(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089365
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20240626BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H01F27/29 125
H01F27/29 G
H01F27/30 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204689
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡部 汰一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 竜也
(72)【発明者】
【氏名】浅井 雄悟
(72)【発明者】
【氏名】占部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】東田 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】吉野 花子
(72)【発明者】
【氏名】荒澤 崇
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA03
5E070EA02
(57)【要約】
【課題】小型であり、鍔部に対する端子具の取付安定性が高いコイル装置を提供すること。
【解決手段】コイル装置1は、巻回部11と、巻回部11から引き出される引出部12aとを有するコイル10と、巻回部11が設けられる巻芯部21と、巻芯部21の軸芯に平行な第1方向の端部に形成された鍔部22aとを有するコア20と、鍔部22aに嵌合する嵌合部31を備えた端子具30aと、を有する。鍔部22aは、鍔部22aの実装面221に平行な第2方向の一方側に位置する第1側面225と他方側に位置する第2側面226とを有する。嵌合部31は、第1側面225から第2側面226にかけて配置され、引出部12aに接続されている。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回部と、前記巻回部から引き出される引出部とを有するコイルと、
前記巻回部が設けられる巻芯部と、前記巻芯部の軸芯に平行な第1方向の端部に形成された鍔部とを有するコアと、
前記鍔部に嵌合する嵌合部を備えた端子具と、を有し、
前記鍔部は、前記鍔部の実装面に平行な第2方向の一方側に位置する第1側面と他方側に位置する第2側面とを有し、
前記嵌合部は、前記第1側面から前記第2側面にかけて配置され、前記引出部に接続されているコイル装置。
【請求項2】
前記嵌合部は、前記第1側面と対向する第1側部を有し、
前記第2方向の外側を向く前記第1側部の外面には、前記引出部が接続されている請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記嵌合部は、前記第1側面と対向する第1側部を有し、
前記第1側面には、第1切り欠き部が形成されており、
前記第1側部は、前記第1切り欠き部に配置されている請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記嵌合部は、前記第2側面と対向する第2側部を有し、
前記第2側面には、第2切り欠き部が形成されており、
前記第2側部は、前記第2切り欠き部に配置されている請求項3に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記第1切り欠き部は、前記実装面に近接する前記第1側面の一方側に位置しており、
前記第2切り欠き部は、前記実装面に近接する前記第2側面の一方側に位置している請求項4に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記第2方向に沿った前記第1切り欠き部の前記第1側面からの深さは、前記第2方向に沿った前記第2切り欠き部の前記第2側面からの深さよりも深い請求項4に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記嵌合部は、前記鍔部の実装面と対向する実装対向面よりも、前記実装面に近接する側で、前記鍔部に嵌合している請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記嵌合部は、前記第1側面と対向する第1側部を有し、
前記第2方向の外側を向く前記第1側部の外面には、導電接続部によって、前記引出部が接続されており、
前記導電接続部の少なくとも一部は、前記第1切り欠き部に配置されている請求項3に記載のコイル装置。
【請求項9】
前記実装面に垂直な第3方向に沿って、前記実装面とは反対側から前記鍔部を見たとき、前記導電接続部の少なくとも一部は、前記鍔部で隠れている請求項8に記載のコイル装置。
【請求項10】
前記嵌合部は、前記第1側面と対向する第1側部を有し、
前記第2方向の内側を向く前記第1側部の内面には、前記第1側面に向かって突出する突起が形成されている請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項11】
前記第1側面には、前記突起と嵌合する凹部が形成されている請求項10に記載のコイル装置。
【請求項12】
前記端子具は、前記実装面に配置される実装部を有し、
前記実装部は、第1部分と第2部分とを有し、
前記第1部分と前記第2部分とは、隙間を介して、前記第2方向に離間している請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項13】
前記端子具は、前記実装面に配置される実装部を有し、
前記実装部は、前記実装面の前記第2方向の中心よりも、前記第2方向の他方側に偏在している請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項14】
前記嵌合部は、前記第1側面と対向する第1側部と、前記第1側部に引き出された前記引出部をかしめるかしめ片とを有し、
前記かしめ片の端部は、前記第1側部に接続されており、
前記実装面に垂直な第3方向に関して、前記かしめ片の端部の位置は、前記鍔部の実装面側に位置する前記巻芯部の端部の位置と等しい請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項15】
前記嵌合部は、前記鍔部の外端面に配置される本体部と拡張部とを有し、
前記本体部は、前記第1側部と前記第2側部との間に位置しており、
前記拡張部は、前記実装面に垂直な第3方向に沿って、前記実装面とは反対側に向かって、前記本体部から延びている請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項16】
前記鍔部は、前記鍔部の外端面から前記第1方向の外側に突出する第1凸部と第2凸部とを有し、
前記第1凸部は、前記鍔部の前記第2方向の一方側に配置され、
前記第2凸部は、前記鍔部の前記第2方向の他方側に配置され、
前記拡張部は、前記第1凸部と前記第2凸部との間に配置されている請求項15に記載のコイル装置。
【請求項17】
前記鍔部の実装面と対向する実装対向面に取り付けられる板状コアをさらに有する請求項1または2に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子具を有するコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、従来から、コアの鍔部に端子具が設けられたコイル装置が知られている。このコイル装置において、端子具は、鍔部に嵌合する嵌合部を有する。嵌合部は、鍔部の下面(実装面)に配置される実装部と、鍔部の上面(実装面と対向する面)に配置される継線部と、鍔部の外端面に配置される本体部とを有する。実装部は基板のランドパターンに接続され、継線部はコイルの引出部に接続され、本体部は基板に対して垂直に配置される。
【0003】
特許文献1のコイル装置では、嵌合部を鍔部に嵌合させることにより、端子具と鍔部との間の固定強度を高めることができる。また、コイルの引出部を嵌合部に接続することができるため、嵌合部とは別に、端子具に継線部を設ける必要がなく、端子具さらにはコイル装置の小型化を図ることができる。
【0004】
ところで、特許文献1のコイル装置では、端子具を鍔部に取り付けるときに、嵌合部が本体部の軸周りに回転(回動)し、嵌合部が所望の向きとは異なる向きで鍔部に固定される場合がある。この場合、コイル装置を基板に実装するときに、実装部を基板のランドパターンの所望の位置に配置することが困難になるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、小型であり、鍔部に対する端子具の取付安定性が高いコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
巻回部と、前記巻回部から引き出される引出部とを有するコイルと、
前記巻回部が設けられる巻芯部と、前記巻芯部の軸芯に平行な第1方向の端部に形成された鍔部とを有するコアと、
前記鍔部に嵌合する嵌合部を備えた端子具と、を有し、
前記鍔部は、前記鍔部の実装面に平行な第2方向の一方側に位置する第1側面と他方側に位置する第2側面とを有し、
前記嵌合部は、前記第1側面から前記第2側面にかけて配置され、前記引出部に接続されている。
【0008】
本発明に係るコイル装置では、嵌合部が、鍔部の第1側面から第2側面にかけて配置されている。そのため、嵌合部のうち、第1側面に配置された部分と、第2側面に配置された部分とが、ストッパ(回転止め)として機能し、嵌合部が実装面に平行な面内で回転(回動)しにくくなる。これにより、端子具を鍔部に取り付けるときに、嵌合部を所望の向きで鍔部に固定することが可能となり、鍔部に対する端子具の取付安定性を高めることができる。また、引出部は嵌合部に接続されるため、嵌合部とは別に、端子具に継線部を設ける必要がなく、端子具さらにはコイル装置の小型化を図ることができる。
【0009】
前記嵌合部は、前記第1側面と対向する第1側部を有し、前記第2方向の外側を向く前記第1側部の外面には、前記引出部が接続されていてもよい。この場合、引出部を短距離で引き出すことができるため、引出部の長さを短くすることが可能となり、引出部の直流抵抗や浮遊容量を低減することができる。加えて、引出部の断線を防止することができる。
【0010】
前記嵌合部は、前記第1側面と対向する第1側部を有し、前記第1側面には、第1切り欠き部が形成されており、前記第1側部は、前記第1切り欠き部に配置されていてもよい。この場合、第1側部が、鍔部の第2方向の一端よりも外側に露出しにくくなる。そのため、コイル装置の第2方向の寸法を小さくし、コイル装置の小型化を図ることができる。
【0011】
前記嵌合部は、前記第2側面と対向する第2側部を有し、前記第2側面には、第2切り欠き部が形成されており、前記第2側部は、前記第2切り欠き部に配置されていてもよい。この場合、第2側部が、鍔部の第2方向の他端よりも外側に露出しにくくなる。そのため、コイル装置の第2方向の寸法を小さくし、コイル装置のさらなる小型化を図ることができる。
【0012】
前記第1切り欠き部は、前記実装面に近接する前記第1側面の一方側に位置しており、前記第2切り欠き部は、前記実装面に近接する前記第2側面の一方側に位置していてもよい。この場合、第1切り欠き部に配置される第1側部や、第2切り欠き部に配置される第2側部など、端子具の主な部分を、実装面側に配置することが可能となり、端子具の小型化を図ることができる。
【0013】
前記第2方向に沿った前記第1切り欠き部の前記第1側面からの深さは、前記第2方向に沿った前記第2切り欠き部の前記第2側面からの深さよりも深くてもよい。例えば、引出部が第1側部に接続される場合、上記のような構成とすることにより、第1側部およびこれに接続された引出部が、鍔部の第2方向の一端よりも外側に露出しにくくなる。そのため、コイル装置の第2方向の寸法を小さくし、コイル装置の小型化を図ることができる。
【0014】
前記嵌合部は、前記鍔部の実装面と対向する実装対向面よりも、前記実装面に近接する側で、前記鍔部に嵌合していてもよい。この場合、嵌合部など、端子具の主な部分を、実装面側に配置することが可能となり、端子具の小型化を図ることができる。
【0015】
前記嵌合部は、前記第1側面と対向する第1側部を有し、前記第2方向の外側を向く前記第1側部の外面には、導電接続部によって、前記引出部が接続されており、前記導電接続部の少なくとも一部は、前記第1切り欠き部に配置されていてもよい。この場合、導電接続部が、鍔部の第2方向の一端よりも外側に露出しにくくなる。そのため、コイル装置の第2方向の寸法を小さくし、コイル装置の小型化を図ることができる。なお、導電接続部の全体が、第1切り欠き部に配置されていてもよい。この場合、導電接続部の形状ばらつきに起因するコイル装置の第2方向の寸法ばらつきを防止することができる。
【0016】
前記実装面に垂直な第3方向に沿って、前記実装面とは反対側から前記鍔部を見たとき、前記導電接続部の少なくとも一部は、前記鍔部で隠れていてもよい。この場合、導電接続部の少なくとも一部が、鍔部の外縁部よりも外側に露出することを防止することができる。そのため、コイル装置の寸法を小さくし、コイル装置の小型化を図ることができる。
【0017】
前記嵌合部は、前記第1側面と対向する第1側部を有し、前記第2方向の内側を向く前記第1側部の内面には、前記第1側面に向かって突出する突起が形成されていてもよい。この場合、突起がストッパ(回転止め)として機能するため、嵌合部が実装面に平行な面内で回転(回動)しにくくなる。
【0018】
前記第1側面には、前記突起と嵌合する凹部が形成されていてもよい。突起が凹部に嵌合することにより、嵌合部が実装面に平行な面内でさらに回転(回動)しにくくなる。
【0019】
前記端子具は、前記実装面に配置される実装部を有し、前記実装部は、第1部分と第2部分とを有し、前記第1部分と前記第2部分とは、隙間を介して、前記第2方向に離間していてもよい。この場合、隙間の大きさに応じて、実装部の面積を小さくすることができる。これにより、実装部に接続される基板のランドパターンの面積を小さくし、ランドパターンの浮遊容量を低減することができる。
【0020】
前記端子具は、前記実装面に配置される実装部を有し、前記実装部は、前記実装面の前記第2方向の中心よりも、前記第2方向の他方側に偏在していてもよい。例えば、嵌合部の第2方向の一方側(上述した第1側部)に引出部を接続する場合、上記のような構成とすることにより、実装部と基板とを接続するハンダ等が、引出部に付着しにくくなり、引出部の断線を防止することができる。
【0021】
前記嵌合部は、前記第1側面と対向する第1側部と、前記第1側部に引き出された前記引出部をかしめるかしめ片とを有し、前記かしめ片の端部は、前記第1側部に接続されており、前記実装面に垂直な第3方向に関して、前記かしめ片の端部の位置は、前記鍔部の実装面側に位置する前記巻芯部の端部の位置と等しくてもよい。この場合、例えば、巻芯部の端部からかしめ片の端部に向けて、引出部をまっすぐに引き出すことができる。また、引出部をかしめ片の端部(かしめ片の根本)でかしめることが可能となり、引出部の位置ずれを防止することができる。
【0022】
前記嵌合部は、前記鍔部の外端面に配置される本体部と拡張部とを有し、前記本体部は、前記第1側部と前記第2側部との間に位置しており、前記拡張部は、前記実装面に垂直な第3方向に沿って、前記実装面とは反対側に向かって、前記本体部から延びていてもよい。この場合、拡張部によって、鍔部の外端面と嵌合部との接触面積を拡張することができるため、端子具と鍔部との間の固定強度を高めることができる。
【0023】
前記鍔部は、前記鍔部の外端面から前記第1方向の外側に突出する第1凸部と第2凸部とを有し、前記第1凸部は、前記鍔部の前記第2方向の一方側に配置され、前記第2凸部は、前記鍔部の前記第2方向の他方側に配置され、前記拡張部は、前記第1凸部と前記第2凸部との間に配置されていてもよい。この場合、第2方向において、拡張部の位置が、第1凸部と第2凸部との間に制限される。そのため、嵌合部の第2方向の一方側または他方側への位置ずれを防止することができる。
【0024】
前記鍔部の実装面と対向する実装対向面に取り付けられる板状コアをさらに有していてもよい。鍔部に板状コアを取り付けることにより、コイル装置のインダクタンス特性を向上させることができる。また、本発明では、嵌合部を、実装面および実装対向面には嵌合させずに、第1側面および第2側面に嵌合させる。そのため、特許文献1とは異なり、嵌合部(あるいは、嵌合部に接続された引出部等)と板状コアとの干渉を防止するために、実装対向面や板状コアを削る必要がない。そのため、実装対向面と板状コアとの接合面の面積を確保することが可能であり、この点においても、コイル装置のインダクタンス特性を向上させることができる。加えて、実装対向面と板状コアとの間の接合強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図4】
図4は第2実施形態のコイル装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図示する内容は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0027】
第1実施形態
図1Aに示すコイル装置1は、例えばインダクタとして機能し、各種の電気機器の電源等に搭載される。コイル装置1は、コイル10と、コア20と、端子具30aおよび30bとを有する。コイル装置1は、これらの部材に加えて、板状コア40を有していてもよい。
【0028】
コイル10は、ワイヤをコイル状に巻回してなる巻回部11と、巻回部11から引き出される引出部12aおよび12bとを有する。ワイヤは、例えば銅線などを絶縁性の被膜で被覆した絶縁被覆ワイヤでもよい。ワイヤの線径は、特に限定されないが、例えば10~300μmである。引出部12aおよび12bの端部では、被膜が除去されていてもよい。
【0029】
図2に示すように、コア20は、ドラムコアであり、巻芯部21と、鍔部22aおよび22bとを有する。コア20の材質は、金属やフェライト等の磁性材料であるが、特に限定されない。
図2等において、X軸は、巻芯部21の軸芯に平行な軸である。Y軸は、コア20を平面視したときに、巻芯部21の軸芯に直交する軸である。Z軸は、X軸およびY軸に垂直な軸である。以下では、X軸、Y軸およびZ軸の各々について、コア20の中心に向かう方向を「内側」とし、コア20の中心から離れる方向を「外側」とする。コア20のサイズは、特に限定されないが、例えば、コア20のX軸方向の長さは1~6mmであり、コア20のY軸方向の長さは0.5~4mmであり、コア20のZ軸方向の長さは0.5~3mmである。
【0030】
なお、本実施形態において、「平行」とは、複数の対象物が厳密に平行である場合に限定されず、複数の対象物が実質的に平行である場合(例えば、複数の対象物の間に、±5度以内の誤差がある場合)を許容するも文言である。また、「垂直」あるいは「直交」とは、複数の対象物が厳密に垂直である場合に限定されず、複数の対象物が実質的に垂直である場合(例えば、複数の対象物の間に、±5度以内の誤差がある場合)を許容する文言である。
【0031】
図1Bに示すように、巻芯部21は、鍔部22a(または鍔部22b)の内端面のZ軸方向の中央よりも、Z軸正方向側(板状コア40が位置する側)に偏在していてもよい。ここで、巻芯部21(あるいは、巻芯部21に巻回された巻回部11)と端子具30bの実装部32の底面との間の距離をL1とし、巻芯部21(あるいは、巻芯部21に巻回された巻回部11)と板状コア40の底面との間の距離をL2とする。このとき、L2<L1である。なお、巻芯部21は、鍔部22a(または鍔部22b)の内端面のZ軸方向の中央に接続されていてもよい。
【0032】
巻芯部21には、巻回部11が設けられている。巻芯部21の軸方向に垂直な断面形状は、八角形であるが、その他の多角形(例えば、四角形や六角形)、円形あるいは楕円形でもよい。鍔部22aは、巻芯部21の軸方向の一端に形成されており、鍔部22bは、巻芯部21の軸方向の他端に形成されている。鍔部22aと鍔部22bとは、対称形状(同一形状)を有する。以下では、重複記載を防止するため、鍔部22aおよび22bに共通する事項について、鍔部22aについてのみ説明する場合がある。
【0033】
図2に示すように、鍔部22aは、実装面221と、実装対向面222と、内端面223と、外端面224と、第1側面225と、第2側面226とを有する。同様に、鍔部22bは、実装面221と、実装対向面222と、内端面223と、外端面224と、第1側面225と、第2側面226とを有する。
【0034】
実装面221は、鍔部22aのZ軸方向の一方側に位置し、実装対向面222は、鍔部22aのZ軸方向の他方側に位置する。実装面221と実装対向面222とは、Z軸方向に対向している。実装面221は、コイル装置1が実装される基板(図示略)に対向する面である。実装面221および実装対向面222は、例えば、XY平面に平行な平坦面である。
【0035】
内端面223は、鍔部22aのX軸方向の一方側に位置し、外端面224は、鍔部22aのX軸方向の他方側に位置する。内端面223と外端面224とは、X軸方向に対向している。内端面223は、巻芯部21が接続される面である。第1側面225は、鍔部22aのY軸方向の一方側に位置し、第2側面226は、鍔部22aのY軸方向の他方側に位置する。第1側面225と第2側面226とは、Y軸方向に対向している。
【0036】
第1側面225には、第1切り欠き部23が形成されていてもよく、第2側面226には、第2切り欠き部24が形成されていてもよい。第1切り欠き部23は、第1側面225から、Y軸方向の内側に向かって凹む切り欠きである。第2切り欠き部24は、第2側面226から、Y軸方向の内側に向かって凹む切り欠きである。第1切り欠き部23と第2切り欠き部24とは、Y軸方向に対向している。
【0037】
本実施形態では、第1切り欠き部23は、第1側面225のうち、実装面221に近接するZ軸方向の一方側(第1側面225のZ軸負方向側)に位置している。より具体的には、第1切り欠き部23は、全体として、第1側面225のZ軸方向の中央よりも、実装面221側に形成されている。ただし、第1切り欠き部23の形状は
図2に示す形状に限定されず、例えば、第1切り欠き部23の一部が、第1側面225のZ軸方向の中央よりも、実装対向面222側に位置していてもよい。第1切り欠き部23のZ軸方向の長さは、特に限定されないが、鍔部22aのZ軸方向の長さの1/2以下である。
【0038】
第2切り欠き部24は、第2側面226のうち、実装面221に近接するZ軸方向の一方側(第2側面226のZ軸負方向側)に位置している。より具体的には、第2切り欠き部24は、全体として、第2側面226のZ軸方向の中央よりも、実装面221側に形成されている。ただし、第2切り欠き部24の形状は
図2に示す形状に限定されず、例えば、第2切り欠き部24の一部が、第2側面226のZ軸方向の中央よりも、実装対向面222側に位置していてもよい。第2切り欠き部24のZ軸方向の長さは、特に限定されないが、鍔部22aのZ軸方向の長さの1/2以下である。
【0039】
第1切り欠き部23の第1側面225からのY軸方向の深さは、第2切り欠き部24の第2側面226からのY軸方向の深さよりも深くなっている。第1切り欠き部23の第1側面225からのY軸方向の深さは、例えば、第2切り欠き部24の第2側面226からのY軸方向の深さの1倍より大きく、1.5倍以上あるいは2倍以上でもよい。ただし、これらの深さは等しくてもよい。あるいは、後者の深さが、前者の深さよりも深くなっていてもよい。
【0040】
第1側面225には、段差形成面227が形成されていてもよく、第1側面225は、段差状に形成されていてもよい。第1側面225において、段差形成面227よりも実装面221側には、端子具30aの一部が配置される(
図1A参照)。第2側面226には、段差形成面227が形成されていてもよく、第2側面226は、段差状に形成されていてもよい。第2側面226において、段差形成面227よりも実装面221側には、端子具30aの一部が配置される(
図1A参照)。段差形成面227と第2側面226(第1側面225についても同様)とが為す角度θは、特に限定されないが、90°≦θ≦120°である。
【0041】
第1側面225には、第1凹部25が形成されていてもよい。第1凹部25は、第1側面225において、第1切り欠き部23の位置に形成されており、段差形成面227よりも実装面221側に位置する。第2側面226には、第2凹部26が形成されていてもよい。第2凹部26は、第2側面226において、第2切り欠き部24の位置に形成されており、段差形成面227よりも実装面221側に位置する。詳細については後述するが、第1凹部25および第2凹部26には、端子具30aに形成された突起が嵌合する。
【0042】
図3Aに示すように、端子具30aおよび30bは、それぞれ、嵌合部31を有する。端子具30aおよび30bは、それぞれ、嵌合部31に加えて、実装部32と、拡張部33と、第1かしめ部(第1かしめ片)34と、第2かしめ部(第2かしめ片)35とを有していてもよい。
図1Aに示すように、端子具30aは鍔部22aに取り付けられ、端子具30bは鍔部22bに取り付けられる。端子具30aと端子具30bとは、X軸に沿って、対向して配置されている。
図3Aに示すように、端子具30aと端子具30bとは、例えば、X軸に沿って相互に向かい合って配置されたときに、YZ面に対して鏡面対称な形状を有する。ただし、端子具30aと端子具30bとは、同一形状を有していてもよい。なお、本実施形態において、「同一」あるいは「等しい」とは、複数の対象物が厳密に同一である場合に限定されず、複数の対象物が実質的に同一である場合(例えば、複数の対象物の各々の物理量の間に、±5%以内の誤差、あるいは±10%以内の誤差がある場合)を許容する文言である。
【0043】
端子具30aおよび30bは、金属などの導体で構成されていてもよい。端子具30aおよび30bの表面には、SnやNiなどのメッキ膜が形成されていてもよい。端子具30aおよび30bの厚みは、特に限定されないが、50~300μmである。
【0044】
端子具30aの嵌合部31、実装部32、拡張部33、第1かしめ部34および第2かしめ部35の各々の構成は、端子具30bの嵌合部31、実装部32、拡張部33、第1かしめ部34および第2かしめ部35の各々の構成と同一であるが、異なっていてもよい。以下では、端子具30aについて、上述した各部の構成の説明を行う。ただし、必要に応じて、端子具30bについても、上述した各部の構成の説明を行う。
【0045】
嵌合部31は、鍔部22aに嵌合する部分であり、C字形状を有する。
図1Cに示すように、嵌合部31は、第1側面225から第2側面226にかけて配置される。より詳細には、嵌合部31は、外端面224と、第1側面225と、第2側面226とに跨って配置される。嵌合部31は、第1側面225と第2側面226とを挟み込むように、鍔部22aに嵌合する。すなわち、嵌合部31は、いわゆる横嵌合型の嵌合部であり、いわゆる縦嵌合型の嵌合部(特許文献1を参照)とは異なる。嵌合部31は、例えば、接着剤等によって外端面224に接合されてもよい。
図1Aに示すように、端子具30aの嵌合部31はコイル10の引出部12aに接続され、端子具30bの嵌合部31はコイル10の引出部12bに接続される。
【0046】
図1Bに示すように、嵌合部31は、実装対向面222よりも、実装面221に近接する側で、鍔部22aに嵌合している。そのため、嵌合部31や実装部32など、端子具30aの主な部分を、実装面221側に配置することが可能となり、端子具30aの小型化を図ることができる。本実施形態では、嵌合部31は、鍔部22aのZ軸方向の中央よりも実装面221側に配置されており、鍔部22aのZ軸方向の中央よりも実装対向面222側には配置されていない。
【0047】
図3Aに示すように、嵌合部31は、本体部310と、第1側部311と、第2側部312とを有する。
図1Cに示すように、本体部310は、鍔部22aの外端面224に対向して配置される部分である。本体部310は、第1側部311と第2側部312との間に位置している。本体部310は、Y軸に沿って延在しており、第1側部311と第2側部312とをY軸に沿って接続している。本体部310の軸芯(第1側部311と第2側部312とを結ぶ軸の軸芯)は、実装面221あるいは実装基板(図示略)に対して平行に配置されている。本体部310は、実装対向面222よりも、実装面221に近接する側に配置されている。より具体的には、本体部310は、全体として、外端面224のZ軸方向の中央よりも実装面221側に配置されている。
【0048】
図1Bおよび
図1Eに示すように、第1側部311は、鍔部22aの第1側面225に対向して配置される部分である。第1側部311は、第1側面225に当接していてもよく、あるいは第1側部311と第1側面225との間に隙間が形成されていてもよい。第1側部311は、本体部310のY軸方向の一端に形成されている。第1側部311は、本体部310に対して直交する方向に延在(屈曲)している。第1側部311のX軸方向の長さは、第1側面225のX軸方向の長さと等しくてもよい。
【0049】
図1Cに示すように、第1側部311は、第1切り欠き部23に配置されている。そのため、第1側部311は、鍔部22aのY軸方向の一端よりも外側(Y軸正方向側)に露出しておらず、第1側面225(ただし、第1側面225のうち、段差形成面227よりも実装対向面222側に位置する部分)よりもY軸方向の内側に配置されている。それゆえ、本実施形態では、コイル装置1のY軸方向の寸法を小さくし、コイル装置1の小型化を図ることができる。
【0050】
第1側部311は、実装対向面222よりも、実装面221に近接する側に配置されている。より具体的には、第1側部311は、全体として、第1側面225のZ軸方向の中央よりも実装面221側に配置されている。
【0051】
図3Aに示すように、第1側部311には、第1かしめ部34と第2かしめ部35とが形成されている。
図1Bに示すように、端子具30aの第1かしめ部34および第2かしめ部35は、鍔部22aの第1側部311に引き出された引出部12aをかしめる。端子具30bの第1かしめ部34および第2かしめ部35は、鍔部22bの第1側部311に引き出された引出部12bをかしめる。第1かしめ部34の端部は、第1側部311のZ軸正方向側の端部に接続されており、第2かしめ部35の端部は、第1側部311のZ軸負方向側の端部に接続されている。すなわち、第1かしめ部34および第2かしめ部35の各々の端部は、Z軸方向において、第1側部311の反対側に位置している。
【0052】
第1かしめ部34と第2かしめ部35とは、X軸方向に位置ずれして配置されている。第1かしめ部34は、鍔部22aの内端面223側に配置されている一方で、第2かしめ部35は、鍔部22aの外端面224側に配置されている。そのため、引出部12aの異なる位置を第1かしめ部34と第2かしめ部35とでかしめることが可能となっている。
【0053】
図3Aに示すように、第1かしめ部34は、屈曲自在に形成されており、実線で示す状態(引出部12aをかしめていないときの状態)から二点鎖線で示す状態(引出部12aをかしめているときの状態)へ屈曲することができる。同様に、第2かしめ部35は、屈曲自在に形成されており、実線で示す状態(引出部12aをかしめていないときの状態)から二点鎖線で示す状態(引出部12aをかしめているときの状態)へ屈曲することができる。
【0054】
図1Bに示すように、第1かしめ部34は、引出部12aを仮固定するために、第1側部311に備わっている。第2かしめ部35は、引出部12aを本固定するために、第1側部311に備わっている。引出部12aは、Y軸方向の外側を向く第1側部311の外面に配置され、第1かしめ部34と第2かしめ部35とでかしめられる。この状態で、引出部12aは、レーザ溶接により、第2かしめ部35と一体化する。
【0055】
引出部12aと第2かしめ部35との接続部には、溶接部(溶接玉)50が形成されていてもよい。引出部12aは、第1側部311の外面に、溶接部50によって接続されている。溶接部50は、導電性を有し、引出部12aと第2かしめ部35とを接続する導電接続部である。引出部12aは、ハンダや導電性接着剤など、他の導電接続部によって、第2かしめ部35に接続されてもよい。溶接部50は、第2かしめ部35の一部(特に、第2かしめ部35の先端部)を覆うように形成されているが、第2かしめ部35の全体を覆うように形成されていてもよい。なお、引出部12aと第1かしめ部34との接続部には、溶接部50は形成されていない。
【0056】
本実施形態のように、引出部12aを第1側部311の外面に接続する場合、引出部12aを第1側部311以外の部分(例えば、実装部32)に接続する場合に比べて、引出部12aを巻芯部21から短距離で引き出すことができる。そのため、引出部12aの長さを短くすることが可能となり、引出部12aの直流抵抗や浮遊容量を低減することができる。加えて、実装部32に付着したハンダ等が引出部12aに接触しにくくなり、引出部12aの断線を防止することができる。
【0057】
第2かしめ部35は、主として溶接部50を形成するスペースを確保する観点から、第1かしめ部34に比べて、特に先端部において、X軸方向に幅広に形成されていてもよい。加えて、第2かしめ部35は、第1かしめ部34よりもZ軸方向に長めに形成されていてもよい。なお、第1かしめ部34および第2かしめ部35の少なくとも一方は、必須ではなく、省略してもよい。この場合、第1側部311の外面に、引出部12aを、例えばレーザ溶接、ハンダ、導電性接着剤、熱圧着、超音波接合、抵抗ろう付けまたは紫外線硬化樹脂接合により接続してもよい。
【0058】
図1Eに示すように、鍔部22aの第1側部311の外面に配置された引出部12aは、鍔部22aの第1切り欠き部23に配置されている。また、鍔部22bの第1側部311の外面に配置された引出部12bは、鍔部22bの第1切り欠き部23に配置されている。この場合、引出部12aおよび12bが、それぞれ鍔部22aおよび22bのY軸方向の一端よりも外側(Y軸正方向側)に露出しにくくなる。そのため、コイル装置のY軸方向の寸法を小さくし、コイル装置1の小型化を図ることができる。ただし、引出部12aの少なくとも一部が、第1切り欠き部23から、Y軸方向の外側(Y軸正方向側)に突出していてもよい。同様に、引出部12bの少なくとも一部が、第1切り欠き部23から、Y軸方向の外側(Y軸正方向側)に突出していてもよい。
【0059】
図1Cおよび
図1Eに示すように、溶接部50の少なくとも一部は、鍔部22aの第1切り欠き部23に配置されていてもよい。また、溶接部50の少なくとも一部は、鍔部22bの第1切り欠き部23に配置されていてもよい。この場合、溶接部50が、鍔部22aまたは22bのY軸方向の一端よりも外側(Y軸正方向側)に露出しにくくなる。そのため、コイル装置1のY軸方向の寸法を小さくし、コイル装置1の小型化を図ることができる。
【0060】
なお、溶接部50の全体が、鍔部22aの第1切り欠き部23に配置されていてもよい。また、溶接部50の全体が、鍔部22bの第1切り欠き部23に配置されていてもよい。この場合、溶接部50の形状ばらつきに起因するコイル装置1のY軸方向の寸法ばらつきを防止することができる。
【0061】
溶接部50の一部は、鍔部22aの外端面224よりもX軸方向の外側に突出しているが、溶接部50は、外端面224よりもX軸方向の内側に位置していてもよい。また、溶接部50の一部は、鍔部22bの外端面224よりもX軸方向の外側に突出しているが、溶接部50は、外端面224よりもX軸方向の内側に位置していてもよい。この場合、コイル装置1のX軸方向の寸法を小さくし、コイル装置1の小型化を図ることができる。
【0062】
図1Dに示すように、Z軸方向(
図2の実装面221に垂直な方向)に沿って、実装面221とは反対側(すなわち、実装対向面222側)から鍔部22aを見たとき、溶接部50の少なくとも一部は、鍔部22aで隠れていてもよい。また、Z軸方向に沿って、実装面221とは反対側から鍔部22aを見たとき、溶接部50の少なくとも一部は、板状コア40で隠れていてもよい。
【0063】
同様に、Z軸方向(
図2の実装面221に垂直な方向)に沿って、実装面221とは反対側(すなわち、実装対向面222側)から鍔部22bを見たとき、溶接部50の少なくとも一部は、鍔部22bで隠れていてもよい。また、Z軸方向に沿って、実装面221とは反対側から鍔部22bを見たとき、溶接部50の少なくとも一部は、板状コア40で隠れていてもよい。
【0064】
この場合、溶接部50の少なくとも一部が、鍔部22aまたは22bの外縁部よりも外側に露出することを防止することができる。そのため、コイル装置1の寸法を小さくし、コイル装置1の小型化を図ることができる。
【0065】
図1Dおよび
図1Eに示すように、第1かしめ部34と第2かしめ部35とは、鍔部22aのY軸方向の一端から外側(Y軸正方向側)に露出している。ただし、第1かしめ部34の少なくとも一部は、鍔部22aのY軸方向の一端よりも外側(Y軸正方向側)に露出しないように、第1切り欠き部23に配置されていてもよい。また、第2かしめ部35の少なくとも一部は、鍔部22aのY軸方向の一端よりも外側(Y軸正方向側)に露出しないように、第1切り欠き部23に配置されていてもよい。
【0066】
図1Bに示すように、Z軸方向に関して、第1かしめ部34の端部(根本)34eの位置は、実装面221側に位置する巻芯部21の端部21eの位置に対して、完全に、または実質的に、等しくなっている。第1かしめ部34の端部(根本)34eの位置は、巻芯部21の端部21eの位置に対して、所定距離Lだけ、Z軸正方向側またはZ軸負方向側に位置ずれしていてもよい。例えば、0<L≦D(ただし、Dはワイヤの線径)であり、あるいは0<L≦2Dである。
【0067】
この場合、巻芯部21の端部21eから第1かしめ部34の端部34eに向けて、例えばX軸に沿うように、引出部12aをまっすぐに引き出すことができる。また、引出部12aを第1かしめ部34の端部34e(第1かしめ部34の根本)でかしめることが可能となり、引出部12aの位置ずれを防止することができる。本実施形態では、引出部12aおよび12bのいずれも、巻芯部21の端部21eから第1かしめ部34の端部34eに向けて、過度に屈曲させることなく、かつ、X軸に沿うように、引き出されている。
【0068】
図1Eおよび
図3に示すように、第2側部312は、鍔部22aの第2側面226に対向して配置される部分である。第2側部312は、第2側面226に当接していてもよく、あるいは第2側部312と第2側面226との間に隙間が形成されていてもよい。第2側部312は、本体部310のY軸方向の他端(Y軸負方向側の端部)に形成されている。第2側部312は、本体部310に対して直交する方向に延在している。第2側部312のX軸方向の長さは、第2側面226のX軸方向の長さと等しくてもよい。
【0069】
図1Cに示すように、第2側部312は、第2切り欠き部24に配置されている。そのため、第2側部312は、鍔部22aのY軸方向の他端よりも外側(Y軸負方向側)に露出しておらず、第2側面226(ただし、第2側面226のうち、段差形成面227よりも実装対向面222側に位置する部分)よりもY軸方向の内側に配置されている。それゆえ、本実施形態では、コイル装置1のY軸方向の寸法を小さくし、コイル装置1の小型化を図ることができる。
【0070】
第2側部312は、実装対向面222よりも、実装面221に近接する側に配置されている。より具体的には、第2側部312は、全体として、第2側面226のZ軸方向の中央よりも実装面221側に配置されている。
【0071】
上述したように、第1切り欠き部23の第1側面225からのY軸方向の深さは、第2切り欠き部24の第2側面226からのY軸方向の深さよりも深くなっている。そのため、第1切り欠き部23に配置された第1側部311は、第2切り欠き部24に配置された第2側部312に比べて、鍔部22aのY軸方向の中心に近接している。本実施形態では、第1切り欠き部23の第1側面225からのY軸方向の深さが相対的に深いため、第1側部311およびこれに接続された引出部12aが、鍔部22aのY軸方向の一端よりも外側(Y軸正方向側)に露出しにくい。そのため、コイル装置1のY軸方向の寸法を小さくし、コイル装置1の小型化を図ることができる。
【0072】
図3Aに示すように、Y軸方向の内側を向く第1側部311の内面には、突起313が形成されている。同様に、Y軸方向の内側を向く第2側部312の内面には、突起313が形成されている。突起313の形状は、特に限定されないが、先端に向かって先細なる先細形状である。突起313をY軸方向から見た形状は、円形、楕円形あるいは多角形でもよい。
図1Eに示すように、第1側部311に形成された突起313は、第1側面225に向かって突出しており、第1側面225に形成された第1凹部25に嵌合している。第2側部312に形成された突起313は、第2側面226に向かって突出しており、第2側面226に形成された第2凹部26に嵌合している。
【0073】
突起313は、ストッパ(回転止め)として機能する。そのため、突起313が第1凹部25または第2凹部26に嵌合することにより、嵌合部31が実装面221に平行な面内(XY面に平行な面内)で回転(回動)しにくくなる。なお、突起313は必須ではなく、第1側部311および第2側部312の少なくとも一方に形成された突起313を省略してもよい。
【0074】
図3Aに示す例では、第1側部311に形成された突起313と、第2側部312に形成された突起313とは、Z軸に沿って、本体部310の底から同じ高さに位置している。しかしながら、
図3Bに示すように、第1側部311に形成された突起313と、第2側部312に形成された突起313とは、Z軸に沿って、位置ずれしていてもよい。
図3Bに示す例では、前者の突起313が、後者の突起313よりも、実装面221(
図2)側に位置しているが、実装対向面222(
図2)側に位置していてもよい。この場合、嵌合部31が実装面221(
図2)に平行な面内(XY面に平行な面内)でさらに回転(回動)しにくくなる。
【0075】
図3Aに示すように、拡張部33は、本体部310のZ軸方向の端部に形成されており、Z軸方向において実装部32とは反対側に位置する。拡張部33は、本体部310に対して平行な方向に延在している。拡張部33の形状は、X軸方向から見て、長方形であるが、正方形あるいはその他の多角形でもよい。
【0076】
図1Cに示すように、拡張部33は、鍔部22aの外端面224に配置されている。拡張部33は、Z軸に沿って、実装面221とは反対側に向かって、本体部310から延びている。拡張部33のZ軸方向の長さは、特に限定されないが、本体部310のZ軸方向の長さの1/4倍以上3/2倍以下である。拡張部33は、外端面224のZ軸方向の端部(外端面224と実装対向面222との交差部)まで延在していてもよい。本実施形態では、拡張部33によって、外端面224と嵌合部31との接触面積を拡張することができるため、端子具30aと鍔部22aとの間の固定強度を高めることができる。また、例えば、拡張部33を接着剤等で外端面224に接着することにより、端子具30aと鍔部22aとの間の固定強度をさらに高めることができる。なお、拡張部33は、必須ではなく、端子具30aまたは30bから省略されてもよい。
【0077】
図3Aに示すように、実装部32は、本体部310のZ軸方向の端部に形成されており、Z軸方向において拡張部33とは反対側に位置する。実装部32は、第1部分321と第2部分322とを有する。第1部分321の形状と、第2部分322の形状とは同一であるが、異なっていてもよい。第1部分321と第2部分322とは、X軸方向の内側に向かって突出しており、本体部310に対して直交する方向に延在(屈曲)している。第1部分321と第2部分322とは、隙間320を介して、Y軸方向に離間している。隙間320のY軸方向の長さは、第1部分321または第2部分322のX軸方向の長さと同等以上でもよい。
【0078】
本実施形態では、隙間320の大きさに応じて、実装部32の面積を小さくすることができる。これにより、実装部32に接続される基板(図示略)のランドパターンの面積を小さくし、ランドパターンの浮遊容量を低減することができる。なお、実装部32は、例えばハンダや導電性接着剤などの接続材を介して基板に接続される。本体部310には、これらの接続材のフィレットが形成されてもよい。
【0079】
図1Eに示すように、第1部分321と第2部分322とは、実装面221に配置されている。第1部分321および第2部分322の各々のX軸方向の長さは、実装面221のX軸方向の長さと等しくてもよい。実装部32は、全体として、実装面221のY軸方向の中心(あるいは、巻芯部21の軸芯)よりも、Y軸負方向側に偏在している。したがって、第1部分321と第1側部311との間の距離は、第2部分322と第2側部312との間の距離よりも長くなっている。本実施形態のように、第1側部311に引出部12aを接続する場合、実装部32を第2側部312側に偏在させることにより、第1部分321に付着したハンダ等が引出部12aに接触しにくくなり、引出部12aの断線を防止することができる。また、Y軸方向の一方側と他方側とで、コイル装置1のバランスを均衡させることが可能となり、コイル装置1の実装安定性を高めることができる。
【0080】
図1Cに示すように、第1部分321と第2部分322とは、Y軸方向において、第1側部311と第2側部312との間に位置する。第1部分321は第1側部311よりもY軸方向の内側に位置するため、鍔部22aの実装面221と第1側面225との交差部は、端子具30aから露出している。また、第2部分322は第2側部312よりもY軸方向の内側に位置するため、鍔部22aの実装面221と第2側面226との交差部は、端子具30aから露出している。また、実装面221は、隙間320の位置において、端子具30aから露出している。このように、本実施形態では、実装面221の複数箇所において、実装面221が端子具30aから露出している。そのため、実装部32(特に、第1部分321)に付着したハンダ等が引出部12aに接触しにくくなり、引出部12aの断線等を防止することができる。
【0081】
図1Aに示すように、板状コア40は、直方体形状(板形状)を有する。板状コア40は、コア20と同様の材料で構成されていてもよく、あるいはコア20とは異なる材料で構成されていてもよい。板状コア40は、コア20に例えば接着剤によって取り付けられる。より詳細には、板状コア40は、鍔部22aおよび22bの各々の実装対向面222(
図2)に固定される。
【0082】
図1Aおよび
図2に示すように、鍔部22aおよび22bに板状コア40を取り付けることにより、コイル装置1のインダクタンス特性を向上させることができる。また、本実施形態では、嵌合部31を、実装面221および実装対向面222には嵌合させずに、第1側面225および第2側面226に嵌合させる。そのため、例えば特許文献1とは異なり、嵌合部31(あるいは、嵌合部31に接続された引出部12a等)と板状コア40との干渉を防止するために、実装対向面222や板状コア40を削る必要がない。そのため、実装対向面222と板状コア40との接合面の面積を確保することが可能であり、この点においても、コイル装置1のインダクタンス特性を向上させることができる。加えて、実装対向面222と板状コア40との間の接合強度を確保することができる。
【0083】
次に、コイル装置1の製造方法について説明する。まず、
図1Aに示すワイヤおよび板状コア40と、
図2に示すコア20と、
図3Aに示す端子具30aおよび30bとを準備する。次に、
図1Aおよび
図2に示すように、端子具30aの嵌合部31を鍔部22aの外端面224と第1側面225と第2側面226とに配置する。そして、嵌合部31で第1側面225と第2側面226とを挟み込むように、嵌合部31を鍔部22aに嵌合させる。同様に、端子具30bの嵌合部31を鍔部22bの外端面224と第1側面225と第2側面226とに配置する。そして、嵌合部31で第1側面225と第2側面226とを挟み込むように、嵌合部31を鍔部22bに嵌合させる。必要に応じて、本体部310(さらには、拡張部33)を外端面224に接着剤等で接着してもよい。
【0084】
次に、巻芯部21にワイヤを巻回し、巻芯部21に巻回部11を有するコイル10を形成する。引出部12aについては、巻芯部21の端部21e(
図1B)から、鍔部22aの第1側面225に向けて、端部21eと同じ高さで引き出しておく。引出部12bについては、巻芯部21の端部21e(
図1B)から、鍔部22bの第1側面225に向けて、端部21eと同じ高さで引き出しておく。なお、巻芯部21にコイル10を形成した後、鍔部22aに端子具30aを設置するとともに、鍔部22bに端子具30bを設置してもよい。
【0085】
次に、
図1Bに示すように、引出部12aを端子具30aの第1かしめ部34でかしめて、引出部12aを第1側部311の外面に固定(仮止め)する。また、引出部12aを端子具30aの第2かしめ部35でかしめて、引出部12aを第1側部311の外面に固定する。同様に、引出部12bを端子具30bの第1かしめ部34でかしめて、引出部12bを第1側部311の外面に固定(仮止め)する。また、引出部12bを端子具30bの第2かしめ部35でかしめて、引出部12bを第1側部311の外面に固定する。
【0086】
次に、例えばレーザ溶接により、引出部12aを端子具30aの第2かしめ部35に接続するとともに、引出部12bを端子具30bの第2かしめ部35に接続する。これにより、溶接部50によって、引出部12aが端子具30aの第2かしめ部35に接続されるとともに、引出部12bが端子具30bの第2かしめ部35に接続される。
【0087】
次に、鍔部22aおよび22bの各々の実装対向面222に板状コア40を接着剤等の接続材で取り付ける。以上のようにして、
図1Aに示すコイル装置1を製造することができる。
【0088】
図1Aおよび
図1Cに示すように、本実施形態のコイル装置1では、嵌合部31が、鍔部22aの第1側面225から第2側面226にかけて配置されている。そのため、第1側面225に配置された第1側部311と、第2側面226に配置された第2側部312とが、ストッパ(回転止め)として機能し、嵌合部31が実装面221に平行な面内(XY面に平行な面内)で回転(回動)しにくくなる。これにより、端子具30aを鍔部22aに取り付けるときに、嵌合部31を所望の向きで鍔部22aに固定することが可能となり、鍔部22aに対する端子具30aの取付安定性を高めることができる。また、引出部12aは嵌合部31(第1側部311の外面)に接続されるため、嵌合部31とは別に、端子具30aに継線部を設ける必要がなく、端子具30aさらにはコイル装置1の小型低背化を図ることができる。
【0089】
また、第1切り欠き部23は、第1側面225の実装面221側に位置しており、第2切り欠き部24は、第2側面226の実装面221側に位置している。そのため、第1切り欠き部23に配置される第1側部311、第2切り欠き部24に配置される第2側部312、さらには実装部32など、端子具30aの主な部分を、実装面221側に配置することが可能となり、端子具30aの小型化を図ることができる。さらに、端子具30aの小型化を通じて、コイル装置1のさらなる小型低背化を図ることができる。
【0090】
第2実施形態
図4に示す第2実施形態のコイル装置1Aは、以下に示す点を除いて、第1実施形態のコイル装置1と同様の構成を有する。第1実施形態のコイル装置1と重複する部分には、同一符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0091】
コイル装置1Aは、コア20Aと、端子具30aAおよび30bAとを有する。コア20Aは、鍔部22aAおよび22bAを有する。鍔部22aAは、外端面224からX軸方向の外側に突出する第1凸部27と第2凸部28とを有する。第1凸部27は、鍔部22aのY軸方向の一方側に配置され、第2凸部28は、鍔部22aのY軸方向の他方側に配置されている。第1凸部27および第2凸部28の外端面224から突出長は、特に限定されないが、端子具30aの板厚の1/3倍以上2倍以下である。第1凸部27および第2凸部28の各々のX軸方向から見た形状は、四角形であるが、その他の多角形でもよい。
【0092】
Y軸方向に関して、第1凸部27と第2凸部28との間には、端面凹部29が形成されている。端面凹部29のY軸方向の長さは、拡張部33AのY軸方向の長さと同等以上である。拡張部33Aは、端面凹部29に収容され、第1凸部27と第2凸部28との間に配置されている。そのため、Y軸方向において、拡張部33Aの位置は、第1凸部27と第2凸部28との間に制限されている。このように、第1凸部27および第2凸部28は、ストッパとして機能しており、嵌合部31のY軸方向の一方側または他方側への位置ずれを防止することができる。
【0093】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。例えば、
図1Aに示すように、上記各実施形態では、巻芯部21に1つのコイル10が設けられていたが、巻芯部21に複数のコイル10が設けられていてもよい。この場合、コイル10の数に応じて、鍔部22aに複数の端子具を設置してもよく、鍔部22bに複数の端子具を設置してもよい。
【0094】
上記各実施形態では、コイル装置1のインダクタへの適用例について説明したが、コイル装置1を他の電子部品(例えば、トランス)に適用してもよい。
【0095】
上記各実施形態において、コイル装置1から板状コア40を省略してもよい。
【符号の説明】
【0096】
1,1A…コイル装置
10…コイル
11…巻回部
12a,12b…引出部
20,20A…コア
21…巻芯部
22a,22b,22aA,22bA…鍔部
221…実装面
222…実装対向面
223…内端面
224…外端面
225…第1側面
226…第2側面
227…段差形成面
23…第1切り欠き部
24…第2切り欠き部
25…第1凹部
26…第2凹部
27…第1凸部
28…第2凸部
29…端面凹部
30a,30b,30aA,30bA…端子具
31…嵌合部
310…本体部
311…第1側部
312…第2側部
313…突起
32…実装部
320…隙間
321…第1部分
322…第2部分
33,33A…拡張部
34…第1かしめ部
35…第2かしめ部
40…板状コア
50…溶接玉