(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089360
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】車両用操作ペダル装置
(51)【国際特許分類】
G05G 1/46 20080401AFI20240626BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20240626BHJP
B60T 7/04 20060101ALI20240626BHJP
B60T 7/06 20060101ALI20240626BHJP
B60T 11/18 20060101ALI20240626BHJP
B60T 11/04 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
G05G1/46
G05G1/30 E
B60T7/04 B
B60T7/06 D
B60T7/06 B
B60T11/18
B60T11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204677
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】永井 健一朗
(72)【発明者】
【氏名】深見 翔
【テーマコード(参考)】
3D047
3D124
3J070
【Fターム(参考)】
3D047CC05
3D047CC17
3D124AA35
3D124BB01
3D124DD03
3D124DD06
3D124DD69
3J070AA32
3J070BA71
3J070BA90
3J070CA51
3J070CB02
3J070CC03
3J070DA02
(57)【要約】
【課題】高い自由度で配置することのできる車両用操作ペダル装置を提供する。
【解決手段】上記装置は、ペダルアーム20と、伸縮装置30と、リンク機構40とを備える。リンク機構40は、連結リンク50と連結レバー70とを有する。連結レバー70は、連結リンク50と伸縮装置30との間で両者を繋ぐように延びる。連結レバー70は、第3中心線L3周りに相対回転可能な態様で連結リンク50に連結される第1連結部71と、第4中心線L4周りに回転可能な態様でレバー支持軸60に支持される支持部73と、第5中心線L5周りに相対回転可能な態様で伸縮装置30に連結される第2連結部72と、を有する。連結レバー70は、第1中心線L1の延びる方向から見た場合に、第1連結部71の第3中心線L3と、支持部73の第4中心線L4と、第2連結部72の第5中心線L5と、が鋭角三角形の3つの角にあたる位置に配置される構造をなす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダル支持軸から上方に向けて延びるとともに、車両の運転者による踏み込み操作に伴って前記ペダル支持軸の第1中心線周りに回転するペダルアームと、
前記ペダルアームよりも前記車両の前方側に位置し、前記ペダルアームに連結されて、前記ペダルアームの踏み込み操作に伴って伸縮可能に構成された伸縮装置と、
を備える車両用操作ペダル装置において、
前記ペダルアームと前記伸縮装置との間に設けられるとともに、連結リンクと連結レバーとを有し、前記ペダルアームが前記第1中心線周りに回転するときに前記ペダルアームの回転運動を前記伸縮装置の伸縮運動に変換するリンク機構を備え、
前記連結リンクは、前記第1中心線と平行に延びる第2中心線周りにおいて前記ペダルアームに対して相対回転可能な態様で前記ペダルアームに連結される第1部分と、前記第1中心線と平行に延びる第3中心線周りにおいて前記連結レバーの第1連結部に対して相対回転可能な態様で前記第1連結部に連結される第2部分と、を有し、
前記連結レバーは、
前記連結リンクと前記伸縮装置との間で両者を繋ぐように延びており、且つ、
前記第1連結部と、前記ペダル支持軸と平行に延びるレバー支持軸の第4中心線周りにおいて回転可能な態様で同レバー支持軸に支持される支持部と、前記第4中心線と平行な第5中心線周りにおいて前記伸縮装置に対して相対回転可能な態様で前記伸縮装置に連結される第2連結部と、を有しており、且つ、
前記第1中心線の延びる方向から見た場合に、前記第1連結部の前記第3中心線と、前記支持部の前記第4中心線と、前記第2連結部の前記第5中心線と、が鋭角三角形の3つの角にあたる位置に配置される構造をなしている、車両用操作ペダル装置。
【請求項2】
前記連結レバーは、前記第1中心線の延びる方向から見た場合に、前記第3中心線および前記第5中心線が前記第4中心線よりも前記車両の上下方向における下方側になる様態で配置されている
請求項1に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項3】
前記レバー支持軸に設けられ、前記連結レバーの前記第4中心線周りにおける角度位置を検出する回転センサを有する
請求項1に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項4】
前記ペダルアームおよび前記伸縮装置は、前記第1中心線と直交する方向から見た場合に、互いに重ならないように車幅方向においてずれた位置に設けられる
請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項5】
前記伸縮装置は、前記車両のブレーキ装置に対し、同ブレーキ装置を作動させるための油圧を付与するマスタシリンダである
請求項1に記載の車両用操作ペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操作ペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、ブレーキペダル装置や、アクセルペダル装置、クラッチペダル装置などの車両用操作ペダル装置が設けられている。
特許文献1には、ブレーキペダル装置が記載されている。このブレーキペダル装置は、ペダルアームと、伸縮装置(具体的には、マスタシリンダ)と、操作ロッドとを有している。ペダルアームは、ペダル支持軸から上方に向けて伸びている。ペダルアームは、車両の運転者による踏み込み操作に伴ってペダル支持軸の中心線周りに回転する。マスタシリンダは、ペダルアームよりも車両の前方側に位置している。操作ロッドは、ペダルアームとマスタシリンダとを連結している。このブレーキペダル装置では、ペダルアームが踏み込み操作されると、操作ロッドを介してマスタシリンダに踏力が伝達される。これにより、車両が減速されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、ブレーキペダル装置は、運転席の足元の限られたスペースに配置される。
上記ブレーキペダル装置は、ペダルアームが踏み込み操作されることで、ペダルアームとマスタシリンダとを連結する操作ロッドを介して、同マスタシリンダが操作される構造になっている。こうした構造のブレーキペダル装置は、各構成部品の配置の自由度が低い。上記ブレーキペダル装置は、そうした限られたスペースへの配置が難しいという問題があった。
【0005】
なお、上記問題は、ブレーキペダル装置に限られるものではなく、他の車両用操作ペダル装置、すなわちアクセルペダル装置やクラッチペダル装置においても同様に生じうるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための車両用操作ペダル装置は、ペダル支持軸から上方に向けて延びるとともに、車両の運転者による踏み込み操作に伴って前記ペダル支持軸の第1中心線周りに回転するペダルアームと、前記ペダルアームよりも前記車両の前方側に位置し、前記ペダルアームに連結されて、前記ペダルアームの踏み込み操作に伴って伸縮可能に構成された伸縮装置と、を備える車両用操作ペダル装置において、前記ペダルアームと前記伸縮装置との間に設けられるとともに、連結リンクと連結レバーとを有し、前記ペダルアームが前記第1中心線周りに回転するときに前記ペダルアームの回転運動を前記伸縮装置の伸縮運動に変換するリンク機構を備え、前記連結リンクは、前記第1中心線と平行に延びる第2中心線周りにおいて前記ペダルアームに対して相対回転可能な態様で前記ペダルアームに連結される第1部分と、前記第1中心線と平行に延びる第3中心線周りにおいて前記連結レバーの第1連結部に対して相対回転可能な態様で前記第1連結部に連結される第2部分と、を有し、前記連結レバーは、前記連結リンクと前記伸縮装置との間で両者を繋ぐように延びており、且つ、前記第1連結部と、前記ペダル支持軸と平行に延びるレバー支持軸の第4中心線周りにおいて回転可能な態様で同レバー支持軸に支持される支持部と、前記第4中心線と平行な第5中心線周りにおいて前記伸縮装置に対して相対回転可能な態様で前記伸縮装置に連結される第2連結部と、を有しており、且つ、前記第1中心線の延びる方向から見た場合に、前記第1連結部の前記第3中心線と、前記支持部の前記第4中心線と、前記第2連結部の前記第5中心線と、が鋭角三角形の3つの角にあたる位置に配置される構造をなしている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】非操作状態の第1実施形態の車両用操作ペダル装置の側面図である。
【
図2】第1実施形態の車両用操作ペダル装置の斜視図である。
【
図3】操作状態の第1実施形態の車両用操作ペダル装置の側面図である。
【
図4】第2実施形態の車両用操作ペダル装置の斜視図である。
【
図5】第2実施形態の車両用操作ペダル装置の正面図である。
【
図6】第2実施形態におけるペダルアームおよびリンク機構および伸縮装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、車両用操作ペダル装置の第1実施形態について
図1~
図3を参照して説明する。
図1および
図2に示すように、車両用操作ペダル装置は、ベース部10と、ペダルアーム20と、伸縮装置30と、リンク機構40とを備えている。
【0009】
<ベース部>
ベース部10は、車両用操作ペダル装置の機能を実現するための構成として、ペダルアーム20、伸縮装置30、およびリンク機構40を含む各種の構成部品を組み付けるためのベースとなる部分である。ベース部10は、車両における運転席の足元に固定されている。ベース部10における車両後方側の部分はフロアパネルFPに沿って延びている。フロアパネルFPは、車両のフロアを構成するパネル部材である。また、ベース部10における車両前方側の部分はトーボードTBに沿って延びている。トーボードTBは、車室前壁の下端部分を構成するパネル部材である。トーボードTBは、上部が下部に対して車両前方側に傾いた状態で、フロアパネルFPから車両前方且つ斜め上方(
図1における左上)に向けて延びている。
【0010】
ベース部10は、ペダル支持部11と、レバー支持部12とを有している。ペダル支持部11は、ペダルアーム20を支持する部分である。ペダル支持部11は、ベース部10における車両後方側の部分に設けられている。レバー支持部12は、リンク機構40(詳しくは、後述するレバー支持軸60)を支持する部分である。レバー支持部12は、ベース部10における車両前後方向の中間位置に設けられている。
【0011】
<ペダルアーム>
ペダルアーム20は、車両の運転者によって踏み込み操作される操作部材である。ペダルアーム20の下部にはペダル支持軸21が設けられている。ペダル支持軸21は、外面が円柱状をなしている。ペダル支持軸21の中心線(以下、第1中心線L1)は、車幅方向(
図1における紙面に直交する方向)において延びている。
【0012】
本実施形態では、ペダルアーム20のペダル支持軸21がベース部10のペダル支持部11に支持されている。これにより、ペダルアーム20は、下部がペダル支持軸21に支持されている。ペダルアーム20は、ペダル支持軸21から上方に向けて延びている。ペダルアーム20は、運転者による踏み込み操作に伴って、ペダル支持軸21の第1中心線L1周りに回転する。
【0013】
<伸縮装置>
伸縮装置30としては、車両のブレーキ装置に対して同ブレーキ装置を作動させるための油圧を付与するマスタシリンダ、および、運転者がペダルアーム20を踏み込み操作したときに同ペダルアーム20に対し反力を付与する反力装置といったものが挙げられる。本実施形態では上記マスタシリンダが伸縮装置30とされている。
【0014】
図1および
図2に示すように、伸縮装置30は、ベース部10における車両前方側の部分に固定されている。伸縮装置30は、上部が下部に対して車両前方側に傾いた姿勢で固定されている。これにより、伸縮装置30は、トーボードTBに沿って延びる姿勢で配置されている。
【0015】
伸縮装置30は、ペダルアーム20よりも車両前方側、すなわち
図1の左側に位置している。上記ペダルアーム20と伸縮装置30とは、車両後方側から見て、互いに重なる位置に設けられている。伸縮装置30は、車両上下方向に対して斜め方向、具体的にはトーボードTBに沿う方向において伸縮することが可能となっている。
【0016】
<リンク機構>
リンク機構40は、ペダルアーム20と伸縮装置30との間に設けられている。リンク機構40は、ペダルアーム20と伸縮装置30とにそれぞれ連結されている。リンク機構40は、運転者の踏み込み操作によってペダルアーム20がペダル支持軸21の第1中心線L1周りに回転したときに、そのペダルアーム20の回転運動を伸縮装置30の伸縮運動に変換するものである。以下、リンク機構40の構造について詳しく述べる。
【0017】
リンク機構40は、連結リンク50と、レバー支持軸60と、連結レバー70とを備えている。本実施形態では、車両用操作ペダル装置の各構成部材が、車両後方側からペダルアーム20、連結リンク50、連結レバー70、および伸縮装置30の順に並ぶ態様で配置されている。
【0018】
<連結リンク>
連結リンク50は、ペダルアーム20と連結レバー70との間で両者を繋ぐように延びている。
【0019】
連結リンク50の長手方向における一方の端部(以下、第1部分51)は、ペダルアーム20に連結されている。第1部分51は、第2中心線L2周りにおいてペダルアーム20に対して相対回転可能な態様で、同ペダルアーム20に連結されている。本実施形態では、第2中心線L2とペダル支持軸21の第1中心線L1とが平行に延びている。第1部分51は、詳しくは、第2中心線L2を有する第1ピン41を介してペダルアーム20に連結されている。
【0020】
連結リンク50の長手方向における上記第1部分51と反対側の端部(以下、第2部分52)は、連結レバー70の第1連結部71に連結されている。連結リンク50の第2部分52は、第3中心線L3周りにおいて連結レバー70に対して相対回転可能な態様で、同連結レバー70の第1連結部71に連結されている。本実施形態では、第3中心線L3とペダル支持軸21の第1中心線L1とが平行に延びている。第2部分52は、詳しくは、第3中心線L3を有する第2ピン43を介して第1連結部71に連結されている。
【0021】
<レバー支持軸>
レバー支持軸60は、ベース部10のレバー支持部12に回転可能に支持されている。レバー支持軸60は、ペダル支持軸21よりも車両前方側(
図1の左側)に位置している。レバー支持軸60は、外面が円柱状をなしている。レバー支持軸60の中心線(以下、第4中心線L4)は、車幅方向(
図1における紙面に直交する方向)において延びている。レバー支持軸60の第4中心線L4は、ペダル支持軸21の第1中心線L1と平行に延びている。レバー支持軸60は、第4中心線L4周りにおいて、ベース部10に対して相対回転可能になっている。
【0022】
<連結レバー>
連結レバー70は、上記レバー支持軸60に固定されている。連結レバー70は、レバー支持軸60とともに、第4中心線L4周りにおいてベース部10に対して相対回転可能になっている。連結レバー70は、車両の前後方向および上下方向に延在する板状をなしている。連結レバー70は、連結リンク50と伸縮装置30との間で両者を繋ぐように延びている。連結レバー70は、第1中心線L1の延びる方向から見た場合に、略V字状をなしている。連結レバー70は、支持部73と、前記第1連結部71と、第2連結部72とを有している。これら支持部73、第1連結部71、および第2連結部72は、略V字状の連結レバー70において外方に向けて凸状をなす3箇所の部分に配置されている。
【0023】
支持部73は、レバー支持軸60に固定および支持される部分である。第1連結部71は、前述したように連結リンク50の第2部分52に連結される部分である。第1連結部71は、ペダルアーム20におけるペダル支持軸21よりも上方側に位置している。
【0024】
第2連結部72は、伸縮装置30に連結される部分である。伸縮装置30の連結部分には、平面視でU字状をなす連結具としてのクレビス31と、円柱状をなす連結ピンとしてのクレビスピン32とを有している。クレビスピン32の中心線(以下、第5中心線L5)は車幅方向において延びている。クレビスピン32の第5中心線L5は、ペダル支持軸21の第1中心線L1と平行に延びている。連結レバー70の第2連結部72は、クレビス31およびクレビスピン32を介して、伸縮装置30に連結されている。クレビスピン32は、伸縮装置30の下端部に位置している。本実施形態では、伸縮装置30の下端部の往復移動によって同伸縮装置30が伸縮するようになる。
【0025】
図1に示すように、連結レバー70は、第1中心線L1の延びる方向から見た場合に、第1連結部71の第3中心線L3と、支持部73の第4中心線L4と、第2連結部72の第5中心線L5とが鋭角三角形の3つの角にあたる位置に配置される構造をなしている。すなわち、連結レバー70は、第1中心線L1の延びる方向から見た状態で第3中心線L3と第4中心線L4と第5中心線L5とを3つの頂点とする三角形を描いた場合に、この三角形が鋭角三角形になる構造をなしている。また、
図1および
図3に示すように、連結レバー70は、第1連結部71の第3中心線L3および第2連結部72の第5中心線L5が、支持部73の第4中心線L4よりも車両上下方向における下方側(以下、単に下方側)になる様態で、配置されている。
【0026】
<回転センサ>
図2に示すように、本実施形態の車両用操作ペダル装置は、ペダルアーム20の踏み込み操作量を検出するための回転センサ80を有している。回転センサ80は、レバー支持軸60に設けられている。回転センサ80は、詳しくは、レバー支持軸60に連結される態様でベース部10のレバー支持部12に取り付けられている。回転センサ80は、運転者による踏み込み操作量の指標値として、連結レバー70の第4中心線L4周りにおける角度位置、具体的には、レバー支持軸60の角度位置を検出する。本実施形態では、回転センサ80の検出信号が電子制御装置(図示略)に取り込まれるとともに、同電子制御装置による車両運転制御に利用される。
【0027】
<作用>
以下、本実施形態の車両用操作ペダル装置による作用について、
図1および
図3を参照しつつ説明する。なお
図1は、ペダルアーム20が踏み込み操作されていない非操作状態における車両用操作ペダル装置を示している。また
図3は、ペダルアーム20が踏み込み操作されている操作状態における車両用操作ペダル装置を示している。
【0028】
先ず、運転者によりペダルアーム20が踏み込み操作された場合における車両用操作ペダル装置の動作について説明する。
図1および
図3に示すようにペダルアーム20が踏み込み操作されると、
図1中に矢印A1で示すように、ペダル支持軸21の第1中心線L1を回転中心に、ペダルアーム20が車両前方に倒れるように回動する。これに伴い、連結レバー70の第1連結部71が、連結リンク50の第2部分52によって、車両前方且つ斜め下方(
図1における左下)に押圧されるようになる。これにより、
図1中に矢印A2で示すように、連結レバー70は、レバー支持軸60の第4中心線L4を回転中心に回動する。これに伴い、
図1中に矢印A3で示すように、連結レバー70の第2連結部72が車両前方且つ斜め上方(
図1における左上)に移動する。これにより、伸縮装置30が短縮される。このとき伸縮装置30は、車両のブレーキ装置を作動させるための油圧を発生する。
【0029】
次に、運転者によるペダルアーム20の踏み込み操作が解除された場合における車両用操作ペダル装置の動作について説明する。
ペダルアーム20の踏み込み操作が解除されると、
図3中に矢印B1で示すように、ペダル支持軸21の第1中心線L1を回転中心にペダルアーム20が回動することで、同ペダルアーム20は踏み込み操作前の位置(
図1に示す位置)に復帰する。これに伴い、連結レバー70の第1連結部71が、連結リンク50の第2部分52によって、車両後方且つ斜め上方(
図3における右上)に引き戻される。これにより、
図3中に矢印B2で示すように、連結レバー70は、レバー支持軸60の第4中心線L4を回転中心に回動する。これに伴い、
図3中に矢印B3で示すように、連結レバー70の第2連結部72が車両後方且つ斜め下方(
図3における右下)に移動する。これにより、伸縮装置30は伸長される。このとき伸縮装置30は、車両のブレーキ装置を作動させるための油圧発生を停止する。
【0030】
<作用効果>
以下、本実施形態の車両用操作ペダル装置による作用効果について説明する。
(1-1)連結レバー70は、第1中心線L1の延びる方向から見た場合に、第1連結部71の第3中心線L3と、支持部73の第4中心線L4と、第2連結部72の第5中心線L5と、が鋭角三角形の3つの角にあたる位置に配置される構造をなしている。
【0031】
本実施形態によれば、こうした連結レバー70と連結リンク50とを有するリンク機構40が設けられるため、それら連結レバー70および連結リンク50の形状設定を通じて、ペダルアーム20と伸縮装置30との位置関係を高い自由度で定めることができる。したがって、車両用操作ペダル装置を高い自由度で配置することができる。
【0032】
第1連結部71の第3中心線L3と支持部73の第4中心線L4と第2連結部72の第5中心線L5とが鈍角三角形の3つの角にあたる位置に配置される構造の連結レバーを、比較例の連結レバーとする。本実施形態によれば、比較例の連結レバーを用いる場合と比較して、連結レバー70の車両前後方向における長さを短くすることができる。これにより、車両用操作ペダル装置全体の車両前後方向における長さが短くなるように、同車両用操作ペダル装置を小型化することができる。このようにして、車両用操作ペダル装置を小型化することによっても、同車両用操作ペダル装置を高い自由度で配置することができるようになる。
【0033】
(1-2)連結レバー70は、第1連結部71の第3中心線L3および第2連結部72の第5中心線L5が支持部73の第4中心線L4よりも下方側になる様態で、配置されている。
【0034】
本実施形態によれば、比較例の連結レバーを用いる場合と比較して、連結レバー70の第1連結部71の位置と第2連結部72の位置とを下方側に設定することができる。そのため、第1連結部71に連結される連結リンク50や第2連結部72に連結される伸縮装置30を下方側に配置することができる。したがって、車両用操作ペダル装置を車両上下方向においてコンパクトな構造にすることができる。
【0035】
また、ペダルアーム20の踏み込み操作に伴って連結レバー70の第2連結部72が車両前方且つ斜め上方に移動する構造にすることができる。これにより、伸縮装置30の伸縮方向を車両上下方向に対して斜め方向に設定することができる。そのため伸縮装置30を、車両上下方向に対して斜め方向に延びるトーボードTBに沿うように配置することができる。したがって、運転席の足元のスペースに、伸縮装置30を高いスペース効率で配置することができる。
【0036】
(1-3)レバー支持軸60に、回転センサ80が取り付けられている。本実施形態によれば、回転センサ80によって第4中心線L4周りにおける連結レバー70の角度位置を検出することで、ペダルアーム20の踏み込み操作における操作量を検出することができる。また、回転センサ80がペダルアーム20よりも車両前方側に配置されるため、回転センサ80がペダル支持軸21に設けられる場合と比較して、回転センサ80と運転者の足とが干渉し難い構造にすることができる。これにより、運転者の履き物を介して回転センサ80に異物(水分、泥)が付着することを抑えることもできる。したがって、回転センサ80の耐久性や信頼性を向上させることができる。
【0037】
[第2実施形態]
以下、車両用操作ペダル装置の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に、
図4~
図6を参照して説明する。なお以下では、本実施形態の各構成のうち、第1実施形態と同様の構成については同一の符号もしくは対応する符号を付すとともに、それら構成についての重複する説明は省略する。
【0038】
本実施形態の車両用操作ペダル装置と第1実施形態の車両用操作ペダル装置とは、ペダルアームと伸縮装置との位置関係や、レバー支持軸の長さ、連結レバーの構造が異なる。
<ペダルアームと伸縮装置との位置関係>
図4および
図5に示すように、本実施形態では、ペダルアーム120および伸縮装置30が、ペダル支持軸21の第1中心線L1と直交する方向から見た場合に互いに重ならないように、車幅方向においてずれた位置に設けられる。具体的には、ペダルアーム120は車両後方側から見て右側に配置されるとともに、伸縮装置30は車両後方側から見て左側に配置されている。
【0039】
<レバー支持軸の長さ>
図4~
図6に示すように、レバー支持軸160は、第4中心線L4が車幅方向に延びる態様で設けられている。レバー支持軸160は、ペダルアーム120と伸縮装置30との間で延びている。レバー支持軸160は、ペダルアーム120の車両前方にあたる部分から、伸縮装置30の車両後方にあたる部分まで延びている。
【0040】
<連結レバーの構造>
本実施形態では、連結リンク50と伸縮装置30とを連結する連結レバー100が、第1連結レバー101と第2連結レバー102との2つのレバー部材によって構成されている。第1連結レバー101の支持部101Aは上記レバー支持軸160に固定および支持されている。また第2連結レバー102の支持部102Aは上記レバー支持軸160に固定および支持されている。第1連結レバー101および第2連結レバー102は、上記レバー支持軸160とともに、同レバー支持軸160の第4中心線L4周りにおいてベース部110に対して相対回転可能になっている。
【0041】
第1連結レバー101および第2連結レバー102は、車両の前後方向および上下方向に延在する板状をなしている。第1連結レバー101は、連結リンク50およびペダルアーム120の車両前方に配置されている。第1連結レバー101の第1連結部71は、連結リンク50に連結されている。本実施形態では、連結リンク50および第1連結レバー101を介して、レバー支持軸160とペダルアーム120とが連結されている。第2連結レバー102は、伸縮装置30の車両後方に配置されている。第2連結レバー102の第2連結部72は、伸縮装置30に連結されている。本実施形態では、第2連結レバー102を介して、レバー支持軸160と伸縮装置30とが連結されている。
【0042】
図6に示すように、本実施形態では、第1連結レバー101と第2連結レバー102とによって構成される連結レバー100が、以下に記載する構造をなしている。
第1連結レバー101と第2連結レバー102とによって構成される連結レバー100は、第1中心線L1の延びる方向から見た場合に、略V字状をなしている。第1連結レバー101の支持部101Aおよび第2連結レバー102の支持部102Aは、略V字状の連結レバー100において外方に向けて凸状をなす3箇所の部分のうちの一つに配置されている。具体的には、第1連結レバー101の支持部101Aおよび第2連結レバー102の支持部102Aは、第1中心線L1の延びる方向から見た場合に第1連結レバー101と第2連結レバー102とが重なる部分に配置されている。第1連結レバー101の第1連結部71および第2連結レバー102の第2連結部72は、略V字状の連結レバー100において外方に向けて凸状をなす3箇所の部分のうちの残りの2つに配置されている。
【0043】
連結レバー100は、第1中心線L1の延びる方向から見た場合に、第1連結部71の第3中心線L3と、レバー支持軸160の第4中心線L4と、第2連結部72の第5中心線L5とが鋭角三角形の3つの角にあたる位置に配置される構造をなしている。すなわち、連結レバー100は、第1連結部71の第3中心線L3と、レバー支持軸160の第4中心線L4と、第2連結部72の第5中心線L5とを3つの頂点とする三角形を描いた場合に、この三角形が鋭角三角形になる構造をなしている。また、連結レバー100は、第1連結部71の第3中心線L3および第2連結部72の第5中心線L5が、レバー支持軸160の第4中心線L4よりも下方側になる様態で、配置されている。なお本実施形態では、第4中心線L4が、第1連結レバー101の支持部101Aについての第4中心線に相当し、且つ、第2連結レバー102の支持部102Aについての第4中心線に相当する。
【0044】
<作用効果>
本実施形態の車両用操作ペダル装置によれば、先の(1-1)~(1-3)に記載の作用効果に準じた作用効果に加えて、以下の(2-1)に記載する作用効果が得られる。
【0045】
(2-1)ペダルアーム120および伸縮装置30は、ペダル支持軸21の第1中心線L1と直交する方向から見た場合に互いに重ならないように、車幅方向においてずれた位置に設けられている。本実施形態によれば、車両用操作ペダル装置を、ペダルアーム120の踏み込み操作に際して伸縮装置30が邪魔にならない構造にすることができる。そのため、ペダルアーム120と伸縮装置30とが車両後方側から見て互いに重なる位置に設けられる装置と比較して、ペダルアーム120を車両前方側に配置することができる。これにより、車両用操作ペダル装置を車両の前後方向においてコンパクトな構造にすることができる。
【0046】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0047】
・各実施形態において、マスタシリンダを伸縮装置30とすることに代えて、反力装置を伸縮装置30とすることができる。この場合、ペダルアーム20,120は、アクセルペダルやクラッチペダルに用いられるものであってもよい。
【0048】
・伸縮装置30を、車両前後方向に延びる態様で、略水平に配置することもできる。この場合には、伸縮装置30をフロアパネルFPに沿って延びる態様で配置することができる。
【0049】
・各実施形態において、連結レバー70,100の形状は、第1中心線L1の延びる方向から見て略三角形状に形成するなど、任意に変更することができる。
・各実施形態において、連結レバー70,100を、第3中心線L3および第5中心線L5が第4中心線L4よりも上方側になる様態で配置してもよい。
【0050】
・各実施形態にかかる車両用操作ペダル装置は、回転センサ80として、ペダルアーム20,120の踏み込み操作の有無を検出するための検出スイッチが設けられた車両用操作ペダル装置にも適用することができる。
【0051】
・各実施形態にかかる車両用操作ペダル装置は、回転センサ80が設けられていない車両用操作ペダル装置にも適用することができる。
・各実施形態にかかる車両用操作ペダル装置は、ブレーキペダルとしてのペダルアーム20,120を備えるブレーキペダル装置に限らず、アクセルペダルを備えるアクセルペダル装置や、クラッチペダルを備えるクラッチペダル装置にも適用することができる。
【0052】
<付記>
上記各実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
[付記1]ペダル支持軸から上方に向けて延びるとともに、車両の運転者による踏み込み操作に伴って前記ペダル支持軸の第1中心線周りに回転するペダルアームと、前記ペダルアームよりも前記車両の前方側に位置し、前記ペダルアームに連結されて、前記ペダルアームの踏み込み操作に伴って伸縮可能に構成された伸縮装置と、備える車両用操作ペダル装置において、前記ペダルアームと前記伸縮装置との間に設けられるとともに、連結リンクと連結レバーとを有し、前記ペダルアームが前記第1中心線周りに回転するときに前記ペダルアームの回転運動を前記伸縮装置の伸縮運動に変換するリンク機構を備え、前記連結リンクは、前記第1中心線と平行に延びる第2中心線周りにおいて前記ペダルアームに対して相対回転可能な態様で前記ペダルアームに連結される第1部分と、前記第1中心線と平行に延びる第3中心線周りにおいて前記連結レバーの第1連結部に対して相対回転可能な態様で前記第1連結部に連結される第2部分と、を有し、前記連結レバーは、前記連結リンクと前記伸縮装置との間で両者を繋ぐように延びており、且つ、前記第1連結部と、前記ペダル支持軸と平行に延びるレバー支持軸の第4中心線周りにおいて回転可能な態様で同レバー支持軸に支持される支持部と、前記第4中心線と平行な第5中心線周りにおいて前記伸縮装置に対して相対回転可能な態様で前記伸縮装置に連結される第2連結部と、を有しており、且つ、前記第1中心線の延びる方向から見た場合に、前記第1連結部の前記第3中心線と、前記支持部の前記第4中心線と、前記第2連結部の前記第5中心線と、が鋭角三角形の3つの角にあたる位置に配置される構造をなしている、車両用操作ペダル装置。
【0053】
[付記2]前記連結レバーは、前記第1中心線の延びる方向から見た場合に、前記第3中心線および前記第5中心線が前記第4中心線よりも前記車両の上下方向における下方側になる様態で配置されている、[付記1]に記載の車両用操作ペダル装置。
【0054】
[付記3]前記レバー支持軸に設けられ、前記連結レバーの前記第4中心線周りにおける角度位置を検出する回転センサを有する、[付記1]または[付記2]に記載の車両用操作ペダル装置。
【0055】
[付記4]前記ペダルアームおよび前記伸縮装置は、前記第1中心線と直交する方向から見た場合に互いに重ならないように、車幅方向においてずれた位置に設けられる、[付記1]~[付記3]のいずれか一つに記載の車両用操作ペダル装置。
【0056】
[付記5]前記伸縮装置は、前記車両のブレーキ装置に対し、同ブレーキ装置を作動させるための油圧を付与するマスタシリンダである、[付記1]~[付記4]のいずれか一つに記載の車両用操作ペダル装置。
【符号の説明】
【0057】
FP フロアパネル
TB トーボード
10,110 ベース部
11 ペダル支持部
12 レバー支持部
20,120 ペダルアーム
21 ペダル支持軸
30 伸縮装置
31 クレビス
32 クレビスピン
40 リンク機構
41 第1ピン
43 第2ピン
50 連結リンク
51 第1部分
52 第2部分
60,160 レバー支持軸
70,100 連結レバー
71 第1連結部
72 第2連結部
73,101A,102A 支持部
80 回転センサ
101 第1連結レバー
102 第2連結レバー