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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089361
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20240626BHJP
   B60C 3/04 20060101ALI20240626BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240626BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240626BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240626BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20240626BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C3/04 B
B60C1/00 A
B60C11/03 Z
B60C11/03 D
B60C11/03 100B
C08L21/00
C08K3/013
C08K5/548
C08K3/36
C08L7/00
C08L9/00
C08L91/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204678
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 一恭
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA05
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB06
3D131BC01
3D131CA03
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002AC111
4J002AE052
4J002DA036
4J002DJ016
4J002EX087
4J002FD016
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】高荷重走行時の低燃費性能が向上したタイヤを提供すること。
【解決手段】トレッド部を有するタイヤであって、タイヤ外径Dtが600mm以下であり、トレッド部は、ゴム成分およびフィラーを含有するゴム組成物により構成され、タイヤ断面幅Wt(mm)および前記ゴム組成物の30℃におけるtanδ(30℃tanδ)が下記式(1)を満たす、タイヤ。
30℃tanδ≦-7.84×10-5×(Wt-195)2+0.175・・・(1)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
タイヤ外径Dtが600mm以下であり、
前記トレッド部は、ゴム成分およびフィラーを含有するゴム組成物により構成され、
タイヤ断面幅Wt(mm)および前記ゴム組成物の30℃におけるtanδ(30℃tanδ)が下記式(1)を満たす、タイヤ。
30℃tanδ≦-7.84×10-5×(Wt-195)2+0.175・・・(1)
【請求項2】
Wt(mm)が180以上225以下である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム組成物の30℃tanδが0.10以下である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ゴム組成物がさらにメルカプト系シランカップリング剤を含有する、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項5】
前記フィラーが平均一次粒子径16nm以下のシリカを含む、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ゴム組成物におけるゴム成分中の総スチレン量が20質量%未満である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ゴム成分がイソプレン系ゴムを含む、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ゴム組成物のゴム成分100質量部に対する可塑剤の合計含有量が20質量部以下である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ゴム組成物のゴム成分100質量部に対するフィラーの合計含有量が60質量部以下である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ゴム組成物がさらに植物油を含有する、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項11】
タイヤ外径Dtが550mm以下である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項12】
タイヤの最大負荷能力WL(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/WL)が0.0150以下である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項13】
タイヤ外径Dt(mm)に対するタイヤ断面幅Wt(mm)の比(Wt/Dt)が0.30以上である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項14】
前記トレッド部の接地面におけるランド比が65%以上である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項15】
自動運転車用タイヤである、請求項1または2記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に求められる性能は多岐にわたる。その中の重要な性能として、居住性の向上(車両スペースの確保)や低燃費性能が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、タイヤの断面幅を小さくすることにより、居住性を向上させ得るタイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-19494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両にタイヤ外径分のホイールハウスを確保する必要があるため、タイヤ断面幅を小さくするのみでは居住性の向上に限界がある。
【0006】
また、居住性の向上により、より多くの荷物等が積載できるようになるため、車両が高荷重で走行することが想定される。車両の高荷重走行時におけるタイヤの低燃費性能には、未だ改善の余地がある。
【0007】
本発明は、高荷重走行時の低燃費性能が向上したタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のタイヤに関する。
トレッド部を有するタイヤであって、
タイヤ外径Dtが600mm以下であり、
前記トレッド部は、ゴム成分およびフィラーを含有するゴム組成物により構成され、
タイヤ断面幅Wt(mm)および前記ゴム組成物の30℃におけるtanδ(30℃tanδ)が下記式(1)を満たす、タイヤ。
30℃tanδ≦-7.84×10-5×(Wt-195)2+0.175・・・(1)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高荷重走行時の低燃費性能が向上したタイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】タイヤのトレッド部の展開図の一例である。
図2】タイヤの断面図において、タイヤ断面幅Wt、タイヤ断面高さHt、タイヤ外径Dtを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のタイヤは、トレッド部を有するタイヤであって、タイヤ外径Dtが600mm以下であり、前記トレッド部は、ゴム成分およびフィラーを含有するゴム組成物により構成され、タイヤ断面幅Wt(mm)および前記ゴム組成物の30℃におけるtanδ(30℃tanδ)が下記式(1)を満たす、タイヤ、である。
30℃tanδ≦-7.84×10-5×(Wt-195)2+0.175・・・(1)
【0012】
理論に拘束されることは意図しないが、本発明において、高荷重走行時の低燃費性能が向上され得るメカニズムとしては、以下が考えられる。
【0013】
前記のとおり、タイヤ断面幅を小さくするのみでは、居住性の向上に限界があるが、タイヤ外径Dtを600mm以下とすることにより、居住性をさらに向上することができる。しかし一方で、外径が小さいタイヤを装着した車両が高荷重で走行すると、タイヤのサイドウォール部でのたわみが減少し、トレッド部は路面に接地した際にかかるタイヤ半径方向への変形(圧縮)が大きくなる。そこで、タイヤ断面幅Wt(mm)およびトレッド部を構成するゴム組成物の30℃tanδが前記式(1)を満たすことにより、(I)Wtが小さく、トレッド部がより変形しやすくなる領域では、Wtが小さいほど30℃tanδが小さくなり、トレッド部の変形による発熱を抑制する。また、(II)Wtが大きく、トレッド部全体の面積(体積)が大きくなりトレッド部全体での発熱が大きくなる領域では、Wtが大きいほど30℃tanδが小さくなり、トレッド部全体での発熱を抑制することができる。このように、前記式(1)を満たすことで、タイヤ外径Dtを600mm以下とするタイヤにおいて、高荷重での走行時における低燃費性能が向上するという、特筆すべき効果が達成されると考えられる。
【0014】
Wt(mm)は180以上225以下であることが好ましい。
【0015】
Wt(mm)が180未満ではサイドウォール部でのたわみの減少によるトレッド部の発熱の影響が大きくなり、低発熱性能が向上しにくくなると考えられる。また、省スペース化の観点から、Wt(mm)は225以下であることが好ましい。
【0016】
前記ゴム組成物の30℃tanδは0.10以下であることが好ましい。
【0017】
30℃tanδが0.10以下であることで、トレッド部の発熱が抑制され、低燃費性能がさらに向上すると考えられる。
【0018】
前記ゴム組成物がさらにメルカプト系シランカップリング剤を含有することが好ましい。
【0019】
メルカプト系シランカップリング剤を含有することで、シリカの分散性を向上させ、フィラーの凝集による発熱を抑制することができると考えられる。
【0020】
前記フィラーは平均一次粒子径16nm以下のシリカを含むことが好ましい。平均一次粒子径16nm以下のシリカを含むことで、ゴム成分との相互作用が増え、ゴム成分の分子鎖の動きが抑制され、ゴム組成物の発熱を抑制することができ、低燃費性能がさらに向上すると考えられる。
【0021】
前記ゴム組成物におけるゴム成分中の総スチレン量は20質量%未満であることが好ましい。ゴム成分中の総スチレン量が一定以下であることで、ゴム成分中のスチレン基による発熱が抑制され、低燃費性能がさらに向上すると考えられる。
【0022】
前記ゴム成分はイソプレン系ゴムを含むことが好ましい。イソプレン系ゴムは強度が高いため、ゴム組成物が変形しにくくなり、ゴム組成物の発熱を抑制することができるため、低発熱性能がさらに向上すると考えられる。
【0023】
前記ゴム組成物のゴム成分100質量部に対する可塑剤の合計含有量は20質量部以下であることが好ましい。可塑剤の含有量の上限値を前記とすることで、発熱が抑制され、低燃費性能がさらに向上すると考えられる。
【0024】
前記ゴム組成物のゴム成分100質量部に対するフィラーの合計含有量は60質量部以下であることが好ましい。フィラー量の上限値を前記とすることで、フィラーによる発熱が抑制され、低燃費性能がさらに向上すると考えられる。
【0025】
前記ゴム組成物は、可塑剤として植物油を含有することが好ましい。
【0026】
植物油を含有することで、フィラーの分散性が向上し、フィラーの凝集による発熱を抑制することができると考えられる。
【0027】
タイヤの最大負荷能力WL(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/WL)は0.0150以下であることが好ましい。タイヤの最大負荷能力に対してタイヤ重量を小さくすることで、同じ重量が加わっている場合であっても、タイヤ重量の分、転動時のエネルギーが小さくすることができ、タイヤに加わるエネルギーが低減されるので、低燃費性能がさらに向上すると考えられる。
【0028】
タイヤ外径Dt(mm)に対するタイヤ断面幅Wt(mm)の比(Wt/Dt)は0.30以上であることが好ましい。タイヤ外径に対してタイヤ断面幅を小さくすることで、転動時の変形をトレッド部で受け止めやすくする。また、トレッド面が大きくなるので、トレッド部に加わる力が分散されやすくなる。これらのことから、高荷重走行時の発熱が低減され、低燃費性能がさらに向上すると考えられる。
【0029】
前記トレッド部の接地面におけるランド比は65%以上であることが好ましい。ランド比が65%以上であることで、トレッド部の接地面積(体積)が大きくなり、トレッド部全体の変形による発熱を抑制することができ、低燃費性能がさらに向上すると考えられる。
【0030】
<定義>
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(一般社団法人日本自動車タイヤ協会)であれば“JATMA YEAR BOOK”に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば“STANDARDS MANUAL”に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association, Inc.)であれば“YEAR BOOK”に記載されている“Design Rim”を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないサイズのタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、すなわち、リムとタイヤの間から空気漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0031】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば「最高空気圧」、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値とし、正規リムと同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないサイズのタイヤの場合には、前記正規リムを標準リムとして記載されている別のタイヤサイズ(規格に定められているもの)の正規内圧(ただし、250KPa以上)を指す。なお、250KPa以上の正規内圧が複数記載されている場合には、その中の最小値を指す。
【0032】
「正規状態」は、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。なお、本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法は、正規状態で測定される。
【0033】
「タイヤ外径Dt(mm)」は、正規状態で測定されたタイヤ外径である。
【0034】
「タイヤ断面幅Wt(mm)」は、正規状態において、タイヤ側面に模様または文字などがある場合にはそれらを除いたものとしてのサイドウォール外面間の最大幅である。
【0035】
「タイヤ断面高さHt(mm)」は、タイヤ外径とリム径との差の1/2の長さであり、タイヤを正規リムにリム組みし、かつ、正規内圧が充填された無負荷の正規状態において測定される。
【0036】
「タイヤ重量G(kg)」は、リムの重量を含まないタイヤ単体の重量である。また、タイヤ内腔部に制音材、シーラント、センサーなどを取り付けた場合には、G(kg)はこれらの重量を含む値である。
【0037】
「タイヤ体積V(mm3)」は、Wt(mm)、Ht(mm)、およびDt(mm)から、下記式により算出される。
V={(Dt/2)2-(Dt/2-Ht)2}×π×Wt
【0038】
「タイヤの最大負荷能力WL(kg)」は、タイヤ体積Vから下記式により算出される。なお、JATMA規格で定められるロードインデックスに基づく「最大負荷能力」とは異なる。
L=0.000011×V+100
【0039】
「ゴム成分中の総スチレン量(S)」とは、ゴム組成物中のゴム成分100質量%中に含まれるスチレン部の合計含有量(質量%)であって、Σ(各スチレン含有ゴムのスチレン含量(質量%)×各スチレン含有ゴムのゴム成分中の含有量(質量%)/100)により計算される。例えば、ゴム成分が、第一のSBR(スチレン含量25質量%)30質量%、第二のSBR(スチレン含量27.5質量%)60質量%、およびBR10質量%からなる場合、ゴム成分100質量%中の総スチレン量(S)は、24.0質量%(=25×30/100+27.5×60/100)である。なお、スチレン含有ゴムのスチレン量は、後述の方法により算出される。
【0040】
「ランド比」とは、トレッド部接地面における、総接地面積に対する実接地面積の比をいう。総接地面積および実接地面積の測定方法は後述する。
【0041】
「可塑剤」とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、液体可塑剤(常温(25℃)で液体(液状)の可塑剤)および固体可塑剤(常温(25℃)で固体の可塑剤)を含み、ゴム組成物からアセトン抽出によって抽出される成分を指す。なお、アセトン抽出の方法は後述する。
【0042】
<測定方法>
「30℃tanδ」は、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、温度30℃、周波数10Hz、初期歪5%、および、動歪±1%、伸長モードの条件下で測定する損失正接である。損失正接測定用サンプルは、長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmの加硫ゴム組成物である。タイヤから切り出して作製する場合には、トレッド部から、タイヤ周方向が長辺、タイヤ半径方向が厚さ方向となるように切り出す。
【0043】
「トレッド部の接地形状」は、タイヤを正規リムに組み付け、正規内圧を加え、25℃で24時間静置した後、タイヤトレッド表面に墨を塗り、最大負荷能力を負荷してキャンバー角0°で紙に押しつけ、紙に転写させることで得られる。転写は、タイヤを周方向に72°ずつ回転させ、5か所で行う。よって、接地形状は5回得られる。
【0044】
「総接地面積」は、トレッド部の接地形状において、外輪郭により得られる面積の5か所平均値とする。「実接地面積」は、トレッド部の接地形状において、墨部分の面積の5か所平均値とする。すなわち、ランド比は下記式により求められる。
ランド比R=墨部分の面積の5か所平均値/接地形状の外輪郭により得られる面積の5か所平均値
【0045】
「シリカの平均一次粒子径」は、粒子を透過型または走査型電子顕微鏡で写真撮影し、粒子の形状がほぼ球形の場合には球の直径を粒子径とし、針状または棒状の場合には短径を粒子径とし、不定型の場合には短径と直径の平均径を粒子径としたときの、粒子400個の粒子径の算術平均により求められる。「シリカのN2SA」は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される。
【0046】
「カーボンブラックの平均一次粒子径」は、粒子を透過型または走査型電子顕微鏡で写真撮影し、粒子の形状がほぼ球形の場合には球の直径を粒子径とし、針状または棒状の場合には短径を粒子径とし、不定型の場合には短径と直径の平均径を粒子径としたときの、粒子400個の粒子径の算術平均により求められる。「カーボンブラックのN2SA」は、JIS K 6217-2:2017に準じて測定される。
【0047】
「スチレン含量」は、1H-NMR測定により算出される。例えば、SBR等のスチレン含有ゴムに適用される。
【0048】
「ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)」は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。例えば、SBR、BR等に適用される。
【0049】
「シス1,4-結合含有率(シス含量)」は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。例えば、BR等に適用される。
【0050】
「ゴム成分のガラス転移温度(Tg)」は、JIS K 7121に従い、昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量測定(DSC)を行って測定される値であり、例えば、SBR、BR等に適用される。
【0051】
「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTIPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。例えば、SBR、BR、樹脂、液状ポリマー等に適用される。
【0052】
「アセトン抽出」は、JIS K 6229:2015に準じて測定される。
【0053】
「軟化点」は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。例えば、樹脂成分等に適用される。
【0054】
<タイヤ>
本発明のタイヤついて、適宜図面を用いて説明するが、図面は本発明を限定するものではない
【0055】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤのトレッド部10の展開図である。図1において、トレッド部は、複数の周方向溝11を有している。周方向溝11は、周方向Cに沿って直線状に延びているが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、周方向に沿って波状や正弦波状やジクザク状に延びていてもよい。図1において、周方向溝11は4本設けられているが、周方向溝の数は特に限定されず、例えば2~5本であってもよい。本明細書において、「周方向溝」とは、タイヤ周方向Cに連続して延びる溝を指す。
【0056】
ショルダー陸部12は、周方向溝11とトレッド端Teとの間に形成された一対の陸部である。センター陸部13は、一対のショルダー陸部12の間に形成された陸部である。図1においては、センター陸部13は3つ設けられているが、センター陸部の数は特に限定されず、例えば1つ~5つであってもよい。
【0057】
図1において、ショルダー陸部12には、片端が周方向溝11に連通している幅方向溝14が設けられている。また、センター陸部13には、センター陸部13を横断し、両端が周方向溝に連通している幅方向溝15や、片端が周方向溝11に連通している幅方向溝16が設けられているが、このような態様に限定されない。
【0058】
本発明において、トレッド部の接地面におけるランド比は、トレッド部の接地面積(体積)が大きくなり、トレッド部全体の変形による発熱を抑制することができ、低燃費性能がさらに向上する観点から、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、75%以上が特に好ましい。また、ウェットグリップ性能の観点から、ランド比は、90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。なお、ランド比は前記測定方法により算出される。
【0059】
本発明では、トレッド部は、ゴム組成物により構成される。トレッド部は、単一のゴム層であっても二層以上のゴム層を含んでいてもよい。トレッド部が二層以上である場合には、トレッド面を構成するキャップゴム層と、ベルト層のタイヤ半径方向外側に隣接するベースゴム層とを備えることが好ましい。キャップゴム層とベースゴム層の間に、さらに1以上の中間ゴム層が存在していてもよい。本発明において、トレッド部を構成するゴム組成物の30℃におけるtanδ等の各物性値は、トレッド部が二層以上のゴム層を含んでいる場合には、いずれかのゴム層において物性値を満たしていればよいが、キャップゴム層が満たしていることが好ましい。
【0060】
タイヤ外径Dtは、500mm以上が好ましく、520mm以上がより好ましく、540mm以上がさらに好ましい。Dtを500mm以上とすることで、路面とトレッド部が接触する単位時間を短くすることができるため、トレッド部に生じるせん断変形を小さくすることができ、トレッド部での発熱を抑制することができると考えられる。また、本発明に係るタイヤのタイヤ外径Dtは、600mm以下であり、595mm以下が好ましく、590mm以下がより好ましく、550mm以下がさらに好ましい。
【0061】
タイヤ断面幅Wtは、トレッド部で変形を受け止めやすくし、トレッド部にかかる単位面積当たりの力を小さくする観点から、160mm以上が好ましく、170mm以上がより好ましく、180mm以上がさらに好ましい。また、タイヤ断面幅Wtの上限値は特に限定されないが、300mm未満が好ましく、250mm未満がより好ましく、240mm未満がさらに好ましく、230mm以下がさらに好ましい。
【0062】
タイヤ断面高さHtは、サイドウォール部にかかる変形量を小さくする観点から、130mm未満が好ましく、120mm未満がより好ましく、100mm未満がさらに好ましい。また、Htの下限は特に限定されないが、60mm以上が好ましく、70mm以上がより好ましく、80mm以上がさらに好ましい。
【0063】
タイヤ体積V(mm3)は、2.00×107mm3以上が好ましく、2.10×107mm3以上がより好ましく、2.20×107mm3以上がさらに好ましい。一方、前記体積Vは、3.80×107mm3未満が好ましく、3.75×107mm3未満がより好ましく、3.30×107mm3未満がさらに好ましい。
【0064】
本発明に係るタイヤのタイヤ重量G(kg)は、転動時にタイヤに加わるエネルギーを小さくする観点から、8.5kg以下が好ましく、8.0kg以下がより好ましく、7.5kg以下がさらに好ましい。また、タイヤ重量G(kg)の下限値は特に制限されないが、通常3.0kg以上である。
【0065】
なお、タイヤ重量G(kg)は、公知の方法により、適宜調整可能であり、例えば、タイヤを形成する各ゴム層の厚みを薄くすること、タイヤを構成する材料の比重を小さくすることなどにより、小さくすることができる。
【0066】
タイヤの最大負荷能力WL(kg)に対するタイヤ重量(kg)の比(G/WL)は、転動時にタイヤに加わるエネルギーを小さくする観点から、0.0150以下が好ましく、0.0145以下がより好ましく、0.0135以下がさらに好ましい。また、G/WLの下限値は特に限定されないが、0.0100以上が好ましく、0.0110以上がより好ましく、0.0115以上がさらに好ましい。
【0067】
なお、最大負荷能力WLは公知の方法により、適宜調整可能であり、例えば、外径Dtや断面幅Wtを大きくすることにより、大きくすることができる。
【0068】
タイヤ外径Dt(mm)に対するタイヤ断面幅Wt(mm)の比(Wt/Dt)は、転動時の変形をトレッド部で受け止めやすくし、トレッド部に加わる力が分散させる観点から、0.30以上が好ましく、0.32以上がより好ましく、0.33以上がさらに好ましい。また、上限は特に限定されないが、0.50以下が好ましく、0.48以下がより好ましく、0.45以下がさらに好ましい。
【0069】
本発明の一実施形態に係るタイヤは、車両に装着される。車両としては、例えば4輪自動車が挙げられるが、4輪に限定されるものではなく、3輪構成、6輪構成、8輪構成などであってもよい。また、車両は、例えば自動運転(レベル4以上)の電気自動車とすることができるが、これに限定されるものではなく、車両は自動運転ではなく、運転主体が人であってもよい。また、車両は電気自動車でなくてもよく、ガソリン車やハイブリッド車であってもよい。
【0070】
[ゴム組成物]
本発明のトレッド部を構成するゴム組成物(以下、断りのない限り本発明に係るゴム組成物という)について、以下詳細に説明する。
【0071】
本発明に係るタイヤおいて、タイヤ断面幅Wt(mm)および本発明に係るゴム組成物の30℃におけるtanδ(30℃tanδ)は、下記式(1)を満たす。
30℃tanδ≦-7.84×10-5×(Wt-195)2+0.175・・・(1)
【0072】
本発明に係るゴム組成物の30℃におけるtanδ(30℃tanδ)は、発熱抑制の観点から、0.20以下が好ましく、0.19以下がより好ましく、0.18以下がさらに好ましく、0.16以下がさらに好ましく、0.15以下がさらに好ましく、0.14以下が特に好ましく、0.10以下が最も好ましい。また、30℃tanδの下限は特に限定されないが、0.06以上が好ましく、0.08以上がより好ましく、0.09以上がさらに好ましく、0.10以上が特に好ましい。
【0073】
ゴム組成物のtanδは、タイヤ工業における常法により、調節することができる。例えば、ガラス転移温度の高いゴム成分を用いること、フィラーの量を多くすること、粒子径を小さくすること、可塑剤成分として樹脂成分を多くすること、硫黄および促進剤の量を減らすことなどにより、tanδを大きくすることができる。
【0074】
本発明に係るゴム組成物のゴム成分中の総スチレン量は、スチレン基による発熱を抑制し、低燃費性能をさらに向上する観点から、25質量%未満が好ましく、22質量%未満がより好ましく、20質量%未満がさらに好ましい。また、総スチレン量の下限は特に制限されないが、10質量%超が好ましく、15質量%超がより好ましく、18質量%超がさらに好ましい。
【0075】
<ゴム成分>
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分を含有する。ゴム成分としては、イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、イソプレン系ゴムを含有することが好ましく、イソプレン系ゴムおよびSBRを含有することがより好ましく、イソプレン系ゴム、SBRおよびBRを含有することがさらに好ましい。また、これらは後述のオイル、樹脂成分などの可塑剤成分により予め伸展された伸展ゴムを用いても良い。ゴム成分として、伸展ゴムを用いる場合、可塑剤成分のゴム固形分100質量部に対する含有量は、10質量部以上50質量部以下であることが好ましい。
【0076】
(イソプレン系ゴム)
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
NRとしては、特に限定されず、タイヤ業界において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等が挙げられる。
【0078】
本発明においてゴム成分中のイソプレン系ゴムの含有量は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、4質量%以上がさらに好ましく、5質量%以上が特に好ましい。一方、ゴム成分中のイソプレン系ゴムの含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
【0079】
(SBR)
SBRとしては特に限定されず、溶液重合SBR(S-SBR)、乳化重合SBR(E-SBR)、これらの変性SBR(変性S-SBR、変性E-SBR)等が挙げられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物等でカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するもの等)等が挙げられる。さらに、これらSBRの水素添加物(水素添加SBR)等も使用することができる。なかでもS-SBRが好ましく、変性S-SBRがより好ましい。
【0080】
変性SBRとしては、通常この分野で使用される官能基が導入された変性SBRが挙げられる。上記官能基としては、例えば、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、カルボキシル基、水酸基等の官能基が挙げられる。また、変性SBRとしては、水素添加されたもの、エポキシ化されたもの、スズ変性されたもの等を挙げることができる。
【0081】
前記で列挙されたSBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記で列挙されたSBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)、ZSエラストマー(株)等により製造・販売されているSBRを使用することができる。
【0082】
SBRのスチレン含量は、トレッド部での減衰性の確保の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上より好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上が特に好ましい。一方、SBRのスチレン含量の上限値としては、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。なお、SBRのスチレン含量は、前記測定方法により算出される。
【0083】
SBRのビニル結合量は、シリカとの反応性の担保、ゴム強度や耐摩耗性能の観点から10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましい。また、SBRのビニル結合量は、温度依存性の増大防止、ウェットグリップ性能、破断伸び、および耐摩耗性能の観点から、70モル%以下が好ましく、65モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましい。なお、SBRのビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、前記測定方法により算出される。
【0084】
SBRのガラス転移温度(Tg)は、低温脆性防止の観点から、-20℃以下が好ましく、-25℃以下がより好ましく、-30℃以下がさらに好ましい。一方、該Tgの下限値は特に制限されないが、耐摩耗性の観点から、-70℃以上が好ましく、-60℃以上がより好ましく、-50℃以上がさらに好ましい。SBRのガラス転移温度(Tg)は、前記測定方法により測定される。
【0085】
SBRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から15万以上が好ましく、20万以上がより好ましく、25万以上がさらに好ましい。また、Mwは、架橋均一性等の観点から、250万以下が好ましく、200万以下がより好ましい。なお、Mwは、前記測定方法により測定される。
【0086】
ゴム成分100質量%中のSBR含有量は、本発明の効果の観点から、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。また、トレッド部の発熱抑制の観点からは、該含有量は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい。
【0087】
(BR)
BRとしては特に限定されず、例えば、シス1,4結合含有率(シス含量)が90モル%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。変性BRとしては、上記SBRで説明したのと同様の官能基等で変性されたBRが挙げられる。
【0088】
ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)製のもの、宇部興産(株)製のもの、JSR(株)製のもの等が挙げられる。ハイシスBRを含有することで低温特性および耐摩耗性能を向上させることができる。シス含量は、好ましくは、95モル%以上、より好ましくは96モル%以上、さらに好ましくは97モル%以上である。シス含量は98モル%以上でも好ましい。なお、本明細書において、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
【0089】
希土類系BRとしては、希土類元素系触媒を用いて合成され、ビニル結合量(1,2結合ブタジエン単位量)が好ましくは1.8モル%以下、より好ましくは1.0モル%以下、さらに好ましくは0.8%モル以下であり、シス含量(シス-1,4結合含有率)が好ましくは95モル%以上、より好ましくは96%モル以上、さらに好ましくは97%以上である。希土類系BRとしては、例えば、ランクセス(株)製のものなどを用いることができる。
【0090】
SPB含有BRは、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散しているものが挙げられる。このようなSPB含有BRとしては、宇部興産(株)製のものなどを用いることができる。
【0091】
変性BRとしては、末端および/または主鎖がケイ素、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む官能基によって変性された変性ブタジエンゴム(変性BR)が好適に用いられる。
【0092】
その他の変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ-炭素結合で結合されているもの(スズ変性BR)等が挙げられる。また、変性BRは、水素添加されていないもの、水素添加されているもののいずれであってもよい。
【0093】
前記で列挙されたBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
BRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から、30万以上が好ましく、35万以上がより好ましく、40万以上がさらに好ましい。また、架橋均一性等の観点からは、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。なお、Mwは、前記方法により測定される。
【0095】
ゴム成分がBRを含有する場合のゴム成分100質量%中の含有量は、本発明の効果の観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、9質量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下が特に好ましい。
【0096】
(その他のゴム成分)
本発明に係るゴム成分として、前記のイソプレン系ゴム、SBRおよびBR以外のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、ゴム工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられる。これらその他のゴム成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
<フィラー>
本発明に係るゴム組成物は、フィラーを含むことが好ましい。フィラーとしては、カーボンブラック、シリカからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、シリカを含むことがより好ましく、カーボンブラックおよびシリカを含むことがさらに好ましい。またフィラーは、シリカおよびカーボンブラックのみからなるフィラーとしてもよい。
【0098】
(シリカ)
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。これらのシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ライフサイクルアセスメントの観点から、上記したシリカのほか、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたバイオマスシリカを適宜、上記のシリカと等量置換して用いてもよい。
【0099】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、補強性およびトレッド部での減衰性の確保の観点から、140m2/g以上が好ましく、150m2/g以上がより好ましく、160m2/g以上がさらに好ましく、170m2/g以上が特に好ましい。また、発熱性および加工性の観点からは、350m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がさらに好ましい。シリカのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0100】
シリカの平均一次粒子径は、シリカの比表面積を増やし、ゴム成分との相互作用を増やして分子鎖の動きを抑制して発熱を抑制する観点から、18nm以下が好ましく、17nm以下がより好ましく、16nm以下がさらに好ましい。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、5nm以上がさらに好ましい。シリカの平均一次粒子径は、前記測定方法により求めることができる。
【0101】
シリカを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴム組成物の柔軟性向上の観点から、20質量部超が好ましく、30質量部超がより好ましく、50質量部超がさらに好ましく、55質量部超が特に好ましい。また、ゴムの比重を低減させ軽量化を図る観点からは、100質量部未満が好ましく、95質量部未満がより好ましく、90質量部未満がさらに好ましく、85質量部未満がさらに好ましい。
【0102】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等、タイヤ工業において一般的なものを使用でき、具体的にはN110、N115、N120、N125、N134、N135、N219、N220、N231、N234、N293、N299、N326、N330、N339、N343、N347、N351、N356、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N772、N774、N787、N907、N908、N990、N991等を好適に用いることができ、これ以外にも自社合成品等も好適に用いることができる。これらのカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記した鉱物油などを原料としたカーボンブラック以外に、リグニンなどを燃焼させて得たバイオマス由来のカーボンブラック、タイヤなどのカーボンブラックを含むゴム製品を熱分解し、精製したリサイクルカーボンブラックを適宜これらと等量置換して用いても良い。
【0103】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐候性や補強性の観点から、50m2/g以上が好ましく、80m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上がさらに好ましい。また、分散性、低燃費性能、破壊特性および耐久性能の観点からは、250m2/g以下が好ましく、220m2/g以下がより好ましい。なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、前記測定方法により求められる。
【0104】
カーボンブラックの平均一次粒子径は、80nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。また、該平均一次粒子径は、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、20nm以上がさらに好ましい。カーボンブラックの平均一次粒子径が前記の範囲であることによって、カーボンブラックの分散性が向上し、ゴム組成物の発熱が抑制され、低燃費性能がさらに向上すると考えられる。カーボンブラックの平均一次粒子径は、前記測定方法により求めることができる。
【0105】
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、補強性の観点から、1質量部超が好ましく、3質量部超がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、発熱抑制による低燃費性能向上の観点から、30質量部未満が好ましく、20質量部未満がより好ましく、10質量部未満がさらに好ましい。
【0106】
(その他のフィラー)
シリカおよびカーボンブラック以外のフィラーとしては、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルク、バイオ炭(BIO CHAR)、セルロースナノファイバーなどの短繊維材料等、従来からタイヤ工業において一般的に用いられているものを配合することができる。
【0107】
ゴム成分100質量部に対するフィラーの合計含有量は、発熱抑制による低燃費性能向上の観点から、150質量部未満が好ましく、120質量部未満がより好ましく、100質量部未満がさらに好ましく、90質量部未満がさらに好ましく、60質量部以下が特に好ましい。また、ゴム成分との間での摩擦を生じ易くし、減衰性を確保する観点からは、40質量部超が好ましく、45質量部超がより好ましく、50質量部超がさらに好ましく、55質量部超がさらに好ましい。
【0108】
フィラーの合計含有量に対するシリカの含有率は、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、92質量%以上が特に好ましい。また、該シリカの含有率は、98質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい。
【0109】
(シランカップリング剤)
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては特に限定されず、タイヤ工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができるが、メルカプト系シランカップリング剤を含有することが好ましい。
【0110】
本明細書において、メルカプト系シランカップリング剤とは、メルカプト基を有するシランカップリング剤、および保護基によってメルカプト基が保護された構造のシランカップリング剤をいう。メルカプト系シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、下記式(2)で表されるメルカプト基を有する化合物、下記式(3)で表されるメルカプト基をエステルで保護した化合物、ならびに下記式(4)で表される結合単位Aおよび/または下記式(5)で表される結合単位Bを含む化合物等が挙げられる。なかでも、本発明の効果をより良好に発揮できるという理由から、下記式(3)で表される化合物、もしくは、下記式(4)で表される結合単位Aおよび/または下記式(5)で表される結合単位Bを含む化合物が好ましく、下記式(3)で表される化合物がより好ましい。これらのメルカプト系シランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式中、xは0以上の整数を表し;yは1以上の整数を表し;R201は、水素原子、炭素数1~30のアルキル、炭素数2~30のアルケニル、または炭素数2~30のアルキニル(該アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、ハロゲン原子、ヒドロキシルもしくはカルボキシルで置換されていてもよい)を表し;R202は、炭素数1~30のアルキレン、炭素数2~30のアルケニレン、または炭素数2~30のアルキニレンを表し;ここにおいて、R201とR202とで環構造を形成してもよい。)
【0111】
式(2)で表される化合物としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランや、下記式(6)で表される化合物(エボニックデグサ社製のSi363)等が挙げられ、下記式(6)で表される化合物を好適に使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化5】
【0112】
式(3)で表される化合物としては、例えば、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等挙げられる。
【0113】
式(4)で示される結合単位Aおよび/または式(5)で示される結合単位Bを含む化合物は、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤に比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。そのため、シリカの分散性がより良好となり、低燃費性能、ウェットグリップ性能、および破断伸びがより向上すると考えられる。これは結合単位Aのスルフィド部分がC-S-C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
【0114】
結合単位Aの含有量は、加工中の粘度上昇を抑制する観点から、30~99モル%が好ましく、50~90モル%がより好ましい。また、結合単位Bの含有量は、1~70モル%が好ましく、5~65モル%がより好ましく、10~55モル%がさらに好ましい。また、結合単位AおよびBの合計含有量は、95モル%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましく、100モル%が特に好ましい。なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(4)および式(5)と対応するユニットを形成していればよい。
【0115】
式(4)で示される結合単位Aと式(5)で示される結合単位Bとを含む化合物において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3~300の範囲が好ましい。この範囲内であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの-C715が覆うため、スコーチ時間が短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
【0116】
式(4)で示される結合単位Aおよび/または式(5)で示される結合単位Bを含む化合物としては、例えば、モメンティブ社製のNXT-Z30、NXT-Z45、NXT-Z60、NXT-Z100等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0117】
本発明に係るゴム組成物は、メルカプト系シランカップリング剤に加えてさらにその他のシランカップリング剤を含有していてもよい。その他のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するシランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系のシランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系のシランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系のシランカップリング剤;等が挙げられる。これらその他のシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記で列挙されたシランカップリング剤としては、例えば、モメンティブ社、エボニックデグサ社等により製造・販売されているシランカップリング剤を使用することができる。
【0118】
シランカップリング剤を含有する場合のシリカ100質量部に対する含有量(2種以上を併用する場合には合計含有量)は、シリカの分散性を高める観点から、1.0質量部超が好ましく、3.0質量部超がより好ましく、5.0質量部超がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の低下を防止する観点からは、30質量部未満が好ましく、20質量部未満がより好ましく、15質量部未満がさらに好ましい。
【0119】
<可塑剤>
本発明に係るゴム組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。本明細書において、可塑剤には、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、常温(25℃)で液体(液状)の可塑剤および常温(25℃)で固体の可塑剤の両方が含まれる。可塑剤としては、例えば、オイル、樹脂成分、液状ポリマー、エステル系可塑剤等が挙げられる。可塑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書において、可塑剤には、伸展ゴムに含まれる可塑剤も含まれる。
【0120】
(オイル)
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、動物油等が挙げられる。前記プロセスオイルとしてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルが挙げられる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、オイル芳香族系プロセスオイルを再抽出したTreated Distillate Aromatic Extract(TDAE)、アスファルトとナフテン油の混合油であるアロマ代替オイル、軽度抽出溶媒和物(mild extraction solvates)(MES)、および重ナフテン系オイル等が挙げられる。また、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合機やエンジンなどで使用済みの潤滑油や、飲食店で使用された後の廃食用油を精製したものを適宜、等量置換して用いても良い。本発明に係るゴム組成物は、植物油を含有することが好ましい。
【0121】
本明細書において、植物油とは、例えば、あまに油、なたね油、べに花油、大豆油、コーン油、綿実油、米油、トール油、ごま油、えごま油、ひまし油、桐油、パイン油、パインタール油、ひまわり油、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、オリーブ油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、落花生油、グレープシード油、木ろう等が挙げられる。さらに、植物油としては、前記油を精製した精製油(サラダ油など)、前記油をエステル交換したエステル交換油、前記油を水素添加した硬化油、前記油を熱重合させた熱重合油、前記油を酸化させた酸化重合油、食用油等として利用したものを回収した廃食用油等も挙げられる。なお、植物油は常温(25℃)で液体であっても固体であっても良い。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0122】
本実施形態に係る植物油は、アシルグリセロールを含むことが好ましく、トリアシルグリセロールを含むことがより好ましい。なお、本明細書において、アシルグリセロールとは、グリセリンの持つヒドロキシ基と脂肪酸とがエステル結合をした化合物を指す。アシルグリセロールとしては、特に限定されず、1-モノアシルグリセロールでもよく、2-モノアシルグリセロールでもよく、1,2-ジアシルグリセロールでもよく、1,3-ジアシルグリセロールでもよく、トリアシルグリセロールでもよい。さらに、アシルグリセロールは、単量体でもよく、2量体でもよく、3量体以上の多量体であってもよい。なお、2量体以上のアシルグリセロールは、熱重合や酸化重合等によって得ることができる。また、アシルグリセロールは常温(25℃)で液体であっても固体であっても良い。
【0123】
ゴム組成物中に前記アシルグリセロールが含まれているか確認する方法としては、特に限定されないが、1H-NMR測定によって確認することができる。例えば、トリアシルグリセロールを配合したゴム組成物を常温(25℃)で24時間重クロロホルムに浸漬し、ゴム組成物を除いた後、室温下で1H-NMRを測定し、テトラメチルシラン(TMS)のシグナルを0.00ppmとした場合、5.26ppm付近、4.28ppm付近、4.15ppm付近のシグナルが観測され、該シグナルはエステル基の酸素原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子由来のシグナルと推測される。なお、この段落における「付近」とは、±0.10ppmの範囲とする。
【0124】
前記脂肪酸としては、特に限定されず、不飽和脂肪酸であっても、飽和脂肪酸であっても良い。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸等の一価不飽和脂肪酸や、リノール酸、リノレン酸等の多価不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0125】
植物油としては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、ENEOS(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0126】
植物油の構成脂肪酸に含まれる不飽和脂肪酸の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70%質量以上がさらに好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、85質量%以上が特に好ましい。
【0127】
可塑剤としてオイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対するオイルの含有量は、加工性の観点から、1質量部超が好ましく、2質量部超がより好ましく、5質量部超がさらに好ましい。また、該含有量は、本発明の効果の観点からは、80質量部未満が好ましく、60質量部未満がより好ましく、40質量部未満がさらに好ましい。なお、本明細書において、オイルの含有量には、伸展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
【0128】
(樹脂成分)
樹脂成分としては、特に制限されず、常温(25℃)で固体であっても液体であってもよいが、タイヤ工業で慣用される石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。樹脂成分としては、高速走行時の耐久性能を向上させる観点から、テルペン樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むことが好ましい。
【0129】
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂;前記テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂;テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂;並びにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。
【0130】
石油樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、C5C9系石油樹脂が挙げられる。これらの石油樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0131】
C5系石油樹脂とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
【0132】
芳香族系石油樹脂とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。芳香族系石油樹脂の具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体、またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0133】
C5C9系石油樹脂とは、C5留分とC9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9系石油樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
【0134】
ロジン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化等で変性したロジン変性樹脂等が挙げられる。
【0135】
フェノール系樹脂としては、特に限定されないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0136】
樹脂成分の軟化点は、ウェットグリップ性能の観点から、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましい。また、加工性、ゴム成分とフィラーとの分散性向上という観点からは、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、樹脂成分の軟化点は、前記方法により測定される値である。
【0137】
樹脂成分を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、本発明の効果の観点から、1質量部超が好ましく、2質量部超がより好ましく、3質量部超がさらに好ましい。また、発熱性を低減させる観点からは、30質量部未満が好ましく、20質量部未満がより好ましく、15質量部未満がさらに好ましく、10質量部未満が特に好ましい。
【0138】
(液状ポリマー)
液状ポリマーは、常温(25℃)で液体状態のポリマーであれば特に限定されないが、例えば、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)、液状イソプレンゴム(液状IR)、液状スチレンイソプレンゴム(液状SIR)、液状ファルネセンゴム等が挙げられ、これらが水素添加されたものであってもよく、これらの主鎖および/または末端が変性基で変性された変性液状ポリマー(好ましくは末端変性液状ポリマー)であってもよい。これらの液状ポリマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0139】
変性液状ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、片末端または両末端が変性された液状ブタジエンポリマー(末端変性液状BR)、片末端または両末端が変性されたが変性された液状スチレンブタジエンポリマー(末端変性液状SBR)等が挙げられ、これらが水素添加されたものであってもよい。
【0140】
変性基としては、特に限定されず、例えば、シリル基、トリアルコキシシリル基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。なかでも、水酸基、カルボキシル基、アクリロイル基、およびメタクリロイル基からなる群から選ばれる1以上の基が好ましい。
【0141】
液状ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、50000未満が好ましく、25000以下がより好ましく、10000以下がより好ましく、7000以下がさらに好ましい。また、該Mwの下限は特に限定されないが、1000以上が好ましく、2500以上がより好ましく、3500以上がさらに好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)は、前記方法により測定される。
【0142】
液状ポリマーを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。また、液状ゴムの含有量は、25質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、7質量部以下がさらに好ましい。
【0143】
エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジブチル(DBP)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリオクチル(TOP)、リン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリメチル(TMP)、チミジントリリン酸(TTP)、リン酸トリクレシル(TCP)、リン酸トリキシレニル(TXP)等が挙げられる。これらのエステル系可塑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0144】
エステル系可塑剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。また、エステル系可塑剤の含有量は、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
【0145】
可塑剤のゴム成分100質量部に対する合計含有量は、加工性の観点から、3質量部超が好ましく、5質量部超がより好ましく、10質量部超がさらに好ましい。また、発熱が抑制され、低燃費性能を向上させる観点からは、30質量部未満が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましく、12質量部以下が特に好ましい。
【0146】
<その他の配合剤>
本発明に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、ワックス、加工助剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
【0147】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部超が好ましく、1質量部超がより好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化防止の観点からは、20質量部未満が好ましく、15質量部未満がより好ましい。
【0148】
加工助剤としては、未加硫時におけるゴムの低粘度化や離型性の確保を目的とした脂肪酸金属塩や、ゴム成分のミクロな層分離を抑制する観点から広く相溶化剤として市販されているもの等を使用することができる。
【0149】
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の改善効果を発揮させる観点から、0.5質量部超が好ましく、1質量部超がより好ましい。また、耐摩耗性および破壊強度の観点からは、10質量部未満が好ましく、8質量部未満がより好ましい。
【0150】
老化防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩などの老化防止剤が挙げられる。これらの老化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0151】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する合計含有量は、ゴムの耐オゾンクラック性の観点から、0.5質量部超が好ましく、1質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましく、2.0質量部超が特に好ましい。また、耐摩耗性能やウェットグリップ性能の観点からは、10質量部未満が好ましく、5質量部未満がより好ましい。
【0152】
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部超が好ましく、1質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部未満が好ましく、8質量部未満がより好ましく、5質量部未満がさらに好ましい。
【0153】
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10.0質量部未満が好ましく、5.0質量部未満がより好ましく、3.0質量部未満がさらに好ましい。
【0154】
(加硫剤)
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
【0155】
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保する観点から、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、劣化防止の観点からは、3.0質量部未満が好ましく、2.5質量部未満がより好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましい。なお、加硫剤として、オイル含有硫黄を使用する場合の加硫剤の含有量は、オイル含有硫黄に含まれる純硫黄分の合計含有量とする。
【0156】
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン等が挙げられる。これらの硫黄以外の加硫剤は、田岡化学工業(株)、ランクセス(株)、フレクシス社等より市販されているものを使用することができる。
【0157】
(加硫促進剤)
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、およびチアゾール系加硫促進剤からなる群から選ばれる1以上の加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤を含むことがより好ましい。
【0158】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)が好ましい。
【0159】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)が好ましい。
【0160】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0161】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1.0質量部超が好ましく、1.25質量部以上がより好ましい。また、加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、8.0質量部未満が好ましく、6.0質量部未満がより好ましく、3.0質量部未満がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
【0162】
[製造]
本発明に係るゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
【0163】
混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、70~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。
【0164】
上記ゴム組成物から構成されるトレッド部を備えたタイヤは、通常の方法により製造することができる。すなわち、ゴム成分に対して上記各成分を必要に応じて配合した未加硫のゴム組成物を、トレッド部を構成するゴム層の形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0165】
[用途]
本発明に係るタイヤは、トレッド部を有するタイヤであり、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤを問わないが、空気入りタイヤとして、好適に使用することができる。また、本発明のタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バスなどの重荷重用タイヤ、二輪車用タイヤ、三輪車用タイヤ等さまざまな用途に使用することができる。また、昨今では、ドライバーの負担を軽減しながら安全で快適な車両の運行を実現するために、自動運転技術が検討されているが、本発明のタイヤは、そのような自動運転車用タイヤとして好適に使用できる。
【実施例0166】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。
【0167】
以下に示す各種薬品を用いて表1~表7に従って得られるゴム組成物からなるトレッド部を有するタイヤを検討して、下記の各種分析・評価方法評価方法に基づいて算出する。
【0168】
NR:TSR20
SBR1:下記製造例1により製造されるS-SBR(スチレン含量:33質量%、ビニル含量:31モル%、Tg:-35℃、Mw:100万、非伸展)
SBR2:下記製造例2により製造されるS-SBR(スチレン含量:27.5質量%、ビニル含量:59モル%、Tg:-25℃、Mw:30万、非伸展)
SBR3:JSR(株)製のHPR840(スチレン含量:10質量%、ビニル含量:42モル%、Tg:-60℃、非伸展)
BR:宇部興産(株)製のUBEPOL-BR360B(ハイシスBR、シス1,4-結合含有率:98%、Mw:57万)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックI(N220)(N2SA:114m2/g、平均一次粒子径:22nm)
シリカ1:エボニックデグサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g、平均一次粒子径:15nm)
シリカ2:エボニックデグサ社製の9100GR(N2SA:235m2/g、平均一次粒子径:15.6nm)
カップリング剤1:エボニックデグサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
カップリング剤2:モメンティブ社製のNXT(3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン)
樹脂成分:Sylvatraxx 4401(クレイトン社製の芳香族系石油樹脂(α-メチルスチレン樹脂:α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体)、軟化点85℃)
オイル1:出光興産(株)製のダイアナプロセスNH-70S(芳香族系プロセスオイル)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
オイル2:日清オイリオグループ(株)製のひまわり油(構成脂肪酸に含まれるオレイン酸の含有量:55質量%、構成脂肪酸に含まれる多価不飽和脂肪酸の総含有量:8質量%)
老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製のノクラックRD(ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン))
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
硫黄:細井化学工業(株)製のHK-200-5(5%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン(DPG))
【0169】
(製造例1:SBR1の製造)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、ヘキサン600mL、1,3-ブタジエン75g、スチレン25g、テトラヒドロフラン60mLを投入し、40℃で撹拌する。0.1mоl/Lのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液を0.5mLずつ添加しスカベンジ処理をした後、0.1mоl/Lのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液4mLを添加し、撹拌速度を130rpm、ジャケット温度を80℃にして撹拌する。GPCでMwが100万の重合物の生成を確認した後、重合溶液を4Lのエタノールに注ぎ、沈殿を回収する。得られた沈殿を送風乾燥した後、80℃/10Pa以下で乾燥減量が0.1%になるまで減圧乾燥を行い、SBR1を得る。
【0170】
(製造例2:SBR2の製造)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、ヘキサン600mL、1,3-ブタジエン75g、スチレン25g、テトラヒドロフラン60mLを投入し、40℃で撹拌する。0.1mоl/Lのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液を0.5mLずつ添加しスカベンジ処理をした後、0.1mоl/Lのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液4mLを添加し、撹拌速度を130rpm、ジャケット温度を80℃にして撹拌する。GPCでMwが30万の重合物の生成を確認した後、重合溶液を4Lのエタノールに注ぎ、沈殿を回収する。得られた沈殿を送風乾燥した後、80℃/10Pa以下で乾燥減量が0.1%になるまで減圧乾燥を行い、SBR2を得る。
【0171】
(実施例および比較例)
表1~表7に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度170℃になるまで5分間混練りし、混練物を得る。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得る。得られた未加硫ゴム組成物を、所定の形状の口金を備えた押し出し機でトレッド部を構成するゴム層の形状に押し出し成形し、その他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、各試験用タイヤを製造、準備する。
【0172】
試験用タイヤについて下記の評価を行う。なお、各タイヤ外径Dt(mm)、タイヤ断面幅Wt(mm)は、各タイヤが正規リムにリム組みされ、正規内圧が充填され、無負荷の状態で測定される値である。
【0173】
<トレッド部の30℃tanδ(30℃tanδ)の測定>
各試験用タイヤのトレッド部から、タイヤ周方向が長辺となるように、長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmで切り出して作成した各加硫ゴム試験片について、動的粘弾性測定装置(GABO社製のイプレクサーシリーズ)を用い、周波数10Hz、温度30℃、初期歪5%、動歪±1%、伸長モードの条件下でtanδを測定する。
【0174】
<高荷重走行時の低燃費性能>
各試験用タイヤをそれぞれ正規リムに組み込み、正規内圧にまで空気を充填した後、車重1800kgの車両に装着し、テストドライバーにより乾燥路面のテストコース上を速度80km/時で15分間走行させる。走行後、アクセルを離し、アクセルを離してから車両が停止するまでの距離を測定する。各試験用タイヤについて、基準比較例(表1~表3では比較例3、表4および表5では比較例6、表6および表7では比較例9)の距離の逆数を100とした指数で評価する。指数値が大きいほど、低燃費性能が良好であることを示す。
(高荷重時の低燃費性能指数)=
(基準比較例の車両が停止するまでの距離)/(各配合の車両が停止するまでの距離)×100
【0175】
【表1】
【0176】
【表2】
【0177】
【表3】
【0178】
【表4】
【0179】
【表5】
【0180】
【表6】
【0181】
【表7】
【0182】
<実施形態>
本発明の実施形態の例を以下に示す。
【0183】
〔1〕トレッド部を有するタイヤであって、
タイヤ外径Dtが600mm以下であり、
前記トレッド部は、ゴム成分およびフィラーを含有するゴム組成物により構成され、
タイヤ断面幅Wt(mm)および前記ゴム組成物の30℃におけるtanδ(30℃tanδ)が下記式(1)を満たす、タイヤ。
30℃tanδ≦-7.84×10-5×(Wt-195)2+0.175・・・(1)
〔2〕Wt(mm)が180以上225以下(好ましくは180超225未満)である、上記〔1〕記載のタイヤ。
〔3〕前記ゴム組成物の30℃tanδが0.10以下である、上記〔1〕または〔2〕記載のタイヤ。
〔4〕前記ゴム組成物がさらにメルカプト系シランカップリング剤を含有する、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔5〕前記フィラーが平均一次粒子径16nm以下のシリカを含む、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔6〕前記ゴム組成物におけるゴム成分中の総スチレン量が20質量%未満である、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔7〕前記ゴム成分がイソプレン系ゴムを含む、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔8〕前記ゴム組成物のゴム成分100質量部に対する可塑剤の合計含有量が20質量部以下(好ましくは20質量部未満)である、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔9〕前記ゴム組成物のゴム成分100質量部に対するフィラーの合計含有量が60質量部以下(好ましくは60質量部未満)である、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔10〕前記ゴム組成物がさらに植物油を含有する、上記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔11〕タイヤ外径Dtが550mm以下である、上記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔12〕タイヤの最大負荷能力WL(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/WL)が0.0150以下である、上記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔13〕タイヤ外径Dt(mm)に対するタイヤ断面幅Wt(mm)の比(Wt/Dt)が0.30以上である、上記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔14〕前記トレッド部の接地面におけるランド比が65%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上)である、上記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔15〕自動運転車用タイヤである、上記〔1〕~〔14〕のいずれかに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0184】
10・・・トレッド部
11・・・周方向溝
12・・・ショルダー陸部
13・・・センター陸部
14・・・幅方向溝
15・・・幅方向溝
16・・・幅方向溝
C・・・タイヤ周方向
W・・・タイヤ幅方向
Te・・・トレッド端
Ht・・・タイヤ断面高さ
Wt・・・タイヤ断面幅
Dt・・・タイヤ外径
図1
図2