IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089375
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/00 20060101AFI20240626BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20240626BHJP
   H01G 9/028 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H01G9/00 290H
C08L65/00
C08L77/06
H01G9/028 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204707
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 美代
(72)【発明者】
【氏名】大久保 隆
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC122
4J002BG072
4J002BQ002
4J002CE001
4J002CM011
4J002EC046
4J002EC056
4J002EL066
4J002EL086
4J002EU016
4J002EU026
4J002EV206
4J002EV216
4J002FD116
4J002GQ02
4J002HA06
(57)【要約】
【課題】静電容量が十分に大きく、かつ、特に、低周波領域での等価直列抵抗がより低い固体電解コンデンサが得られる、固体電解コンデンサの製造方法を提供する。
【解決手段】表面に誘電体被膜を有する弁金属からなる多孔性陽極体に、共役系導電性重合体及びポリアニオンを含む複合粒子、並びに分散媒を含む重合体含有分散液を、液温T1で付着させる第1の付着工程と、前記第1の付着工程の後、多孔性陽極体に、前記重合体含有分散液を、液温T2で付着させる第2の付着工程と、前記多孔性陽極体に付着した前記重合体含有分散液から分散媒を除去して、固体電解質層を形成する分散媒除去工程と、を含み、液温T1と液温T2の差(T1-T2)が5℃超60℃未満である、固体電解コンデンサの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に誘電体被膜を有する弁金属からなる多孔性陽極体に、共役系導電性重合体及びポリアニオンを含む複合粒子、並びに分散媒を含む重合体含有分散液を、液温T1で付着させる第1の付着工程と、
前記第1の付着工程の後、前記多孔性陽極体に、前記重合体含有分散液を、液温T2で付着させる第2の付着工程と、
前記多孔性陽極体に付着した前記重合体含有分散液から前記分散媒を除去して、固体電解質層を形成する分散媒除去工程と、を含み、
液温T1と液温T2の差(T1-T2)が5℃超60℃未満である、固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
液温T2が-30℃以上75℃未満である、請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
液温T1が10~80℃である、請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記分散媒除去工程を、第1の付着工程の後の第2の付着工程の前、及び、第2の付着工程の後に行う、請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記複合粒子が、さらに重合体粒子を含む、請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記共役系導電性重合体が、ピロール類、アニリン類及びチオフェン類からなる群より選択される1種以上の化合物を含む単量体の重合体である、請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサ用重合体の製造方法。
【請求項7】
前記チオフェン類の化合物が、下記式(1)で表される、請求項6に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【化1】

(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、置換されていてもよい炭素原子数1~18のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基、もしくは、置換されていてもよい炭素原子数1~18のアルキルチオ基;又は、RとRとが互いに結合して形成された、置換されていてもよい炭素原子数3~10の脂環、置換されていてもよい炭素原子数6~10の芳香環、置換されていてもよい炭素原子数2~10の酸素原子含有複素環、置換されていてもよい炭素原子数2~10の硫黄原子含有複素環、もしくは、置換されていてもよい炭素原子数2~10の硫黄原子及び酸素原子含有複素環である。)
【請求項8】
前記ポリアニオンが、スルホン酸又はその塩からなる基を2個以上有する重合体である、請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記重合体含有分散液が、さらに導電性向上剤を含む、請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項10】
前記導電性向上剤が、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、N-メチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、及びソルビトールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項11】
前記重合体含有分散液が、さらにアルカリ性化合物を含む、請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体含有分散液を用いる固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解コンデンサは、エレクトロニクス産業全般で広く使用されている。固体電解コンデンサは、アルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁金属を、陽極箔及び陰極箔として備え、陽極箔と陰極箔との間に、固体電解質が介在した構造が一般的である。陽極箔の弁金属は、静電容量を大きくするため、エッチング処理等により表面積が増大され、その表面に、誘電体被膜が形成されている。固体電解質に、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン等の共役系導電性高分子(重合体)を用いることにより、導電性が高く、等価直列抵抗(ESR)が低い固体電解コンデンサが得られる。
【0003】
近年の車の電装化に伴い、車載用固体電解コンデンサの開発が進められている。特に、車両用電子制御装置向けのコンデンサにおいては、電子制御による高出力化のため、さらなるESRの低下が求められている。
【0004】
導電性高分子を用いた固体電解質の形成方法としては、例えば、電解コンデンサ素子に導電性高分子を得るための単量体溶液と酸化剤溶液とを含浸させ、電解コンデンサ素子内で酸化重合や電解重合を行うことにより形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、導電性高分子の水分散液を、陽極体の誘電体酸化被膜に浸透させて乾燥させる、固体電解質の形成方法も知られている。例えば、特許文献2には、分散液中の導電性高分子の凝集体を超音波照射により微粒子化して分散させることにより、静電容量が大きく、ESRが低い固体電解コンデンサが得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-123630号公報
【特許文献2】特開2013-55308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているような電解コンデンサ素子内での重合反応においては、導電性高分子が凝集した海綿状態で形成されるため、固体電解質の均一性に劣り、導電性が低下しやすい。
【0008】
また、特許文献2に記載されているような導電性高分子の微粒子の分散液を用いて製造された固体電解コンデンサであっても、必ずしも満足できる静電容量及びESRであるとは言えなかった。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、静電容量が十分に大きく、かつ、特に、低周波領域(例えば、120Hz)でのESRがより低い固体電解コンデンサが得られる、固体電解コンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、固体電解コンデンサの製造において、重合体含有分散液を用いて固体電解質層を形成する工程の改良により、静電容量を確保しつつ、固体電解コンデンサの低周波領域でのESRを低下させることができることを見出したことに基づく。
【0011】
本発明は、以下の手段を提供する。
[1]表面に誘電体被膜を有する弁金属からなる多孔性陽極体に、共役系導電性重合体及びポリアニオンを含む複合粒子、並びに分散媒を含む重合体含有分散液を、液温T1で付着させる第1の付着工程と、前記第1の付着工程の後、前記多孔性陽極体に、前記重合体含有分散液を、液温T2で付着させる第2の付着工程と、前記多孔性陽極体に付着した前記重合体含有分散液から前記分散媒を除去して、固体電解質層を形成する分散媒除去工程と、を含み、液温T1と液温T2の差(T1-T2)が5℃超60℃未満である、固体電解コンデンサの製造方法。
[2]液温T2が-30℃以上75℃未満である、[1]の固体電解コンデンサの製造方法。
[3]液温T1が10~80℃である、[1]又は[2]の固体電解コンデンサの製造方法。
[4]前記分散媒除去工程を、第1の付着工程の後の第2の付着工程の前、及び、第2の付着工程の後に行う、[1]~[3]のいずれかの固体電解コンデンサの製造方法。
[5]前記複合粒子が、さらに重合体粒子を含む、[1]~[4]のいずれかの固体電解コンデンサの製造方法。
[6]前記共役系導電性重合体が、ピロール類、アニリン類及びチオフェン類からなる群より選択される1種以上の化合物を含む単量体の共重合体である、[1]~[5]のいずれかの固体電解コンデンサ用重合体の製造方法。
[7]前記チオフェン類の化合物が、下記式(1)で表される、[6]の固体電解コンデンサの製造方法。
【化1】

(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、置換されていてもよい炭素原子数1~18のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基、もしくは、置換されていてもよい炭素原子数1~18のアルキルチオ基;又は、RとRとが互いに結合して形成された、置換されていてもよい炭素原子数3~10の脂環、置換されていてもよい炭素原子数6~10の芳香環、置換されていてもよい炭素原子数2~10の酸素原子含有複素環、置換されていてもよい炭素原子数2~10の硫黄原子含有複素環、もしくは、置換されていてもよい炭素原子数2~10の硫黄原子及び酸素原子含有複素環である。)
[8]前記ポリアニオンが、スルホン酸又はその塩からなる基を2個以上有する重合体である、[1]~[7]のいずれかの固体電解コンデンサの製造方法。
[9]前記重合体含有分散液が、さらに導電性向上剤を含む、[1]~[8]のいずれかの固体電解コンデンサの製造方法。
[10]前記導電性向上剤が、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、N-メチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、及びソルビトールからなる群より選択される少なくとも1種である、[9]の固体電解コンデンサの製造方法。
[11]前記重合体含有分散液が、さらにアルカリ性化合物を含む、[1]~[10]のいずれかの固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、静電容量が十分に大きく、かつ、低周波領域におけるESRがより低い固体電解コンデンサが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本明細書における用語及び表記についての定義及び意義を以下に示す。
化合物の基について、「置換されていてもよい」とは、置換されている場合、及び、置換されていない場合(無置換の場合)のいずれであってもよいことを意味する。
化合物名に付す「類」とは、当該化合物構造を含む化合物群を意味し、置換基を有する当該化合物も含み、例えば、ポリピロール類とは、ポリピロール構造を含む化合物群を指す。
「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。同様に、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称であり、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルの総称である。
【0014】
本実施形態の固体電解コンデンサの製造方法は、表面に誘電体被膜を有する弁金属からなる多孔性陽極体に、共役系導電性重合体及びポリアニオンを含む複合粒子、並びに分散媒を含む重合体含有分散液を、液温T1で付着させる第1の付着工程と、第1の付着工程の後、多孔性陽極体に、前記重合体含有分散液を、液温T2で付着させる第2の付着工程と、前記多孔性陽極体に付着した前記重合体含有分散液から分散媒を除去して、固体電解質層を形成する分散媒除去工程と、を含み、液温T1と液温T2の差(T1-T2)が5℃超60℃未満であることを特徴とする。
【0015】
このように、所定の重合体含有分散液を多孔性陽極体に付着させる工程を複数回行い、かつ、2回目以降の付着に用いる重合体含有分散液を、1回目の付着に用いる重合体含有分散液よりも所定温度低くすることにより、静電容量が十分に大きく、かつ、低周波領域におけるESRがより低い固体電解コンデンサを得ることができる。
【0016】
[重合体含有分散液]
本実施形態の製造方法で用いる重合体含有分散液は、共役系導電性重合体及びポリアニオンを含む複合粒子、並びに分散媒を含み、さらに、後述する導電性向上剤、アルカリ性化合物及びその他の添加剤を含んでいてもよい。
重合体含有分散液中、複合粒子及び分散媒は、本発明の効果が十分に発揮されるようにするため、合計含有量が80~100質量%であることが好ましく、より好ましくは85~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%である。
【0017】
(複合粒子)
本実施形態の重合体含有分散液に含まれる複合粒子は、共役系導電性重合体及びポリアニオンを含むものである。
複合粒子は、複合粒子の分散性や製造される固体電解コンデンサのESRのさらなる低下等の観点から、共役系導電性重合体及びポリアニオン以外に、さらに重合体粒子(シード粒子)を含んでいてもよい。この場合、ポリアニオンが重合体粒子に配位し、該重合体粒子の表面の一部又は全部を覆っていることが好ましい。このような態様の複合粒子は、共役系導電性重合体、ポリアニオン、及び重合体粒子を含み、好ましくは、表面にポリアニオンを有する重合体粒子、及び共役系導電性重合体を含む。
【0018】
重合体含有分散液中の複合粒子の含有量は、固体電解コンデンサのESRの低下効果、重合体含有分散液の取り扱いやすい粘度及び複合粒子の分散性等の観点から、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.5~15質量%、さらに好ましくは1~10質量%である。
【0019】
<共役系導電性重合体>
複合粒子に含まれる共役系導電性重合体は、主鎖にπ共役系を有する有機高分子化合物であれば、特に限定されるものではない。共役系導電性重合体は、1種単独でも、2種以上が併用されていてもよい。また、後述する共役系導電性重合体の構成単位となる単量体の単独重合体であっても、2種以上の共役系導電性重合体の構成単位となる単量体を共重合した共重合体であってもよい。
【0020】
複合粒子中の共役系導電性重合体の含有量は、複合粒子の導電性及び重合体含有分散液中での安定性等の観点から、複合粒子100質量部中、好ましくは5~70質量部、より好ましくは10~60質量部、さらに好ましくは15~50質量部である。
【0021】
共役系導電性重合体としては、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリイソチアナフテン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及び、これらの共重合体等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い容易性や入手容易性等の観点から、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類が好ましく、ポリチオフェン類がより好ましい。
また、共役系導電性重合体は、高導電性の観点から、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基等の置換基を有していることが好ましい。
【0022】
ポリピロール類としては、例えば、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)等が挙げられる。
【0023】
ポリチオフェン類としては、例えば、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンオキシチアチオフェン)等が挙げられる。
【0024】
ポリアニリン類としては、例えば、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0025】
共役系導電性重合体は、これらの化合物の中でも、高導電性の観点から、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が好ましく、さらに、優れた耐熱性の観点から、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)がより好ましい。
【0026】
共役系導電性重合体を得るための単量体、すなわち、共役系導電性重合体の構成単位となる単量体は、ピロール類、アニリン類及びチオフェン類からなる群より選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。前記化合物は、置換基Xを有していてもよく、置換基Xとしては、例えば、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数5~10のヘテロアリール基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数1~18のアルキルチオ基、カルボキシ基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。また、これらの2個以上の置換基Xが縮合等により相互に結合して環を形成していてもよい。また、これらのアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基及びアルキルチオ基は、例えば、カルボキシ基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基等のさらなる置換基Yを有していてもよい。
【0027】
共役系導電性重合体の構成単位となる単量体としては、例えば、ピロール、N-メチルピロール、3-メチルピロール、3-エチルピロール、3-n-プロピルピロール、3-ブチルピロール、3-オクチルピロール、3-デシルピロール、3-ドデシルピロール、3,4-ジメチルピロール、3,4-ジブチルピロール、3-カルボキシルピロール、3-メチル-4-カルボキシルピロール、3-メチル-4-カルボキシエチルピロール、3-メチル-4-カルボキシブチルピロール、3-ヒドロキシピロール、3-メトキシピロール、3-エトキシピロール、3-ブトキシピロール、3-ヘキシルオキシピロール、3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール、3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール等のピロール類;チオフェン、3-メチルチオフェン、3-エチルチオフェン、3-プロピルチオフェン、3-ブチルチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、3-ヘプチルチオフェン、3-オクチルチオフェン、3-デシルチオフェン、3-ドデシルチオフェン、3-オクタデシルチオフェン、3-ブロモチオフェン、3-クロロチオフェン、3-ヨードチオフェン、3-シアノチオフェン、3-フェニルチオフェン、3,4-ジメチルチオフェン、3,4-ジブチルチオフェン、3-ヒドロキシチオフェン、3-メトキシチオフェン、3-エトキシチオフェン、3-ブトキシチオフェン、3-ヘキシルオキシチオフェン、3-ヘプチルオキシチオフェン、3-オクチルオキシチオフェン、3-デシルオキシチオフェン、3-ドデシルオキシチオフェン、3-オクタデシルオキシチオフェン、3,4-ジヒドロキシチオフェン、3,4-ジメトキシチオフェン、3,4-ジエトキシチオフェン、3,4-ジプロポキシチオフェン、3,4-ジブトキシチオフェン、3,4-ジヘキシルオキシチオフェン、3,4-ジヘプチルオキシチオフェン、3,4-ジオクチルオキシチオフェン、3,4-ジデシルオキシチオフェン、3,4-ジドデシルオキシチオフェン、3,4-エチレンジオキシチオフェン、3,4-プロピレンジオキシチオフェン、3,4-ブチレンジオキシチオフェン、3-メチル-4-メトキシチオフェン、3-メチル-4-エトキシチオフェン、3-カルボキシチオフェン、3-メチル-4-カルボキシチオフェン、3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン、3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン、3,4-エチレンオキシチアチオフェン等のチオフェン類;アニリン、2-メチルアニリン、3-イソブチルアニリン、2-アニリンスルホン酸、3-アニリンスルホン酸等のアニリン類等が挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
共役系導電性重合体の構成単位となる単量体は、これらの化合物の中でも、導電性が高い共役系導電性重合体を得る観点から、下記式(1)で表されるチオフェン類の化合物を含むことが好ましい。式(1)で表される化合物は、1種単独でも、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
【化2】
【0030】
式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、置換されていてもよい炭素原子数1~18のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素原子数1~18のアルキルチオ基、又は、RとRとが互いに結合して形成された、置換されていてもよい炭素原子数3~10の脂環、置換されていてもよい炭素原子数6~10の芳香環、置換されていてもよい炭素原子数2~10の酸素原子含有複素環、置換されていてもよい炭素原子数2~10の硫黄原子含有複素環、もしくは、置換されていてもよい炭素原子数2~10の硫黄原子及び酸素原子含有複素環である。
【0031】
ここで置換する置換基としては、例えば、カルボキシ基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
酸素原子含有複素環としては、環を構成する酸素原子数が1~3であることが好ましく、例えば、オキシラン環、オキセタン環、フラン環、ヒドロフラン環、ピラン環、ピロン環、ジオキサン環、トリオキサン環等が挙げられる。
硫黄原子含有複素環としては、環を構成する窒素原子数が1~3であることが好ましく、例えば、チイラン環、チエタン環、チオフェン環、チアン環、チオピラン環、チオピリリウム環、ベンゾチオピラン環、ジチアン環、ジチオラン環、トリチアン環等が挙げられる。
硫黄原子及び酸素原子含有複素環としては、環を構成する硫黄原子及び酸素原子の合計数が1~3であることが好ましく、例えば、オキサチオラン環、オキサチアン環等が挙げられる。
【0032】
共役系導電性重合体の構成単位となる単量体中、式(1)で表される化合物の含有量は、共役系導電性重合体の均一性及び良好な導電性等の観点から、好ましくは90~100質量%、より好ましくは95~100質量%、さらに好ましくは100質量%である。
【0033】
共役系導電性重合体の構成単位となる単量体は、式(1)で表される化合物の中でも、下記式(2)で表される化合物を含むことがより好ましく、3,4-エチレンジオキシチオフェンを含むことがさらに好ましい。
【0034】
【化3】
【0035】
式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1~4のアルキル基、又は、RとRとが互いに結合して形成された、置換されていてもよい炭素原子数3~6の酸素原子含有複素環である。
【0036】
及びRは、RとRとが互いに結合して形成された、置換されていてもよい炭素原子数3~6の酸素原子含有複素環であることが好ましい。
酸素原子含有複素環としては、環を構成する酸素原子数が1~3であることが好ましく、例えば、ジオキサン環、トリオキサン環等が挙げられ、好ましくはジオキサン環である。酸素原子含有複素環は、無置換であることが好ましい。
ここで置換する置換基は、上述した置換基Yと同様であり、例えば、カルボキシ基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0037】
<ポリアニオン>
ポリアニオンとは、アニオン性基を2個以上有する重合体である。共役系導電性重合体に対するドーパントとして機能する。また、複合粒子が、表面にポリアニオンを有する重合体粒子を含む場合、ポリアニオンは該重合体粒子に表面に配位し、保護コロイドとして作用するものと考えられる。
【0038】
複合粒子中のポリアニオンの含有量(重合体粒子を含む場合は、該重合体粒子の表面に存在するものも含む。;以下、同じ。)は、複合粒子の導電性及び重合体含有分散液中での安定性等の観点から、複合粒子100質量部中、好ましくは30~95質量部、より好ましくは40~90質量部、さらに好ましくは50~85質量部である。
また、ポリアニオンの含有量は、共役系導電性重合体100質量部に対して、好ましくは45~1900質量部、より好ましくは70~900質量部、さらに好ましくは100~500質量部である。
【0039】
アニオン性基としては、例えば、スルホン酸又はその塩からなる基、リン酸又はその塩からなる基、一置換リン酸エステル基、カルボン酸又はその塩からなる基、一置換硫酸エステル基等が挙げられる。これらの中でも、強酸性基が好ましく、スルホン酸又はその塩からなる基、リン酸又はその塩からなる基がより好ましく、スルホン酸又はその塩からなる基がさらに好ましい。すなわち、ポリアニオンとしては、スルホン酸又はその塩からなる基を2個以上有する重合体が好ましい。
塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム等の塩が挙げられる。
【0040】
アニオン性基は、ポリアニオンを構成する重合体の主鎖に結合していても、側鎖に結合していてもよい。アニオン性基が側鎖に結合している場合、共役系導電性重合体に対して高いドープ効果を得る観点から、アニオン性基は側鎖末端に結合していることが好ましい。
【0041】
ポリアニオンは、アニオン性基以外の置換基を有していてもよい。
置換基は、ポリアニオンを構成する重合体の主鎖に結合していても、側鎖に結合していてもよい。側鎖に置換基が結合している場合、該置換基の特性を発揮させる観点から、置換基は側鎖末端に結合していることが好ましい。
置換基としては、例えば、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、エステル基、アルケニル基、イミド基、アミド基、アミノ基、オキシカルボニル基、カルボニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの中でも、アルキル基、水酸基、シアノ基、ヒドロキシフェニル基、オキシカルボニル基が好ましく、アルキル基、水酸基、シアノ基がより好ましい。
【0042】
アルキル基は、分散媒への溶解性及び分散性、共役系導電性重合体との相溶性及び分散性等を高くする作用が期待できる。分散媒への溶解性、共役系導電性重合体への分散性、立体障害等の観点から、炭素原子数1~12のアルキル基が好ましい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0043】
水酸基は、他の水素原子等との水素結合を形成しやすくし、分散媒への溶解性、共役系導電性重合体との相溶性、分散性及び接着性を高くする作用が期待できる。水酸基は、ポリアニオンを構成する重合体の主鎖に結合した炭素原子数1~6のアルキル基の末端に結合していることが好ましい。
【0044】
シアノ基及びヒドロキシフェニル基は、共役系導電性重合体との相溶性、分散媒への溶解性及び耐熱性を高くする作用が期待できる。シアノ基は、ポリアニオンを構成する重合体の主鎖、重合体の主鎖に結合した炭素原子数1~7のアルキル基の末端、又は、重合体の主鎖に結合した炭素原子数2~7のアルケニル基の末端に結合していることが好ましい。
【0045】
オキシカルボニル基は、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基が好ましく、ポリアニオンを構成する重合体の主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合していることが好ましい。
【0046】
ポリアニオンを構成する重合体の主鎖の組成は、特に限定されるものではない。ポリアニオンを構成する重合体の主鎖構造としては、例えば、ポリアルキレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等が挙げられる。これらの中でも、合成や入手容易性等の観点から、ポリアルキレンが好ましい。
【0047】
ポリアルキレンは、構成単位がエチレン性不飽和単量体からなる重合体であり、主鎖構造に炭素-炭素二重結合が含まれていてもよい。
ポリアルキレンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3-トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。
【0048】
ポリイミドとしては、例えば、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2,3,3-テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2-[4,4’-ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の酸無水物と、オキシジアニリン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとの重縮合により得られるものが挙げられる。
【0049】
ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0050】
ポリアニオンとしては、共役系導電性重合体の構成単位となる単量体の分散媒への分散性を向上させることから、上述したように、アニオン性基としてスルホン酸又はその塩からなる基を有するものが好ましい。
スルホン酸からなる基、すなわち、スルホ基(-SOOH)を有するポリアニオンとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、及びこれらの共重合体等が挙げられる。これらの中でも、高導電性の観点から、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。また、水溶性等の観点から、スルホ基がスルホン酸塩基に置き換えられているものが好ましく、例えば、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムが好適に用いられる。
ポリアニオンは、例えば、特開2005-76016号公報等に記載されている公知の製造方法により製造することができ、また、市販品を用いることもできる。
【0051】
ポリアニオンは、分散媒への溶解性、共役系導電性重合体へのドープ効果の観点から、重量平均分子量が、好ましくは1000~1000000、より好ましくは5000~500000、さらに好ましくは50000~300000である。
なお、ここで言う重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィによる標準ポリスチレン換算分子量である。具体的には、実施例に記載の方法で測定された値である。
【0052】
<重合体粒子>
上述したように、複合粒子には、重合体粒子が含まれていてもよい。この場合、重合体含有分散液中での分散性の観点から、重合体粒子は、その表面にポリアニオンが配位していることが好ましく、ポリアニオンが該重合体粒子の表面の一部又は全部を覆っていることが好ましい。表面にポリアニオンを有する重合体粒子は、複合粒子の製造において、シード粒子として機能する。なお、本実施形態における重合体粒子は、共役系導電性重合体ではないものとする。すなわち、重合体粒子の重合体は、共役系導電性重合体には分類されない重合体である。
【0053】
複合粒子中の重合体粒子の含有量は、複合粒子の導電性及び重合体含有分散液中での安定性等の観点から、複合粒子100質量部中、好ましくは0~50質量部、より好ましくは0~40質量部、さらに好ましくは0~25質量部である。
【0054】
重合体粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体に由来する構成単位を含む重合体粒子が好ましい。重合体粒子としては、エチレン性不飽和単量体を重合して得られる単独重合体又は共重合体の粒子が好ましい。重合体粒子は、1種単独でも、2種以上が併用されてもよく、また、結晶性又は非晶性のいずれでもよい。結晶性の場合は、結晶化度が50%以下であることが好ましい。
【0055】
エチレン性不飽和単量体としては、重合性のエチレン性炭素-炭素二重結合を有しているものであればよく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、アルカン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジオレフィン;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β-不飽和モノ又はジカルボン酸;アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド等のカルボニル基含有ビニル化合物等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0056】
エチレン性不飽和単量体は、架橋性単量体を含んでいてもよく、これらのエチレン性不飽和単量体同士で、さらにまた、活性水素基を有するエチレン性不飽和化合物と組み合わせて架橋させてもよい。架橋共重合体とすることにより、これを用いた固体電解質の耐水性、耐湿性及び耐熱性等が向上しやすくなる。
エチレン性不飽和単量体中の架橋性単量体の含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
なお、ここで言う架橋性単量体とは、エチレン性炭素-炭素二重結合を2個以上有する化合物、又は、エチレン性炭素-炭素二重結合を1個以上有し、かつ、その他の反応性基を1個以上有する化合物を指す。
【0057】
架橋性単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有α,β-エチレン性不飽和化合物;ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性アルコキシシリル基含有α,β-エチレン性不飽和化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物等が挙げられる。また、カルボニル基含有α,β-エチレン性不飽和化合物(ケトン基含有のもの)等の架橋性単量体を、ポリヒドラジン化合物(特に、シュウ酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド等の2個以上のヒドラジド基を有するもの)と組み合わせて架橋させてもよい。
【0058】
表面にポリアニオンを有する重合体粒子は、エマルジョンの状態で得ることができる。以下、当該エマルジョンを、重合体粒子エマルジョンと言う。
重合体粒子エマルジョンは、常圧又は耐圧反応器にて、ラジカル重合反応で製造することができ、製造方式は、バッチ式、半連続式又は連続式のいずれでもよい。安定した重合反応及び重合体粒子の均一性等の観点から、ポリアニオン含有液に、エチレン性不飽和単量体を含む重合体粒子原料液を連続的又は断続的に添加して重合させて、表面にポリアニオンを有する重合体粒子を製造することが好ましい。
【0059】
エチレン性不飽和単量体及びポリアニオンの配合量は、重合体粒子エマルジョンの増粘の抑制及び安定性の観点から、ポリアニオン100質量部に対して、エチレン性不飽和単量体が、好ましくは10~100質量部、より好ましくは20~90質量部、さらに好ましくは30~80質量部である。
【0060】
表面にポリアニオンを有する重合体粒子は、重合体粒子エマルジョン中での分散性及び沈降抑制等の観点から、50%体積累積粒子径(d50)が、好ましくは0.01~10μm、より好ましくは0.05~1μmで、さらに好ましくは0.1~0.8μmである。
なお、d50は、後述する実施例に記載の方法により求められる。
【0061】
重合体粒子エマルジョンの分散媒は、水性媒体が好ましく、水、又は、水と水溶性溶媒との混合溶媒がより好ましい。混合溶媒中での水溶性溶媒の割合は、表面にポリアニオンを有する重合体粒子の安定性の観点から、30質量%以下が好ましい。
水溶性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。
【0062】
重合体粒子エマルジョン中の分散媒の含有量は、重合体粒子の分散性及び重合体粒子エマルジョンの安定性等の観点から、重合体粒子エマルジョン100質量部中、好ましくは30~99質量部、より好ましくは50~95質量部、さらに好ましくは70~90質量部である。
【0063】
ポリアニオンが重合体粒子及び重合体粒子エマルジョンの安定性に寄与するが、より優れた安定性の観点から、必要に応じて、重合体粒子エマルジョン中に乳化剤や脂肪族アミン等が添加されていてもよい。乳化剤及び脂肪族アミンの種類及び添加量は、エチレン性不飽和単量体及びポリアニオンの含有量及び組成等に応じて適宜調整される。乳化剤及び脂肪族アミンは、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0064】
乳化剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0065】
脂肪族アミンとしては、例えば、オクチルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等の第一級アミン;ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン等の第二級アミン;N,N-ジメチルラウリルアミン、N,N-ジメチルミリスチルアミン、N,N-ジメチルパルミチルアミン、N,N-ジメチルステアリルアミン、N,N-ジメチルベヘニルアミン、N,N-ジメチルオレイルアミン、N-メチルジデシルアミン、N-メチルジオレイルアミン等の第三級アミン等が挙げられる。
【0066】
また、重合体粒子及び重合体粒子エマルジョンの安定性の観点から、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子が、本実施形態の重合体含有分散液の特性を損なわない範囲内において含まれていてもよい。
【0067】
重合体粒子エマルジョンを得るためのラジカル乳化重合反応の重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、過酸化水素、過硫酸、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物類;ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物類等が挙げられる。また、これらの重合開始剤に、ナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、アスコルビン酸類、亜硫酸塩、酒石酸又はその塩、硫酸鉄(II)等と組み合わせて、レドックス重合を行ってもよい。また、必要に応じて、アルコール類、メルカプタン類等の連鎖移動剤を使用してもよい。
ラジカル重合反応における反応温度は、好ましくは10~100℃、より好ましくは30~90℃である。反応時間は、特に限定されるものではなく、原料の量、重合開始剤の種類及び反応温度等に応じて適宜調整される。
【0068】
ラジカル重合反応後、反応生成物は、重合体粒子及び重合体粒子エマルジョンの安定性の観点から、脱塩しておくことが好ましい。脱塩の方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができ、例えば、透析法、遠心分離洗浄法、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法等が挙げられる。
【0069】
<複合粒子の製造>
複合粒子は、共役系導電性重合体の構成単位となる単量体及びポリアニオンを含む原料液(以下、「単量体液」とも言う。)を重合させることにより製造できる。単量体液は、重合体粒子を含んでいてもよく、該重合体粒子は、表面にポリアニオンを有していてもよい。
単量体液は、均一な重合反応を行う観点から、共役系導電性重合体の構成単位となる単量体が、溶解、乳化又は分散しているものであることが好ましい。単量体液の調製は、例えば、ホモミキサやホモジナイザ等の撹拌機による撹拌、超音波照射等により行うことができる。
【0070】
単量体液が、表面にポリアニオンを有する重合体粒子を含む場合、重合体粒子の凝集抑制の観点から、さらにポリアニオンを含むことが好ましい。すなわち、表面にポリアニオンを有する重合体粒子と、さらにポリアニオンとを含むことが好ましい。さらに含まれるポリアニオンは、重合体粒子が表面に有するポリアニオンと同じであることが好ましい。この場合、さらに含まれるポリアニオンの添加量は、使用するポリアニオンの合計100質量%中、好ましくは99質量%以下、より好ましくは10~90質量%、さらに好ましくは20~80質量%である。
【0071】
単量体液中のポリアニオンの合計含有量(重合体粒子を含む場合は、該重合体粒子が表面に有するものも含む)は、複合粒子の導電性及び単量体液中での分散性の観点から、共役系導電性重合体の構成単位となる単量体1モル当たり、アニオン性基が0.25~30モルとなる量であることが好ましく、より好ましくは0.5~25モル、さらに好ましくは0.8~20モルとなる量である。
【0072】
単量体液における分散媒としては、例えば、水;N-ビニルピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のアミド類;クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類;ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類;ジオキサン、ジエチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等のエーテル類;3-メチル-2-オキサゾリジノン等の複素環化合物;アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類が挙げられる。分散媒は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。分散媒は、水を含むことが好ましく、この場合の分散媒100質量%中の水の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
また、単量体液における分散媒は、調製の容易性の観点から、重合体粒子の製造に用いられる分散媒と同じ種類であることが好ましい。
【0073】
単量体液中の分散媒の含有量は、重合反応時の適度な粘度及び反応性の観点から、単量体液100質量%中、好ましくは1~99.9質量%、より好ましくは10~99質量%、さらに好ましくは30~98質量%である。
【0074】
単量体液を重合させる反応は、酸化剤の存在下で行うことが好ましい。
酸化剤としては、例えば、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸塩;三フッ化ホウ素等の金属ハロゲン化合物;塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、塩化銅(II)等の遷移金属化合物;酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物;過酸化水素、オゾン等の過酸化物;過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物;酸素等が挙げられる。これらの中でも、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸塩、遷移金属化合物が好ましく、ペルオキソ二硫酸塩、遷移金属化合物がより好ましい。酸化剤は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
酸化剤の使用量は、重合反応の適度な促進の観点から、共役系導電性重合体の構成単位となる単量体100質量部に対して、好ましくは50~1500質量部、より好ましくは70~1000質量部、さらに好ましくは100~500質量部である。
【0075】
単量体液を重合させる際の温度は、適度な反応速度及び反応液の粘度上昇の抑制の観点から、好ましくは5~80℃、より好ましくは10~60℃、さらに好ましくは15~40℃である。温度は、反応の進行に応じて、適宜変化させてもよい。
【0076】
単量体液を重合させる際、反応系の均一化及び重合体粒子の凝集抑制の観点から、撹拌しながら行うことが好ましい。撹拌方法は、反応系の均一化が図られる限り、特に限定されるものではなく、例えば、ハイシェアミキサ等を用いて、単量体液を循環させて撹拌する方法等が挙げられる。
【0077】
(分散媒)
重合体含有分散液の分散媒は、複合粒子を分散させ、安定した重合体含有分散液を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0078】
分散媒としては、例えば、水;N-ビニルピロリドン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のアミド類;クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類;ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物;ジオキサン、ジエチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等のエ―テル類;3-メチル-2-オキサゾリジノン等の複素環化合物;アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類が挙げられる。分散媒は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、重合体含有分散液の良好な分散性及び製造容易性等の観点から、1~99質量%の水が含まれていることが好ましく、50~99質量%の水が含まれていることがより好ましく、水のみであることがさらに好ましい。
【0079】
重合体含有分散液中の分散媒の含有量は、重合体含有分散液の所望の粘度や複合粒子の分散性の観点から、重合体含有分散液中、好ましくは30~98質量%、より好ましくは45~97質量%、さらに好ましくは60~94質量%である。
【0080】
(導電性向上剤)
重合体含有分散液は、固体電解コンデンサの導電性をより向上させる観点から、導電性向上剤を含んでいてもよい。
導電性向上剤としては、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン類;カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン、N-オクチルピロリドン、ピロリドン等のアミド類又はラクタム類;テトラメチレンスルホン、ジメチルスルホキシド等のスルホン類又はスルホキシド類;スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース等の糖類及びその誘導体;ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール類;スクシンイミド、マレイミド等のイミド類;2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸等のフラン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のポリアルコール類等が挙げられる。これらの中でも、エーテル類、ラクトン類、アミド類又はラクタム類、糖アルコール類、ポリアルコール類が好ましく、ポリアルコール類が特に好ましい。具体的な化合物としては、導電性の向上の観点から、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、N-メチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジメチルスルホキシド、ソルビトールが好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールがより好ましい。導電性向上剤は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0081】
重合体含有分散液中の導電性向上剤の含有量は、固体電解コンデンサの導電性の向上及び重合体含有分散液の粘度上昇の抑制の観点から、重合体含有分散液の複合粒子1質量部当たり、好ましくは1~50質量部、より好ましくは2~40質量部、さらに好ましくは3~30質量部である。
また、導電性向上剤の含有量は、重合体含有分散液中、好ましくは0.5~50質量%、より好ましくは3~40質量%、さらに好ましくは5~35質量%である。
【0082】
(アルカリ性化合物)
重合体含有分散液は、pH調整及び接触する金属等の腐食抑制の観点から、アルカリ性化合物を含んでいてもよい。
重合体含有分散液中のアルカリ性化合物の含有量は、重合体含有分散液が接触する金属等の腐食抑制及び複合粒子からのポリアニオンの脱ドープの抑制等の観点から、分散液のpHが、好ましくは3~13、より好ましくは3~8、さらに好ましくは4~7になる量とする。重合体含有分散液中のアルカリ性化合物の含有量は、好ましくは0~15質量%、より好ましくは0.05~10質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%である。
【0083】
アルカリ性化合物は、特に限定されるものではなく、公知の有機又は無機アルカリ性化合物を用いることができる。アルカリ性化合物は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0084】
有機アルカリ性化合物としては、例えば、芳香族アミン、脂肪族アミン、複素環式アミン、アルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、ピリジン類、イミダゾール類、ピリミジン類、ピラジン類、トリアジン類等の窒素含有ヘテロアリール類が挙げられる。これらの中でも、溶解性等の観点から、ピリジン類、イミダゾール類、ピリミジン類が好ましい。
脂肪族アミンとしては、例えば、エチルアミン、n-オクチルアミン、ジエチルアミン、ジイソブチルアミン、メチルエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、アリルアミン、2-エチルアミノエタノール、2,2’-イミノジエタノール、N-エチルエチレンジアミン等が挙げられる。
複素環式アミンとしては、アゼチジン類、ピロリジン類、ピペリジン類、ピペラジン類、モルホリン類、チオモルホリン類等が挙げられる。これらの中でも、汎用性の観点から、モルホリン類が好ましい。
【0085】
モルホリン類の具体例としては、モルホリン、4-メチルモルホリン、4-エチルモルホリン、4-n-プロピルモルホリン、4-イソプロピルモルホリン、4-n-ブチルモルホリン、4-イソブチルモルホリン、4-ペンチルモルホリン、4-ヘキシルモルホリン、(R)-3-メチルモルホリン、(S)-3-メチルモルホリン、cis-2,6-ジメチルモルホリン、4-(1-シクロヘキセニル)モルホリン、1-モルホリノ-1-シクロペンテン、4-フェニルモルホリン、4-(p-トリル)モルホリン、4-(2-アミノエチル)モルホリン、4-(3-アミノプロピル)モルホリン、2-モルホリノアニリン、4-モルホリノアニリン、4-(2-モルホリノエトキシ)アニリン、4-(4-ピリジル)モルホリン、4-アミノモルホリン、4-(2-ヒドロキシプロピル)モルホリン、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、4-(3-ヒドロキシプロピル)モルホリン、2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸、2-モルホリノエタンスルホン酸、3-モルホリノプロパンスルホン酸、4-アセチルモルホリン、4-アセトアセチルモルホリン、4-アクリロイルモルホリン、4-アリルモルホリン、フェニルモルホリン、3-(モルホリノ)プロピオン酸エチル、4-ホルミルモルホリン、4-(4-ホルミルフェニル)モルホリン、及びこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、入手容易性及び取り扱い性等の観点から、モルホリン、4-エチルモルホリン、4-n-ブチルモルホリン、4-イソブチルモルホリン、4-フェニルモルホリン、4-(2-ヒドロキシプロピル)モルホリン、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、4-(3-ヒドロキシプロピル)モルホリンが好ましく、モルホリン、4-エチルモルホリン及び4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリンからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、モルホリンが特に好ましい。
【0086】
アルカリ金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド;カリウムアルコキシド;カルシウムアルコキシド等が挙げられる。
【0087】
無機アルカリ性化合物としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等が挙げられる。
【0088】
(その他の添加剤)
重合体含有分散液は、固体電解コンデンサ用に適した物性を付与する観点から、上述した含有成分以外の他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤の種類及び含有量は、本発明の効果や重合体含有分散液の粘度に著しい悪影響を及ぼさない限り、特に限定されるものではない。
その他の添加剤としては、例えば、水溶性高分子化合物、水分散性化合物、界面活性剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤等が挙げられる。その他の添加剤は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0089】
水溶性高分子化合物及び水分散性化合物は、重合体含有分散液の粘度調整や塗布性能を向上させる作用を奏し得る。
水溶性高分子化合物及び/又は水分散性化合物を含む場合、合計含有量は、重合体分散液中の複合粒子1質量部当たり、好ましくは1~50質量部、より好ましくは2~40質量部、さらに好ましくは3~30質量部である。
【0090】
水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリオキシアルキレン類、水溶性ポリウレタン、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミド、水溶性ポリイミド、水溶性ポリアクリル、水溶性ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシアルキレン類が好ましい。
ポリオキシアルキレン類としては、例えば、オリゴポリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノクロルヒドリン、ジエチレングリコールモノクロルヒドリン、オリゴエチレングリコールモノクロルヒドリン、トリエチレングリコールモノブロムヒドリン、ジエチレングリコールモノブロムヒドリン、オリゴエチレングリコールモノブロムヒドリン、ポリエチレングリコール、グリシジルエーテル類、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル類、ポリエチレンオキシド、トリエチレングリコール・ジメチルエーテル、テトラエチレングリコール・ジメチルエーテル、ジエチレングリコール・ジメチルエーテル、ジエチレングリコール・ジエチルエーテル・ジエチレングリコール・ジブチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンジオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0091】
ここで言う水分散性化合物とは、親水性の低い化合物の一部が親水性の高い官能基で置換されたもの、又は、親水性の低い化合物の周囲に親水性の高い官能基を有する化合物が吸着したもの(例えば、エマルジョン等)であって、水中で沈殿せずに分散するものである。
水分散性化合物としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらのエマルジョン等が挙げられる。また、アクリル樹脂とポリエステルやポリウレタン等とのブロック共重合体やグラフト共重合体等が挙げられる。
【0092】
界面活性剤としては、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等のアニオン界面活性剤;アミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤;カルボキシベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のノニオン界面活性剤等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ビタミン類等が挙げられる。
【0093】
[多孔性陽極体]
本実施形態の固体電解コンデンサの製造方法は、上述のとおり、表面に誘電体被膜を有する弁金属からなる多孔性陽極体に、共役系導電性重合体及びポリアニオンを含む複合粒子、並びに分散媒を含む重合体含有分散液を、液温T1で付着させる第1の付着工程と、第1の付着工程の後、多孔性陽極体に、前記重合体含有分散液を、液温T2で付着させる第2の付着工程と、前記多孔性陽極体に付着した前記重合体含有分散液から分散媒を除去して、固体電解質層を形成する分散媒除去工程と、を含み、液温T1と液温T2の差(T1-T2)が5℃超60℃未満である。
重合体含有分散液を付着せる多孔性陽極体は、表面に誘電体被膜を有する弁金属からなる。多孔性陽極体は、公知の方法で、多孔性の弁金属の表面に誘電体被膜を形成することにより得られる。
多孔性の弁金属は、例えば、高比表面積の弁金属粉末の焼結や、弁金属箔をエッチングすることにより得られる。
【0094】
弁金属としては、例えば、アルミニウム、ベリリウム、ビスマス、マグネシウム、ゲルマニウム、ハフニウム、ニオブ、アンチモン、ケイ素、スズ、タンタル、チタン、バナジウム、タングステン、ジルコニウム、及びこれらの金属のうちの少なくとも1つを含む合金又は化合物が挙げられる。これらの中でも、汎用性の観点から、アルミニウム、ニオブ、タンタルが好ましい。
【0095】
誘電体被膜は、例えば、多孔性の弁金属のリン酸塩溶液中での陽極酸化によって、多孔性の弁金属の表面に、誘電体酸化被膜として形成することができる。陽極酸化における化成電圧は、誘電体酸化被膜の厚さやコンデンサの耐電圧に応じて設定され、好ましくは1~800V、より好ましくは1~500V、より好ましくは1~300Vである。
【0096】
[第1の付着工程]
第1の付着工程では、多孔性陽極体に、重合体含有分散液を、液温T1で付着させる。第1の付着工程は、1回目の付着工程である。
【0097】
多孔性陽極体への重合体含有分散液の付着は、例えば、塗布、噴霧、浸漬等の公知の方法で行うことができる。これらの方法の中でも、重合体含有分散液を多孔性陽極体に万遍なく均一に浸透させ、付着させることができることから、浸漬させる方法が好ましい。また、多孔性陽極体の孔内等の細部にまで重合体含有分散液を十分に浸透させるために、減圧下で含侵させてもよい。
【0098】
多孔性陽極体に重合体含有分散液を浸漬により付着させる場合、重合体含有分散液の分散媒の種類や粘度等にもよるが、多孔性陽極体に、重合体含有分散液を10秒~10分間程度含浸させることが好ましい。
重合体含有分散液の液温は、例えば、恒温槽等の公知の恒温装置を用いて、一定温度に保持することができる。
【0099】
第1の付着工程における重合体含有分散液の液温T1は、重合体含有分散液が安定した液体の状態で均一に付着されるようにする観点から、重合体含有分散液の凝固点以上、かつ、沸点以下の温度とする。液温T1は、重合体含有分散液中の分散媒や複合粒子の種類にもよるが、好ましくは10~80℃、より好ましくは10~60℃、さらに好ましくは15~50℃である。例えば、分散媒が水である場合は、15~50℃であることが特に好ましい。
【0100】
[第2の付着工程]
第2の付着工程では、多孔性陽極体に、重合体含有分散液を、液温T2で付着させる。第2の付着工程は、1回目の付着工程の後に行われる2回目以降の付着工程である。
第2の付着工程は、複数回行ってもよい。複数回行う場合の各回の液温T2は、液温差(T1-T2)が5℃超60℃未満である限り、同じであっても、異なっていてもよい。
【0101】
第2の付着工程は、液温をT2とすること以外は、第1の付着工程と同様の操作で行うことができる。使用する重合体含有分散液は、第1の付着工程で使用した重合体含有分散液と異なる組成であってもよいが、作業の容易性、本発明の効果の得られやすさ等の観点から、第1の付着工程で使用した重合体含有分散液と同じ組成のものであることが好ましい。
【0102】
液温T2は、液温T1と液温T2の差(T1-T2)が、5℃超60℃未満、好ましくは8~50℃、より好ましくは10~45℃となるようにする。
このような液温差での複数回の付着工程を行うことにより、本発明の効果が得られる理由は明らかではないが、重合体含有分散液中の複合粒子の表面状態が、重合体含有分散液の液温によって変化することが一因であると考えられる。第1の付着工程における液温T1は、ある程度高い方が多孔質陽極体に重合体含有分散液が浸透し、誘電体皮膜上に複合粒子が付着されやすい。第2の付着工程における液温T2は、液温T1よりも低く、かつ、液温差(T1-T2)が上記範囲内であることにより、第1の付着工程で複合粒子を付着させた多孔性陽極体に対して、さらに複合粒子が付着しやすくなる。これにより、より均一かつ密な状態の固体電解質層が形成され、静電容量が十分に大きく、かつ、ESRがより低い固体電解コンデンサを得ることができるものと考えられる。
【0103】
第2の付着工程における重合体含有分散液の液温T2も、液温T1と同様に、重合体含有分散液が安定した液体の状態で均一に付着されるようにする観点から、重合体含有分散液の凝固点以上、かつ、沸点以下の温度とする。液温T2は、重合体含有分散液中の分散媒や複合粒子の種類にもよるが、好ましくは-30℃以上75℃未満、より好ましくは-15℃以上55℃未満、さらに好ましくは0℃以上45℃未満である。例えば、分散媒が水である場合は、0℃以上45℃未満であることが特に好ましい。
【0104】
[分散媒除去工程]
分散媒除去工程では、多孔性陽極体に付着した重合体含有分散液から分散媒を除去して、固体電解質層を形成する。
分散媒除去工程は、第1の付着工程及び第2の付着工程を続けて行った後に行ってもよいが、より均一かつ密な状態の固体電解質層を形成して、固体電解コンデンサの静電容量を確保し、ESRを低下させる観点から、第1の付着工程の後の第2の付着工程の前、及び、第2の付着工程の後に行うことが好ましい。第2の付着工程を複数回行う場合は、各回の後に、分散媒除去工程を経ることが好ましい。
【0105】
分散媒の除去は、除去効率の観点から、重合体含有分散液が付着した多孔性陽極体を加熱処理して乾燥させることが好ましい。加熱条件は、分散媒の沸点や揮発性、重合体の酸化劣化等を考慮して適宜設定され、通常、室温~300℃、好ましくは40~250℃、さらに好ましくは50~200℃で、5秒~数時間、加熱処理する。加熱装置としては、例えば、ホットプレート、オーブン、熱風乾燥器等を用いることができ、乾燥の効率化の観点から、減圧下で乾燥させてもよい。
なお、ここで言う分散媒の除去とは、分散媒が全くない状態とすることのみを意味するものでなく、固体電解コンデンサの使用において支障のない範囲内で分散媒が一部残存してもいてもよい。
【0106】
[固体電解質層]
本実施形態の製造方法によれば、表面に誘電体被膜を有する弁金属からなる多孔性陽極体に固体電解質層を有し、該固体電解質層が、ポリアニオン及び共役系導電性重合体を含む複合粒子を含む固体電解コンデンサ得られる。固体電解質層は、上述したように、重合体含有分散液中の分散媒が一部残存していてもよく、また、任意の電解液を含浸させてもよい。
【0107】
固体電解質層に含浸させる電解液としては、電解コンデンサ用の公知の電解液を用いることができ、例えば、塩を含んでいてもよい極性有機溶媒が挙げられる。
【0108】
電解液の極性有機溶媒としては、プロトン性溶媒を用いることができ、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の一価アルコール類;としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール、ポリエチレングリコールやポリオキシエチレングリセリン等のアルキレンオキシド付加物等の多価アルコール類及びオキシアルコール化合物類等が挙げられる。
また、極性有機溶媒として非プロトン性溶媒も用いることができ、例えば、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン等のスルホン類;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等のアミド類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、イソブチレンカーボネート等のラクトン類及び環状アミド類;アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド等のオキシド類等が挙げられる。
【0109】
塩としては、例えば、アンモニウム塩;テトラメチルアンモニウム塩、トリエチルメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩;エチルジメチルイミダゾリニウム塩、テトラメチルイミダゾリニウム塩等のアミジニウム塩;メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩等の第一級アミン塩;ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、エチルメチルアミン塩、ジブチルアミン塩等の第二級アミン塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、トリブチルアミン塩、エチルジメチルアミン塩、エチルジイソプロピルアミン塩等の第三級アミン塩;ナトリウム塩;カリウム塩等が挙げられる。
【0110】
塩を構成する酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、アジピン酸、安息香酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、1,6-デカンジカルボン酸、1,7-オクタンジカルボン酸、アゼライン酸、レゾルシン酸、フロログルシン酸、没食子酸、ゲンチシン酸、プロトカテク酸、ピロカテク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のカルボン酸;スルホン酸等の有機酸が挙げられる。また、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、炭酸、ケイ酸等が挙げられる。また、ボロジサリチル酸、ボロジシュウ酸、ボロジグリコール酸、ボロジマロン酸、ボロジコハク酸、ボロジアジピン酸、ボロジアゼライン酸、ボロジ安息香酸、ボロジマレイン酸、ボロジ乳酸、ボロジリンゴ酸、ボロジ酒石酸、ボロジクエン酸、ボロジフタル酸、ボロジ(2-ヒドロキシ)イソ酪酸、ボロジレゾルシン酸、ボロジメチルサリチル酸、ボロジナフトエ酸、ボロジマンデル酸、ボロジ(3-ヒドロキシ)プロピオン酸等のホウ素錯体等も挙げられる。
【0111】
電解液は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、ホウ酸とマンニットやソルビット等の多糖類との錯化合物;ホウ酸と多価アルコールとの錯化合物;ホウ酸エステル類;o-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、o-ニトロフェノール、m-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール、p-ニトロベンジルアルコール等のニトロ類;リン酸エステル類等が挙げられる。これらは1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0112】
本実施形態の固体電解コンデンサの製造方法においては、上述した第1の付着工程、第2の付着工程及び分散媒除去工程を経ること以外は、公知の固体電解コンデンサの製造工程と同様に行うことができる。したがって、既存のコンデンサ素子において、本実施形態の固体電解コンデンサの製造方法を適用することにより、静電容量が十分に大きく、かつ、低周波領域におけるESRがより低い固体電解コンデンサを製造することができる。
【実施例0113】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0114】
[測定方法]
実施例及び比較例における各種物性の測定方法は、以下のとおりである。
(重量平均分子量)
ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィ―にて、以下の測定条件で測定した標準ポリスチレン換算分子量として求めた。
<測定条件>
測定装置:「Shodex(登録商標) GPC 101」、昭和電工株式会社製
使用カラム:「OHpak SB―806M HQ」、昭和電工株式会社製
カラム温度:40℃
溶出液:水
溶出速度:1mL/分
標準試料:ポリスチレン
(粒径)
複合粒子の粒径は、粒子径分布測定装置(マイクロトラック(登録商標)UPA型、日機装株式会社製)にて測定した50%体積累積粒子径(d50)で表す。
(固形分濃度)
各種の液の固形分濃度は、試料約10gを秤量し、赤外線水分計(「FD-720」、株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、分散媒中の沸点が最も高い分散媒の沸点より10℃高い温度で30分間加熱し、蒸発残分を固形分として算出した。例えば、分散媒が水の場合は、加熱条件は110℃で30分間とする。
(pH)
複合粒子含有液のpHは、pHメータ(「HM-30G」、東亜ディーケーケー株式会社製;25℃)にて測定した。
【0115】
[重合体含有分散液の製造]
(製造例1)重合体粒子を含む重合体含有分散液の製造
スチレン86g、2-エチルヘキシルアクリレート49g、ジビニルベンゼン15g、及びポリスチレンスルホン酸ナトリウム(「ポリナス(登録商標)PS-5」、東ソー・ファインケム株式会社製;Mw 約120000;以下、同じ。)22質量%水溶液500g(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム110g)を撹拌混合し、原料液(a)を調製した。
また、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム22質量%水溶液1000g(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム220g)を撹拌しながら80℃に昇温し、これに過硫酸カリウム2gを添加し、原料液(b)を調製した。
原料液(b)に、原料液(a)を2時間かけて滴下し、さらに、過硫酸カリウム2.5質量%水溶液40gを2.5時間かけて滴下し、80℃で2時間反応させた後、室温(25℃)まで冷却した。
反応生成物に、陽イオン交換樹脂(「アンバーライト(登録商標) IR120B-H」、オルガノ株式会社製;以下、同じ。)1500mL、及び陰イオン交換樹脂(「アンバーライト(登録商標) IRA410-OH」、オルガノ株式会社製;以下、同じ。)1500mLを添加し、12時間撹拌した後、イオン交換樹脂をろ別した。純水を添加して、表面にポリアニオンを有する重合体粒子(d50:0.46μm)の分散液(固形分濃度15.0質量%)を得た。
【0116】
1Lポリエチレン製容器内で、上記により得られた重合体粒子の分散液34.0g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム12質量%水溶液31.5g(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム3.78g)、及び純水223.2gを、32℃で撹拌混合した。これに、3,4-エチレンジオキシチオフェン2.80gを添加して、ホモミキサ(「ロボミックス(登録商標)」、プライミクス株式会社製;4000rpm;以下、同じ。)にて、30分間、乳化混合し、単量体液(A)を調製した(ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの合計含有量:3,4-エチレンジオキシチオフェン1モル当たりスルホン酸ナトリウム基1.9モル)。
【0117】
単量体液(A)291.5gを、ハイシェアミキサ(「マイルダー(登録商標) MDN303V」、大平洋機工株式会社製;5000rpm、32℃)及び循環ポンプが接続されたステンレス製容器に投入し、撹拌翼及びハイシェアミキサで循環させながら撹拌し、ペルオキソ二硫酸ナトリウム5.89g、及び硫酸鉄(III)六水和物の1質量%水溶液6.88gを添加して、重合反応を24時間行い、重合体(複合粒子)含有液(固形分濃度5.80質量%;ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの合計含有量:共役系導電性重合体100質量部に対して261質量部)を得た。
前記複合粒子含有液を純水で1500mLに希釈した後(固形分濃度4.73質量%)、高圧ホモジナイザ(「TwinPanda 600」、Niro Soavi社製;400bar(40MPa);以下、同じ。)にて、45分間、分散処理を施した。さらに、純水を加えて希釈した複合粒子含有液(固形分濃度3.99質量%)1500mLに、高圧ホモジナイザにて、135分間、分散処理を施した。
この複合粒子含有液を、陽イオン交換樹脂125.6mL、及び陰イオン交換樹脂109.9mLにて、3時間、イオン交換して脱塩した(pH1.9、固形分濃度(複合粒子濃度)1.65質量%)。脱塩して得られた複合粒子含有液1000gに、モルホリン7.5g及び純水22.5gを添加し、複合粒子濃度1.6質量%、pH4.7に調整した。さらに、エチレングリコール103g(複合粒子1質量部当たり6.3質量部)を添加して、重合体含有分散液を製造した。
【0118】
(製造例2)重合体粒子を含まない重合体含有分散液の製造
1Lポリエチレン製容器内で、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム12質量%水溶液63.0g(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム7.56g)、及び純水225.7gを、32℃で撹拌混合した。これに、3,4-エチレンジオキシチオフェン2.80gを添加して、ホモミキサにて、30分間、乳化混合し、単量体液(B)を調製した(ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの合計含有量:3,4-エチレンジオキシチオフェン1モル当たりスルホン酸ナトリウム基2.0モル)。
製造例1において、単量体液(A)を単量体液(B)に変更し、また、エチレングリコールを、ジエチレングリコール(複合粒子1質量部当たり9.4質量部)に変更し、それ以外は製造例1と同様にして重合反応以降の操作を行い、重合体含有分散液を製造した。
【0119】
[固体電解コンデンサの製造]
(実施例1)
製造例1で得られた重合体含有分散液(重合体粒子 有)を35℃(液温T1)に保持し、アルミニウム電解コンデンサ素子(耐電圧35V、設計容量400μF)の多孔性陽極体に、室温(25℃)の大気雰囲気下、5分間含浸させた後、熱風乾燥器(「ST-110」、エスペック株式会社製;以下、同じ。)にて、120℃で30分間乾燥させた(1回目の付着工程)。
次いで、同じ重合体含有分散液を5℃(液温T2)に保持し、乾燥させた多孔性陽極体に含浸させた後、熱風乾燥器にて、120℃で30分間乾燥させて(2回目の付着工程)、多孔性陽極体の誘電体酸化被膜の表面に固体電解質層が形成された固体電解コンデンサを製造した。
【0120】
(実施例2~4及び比較例1~6)
表1に示す重合体含有分散液を用い、また、液温T1及び液温T2を変更して、実施例1と同様にして、固体電解コンデンサを製造した。
【0121】
上記実施例及び比較例で製造した各固体電解コンデンサについて、プレシジョンLCRメータ(「E4980A」、アジレント・テクノロジー株式会社製)にて、120Hzでの静電容量[μF]及び等価直列抵抗(ESR)[mΩ]を測定した。
これらの測定結果を表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
表1に示した結果から分かるように、第1の付着工程の液温よりも、5℃超60℃未満低い液温で第2の付着工程を行うことにより(実施例1~4)、静電容量が確保され、かつ、低周波(120Hz)におけるESRがより低い固体電解コンデンサを製造できることが認められた。