(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089377
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】ガイドエクステンションカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/088 20060101AFI20240626BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61M25/088
A61M25/00 610
A61M25/00 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204709
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】日下部 瑛美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 都世志
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 浩二
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA11
4C267BB06
4C267BB07
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB15
4C267BB20
4C267BB40
4C267BB63
4C267CC09
4C267CC19
4C267DD01
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG14
4C267GG34
4C267HH01
4C267HH07
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】プロキシマルシャフトとディスタルシャフトとの接続部分における柔軟性の大幅な低下を回避しつつ、プロキシマルシャフトとディスタルシャフトとの接続強度を適切に調節して設定することも容易となる、新規な構成の接続部分を備えたガイドエクステンションカテーテルを提供する。
【解決手段】ガイドエクステンションカテーテル10において、ディスタルシャフト12が各筒状の内部補強層22および被覆樹脂層24を有しており、プロキシマルシャフト14の遠位端側が内部補強層22よりも外周側に位置して被覆樹脂層24に埋設状態で固着されていると共に、プロキシマルシャフト14の遠位端側には、ディスタルシャフト12の被覆樹脂層24と異なる被着樹脂層30が表面に沿って広がって密着状態で設けられており、被着樹脂層30はプロキシマルシャフト14の遠位端側と共に被覆樹脂層24に埋設されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロキシマルシャフトの先端側にチューブ状のディスタルシャフトが設けられたガイドエクステンションカテーテルにおいて、
前記ディスタルシャフトが各筒状の内部補強層および被覆樹脂層を有しており、前記プロキシマルシャフトの遠位端側が該内部補強層よりも外周側に位置して該被覆樹脂層に埋設状態で固着されていると共に、
該プロキシマルシャフトの該遠位端側には、該ディスタルシャフトの前記被覆樹脂層と異なる被着樹脂層が表面に沿って広がって密着状態で設けられており、
該被着樹脂層は該プロキシマルシャフトの該遠位端側と共に該被覆樹脂層に埋設されているガイドエクステンションカテーテル。
【請求項2】
前記被着樹脂層が、前記プロキシマルシャフトにおいて前記内部補強層に対向する内面側に設けられている請求項1に記載のガイドエクステンションカテーテル。
【請求項3】
前記被着樹脂層が、前記プロキシマルシャフトの前記遠位端側において長さ方向に連続して設けられている請求項1又は2に記載のガイドエクステンションカテーテル。
【請求項4】
前記被着樹脂層が、前記プロキシマルシャフトの周方向で部分的に設けられている請求項1又は2に記載のガイドエクステンションカテーテル。
【請求項5】
前記プロキシマルシャフトの前記遠位端側において樹脂チューブが外挿状態で固着されることによって前記被着樹脂層が構成されている請求項1又は2に記載のガイドエクステンションカテーテル。
【請求項6】
前記樹脂チューブの収縮により該樹脂チューブが前記プロキシマルシャフトの外周面に対して嵌着固定されている請求項5に記載のガイドエクステンションカテーテル。
【請求項7】
前記プロキシマルシャフトの前記遠位端側において樹脂材がコーティングされることによって前記被着樹脂層が構成されている請求項1又は2に記載のガイドエクステンションカテーテル。
【請求項8】
前記被着樹脂層が、前記被覆樹脂層とは硬度の異なる樹脂材である請求項1又は2に記載のガイドエクステンションカテーテル。
【請求項9】
前記被着樹脂層が前記プロキシマルシャフトに固着されており、該プロキシマルシャフトに対する該被着樹脂層の固着強度が、前記プロキシマルシャフトに対する前記被覆樹脂層の固着強度に比して大きい請求項1又は2に記載のガイドエクステンションカテーテル。
【請求項10】
前記被着樹脂層の融点が、前記被覆樹脂層の融点よりも高い請求項1又は2に記載のガイドエクステンションカテーテル。
【請求項11】
前記被着樹脂層と前記被覆樹脂層との間には接着剤層がある請求項1又は2に記載のガイドエクステンションカテーテル。
【請求項12】
前記プロキシマルシャフトの前記遠位端側の表面において前記被着樹脂層が部分的に設けられており、該被着樹脂層から外れた領域で露出した該プロキシマルシャフトの表面にも前記接着剤層がある請求項11に記載のガイドエクステンションカテーテル。
【請求項13】
前記プロキシマルシャフトにおいて前記内部補強層に対向する内面側に前記被着樹脂層と前記接着剤層が設けられている請求項11に記載のガイドエクステンションカテーテル。
【請求項14】
前記プロキシマルシャフトの前記遠位端側は、前記ディスタルシャフトの径方向となる厚さ寸法に比して該ディスタルシャフトの周方向となる幅寸法が大きくされた扁平の断面形状である請求項1又は2に記載のガイドエクステンションカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に際して、治療用カテーテルをより遠位の病変部位まで送達させるために用いられるガイドエクステンションカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば心臓の冠動脈の狭窄や閉塞などに対して、開胸による外科的な治療よりも低侵襲な治療方法として、治療用カテーテルを用いた経皮的冠動脈インターベンションが実施されている。経皮的冠動脈インターベンションは、治療用カテーテルをガイディングカテーテルによって冠動脈における狭窄などの病変部位まで案内し、ガイディングカテーテルの遠位側で病変部位まで送達された治療用カテーテルによって治療を行う手技である。
【0003】
そして、血管の湾曲等の理由によりガイディングカテーテルだけで病変部位の近傍まで治療用カテーテルを送達させるのが困難な場合、ガイディングカテーテルにガイドエクステンションカテーテルを挿通し、このガイドエクステンションカテーテルを利用して治療用カテーテルをより遠位の病変部位に送達させることが提案されている。このようなガイドエクステンションカテーテルとしては、欧州特許第2895227号明細書(特許文献1)や国際公開第2022/158417号(特許文献2)に記載のものが提案されており、例えばプロキシマルシャフトの先端側にディスタルシャフトが設けられた構造を有している。かかるガイドエクステンションカテーテルにおいて、プロキシマルシャフトの遠位端側におけるディスタルシャフトとの接続部分には、固定強度や柔軟性などが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第2895227号明細書
【特許文献2】国際公開第2022/158417号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1には、プロキシマルシャフトの遠位端側をディスタルシャフトの内部補強材に対して直接に重ねて固着した構造が開示されているが、例えば金属ブレード等の内部補強材に対して金属シャフト等のプロキシマルシャフトの遠位端側を直接に重ねて固着すると要求される柔軟性の確保が難しくなるおそれがあった。また、何れも金属からなる内部補強材とプロキシマルシャフトとが直接に接触することに起因して硬度差による摩耗や変形などのリスクもあり、材質の選択範囲が制限されるおそれもあった。
【0006】
さらに、特許文献2には、ディスタルシャフトの最外周を全周に広がる被覆樹脂層(外層)に対して、線状シャフト(プロキシマルシャフト)を埋設状態で配した構造が開示されている。しかしながら、外層は外部に露出するものであることから、使用の環境や条件などによって外層の材質の選定が制限されてしまい、外層(ディスタルシャフト)とプロキシマルシャフトとの接続強度の調節などが難しくなるおそれがあった。
【0007】
本発明の解決課題は、プロキシマルシャフトとディスタルシャフトとの接続部分における柔軟性の大幅な低下を回避しつつ、プロキシマルシャフトとディスタルシャフトとの接続強度を適切に調節して設定することも容易となる、新規な構成の接続部分を備えたガイドエクステンションカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0009】
第1の態様は、プロキシマルシャフトの先端側にチューブ状のディスタルシャフトが設けられたガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記ディスタルシャフトが各筒状の内部補強層および被覆樹脂層を有しており、前記プロキシマルシャフトの遠位端側が該内部補強層よりも外周側に位置して該被覆樹脂層に埋設状態で固着されていると共に、該プロキシマルシャフトの該遠位端側には、該ディスタルシャフトの前記被覆樹脂層と異なる被着樹脂層が表面に沿って広がって密着状態で設けられており、該被着樹脂層は該プロキシマルシャフトの該遠位端側と共に該被覆樹脂層に埋設されているものである。
【0010】
本態様によれば、プロキシマルシャフトの遠位端側には被覆樹脂層と異なる被着樹脂層が表面に沿って広がって密着状態で設けられていると共に、被着樹脂層はプロキシマルシャフトの遠位端側と共に被覆樹脂層に埋設されている。即ち、プロキシマルシャフトの遠位端側は、特許文献1のように金属製の内部補強材と固着されることがなく、何れも合成樹脂製とされた被覆樹脂層及び被着樹脂層に覆われている。それ故、金属部材同士が接続されることに伴う柔軟性の低下が回避され得る。
【0011】
また、特許文献2では、プロキシマルシャフトと外層との固着は実質的に金属と樹脂との固着であったが、本態様では、プロキシマルシャフトの遠位端側に密着状態で設けられる被着樹脂層がプロキシマルシャフトの表面に沿って広がってある程度の領域を有している。それ故、本態様においても被覆樹脂層が外部に露出する場合には、その材質の選定にある程度の制限がかかるが、プロキシマルシャフトと被覆樹脂層とは被着樹脂層を介して固着されて、要するにこれら被着樹脂層と被覆樹脂層との樹脂同士の固着によっても達成される。これにより、本態様では、特許文献2に比べてディスタルシャフトとプロキシマルシャフトとを良好な接続強度をもって接続することができる。
【0012】
なお、本発明において「固着」とは固定方法が接着や溶着に限定されるものではなく、固定方法に拘らず、2つの部材又は部位が、しっかりとくっついた状態をいう。
【0013】
第2の態様は、前記第1の態様に係るガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記被着樹脂層が、前記プロキシマルシャフトにおいて前記内部補強層に対向する内面側に設けられているものである。
【0014】
本態様によれば、被着樹脂層によりプロキシマルシャフトと内部補強層との直接的な接触を防止することができて、これらの直接的な接触に伴う曲げ硬さの過度な増大が回避され得る。
【0015】
第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係るガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記被着樹脂層が、前記プロキシマルシャフトの前記遠位端側において長さ方向に連続して設けられているものである。
【0016】
本態様によれば、被着樹脂層がある程度の長さ寸法をもって設けられることから、被着樹脂層と被覆樹脂層との固着強度、ひいてはディスタルシャフトとプロキシマルシャフトとの接続強度を安定して確保することができる。
【0017】
第4の態様は、前記第1~第3の何れか1つの態様に係るガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記被着樹脂層が、前記プロキシマルシャフトの周方向で部分的に設けられているものである。
【0018】
本態様によれば、例えば被着樹脂層がプロキシマルシャフトの周方向で全周にわたって設けられる場合に比べて、被着樹脂層が設けられる領域が小さくなり、被着樹脂層を覆う被覆樹脂層、ひいてはディスタルシャフトの小径化が図られる。
【0019】
第5の態様は、前記第1~第3の何れか1つの態様に係るガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記プロキシマルシャフトの前記遠位端側において樹脂チューブが外挿状態で固着されることによって前記被着樹脂層が構成されているものである。
【0020】
本態様によれば、被着樹脂層がプロキシマルシャフトの周方向で全周にわたって設けられることから、被着樹脂層と被覆樹脂層とをより強固に固着させることができる。特に、被着樹脂層は外部に露出しないことから材質をより自由に選択することができ、被着樹脂層の材質として、例えば金属と親和性の高い(固着力の大きい)材質を採用することもできる。これにより、プロキシマルシャフトと被覆樹脂層との固着を被着樹脂層を介した樹脂同士の固着により達成することができて、プロキシマルシャフトとディスタルシャフトをより強固に接続することができる。
【0021】
また、例えば特許文献2に記載のカテーテルでは、湾曲した血管に挿入されて曲げられた際にプロキシマルシャフトが外層(被覆樹脂層)を破り、プロキシマルシャフトとディスタルシャフトとの接続部における接続強度の低下や樹脂バリの発生に繋がるおそれがあったが、被着樹脂層がプロキシマルシャフトの全周にわたって設けられることで、例えばガイドエクステンションカテーテルを曲げた際に、被覆樹脂層に破れが発生したり、プロキシマルシャフトが当該破れを通じて外部へ露出することが防止される。特に、プロキシマルシャフトが矩形断面とされる場合には角部から破れが発生するおそれがあったが、プロキシマルシャフトを全周にわたって被着樹脂層で覆うことで角部から破れが発生するおそれを効果的に低減することができる。
【0022】
第6の態様は、前記第5の態様に係るガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記樹脂チューブの収縮により該樹脂チューブが前記プロキシマルシャフトの外周面に対して嵌着固定されているものである。
【0023】
本態様によれば、プロキシマルシャフトの遠位端側において、樹脂チューブを容易に外挿状態で固着することができる。なお、樹脂チューブにおける収縮は、樹脂チューブに対して熱を加えることで径方向に収縮させる熱収縮であってもよいし、熱を加えて、又は熱を加えずに軸方向に変形させる延伸収縮であってもよい。
【0024】
第7の態様は、前記第1~第4の何れか1つの態様に係るガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記プロキシマルシャフトの前記遠位端側において樹脂材がコーティングされることによって前記被着樹脂層が構成されているものである。
【0025】
本態様によれば、プロキシマルシャフトに対して被着樹脂層を容易に固着させることができて、プロキシマルシャフトと被覆樹脂層との被着樹脂層を介することによる樹脂同士の固着を安定して達成することができる。なお、樹脂材のコーティングは、プロキシマルシャフトにおける周方向の全周であってもよいし、周方向の一部であってもよいが、周方向の全周にわたって設けられることで、例えばガイドエクステンションカテーテルを曲げた際に、被覆樹脂層の破れに伴うプロキシマルシャフトとディスタルシャフトとの接続強度の低下や樹脂バリの発生のおそれが低減されたり、プロキシマルシャフトが当該破れを通じて外部へ露出することが防止される。特に、プロキシマルシャフトが矩形断面とされる場合にも角部が被覆樹脂層で覆われることから、被覆樹脂層の破れがより効果的に防止され得る。
【0026】
第8の態様は、前記第1~第7の何れか1つの態様に係るガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記被着樹脂層が、前記被覆樹脂層とは硬度の異なる樹脂材であるものである。
【0027】
本態様によれば、被着樹脂層及び被覆樹脂層の硬度を適切に設定することによって、被着樹脂層の採用に伴うディスタルシャフト及び/又はプロキシマルシャフトの剛性の増大を抑制するなど、曲げ強度等の特性を適切にチューニングすることができる。
【0028】
第9の態様は、前記第1~第8の何れか1つの態様に係るガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記被着樹脂層が前記プロキシマルシャフトに固着されており、該プロキシマルシャフトに対する該被着樹脂層の固着強度が、前記プロキシマルシャフトに対する前記被覆樹脂層の固着強度に比して大きいものである。
【0029】
本態様によれば、プロキシマルシャフトに対する固着強度が大きい被着樹脂層を採用したことで、プロキシマルシャフトの被覆樹脂層に対する直接乃至は間接的な固定強度をより効率的に調節設定することなどが可能になる。例えば、プロキシマルシャフトに対する被着樹脂層の固着領域の大きさを変更することにより固着強度の調節範囲が大きくされて、プロキシマルシャフトにおいて被覆樹脂層に対する直接的な固着力や被着樹脂層を介しての固着力などを考慮した固着力の総合的な設定自由度も大きく確保され得る。また、万が一、体内でプロキシマルシャフトとディスタルシャフトとが破断した場合にも、被着樹脂層がプロキシマルシャフトから分離して体内に残留することがなく、被着樹脂層をプロキシマルシャフトと共に体外へ回収することもできる。
【0030】
第10の態様は、前記第1~第9の何れか1つの態様に係るガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記被着樹脂層の融点が、前記被覆樹脂層の融点よりも高いものである。
【0031】
本態様によれば、被覆樹脂層を成形するに際して成形用のキャビティ内に、予め被着樹脂層が設けられたプロキシマルシャフトをセットすることができて、ガイドエクステンションカテーテルの製造を容易に行うことができる。特に、被着樹脂層がプロキシマルシャフトにおいて内部補強層に対向する内面側に設けられる場合には、被覆樹脂層の成形に際して被着樹脂層が溶融することに伴ってプロキシマルシャフトと内部補強層とが相互に接触することが回避され得る。
【0032】
第11の態様は、前記第1~第10の何れか1つの態様に係るガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記被着樹脂層と前記被覆樹脂層との間には接着剤層があるものである。
【0033】
本態様によれば、被着樹脂層と被覆樹脂層とを接着剤層を介してより強固に接着することができる。また、接着剤層を、滑らかな金属製のプロキシマルシャフトの表面ではなく、例えば合成樹脂製の被着樹脂層の表面に設けることで、接着剤層による接着効果の向上が図られる。
【0034】
第12の態様は、前記第11の態様に係るガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記プロキシマルシャフトの前記遠位端側の表面において前記被着樹脂層が部分的に設けられており、該被着樹脂層から外れた領域で露出した該プロキシマルシャフトの表面にも前記接着剤層があるものである。
【0035】
本態様によれば、例えば予め部分的に被着樹脂層が設けられたプロキシマルシャフトの表面における全面にわたって接着剤を塗布等することにより、プロキシマルシャフトにおいて被着樹脂層が設けられた領域および被着樹脂層から外れた領域の両方に接着剤層を設けることができて、接着剤層を容易に設けることができる。これにより、被着樹脂層と被覆樹脂層だけでなく、プロキシマルシャフトと被覆樹脂層との固着強度の向上も図られる。
【0036】
第13の態様は、前記第11の態様に係るガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記プロキシマルシャフトにおいて前記内部補強層に対向する内面側に前記被着樹脂層と前記接着剤層が設けられているものである。
【0037】
本態様によれば、プロキシマルシャフトと内部補強層との間には被着樹脂層に加えて接着剤層が位置していることから、何れも金属により形成されることが多いプロキシマルシャフトと内部補強層とが相互に接触するおそれがより低減され得る。
【0038】
第14の態様は、前記第1~第13の何れかの態様に係るガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記プロキシマルシャフトの前記遠位端側は、前記ディスタルシャフトの径方向となる厚さ寸法に比して該ディスタルシャフトの周方向となる幅寸法が大きくされた扁平の断面形状であるものである。
【0039】
本態様によれば、プロキシマルシャフトの遠位端側において厚さ寸法が比較的小さくされることで、ディスタルシャフトの大径化を抑制することができる。また、プロキシマルシャフトの遠位端側において幅寸法を比較的大きく設定することにより、プロキシマルシャフトと被着樹脂層及び/又は被覆樹脂層との固着面積をより大きく確保することができて、プロキシマルシャフトとディスタルシャフトとをより良好な接続強度をもって接続することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明おけるガイドエクステンションカテーテルによれば、プロキシマルシャフトと内部補強層との金属部材同士の接続に伴う柔軟性の低下を回避しつつ、プロキシマルシャフトと被覆樹脂層との固着を被着樹脂層を介することで樹脂部材同士の固着により達成することができて、プロキシマルシャフトとディスタルシャフトとを良好な接続強度をもって接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の第1の実施形態としてのガイドエクステンションカテーテルを示す側面図
【
図2】
図1のガイドエクステンションカテーテルの要部を拡大して示す縦断面図
【
図3】
図2におけるIII-III断面を拡大してモデル的に示す横断面図
【
図4】
図1のガイドエクステンションカテーテルを含むカテーテル組立体の側面図
【
図6】本発明の第2の実施形態としてのガイドエクステンションカテーテルを示す横断面図であって、
図3に対応する図
【
図7】本発明の第3の実施形態としてのガイドエクステンションカテーテルを示す横断面図であって、
図3に対応する図
【
図8】本発明に係るガイドエクステンションカテーテルを構成するプロキシマルシャフトの横断面における別の具体例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0043】
図1~3には、本発明の第1の実施形態として、冠動脈の治療等に用いられるガイドエクステンションカテーテル10が示されている。ガイドエクステンションカテーテル10は、ラピッドエクスチェンジ型のカテーテルであって、ディスタルシャフト12とプロキシマルシャフト14とを備えており、プロキシマルシャフト14の先端側にチューブ状のディスタルシャフト12が設けられている。以下の説明において、先端側又は遠位端側とは、使用者が把持して操作する側とは反対側であり、
図1中の左側をいう。また、基端側又は近位端側とは、使用者が把持して操作する側であり、
図1中の右側をいう。更に、軸方向とはディスタルシャフト12及びプロキシマルシャフト14の中心軸方向となる
図1中の左右方向をいう。なお、図中において、各部材は厚さ寸法等を誇張して示す場合がある。
【0044】
ディスタルシャフト12は、略円筒形状のチューブであって、例えば軟質の合成樹脂等によって形成されている。ディスタルシャフト12は、本体部分16と、本体部分16よりも先端側に設けられる先端チップ18とを、備えている。先端チップ18は、本体部分16の先端に対して、例えば接着や溶着等により固着され得る。
【0045】
ディスタルシャフト12の本体部分16は、所謂ブレードチューブであって、例えば、
図2,3に示すように、それぞれ略筒状とされた内層20と内部補強層22と外層24とを有しており、内部補強層22の内周側に内層20が位置していると共に、内部補強層22が外層24により外周側から被覆されている。これら内層20と外層24とは合成樹脂製とされていると共に、内部補強層22は、金属や合成樹脂製の編組体から構成されており、本実施形態では、金属製の素線が略メッシュ筒状に編組された構造とされている。
【0046】
すなわち、本体部分16は、内層20と外層24との間に内部補強層22が配された構造を有しており、内層20と外層24とが例えば接着や溶着等によって固着される或いは一体的に成形されることで、内部補強層22が埋設状態で設けられている。これら内層20と外層24とはそれぞれ異なる樹脂材料で形成されてもよいし、同じ樹脂材料で形成されてもよい。内層20と外層24とは、例えばフッ素系、ポリアミド系、ポリエステル系、ウレタン系等の合成樹脂又はエラストマーによって形成される。本実施形態では、外層24がアルケマ社製「Pebax(登録商標)」により形成されている。本体部分16は、このような3層構造とされることにより、曲げ方向の柔軟性を有していると共に、軸方向における荷重の伝達効率の向上が図られており、湾曲に対する追従性と、挿入時のプッシャビリティとが両立して実現されている。なお、内部補強層22の軸方向寸法は、本体部分16の軸方向寸法よりも小さくされており、本体部分16の基端部には、内部補強層22を介さずに内層20と外層24とが径方向で重なり合う領域が設けられている。また、内部補強層22よりも基端側において、内層20と外層24の径方向間には、リング状又はC字状のマーカー25が設けられている。マーカー25としては、例えば公知の金属マーカー等が採用され得る。
【0047】
また、本実施形態では、ディスタルシャフト12がコーティング層26を備えている。コーティング層26は、親水性ポリマーによって形成されており、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体(VEMA)、アクリル系やヒアルロン酸系のコーティング材などによって形成され得る。本実施形態では、コーティング層26が先端チップ18と本体部分16の外周面とを覆って設けられており、ディスタルシャフト12の外周面において、ディスタルシャフト12の軸方向においてプロキシマルシャフト14の先端より遠位側に設けられている。尤も、このようなコーティング層26は必須なものではなく、コーティング層26が設けられない場合、外層24は、例えば生体親和性を有する合成樹脂により形成される。
【0048】
プロキシマルシャフト14は、医療用ステンレス等の金属製の線材(ワイヤー)によって構成されている。プロキシマルシャフト14の基端側には、プロキシマルシャフト14の基端に対する施術者等の接触を防ぐ板状の保護部材27が設けられている。また、例えば施術者(使用者)が保護部材27を把持等することでガイドエクステンションカテーテル10を操作することができるようになっていてもよい。プロキシマルシャフト14は、外周面に滑り性や耐食性の向上などを目的とするコーティングが施され得る。
【0049】
プロキシマルシャフト14の先端部分は、ディスタルシャフト12の本体部分16の外周面に重ね合わされており、本体部分16に外挿状態で固着されるカバー層28によって本体部分16に連結されている。カバー層28は、合成樹脂などで形成されており、例えば、プロキシマルシャフト14の先端部分が重ね合わされた本体部分16の基端部分に外挿された状態で、加熱等の手段によって収縮変形させられる。これにより、カバー層28は、ディスタルシャフト12の本体部分16の基端部分及びプロキシマルシャフト14の先端部分に密着して固定されている。このようにカバー層28が設けられることによって、ディスタルシャフト12の本体部分16の基端部分とプロキシマルシャフト14の先端部分とがカバー層28によって相互に固定されており、プロキシマルシャフト14の先端部分がディスタルシャフト12の基端部分に連結されている。
【0050】
本実施形態では、外層24とカバー層28の材質が相互に同じ(それぞれ「Pebax」)であり、熱溶着により一体化されている。即ち、本実施形態では、プロキシマルシャフト14の先端部分が、外層24とカバー層28とが一体化することにより形成された被覆樹脂層29により覆われて固定されている。また、カバー層28は、本体部分16の基端部分においてプロキシマルシャフト14よりも先端側まで設けられており、本体部分16の基端部分における外周面を構成している。これにより、ディスタルシャフト12の基端部分には、外周面にコーティング層26のない領域が設けられている。なお、外層とカバー層の材質は相互に異なっていてもよく、プロキシマルシャフトの先端部分を覆う被覆樹脂層は径方向内外の2層構造とされていてもよい。外層とカバー層の材質が相互に異ならされて被覆樹脂層が2層構造とされる場合において、外層とカバー層との境界を、
図2,3において二点鎖線で示す。尤も、被覆樹脂層29の形成方法は上記の方法に限定されるものではなく、例えば被覆樹脂層の成形キャビティ内にプロキシマルシャフトと内部補強層(及び必要に応じて内層)がインサートされた状態で被覆樹脂層を成形することで、被覆樹脂層は、プロキシマルシャフトと内部補強層を一体的に備える一体成形品として形成されてもよい。
【0051】
図2,3に示されるように、プロキシマルシャフト14は、ディスタルシャフト12との接続部分である遠位端側が、内部補強層22よりも外周側に位置して、被覆樹脂層29に埋設状態で固着されている。プロキシマルシャフト14において、被覆樹脂層29に埋設状態で固着されている領域は、ある程度の軸方向長さを有している。プロキシマルシャフト14の遠位端側において被覆樹脂層29に埋設されている領域の断面形状は限定されるものではないが、本実施形態では、ディスタルシャフト12の径方向となる厚さ寸法(
図3中の上下方向寸法)に比して、ディスタルシャフト12の周方向となる幅寸法(
図3中の左右方向寸法)の方が大きな略扁平な矩形状とされている。
【0052】
なお、プロキシマルシャフト14の断面形状は軸方向の全長にわたって同一(本実施形態の場合、略扁平な矩形状)であってもよいが、被覆樹脂層29に埋設されている領域とそれより基端側とで異ならされていてもよく、例えばプロキシマルシャフト14において被覆樹脂層29(ディスタルシャフト12)より基端側の領域が略円形の断面形状を有していてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、プロキシマルシャフト14の遠位端側が、内層20及び内部補強層22に対して
図2,3中の下方に位置しており、被覆樹脂層29は、
図3中の上方に比して
図3中の下方が厚肉に形成されている。これにより、被覆樹脂層29は、外形が全体として略楕円形又は略卵形とされた横断面を有しており、被覆樹脂層29の内部に位置する内層20及び内部補強層22が、中心よりも
図3中の上方に偏倚して設けられている。
【0054】
そして、プロキシマルシャフト14の遠位端側には、ディスタルシャフト12の被覆樹脂層29とは異なる被着樹脂層30が表面に沿って広がって密着状態で設けられている。かかる被着樹脂層30は、プロキシマルシャフト14の遠位端側と共に被覆樹脂層29に埋設されている。この被着樹脂層30は、例えばプロキシマルシャフト14において被覆樹脂層29に埋設された領域よりは短い長さ寸法をもって設けられており、ある程度の軸方向長さにわたって連続して設けられている。具体的には、例えばプロキシマルシャフト14が本実施形態のような横断面形状を有する場合、被着樹脂層30は、プロキシマルシャフト14の先端からマーカー25の基端に至る領域まで設けられてもよい。或いは、プロキシマルシャフト14が円形断面を有する場合、被着樹脂層30は、プロキシマルシャフト14の先端からマーカー25の先端に至る領域まで設けられてもよい。これにより、被覆樹脂層29(ディスタルシャフト12)、ひいてはガイドエクステンションカテーテル10の大径化が抑制される。なお、被着樹脂層30の長さ寸法は限定されるものではなく、プロキシマルシャフト14の表面において被覆樹脂層29(ディスタルシャフト12)から基端側に突出して設けられていてもよい。
【0055】
本実施形態では、被着樹脂層30が、プロキシマルシャフト14において内部補強層22に対向する内面側(
図3中の上側)に設けられており、略矩形断面を有し、且つある程度の軸方向長さを有する略フィルム状に形成されている。即ち、本実施形態では、被着樹脂層30が、プロキシマルシャフト14の表面において周方向で部分的に設けられている。
【0056】
被着樹脂層30の材質は合成樹脂であれば限定されるものではないが、例えばディスタルシャフト12における被覆樹脂層29とは異なる樹脂材料を採用することができ、本実施形態では、ポリエチレンテレフタレート(PET)により形成されている。これにより、例えば被着樹脂層30と被覆樹脂層29の硬度を相互に異ならせることができる。或いは、被着樹脂層30は、被覆樹脂層29と同種の樹脂材料により形成されてもよく、本実施形態の場合、被覆樹脂層29と同じ「Pebax」が採用されてもよい。その場合、例えば樹脂材料(本実施形態の場合、「Pebax」)のグレードが異ならされることで、被着樹脂層30と被覆樹脂層29の硬度が相互に異ならされていてもよい。なお、被着樹脂層30と被覆樹脂層29の硬度は何れも限定されるものではないが、例えば被着樹脂層30は、被覆樹脂層29に比して柔軟な材質により形成されてもよい。これにより、被着樹脂層30の形成領域(ディスタルシャフト12とプロキシマルシャフト14の接続部分)において、剛性が局所的に増大してガイドエクステンションカテーテル10が曲がりにくくなるおそれが低減される。或いは、被着樹脂層30は、被覆樹脂層29に比して硬い材質により形成されてもよい。これにより、プッシャビリティや耐キンク性の向上を図ることもできる。
【0057】
また、本実施形態の被着樹脂層30は、プロキシマルシャフト14と同様に略扁平な矩形状断面を有している。被着樹脂層30の厚さ寸法(
図3中の上下方向寸法)は限定されるものではないが、プロキシマルシャフト14及びディスタルシャフト12の変形を阻害しない程度の厚さ寸法であることが好ましく、被着樹脂層30の材質がPETである場合、例えば20μm~40μmの範囲内とされ得て、本実施形態では、被着樹脂層30の厚さ寸法が30μmとされている。被着樹脂層30の厚さ寸法が上記範囲内に設定されることで、被着樹脂層30の形成領域(ディスタルシャフト12とプロキシマルシャフト14の接続部分)における変形を阻害することなく曲げ強度等を適切に調節することができて、プッシャビリティや耐キンク性の向上を図ることもできる。
【0058】
かかる被着樹脂層30はプロキシマルシャフト14とは別体として形成されて、形成後、接着剤からなる接着剤層32を介してプロキシマルシャフト14に固着される。これにより、被着樹脂層30とプロキシマルシャフト14とは一体とされて、これら被着樹脂層30及びプロキシマルシャフト14が被覆樹脂層29に埋設されて固着されている。本実施形態では、被着樹脂層30と被覆樹脂層29との間、及びプロキシマルシャフト14における被着樹脂層30から外れた領域で露出した表面(プロキシマルシャフト14における
図3中の左右方向両側及び下方)と被覆樹脂層29との間にも接着剤層34が設けられている。これにより、被着樹脂層30と被覆樹脂層29とが接着剤層34を介して固着されていると共に、プロキシマルシャフト14と被覆樹脂層29とが接着剤層34を介して固着されている。なお、接着剤層32や接着剤層34を構成する接着剤は限定されるものではないが、例えばウレタン樹脂系接着剤やエポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、変性ポリオレフィン系接着剤等が好適に採用され得る。
【0059】
特に、本実施形態では、一体とされた被着樹脂層30とプロキシマルシャフト14とが接着剤層34を構成する樹脂中に浸漬されるか又は接着剤層34を構成する樹脂を刷毛塗りすることで、被着樹脂層30及びプロキシマルシャフト14の表面における略全面にわたって接着剤層34が構成されている。この結果、プロキシマルシャフト14において内部補強層22に対向する内面側(
図3中の上側)に被着樹脂層30及び接着剤層34が設けられている。
【0060】
そして、表面に接着剤層34が設けられた被着樹脂層30及びプロキシマルシャフト14が、内層20と内部補強層22と外層24とからなる本体部分16の基端部分の外周面に対して重ね合わされた状態で、カバー層28を外挿して熱溶着を行うことで、外層24とカバー層28とが溶融一体化して被覆樹脂層29が形成されると共に、かかる被覆樹脂層29の形成と同時に被着樹脂層30及びプロキシマルシャフト14が接着剤層34を介して被覆樹脂層29に固着されるようになっている。したがって、本実施形態では、被着樹脂層30の融点が被覆樹脂層29の融点よりも高くされている。これにより、内部に被着樹脂層30を有する状態で外層24とカバー層28とを溶融一体化したり、被着樹脂層30及びプロキシマルシャフト14を被覆樹脂層29の成形キャビティ内にインサートした状態で、被覆樹脂層29を成形することができる。なお、被着樹脂層30と内部補強層22との間には被覆樹脂層29(例えば、外層24)が設けられてもよいし、被着樹脂層30と内部補強層22とは、直接的に又は接着剤層34を介して接触してもよい。
【0061】
また、プロキシマルシャフト14に対する被着樹脂層30の固着強度は、プロキシマルシャフト14に対する被覆樹脂層29の固着強度に比して大きくされていてもよい。具体的には、接着剤層32を介したプロキシマルシャフト14と被着樹脂層30との固着強度が、接着剤層34を介したプロキシマルシャフト14と被覆樹脂層29との固着強度よりも大きくされていてもよい。かかる固着強度は、例えば接着剤層32及び接着剤層34を構成する接着剤の材質や接着剤の塗布面積等により適切に設定され得る。これにより、ディスタルシャフト12からプロキシマルシャフト14を引き剥がした際に、プロキシマルシャフト14と被着樹脂層30とが相互に固着した状態でディスタルシャフト12から引き剥がされる。それ故、万が一、体内でプロキシマルシャフト14とディスタルシャフト12とが破断した場合にも、被着樹脂層30が分離して体内に残留することなく、プロキシマルシャフト14と共に体外へ回収され得る。
【0062】
かくの如き構造とされたガイドエクステンションカテーテル10は、
図4に示すように、ガイディングカテーテル36に挿入されて使用される。ガイディングカテーテル36は、従来公知のものが適宜に採用可能である。ガイディングカテーテル36は、湾曲可能な筒状のカテーテル本体38を備えている。カテーテル本体38は、ガイドエクステンションカテーテル10の本体部分16と同様に、金属製の補強材(編組体)が埋設された合成樹脂製のチューブとされている。また、カテーテル本体38の先端には、造影剤が配合される等してX線不透過性とされた造影マーカー40が設けられている。
【0063】
カテーテル本体38の基端側には、Yコネクタ42が設けられている。Yコネクタ42内には、図示しない逆止弁が設けられており、血液の逆流が阻止されるようになっている。また、Yコネクタ42は、本体部分から分岐するサイドアーム44が設けられており、サイドアーム44を通じて、薬液や造影剤等の注入が可能とされている。
【0064】
ガイドエクステンションカテーテル10には、治療用カテーテルとしてのバルーンカテーテル46が挿入される。バルーンカテーテル46は、従来公知の構造が採用可能であり、後述する冠動脈52の狭窄部54に挿通された状態で先端部分に設けられたバルーン48を膨らませることによって、狭窄部54をバルーン48によって押し広げるものである。なお、治療用カテーテルは、狭窄部54をバルーン48によって押し広げるバルーンカテーテル46に限定されない。具体的には、例えば、外周面に刃が設けられたカッティングバルーンを備えるカッティングバルーンカテーテル、狭窄部54にステントを留置するステントデリバリーカテーテル、狭窄病変を削り取って狭窄を解消するアテレクトミーカテーテル及びローターブレーターなど、各種公知の治療用カテーテルが採用され得る。
【0065】
そして、ガイディングカテーテル36、ガイドエクステンションカテーテル10、バルーンカテーテル46を含んでカテーテル組立体50が構成されている。カテーテル組立体50において、ガイディングカテーテル36にガイドエクステンションカテーテル10が挿入されていると共に、ガイドエクステンションカテーテル10にバルーンカテーテル46が挿入されている。
【0066】
このようなカテーテル組立体50は、例えば、経皮的冠動脈形成術(PTCA)により心臓の冠動脈52内の狭窄部54を拡張する際に用いられる。以下には、参考のために、経大腿動脈アプローチによる手技にカテーテル組立体50を用いる例について簡単に説明する。
【0067】
先ず、施術者は、患者の大腿動脈56を図示しない針で穿刺し、
図5に示すように、穿刺箇所から大腿動脈56にシース58を挿入する。施術者は、シース58から大腿動脈56内へ差し入れられたガイディングカテーテル36を上行大動脈60へ挿入し、ガイディングカテーテル36の先端を冠動脈52の入口に配置する。
【0068】
次に、施術者は、ガイディングカテーテル36に挿通されたガイドワイヤ62にガイドエクステンションカテーテル10を外挿し、ガイドワイヤ62に沿ってガイディングカテーテル36内を押し進められたガイドエクステンションカテーテル10のディスタルシャフト12の先端部分を、ガイディングカテーテル36の先端から突出させる。これにより、ディスタルシャフト12を冠動脈52内へ挿入して、ディスタルシャフト12の先端を冠動脈52内の狭窄部54の手前に位置させる。
【0069】
ディスタルシャフト12の先端を構成する先端チップ18は、例えば、酸化ビスマスやタングステン等のX線不透過性材料からなる粉体が造影剤として混入された樹脂によって形成されており、全体がX線透視下で確認可能なマーカー部とされている。これにより、施術者は、例えば、先端チップ18の位置をX線撮像を表示するモニターで確認しながら、ガイドエクステンションカテーテル10を操作することにより、冠動脈52内へ挿入したガイドエクステンションカテーテル10を病変部位まで到達させることができる。
【0070】
その後、施術者は、ガイドワイヤ62に外挿されたバルーンカテーテル46を、ガイドエクステンションカテーテル10のディスタルシャフト12に挿通する。そして、バルーンカテーテル46に設けられたバルーン48をディスタルシャフト12の遠位側へ突出させて、狭窄部54に送達する。狭窄部54に差し入れられたバルーン48を狭窄部54の内周で膨張させて、狭窄部54をバルーン48で押し広げることにより、冠動脈52の血流の回復が図られる。バルーンカテーテル46の挿入時に用いられるガイドワイヤ62は、ガイドエクステンションカテーテル10の挿入時に用いられるガイドワイヤ62と異なっていてもよい。例えば、ガイドエクステンションカテーテル10のガイディングカテーテル36への挿通完了後に、より細いガイドワイヤ62に挿し替えて、バルーンカテーテル46をガイドエクステンションカテーテル10に挿通することもできる。
【0071】
以上、経大腿動脈アプローチによる手技にカテーテル組立体50を用いる例について説明したが、例えば、カテーテル組立体50を経橈骨動脈アプローチや経上腕動脈アプローチによる手技に用いることも可能である。
【0072】
上述のように、ガイドエクステンションカテーテル10は、冠動脈52の入口に配されるガイディングカテーテル36の先端から突出して、狭窄部54の手前まで冠動脈52に挿入されることで、バルーンカテーテル46などの治療用カテーテルを狭窄部54まで導くことができるようになっている。
【0073】
ここで、本実施形態のガイドエクステンションカテーテル10によれば、プロキシマルシャフト14の遠位端側において、プロキシマルシャフト14の表面において被着樹脂層30が一体的に設けられており、これらプロキシマルシャフト14及び被着樹脂層30が被覆樹脂層29に埋設されている。これにより、ディスタルシャフト12とプロキシマルシャフト14との接続が、被覆樹脂層29(外層24及び/又はカバー層28)と被着樹脂層30との樹脂同士の固着とされ得て、例えば特許文献1のように金属部材同士の接続によりガイドエクステンションカテーテル10の剛性が局所的に増大して、ディスタルシャフト12とプロキシマルシャフト14との接続部分において曲がりにくくなるおそれが低減され得る。
【0074】
また、被着樹脂層30がプロキシマルシャフト14において内部補強層22に対向する内面側に設けられていることから、プロキシマルシャフト14と内部補強層22との接触がより確実に回避される。これにより、内部補強層22と接触することによりプロキシマルシャフト14の変形が阻害される等のおそれが低減され得る。
【0075】
さらに、被着樹脂層30は長さ方向(軸方向)で連続して設けられており、被覆樹脂層29との接触面積が大きく確保されている。これにより、被着樹脂層30と被覆樹脂層29との固着力が向上され得る。そして、かかる被着樹脂層30は、プロキシマルシャフト14の周方向で部分的(内部補強層22に対向する内面側)に設けられていることから、プロキシマルシャフト14と一体化された際にもそれらの厚さ寸法が大きくなり過ぎることがなく、被覆樹脂層29が過度に大径化されることが回避される。
【0076】
更にまた、被着樹脂層30は、被覆樹脂層29とは硬度の異なる樹脂材であることが好ましい。例えば、被着樹脂層30をプロキシマルシャフト14の変形を阻害しないような柔軟な材質で形成するなど、被着樹脂層30及び被覆樹脂層29の硬度を適切に設定することで、ディスタルシャフト12とプロキシマルシャフト14との接続部分における柔軟性を調節することができる。
【0077】
また、プロキシマルシャフト14に対する被着樹脂層30の固着強度は、プロキシマルシャフト14に対する被覆樹脂層29の固着強度に比して大きくされることが好ましい。プロキシマルシャフト14と被着樹脂層30とが比較的強固に固着されることで、プロキシマルシャフト14と被覆樹脂層29の固着強度が比較的小さい場合でも、被着樹脂層30を介したプロキシマルシャフト14と被覆樹脂層29の固着が安定して実現され得る。なお、本実施形態では、プロキシマルシャフト14と被覆樹脂層29との間に接着剤層34が設けられているが、接着剤層34を設けても金属と樹脂との固着強度は十分には大きくならない場合があり、例えば被着樹脂層30(又は接着剤層32)の材質として金属に固着しやすい材質を採用することで、プロキシマルシャフト14と被着樹脂層30との固着力の向上を図りつつ、且つ被着樹脂層30と被覆樹脂層29との樹脂同士の固着を強固に達成することができる。また、万が一、体内でプロキシマルシャフト14とディスタルシャフト12とが破断した場合にも、被着樹脂層30の離脱を効果的に防止することができる。
【0078】
さらに、本実施形態では、被着樹脂層30の融点が、被覆樹脂層29の融点よりも高くされている。これにより、被覆樹脂層29を形成する際に、内部に被着樹脂層30を有した状態で外層24とカバー層28とを溶融一体化することができたり、被覆樹脂層29の成形キャビティ内に被着樹脂層30を設けたプロキシマルシャフト14をセットした状態で、被覆樹脂層29を成形することができて、ガイドエクステンションカテーテル10の製造効率の向上が図られる。また、被覆樹脂層29の形成時に被着樹脂層30が溶融することが回避されることから、プロキシマルシャフト14と内部補強層22とが接触してプロキシマルシャフト14とディスタルシャフト12との接続部分における剛性が増大してしまう等の不具合が回避され得る。
【0079】
更にまた、被着樹脂層30と被覆樹脂層29との間には接着剤層34が設けられている。特に、本実施形態では、この接着剤層34が、被着樹脂層30及びプロキシマルシャフト14の表面における略全面にわたって設けられていることから、被着樹脂層30と被覆樹脂層29、及びプロキシマルシャフト14と被覆樹脂層29とが、接着剤層34により強固により固着され得る。そして、プロキシマルシャフト14において内部補強層22に対向する内面側に被着樹脂層30及び接着剤層34が設けられることから、プロキシマルシャフト14と内部補強層22との接触がより確実に回避され得る。
【0080】
また、プロキシマルシャフト14の遠位端側において被覆樹脂層29に埋設されている部分の断面積は、厚さ寸法に比して幅寸法の方が大きな扁平形状とされている。これにより、プロキシマルシャフト14の厚さ方向におけるプロキシマルシャフト14の大径化を回避しつつ、プロキシマルシャフト14と、被覆樹脂層29及び被着樹脂層30との固着面積を十分に大きく確保することができる。
【0081】
次に、
図6には、本発明の第2の実施形態としてのガイドエクステンションカテーテル70が示されている。本実施形態のガイドエクステンションカテーテル70における基本的な構造は第1の実施形態と同様であるが、プロキシマルシャフト14の遠位端側に設けられる被着樹脂層72の態様が第1の実施形態とは異ならされている。したがって、以下の説明では、本実施形態における被着樹脂層72について詳述すると共に、第1の実施形態と同一の部材及び部位には、図中に、第1の実施形態と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0082】
本実施形態では、プロキシマルシャフト14の遠位端側において樹脂チューブが外挿状態で固着されることによって被着樹脂層72が構成されている。特に、本実施形態では、被着樹脂層72を構成する樹脂チューブが熱収縮チューブとされており、プロキシマルシャフト14の遠位端側に樹脂チューブ(熱収縮チューブ)を外挿後、熱を加えることにより径方向で収縮して、プロキシマルシャフト14の外周面に対して嵌着固定されるようになっている。これにより、本実施形態では、プロキシマルシャフト14の遠位端側において周方向の全周にわたって被着樹脂層72が、プロキシマルシャフト14の表面に沿って広がって密着状態で設けられている。また、本実施形態では、被着樹脂層72が、第1の実施形態と同程度の軸方向長さを有している。
【0083】
なお、被着樹脂層72の材質としては、従来公知の熱収縮性を有する合成樹脂、例えばフッ素系、ポリアミド系、ポリエステル系、ウレタン系の合成樹脂又はエラストマー等が採用され得るが、本実施形態ではPETが採用されている。また、被着樹脂層72の厚さ寸法(径方向幅寸法)は限定されるものではないが、プロキシマルシャフト14及びディスタルシャフト12の変形を阻害しない程度の厚さ寸法であり、且つ破れや千切れに対する十分な強度を有し、取り扱いやすい厚さ寸法であることが好ましく、例えば収縮前の厚さ寸法が5μm~10μmの範囲内とされ得て、本実施形態では、6μmとされている。尤も、被着樹脂層72を構成する樹脂チューブは熱収縮チューブでなくでもよく、例えば樹脂チューブを軸方向で延伸させて外挿し、加熱して又は加熱することなく、当該樹脂チューブの縮径により樹脂チューブが被着樹脂層として嵌着固定されるようになっていてもよい。
【0084】
そして、プロキシマルシャフト14の遠位端側が被着樹脂層72により覆われた状態で被覆樹脂層29に埋設されている。本実施形態では、被着樹脂層72と被覆樹脂層29との間に接着剤層74が設けられており、特に本実施形態では、被着樹脂層72の表面における略全面に接着剤層74が設けられている。なお、プロキシマルシャフト14と被着樹脂層72との間にも接着剤層が設けられてもよい。
【0085】
すなわち、プロキシマルシャフト14の遠位端側に熱収縮チューブを外挿して熱を加え被着樹脂層72を形成した後、例えば被着樹脂層72が設けられたプロキシマルシャフト14の遠位端側を、接着剤層74を構成する樹脂中に浸漬するか又は接着剤層74を構成する樹脂を刷毛塗りすることで、被着樹脂層72の表面における略全面に接着剤層74が設けられる。かかる接着剤層74及び被着樹脂層72が設けられたプロキシマルシャフト14を、本体部分16の基端部分の外周面に重ね合わせて外層24とカバー層28とを溶融一体化するか、被覆樹脂層29の成形キャビティ内にセットした状態で被覆樹脂層29を成形することで、被覆樹脂層29の形成と同時に、被覆樹脂層29と被着樹脂層72とが接着剤層74を介して固着され得る。特に、本実施形態でも被着樹脂層72がPETにより形成されていると共に、被覆樹脂層29(外層24及びカバー層28)が「Pebax」により形成されており、被着樹脂層72の融点が被覆樹脂層29の融点よりも高くされている。これにより、被着樹脂層72を内部に有したり、被着樹脂層72を被覆樹脂層29の成形キャビティ内にインサートした状態で、被覆樹脂層29を形成することができる。
【0086】
以上のような構造とされた本実施形態のガイドエクステンションカテーテル70においても、第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。即ち、プロキシマルシャフト14が金属製の内部補強層22と接触したり接続することがないことから、金属製の部材同士が接続されて剛性が増大することによりガイドエクステンションカテーテル70が曲がりにくくなることが回避される。また、プロキシマルシャフト14と被覆樹脂層29との固着が、被着樹脂層72を介することで樹脂同士の固着として達成される。それ故、プロキシマルシャフト14と被覆樹脂層29(ディスタルシャフト12)との接続強度が、金属と樹脂との固着の場合に比べて、より向上され得る。特に、被着樹脂層72がプロキシマルシャフト14における周方向の全周にわたって設けられることで、ガイドエクステンションカテーテル70を湾曲させた場合にも、被覆樹脂層29に破れが生じたり、当該破れを通じてプロキシマルシャフト14が外部へ露出するおそれが低減され得る。また、接着剤層74を、表面が滑らかな金属製の部材であるプロキシマルシャフト14の表面ではなく、合成樹脂製の被着樹脂層72の表面に設けることで、耐滑り性を向上させることができて、ガイドエクステンションカテーテル70における引抜強度の向上を図ることもできる。
【0087】
次に、
図7には、本発明の第3の実施形態としてのガイドエクステンションカテーテル80が示されている。本実施形態のガイドエクステンションカテーテル80においても基本的な構造は第1及び第2の実施形態と同様であるが、プロキシマルシャフト14の遠位端側に設けられる被着樹脂層82の態様が第1及び第2の実施形態とは異ならされている。
【0088】
本実施形態では、プロキシマルシャフト14の遠位端側において樹脂材がコーティングされることによって被着樹脂層82が構成されている。樹脂材のコーティングの方法は限定されるものではなく、例えば塗布や吹き付け、ディッピング、電着等、従来公知のコーティング方法が採用され得る。これにより、本実施形態では、プロキシマルシャフト14の遠位端側において周方向の全周にわたって被着樹脂層82が、プロキシマルシャフト14の表面に沿って広がって密着状態で設けられている。また、本実施形態では、被着樹脂層82が、第1の実施形態と同程度の軸方向長さを有している。
【0089】
被着樹脂層82の材質としては、被覆樹脂層29よりも融点が高い材質が好ましく、アミド系やイミド系の樹脂材が採用されることが望ましい。本実施形態においても、被着樹脂層82の融点が被覆樹脂層29の融点よりも高くされることで、被着樹脂層82が設けられたプロキシマルシャフト14を、本体部分16の基端部分の外周面に重ね合わせて外層24とカバー層28とを溶融一体化するか、被覆樹脂層29の成形キャビティ内にセットして被覆樹脂層29を一体的に形成することができる。被着樹脂層82の厚さ寸法(径方向幅寸法)は限定されるものではないが、プロキシマルシャフト14及びディスタルシャフト12の変形を阻害しない程度の厚さ寸法であり、且つ破れや千切れに対する十分な強度を有し、取り扱いやすい厚さ寸法であることが好ましく、例えば被着樹脂層82の厚さ寸法は5μm~10μmの範囲内とされ得て、本実施形態では、5μm~6μmとされている。
【0090】
そして、プロキシマルシャフト14の遠位端側が被着樹脂層82により覆われた状態で被覆樹脂層29に埋設されている。本実施形態では、被着樹脂層82と被覆樹脂層29との間に接着剤層84が設けられており、特に本実施形態では、被着樹脂層82の表面における略全面に接着剤層84が設けられている。なお、プロキシマルシャフト14と被着樹脂層82との間にも接着剤層が設けられてもよい。
【0091】
以上のような構造とされた本実施形態のガイドエクステンションカテーテル80においても、第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。即ち、プロキシマルシャフト14が金属製の内部補強層22と接触したり接続することがないことから、金属製の部材同士が接続されて剛性が増大することによりガイドエクステンションカテーテル80が曲がりにくくなることが回避される。また、プロキシマルシャフト14と被覆樹脂層29との固着が、被着樹脂層82を介することで樹脂同士の固着として達成される。それ故、プロキシマルシャフト14と被覆樹脂層29(ディスタルシャフト12)との接続強度が、金属と樹脂との固着の場合に比べて、より向上され得る。特に、被着樹脂層82がプロキシマルシャフト14における周方向の全周にわたって設けられることで、ガイドエクステンションカテーテル80を湾曲させた場合にも、被覆樹脂層29に破れが生じたり、当該破れを通じてプロキシマルシャフト14が外部へ露出するおそれが低減され得る。また、接着剤層84を、表面が滑らかな金属製の部材であるプロキシマルシャフト14の表面ではなく、合成樹脂製の被着樹脂層82の表面に設けることで、耐滑り性を向上させることができて、ガイドエクステンションカテーテル80における引抜強度の向上を図ることもできる。
【0092】
以上、本発明における第1~第3の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0093】
例えば、前記実施形態では、プロキシマルシャフト14の遠位端側において被覆樹脂層29に埋設された部分の断面形状が略扁平な矩形状とされていたが、この形状に限定されるものではなく、例えば
図8(a)~(d)に示される形状も採用可能である。具体的には、
図8(a)に示される長円形状や
図8(b)に示される真円形状、
図8(c)に示される円弧形状(真円弧、楕円弧を含む)や
図8(d)に示される台形状等の多角形状、或いはこれらの組み合わせ形状(例えば、長円と真円を組み合わせたオーバル形状(卵形状))であってもよい。なお、プロキシマルシャフトの遠位端側における断面形状は、前記実施形態のように、厚さ寸法に比して幅寸法が大きくされた略扁平形状であることが好ましい。これにより、ディスタルシャフトの大径化を抑制することも可能である。なお、例えば
図8(c)に示されるように、プロキシマルシャフトの断面形状が円弧形状とされる場合、その形状は、例えば補強層よりも外周側をある程度の周方向寸法をもって延びる形状であってもよい。かかる形状とされたプロキシマルシャフトの遠位端側が補強層の外周側に配された場合でも、被覆樹脂層の大径化を抑制しつつ、プロキシマルシャフトと被着樹脂層との固着面積を十分に大きく確保することができて、ディスタルシャフトとプロキシマルシャフトとを良好な接続強度をもって接続することができる。更に、プロキシマルシャフト14は全長にわたってストレートに延びる態様に限定されず、例えばプロキシマルシャフトの先端部分は、平面視において略U字状や略J字状に湾曲していてもよい。その場合、プロキシマルシャフトの断面形状は、例えば
図3中の左右方向への大径化を抑制するように考慮された形状であってもよい。
【0094】
前記実施形態では、プロキシマルシャフト14や被着樹脂層30,72,82の周囲に接着剤層34,74,84が設けられていたが、この態様に限定されるものではない。プロキシマルシャフト14及び被着樹脂層30、被着樹脂層72,82の周囲に設けられる接着剤層は前記実施形態のように周方向の全周にわたって設けられてもよいし、周方向で部分的及び/又は長さ方向で部分的に設けられてもよい。なお、かかる接着剤層は必須なものではなく、本発明の各態様において、そもそも接着剤を用いる必要がなく、接着剤層は設けられなくてもよい。
【0095】
前記第1の実施形態では、略フィルム状とされた被着樹脂層30がプロキシマルシャフト14における周方向の一部に設けられていたが、周方向の全周にわたって設けられてもよいし、周方向の複数箇所において部分的に設けられてもよい。また、前記第2の実施形態では、プロキシマルシャフト14に樹脂チューブを外挿して熱収縮により周方向の全周にわたって被着樹脂層72を形成していたが、例えばプロキシマルシャフトに外挿される樹脂チューブに貫通孔等が形成されていてもよく、被着樹脂層は、プロキシマルシャフトの表面において部分的に設けられていてもよい。さらに、前記第3の実施形態では、樹脂材をコーティングすることで被着樹脂層82がプロキシマルシャフト14における周方向の全周にわたって設けられていたが、周方向の一部(例えば、内部補強層に対向する内面側)など部分的に設けられるだけでもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 ガイドエクステンションカテーテル(第1の実施形態)
12 ディスタルシャフト
14 プロキシマルシャフト
16 本体部分
18 先端チップ
20 内層
22 内部補強層
24 外層
25 マーカー
26 コーティング層
27 保護部材
28 カバー層
29 被覆樹脂層
30 被着樹脂層
32,34 接着剤層
36 ガイディングカテーテル
38 カテーテル本体
40 造影マーカー
42 Yコネクタ
44 サイドアーム
46 バルーンカテーテル
48 バルーン
50 カテーテル組立体
52 冠動脈
54 狭窄部
56 大腿動脈
58 シース
60 上行大動脈
62 ガイドワイヤ
70 ガイドエクステンションカテーテル(第2の実施形態)
72 被着樹脂層
74 接着剤層
80 ガイドエクステンションカテーテル(第3の実施形態)
82 被着樹脂層
84 接着剤層