(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089359
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】電流導入ラインおよび超伝導磁石装置
(51)【国際特許分類】
H10N 60/81 20230101AFI20240626BHJP
H01F 6/06 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H10N60/81 ZAA
H01F6/06 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204676
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】出村 健太
【テーマコード(参考)】
4M114
【Fターム(参考)】
4M114AA14
4M114BB03
4M114BB04
4M114BB07
4M114CC03
4M114CC05
4M114CC16
4M114DA02
4M114DA13
(57)【要約】
【課題】超伝導磁石装置の電流導入ラインへの結露を簡易な構成で抑制する。
【解決手段】真空容器14内の超伝導コイル12に電流を導入するための電流導入ライン20が提供される。電流導入ライン20は、真空フィードスルー24と、真空容器14内に配置され、超伝導コイル12に電気接続されるブスバー28と、真空容器14に熱的に結合されるとともに真空容器14から電気絶縁されるように真空容器14に固定され、真空フィードスルー24をブスバー28に電気接続する剛性導体26と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内の超伝導コイルに電流を導入するための電流導入ラインであって、
真空フィードスルーと、
前記真空容器内に配置され、前記超伝導コイルに電気接続されるブスバーと、
前記真空容器に熱的に結合されるとともに前記真空容器から電気絶縁されるように前記真空容器に固定され、前記真空フィードスルーを前記ブスバーに電気接続する剛性導体と、を備えることを特徴とする電流導入ライン。
【請求項2】
前記剛性導体は、導体板を備え、
前記導体板は、電気絶縁層を前記真空容器と前記導体板との間に挟み込むようにして前記真空容器に固定され、前記電気絶縁層を介して前記真空容器に熱的に結合されることを特徴とする請求項1に記載の電流導入ライン。
【請求項3】
前記剛性導体は、前記剛性導体を前記ブスバーに電気接続するように前記ブスバーに取り付けられる変形可能部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電流導入ライン。
【請求項4】
真空容器と、
前記真空容器内に配置される超伝導コイルと、
前記超伝導コイルに電流を導入するための電流導入ラインであって、
真空フィードスルーと、
前記真空容器内に配置され、前記超伝導コイルに電気接続されるブスバーと、
前記真空容器に熱的に結合されるとともに前記真空容器から電気絶縁されるように前記真空容器に固定され、前記真空フィードスルーを前記ブスバーに電気接続する剛性導体と、を備える電流導入ラインと、を備えることを特徴とする超伝導磁石装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流導入ラインおよび超伝導磁石装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、超伝導磁石装置は、超伝導コイルと、これを極低温に冷却した状態で収容する真空容器とを備える。外部から超伝導コイルに給電するために、コイル用電極が真空容器の外側に設けられている。コイル用電極は、超伝導コイルからの熱伝導により冷却される。そのため、コイル用電極には、真空容器周囲の空気中の水分が付着しまたは凍結しうる。従来、このような結露を防ぐために、加熱された空気をコイル用電極に送風し、コイル用電極を加熱することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、超伝導磁石装置の電流導入ラインへの結露を簡易な構成で抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様によると、真空容器内の超伝導コイルに電流を導入するための電流導入ラインが提供される。電流導入ラインは、真空フィードスルーと、真空容器内に配置され、超伝導コイルに電気接続されるブスバーと、真空容器に熱的に結合されるとともに真空容器から電気絶縁されるように真空容器に固定され、真空フィードスルーをブスバーに電気接続する剛性導体と、を備える。
【0006】
本発明のある態様によると、超伝導磁石装置は、真空容器と、真空容器内に配置される超伝導コイルと、超伝導コイルに電流を導入するための電流導入ラインと、を備える。電流導入ラインは、真空フィードスルーと、真空容器内に配置され、超伝導コイルに電気接続されるブスバーと、真空容器に熱的に結合されるとともに真空容器から電気絶縁されるように真空容器に固定され、真空フィードスルーをブスバーに電気接続する剛性導体と、を備える電流導入ラインと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、超伝導磁石装置の電流導入ラインへの結露を簡易な構成で抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る超伝導磁石装置を概略的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係る電流導入ラインを概略的に示す斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る電流導入ラインの他の例を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0010】
図1は、実施の形態に係る超伝導磁石装置10を概略的に示す図である。超伝導磁石装置10は、例えば単結晶引き上げ装置、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)システム、MRI(Magnetic Resonance Imaging)システム、サイクロトロンなどの加速器、核融合システムなどの高エネルギー物理システム、またはその他の高磁場利用機器(図示せず)の磁場源として高磁場利用機器に搭載され、その機器に必要とされる高磁場を発生させることができる。
【0011】
超伝導磁石装置10は、超伝導コイル12と、真空容器14と、熱シールド16と、電流導入ライン20とを備える。
【0012】
超伝導コイル12は、真空容器14内に配置され、超伝導転移温度以下の極低温に冷却された状態で通電されることにより強力な磁場を発生するように構成されている。超伝導コイル12は、公知の超伝導コイル(たとえば、いわゆる低温超伝導コイル)であってもよい。
【0013】
超伝導コイル12は、真空容器14の外に配置された外部電源18に電流導入ライン20によって接続される。外部電源18から電流導入ライン20を通じて超伝導コイル12に励磁電流が供給される。
【0014】
また、超伝導コイル12は、真空容器14に設置された例えば二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機またはその他の形式の極低温冷凍機15と熱的に結合され、超伝導転移温度以下の極低温に冷却された状態で使用される。この実施形態では、超伝導磁石装置10は、超伝導コイル12を液体ヘリウムなどの極低温液体冷媒に浸漬する浸漬冷却式ではなく、極低温冷凍機15によって直接冷却する、いわゆる伝導冷却式として構成される。なお、超伝導磁石装置10は、浸漬冷却式であってもよい。
【0015】
真空容器14は、超伝導コイル12を超伝導状態とするのに適する極低温真空環境を提供する断熱真空容器であり、クライオスタットとも呼ばれる。通例、真空容器14は、円柱状の形状、または中心部に中空部を有する円筒状の形状を有する。よって、真空容器14は、概ね平坦な円形状または円環状の天板14aおよび底板14bと、これらを接続する円筒状の側壁(円筒状外周壁、または同軸配置された円筒状の外周壁および内周壁)とを有する。極低温冷凍機15は真空容器14の天板14aに設置されてもよい。真空容器14は、周囲圧力(たとえば大気圧)に耐えるように、例えばステンレス鋼などの金属材料またはその他の適する高強度材料で形成される。
【0016】
熱シールド16は、真空容器14内で超伝導コイル12を囲むように配置される。熱シールド16は、例えば銅などの金属材料またはその他の高い熱伝導率をもつ材料で形成される。熱シールド16は、超伝導コイル12を冷却する二段式の極低温冷凍機15の一段冷却ステージによって、またはこの二段式冷凍機とは別の単段式極低温冷凍機によって、冷却されてもよい。超伝導磁石装置10の運転中、熱シールド16は、第1冷却温度、例えば30K~50Kに冷却され、超伝導コイル12は、第1冷却温度よりも低い第2冷却温度、例えば3K~20K(例えば約4K)に冷却される。熱シールド16は、その内側に配置され熱シールド16よりも低温に冷却される超伝導コイル12などの低温部を、真空容器14からの輻射熱から熱的に保護することができる。
【0017】
超伝導コイル12に電流を導入するための電流導入ライン20は、外部配線22と、真空フィードスルー24と、剛性導体26と、ブスバー28と、電流リード部30とを備え、外部電源18から超伝導コイル12への電流経路を形成する。簡単のため、
図1には、1本の電流導入ライン20のみが示されている。しかしながら、一般には、超伝導磁石装置10に複数本の電流導入ライン20が設けられてもよく、例えば、正極側の電流導入ライン20と負極側の電流導入ライン20が1本ずつ設けられてもよい。
【0018】
真空容器14の外に配置された外部配線22は、真空容器14の壁部に設けられた真空フィードスルー24に外部電源18を接続する。外部配線22は、適宜の給電ケーブルであってもよい。
【0019】
真空フィードスルー24は、真空容器14内に電流を導入するための気密端子であり、外部配線22を真空容器14内の内部配線(すなわち、剛性導体26、ブスバー28および電流リード部30)に接続する。電流導入ライン20は、真空フィードスルー24により真空容器14の気密性を保ちながら真空容器14の壁部を貫通することができる。真空フィードスルー24は、真空容器14の周囲環境(例えば室温大気圧環境)に露出されているため、周囲温度(例えば室温)にある。
【0020】
この実施の形態では、図示されるように、真空フィードスルー24は、真空容器14の底板14bに設置され、電流導入ライン20は、真空容器14の下側で外周部に配置されている。この配置は、作業性の観点から有利である。超伝導磁石装置10の利用分野によるが、真空容器14はしばしば、作業者に比べてかなり大型となる(例えば直径数m以上に及ぶ)。真空フィードスルー24が真空容器14の外周部に設けられていれば、作業者が超伝導磁石装置10の周囲から電流導入ライン20にアクセスすることが容易になる。なお、真空フィードスルー24は、真空容器14の上面に設置され、電流導入ライン20は、真空容器14の上側で外周部に配置されてもよい。あるいは、真空フィードスルー24および電流導入ライン20は、真空容器14のその他の部位に設けられてもよい。
【0021】
剛性導体26およびブスバー28は、真空容器14内で熱シールド16の外側に配置され、真空フィードスルー24を電流リード部30に接続する。真空フィードスルー24、剛性導体26、およびブスバー28は、導電材料、例えば無酸素銅などの純銅に代表される導電性に優れる金属材料で形成され、超伝導コイル12への電流経路となる。
【0022】
詳細は後述するが、剛性導体26は、真空容器14に熱的に結合されるとともに真空容器14から電気絶縁されるように真空容器14に固定され、真空フィードスルー24をブスバー28に電気接続する。ブスバー28は、電流リード部30を通じて超伝導コイル12に電気接続される。
【0023】
ブスバー28は、熱シールド16から電気絶縁された状態で熱シールド16と熱的に結合されてもよい。ブスバー28の剛性導体26とは反対側の端部は、熱シールド16に固定され、または適宜の伝熱部材を介して熱シールド16に接続されて、熱シールド16と同様に第1冷却温度に冷却されてもよい。よって、電流導入ライン20は、真空フィードスルー24から剛性導体26、ブスバー28へと徐々に温度が低下する温度分布を有しうる。
【0024】
剛性導体26およびブスバー28は、断熱層17の外側に配置されうる。断熱層17は、は、真空容器14から発せられる輻射熱から熱シールド16を保護するために、真空容器14と熱シールド16の間に設けられてもよい。断熱層17は、例えば多層断熱材(multilayer insulation(MLI))であってもよく、熱シールド16を囲むように配置されてもよい。
【0025】
この実施の形態では、ブスバー28は、剛性導体26とは別体の剛性導体である。ただし、ある実施の形態では、剛性導体26とブスバー28が一体の導体部材として構成されてもよい。
【0026】
電流リード部30は、熱シールド16の内側に配置され、ブスバー28を超伝導コイル12に接続する。電流リード部30は、真空容器14内でブスバー28とは異なる方向に延びていてもよい。図示の例では、電流リード部30は、ブスバー28の端部から超伝導コイル12へと縦方向(鉛直方向)に延在してもよい。電流リード部30は、ブスバー28、超伝導コイル12それぞれに接続される両端の端子部と、これら端子部を接続する超伝導電流リードとを備えてもよい。超伝導電流リードは、例えば円柱状など棒状の形状を有してもよく、銅酸化物超伝導体またはその他の高温超伝導材料で形成されてもよい。あるいは、超伝導電流リードは、NbTiに代表される低温超伝導材料で形成されてもよい。
【0027】
図2は、実施の形態に係る電流導入ライン20を概略的に示す斜視図である。電流導入ライン20は、上述のように、互いに電気接続された真空フィードスルー24、剛性導体26、およびブスバー28を備える。
【0028】
真空フィードスルー24は、フィードスルー導体24aとフィードスルー絶縁材24bを備える。フィードスルー導体24aは、真空容器14の外に露出された一端で外部配線22に接続され、真空容器14内の他端で剛性導体26に接続されている。こうして、外部配線22からフィードスルー導体24aを通じた剛性導体26への電流経路が形成される。
【0029】
フィードスルー導体24aは真空容器14(この例では底板14b)の開口部に挿通されている。この開口部は真空容器14の気密性を保つようにフィードスルー絶縁材24bで充填されており、フィードスルー導体24aは、フィードスルー絶縁材24bにより真空容器14から電気絶縁された状態で真空容器14に設置されている。フィードスルー絶縁材24bは、例えば合成樹脂材料など適宜の電気絶縁材料であってもよい。
【0030】
剛性導体26は、第1端部26a、導体板26b、変形可能部26c、および第2端部26dを備える。
【0031】
この実施の形態では、剛性導体26は、導電材料(例えば銅)で形成された一枚の板からなり、これを折り曲げることによって、第1端部26a、導体板26b、変形可能部26c、および第2端部26dが形成されている。導体板26bは、後述のように真空容器14の固定面に固定される平坦な板状部分であり、例えば矩形状の外形を有する。導体板26bは、他の形状の外形を有してもよい。
【0032】
第1端部26aは、導体板26bの外周の一部から延び、真空容器14の固定面に対して立ち上がるように折り曲げられ、この立ち上がり部分から真空容器14の固定面に沿った方向にフィードスルー導体24aに向けてさらに折り曲げられている。同様にして、
第2端部26dは、第1端部26aとは反対側で導体板26bの外周の一部から延び、真空容器14の固定面に対して立ち上がるように折り曲げられ、この立ち上がり部分から真空容器14の固定面に沿った方向にブスバー28に向けてさらに折り曲げられている。第2端部26dの立ち上がり部分は、後述のように、変形可能部26cとして働く。
【0033】
なお、第1端部26a、導体板26b、変形可能部26c、および第2端部26dは、個々の部片として用意され、例えば締結、はんだ付け、ろう付けなど適宜の接合方法により互いに接合され、剛性導体26へと一体化されてもよい。
【0034】
剛性導体26は、第1端部26aで真空フィードスルー24に固定され、第2端部26dでブスバー28に固定されている。第1端部26aは、例えばボルトなどの締結部材32によりフィードスルー導体24aに固定され、導体板26bは、締結部材32によりブスバー28に固定されている。なお、第1端部26aおよび第2端部26dはそれぞれ、真空フィードスルー24およびブスバー28へとはんだ付けやろう付けなど適宜の接合方法により接合されてもよい。このようにして、真空フィードスルー24から剛性導体26を通じたブスバー28への電流経路が形成される。
【0035】
導体板26bは、電気絶縁層34を真空容器14と導体板26bとの間に挟み込むようにして真空容器14に固定されている。電気絶縁層34は、例えばガラス繊維強化プラスチック(GFRP)などの合成樹脂材料、またはその他適宜の電気絶縁材料で形成されたシートまたはプレートであってもよい。電気絶縁層34の片面が真空容器14の固定面に接触し、電気絶縁層34の反対側の面が導体板26bの主表面に接触するようにして、電気絶縁層34は、真空容器14と導体板26bに挟み込まれている。よって、導体板26b、すなわち剛性導体26は、真空容器14とは接触せず、真空容器14から電気絶縁された状態にある。
【0036】
図示されるように、導体板26bは、例えばボルトなどの締結部材32により真空容器14に固定されてもよい。この場合、締結部材32を通じた導体板26bと真空容器14の導通を防ぎ、導体板26bと真空容器14との電気絶縁を確保するために、締結部材32は、例えばエンジニアリングプラスチックなどの合成樹脂材料、またはその他適宜の電気絶縁材料で形成されていてもよい。また、金属製の締結部材32が使用される場合には、電気絶縁材料のワッシャーが締結部材32の頭部と導体板26bとの間に挟み込まれてもよい。このようにして、導体板26b、すなわち剛性導体26は、真空容器14から電気絶縁された状態で真空容器14に固定されている。
【0037】
あるいは、導体板26bは、例えば接着など適宜の接合方法により電気絶縁層34に接合されてもよい。同様に、電気絶縁層34は、適宜の接合方法により真空容器14に接合されてもよい。
【0038】
導体板26bは、電気絶縁層34を介して真空容器14に熱的に結合される。したがって、真空容器14から電気絶縁層34を介して導体板26bへと熱が流入しうる。より良好な熱接続のためには、電気絶縁層34の厚さはなるべく薄いことが望まれる。しかしながら、導体板26bと真空容器14の電気絶縁を確保するうえでは、電気絶縁層34は比較的厚いほうがよい。そこで、電気絶縁層34の厚さは、例えば1mmから10mmの範囲から選択されてもよい。なお、電気絶縁層34が厚板である場合には、真空容器14の固定面に接触する電気絶縁層34(および導体板26b)の面積を広くすることにより、真空容器14から導体板26bへの入熱を増加することもできる。
【0039】
剛性導体26が上述のように真空容器14に直接固定されるのに対して、ブスバー28は、剛性導体26が固定される真空容器14の固定面から間隔をあけて配置され、剛性導体26を介して真空容器14に固定される。ブスバー28は、真空容器14に接触していない。
【0040】
ブスバー28は、図示されるように、真空容器14の固定面(例えば底板14b)に沿って延びていてもよく、真空容器14が天板14aを上方に向け底板14bを下方に向けて配置される場合、真空容器14内で横方向(水平方向)に延在してもよい。なお、真空容器14内での超伝導コイル12と熱シールド16など内部機器の配置によっては、ブスバー28は、真空容器14内で他の方向、例えば縦方向(鉛直方向)に延在してもよい。ブスバー28は、一例として、帯状または矩形状の断面形状をもつ薄板または棒材であってもよい。
【0041】
ブスバー28は上述のように、熱シールド16など低温部からの熱伝導により冷却されうる。これに対して、導体板26bは、ブスバー28に接続されているが、真空容器14との熱的結合による周囲環境からの入熱によって、ブスバー28ほどには冷却されない。真空容器14は周囲温度(例えば室温)を有するので、導体板26bは、周囲温度またはそれに近い温度に保たれうる。
【0042】
真空フィードスルー24は周囲環境にさらされているから、真空容器14と同様に、周囲温度にある。導体板26bと真空容器14との熱的結合は、導体板26bを真空フィードスルー24と同程度の温度に保ち、これらの温度差を、熱シールド16など低温部と剛性導体26との温度差に比べて小さくすることができる。剛性導体26によって、低温部からの熱伝導によるブスバー28の温度低下の影響を真空フィードスルー24に及びにくくすることができる。
【0043】
したがって、実施の形態によると、真空容器14と熱的に結合された剛性導体26を電流導入ライン20に設けることにより、真空フィードスルー24の温度低下を抑制し、周囲環境から真空フィードスルー24への結露を防止または軽減することができる。ヒーターの設置や加熱空気の送風などを用いた既存の結露対策に比べて、超伝導磁石装置10の電流導入ライン20への結露を簡易な構成で抑制することができる。
【0044】
また、剛性導体26には、導体板26bをブスバー28に電気接続するようにブスバー28に取り付けられる変形可能部26cが設けられている。変形可能部26cは、上述のように、真空容器14の固定面に対して導体板26bから立ち上がるように折り曲げられている。そのため、ブスバー28および第2端部26dがブスバー28の延在方向(例えば図において左右方向)に変位するとき、変形可能部26cは、導体板26bに対してたわむことができる。
【0045】
熱シールド16などの低温部、およびブスバー28は、冷却によって熱収縮しうる。これにより、ブスバー28は、
図2において矢印36で模式的に示すように、低温部に向けて引っ張られうる。このとき、変形可能部26cは矢印38で模式的に示すように、ブスバー28のこのような変形に応じてたわみうる。熱収縮によるブスバー28の変位が変形可能部26cによって吸収される。剛性導体26は導体板26bで真空容器14に固定されているから、こうした熱収縮の影響は、真空フィードスルー24に及びにくくなる。真空フィードスルー24の例えばフィードスルー絶縁材24bに過剰な熱応力が発生すること、ひいては真空フィードスルー24及び/または真空容器14に不測の変形や破損が生じることを防ぐことが可能になる。
【0046】
なお、変形可能部26cは、折曲部には限られない。変形可能部26cは、ブスバー28の変位に伴って変形しうる、剛性導体26に形成されたその他の構造を有してもよい。
【0047】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0048】
上述の実施の形態では、剛性導体26が真空容器14の壁面に直接固定される場合を例として説明しているが、剛性導体26は、以下に例示するように、真空容器14内で他の部位に固定されてもよい。
【0049】
図3は、実施の形態に係る電流導入ライン20の他の例を概略的に示す側面図である。上述の実施の形態と同様に、
図3の実施の形態においても、電流導入ライン20は、真空フィードスルー24、剛性導体26、およびブスバー28を備える。剛性導体26は、真空フィードスルー24をブスバー28に電気接続する。
【0050】
ただし、剛性導体26は、電気絶縁層34を支持部材40と剛性導体26との間に挟み込むようにして支持部材40に固定され、電気絶縁層34を介して支持部材40に熱的に結合されている。支持部材40は、例えばステンレス鋼などの金属材料で形成され、板状またはその他の形状を有してもよい。支持部材40は、例えば、真空容器14内で真空容器14の壁面に固定された台座42に固定されてもよい。この台座42には、超伝導コイル12を支持する支持体44が取り付けられてもよい。このようにして、剛性導体26は、支持部材40を介して真空容器14に熱的に結合されてもよい。
【0051】
また、上述の実施の形態では、剛性導体26が導電材料で形成された板部材である場合を例として説明している。しかし、剛性導体26は、そうしたプレートには限られず、例えば、導体のロッドまたはブロックであってもよい。
【0052】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0053】
10 超伝導磁石装置、 12 超伝導コイル、 14 真空容器、 20 電流導入ライン、 24 真空フィードスルー、 26 剛性導体、 26b 導体板、 26c 変形可能部、 28 ブスバー、 34 電気絶縁層。