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネートを含有する、無色透明又は有色透明の塗膜を形成する系クリヤ塗料である。
【0055】
クリヤ塗料におけるアクリル樹脂は、水酸基価が100~180、好ましくは120~140で、かつ重量平均分子量が4,000~20,000、好ましくは6000~8000の範囲内のアクリル樹脂である。
【0056】
具体的には、例えば、水酸基含有不飽和単量体及びアクリル系単量体、さらに必要に応じてその他の不飽和単量体併用して共重合せしめることによって調製することができる。
【0057】
水酸基含有不飽和単量体は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和二重結合をそれぞれ1個以上有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が2~10のアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸との等モル付加物があげられる。
【0058】
アクリル系単量体は、メタ)アクリル酸と炭素数が1~24のモノアルコールとのモノエステル化物であって、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどがあげられる。
【0059】
その他の不飽和単量体は、上記の水酸基含有不飽和単量体及びアクリル系単量体以外であって、しかも1分子中に1個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5-カルボキシペンチル(メタ)アクリレートなどのカルボキシル基含有不飽和化合物;グリシジル(メタ)アクリレート,アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基カルボキシル基含有不飽和化合物;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレ-ト、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどのパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、α-クロルスチレンなどのビニル芳香族化合物;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド類;2-ビニルピリジン、1-ビニル-2-ピロリドン、4-ビニルピリジンなどの芳香族含窒素モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の重合性ニトリルなどがあげられる。これらは単独で、又は2種以上複数で使用することができる。
【0060】
アクリル樹脂は、上記の水酸基含有不飽和単量体、アクリル系単量体、さらに必要に応じてその他の不飽和単量体を併用し、溶液重合などの既知の方法により共重合せしめることによって調製することができる。
【0061】
ポリイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、このイソシアネート基は実質的ブロックされておらず、遊離の状態で使用される。具体的には、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物及び芳香族ポリイソシアネート化合物などから選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。このうちは、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び脂環式ポリイソシアネート化合物としては上記の本プライマーで説明したものが好適に使用することができる。芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、日フェニレンジイソシアネートなどがあげられる。また、これらのポリイソシアネート化合物とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ポリアルキレングリコール、トリメチロ-ルプロパン、ヘキサントリオ-ルなどのポリオールの水酸基に対してイソシアネート基が過剰量となる比率で反応させてなる生成物、これらのビューレットタイプ付加物、イソシアヌル環タイプ付加物などもポリイソシアネートとして使用できる。
【0062】
クリヤ塗料は、上記のアクリル樹脂及びポリイソシアネートを含有してなる無色透明又は有色透明塗膜を形成する塗料であり、さらに必要に応じて、上記した着色顔料を透明性を阻害しない程度に含有せしめることができ、これらを有機溶剤に混合せしめることにより得られ。
【0063】
クリヤ塗料における各成分の比率は目的に応じて任意に選択できるが、上記のアクリル樹脂及びポリイソシアネート合計固形分比で前者は50~90質量%、特に60~80質量%、後者成分は10~50質量%、特に20~40質量%の範囲内が好ましい。
【0064】
クリヤ塗料において、アクリル樹脂の水酸基とポリイソシアネートのイソシアネート基とは室温で反応しやすいので、長時間保存する場合はこの両成分をあらかじめ分離しておき、塗装直前に混合して使用することが好ましい。
【0065】
クリヤ塗料は、粘度14~18秒/フォードカップ#4/20°Cに調整し、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装、浸漬塗装などにより、着色ベース塗料の未硬化の塗面に塗装することができる。塗装膜厚は、硬化塗膜に基いて15~80μmの範囲内が適している。クリヤ塗料の塗膜自体は、室温~120°C、好ましくは80~100°Cで、5~60分間程度加熱することにより3次元に架橋反応した硬化塗膜を形成することができる。
【0066】
クリヤ塗料を、着色ベース塗料の未硬化の塗面に塗装すると、クリヤ塗料の塗膜中に含まれるポリイソシアネート化合物が着色ベース塗料の未硬化塗膜中に浸透して着色ベース塗料の塗膜も同時に3次元に架橋硬化させることができる。すなわち、着色ベース塗料を塗装し、その未硬化塗面にクリヤ塗料を塗装し、次いで室温~120°C、好ましくは80~100°Cで、5~60分間程度加熱することにより、この両塗膜を同時に3次元に架橋硬化反応した複層上塗り塗膜を形成することができる。
【0067】
したがって、本発明の塗装方法によれば、プライマー塗膜及び上塗り塗膜は、120°C以下、好ましくは80~100°Cで、5~60分間程度加熱することによって硬化させることができるので、被塗物としてのプラスチック成型品が熱変形又は変質することは全くない。
【0068】
そして、この塗装工程でゴミ、ブツが発生しても、両塗膜を硬化してから、3~7日またはそれ以上経過してから、その部分を研磨除去し、その部分及び周辺部に高酸価のポリオール樹脂(C)を含む本プライマー、着色ベース塗料及びクリヤ塗料を用いて補修塗装して形成した塗膜においてリコート付着性が顕著に優れていた。これは本プライマーに含まれる高酸価の樹脂の極性が高く初期塗膜のクリヤと強く結合していると思われる。
【実施例0069】
以下に、本発明に関する実施例及び比較例について説明する。部及び%はいずれも質量を基準にしており、また塗膜の膜厚は硬化塗膜についてである。
【0070】
(製造例1)アクリル変性塩素化ポリプロピレンA-1の製造方法
攪拌羽根、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた反応容器にトルエン630部とシクロヘキサン180部とノルマルブタノール45部の混合溶液を仕込み、続いて無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(塩素含有率22%、重量平均分子量5万、無水マレイン酸3%)を315部仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌下120℃まで昇温し、溶解した。次に、2-ヒドロキシメチルメタクリレート30部、メタクリル酸メチル60部、シクロヘキシルメタクリレート60部、2-エチルヘキシルアクリレート60部からなる重合性モノマー混合物と、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサナート6部をノルマル酢酸ブチル60部に溶解した溶液とを、内部攪拌にてそれぞれ3時間かけて滴下した。次いで、滴下終了後、120℃の状態で1時間熟成反応を行ったのち、さらに、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサナート0.2部をノルマル酢酸ブチル60部に溶解した溶液を、1時間かけて反応容器に滴下した。いずれの場合も内部攪拌状態と液温120℃を維持していた。その後、攪拌しながら、120℃で2時間熟成し、室温まで冷却し取り出した。得られたアクリル変性塩素化ポリプロピレンA-1の不揮発分は35%で、ポリスチレン換算でのGPC測定における重量平均分子量(Mw)は8万であった。
【0071】
(製造例2)アクリル変性塩素化ポリプロピレンA-2の製造方法
攪拌羽根、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた反応容器にトルエン630部とシクロヘキサン180部とノルマルブタノール45部の混合溶液を仕込み、続いて無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(塩素含有率22%、重量平均分子量5万、無水マレイン酸3%)を262.5部仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌下120℃まで昇温し、溶解した。次に、2-ヒドロキシメチルメタクリレート30部を仕込み、120℃を保ったまま1時間反応させた。次に、メタクリル酸メチル82.5部、シクロヘキシルメタクリレート82.5部、2-エチルヘキシルアクリレート67.5部からなる重合性モノマー混合物と、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサナート7.5部をノルマル酢酸ブチル60部に溶解した溶液とを、内部攪拌にてそれぞれ3時間かけて滴下した。次いで、滴下終了後、120℃の状態で1時間熟成反応を行ったのち、さらに、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサナート0.2部をノルマル酢酸ブチル60部に溶解した溶液を、1時間かけて反応容器に滴下した。いずれの場合も内部攪拌状態と液温120℃を維持していた。その後、攪拌しながら、120℃で2時間熟成し、室温まで冷却し取り出した。得られたアクリル変性塩素化ポリプロピレンA-2の不揮発分は35%で、ポリスチレン換算でのGPC測定における重量平均分子量は7.5万であった。
【0072】
(製造例3)アクリル変性塩素化ポリプロピレンA-3の製造方法
攪拌羽根、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた反応容器にトルエン660部とシクロヘキサン210部とノルマルブタノール60部の混合溶液を仕込み、続いて無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(塩素含有率22%、重量平均分子量5万、無水マレイン酸3%)を360部仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌下120℃まで昇温し、溶解した。次に、2-ヒドロキシメチルメタクリレート12部を仕込み、120℃を保ったまま1時間反応させた。次に、メタクリル酸メチル27部、シクロヘキシルメタクリレート27部、2-エチルヘキシルアクリレート24部からなる重合性モノマー混合物と、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサナート3部をノルマル酢酸ブチル60部に溶解した溶液とを、内部攪拌にてそれぞれ3時間かけて滴下した。次いで、滴下終了後、120℃の状態で1時間熟成反応を行ったのち、さらに、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサナート0.2部をノルマル酢酸ブチル60部に溶解した溶液を、1時間かけて反応容器に滴下した。いずれの場合も内部攪拌状態と液温120℃を維持していた。その後、攪拌しながら、120℃で2時間熟成し、室温まで冷却し取り出した。得られたアクリル変性塩素化ポリプロピレンA-3の不揮発分は30%で、ポリスチレン換算でのGPC測定における重量平均分子量は7万であった。
【0073】
(製造例4)アクリル変性塩素化ポリプロピレンA-4の製造方法
攪拌羽根、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた反応容器にトルエン735部とシクロヘキサン210部とノルマルブタノール60部の混合溶液を仕込み、続いて無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(塩素含有率22%、重量平均分子量5万、無水マレイン酸3%)を319部仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌下120℃まで昇温し、溶解した。次に、2-ヒドロキシメチルメタクリレート6部を仕込み、120℃を保ったまま1時間反応させた。次に、メタクリル酸メチル17部、シクロヘキシルメタクリレート17部、2-エチルヘキシルアクリレート16部からなる重合性モノマー混合物と、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサナート2部をノルマル酢酸ブチル60部に溶解した溶液とを、内部攪拌にてそれぞれ3時間かけて滴下した。次いで、滴下終了後、120℃の状態で1時間熟成反応を行ったのち、さらに、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサナート0.2部をノルマル酢酸ブチル60部に溶解した溶液を、1時間かけて反応容器に滴下した。いずれの場合も内部攪拌状態と液温120℃を維持していた。その後、攪拌しながら、120℃で2時間熟成し、室温まで冷却し取り出した。得られたアクリル変性塩素化ポリプロピレンA-4の不揮発分は30%で、ポリスチレン換算でのGPC測定における重量平均分子量は6.5万であった。
【0074】
(製造例5)水酸基含有アクリル樹脂B-1の製造方法
攪拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入口および冷却管を備えた反応装置に、酢酸ブチルを288部仕込み、窒素ガスを導入しながら、攪拌下で120℃まで昇温した。この反応装置に、2-エチルヘキシルアクリレート82部、メチルメタクリレート392部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート65部、n-ブチルアクリレート60部からなる混合物と、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート35部を酢酸ブチル30部に溶解した溶液とを、3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成させた。その後、この反応装置に、さらにt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート1部を酢酸ブチル30部に溶解した溶液を、1時間かけて滴下した。反応装置内を120℃に保ったまま2時間熟成して、反応を完了し、水酸基含有アクリル樹脂B-1を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂B-1の不揮発分は63%、重量平均分子量は7,500、ガラス転移温度は40℃であった。水酸基価(OHV)と酸価(AV)は、モノマー配合からそれぞれ47と0と算出された。
【0075】
(製造例6)水酸基含有アクリル樹脂B-2の製造方法
攪拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入口および冷却管を備えた反応装置に、酢酸ブチルを288部仕込み、窒素ガスを導入しながら、攪拌下で120℃まで昇温した。この反応装置に、メタクリル酸5部、2-エチルヘキシルアクリレート83部、メチルメタクリレート387部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート65部、n-ブチルアクリレート60部からなる混合物と、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート35部を酢酸ブチル30部に溶解した溶液とを、3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成させた。その後、この反応装置に、さらにt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート1部を酢酸ブチル30部に溶解した溶液を、1時間かけて滴下した。反応装置内を120℃に保ったまま2時間熟成して、反応を完了し、水酸基含有アクリル樹脂B-2を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂B-2の不揮発分は63%、重量平均分子量は7,500、ガラス転移温度は40℃であった。水酸基価(OHV)と酸価(AV)は、モノマー配合からそれぞれ47と5と算出された。
【0076】
ポリオール樹脂はC-1の準備
ポリオール樹脂(C)としては、下記に示す市販のアクリル樹脂を使用した。
ポリオール樹脂(C-1):三菱ケミカル社製 ダイヤナールHR-2077(OHV=75、AV=20、Мw=11,500)
【0077】
<実施例1~8および比較例1~4>
下記表1に記載の溶剤プライマー塗料の配合に従い水酸基含有アクリル樹脂(B-1)、メラミン樹脂(D)および顔料(導電カーボン、酸化チタン、体質顔料)およびカーボン分散剤を配合し、サンドミルで粒度が10-30μの範囲に入るまで分散し、得られた分散ペーストにアクリル変性塩素化ポリプロピレン樹脂(A-1)、ポリオール樹脂(C-1)、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート化合物(D)を攪拌しながら加え、キシレンで固形分が30%になるように調整した。なお表中の単位は質量部であり樹脂の合計100質量部に対する量を表す。また顔料の単位は塗料中全固形分100に対する量(PWC)であり、カーボン分散剤は塗料中樹脂固形分100に対する添加量を表す。
【0078】
以下同じ方法で配合量のみで変化させ、表1に従い溶剤プライマー塗料の実施例2~8と比較例1~4を製造した。
【0079】
(塗装塗料の準備)
実施例1~8および比較例1~4の塗料の温度を20℃に合わせた状態でフォードカップNo.4にて粘度を測定した。そのときの秒数が15秒以下で○、それよりも大きい場合は×として、塗装してもきれいな外観にならないため、評価を中止した。表1では、塗料の粘度(不揮発分30%)と表示した。
【0080】
(塗装物品の作製)
イソプロピルアルコールでワイピングしたポリプロピレン樹脂製基材(70mm×150mm×3mm)の表面に、25℃/70%相対湿度(RH)の環境下で、スプレーガン「ワイダ-71」(アネスト磐田社製)により、実施例1のプライマー塗料をスプレー塗装(乾燥膜厚10μm)し、室温で5分間セッティングした。その上に、スプレーガン「ワイダ-71」(アネスト岩田製)によりベース塗料組成物(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製のR-333シルバーメタリック塗料)を乾燥膜厚15μmになるように塗装し、室温で5分間セッティングした。さらにその上に、ロボベル951を使用してクリヤ塗料組成物(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製のR-2550-1及び硬化剤H-2550の混合物)を塗装(ガン距離:200mm、ガン速度:700mm/s、回転数:25000rpm、シェーピングエアー圧:0.07MPa)条件下でスプレー塗装(乾燥膜厚25μm)した。その後、10分間セッティングした後、80℃で30分間乾燥し、実施例1の塗装物品を作製した。
【0081】
表1に示す実施例2~10および比較例1~2と4のプラスチック用プライマー塗料組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2~8および比較例1~2と4の塗装物品を得た。比較例3は不揮発分30%では、プライマー塗料の粘度が15秒以上のため、塗膜の評価を中止した。
【0082】
得られた溶剤プライマー塗料組成物及び塗装物品を用いて、以下の要領で、耐水後の付着性、初期通電性、塗膜の明度、補修時のリコート付着性および貯蔵安定性、長期彫像安定性の評価を実施し、表2に示す。表2には、塗装塗料の準備の欄で塗料の粘度(不揮発分30%)も記載している。
【0083】
(耐水後の付着性)
塗装物品から得られた試験片の塗膜について40℃の温水に10日間浸水させたあと、試験片を取り出し、JIS K5600-5-6:1999に準拠して、碁盤目セロテープ(登録商標)剥離試験を1時間以内に行った。2mm角の100個の碁盤目を用意し、セロハンテープ剥離試験を行い、剥がれた碁盤目数を数えた。この試験はポリプロピレン樹脂基材との付着性を表している。
評価基準は以下の通りであり、〇を合格、×を不合格とした。
〇:0/100(剥離なし)
×:1/100~100/100(剥離あり)
【0084】
(塗膜の通電性:初期および貯蔵後)
イソプロピルアルコールでワイピングしたポリプロピレン樹脂製基材(70mm×150mm×3mm)の表面に、25℃/70%相対湿度(RH)の環境下で、スプレーガン「ワイダ-71」(アネスト磐田社製)により、実施例1~8、比較例1~2と4の溶剤プライマー塗料をそれぞれスプレー塗装(乾燥膜厚10μm)し、室温で1分間放置、溶剤プライマーの塗面の表面電気抵抗値をSIMCO社製、商品名「ST-4」で測定し初期値とした。同様にそれぞれの溶剤プライマー塗料を50℃で、10日と20間保管した塗料と室温1ヵ月と6ヵ月保管した塗料、それぞれの塗膜の通電性を評価した。
判断基準は以下の通りである。表2では、初期通電性、貯蔵安定性の通電性、長期貯蔵安定性の通電性の項目として表示している。
〇: 100MΩ/cm2 未満
×: 100MΩ/cm2 以上
【0085】
(塗膜の明度)
イソプロピルアルコールでワイピングしたポリプロピレン樹脂製基材(70mm×150mm×3mm)の表面に、25℃/70%相対湿度(RH)の環境下で、スプレーガン「ワイダ-71」(アネスト磐田社製)により、実施例1~8、比較例1~2と4の溶剤プライマー塗料をそれぞれスプレー塗装(乾燥膜厚10μm)し室温で5分間セッティングした後、80℃で30分間乾燥させた塗装物品をミノルタ社製 商品名「CR-400」でL値を測定した。
判断基準は以下の通りである。
○: L値が40以上
×: L値が40未満
【0086】
(補修後のリコート付着性)
実施例1~8と比較例1~2と4の塗装物品を室温で10日間放置し、その塗装物品上に再度、塗装物品の作成と同様の方法でそれぞれのプライマーを塗装し、着色ベース塗料、クリヤ塗料を塗装し、同様の条件にて乾燥し、リコート付着性用の塗装物品を作成し、ポリプロピレン基材との付着性評価方法に従い耐水後の付着性を評価した。評価基準は同様とした。
【0087】
(溶剤プライマー塗料の貯蔵後の粒度、粘度測定)
得られたプライマー塗料を室温で1カ月、50℃恒温で10日(表2中の貯蔵安定性)、およびプライマー塗料を50℃恒温で20日、および6カ月(表2中の長期貯蔵安定性)静置した後、それぞれの溶剤プライマー300ccを10分間攪拌後、グラインドゲージを用いて粒度を、温度を20℃に合わせ、フォードカップNo.4を用いて粘度を測定し、製造初期の粒度および粘度を比較した。
判断基準は以下のとおりである。
○: 粒度の変化がなく かつ 粘度の変化が±20%以下
×: 粒度変化が2倍以上 または 粘度の変化が±50%以上
△: 粒度変化が2倍未満 かつ 粘度変化が±50%未満
【0088】
【0089】
表1中の原料について説明する。
・メラミン樹脂(D) Prefere Resins社製 Resimene CE-7103
・ブロックイソシアネート化合物(E):旭化成社から市販のMF-K60B
*1 日本製紙社製 スーパークロン892L(無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン:Mw=80,000、塩素化率=22%、無水マレイン酸=2%)
*2 東都化成社製 エポトートYD-011-X75(エポキシ樹脂)
*3 旭化成社製 MF-K60B(活性メチレンブロックイソシアネート)
*4 オリオン社製 プリンテックスXE-2B(導電性カーボン)
*5 石原産業社製 タイペークCR-95(酸化チタン)
*6 日本タルク社製 ミクロエース P-4(タルク)
*7 日本ルブリゾール社製 ソルスパース5000(カーボン分散剤)
【0090】
【0091】
このように、本開示に係るプラスチック用プライマーであれば、プラスチック素材からなる自動車部品用成型品に対して、優れた付着性と優れた貯蔵安定性および貯蔵後の通電性を得ることができる。
【0092】
一方、比較例1は、アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)においてアクリルのグラフト量が少ないため相溶性が悪く、塗料の安定性が劣る。比較例2はアクリル変性塩素化ポリプロピレンが含有されていないため塗料の安定性が劣る。比較例3はメラミン樹脂(D)を含まないため低VOCが実現できない。比較例4は高酸価のポリオール樹脂(C)を含まないため補修時のリコート性が劣る。
【0093】
本発明の更なる態様を記載する:
[1]
アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)、酸価0~5である水酸基含有アクリル樹脂(B)、前記水酸基含有アクリル樹脂(B)以外のポリオール(C)およびメラミン樹脂(D)を含有するプラスチック用プライマーであって、
アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が、塩素含有率10~30質量%の塩素化ポリプロピレン部分(a1)と、前記(a1)にグラフトしたアクリル樹脂部分(a2)とを含み、a1/a2の質量比が40/60~80/20であり、重量平均分子量が30,000~100,000を有するものであり、
前記アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が、組成物の全固形分を基準として、20~60質量%の量で含有する、
ことを特徴とするプラスチック用プライマー。
[2]
塩素化ポリプロピレン樹脂を含まない、[1]記載のプラスチック用プライマー。
[3]
更に、ブロックイソシアネート化合物(E)を含有する、[1]または[2]記載のプラスチック用プライマー。
[4]
前記アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が、ポリプロピレンにα,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物をグラフト共重合して酸変性ポリプロピレンを得た後、前記酸変性ポリプロピレンを塩素化して酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)とし、次いで、重合開始剤の存在下で、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを含む重合性不飽和モノマーをグラフト重合してアクリル樹脂部分(a2)を形成することにより調製する、[1]~[3]のいずれかに記載のプラスチック用プライマー。
[5]
前記アクリル変性塩素化ポリプロピレン(A)が、ポリプロピレンにα,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物をグラフト共重合して酸変性ポリプロピレンを得た後、前記酸変性ポリプロピレンを塩素化して酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)とし、次いで前記酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)に水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させてエステル化し、前記酸変性塩素化ポリプロピレン(a1)に二重結合を導入して二重結合導入塩素化ポリプロピレンを得た後、得られた二重結合導入塩素化ポリプロピレンに重合性不飽和モノマーをグラフト共重合してアクリル樹脂部分(a2)を導入することにより調製する、[1]~[4]のいずれかに記載のプラスチック用プライマー。
[6]
前記ポリオール(C)が、水酸基含有アクリル樹脂である、[1]~[5]のいずれかに記載のプラスチック用プライマー。
[7]
更に導電性カーボンを含有する、[1]~[6]のいずれかに記載のプラスチック用プライマー。
[8]
プラスチック成型品に、[1]~[7]のいずれかに記載のプラスチック用プライマーを塗装し、ついでその塗面に、着色ベース塗料及びクリヤ塗料を塗装することを特徴とするプラスチック成型品の塗装方法。
[9]
プラスチック成型品に、[1]~[7]のいずれかに記載のプラスチック用プライマーを塗装し、ついでその塗面に、着色ベース塗料及びクリヤ塗料を塗装することにより得られる塗装物品。