IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ HOYA株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電子内視鏡システム 図1
  • 特開-電子内視鏡システム 図2
  • 特開-電子内視鏡システム 図3
  • 特開-電子内視鏡システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089352
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】電子内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20240626BHJP
   A61B 1/05 20060101ALI20240626BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240626BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61B1/045 610
A61B1/05
A61B1/00 640
G02B23/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204661
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】橘 俊雄
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040CA06
2H040CA11
2H040GA02
2H040GA11
4C161AA01
4C161AA04
4C161AA13
4C161CC06
4C161JJ15
4C161JJ18
4C161JJ19
4C161LL02
4C161MM05
4C161SS01
4C161UU03
4C161UU09
(57)【要約】
【課題】電子内視鏡システムにおいて、撮像素子からプロセッサに送信する撮像データに対するデータ処理方法を、用途に応じて切り替えられるようにする。
【解決手段】プロセッサ200は、生体組織に対する照明光を連続発光モードにするか、又はパルス発光モードにするか設定するとともに、電子スコープ100に対し、撮像データに対するデータ処理方法を指示するデータ制御部212を備える。CMOSセンサ14は、マトリクス状に配置された複数の画素を有し、撮像データを生成する画素部141と、画素部141によって生成された撮像データに対して、プロセッサ200から指示されるデータ処理方法により信号処理を行う信号処理部142と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の撮像を行うように構成された撮像デバイスを先端部に備える電子内視鏡と、
前記撮像デバイスから送信される撮像データに対して表示のための処理を行うプロセッサと、を含む電子内視鏡システムであって、
前記プロセッサは、
生体組織に対する照明光を出射するための光源部と、
前記照明光を連続発光モードにするか、又はパルス発光モードにするか設定するとともに、前記電子内視鏡に対し、前記撮像データに対するデータ処理方法を指示する制御部と、を備え、
前記撮像デバイスは、
マトリクス状に配置された複数の画素を有し、撮像データを生成する画素部と、
前記画素部によって生成された撮像データに対して、前記プロセッサから指示されるデータ処理方法により信号処理を行う信号処理部と、を備えた、
電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記電子内視鏡は、挿入部の長さに関する長さ情報を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記電子内視鏡が前記プロセッサに接続されたときに前記電子内視鏡から前記長さ情報を取得し、前記長さ情報に基づいて前記電子内視鏡に指示すべきデータ処理方法を決定する、
請求項1に記載された電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、使用者の操作入力を受け付ける操作入力部を備え、
前記制御部は、前記操作入力部に対する操作入力に応じて、前記電子内視鏡に指示すべきデータ処理方法を決定する、
請求項1に記載された電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記照明光を連続発光モードに設定する場合には、前記電子内視鏡に対し、前記撮像データに対して実質的にデータ処理を行わないか、又は、前記撮像データに対して符号化処理を行うデータ処理方法を指示する、
請求項1から3のいずれか一項に記載された電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記照明光をパルス発光モードに設定する場合には、前記電子内視鏡に対し、前記撮像データに対して実質的にデータ処理を行わないか、又は、前記撮像データに対してデータ圧縮処理を施した上でデータ転送レートを高速化させるデータ処理方法を指示する、
請求項1から3のいずれか一項に記載された電子内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡を備えた電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器分野においては、体腔内の生体組織を照明し、照明された体腔内の生体組織を被写体として撮像することにより、体腔内に潜む病変部の診断を行うのに好適な画像を生成することが可能な電子内視鏡システムが知られている。電子内視鏡システムに使用される電子内視鏡(電子スコープ)の先端部に取り付けられる固体撮像素子としてCMOSセンサが採用される場合がある。一般的なCMOSセンサは、電荷蓄積の開始時刻と終了時刻が例えばライン単位で異なるという特徴がある(特許文献1)。
電子内視鏡によって得られた撮像データは、電子内視鏡に接続された電子内視鏡用プロセッサに送信され、被写体である生体組織の画像がモニタに表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-33104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子内視鏡システムでは、用途に応じて、撮像素子からプロセッサに送信する撮像データについて予めデータ処理を行ったり、種別やデータ転送レートを変更したりしたいという要望がある。
例えば、大腸や胃を診断する場合等のように比較的長い挿入部を有する内視鏡を使用する場合には、撮像データを撮像素子から長距離伝送することになるため、撮像データを符号化してロバスト性を高めることが好ましい。但し、符号化に伴ってパディングビットの付加により転送ビット数が増加するため、データの圧縮が必要となる場合がある。他方、声帯を診断する場合のように比較定短い挿入部を有する内視鏡を使用する場合には、撮像素子からの撮像データの転送が短距離で済むため、必ずしも撮像データを符号化する必要はないが、データ転送レートを高めることで動画を滑らかにして観察したい場合がある。
【0005】
このように、撮像素子からプロセッサに送信する撮像データについて予めデータ処理を行ったり、種別やデータ転送レートを変更したりする場合、複数の画素を有し撮像データを生成するCMOSセンサとは別に、データ処理(信号処理)用ICチップを内視鏡の先端部に設ける必要がある。しかし、データ処理用ICチップをCMOSセンサとは別に内視鏡の先端部に設けることはスペース上困難である。CMOSセンサの分解能を確保するために画素数を大きくしようとすると尚更である。
【0006】
そこで、本発明は、電子内視鏡システムにおいて、撮像素子からプロセッサに送信する撮像データに対するデータ処理方法を、用途に応じて切り替えられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、
生体組織の撮像を行うように構成された撮像デバイスを先端部に備える電子内視鏡と、
前記撮像デバイスから送信される撮像データに対して表示のための処理を行うプロセッサと、を含む電子内視鏡システムである。
前記プロセッサは、
生体組織に対する照明光を出射するための光源部と、
前記照明光を連続発光モードにするか、又はパルス発光モードにするか設定するとともに、前記電子内視鏡に対し、前記撮像データに対するデータ処理方法を指示する制御部と、を備える。
前記撮像デバイスは、
マトリクス状に配置された複数の画素を有し、撮像データを生成する画素部と、
前記画素部によって生成された撮像データに対して、前記プロセッサから指示されるデータ処理方法により信号処理を行う信号処理部と、を備える。
【0008】
前記電子内視鏡は、挿入部の長さに関する長さ情報を記憶する記憶部を備えてもよい。その場合、前記制御部は、前記電子内視鏡が前記プロセッサに接続されたときに前記電子内視鏡から前記長さ情報を取得し、前記長さ情報に基づいて前記電子内視鏡に指示すべきデータ処理方法を決定する。
【0009】
前記プロセッサは、使用者の操作入力を受け付ける操作入力部を備えてもよい。その場合、前記制御部は、前記操作入力部に対する操作入力に応じて、前記電子内視鏡に指示すべきデータ処理方法を決定する。
【0010】
前記制御部は、前記照明光を連続発光モードに設定する場合には、前記電子内視鏡に対し、前記撮像データに対して実質的にデータ処理を行わないか、又は、前記撮像データに対して符号化処理を行うデータ処理方法を指示してもよい。
【0011】
前記制御部は、前記照明光をパルス発光モードに設定する場合には、前記電子内視鏡に対し、前記撮像データに対してデータ圧縮処理を施した上でデータ転送レートを高速化させるデータ処理方法を指示してもよい。
【発明の効果】
【0012】
上述の電子内視鏡システムによれば、撮像素子からプロセッサに送信する撮像データに対するデータ処理方法を、用途に応じて切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態の電子内視鏡システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】CMOSセンサの通常のローリングシャッタ動作と疑似グローバルシャッタ動作を説明する図である。
図3図1のシステムの要部を示すブロック図である。
図4】一実施形態の電子内視鏡用プロセッサによって実行されるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態の電子内視鏡システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、医療用に特化されたシステムであり、電子スコープ(内視鏡)100、電子内視鏡用プロセッサ200(以下、単に「プロセッサ200」)、及びモニタ300を備えている。
【0015】
プロセッサ200は、システムコントローラ21を備えている。システムコントローラ21は、メモリ23に記憶された各種プログラムを実行し、電子内視鏡システム1全体を統合的に制御する。また、システムコントローラ21は、操作パネル24に接続されている。システムコントローラ21は、操作パネル24に入力される術者からの指示に応じて、電子内視鏡システム1の各動作及び各動作のためのパラメータを変更する。システムコントローラ21は、各部の動作のタイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム1内の各回路に出力する。
【0016】
プロセッサ200は、光源装置30を備えている。光源装置30は、体腔内の生体組織等の被写体を照明するための照明光Lを出射する。照明光Lは、白色光、擬似白色光、あるいは特殊光を含む。一実施形態によれば、光源装置30は、白色光あるいは擬似白色光を照明光Lとして常時射出するモードと、白色光あるいは擬似白色光と、特殊光が交互に照明光Lとして射出するモードの一方を選択し、選択したモードに基づいて、白色光、擬似白色光、あるいは特殊光を射出することが好ましい。白色光は、可視光帯域においてフラットな分光強度分布を有する光であり、擬似白色光は、分光強度分布はフラットではなく、複数の波長帯域の光が混色された光である。特殊光は、可視光帯域の中の青色あるいは緑色等の狭い波長帯域の光である。青色あるいは緑色の波長帯域の光は、生体組織中の特定の部分を強調して観察する時に用いられる。
後述するように、光源装置30は、連続光を出射する連続発光モード、又はパルス光を出射するパルス発光モードのいずれかで動作する。光源装置30から出射した照明光Lは、集光レンズ25によりLCB(Light Carrying Bundle)11の入射端面に集光されてLCB11内に入射される。
【0017】
LCB11内に入射された照明光Lは、LCB11内を伝播する。LCB11内を伝播した照明光Lは、電子スコープ100の先端に配置されたLCB11の射出端面から射出され、配光レンズ12を介して被写体に照射される。配光レンズ12からの照明光Lによって照明された被写体からの戻り光は、対物レンズ13を介してCMOSセンサ14の受光面上で光学像を結ぶ。
【0018】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ14は、ベイヤ型画素配置を有するイメージセンサである。CMOSセンサ14は、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して読み出し、撮像データを生成して出力する。なお、CMOSセンサ14に代えて、CCDイメージセンサやその他の種類の撮像デバイスに置き換えられてもよい。CMOSセンサ14はまた、補色系フィルタを搭載したものであってもよい。CMOSセンサ14の詳細については後述する。
【0019】
電子スコープ100の接続部内には、スコープ制御部15が備えられている。スコープ制御部15は、CMOSセンサ14に対して1フレームの同期信号(例えば垂直同期信号)を供給するとともに、CMOSセンサ14から被写体の撮像データをフレーム単位で取得し、プロセッサ200の画像処理部22に送信する。フレーム周期は、例えば、1/30秒又は1/60秒である。
画像処理部22は、撮像データに対して所定の画像処理を行うことでビデオフォーマット信号を生成し、モニタ300に出力する。
なお、スコープ制御部15が1フレームの同期信号を供給する場合に限られない。CMOSセンサによっては自身が作成する同期信号に基づいて撮像データを送信する場合もある。その場合には、スコープ制御部15が1フレームの同期信号をCMOSセンサに供給する必要はない。
【0020】
スコープ制御部15は、また、メモリ16にアクセスして電子スコープ100のスコープデータを読み出す。メモリ16(記憶部の一例)に記録される電子スコープ100のスコープデータは、電子スコープ100の体腔に対する挿入部の長さに関する長さ情報、若しくは長さ情報に関連する情報、及び、CMOSセンサ14からプロセッサ200に撮像データを送信するときのデータレートの情報を含む。長さ情報により、例えば、電子スコープ100が、大腸や胃を診断する場合等のように比較的長い挿入部を有する電子スコープであるのか、声帯を診断する場合のように比較定短い挿入部を有する電子スコープであるのか判別できる。電子スコープ100の型番や製造番号は、長さ情報に関連する情報の例である。
スコープ制御部15は、メモリ16から読み出されたスコープデータをシステムコントローラ21に出力する。スコープデータには、例えば、CMOSセンサ14の画素数や解像度等の素子特有の情報、さらには、光学系に関する画角、焦点距離、被写界深度等の情報も含まれてもよい。
【0021】
システムコントローラ21は、電子スコープ100のスコープデータに基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ21は、生成された制御信号を用いて、プロセッサ200に接続されている電子スコープ100に適した処理がなされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。
【0022】
システムコントローラ21は、スコープ制御部15にクロックパルスを供給する。スコープ制御部15は、システムコントローラ21から供給されるクロックパルスに従って、CMOSセンサ14を動作させるときの同期信号を必要に応じて生成し、CMOSセンサ14に供給する。
【0023】
次に、図2を参照して、CMOSセンサ14が通常のローリングシャッタ方式で動作する場合と、疑似グローバルシャッタ方式で動作する場合とについて説明する。
通常のローリングシャッタ方式では、光源装置30による照明光が連続光である場合に適用される。図2において、時刻T1から時刻Tnまでの時間の経過に応じて傾斜した線は、各ラインの読み出しタイミングを示している。
通常のローリングシャッタ方式では、図示しない垂直同期信号に基づいて設定される1フレーム期間において、最初のラインは、前のフレームの読み出しが終了した時刻T1から露光を開始する。最後のラインは、前のフレームの読み出しが終了した時刻Tnから露光を開始する。露光によって各ラインの画素に蓄積された電荷が電圧に変換されて読み出される。この動作がフレーム毎に繰り返し行われる。
疑似グローバルシャッタ方式では、光源装置30による照明光がパルス光(ストロボ発光)である。このパルス光による発光期間が図2に示される。この方式では、1回のパルス光が2フレーム期間に亘って露光されないように、1フレーム期間内においてすべてのラインに共通の露光期間が設定される。そのため、時刻T1からTnまでの全ラインの読み出し時間がローリングシャッタと比較して短く、高いフレームレート(読み出し速度)が要求される場合がある。
【0024】
通常のローリングシャッタ方式と疑似グローバルシャッタ方式は、電子スコープ100が使用される用途に応じて適宜、使い分けられる。例えば、大腸や胃を診断する場合には通常のローリングシャッタ方式により画像を取得し、声帯を診断する場合には疑似グローバルシャッタ方式により画像を取得する。声帯を診断する喉頭ストロボスコピーでは、被験者の発声に合わせて声帯の振動周波数に応じた周波数でパルス発光(ストロボ発光)させるため、図2に示した疑似グローバルシャッタ方式が採用される。なお、大腸や胃を診断する場合であってもCMOSセンサ14を疑似グローバルシャッタ方式で動作させることがある。
【0025】
パルス発光により疑似グローバルシャッタ方式でCMOSセンサ14を動作させる場合、電子スコープによってはフレームレート(読み出し速度)が高く、それによってデータレート(データ転送レート)が高速になることがある。
大腸や胃を診断する場合には、体腔に挿入する挿入部が比較的長い電子スコープ100が使用されるため、撮像データを転送するケーブル長が長く、撮像データの波形が歪む傾向にある。そのため、データ転送の確実性を高めるために、データ転送を行う際に例えば8B10B等の符号化を撮像データに対して行うことが好ましい。しかしその場合、パディングビットの付加により転送ビット数が増加することから、高データレートでの撮像データのデータ転送が困難になる傾向があるため、転送ビット数を低減させるためにデータ圧縮が必要になる場合がある。
他方、声帯を診断する場合には、体腔に挿入する挿入部が比較的短い電子スコープ100が使用されるため、撮像データを転送するケーブル長が短くて済み、撮像データの波形の歪みが生じ難い。そのため、撮像データの高データレートでの転送を実行しやすい。
【0026】
別の観点では、フレームレート(読み出し速度)が低く、それによってデータレートが低速で構わない場合には、転送ビット数を低減させるためのデータ圧縮が必要ないため、撮像データに対してデータ転送の確実性を高めるための符号化のみを行うことがあり得る。
【0027】
このように、電子スコープ100の使用用途に応じて、CMOSセンサ14からプロセッサ200に転送される撮像データの処理(高データレート化、符号化、圧縮処理など)が変わり得る。しかし、従来、CMOSセンサの外部に撮像データの処理を行う集積回路(IC)を設けることは、電子スコープの先端部の空間的制約から困難であった。すなわち、CMOSセンサの画素部の大きさは分解能に寄与するため極力大きく確保したいが、その場合には別体のICを電子スコープの先端部に配置することができず、あるいはトレードオフとなっていた。
そこで、本実施形態では、CMOSセンサ14として多層構造のセンサを利用することで、電子スコープ100の先端部に、信号処理機能を備えたCMOSセンサ14を配置する。この多層構造のセンサは、近年実用化が進んでおり、画素部と信号処理部とが異なる層で積層された構造を備え、1つのパッケージとして集約されている。CMOSセンサ14の信号処理部で、撮像データの処理(高データレート化、符号化、圧縮処理など)を選択的に、あるいは組み合わせて行うことで、電子スコープ100の使用用途に応じた撮像データの処理を実現できる。
【0028】
次に、図3に示すブロック図を参照して、図1の電子内視鏡システム1の要部について説明する。
以下、図3を参照して、プロセッサ200のシステムコントローラ21と電子スコープ100のCMOSセンサ14との間のデータ処理に注目して説明する。
図3に示すように、システムコントローラ21は、発光モード設定部211とデータ制御部212を有する。システムコントローラ21の各部は、プログラムを実行することで実現される。
発光モード設定部211は、光源装置30の発光モード(連続発光モード、又はパルス発光モード)を設定し、設定した発光モードを示す制御信号を光源装置30に送信する。なお、光源装置30は、発光モード設定部211からの発光モードに応じて図示しない駆動回路を動作させ、照明光(連続光、又はパルス光)を出射する。
【0029】
データ制御部212は、電子スコープ100のスコープ制御部15から取得するスコープデータに含まれる電子スコープ100の挿入部の長さ情報とデータレートの情報のうち少なくともいずれかの情報に基づいて、CMOSセンサ14から転送される撮像データのデータ処理方法を決定する。
撮像データのデータ処理方法としては、撮像データを符号化してプロセッサ200に送信する処理、撮像データを圧縮してプロセッサ200に送信する処理、撮像データを高データレートでプロセッサ200に送信する処理のいずれか、又はこれらの組合せがあり得る。撮像データのデータ処理方法として、データ処理を行わないことも含まれる。データ制御部212は、決定した撮像データのデータ処理方法をスコープ制御部15に通知する。
一実施形態では、データ制御部212は、操作パネル24からの操作信号に基づいて、CMOSセンサ14から転送される撮像データのデータ処理方法を決定する。操作パネル24は、術者によって操作される。
【0030】
スコープ制御部15は、メモリ16からスコープデータを読み出してシステムコントローラ21に送信するとともに、システムコントローラ21から通知される撮像データのデータ処理方法が行われるように、CMOSセンサ14を制御する。スコープ制御部15はまた、CMOSセンサ14に対して同期信号を必要に応じて出力する。
一実施形態では、システムコントローラ21は、プロセッサ200に電子スコープ100が接続されたスコープ制御部15からスコープデータを取得するように構成される。この場合、様々な電子スコープ100をプロセッサ200に接続した時点で、自動的にスコープデータに基づき撮像データに対するデータ処理方法が決定される。すなわち、診断時にシステム上で最適なデータ処理方法を自動的に決定され、術者等が設定することを要しない。
【0031】
図3に示すように、CMOSセンサ14は、画素部141と信号処理部142を有する。
画素部141には、二次元マトリクス状に多数の画素により画素アレイが構成されている。画素部141は、画素アレイ内の各画素が順次走査され、画素信号の読み出しや電子シャッタ動作が実行することで、撮像データを生成する。なお、撮像データの生成は、スコープ制御部15から必要に応じて供給される同期信号に基づいて行われる。
信号処理部142は、画素部141によって生成された撮像データに対して、システムコントローラ21から指示されるデータ処理方法により信号処理を行った上で撮像データをシステムコントローラ21に送信する。なお、撮像データの送信タイミングは、フレーム毎に行われる。
【0032】
例えば、データ処理方法が「非処理」である場合、信号処理部142は、画素部141によって生成された撮像データに対して信号処理を行わずに、システムコントローラ21に対して撮像データを送信する。データ処理方法が「データ符号化」である場合、信号処理部142は、画素部141によって生成された撮像データに対して8B10B等の符号化処理を行った後に、システムコントローラ21に対して撮像データを送信する。データ処理方法が「高データレートであって、符号化及び圧縮」である場合、信号処理部142は、画素部141によって生成された撮像データに対して8B10B等の符号化処理を行うとともにデータ圧縮を行った後に、システムコントローラ21に対して高データレートで撮像データを送信する。
データ制御部212は、CMOSセンサ14から、予め決定したデータ処理方法が示すデータレートで撮像データを受信するとともに、必要に応じて、受信した撮像データの伸長、復号処理を行う。
【0033】
次に、図4のフローチャートを参照して、本実施形態の電子内視鏡システム1によって実行される処理について説明する。
電子スコープ100がプロセッサ200に接続されると、プロセッサ200のシステムコントローラ21は、スコープ制御部15からのスコープデータの取得処理を含む初期化処理を実行する(ステップS2)。初期化後のステップS4~S12の処理は、被写体の観察が終了するまで行われる(ステップS14)。
先ず、システムコントローラ21は、例えば術者による操作パネル24に対する操作入力に応じて照明光の発光モード(連続発光モード、又はパルス発光モード)を設定する(ステップS4)。例えば、連続発光モードは、大腸や胃等の通常観察のために選択設定され、パルス発光モードは、主には声帯の観察、あるいは大腸や胃等の観察のために選択設定される。
【0034】
連続発光モード、パルス発光モードのいずれが設定された場合であってもシステムコントローラ21は、ステップS2で取得したスコープデータに含まれる長さ情報とデータレートの情報のうち少なくともいずれかの情報に基づいてCMOSセンサ14によるデータ処理方法を決定する。
一実施形態では、連続発光モードが設定された場合、システムコントローラ21は、撮像データのデータ処理方法を「データ符号化」又は「非処理」(実質的にデータ処理を行わない)とすることを決定する(ステップS8)。連続発光モードが設定された場合には、電子スコープ100は、CMOSセンサ14を通常のローリングシャッタ方式により動作させる。
【0035】
スコープデータに含まれる長さ情報が、例えば大腸や胃等の観察に使用される場合等、挿入部が比較的長いことを示す場合には、データ転送の確実性を高めるために撮像データのデータ符号化を行うことが好ましいが、データ符号化を行わなくてもよい。撮像データのデータ符号化を行わない場合には、CMOSセンサ14の動作に伴う消費電力を抑制できる利点がある。撮像データのデータ符号化を行う場合であってもデータレートは低速でも構わないため、データの圧縮は必要ない。
また、スコープデータに含まれる長さ情報が、挿入部が比較的短いことを示す場合には、データの歪みを考慮する必要がないため、撮像データのデータ符号化を行わなくてもよい。
【0036】
パルス発光モードが設定された場合、電子スコープ100は、CMOSセンサ14を疑似グローバルシャッタ方式により動作させるが、フレームレート(読み出し速度)に応じて、撮像データに対するデータレートが低速の場合と高速の場合とがあり得る。スコープデータを参照した結果、データレートが低速である場合には(ステップS6:「低速」)、システムコントローラ21は、ステップS8と同様に、撮像データのデータ処理方法を「データ符号化」又は「非処理」とすることを決定する(ステップS10)。
【0037】
他方、スコープデータを参照した結果、データレートが高速である場合には(ステップS6:「高速」)、システムコントローラ21は、撮像データのデータ処理方法を「データ符号化及び圧縮」とすることを決定する(ステップS12)。
例えば、電子スコープ100が声帯の観察に使用される場合や、胃や大腸の観察に使用される際により滑らかな画像で観察する場合には、スコープデータが示すデータレートが高速に設定されている。その場合、データの確実性の観点から撮像データの符号化を行うとともに、データ符号化に伴うパディングビットの付加により転送ビット数が増加することから、データ圧縮を行い高データレートに対応させる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の電子内視鏡システム1によれば、電子スコープ100に設けられているCMOSセンサ14は、画素部141によって生成された撮像データに対して信号処理を行う信号処理部142を内蔵しているため、全体としては小型であり電子スコープ100の先端部に搭載可能である。CMOSセンサ14の信号処理部142は、プロセッサ200から指示されるデータ処理方法により信号処理を行う。そのため、システムの使用用途に応じて、撮像データの符号化、圧縮、高データレートの送信処理等の様々な処理を実現できる。
【0039】
前述したように、撮像データのデータ処理方法は、スコープデータに限られず、操作パネル24からの術者の操作入力に基づいて決定してもよい。例えば、挿入部が長い電子スコープを使用する場合、高いフレームレート(読み出し速度)にする(つまり、データレートを高くする)ことで画像が見やすくなり好ましいが、術者が手技を行うときにフレームレート(読み出し速度)を変化させたい(高速又は低速にする)場合がある。そのような場合に、柔軟にCMOSセンサ14によるデータ処理方法を決定できる。
【0040】
以上、本発明の電子内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明の電子内視鏡システムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
なお、電子内視鏡システムの構成は図1に示したものに限られず、様々な態様を採ることができる。例えば、プロセッサが光源装置を備えず、電子スコープにLCBを設けずに電子スコープの先端部に光源を設けたシステムにも本発明を適用することができる。また、光源装置がプロセッサや電子スコープとは別体で構成されているシステムにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…電子内視鏡システム
11…LCB
12…配光レンズ
13…対物レンズ
14…CMOSセンサ
141…画素部
142…信号処理部
15…スコープ制御部
16…メモリ
21…システムコントローラ
211…発光モード設定部
212…データ制御部
22…画像処理部
23…メモリ
24…操作パネル
30…光源装置
100…電子スコープ
200…電子内視鏡用プロセッサ
300…モニタ
図1
図2
図3
図4