(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089362
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】加工デンプンとC13~C15脂肪酸と粉末状有機塩とを含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240626BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240626BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240626BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240626BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q19/00
A61K8/36
A61Q19/10
C08K5/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022204679
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】三竹 のどか
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩二
【テーマコード(参考)】
4C083
4J002
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB432
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC392
4C083AC582
4C083AC712
4C083AD092
4C083AD241
4C083AD242
4C083CC02
4C083CC23
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE06
4C083EE07
4J002AB041
4J002EF056
4J002EG037
4J002GB00
(57)【要約】
【課題】泡のボリューム及び泡立ちやすさの点で改善した泡立ち特性を有する、クレイを含む組成物を提供すること。
【解決手段】(a)少なくとも1種の加工デンプンと、(b)少なくとも1種のC13~C15脂肪酸と、(c)少なくとも1種の粉末状有機塩と、(d)水とを含む、組成物を提供する。本発明による組成物は、並外れた泡立ちやすさをもたらすことができ、泡の量を改善する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の加工デンプンと、
(b)少なくとも1種のC13~C15脂肪酸と、
(c)少なくとも1種の粉末状有機塩と、
(d)水と
を含む、組成物。
【請求項2】
(a)加工デンプンが、疎水性の、好ましくはヒドロキシアルキル加工デンプンであり、より好ましくはヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシエチルデンプンホスフェート、ヒドロキシプロピルデンプンホスフェート、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)加工デンプンの量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.1質量%~10質量%、より好ましくは0.5質量%~5質量%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(b)C13~C15脂肪酸が、ミリスチン酸である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(b)C13~C15脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して、1質量%~20質量%、好ましくは2質量%~15質量%、より好ましくは3質量%~10質量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(c)粉末状有機塩が、水不溶性である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(c)粉末状有機塩が、脂肪酸塩、変性多糖の塩、及びこれらの混合物から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(c)粉末状有機塩が、粉末状有機金属塩である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(c)粉末状有機塩の量が、組成物の総質量に対して、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.3質量%~5質量%、より好ましくは0.5質量%~5質量%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
(a)加工デンプンと(b)C13~C15脂肪酸とが、複合体を形成している、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1種のクレイを更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の両性界面活性剤を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の、(b)C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸を更に含み、好ましくは6~12個の炭素原子を含有する少なくとも1種の脂肪酸と、16~30個の炭素原子を含有する少なくとも1種の脂肪酸との組み合わせを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
化粧用組成物、好ましくはリンスオフ組成物、より好ましくはリンスオフクレンジング組成物である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物を、ケラチン物質上に塗布する工程
を含む、美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工デンプンとC13~C15脂肪酸と粉末状有機塩とを含む組成物、及び該組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
良好な泡立ち特性は、化粧用泡クレンジング製品にとって非常に重要である。泡の量は、組成物の、消費者が受け止める洗浄効能に直接関連する。消費者はまた、泡立てしやすい化粧用泡立ちクレンジング製品を好む傾向もある。
【0003】
今日まで、いくつかの先行技術が、化粧用泡立ちクレンジング製品を報告してきた。例えばJP-A-2020-180062は、(a)少なくとも1種の加工デンプンと、(b)少なくとも1種のC13~C15脂肪酸と、(c)少なくとも1種のクレイとを含む組成物を開示しており、これは安定であり、且つ皮膚から濯ぎ落とされ得、且つ皮膚から組成物を濯ぎ落とした後に、皮膚上のクレイの強化された堆積を残すことができる。
【0004】
また、JP-A-2022-95240は、(a)少なくとも1種の加工デンプンと、(b)少なくとも1種のC13~C15脂肪酸と、(c)少なくとも1種のクレイと、(d)少なくとも1種の両性界面活性剤とを含む、組成物であって、皮膚等のケラチン物質から濯ぎ落とされることができ、且つ皮膚から組成物を濯ぎ落とした後に、ケラチン物質上のクレイの強化された堆積を残すことができる、組成物を開示している。
【0005】
しかしながら、化粧用リンスオフ組成物の泡立ち特性を強化する必要性が、依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】JP-A-2020-180062
【特許文献2】JP-A-2022-95240
【特許文献3】米国特許第4465702号
【特許文献4】米国特許第5037929号
【特許文献5】米国特許第5131953号
【特許文献6】米国特許第5149799号
【特許文献7】米国特許第3137592号
【特許文献8】米国特許第2528378号
【特許文献9】米国特許第2781354号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】第XXII章、「Production and Use of Pregelatinized Starch」、Starch: Chemistry and Technology、第III巻-Industrial Aspects、R. L. Whistler及びE. F. Paschall, Editors、Academic Press、New York 1967年
【非特許文献2】Penguin Dictionary of Science
【非特許文献3】Kirk-Othmer、Encyclopaedia of Chemical Technology、第5巻、544頁、第2版、John Wiley and Sons, Inc.、New York, N. Y. 1964年
【非特許文献4】書籍「Clay mineralogy」、S. Caillere、S. Henin、M. Rautureau、第2版、1982年、Masson
【非特許文献5】CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary & Handbook、第15版、2014年
【非特許文献6】CTFA辞典、第3版、1982年
【非特許文献7】CTFA辞典、第5版、1993年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、泡のボリューム及び泡立ちやすさの点で改善した泡立ち特性を有する、クレイを含む組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、
(a)少なくとも1種の加工デンプンと、
(b)少なくとも1種のC13~C15脂肪酸と、
(c)少なくとも1種の粉末状有機塩と、
(d)水と
を含む、組成物によって達成することができる。
【0010】
(a)加工デンプンは、疎水性の、好ましくはヒドロキシアルキル加工デンプンであってよく、より好ましくはヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシエチルデンプンホスフェート、ヒドロキシプロピルデンプンホスフェート、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0011】
本発明による組成物中の(a)加工デンプンの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.1質量%~10質量%、より好ましくは0.5質量%~5質量%であってよい。
【0012】
(b)C13~C15脂肪酸は、ミリスチン酸であってよい。
【0013】
本発明による組成物中の(b)C13~C15脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~20質量%、好ましくは2質量%~15質量%、より好ましくは3質量%~10質量%であってよい。
【0014】
(c)粉末状有機塩は、水不溶性であってよい。
【0015】
(c)粉末状有機塩は、脂肪酸塩、変性多糖の塩、及びこれらの組み合わせから選択することができる。
【0016】
(c)粉末状有機塩は、粉末状有機金属塩であってよい。
【0017】
組成物中の(c)粉末状有機塩の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.3質量%~5質量%、より好ましくは0.5質量%~5質量%であってよい。
【0018】
(a)加工デンプンと(b)C13~C15脂肪酸とは、複合体を形成することができる。
【0019】
本発明による組成物は、少なくとも1種のクレイを更に含んでよい。
【0020】
本発明による組成物は、少なくとも1種の両性界面活性剤を更に含んでよい。
【0021】
本発明による組成物は、少なくとも1種の、(b)C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸を更に含んでよく、好ましくは、6~12個の炭素原子を含有する少なくとも1種の脂肪酸と、16~30個の炭素原子を含有する少なくとも1種の脂肪酸との組み合わせを含む。
【0022】
本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくはリンスオフ組成物、より好ましくはリンスオフクレンジング組成物であってよい。
【0023】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程
を含む、美容方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
鋭意検討の結果、本発明者らは、泡立ちやすさ及び泡のボリュームの点で改善した泡立ち特性を有し、そのようにして本発明を完了する組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0025】
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種の加工デンプンと、(b)少なくとも1種のC13~C15脂肪酸と、(c)少なくとも1種の粉末状有機塩と、(d)水との組み合わせを含む。
【0026】
これ以降、本発明は、詳細に説明されることになる。
【0027】
[組成物]
本発明の態様のうちの1つは、
(a)少なくとも1種の加工デンプンと、
(b)少なくとも1種のC13~C15脂肪酸と、
(c)少なくとも1種の粉末状有機塩と、
(d)水と
を含む、組成物である。
【0028】
これらの成分のそれぞれが、以下に、より詳細に説明されることになる。
【0029】
(加工デンプン)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種の加工デンプンを含む。単一のタイプの加工デンプンを使用してもよく、又は2種以上の異なるタイプの加工デンプンを組み合わせて使用してもよい。
【0030】
(a)加工デンプンは、粉末の形態にあってよい。換言すれば、(a)加工デンプンは、粒子の形態にあってよい。この場合、(a)加工デンプンの粒径は限定されない。
【0031】
(a)加工デンプンが膜形成性であり、すなわち膜を形成することが可能であることが好ましい。
【0032】
(a)加工デンプンは、塩基デンプンをベースとする。塩基デンプンは、本明細書で使用されるとき、任意の天然源に由来し、そのいずれもが本明細書における使用に好適でありうる全てのデンプンを含むことが意図される。天然デンプンは、本明細書で使用されるとき、それが自然界で見出されるようなものである。更に好適なのは、交雑育種、転位、転置、形質転換を含む標準的な育種技法によって、又はそれらの変種を含ませるための遺伝子工学若しくは染色体工学の任意の他の方法によって得られる植物由来のデンプンである。加えて、突然変異育種の公知の標準的な方法によって生成されうる、上記の一般的なデンプンの人工的な突然変異体及び変種から育成された植物に由来するデンプンもまた、本明細書において好適である。
【0033】
典型的なデンプン源は、穀草、塊茎、根、豆類及び実である。天然源は、トウモロコシ(メイズ)、エンドウ、ジャガイモ、サツマイモ、バナナ、オオムギ、コムギ、コメ、オート麦、サゴ、アマランス、タピオカ(キャッサバ)、クズウコン、カンナ及びモロコシのワキシー種、並びにこれらの低アミロース及び高アミロース種とすることができる。本明細書で使用されるとき、用語「低アミロース」デンプンは、約10質量%以下、特に5質量%以下、より特定すると2質量%以下のアミロースを含有するデンプンを含むことが意図される。本明細書で使用されるとき、用語「高アミロース」デンプンは、少なくとも約50質量%、特に少なくとも約70質量%、より特定すると少なくとも約80質量%のアミロースを含有するデンプンを含むことが意図される。高アミロースデンプンが好ましい場合がある。
【0034】
(a)加工デンプンはα化されてもよい。α化、及びα化を達成する技術は、当技術分野で公知であり、例えば米国特許第4465702号、同第5037929号、同第5131953号及び同第5149799号で開示されている。第XXII章、「Production and Use of Pregelatinized Starch」、Starch: Chemistry and Technology、第III巻-Industrial Aspects、R. L. Whistler及びE. F. Paschall, Editors、Academic Press、New York 1967年もまた参照されたい。用語「α化」は、偏光中にそれらの複屈折及び/又はマルタ十字を失った膨潤デンプン粒子を意味することが意図される。このようなα化デンプン誘導体は、加熱調理せずに冷水中に実質的に可溶性である。これに関連して、「可溶性」は、必ずしも真の分子溶液の形成を意味するものではなく、コロイド状分散体も意味しうる。一実施形態では、デンプンは完全にα化される。
【0035】
α化加工デンプンは、冷水中であっても、容易に迅速に可溶化されうる。
【0036】
α化は、非限定的に、ドラム乾燥、押出及び噴霧乾燥を含めた方法によって達成することができる。一実施形態では、デンプンの加熱調理と乾燥とを同時に行うために押出法が使用される(例えば、米国特許第3137592号を参照されたい)。この方法は、デンプンの糊化をもたらす高温及び高圧におけるデンプン/水の混合物の物理的処理と、それに続く水の急激な蒸発に伴ってノズルを出た後の膨張とを利用する。
【0037】
一実施形態では、α化を完了させて良好な可溶性を得、且つ組成物中に不快なざらざらした感触をもたらしうる、溶解されていない粒子を除去する。
【0038】
一実施形態では、デンプンは、大部分がそのままの状態のデンプン粒を有する。大部分がそのままの状態の粒状構造を有するα化デンプン誘導体の水性分散体は、典型的には、若干ざらついた感触を有しうる、粒状構造を有していないデンプンの水性分散体よりも、一様で滑らかなテクスチャを有する。そのままの状態の粒状構造を有するα化デンプンの場合、水素結合の天然内部構造は壊れるが、外形又は形態は維持される。
【0039】
(a)加工デンプンは、架橋されてもよい。デンプン鎖の架橋は、好適な架橋剤、すなわち二官能性化合物によって達成することができる。一実施形態では、用いられる架橋方法は、デンプンを、オキシ塩化リン、五酸化リン及び/又はトリメタリン酸ナトリウムと反応させるリン酸化反応である。2つのデンプン鎖が、アニオン性P-O基によって架橋される。架橋部位のアニオン特性は、本発明に従って使用されるデンプンの乳化安定化作用を助ける。別の実施形態では、架橋方法は、アジピン酸によって例示される、非限定的にC4~C8アルカンジカルボン酸を含めた、C4~C18アルカン又はアルケンジカルボン酸によるものである。アルカン又はアルケンジカルボン酸は、エステル結合を介して2つのデンプン鎖を連結させる。これは、直鎖の形態又は分枝鎖の形態とすることができる。誘導体は、例えば、デンプンを、ジカルボン酸と酢酸との混合無水物と反応させることによって得ることができる。一実施形態では、乾燥デンプンに基づいて0.1質量%未満の架橋剤が使用される。別の実施形態では、乾燥デンプンに基づいて約0.06~0.1質量%の架橋剤が使用される。
【0040】
(a)加工デンプンが疎水性であることが好ましい。(a)加工デンプンの表面が疎水性であることがより好ましい。
【0041】
デンプンを疎水性にする変性は、C1~6アシル(アセチル)、C1~6ヒドロキシアルキル(ヒドロキシエチル若しくはヒドロキシプロピル)、カルボキシメチル又はオクテニルコハク酸の各基等の疎水性官能基をグラフト化することによって実施することができる。
【0042】
官能基のアルキル部分は、1~6個の炭素原子、好ましくは2~5個の炭素原子、より好ましくは3個又は4個の炭素原子を有してよい。
【0043】
(a)加工デンプンがヒドロキシアルキル加工デンプンであることが好ましい。
【0044】
アルキル基中の2~6個の炭素原子等のアルキル基を介してデンプン主鎖に結合しているヒドロキシル基の位置は、重要ではなく、アルファ位からオメガ位にあることができる。好適な一実施形態では、ヒドロキシアルキル化の置換度は、約0.08~0.3である。置換度は、無水グルコース1単位当たりのデンプン分子の置換OH基の平均数である。デンプンのヒドロキシアルキル化は、天然のデンプンを、適当な数の炭素原子を有するアルキレンオキシドと反応させることによってもたらすことができ、これは、非限定的に、デンプンをプロピレンオキシドと反応させることによるヒドロキシプロピル化が含まれる。ヒドロキシアルキル加工デンプンはまた、アルキル基1つ当たり複数のヒドロキシル基も含有してよい。
【0045】
ヒドロキシアルキル加工デンプンは、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシエチルデンプンホスフェート、ヒドロキシプロピルデンプンホスフェート、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0046】
ヒドロキシアルキル加工デンプンを調製する方法は、任意の順序で行うことができる。しかしながら、当業者であれば、ある特定の順序の利点を理解していると考えられる。例えば、ヒドロキシプロピル化は、デンプンが架橋される場合、典型的にはオキシ塩化リンを用いて架橋の前に行われると考えられ、その理由は、典型的なヒドロキシプロピル化のプロセスが、達成された架橋の一部を破壊すると考えられるためである。
【0047】
本発明において好ましくは使用されるヒドロキシアルキル加工デンプンの例には、以下が挙げられる:
Akzo Nobel社によりStructure ZEA及びXLとして市販されている、ヒドロキシプロピルデンプンホスフェート(α化トウモロコシデンプン)、並びに
Nouryon社によりAMAZEとして市販されている、加工トウモロコシデンプン(ヒドロキシプロピル化され、α化された高アミロース)。
【0048】
本発明による組成物中の(a)加工デンプンの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更により好ましくは1質量%以上であってよい。
【0049】
その一方で、本発明による組成物中の(a)加工デンプンの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更により好ましくは3質量%以下であってよい。
【0050】
本発明による組成物中の(a)加工デンプンの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5質量%~5質量%、更により好ましくは1質量%~3質量%の範囲であってよい。
【0051】
本明細書の文脈では、上記の上限値と下限値との任意の組み合わせを、量の好ましい範囲を表すのに利用することができる。
【0052】
(C13~C15脂肪酸)
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種のC13~C15脂肪酸を含む。単一のタイプのC13~C15脂肪酸、又は2種以上の異なるタイプのC13~C15脂肪酸を組み合わせて使用することができる。
【0053】
(b)C13~C15脂肪酸が飽和であることが好ましい。飽和のC13~C15脂肪酸は、トリデシル酸(トリデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)及びペンタデシル酸(ペンタデカン酸)からなる群から選択することができる。
【0054】
(b)C13~C15脂肪酸が不飽和であることが可能である。不飽和のC13~C15脂肪酸は、トリデセン酸、ミリストレイン酸(テトラデセン酸)及びペンタデセン酸からなる群から選択することができる。
【0055】
(b)C13~C15脂肪酸がミリスチン酸であることが、より好ましい。
【0056】
本発明による組成物中の(b)C13~C15脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更により好ましくは4質量%以上であってよい。
【0057】
その一方で、本発明による組成物中の(b)C13~C15脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更により好ましくは8質量%以下であってよい。
【0058】
本発明による組成物中の(b)C13~C15脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~20質量%、好ましくは2質量%~15質量%、より好ましくは3質量%~10質量%、更により好ましくは4質量%~8質量%の範囲であってよい。
【0059】
(b)C13~C15脂肪酸の量(質量)/(a)加工デンプンの量(質量)の質量比は、1.0以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更により好ましくは4.0以上であってよい。
【0060】
(a)加工デンプンと(b)C13~C15脂肪酸とは、複合体を形成することができる。
【0061】
(粉末状有機塩)
本発明による組成物は、(c)少なくとも1種の粉末状有機塩を含む。単一のタイプの粉末状有機塩を使用してもよく、又は2つ以上の異なるタイプの粉末状有機塩を組み合わせて使用してもよい。
【0062】
(c)粉末状有機塩は、本発明の組成物の泡立ち特性を強化するように働くことができる。
【0063】
理論に束縛されるわけではないが、(c)粉末状有機塩が、水ベースの組成物ネットワークを乱すおそれがあり、それが、組成物が水と接触するときに、組成物を水と融合しやすくすると確信される。粉末状有機塩のこのような機能は、より良好な泡立ち特性、詳細には泡立ちやすさを有する組成物を付与することに帰着しうる。
【0064】
本明細書で使用される用語「粉末」は、組成物の媒質、詳細には水に不溶性である、任意の形状の粒子であると理解されるべきである。
【0065】
(c)粉末状有機塩は、結晶学的形態(例えば、層状、立方晶、六方晶、斜方晶等)にかかわりなく、いずれの形状でもよく、血小板形状、球状又は長楕円形であってよい。
【0066】
(c)粉末状有機塩の平均粒径は限定されない。例えば、(c)粉末状有機塩の平均粒径は、50μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下であってよい。粉末状有機塩の平均粒径は、0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上であってよい。本明細書で使用される用語「平均粒径」は、集団の半数に対して統計的粒径分布によって与えられる数平均粒子径を表し、D50と称される。例えば、数平均粒子径は、レーザー回折粒径分布アナライザー、例えばMalvern Corp社によるMastersizer 2000で測定することができる。
【0067】
(c)粉末状有機塩は、水不溶性であってよい。
【0068】
用語「水不溶性」は、本明細書では、室温(25℃)及び大気圧(105Pa)にて、水の総質量に対して、0.1質量%未満、特定すると0.01質量%未満の濃度で水に可溶性である物質を示す。
【0069】
粉末状有機塩のカチオン部分は、金属カチオン及び有機カチオンから選択することができる。好ましくは、粉末状有機塩のカチオン部分は、金属カチオンから選択される。そのため、(c)粉末状有機塩は、好ましくは粉末状有機金属塩である。
【0070】
(c)粉末状有機塩は、一価の金属イオンを有する有機金属塩、及び二価以上の金属イオンを有する有機金属塩から選択することができる。一価の金属イオンを有する有機金属塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩及びリチウム塩が挙げられうる。二価以上の金属イオンを有する有機金属塩には、カルシウム塩、マグネシウム塩、コバルト塩、ニッケル塩、銅塩、鉄塩、マンガン塩、ストロンチウム塩、モリブテン塩、バリウム塩、亜鉛塩、及びアルミニウム塩が挙げられうる。
【0071】
本発明の好ましい一実施形態では、粉末状有機金属塩は、二価以上の金属イオンを有する有機金属塩から選択することができ、より好ましくはカルシウム塩、マグネシウム塩及びアルミニウム塩から選択することができる。
【0072】
(c)粉末状有機塩はまた、一価の有機イオンを有する有機塩、例えばアンモニウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩からも選択することができる。
【0073】
粉末状有機塩は、脂肪酸塩、変性多糖の塩、及びこれらの組み合わせから選択することができる。
【0074】
脂肪酸塩は、式:
(R-C(=O)-O-)nM(n+)
[式中、Rは、6~30個の炭素原子の、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖であり、M+は、カチオンであり、nは、カチオンと相互作用する脂肪アシルの数を表す整数であり、且つまたカチオンの電荷数(例えば、1、2、3等)を表す]
で表されるように、カルボキシレートアニオン(脂肪アシル)としての、例えば6~30個の炭素原子を有する、直鎖状又は分枝状である且つ飽和及び不飽和である長鎖の疎水性炭化水素鎖、及びカチオンを含むことができる。
【0075】
本発明の実施形態のうちの任意のものの一部において使用可能である脂肪酸塩は、1~3つの、好ましくは2つの脂肪アシル鎖を含有してよい。そのため、脂肪酸塩は、一価の、二価のイオン又は三価のイオンの塩とすることができ、好ましくは二価のイオンの塩とすることができる。
【0076】
それぞれの脂肪アシル鎖は、独立に、直鎖状又は分枝状、飽和及び不飽和、好ましくは直鎖状で飽和であってよく、且つ/又は長さにおいて6~30個の炭素原子、好ましくは8~24個の炭素原子、より好ましくは12~22個の炭素原子を含んでよい。
【0077】
カチオンは、金属イオン、例えば一価の金属イオン、二価の金属イオン及び三価の金属イオンとすることができる。一価の金属イオンは、Na+、K+、Cs+及びLi+から選択することができる。二価の金属イオンは、Mg2+、Ca2+、Fe(II)、Co2+、Ni2+、Cu2+、Mn2+、Sr2+、Mo2+、Ba2+及びZn2+から選択することができる。三価の金属イオンは、Fe(III)及びAl3+から選択することができる。好ましくは、金属イオンは、二価の金属イオンから選択され、より好ましくはMg2+及びCa2+から選択される。
【0078】
カチオンは、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びホスホニウムカチオンから選択されうる有機カチオンとすることができる。
【0079】
好ましい一実施形態では、脂肪酸塩は金属イオンを含み、これは、「脂肪酸金属塩」と称される。
【0080】
脂肪酸塩の脂肪酸は、直鎖状又は分枝状の、飽和及び不飽和の脂肪酸、好ましくは直鎖状で飽和の脂肪酸から選択することができ、これらは、長さにおいて6~30個の炭素原子、好ましくは8~24個の炭素原子、より好ましくは12~22個の炭素原子を含んでよい。脂肪酸の例として挙げることができるのは、ステアリン酸、アラキジル酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ミリストレイン酸及びエルカ酸である。他の脂肪酸もまた熟慮される。
【0081】
一部の好ましい実施形態では、脂肪酸塩は、脂肪酸金属塩から選択される。例示的な脂肪酸金属塩には、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、リノール酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、アラキドン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム、リノール酸マグネシウム、アラキドン酸カルシウム、ミリストオレイン酸カルシウム、リノール酸ナトリウム、リノール酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ラウリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸マグネシウム及びミリスチン酸マグネシウムが挙げられるがこれらに限定されない。
【0082】
好ましい実施形態では、脂肪酸金属塩は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0083】
変性多糖の塩は、水不溶性の変性多糖の塩であってよい。いくつかの実施形態では、多糖は、水溶性であるように変性されている。そのため、変性多糖が疎水性であることが好ましい。変性多糖の表面が疎水性であることがより好ましい。
【0084】
好ましくは、変性多糖の塩の多糖は、デンプンである。そのため、変性多糖の塩は、好ましくは、加工デンプンの塩から選択される。
【0085】
加工デンプンは、塩基デンプンをベースとする。デンプンは、任意の天然源に由来する全てのデンプンを含むことが意図されており、それらのいずれもが、本明細書における使用に好適でありうる。天然デンプンは、本明細書で使用されるとき、自然界で見出されるようなものである。また好適なのは、交雑育種、転位、転置、形質転換を含む標準的な育種技法によって、又はそれらの変種を含ませるための遺伝子工学若しくは染色体工学の任意の他の方法によって得られる植物由来のデンプンである。加えて、公知の標準的な方法である突然変異育種によって生成されうる上記の一般的なデンプンの人工的な突然変異体及び変種から育成された植物に由来するデンプンもまた、本明細書において好適である。
【0086】
典型的なデンプン源は、穀草、塊茎、根、豆類及び実である。天然源は、トウモロコシ(メイズ)、エンドウ、ジャガイモ、サツマイモ、バナナ、オオムギ、コムギ、コメ、オート麦、サゴ、アマランス、タピオカ(キャッサバ)、クズウコン、カンナ及びモロコシのワキシー種、並びにこれらの低アミロース及び高アミロース種とすることができる。高アミロースデンプンが好ましい場合がある。
【0087】
加工デンプンはα化されてよい。一実施形態では、デンプンは完全にα化される。α化加工デンプンは、冷水中であっても、容易に迅速に可溶化されうる。一実施形態では、α化を完了させて良好な可溶性を得、且つ組成物中に不快なざらざらした感触をもたらしうる、溶解されていない粒子を除去する。
【0088】
一実施形態では、デンプンは、大部分がそのままの状態のデンプン粒を有する。大部分がそのままの状態の粒状構造を有するα化デンプン誘導体の水性分散体は、典型的には、若干ざらついた感触を有しうる、粒状構造を有していないデンプンの水性分散体よりも、一様で滑らかなテクスチャを有する。そのままの状態の粒状構造を有するα化デンプンの場合、水素結合の天然内部構造は壊れるが、外形又は形態は維持される。
【0089】
加工デンプンは、架橋されてよい。デンプン鎖の架橋は、好適な架橋剤、すなわち二官能性化合物によって達成することができる。一実施形態では、用いられる架橋方法は、デンプンを、オキシ塩化リン、五酸化リン及び/又はトリメタリン酸ナトリウムと反応させるリン酸化反応である。2つのデンプン鎖が、アニオン性P-O基によって架橋される。架橋部位のアニオン特性は、本発明に従って使用されるデンプンの乳化安定化作用を助ける。別の実施形態では、架橋方法は、アジピン酸によって例示される、非限定的にC4~C8アルカンジカルボン酸を含めた、C4~C18アルカン又はアルケンジカルボン酸によるものである。アルカン又はアルケンジカルボン酸は、エステル結合を介して2つのデンプン鎖を連結させる。これは、直鎖の形態又は分枝鎖の形態とすることができる。誘導体は、例えば、デンプンを、ジカルボン酸と酢酸との混合無水物と反応させることによって得ることができる。一実施形態では、乾燥デンプンに基づいて0.1質量%未満の架橋剤が使用される。別の実施形態では、乾燥デンプンに基づいて約0.06~0.1質量%の架橋剤が使用される。
【0090】
加工デンプンが疎水性であることが好ましい。加工デンプンの表面が疎水性であることがより好ましい。
【0091】
デンプンを疎水性にする変性は、C1~6アシル(アセチル)、C1~6ヒドロキシアルキル(ヒドロキシエチル若しくはヒドロキシプロピル)、ホスフェート、リン酸アルキル、リン酸ヒドロキシアルキル、カルボキシメチル又はオクテニルコハク酸の各基等の疎水性官能基をグラフト化することによって実施することができる。
【0092】
本発明の一部の好ましい実施形態では、変性は、エステル化である。これらの実施形態では、加工デンプンは、C1~6アシル(アセチル)、ホスフェート、リン酸アルキル、リン酸ヒドロキシアルキル又はオクテニルコハク酸の各基でエステル化されたデンプンから選択することができ、より好ましくはデンプンはオクテニルコハク酸基で変性されている。
【0093】
変性多糖の塩は、水不溶性の変性多糖の金属塩、又は水不溶性の変性多糖の有機塩であってよい。一実施形態では、変性多糖の塩は、水不溶性の変性多糖の金属塩である。水不溶性の変性多糖の金属塩が加工デンプンの金属塩であることがより好ましい。
【0094】
一部の更に好ましい実施形態では、加工デンプンの金属塩は、オクテニルコハク酸デンプンの金属塩、例えばオクテニルコハク酸デンプンアルミニウム及びオクテニルコハク酸デンプンナトリウム、より好ましくはオクテニルコハク酸デンプンアルミニウムから選択することができる。
【0095】
本発明による組成物中の(c)粉末状有機金属塩の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であってよい。
【0096】
その一方で、本発明による組成物中の(c)粉末状有機金属塩の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下であってよい。
【0097】
本発明による組成物中の(c)粉末状有機金属塩の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.3質量%~5質量%、より好ましくは0.5質量%~5質量%の範囲であってよい。
【0098】
(水)
本発明による組成物は、(d)水を含む。
【0099】
(d)水は、本発明による組成物中の成分(a)~(c)の担体を形成することができる。
【0100】
(d)水の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上であってよい。
【0101】
(d)水の量は、組成物の総質量に対して、70質量%以下、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下であってよい。
【0102】
(d)水の量は、組成物の総質量に対して、20~70質量%、好ましくは30~65質量%、より好ましくは35~60質量%であってよい。
【0103】
(他の成分)
- クレイ
本発明による組成物は、少なくとも1種のクレイを含んでよい。単一のタイプのクレイが使用されてもよく、又は2種以上の異なるタイプのクレイが組み合わせて使用されてもよい。
【0104】
用語「クレイ」は、微粒鉱物で主に構成され、適切な水分量で一般に可塑性であり、乾燥又は焼成すると硬化する、自然に発生する物質を指す。クレイは、通常フィロケイ酸塩を含有するが、クレイは、乾燥され又は焼成されたときに可塑性を付与して硬化する他の物質も含有してよい。クレイ中の関連付けられる相は、可塑性を付与しない物質及び有機物を含んでよい。一般的な定義は、Penguin Dictionary of Scienceにあるもの、すなわち「成分である鉱物が主にマグネシウム又はアルミニウムの様々なケイ酸塩である、微細に分割された岩石材料」である。クレイは、カオリナイト(典型的には、[Si4]Al4O10(OH)8.nH2O(n=0又は4)と定義される)、イライト(典型的にはMx[Si6.8Al1.2]Al3Fe.025Mg.75O20(OH)4と定義される)、バーミキュライト(典型的には、Mx[Si7Al]AlFe.05Mg0.5O20(OH)4と定義される)、スメクタイト(典型的には、Mx[Si8]Al3.2Fe0.2Mg0.6O20(OH)4と定義される)、クロライト(典型的には、(Al(OH)2.55)4[Si6.8AlO1.2}Al3.4Mg0.6)20(OH)4と定義される)、及びフィロケイ酸塩鉱物又はタルク(典型的には、Mg3Si4O10(OH)2と定義される)を含む。
【0105】
化学者によって多くの場合に使用される別の定義は、「1種又は複数の鉱物及び副化合物から構成される、自然に発生する堆積物又は堆積岩であって、その全体が、通常、水和ケイ酸アルミニウム、鉄若しくはマグネシウム、水和アルミナ、又は酸化鉄が豊富であり、コロイドのサイズ若しくはコロイドに近いサイズの粒子が主であり、十分に粉砕し湿らせると、通常、可塑性を発現するもの」である(Kirk-Othmer、Encyclopaedia of Chemical Technology、第5巻、544頁、第2版、John Wiley and Sons, Inc.、New York, N. Y. 1964年を参照されたい)。クレイの例は、書籍「Clay mineralogy」、S. Caillere、S. Henin、M. Rautureau、第2版、1982年、Massonで付与されている。クレイは、天然起源であっても合成起源であってもよい。
【0106】
親水性クレイには、スメクタイト、例えばサポナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライトが挙げられる。親水性クレイには、合成ヘクトライト(ラポナイトとも呼ばれる)、例えば企業により名称Laporte Laponite XLG、Laponite RD、Laponite RDS(これらの製品は、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸マグネシウム、特にナトリウム、リチウム及びマグネシウムである)で販売されている製品、ベントナイト、例えば名称Bentone(登録商標)HC Rheoxで販売されている製品、ケイ酸マグネシウム及びアルミニウム製品、例えば、Vanderbilt Company社によりultra Veegum(登録商標)、Veegum(登録商標)HS、Veegum(登録商標)DGTとして販売されている水和製品、又はケイ酸カルシウム、特に企業により名称Micro-Cel(登録商標)Cで販売されている合成形態が挙げられる。
【0107】
フーラー土は、マグネシウム、ナトリウム及びカルシウム等の金属イオンをそれらの構造内に含有する、水和ケイ酸アルミニウムから主になる。モンモリロナイトは、フーラー土における主要なクレイ鉱物であるが、それは、他の成分中に、カオリナイト、アタパルジャイト及びパリゴルスカイト等の他の鉱物を含有しうる。
【0108】
親油性クレイは、親油性媒体中で膨潤するクレイを意味し、このクレイは膨潤してコロイド状分散体を形成する。親油性クレイとしては、Rheox社により名称「Bentone 38 CE」で、或いはELEMENTIS社により名称Bentone(登録商標)38Vで販売されている、アンモニウム塩化ジステアリルジメチルアンモニウムで変性されたヘクトライト(CTFA名: ジステアルジモニウムヘクトライト)等の、塩化アンモニウム脂肪酸C10~C22で変性された、変性ケイ酸マグネシウム(Rheox社製のBentone gel VS38)ヘクトライト等の変性クレイが挙げられる。
【0109】
このようなクレイの起源は、ヘクトライト、ベントナイト、及びそれらの四級化誘導体等の天然又は合成鉱物クレイであることができ、例えばこれらは、鉱物を、ステアラルコニウムベントナイト等の四級アンモニウム化合物、ヘクトライト、クオタニウム-18ヘクトライト等の四級化ヘクトライト、炭酸プロピレン等の炭酸塩、ベントン等と反応させることによって得られる。
【0110】
本発明において使用することができるクレイの非限定的な例は、フーラー土、フィリピンのピナツボ火山灰泥、シリアのアレッポクレイ、マレーシアのティガ島火山泥、ベトナムのニャチャン泥、韓国のホワイトカオリナイト、韓国の黄土、韓国のチェジュ火山クレイ、台湾のクワンツーリン泥、中国の五大連池火山泥、中国のユンチェン塩湖の黒色泥、中国の担頭村の鉱物泥、陶土(カオリン)、中国の麦飯石、日本の別府温泉ファンゴ、日本のクチャ、日本のタナクラクレイ、ロシアのカンブリアン青色クレイ、アイスランドのブルーラグーン泥、ウクライナのサキ湖泥、チェコ共和国のカルロヴィヴァリー湿原泥、ハンガリーのヘーヴィーズゲオルギコン湿原泥、オーストリアのアルパイン湿原泥、ドイツのバートヴィルスナック泥、ドイツのバイエルン鉱物塩山泥、ドイツのフライブルグ火山灰、ギリシアのサントリーニ泥、スペインのマールメノール泥、イタリアのイスキア火山泥、イタリアのエウガネイ熱泥、フランスの黄色クレイ-イライト、フランスの緑色クレイ-モンモリロナイト、米国のカリストガ泥、米国のセイクリッドクレイ及びオーマライト、米国のレッドモンドクレイ、カナダの北極鉱物泥、メキシコのトゥルムマヤクレイ、カナダの氷成粘土、ブラジルのアマゾン白土、アルゼンチンのエルチラント火山熱泥、アフリカのヒーリングクレイ、オーストラリアのオリーブグリーンクレイである。
【0111】
クレイが、ヘクトライト、カオリン、タルク、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0112】
組成物がクレイを含むとき、クレイは、(a)加工デンプン及び(b)C13~C15脂肪酸でコーティングされうる。詳細には、組成物がクレイを含むとき、クレイは、(a)加工デンプンと(b)C13~C15脂肪酸との複合体でコーティングされうる。
【0113】
組成物がクレイを含むとき、クレイの疎水性は、(a)加工デンプン及び(b)C13~C15脂肪酸によって、好ましくは(a)加工デンプンと(b)C13~C15脂肪酸とにより形成された複合体によって、より好ましくは疎水性加工デンプンとミリスチン酸とにより形成された複合体によって、強化されうる。したがって、クレイは、クレイとケラチン物質との間の疎水性-疎水性相互作用に起因して、皮膚等のケラチン物質上により多く付着しうる。これは、ケラチン物質上のクレイの堆積量における増加をもたらしうる。
【0114】
本発明による組成物中のクレイの量は、組成物の総質量に対して、0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であってよい。
【0115】
その一方で、本発明による組成物中のクレイの量は、組成物の総質量に対して、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってよい。
【0116】
本発明による組成物中のクレイの量は、組成物の総質量に対して、0.5質量%~30質量%、好ましくは1質量%~20質量%、より好ましくは2質量%~10質量%の範囲であってよい。
【0117】
- 両性界面活性剤
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種の両性界面活性剤を含んでよい。2種以上の両性界面活性剤が使用されてもよい。そのため、単一のタイプの両性界面活性剤、又は異なるタイプの両性界面活性剤の組み合わせを使用することができる。
【0118】
両性又は双性イオン性界面活性剤は、例えば(非限定的な列挙)、アミン誘導体、例えば脂肪族第二級又は第三級アミン、及び任意選択で四級化アミン誘導体とすることができ、ここで、脂肪族基は、8~22個の炭素原子を含み、少なくとも1つの水可溶化アニオン性基(例えばカルボキシレート、スルホネート、スルフェート、ホスフェート又はホスホネート)を含有する直鎖又は分枝鎖である。
【0119】
両性界面活性剤は、好ましくは、ベタイン及びアミドアミンカルボキシル化誘導体からなる群から選択することができる。
【0120】
両性界面活性剤が、ベタインタイプの界面活性剤から選択されることが好ましい。
【0121】
ベタインタイプの両性界面活性剤は、好ましくは、アルキルベタイン、アルキルアミドアルキルベタイン、スルホベタイン、アルキルスルホベタイン、ホスホベタイン、アルキルホスホベタイン及びアルキルアミドアルキルスルホベタイン、具体的には(C8~C24)アルキルベタイン、(C8~C24)アルキルアミド(C1~C8)アルキルベタイン、スルホベタイン、(C1~C8)アルキルスルホベタイン、ホスホベタイン、(C1~C8)アルキルホスホベタイン及び(C8~C24)アルキルアミド(C1~C8)アルキルスルホベタインからなる群から選択される。一実施形態では、ベタインタイプの両性界面活性剤は、(C8~C24)アルキルベタイン、(C8~C24)アルキルアミド(C1~C8)アルキルスルホベタイン、スルホベタイン、(C1~C8)アルキルスルホベタイン及びホスホベタインから選ばれる。
【0122】
挙げることができる非限定的な例には、CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary & Handbook、第15版、2014年で、単独で又は混合物として、名称ココベタイン、ラウリルベタイン、セチルベタイン、ココ/オレアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、パルミタミドプロピルベタイン、ステアラミドプロピルベタイン、コカミドエチルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、オレアミドプロピルヒドロキシスルタイン、ココヒドロキシスルタイン、ラウリルヒドロキシスルタイン及びココスルタインで分類されている化合物が挙げられる。
【0123】
ベタインタイプの両性界面活性剤(ベタイン)は、好ましくは、アルキルベタイン、アルキルスルホベタイン及びアルキルアミドアルキルベタイン、特定するとココベタイン、スルホプロピルベタイン及びコカミドプロピルベタインである。
【0124】
アミドアミンカルボキシル化誘導体の中でも、名称Miranolで販売されている製品を挙げることができ、これらは、米国特許第2528378号及び同第2781354号に記載されており、CTFA辞典、第3版、1982年(これらの開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる)において名称アンホカルボキシグリシネート及びアンホカルボキシプロピオネートで分類され、それぞれの構造は以下の通りである:
R1-CONHCH2CH2-N+(R2)(R3)(CH2COO-)M+X- (B1)
[式中、
R1は、加水分解ヤシ油中に存在する酸R1-COOHのアルキル基、ヘプチル基、ノニル基又はウンデシル基を示し、
R2は、ベータ-ヒドロキシエチル基を示し、
R3は、カルボキシメチル基を示し、
M+は、ナトリウム等のアルカリ金属に由来するカチオン性イオン、アンモニウムイオン、又は有機アミンに由来するイオンを示し、
X-は、有機若しくは無機アニオン性イオン、例えばハロゲン化物イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、アルキル(C1~C4)硫酸イオン、アルキル(C1~C4)-若しくはアルキル(C1~C4)アリール-スルホン酸イオン、特定するとメチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオンを示し;又はM+及びX-は、存在しない]、
R1'-CONHCH2CH2-N(B)(C) (B2)
[式中、
R1'は、ヤシ油中若しくは加水分解亜麻仁油中に存在する酸R1'-COOHのアルキル基、C7、C9、C11若しくはC13アルキル基、C17アルキル基及びそのイソ型等のアルキル基、又は不飽和C17基を示し、
Bは、-CH2CH2OX'を表し、
Cは、-(CH2)z-Y'(式中、z=1又は2)を表し、
X'は、-CH2-COOH基、-CH2-COOZ'、-CH2CH2-COOH、-CH2CH2-COOZ'、又は水素原子を示し、
Y'は、-COOH、-COOZ'、-CH2-CHOH-SO3Z'、-CH2-CHOH-SO3H基又はCH2-CH(OH)-SO3-Z'基(式中、Z'は、ナトリウムイオン等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のイオン、有機アミンに由来するイオン、又はアンモニウムイオンを表す)を示す]、
並びに
Ra''-NH-CH(Y'')-(CH2)n-C(O)-NH-(CH2)n'-N(Rd)(Re) (B'2)
[式中、
Y''は、-C(O)OH、-C(O)OZ''、-CH2-CH(OH)-SO3H又は-CH2-CH(OH)-SO3-Z''(式中、Z''は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属に由来するカチオン性イオン、例えばナトリウムイオン、有機アミンに由来するイオン又はアンモニウムイオンを示す)を示し、
Rd及びReは、C1~C4アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示し、
Ra''は、酸からのC10~C30のアルキル基又はアルケニル基を示し、
n及びn'は、独立に、1~3の整数を示す]
【0125】
式B1及びB2を有する両性界面活性剤が、(C8~C24)アルキルアンホモノアセテート、(C8~C24)アルキルアンホジアセテート、(C8~C24)アルキルアンホモノプロピオネート及び(C8~C24)アルキルアンホジプロピオネートから選択されることが好ましい。
【0126】
これらの化合物は、CTFA辞典、第5版、1993年において、名称ココアンホ二酢酸二ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリルアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリロアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホジプロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホプロピオン酸二ナトリウム、カプリルアンホジプロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホジプロピオン酸及びココアンホジプロピオン酸で分類されている。
【0127】
例として、Rhodia Chimie社により商標名Miranol(登録商標)C2M concentrateで販売されているココアンホジアセテートを挙げることができる。
【0128】
式(B'2)の化合物の中で挙げることができるのは、CHIMEX社により命名CHIMEXANE HBで市販されているジエチルアミノプロピルココアスパルタミドナトリウム(CTFA)である。
【0129】
両性界面活性剤は、N-アシルアミノ酸、例えばN-アルキルアミノアセテート及び二ナトリウムココアンホジアセテート、並びにアミンオキシド、例えばステアラミンオキシド及びラウラミンオキシドから選択することができる。
【0130】
両性界面活性剤が、アミンオキシド、例えばステアラミンオキシド及びラウラミンオキシドから選択されることもまた好ましい。
【0131】
本発明による組成物中の両性界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であってよい。
【0132】
その一方で、本発明による組成物中の両性界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってよい。
【0133】
本発明による組成物中の両性界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~20質量%、好ましくは2質量%~15質量%、より好ましくは3質量%~10質量%の範囲であってよい。
【0134】
本発明の一実施形態では、両性界面活性剤の量/(b)C13~C15脂肪酸の量の質量比は、0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上であってよい。
【0135】
両性界面活性剤の量/(b)C13~C15脂肪酸の量の質量比が、10以下、より好ましくは5以下、より好ましくは3以下でありうることが好ましい場合がある。
【0136】
- 親水性有機溶媒
本発明による組成物は、少なくとも1種の、化粧料として許容される親水性有機溶媒を含んでよい。2種以上の親水性有機溶媒が使用されてよい。そのため、単一のタイプの親水性有機溶媒、又は異なるタイプの親水性有機溶媒の組み合わせを使用することができる。
【0137】
用語「水溶性」は、本明細書では、室温(25℃)及び大気圧(105Pa)にて、水中で、少なくとも1g/L、好ましくは少なくとも10g/L、より好ましくは少なくとも100g/Lの溶解度を有する物質を意味する。したがって、化粧料として許容される親水性有機溶媒は、存在する場合、水相中に含まれる。
【0138】
化粧料として許容される親水性有機溶媒には、例えば、1~8個の炭素原子を有する実質的に直鎖状又は分枝状の低級モノアルコール、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール及びイソブタノール;芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコール;ポリオール又はポリオールエーテル、例えばプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、プロパンジオール、ペンチレングリコール、カプリリルグリコール、ソルビトール、エチレングリコールのモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテル、プロピレングリコールエーテル、プロピレングリコールのモノメチルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、例えばジエチレングリコールのモノエチルエーテル又はモノブチルエーテル;ポリエチレングリコール、例えばPEG-4、PEG-6、PEG-8、PEG-10及びPEG-20、及びそれらの誘導体、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0139】
本発明による組成物中の、化粧料として許容される親水性有機溶媒の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~40質量%、好ましくは3質量%~30質量%、より好ましくは5質量%~20質量%であってよい。
【0140】
- C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸
本発明による組成物は、少なくとも1種の、(b)C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸を含んでよい。2種以上の、(b)C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸を組み合わせて使用することができる。
【0141】
(b)C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸は、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和の脂肪酸であってよい。好ましくは、(b)C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸は、直鎖状脂肪酸から選択される。好ましくは、(b)C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸は、飽和の脂肪酸から選択される。そのため、(b)C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸は、直鎖状で飽和の脂肪酸であってよい。
【0142】
本発明の一実施形態では、(b)C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸は、6~12個の炭素原子、特定すると8~12個の炭素原子を含有する脂肪酸であってよい。好ましい一実施形態では、(b)C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸は、6~12個の炭素原子、特定すると8~12個の炭素原子を含有する、直鎖状又は分枝状の、好ましくは直鎖状の、飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の、特定すると直鎖状で飽和の脂肪酸であってよい。
【0143】
6~12個の炭素原子を含有する脂肪酸は、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、及びこれらの組み合わせ、特定するとラウリン酸から選択することができる。
【0144】
本発明による組成物中の、6~12個の炭素原子を含有する脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~30質量%、好ましくは3質量%~20質量%、より好ましくは5質量%~10質量%であってよい。
【0145】
本発明の別の実施形態では、(b)C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸は、16~30個の炭素原子、例えば16~24個の炭素原子、16~22個の炭素原子、又は16~20個の炭素原子を含有する脂肪酸であってよい。好ましい一実施形態では、(b)C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸は、16~30個の炭素原子、例えば16~24個の炭素原子、16~22個の炭素原子、又は16~20個の炭素原子を含有する、直鎖状又は分枝状の、好ましくは直鎖状の、飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の、特定すると直鎖状で飽和の脂肪酸であってよい。
【0146】
16~30個の炭素原子を含有する脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、及びこれらの組み合わせから選択することができ、より好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、及びこれらの組み合わせから選ばれる。
【0147】
本発明による組成物中の、16~30個の炭素原子を含有する脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.3質量%~15質量%、好ましくは0.5質量%~10質量%、より好ましくは1質量%~5質量%であってよい。
【0148】
本発明の一部の特定の実施形態では、少なくとも1種の、(b)C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸は、2つのタイプの脂肪酸を含み、具体的には6~12個の炭素原子を含有する少なくとも1種の脂肪酸と、16~30個の炭素原子を含有する少なくとも1種の脂肪酸との組み合わせを含む。そのため、本発明の特定の一実施形態では、組成物は、カプロン酸、カプリル酸及びラウリン酸のうちの少なくとも1種と、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びイソステアリン酸のうちの少なくとも1種とを組み合わせて含む。
【0149】
本発明による組成物中の(b)C13~C15脂肪酸以外の脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~30質量%、好ましくは3質量%~20質量%、より好ましくは5質量%~15質量%であってよい。
【0150】
- pH調整剤
本発明による組成物は、酸性化剤及び塩基性化剤から選択される少なくとも1種のpH調整剤を含んでよい。2種以上のpH調節剤を組み合わせて使用することができる。
【0151】
本発明による組成物のpHは、化粧料において通常使用される酸性化剤又は塩基性化剤を使用して、所望の値に調整することができる。
【0152】
本発明による組成物は、酸性であってもよい。例えば、本発明による組成物のpHは、12.0未満、より好ましくは11.0未満、更により好ましくは10.0未満であってもよい。
【0153】
或いは、本発明による組成物は、塩基性であってもよい。例えば、本発明による組成物のpHは、7.0超、より好ましくは7.5超、更により好ましくは8.0超であってもよい。
【0154】
酸性化剤の中で例として挙げることができるのは、鉱酸及び有機酸、例えば塩酸、オルトリン酸、硫酸、カルボン酸、例えば酢酸、酒石酸、クエン酸及び乳酸、並びにスルホン酸である。
【0155】
塩基性化剤の中で例として挙げることができるのは、水酸化アンモニウム、アルカリ金属炭酸塩、アルカノールアミン、例えばモノ-、ジ-及びトリエタノールアミン、更にはそれらの誘導体、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、並びに式:
【0156】
【0157】
(式中、
Wは、ヒドロキシル基又はC1~C4アルキル基で任意選択で置換されているプロピレン等のアルキレンを示し、Ra、Rb、Rc及びRdは、独立に、水素原子、アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示す)
の化合物、1,3-プロパンジアミン及びそれらの誘導体によって例示されうる化合物である。
【0158】
酸性化剤又は塩基性化剤は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下の量で使用されてよい。
【0159】
酸性化剤又は塩基性化剤は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上の量で使用されてよい。
【0160】
酸性化剤又は塩基性化剤は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~20質量%、好ましくは0.01質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の範囲の量で使用されてよい。
【0161】
- 添加剤
本発明による組成物はまた、任意の他の、任意選択の又は追加の成分も含んでもよい。
【0162】
他の任意選択の成分は、アニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性ポリマー、例えばアクリレートコポリマー;カチオン性、非イオン性又はアニオン性界面活性剤、例えばジステアリン酸グリコール;フィラー;顔料;無機及び有機UV遮蔽剤;ペプチド及びその誘導体;タンパク質加水分解物;膨潤剤及び浸透剤;脱毛に有効な作用剤;ふけ防止剤;懸濁化剤;金属イオン封鎖剤、例えばグルタミン酸二酢酸四ナトリウム;不透明剤;染料;ビタミン又はプロビタミン;香料;保存剤、例えばフェノキシエタノール、安定剤;並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0163】
本発明の組成物中の他の任意選択の成分の量は、組成物の総質量に対して0.01質量%~30質量%であってよい。
【0164】
[形態]
本発明による組成物の形態は、それが水ベースである限り特に限定されず、溶液、ゲル、ローション、セラム、サスペンション、分散体、流体、乳液、増粘されている若しくは増粘されていないW/O型若しくはO/W型エマルション、泡、又はクリーム、好ましくは溶液、分散体、ゲル及びペースト等の様々な形態を取ってよい。
【0165】
本発明による組成物は、化粧用組成物であってよい。そのため、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質への塗布が意図されてよい。ケラチン物質は、本明細書では、ケラチンを主要構成要素として含有する物質を意味し、その例には、皮膚、爪、唇等が挙げられる。そのため、本発明による化粧用組成物が、ケラチン物質、詳細には皮膚のための美容方法のために使用されることが好ましい。
【0166】
本発明による組成物は、好ましくはリンスオフ組成物でありうる。リンスオフ組成物は、皮膚等のケラチン物質から、好ましくは水で除去することができる。
【0167】
本発明による組成物は、好ましくはクレンジング組成物であってよい。クレンジング組成物は、ケラチン物質から、皮膚等のケラチン物質上の皮脂及び/又はメイクアップを除去しうる。
【0168】
本発明による組成物は、より好ましくはリンスオフクレンジング組成物であってよい。リンスオフクレンジング組成物は、皮膚等のケラチン物質上の皮脂及び/又はメイクアップを除去することができ、ケラチン物質から、好ましくは水で除去することができる。
【0169】
本発明による組成物は、上に記載した必須成分と任意選択の成分とを従来の方法で混合して調製することができる。
【0170】
[方法]
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、ケラチン物質に、本発明による組成物を塗布する工程を含む、美容方法にも関する。
【0171】
本発明による美容方法が、ケラチン物質に塗布された本発明による組成物を、ケラチン物質から濯ぎ落とす工程を更に含むことが好ましい。
【0172】
美容方法は、本明細書では、好ましくは皮膚等のケラチン物質をクレンジングするための、より好ましくはケラチン物質上の皮脂及び/又はメイクアップをクレンジングするための、非治療的美容方法を意味する。
【0173】
本発明はまた、
(a)少なくとも1種の加工デンプンと、
(b)少なくとも1種のC13~C15脂肪酸と、
(d)水と
を含む組成物中での、(c)少なくとも1種の粉末状有機金属塩の、泡のボリュームの点での泡立ち特性及び泡立ちやすさを改善するための、使用にも関する。
【0174】
組成物、(a)少なくとも1種の加工デンプン、(b)少なくとも1種のC13~C15脂肪酸、(c)少なくとも1種の粉末状有機塩、及び(d)水について行われたのと同じ説明を、別段の記載がない限り、本発明による方法及び使用についての説明にも当てはめることができる。本組成物による方法及び使用に使用される組成物は、本発明による組成物に関して上に説明された任意選択の成分のうちの任意のものを含んでよい。
【実施例0175】
本発明は、実施例によって、より詳細に記載されることになる。しかしながら、これらの実施例が本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。以下の実施例は、本発明の分野における非限定的な例証として提示する。
【0176】
(実施例1~6並びに比較例1及び2)
[調製]
実施例1~6(Ex.1~6)及び比較例1~2(Comp. Ex. 1~2)による、皮膚のためのクレンジング組成物のそれぞれを、Table 1(表1)及びTable 2(表2)に示す成分を混合して調製した。成分の量の数値は全て、活性材料の「質量%」に基づく。製品「加工トウモロコシデンプン」は、Nouryon社から得た(製品名: AMAZE)。
【0177】
[評価]
(感覚評価)
実施例1~6及び比較例1~2による組成物を、泡立ちやすさ及び泡のボリュームの点で、3人のモニターが自身で評価した。
【0178】
- 泡立ちやすさ
実施例1~6及び比較例1~2による組成物のそれぞれ0.5mL、及び水1mLを、モニターの手の上に置いた。サンプルのそれぞれを、円を10回描いて泡立てた。泡立てやすさの特性を、円を10回描いた後に手に残っているサンプルの量を調べて5段階にランク付けした。スコア5は、サンプルが手に残っていなかったことを示す。スコア1は、サンプルが手に残っていたことを示す。
【0179】
- 泡のボリューム
上記の泡立ちやすさの評価の後、次いで、泡のボリュームに関する性質を評価した。水1mLを、手の上の泡立ったサンプルに添加した。次いで各サンプルを、追加で40回、円を描いて更に泡立てた。次いで、泡のボリュームを5段階で評価した。スコアが高いほど、創られた泡のボリュームが大きいことを示す。
【0180】
スコアのそれぞれを平均した。結果をTable 1(表1)及びTable 2(表2)に示す。
【0181】
【0182】
【0183】
Table 1(表1)及びTable 2(表2)から、成分(a)~(d)の組み合わせを含んだ実施例1~6による組成物が、(c)粉末状有機金属塩を含まなかった比較例1及び2よりも良好な泡立ちやすさ及びより多量の泡をもたらすことができたことが明らかである。
【0184】
(実施例7)
[調製]
実施例7(Ex.7)による皮膚のためのクレンジング組成物を、Table 3(表3)に示す成分を混合して調製した。成分の量の数値は全て、活性材料の「質量%」に基づく。
【0185】
[評価]
(感覚評価)
以下の特性を、6人のモニターが自身で評価した。評価した特性のそれぞれを、以下の基準に従って5段階にランク付けした。
【0186】
- 泡立ちやすさ
泡立ちやすさを、泡立てた後に手に残ったサンプルの量を調べて評価した。
5:これは非常に泡立ちやすかった。
4:これはいくらか泡立ちやすかった。
3:どちらとも言えない。
2:これはいくらか泡立ちにくかった。
1:これは非常に泡立ちにくかった。
【0187】
- 泡のボリューム
泡のボリュームを、泡立てた後に創られた泡の速度を調べて評価した。
5:非常に良好
4:良好
3:どちらとも言えない
2:不良
1:非常に不良
【0188】
- フレッシュさ
モニターが洗顔を終えた後にフレッシュさを評価した。
5:非常にフレッシュである
4:いくらかフレッシュである
3:どちらとも言えない
2:非常にフレッシュなわけではない
1:全くフレッシュでない
【0189】
- つっぱり/乾燥のなさ
洗顔した後、つっぱり及び/又は乾燥が感じられるかどうかを評価した。
5:つっぱり/乾燥は全くない
4:つっぱり/乾燥はあまりない
3:どちらとも言えない
2:つっぱり/乾燥はいくらかある
1:つっぱり/乾燥は非常にある
【0190】
- 滑らかさ
洗顔直後及びその1日後に、顔の皮膚上の滑らかさを評価した。
5:非常に滑らか
4:いくらか滑らか
3:どちらとも言えない
2:あまり滑らかではない
1:全く滑らかでない
【0191】
- 油の抑制
油の抑制特性を、洗浄後及びその1日後に、洗った顔の外見を観察して調べた。
5:油っぽく光る外見は非常に抑制されていた。
4:油っぽく光る外見はいくらか抑制されていた。
3:どちらとも言えない。
2:油っぽく光る外見はあまり抑制されていなかった。
1:油っぽく光る外見は全く抑制されていなかった。
【0192】
- 脂性/べとつく触感のなさ
脂性/べとつく触感のなさを維持するレベルを、洗浄後及びその1日後に評価した。
5:全く脂性/べとつく触感はない
4:あまり脂性/べとつく触感はない
3:どちらとも言えない
2:いくらか脂性/べとつく触感がある
1:非常に脂性/べとつく触感がある
【0193】
スコアのそれぞれを平均した。結果をTable 3(表3)に示す。
【0194】
【0195】
Table 3(表3)から見られるように、本発明による組成物は、改善した泡立ちやすさ及び泡のボリュームに加えて、フレッシュさ、つっぱり/乾燥のなさ、滑らかさ、油の抑制、及びケラチン物質との脂性/べとつく触感のなさを授ける等、より良好な美容感覚特性をもたらすことができる。