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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089374
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】ワーク保持装置と、ワーク保持方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
B25J15/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204704
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 健一郎
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS07
3C707DS03
3C707ES03
3C707ET03
3C707EU08
3C707EU14
3C707FS01
3C707FU02
3C707LV09
3C707LV17
3C707NS07
(57)【要約】
【課題】ピン部材とキャップ部材とからなる複合ワークを保持し移動させることができるワーク保持装置を提供する。
【解決手段】ワーク保持装置10は、複合ワークを保持する吸引チャックユニット20を有している。吸引チャックユニット20は、吸着部材21と、チャック機構22と、駆動機構23とを含んでいる。駆動機構23の駆動部材65が下方に移動すると、チャック機構22が開位置に移動し、かつ、吸着部33が第1の高さとなる。吸着部33がキャップ部材3を吸着したのち、駆動部材65が第1の高さよりも高い第2の高さに移動することにより、キャップ部材3がピン部材2に対して相対的に上昇する。この状態のもとでチャック機構22が閉じることにより、ピン部材2のキャップ部材3で覆われていない部分がチャック機構22によって挟まれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン部材とキャップ部材とを備えた複合ワーク、を保持するワーク保持装置であって、
前記複合ワークを支持する治具の上方に配置され、前記キャップ部材を吸着する吸着部を有した吸着部材と、
互いに開閉する方向に移動する第1のチャック部材および第2のチャック部材を有し、前記キャップ部材が前記吸着部に吸着された状態において、前記ピン部材の前記キャップ部材で覆われていない部分を挟むチャック機構と、
前記チャック機構を開閉させる駆動機構とを具備したことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク保持装置において、
前記駆動機構が、
前記吸着部材に対して上下方向に相対的に移動可能な駆動部材と、
前記駆動部材を上下方向に移動させる駆動源とを具備し、
前記駆動部材が上下方向駆動部とチャック駆動部とを有し、
前記上下方向駆動部は、
前記吸着部を前記キャップ部材と対向する第1の高さに移動させ、かつ、前記吸着部を前記第1の高さよりも高い第2の高さに移動させ、
前記チャック駆動部は、
前記吸着部が前記第1の高さに移動するとき前記チャック機構を開位置に移動させ、前記吸着部が前記第1の高さから前記第2の高さに移動すると前記チャック機構を開位置から閉位置に移動させるワーク保持装置。
【請求項3】
請求項2に記載のワーク保持装置において、
前記駆動部材がカム部を有し、
前記カム部は、
前記吸着部が前記第1の高さに移動するときに前記チャック機構を前記開位置に移動させ、前記吸着部が前記第1の高さから前記第2の高さに移動するときに前記チャック機構を前記閉位置に移動させるワーク保持装置。
【請求項4】
請求項1に記載のワーク保持装置において、さらに、
前記吸着部材の下面の前記吸着部の両側に、下方に延びる一対の位置決めピンを有したワーク保持装置。
【請求項5】
請求項1に記載のワーク保持装置において、さらに、
前記第1のチャック部材を回動自在に支持する第1の軸と、
前記第2のチャック部材を回動自在に支持する第2の軸と、
前記第1のチャック部材と前記第2のチャック部材とを互いに閉じる方向に付勢するばねと、
前記吸着部材の一方の側面と前記第1のチャック部材との間に形成された第1の隙間部と、
前記吸着部材の他方の側面と前記第2のチャック部材との間に形成された第2の隙間部とを有し、
前記チャック機構が閉じた状態において、前記第1のチャック部材と前記第2のチャック部材とが、それぞれ、前記第1の軸と前記第2の軸を中心に回動することが許容されるワーク保持装置。
【請求項6】
請求項1に記載のワーク保持装置において、
前記吸着部材の一方の側面と前記第1のチャック部材との間、または前記吸着部材の他方の側面と前記第2のチャック部材と間、の少なくとも一方に、薄板状のシム部材が配置されたワーク保持装置。
【請求項7】
ピン部材とキャップ部材とを備えた複合ワークを保持するためのワーク保持方法であって、
前記ピン部材を治具によって立てた状態で支持し、
前記ピン部材の上方から前記キャップ部材を被せ、
チャック機構を開位置に移動させ、
前記キャップ部材を吸着するための吸着部を第1の高さに移動させ、
前記吸着部によって前記キャップ部材を吸着し、
前記吸着部を前記第1の高さよりも高い第2の高さに移動させることにより、前記キャップ部材を前記ピン部材に対して相対的に上昇させ、
前記チャック機構を閉位置に移動させることにより、前記ピン部材の前記キャップ部材で覆われていない部分を前記チャック機構によって挟み、
前記ピン部材が前記チャック機構によって挟まれた状態において、前記チャック機構を上方に移動させ、前記複合ワークを前記治具から取り出すこと、
を具備したことを特徴とする複合ワークの保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばピン部材とキャップ部材とからなる複合ワークを保持するためのワーク保持装置と、ワーク保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピン部材とキャップ部材とからなる複合ワークが知られている。ピン部材の一例は、断面が円形の棒状の小部品である。ピン部材の他の例は、細長い円筒形の小さなコイルばねである。前記キャップ部材を前記ピン部材に被せる。例えばピン部材を立てた状態のもとで、ピン部材の上方からキャップ部材を被せることにより、ピン部材がある程度の長さにわたり、キャップ部材によって覆われる。
【0003】
ピン部材とキャップ部材とを有した複合ワークを扱う自動組立設備等において、ロボット等によって複合ワークを保持し移動させることが望まれた。特許文献1(特公平6-71717号公報)に、中空のワークを径方向に挟むチャックの一例が記載されている。特許文献1のチャックは、ワークを径方向につかむことができる。しかしピン部材とキャップ部材とからなる複合ワークの場合、単なるチャックではピン部材とキャップ部材とを同時につかむことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6-71717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ピン部材とキャップ部材とからなる複合ワークにおいて、キャップ部材の径方向の剛性が小さい場合に、チャックによってキャップ部材を径方向に挟むと、キャップ部材が変形してしまうおそれがある。このためピン部材を挟むことが望まれた。そこで本発明者達はピン部材とキャップ部材とからなる複合ワークを保持するために、ピン部材を径方向に挟むことが可能なチャック機構を考えた。
【0006】
しかしキャップ部材をピン部材に被せた状態のもとで、チャックによってピン部材を径方向に挟むことが困難な場合がある。例えば複合ワークの形態によっては、キャップ部材をピン部材に被せた状態において、ピン部材にチャックのつかみ代を確保できないことがある。
【0007】
この発明の目的は、ピン部材とキャップ部材とを有する複合ワークを保持することが可能なワーク保持装置とワーク保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施形態は、ピン部材とキャップ部材とを備えた複合ワークを保持するワーク保持装置であって、吸着部材と、チャック機構と、駆動機構とを具備している。前記吸着部材は、前記複合ワークを支持する治具の上方に配置され、キャップ部材を吸着する吸着部を有している。前記チャック機構は、互いに開閉する方向に移動する第1のチャック部材と第2のチャック部材とを有している。前記キャップ部材が前記吸着部に吸着された状態において、前記ピン部材の前記キャップ部材で覆われていない部分が、前記第1のチャック部材と前記第2のチャック部材とによって径方向に挟まれる。前記駆動機構は、前記チャック機構を開閉させかつ前記吸着部材を上下方向に移動させる。
【0009】
本実施形態のワーク保持装置において、前記駆動機構が駆動部材と駆動源とを具備してもよい。前記駆動部材は、前記吸着部材に対して上下方向に相対的に移動可能である。前記駆動源は、前記駆動部材を上下方向に移動させる。前記駆動部材が、上下方向駆動部とチャック駆動部とを有してもよい。前記上下方向駆動部は、前記吸着部を前記キャップ部材と対向する第1の高さに移動させ、かつ、前記吸着部を前記第1の高さよりも高い第2の高さに移動させる。前記チャック駆動部は、前記吸着部が前記第1の高さに移動するときに前記チャック機構を開位置に移動させ、前記吸着部が前記第1の高さから前記第2の高さに移動すると前記チャック機構を開位置から閉位置に移動させる。
【0010】
本実施形態のワーク保持装置において、さらに、前記駆動部材がカム部を有してもよい。前記カム部は、前記吸着部が前記第1の高さに移動するとき前記チャック機構を前記開位置に移動させ、前記吸着部が前記第1の高さから前記第2の高さに移動するとき前記チャック機構を前記閉位置に移動させる。前記吸着部材の下面の前記吸着部の両側に、下方に延びる一対の位置決めピンを有してもよい。
【0011】
本実施形態のワーク保持装置が、前記第1のチャック部材を回動自在に支持する第1の軸と、前記第2のチャック部材を回動自在に支持する第2の軸と、ばねとを有してもよい。前記ばねは、前記第1のチャック部材と前記第2のチャック部材とを互いに閉じる方向に付勢する。前記吸着部材の一方の側面と前記第1のチャック部材との間に第1の隙間部を有し、前記吸着部材の他方の側面と前記第2のチャック部材との間に第2の隙間部を有してもよい。これら第1の隙間部と第2の隙間部は、前記チャック機構が閉じた状態において、前記第1のチャック部材と前記第2のチャック部材とが、それぞれ、前記第1の軸と前記第2の軸を中心に、ある程度回動することを許容する。
【0012】
前記第1のチャック部材と前記吸着部材との間、または前記第2のチャック部材と前記吸着部材との間、の少なくとも一方に、薄板状のシム部材が配置されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
1つの実施形態に係るワーク保持装置は、ピン部材とキャップ部材とを同時に保持することができる。このワーク保持装置のチャック機構はピン部材を径方向に挟むため、キャップ部材を変形させるような力がキャップ部材に加わることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係るワーク保持装置の一部の斜視図。
図2図1に示されたワーク保持装置の一部の正面図。
図3図1に示されたワーク保持装置のチャック機構が閉じた状態の側面図。
図4図1に示されたワーク保持装置のチャック機構が開いた状態の側面図。
図5】複合ワークを保持する工程を表わしたフローチャート。
図6】複合ワークの一例を示す断面図。
図7図6に示された複合ワークを分解して示した断面図。
図8図8(A)は治具の一例を示す断面図、図8(B)はピン部材が挿入された状態の治具を示す断面図。
図9図9(A)はピン部材にキャップ部材を被せた状態を示す治具の断面図、図9(B)は上側治具が取り除かれた状態を示す断面図。
図10】同ワーク保持装置の吸着部が第1の高さに移動した状態を示す断面図。
図11】同ワーク保持装置の吸着部が第2の高さに移動した状態を示す断面図。
図12】同ワーク保持装置のチャック機構が閉じた状態を示す断面図。
図13】同ワーク保持装置の吸引チャックユニットが上方に移動した状態を示す断面図。
図14】第2の実施形態に係るワーク保持装置のチャック機構の一部とピン部材とを下方から見た底面図。
図15図14に示されたワーク保持装置の一部を示す断面図。
図16】第3の実施形態に係るワーク保持装置の一部を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
以下に第1の実施形態に係るワーク保持装置10について、図1から図13を参照して説明する。図1はワーク保持装置10の一部を斜め下方から見た斜視図である。図2はワーク保持装置10の一部の正面図である。図3はワーク保持装置10の一部で、チャック機構が閉じた状態を示す側面図である。図4はワーク保持装置10の一部で、チャック機構が開いた状態を示す側面図である。図2から図4に示されたようにワーク保持装置10は、治具11と、吸引チャックユニット20とを含んでいる。
【0016】
図5は、複合ワーク1(図6に示す)を保持する工程を表わしたフローチャートである。複合ワーク1は、例えば機器等を組み立てる製造設備において、吸引チャックユニット20によって保持され、複数の作業ステージ間を移動する。図5のフローチャートについては後に詳しく説明する。
【0017】
まず複合ワーク1について、図6図7を参照して説明する。図6は複合ワーク1の一例を示す断面図である。図7は複合ワーク1を分解して示した断面図である。複合ワーク1は、ピン部材2とキャップ部材3とを有している。ピン部材2の一例は中空の棒状の部材である。ピン部材2の他の例が円筒形コイルばねであってもよい。ピン部材2とキャップ部材3とは、それぞれ、長さ方向に沿う軸線X1(図6に示す)を有している。ピン部材2の軸線X1と直角な方向の断面は円形である。キャップ部材3の先端3aは閉じている。
【0018】
ピン部材2の長さL1(図7に示す)は、キャップ部材3の長さL2よりも大きい。キャップ部材3の内径D2は、ピン部材2の外径D1よりも僅かに大きい。キャップ部材3は、ピン部材2の一端2aからピン部材2に被せることができる。キャップ部材3の穴3bにピン部材2の一端2aが挿入される。ピン部材2がキャップ部材3に挿入された状態において、キャップ部材3はピン部材2に対して軸線X1に沿う方向に相対的に移動することができる。
【0019】
図8(A)は治具11の一例を示している。治具11は、底板12と、底板12の上に配置された下側治具13と、上側治具14とを有している。下側治具13は上下方向に延びる第1の孔13aと、第1のガイド孔13bとを有している。第1の孔13aの内径は、ピン部材2の外径D1よりも僅かに大きい。第1のガイド孔13bの内径は、第1の孔13aの上端から上側治具14に向かってテーパ状に増加している。
【0020】
上側治具14は上下方向に延びる第2の孔14aと、第2のガイド孔14bとを有している。第2の孔14aの内径は第1の孔13aの内径よりも大きく、かつ、キャップ部材3の外径よりも大きい。第2のガイド孔14bの内径は、第2の孔14aの上端から上側治具14の上面に向かってテーパ状に増加している。
【0021】
図8(B)は、ピン部材2が治具11に挿入された状態を示している。例えば治具11の上にランダムに置かれたピン部材2が、矢印Y1で示すように治具11の上面から第1の孔13aと第2の孔14aに落とし込まれる。第1の孔13aと第2の孔14aに挿入されたピン部材2は、下側治具13によって、立った姿勢で支持される。
【0022】
図9(A)は、キャップ部材3が第2の孔14aに挿入された状態を示している。例えば治具11の上にランダムに置かれたキャップ部材3が、矢印Y2で示すように治具11の上面から第2の孔14aに落とし込まれる。これによりキャップ部材3がピン部材2の上方からピン部材2に被さる。
【0023】
図9(B)は、上側治具14が取り去られた状態を示している。ピン部材2とキャップ部材3とからなる複合ワーク1が下側治具13によって立った姿勢で支持されている。このように下側治具13によって支持された複合ワーク1が、吸引チャックユニット20によって保持される。以下に吸引チャックユニット20について説明する。
【0024】
図1は吸引チャックユニット20を下側から見た斜視図である。吸引チャックユニット20はワーク保持装置10の一部をなしている。図2から図4に示されたように、吸引チャックユニット20が治具11の上方に配置される。
【0025】
吸引チャックユニット20は、吸着部材21と、チャック機構22と、駆動機構23などを有している。吸着部材21はキャップ部材3を吸着する機能を有している。チャック機構22はピン部材2を挟む機能を有している。駆動機構23は、チャック機構22を開閉させる機能と、吸着部材21を上下方向に移動させる機能を有している。
【0026】
吸着部材21は治具11に対して上下方向に移動することができる。吸着部材21は、下部側の吸着部本体21aと、吸着部本体21aから上方に延びる延出部21bとを有している。すなわち吸着部材21は上下方向に長い形状である。吸着部材21は、支持機構30(図3に示す)によって上下方向に移動可能に支持され、支持機構30によって上方に付勢されている。
【0027】
吸着部材21の下端に、吸引孔31,32を備えた吸着部33が設けられている。吸引孔31,32は、吸着部材21に形成されたエア流通孔34を通じて負圧発生源35(図3に示す)に接続されている。吸引孔31,32から空気を吸い込むことにより、例えば2個のキャップ部材3を吸着部33に吸着することができる。
【0028】
吸着部33の両側に位置決めピン40,41が設けられている。位置決めピン40,41は、それぞれ治具11に向かって下方に延びている。位置決めピン40,41は、治具11に形成された位置決め用の孔42,43と対応した位置に形成されている。治具11の上方から、位置決めピン40,41を治具11の孔42,43に挿入することにより、治具11に対する吸引チャックユニット20の位置決めがなされる。
【0029】
チャック機構22は、第1のチャック部材51と第2のチャック部材52とを含んでいる。第1のチャック部材51と第2のチャック部材52とは、互いに開閉する方向に移動することができる。第1のチャック部材51は、一対の第1アーム部51a,51bと、第1アーム部51a,51bの上部をつなぐ上側フレーム51cと、第1アーム部51a,51bの下部をつなぐ下側フレーム51dとを有している。
【0030】
第1のチャック部材51は、第1の軸55を中心に、図4に両方向矢印R1で示す方向に回動する。第1の軸55は、吸着部材21に形成された第1の支持部56に設けられている。第1の支持部56は吸着部33の上方に位置している。第1のチャック部材51の下端に、ピン部材2をつかむための第1のチャック面57が形成されている。
【0031】
第2のチャック部材52は、一対の第2アーム部52a,52bと、第2アーム部52a,52bの上部をつなぐ上側フレーム52cと、第2アーム部52a,52bの下部をつなぐ下側フレーム52dとを有している。第2のチャック部材52は、第2の軸60を中心に、図4に両方向矢印R2で示す方向に回動する。第2の軸60は、吸着部材21に形成された第2の支持部61に設けられている。第2の支持部61は吸着部33の上方に位置している。第2のチャック部材52の下端に、ピン部材2をつかむための第2のチャック面62が形成されている。
【0032】
図2に示されたように、第1アーム部51a,51bの外側に、第2アーム部52a,52bが配置される。図1から図3に示されたように、第1のチャック部材51と第2のチャック部材52とが互いに閉じた状態において、第1のチャック面57と第2のチャック面62とが位置決めピン40,41の間に位置する。
【0033】
第1のチャック部材51と第2のチャック部材52とは、ばね63によって互いに閉じる方向に付勢されている。第1のチャック部材51と第2のチャック部材52とが閉位置に移動すると、第1のチャック面57と第2のチャック面62との間にピン部材2が挟まれる。
【0034】
図3に示されたように、第1のチャック部材51と第2のチャック部材52とが互いに閉じた状態において、吸着部材21の一方の側面21cと第1のチャック部材51との間に、第1の隙間部G1が形成(define)される。吸着部材21の他方の側面21dと第2のチャック部材52との間に、第2の隙間部G2が形成される。
【0035】
このためピン部材2がチャック機構22によって挟まれた状態において、第1のチャック部材51と第2のチャック部材52とがピン部材2の径方向にある程度移動することが隙間部G1,G2によって許容される。つまりチャック面57,62が閉じた状態において、チャック面57,62のセンターの位置に融通性をもたせることができる。
【0036】
駆動機構23は、上下方向に移動可能な駆動部材65と、駆動部材65を上下方向に移動させる駆動源66(図3に示す)とを有している。駆動部材65は、吸着部材21に対して上下方向に相対的に移動することができる。駆動源66は、例えばサーボモータ等のアクチュエータを有し、駆動部材65を上下方向の所定位置に移動させる。
【0037】
駆動部材65の下部に、チャック駆動部として機能する第1のカム部71および第2のカム部72が形成されている。駆動部材65の下面に、上下方向駆動部として機能する加圧部73が形成されている。第1のチャック部材51に第1のカム受け面75が形成されている。第1のカム受け面75は、第1のカム部71の下方において第1のカム部71と対応した位置に形成されている。さらに第1のチャック部材51の上面側には、加圧部73と対応した位置に第1の荷重受け部76が形成されている。
【0038】
第2のチャック部材52に第2のカム受け面80が形成されている。第2のカム受け面80は、第2のカム部72の下方において第2のカム部72と対応した位置に形成されている。さらに第2のチャック部材52の上面側には、加圧部73と対応した位置に第2の荷重受け部81が形成されている。
【0039】
図3に示されたように駆動部材65が上昇位置にあるとき、第1のカム部71が第1のカム受け面75から離れる。また第2のカム部72が第2のカム受け面80から離れる。第1のカム部71が第1のカム受け面75から離れると、第1のチャック部材51がばね63によって閉じる。第2のカム部72が第2のカム受け面80から離れると、第2のチャック部材52がばね63によって閉じる。
【0040】
駆動部材65が駆動源66によって上昇位置から下降端に向かって移動するとき、図4に示されたように、第1のカム部71が第1のカム受け面75に接する。これにより、第1のチャック部材51が開位置に移動する。また第2のカム部72が第2のカム受け面80に接することにより、第2のチャック部材52が開位置に移動する。第1のカム部71と第2のカム部72とは、チャック機構22を開閉させるためのチャック駆動部として機能する。
【0041】
駆動部材65が駆動源66によって下降端まで移動すると、チャック機構22が開いた状態のもとで、加圧部73が第1の荷重受け部76と第2の荷重受け部81とに当接する。このため吸着部材21が下降端に移動し、吸着部33が第1の高さH1(図4に示す)に位置する。また位置決めピン40,41が位置決め用の孔42,43に挿入されることにより、治具11に対する吸引チャックユニット20の位置決めがなされる。
【0042】
駆動部材65が図4に示された下降端から上昇し、吸着部材21が図3に示された位置に移動すると、治具11の上面15に対し、吸着部33が第2の高さH2となる。吸着部33が第2の高さH2に移動する途中で、カム部71,72がカム受け面75,80から離れることにより、チャック機構22が閉じる。
【0043】
次に、ワーク保持装置10を用いて複合ワーク1を保持する方法について説明する。本実施形態の吸引チャックユニット20の吸着部33は一対の吸引孔31,32を有しているため、2個の複合ワーク1を同時に保持することができる。しかし説明が複雑となることを避けるために、一方の吸引孔31によって1個の複合ワーク1を保持する場合について述べる。
【0044】
図5は複合ワーク1を保持する工程を工程順に示している。
図5に示された工程ST1において、ピン部材2が治具11の孔13a,14aに挿入される。治具11の一例が図8(A)に示されている。図8(B)に示されたように、ピン部材2が下側治具13によってほぼ垂直に支持される。
【0045】
ピン部材2が治具11の孔13a,14aに挿入されたのち、図5の工程ST2において、キャップ部材3が上側治具14の孔14aに挿入される。キャップ部材3が上側治具14の孔14aに挿入されると、図9(A)に示されたようにキャップ部材3がピン部材2に被さる。そののち上側治具14が取り除かれる。これにより、図9(B)に示されたように、ピン部材2とキャップ部材3とからなる複合ワーク1が下側治具13によって支持される。
【0046】
複合ワーク1が下側治具13によって支持されたのち、図5の工程ST3において、吸引チャックユニット20が複合ワーク1に向かって移動してくる。このとき駆動部材65は、図3に示された上側の位置から、図4に示された下側の位置(下降端)に向かって移動する。駆動部材65が下降端に向かって移動する途中で、カム部71,72がカム受け面75,80に接する。
【0047】
駆動部材65がさらに下方に移動すると、カム部71,72が下方に移動することに伴い、チャック部材51,52が開位置に移動する。駆動部材65が下降端の近くまで移動すると、加圧部73が荷重受け部76,81に当接する。この状態のもとで、駆動部材65と吸着部材21とが下降端に向かって移動する。このときチャック機構22は開いている。
【0048】
図4図10は、それぞれ、吸着部材21と駆動部材65とが下降端まで移動した状態を示している。図5の工程ST4において、吸着部材21が下降端に到達すると、下側治具13の上面15に対して吸着部33が第1の高さH1となる。そして吸着部33がキャップ部材3の上面と対向する。チャック機構22は開状態となっている。図5の工程ST5において、吸引孔31から空気が吸い込まれることにより、キャップ部材3が吸着部33に吸着される。
【0049】
図10はキャップ部材3が吸着部33に吸着された状態を示している。図10に示されたように、下側治具13の上面15からキャップ部材3の下端3cまでの距離h1が、チャック面57,62の厚さT1よりも小さいことがある。その場合、チャック部材51,52を閉じると、キャップ部材3がチャック部材51,52によって挟まれてしまう。つまりピン部材2を挟むことができない。
【0050】
そこで、図5の工程ST6において、キャップ部材3が吸着部33に吸着された状態のもとで、駆動部材65が下降端から上昇する。図11に示されたように吸着部材21が少し上昇することにより、吸着部33が第2の高さH2となる。これにより、下側治具13の上面15からキャップ部材3の下端3cまでの距離h2が、チャック面57,62の厚さT1よりも大きくなる。
【0051】
図5の工程ST7において、駆動部材65がさらに上昇すると、カム部71,72がカム受け面75,80から離れ、チャック機構22が閉じる。チャック機構22が閉じると、図12に示されたように、ピン部材2のキャップ部材3で覆われていない部分がチャック部材51,52によって挟まれる。
【0052】
図5の工程ST8では、図13に示されたように、チャック機構22によってピン部材2が挟まれた状態において、吸引チャックユニット20が上方に移動する。これにより、複合ワーク1が治具11から取り出される。治具11から取り出された複合ワーク1は、治具11が配置されたステージとは別のステージへ搬送される。
【0053】
以上述べたように本実施形態のワーク保持方法は工程ST1から工程ST8を含んでいる。
[工程ST1] ピン部材2を治具11によって立てた姿勢で支持する。
[工程ST2] ピン部材2の上方からキャップ部材3を被せる。
[工程ST3] 駆動部材65が下方に移動することにより、チャック機構22が開位置に移動する。
[工程ST4] 駆動部材65がさらに下方に移動し、下降端に至ると、吸着部33が第1の高さh1となる。これにより吸着部33がキャップ部材3の上面と対向する。
【0054】
[工程ST5] 吸着部33がキャップ部材3を吸着する。
[工程ST6] 駆動部材65が上昇することにより、キャップ部材3がピン部材2に対して相対的に上昇する。これによりキャップ部材3が第1の高さh1よりも高い第2の高さh2に移動する。
[工程ST7] 駆動部材65がさらに上昇することにより、チャック機構22が閉位置に移動する。これによりピン部材2がチャック機構22によって挟まれる。
[工程ST8] ピン部材2がチャック機構22によって挟まれた状態において、吸引チャックユニット20が上方に移動する。これにより、複合ワーク1が治具11から取り出される。
【0055】
[第2の実施形態]
図14は、第2の実施形態に係るワーク保持装置のチャック機構22Aの一部と、ピン部材2とを下方から見た底面図である。図15は、図14に示されたチャック機構22Aの一部を示す断面図である。第1のチャック部材51のチャック面57に角度θ1をなすV形の溝90が形成されている。それ以外の構成について、第2の実施形態のワーク保持装置は第1の実施形態のワーク保持装置10と共通である。
【0056】
第2の実施形態のチャック機構22Aは、第1の実施形態のチャック機構22と同様に、チャック部材51,52を閉じる方向に付勢するばね63(図1等に示す)を有している。またチャック部材51,52が閉じた状態において、吸着部材21の一方の側面1cと第1のチャック部材51との間に、第1の隙間部G1(図3に示す)を有している。吸着部材21の他方の側面1dと第2のチャック部材52との間に、第2の隙間部G2(図3に示す)を有している。
【0057】
図15に示されたように、チャック部材51,52が閉じた状態において、第1のチャック部材51の溝90にピン部材2が入る。そして第1のチャック面57との第2のチャック面62との間でピン部材2が挟まれる。ピン部材2は治具11の孔13aに挿入されているため、実質的に移動することができない。このためピン部材2の中心軸C1とチャック機構22のセンターC2とに間に、位置ずれC3が生じる。しかしこのような位置ずれC3は、チャック部材51,52が隙間部G1,G2の範囲で移動できることにより許容することができる。
【0058】
[第3の実施形態]
図16は、第3の実施形態に係るチャック機構22Bの一部を示す側面図である。吸着部材21の一方の側面21cと第1のチャック部材51との間に、厚さがG3の薄板状のシム部材100が設けられている。シム部材100と微調整用の調整ねじ101とが併用されてもよい。あるいはシム部材100に代えて調整ねじ101が使用されてもよい。それ以外の構成は第1の実施形態のチャック機構22と共通のため、第1の実施形態のチャック機構22と共通の箇所に共通の符号を付し、説明を省略する。本実施形態のチャック機構22Bは、シム部材100あるいは調整ねじ101の少なくとも一方を備えたことにより、チャック部材51,52が閉じたときにチャック面57,62が合わさるセンターの位置を調整することができる。なお、吸着部材21の他方の側面21dと第2のチャック部材52との間にシム部材100あるいは調整ねじ101の少なくとも一方が設けられてもよい。
【0059】
本発明を実施するに当たり、ワーク保持装置を構成する要素、例えばチャック機構や吸着部材、駆動部材、駆動機構等を変更して実施できることは言うまでもない。治具の形態も必要に応じて変更できる。また本発明に係るワーク保持装置は、ピン部材とキャップ部材とからなる複合ワーク以外のワークに用いることも可能である。吸着部材は電磁石等の磁力によってキャップ部材を吸着してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…複合ワーク、2…ピン部材、3…キャップ部材、10…ワーク保持装置、11…治具、13…下側治具、14…上側治具、20…吸引チャックユニット、21…吸着部材、22,22A,22B…チャック機構、23…駆動機構、30…支持機構、31,32…吸引孔、33…吸着部、34…エア流通孔、35…負圧発生源、40,41…位置決めピン、51…第1のチャック部材、52…第2のチャック部材、55…第1の軸、57…第1のチャック面、60…第2の軸、62…第2のチャック面、63…ばね、65…駆動部材、66…駆動源、71…第1のカム部(チャック駆動部)、72…第2のカム部(チャック駆動部)、73…加圧部(上下方向駆動部)、75…第1のカム受け面、76…第1の荷重受け部、80…第2のカム受け面、81…第2の荷重受け部、G1…第1の隙間部、G2…第2の隙間部、90…溝、100…シム部材。
図1
図2
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図16