(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089383
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】搬送装置および表面処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240626BHJP
B65G 49/00 20060101ALN20240626BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B65G49/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204720
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 義明
(72)【発明者】
【氏名】深田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】難波 武志
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA10
5F131AA12
5F131AA23
5F131BA03
5F131DA20
5F131DA22
5F131DA42
5F131DC21
5F131DD42
5F131DD73
5F131DD79
5F131EA03
5F131EB72
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で、被処理材をチャンバーの全域で安定して搬送することが可能な搬送装置および表面処理装置を提供すること。
【解決手段】搬送装置は、平行に延びるガイドレールと、ガイドレールに沿って、互いに異なる方向に摺動可能に設置された第1のスライダおよび第2のスライダと、第1のスライダまたは第2のスライダと連結することによって、第1のスライダまたは第2のスライダと一体的に移動する載置台と、第1のスライダおよび第2のスライダから、載置台が備える係合穴に向けて突出して、係合穴と係合した位置、および係合穴から離脱した位置に移動する係合ピンと、を備えて、載置台が第1のスライダと係合した状態と、載置台が第2のスライダと係合した状態とを切り替えることによって、載置台をガイドレールに沿って搬送する。
【選択図】
図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に延びるガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って、互いに異なる方向に摺動可能に設置された第1のスライダおよび第2のスライダと、
前記第1のスライダまたは前記第2のスライダと連結することによって、前記第1のスライダまたは前記第2のスライダと一体的に移動する載置台と、
前記第1のスライダおよび前記第2のスライダから、前記載置台が備える係合穴に向けて突出して、前記係合穴と係合した位置、および前記係合穴から離脱した位置に移動する係合ピンと、を備えて、
前記載置台が前記第1のスライダと係合した状態と、前記載置台が前記第2のスライダと係合した状態とを切り替えることによって、前記載置台を前記ガイドレールに沿って搬送する搬送装置。
【請求項2】
前記第1のスライダと前記第2のスライダとは、向かい合う各々の側面に形成されたラックギアが、回転駆動するピニオンギアと噛み合うことによって、平行に延びる前記ガイドレールに沿って、互いに異なる方向に移動する、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記載置台は、当該載置台の受け渡し側である、前記第1のスライダまたは前記第2のスライダのいずれか一方と一体的に移動しながら、
前記係合穴と係合する方向に付勢された前記係合ピンの先端が、前記載置台の裏面側に形成された、前記載置台の移動方向に沿って前記係合穴の位置で最も突出する斜面を形成する傾斜部に当接しながら移動して、前記係合穴の位置で前記第1のスライダまたは前記第2のスライダのいずれか他方と係合して、
前記載置台の受け渡し側である、前記第1のスライダまたは前記第2のスライダのいずれか一方と係合した前記係合ピンの先端を、前記係合穴から離脱した位置に移動させることによって、前記載置台を、前記第1のスライダと前記第2のスライダとの間で受け渡す、
請求項1または請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記第1のスライダと前記第2のスライダとをともに備えた複数の前記搬送装置を、前記ガイドレールが接続するように連結させることによって、前記載置台の搬送範囲を拡大させた、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の搬送装置を備える表面処理装置であって、
前記搬送装置を収容するチャンバーと、
前記チャンバーに収容された前記搬送装置に載置された被処理材に対して、少なくとも1種類の表面処理を行う表面処理部と、を備えて、
前記被処理材を、前記ガイドレールに沿って搬送させながら、当該被処理材に対して表面処理を行う、
表面処理装置。
【請求項6】
前記搬送装置が収容された複数の前記チャンバーを、前記ガイドレールが接続するように連結して、前記被処理材を、複数の前記チャンバーの内部で搬送させながら、当該被処理材に対して表面処理を行う、
請求項5に記載の表面処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理材をチャンバー内で安定して搬送しながら、当該被処理材に表面処理を行う搬送装置および表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマを用いて被処理材の表面の洗浄や改質を行うことによって、金属触媒層やSiOx膜等を形成する表面処理装置や、スパッタリング装置を用いて、被処理材の表面に薄膜を形成する表面処理装置が知られている。
【0003】
このような表面処理装置を用いて被処理材の表面処理を行う際には、一般に、チャンバー内で被処理材を搬送する必要がある。このような物品の搬送を行う際に使用可能な搬送装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にあっては、搬送装置の構造部品として3段組のラックギアとピニオンギアが必要になるため、高さ方向のスペースが大きくなり、片持ち指示のため精度も低くなる。また、部品点数が増加して構造が複雑であった。また、特許文献1に開示された搬送装置に載置した被処理材を搬送しながら表面処理を行った場合、表面処理に伴って発生する膜片が飛散して、搬送装置の各所に付着するおそれがあり、複雑な構造の搬送装置を維持管理するための手間がかかるという課題があった。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構造で、被処理材をチャンバー内の全域で安定して搬送することが可能な搬送装置および表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る搬送装置は、平行に延びるガイドレールと、前記ガイドレールに沿って、互いに異なる方向に摺動可能に設置された第1のスライダおよび第2のスライダと、前記第1のスライダまたは前記第2のスライダと連結することによって、前記第1のスライダまたは前記第2のスライダと一体的に移動する載置台と、前記第1のスライダおよび前記第2のスライダから、前記載置台が備える係合穴に向けて突出して、前記係合穴と係合した位置、および前記係合穴から離脱した位置に移動する係合ピンと、を備えて、前記載置台が前記第1のスライダと係合した状態と、前記載置台が前記第2のスライダと係合した状態とを切り替えることによって、前記載置台を前記ガイドレールに沿って搬送することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る表面処理装置は、搬送装置を収容するチャンバーと、前記チャンバーに収容された前記搬送装置に載置された被処理材に対して、少なくとも1種類の表面処理を行う表面処理部と、前記被処理材を、前記ガイドレールに沿って搬送させながら、当該被処理材に対して表面処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る搬送装置および表面処理装置は、被処理材を、チャンバーの全域で安定して搬送することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態の搬送装置を用いた表面処理装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の搬送装置の概略構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の搬送装置の要部構造を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の搬送装置の搬送ピンの上下動を行う構造を説明する断面図である。
【
図5A】
図5Aは、実施形態の搬送装置における、スライダとジグベースとの連結動作の流れを説明する第1の図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態の搬送装置における、スライダとジグベースとの連結動作の流れを説明する第2の図である。
【
図5C】
図5Cは、実施形態の搬送装置における、スライダとジグベースとの連結動作の流れを説明する第3の図である。
【
図6A】
図6Aは、実施形態の搬送装置によるジグベースの搬送方法を説明する第1の図である。
【
図6B】
図6Bは、実施形態の搬送装置によるジグベースの搬送方法を説明する第2の図である。
【
図6C】
図6Cは、実施形態の搬送装置によるジグベースの搬送方法を説明する第3の図である。
【
図6D】
図6Dは、実施形態の搬送装置によるジグベースの搬送方法を説明する第4の図である。
【
図6E】
図6Eは、実施形態の搬送装置によるジグベースの搬送方法を説明する第5の図である。
【
図7】
図7は、実施形態の表面処理装置のチャンバー内部の上面図である。
【
図8】
図8は、プラズマ処理装置の構造の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、スパッタリング装置の構造の一例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態の変形例である、2つのチャンバーを連結して構成した表面処理装置のチャンバー内部の上面図である。
【
図11】
図11は、チャンバーを接続する際の、ベース部材の接続方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る搬送装置および表面処理装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
(実施形態)
本開示の実施形態は、例えばプラスチック樹脂等の樹脂材料で成形された被処理材W(ワーク)の片面または両面に表面処理を行う表面処理装置10によって、被処理材Wの表面に所望の表面処理を行うものである。なお、被処理材Wの表面処理とは、例えば成膜処理である。
【0013】
(表面処理装置の概略構造)
図1を用いて、表面処理装置10の概略構成を説明する。
図1は、本実施形態の搬送装置を用いた表面処理装置の概略構成図である。
【0014】
表面処理装置10は、チャンバー20に内包された、被処理材載置部45と、被処理材搬送部40と、HCD(Hollow Cathode Discharge)電極210と、スパッタ電極220とを備える。
【0015】
チャンバー20は、内部に収容した被処理材Wに対して表面処理を行う、密閉された反応容器である。チャンバー20は、
図1に示すXYZ座標系において、X軸方向を長手方向とする直方体形状を有する。
【0016】
被処理材載置部45は、被処理材Wを、Y軸に沿って略起立させた状態で載置する。なお、被処理材載置部45は、ジグベース41と、取付台42と、取付軸43とを備える。
【0017】
ジグベース41は、被処理材Wを設置する台座である。なお、ジグベース41は、本開示における載置台の一例である。
【0018】
取付台42は、ジグベース41に設置されて、被処理材Wを取り付けるベースとなる部材である。
【0019】
取付軸43は、被処理材Wを取付台42に支持する軸状の部材である。
【0020】
被処理材搬送部40は、被処理材載置部45に載置した被処理材Wを、矢印Aの方向、即ちチャンバー20の長手方向(X軸)に沿って搬送する。なお、被処理材搬送部40は、本開示における搬送装置の一例である。なお、被処理材搬送部40の構造について、詳しくは後述する(
図2参照)。
【0021】
ジグベース41には、取付台42と取付軸43とを介して被処理材Wが載置されているため、被処理材Wは、被処理材搬送部40によって、X軸に沿って搬送される。
【0022】
チャンバー20のXY平面に沿う側面には、プラズマ処理装置21とスパッタリング装置22とが設置される。
【0023】
プラズマ処理装置21は、HCD電極210で生成したプラズマを被処理材Wに照射することによって、被処理材Wの表面処理を行う。この表面処理によって、被処理材Wの表面に、例えばSiO2層を生成する。これによって、被処理材Wの表面の耐環境性が向上する。なお、プラズマ処理装置21は、本開示における表面処理部の一例である。
【0024】
HCD電極210は、Z軸と平行な軸Z1に沿って移動可能とされる。これによって、被処理材WとHCD電極210との間隔を最適な値に設定することによって、より均一な成膜処理を可能とする。
【0025】
スパッタリング装置22は、スパッタ電極220に設置したターゲットから、成膜に用いる原子をはじき出して、はじき出された原子を被処理材Wの表面に密着させることによってスパッタリングを行う。スパッタリングによって、被処理材Wの表面には、例えばめっき加工の下地となる薄膜が形成される。なお、スパッタリング装置22は、本開示における表面処理部の一例である。
【0026】
スパッタ電極220は、Z軸に平行な軸Z2に沿って移動可能とされる。これによって、被処理材Wとスパッタ電極220との間隔を最適な値に設定することによって、より均一な成膜処理を可能とする。
【0027】
チャンバー20の底面には、排気装置50が設置される。排気装置50は、チャンバー20の内部を減圧して真空状態にする。また、排気装置50は、表面処理によってチャンバー20の内部に充満した気体(例えば反応ガス)を、チャンバー20の外部に排出する。排気装置50は、例えば、非図示のポンプユニットと昇降バルブとを備える。ポンプユニットは、チャンバー20の底面に取り付けられて、チャンバー20の内部の圧力の調整と、プラズマ処理装置21やスパッタリング装置22の動作によってチャンバー20の内部に充満したガスの排気とを行う。昇降バルブは、例えば、チャンバー20の底面に当接した状態と、Y軸負側に移動した状態との間で移動することによって、チャンバー20の底面に形成された非図示の開口部を大気に開放する。
【0028】
チャンバー20のYZ平面に沿う側面の少なくとも一方は、開閉扉23aまたは開閉扉23bを備える。開閉扉23a,23bは、ヒンジ機構またはスライド機構によって開閉可能である。表面処理装置10の操作者は、開閉扉23a,23bを開閉することによって、被処理材Wの設置と、表面処理を完了した被処理材Wの取り出しを行う。
【0029】
表面処理装置10は、更に、冷却装置、制御装置、電源供給装置、ガス供給装置、操作盤等を備えるが、説明を簡単にするため、図示を省略する。
【0030】
冷却装置は、機器や電源等を冷却する冷却水を生成する。制御装置は、表面処理装置10の全体の制御を行う。電源供給装置は、表面処理装置10の各部に供給する電源を収容する。ガス供給装置は、チャンバー20に、成膜用のガス、および反応用のガスを供給する。操作盤は、表面処理装置10に対する操作指示を受け付ける。また、操作盤は、表面処理装置10の動作状態を表示する機能を備える。
【0031】
(搬送装置の構造)
図2を用いて、被処理材搬送部40(搬送装置)の概略構造を説明する。
図2は、本実施形態の搬送装置の概略構造を示す斜視図である。
【0032】
被処理材搬送部40(搬送装置)は、ベース部材60と、ジグベース41と、ジグベース用ガイドレール61と、スライダ用ガイドレール62と、第1のスライダ63と、第2のスライダ64と、第1のロケートピン65と、第2のロケートピン66と、第1のアロケート装置67と、第2のアロケート装置68と、を備える。
【0033】
ベース部材60は、被処理材搬送部40を構成する各部材が取り付けられる台座である。
【0034】
ジグベース用ガイドレール61は、ベース部材60の長手方向に沿って平行に設置されて、ジグベース41の移動経路を形成するガイドレールである。
【0035】
スライダ用ガイドレール62は、ジグベース用ガイドレール61と平行に形成されて、後述する第1のスライダ63と第2のスライダ64との移動経路を形成するガイドレールである。スライダ用ガイドレール62とジグベース用ガイドレール61とは平行に形成されている。なお、スライダ用ガイドレール62は、本開示におけるガイドレールの一例である。
【0036】
第1のスライダ63と第2のスライダ64は、スライダ用ガイドレール62に沿って、互いに異なる方向に移動する。第1のスライダ63と第2のスライダ64とは、それぞれ、ジグベース41との連結機能を備えて、連結されたジグベース41を連れ添って、ベース部材60の長手方向に沿って移動する。なお、第1のスライダ63と第2のスライダ64は、
図2に非図示のサーボモータの回転駆動力によって移動する。詳しくは後述する(
図6A~
図6E参照)。
【0037】
第1のロケートピン65は、第1のスライダ63に設置されて、第1のスライダ63とジグベース41とを連結する。なお、第1のロケートピン65は、本開示における係合ピンの一例である。
【0038】
第2のロケートピン66は、第2のスライダ64に設置されて、第2のスライダ64とジグベース41とを連結する。なお、第2のロケートピン66は、本開示における係合ピンの一例である。
【0039】
第1のアロケート装置67は、第1のロケートピン65を強制的に引き下げることによって、第1のスライダ63とジグベース41との連結を解除する。
【0040】
第2のアロケート装置68は、第2のロケートピン66を強制的に引き下げることによって、第2のスライダ64とジグベース41との連結を解除する。
【0041】
なお、
図2には図示しないが、第1のアロケート装置67と第2のアロケート装置68は、ベース部材60のZ軸方向の両端付近の少なくとも一方にも設置される。このアロケート装置は、複数の被処理材搬送部40を連結して、ジグベース41の搬送範囲を拡大する際に、異なる被処理材搬送部40の間でジグベース41を受け渡すために使用される。詳しくは、後述する実施形態の変形例で説明する(
図10参照)。
【0042】
(ジグベースの連結構造)
図3と
図4を用いて、第1のスライダ63および第2のスライダ64と、ジグベース41との連結構造を説明する。
図3は、本実施形態の搬送装置の要部構造を示す断面図である。
図4は、本実施形態の搬送装置の搬送ピンの上下動を行う構造を説明する断面図である。
【0043】
ジグベース41の裏面側には、傾斜板69と係合穴70が設けられている。傾斜板69は、ジグベース41の延伸方向に沿って、係合穴70の位置で最も突出する斜面を形成する。なお、傾斜板69は、本開示における傾斜部の一例である。
【0044】
ジグベース41がジグベース用ガイドレール61に沿って移動すると、第1のロケートピン65の先端は傾斜板69と当接する。第2のスライダ64に設置された第2のロケートピン66は、スプリング71によって、上方(Y軸負側)に向けて付勢されているため、傾斜板69は、第2のロケートピン66を、スプリング71の付勢力に打ち勝って、下方(Y軸正側)押し下げる。
【0045】
そして、ジグベース41が、第2のロケートピン66と係合穴70とが一致する位置に移動すると、
図3に示すように、第2のロケートピン66の先端が、スプリング71の付勢力によって係合穴70に係合される。これによって、第2のスライダ64とジグベース41とが連結される。
【0046】
なお、図示はしないが、第1のスライダ63も裏面側に傾斜板と係合穴とを備えており、
図3と同様の構造によって、ジグベース41と連結する。
【0047】
次に、
図4を用いて、第2のスライダ64とジグベース41との連結を解除する構造を説明する。
【0048】
第2のロケートピン66の下方には、第2のロケートピン66と同軸上にローラ受72が設けられている。ローラ受72には溝部が形成されており、当該溝部に、第2のアロケート装置68が備える、後述するローラフック74が係合する。
【0049】
第2のアロケート装置68は、シリンダ73と、ローラフック74と、出力軸75とを備える。
【0050】
シリンダ73は、油空圧力や電動力、電磁力によって駆動されて、出力軸75をY軸正側に移動させる。即ち、シリンダ73は、係合穴70に係合された第2のロケートピン66を、スプリング71による付勢力に打ち勝って、係合穴70から引き抜くことによって、第2のロケートピン66を、係合穴70から離脱した位置に移動させる。
【0051】
ローラフック74は、出力軸75の先端に設置されて、ローラ受72の溝部に係合する。
【0052】
シリンダ73が出力軸75を下方(Y軸正側)に移動させると、ローラフック74は、スプリング71の付勢力に打ち勝って、ローラ受72を下方に押し下げる。これにより、ローラ受72と同軸上にある第2のロケートピン66が下方に押し下げられるため、第2のロケートピン66が係合穴70から引き抜かれる。これによって、第2のスライダ64とジグベース41との連結が解除される。
【0053】
なお、図示はしないが、第1のスライダ63とジグベース41との連結、および連結解除も、第2のアロケート装置68と同様の構造を有する第1のアロケート装置67によって行われる。
【0054】
(ジグベースとスライダとの連結動作の流れ)
図5Aから
図5Cを用いて、ジグベース41と第2のスライダ64との連結動作の流れを説明する。
図5Aは、実施形態の搬送装置における、スライダとジグベースとの連結動作の流れを説明する第1の図である。
図5Bは、実施形態の搬送装置における、スライダとジグベースとの連結動作の流れを説明する第2の図である。
図5Cは、実施形態の搬送装置における、スライダとジグベースとの連結動作の流れを説明する第3の図である。
【0055】
図5Aに示すように、ジグベース41は、非図示の第1のスライダ63に連結された状態で、ジグベース用ガイドレール61に沿って、矢印Bで示す方向、即ちX軸負方向に移動する。このとき、第2のロケートピン66は、スプリング71の付勢力によって、Y軸負方向に突出した状態になっている。
【0056】
ジグベース41が更にX軸負方向に移動すると、
図5Bに示すように、第2のロケートピン66の先端が、ジグベース41の裏面側に設置された傾斜板69に当接する。
【0057】
そして、ジグベース41が、更に矢印Bの方向に移動すると、第2のロケートピン66の先端が、傾斜板69に押下されて、スプリング71の付勢力に打ち勝って、矢印Cの方向、即ちY軸正方向に移動する。なお、このとき、第2のアロケート装置68が備えるシリンダ73には、出力軸75を上方または下方に移動させる力がかかっていないため、第2のロケートピン66の先端は、傾斜板69に押下されて下方(Y軸正側)に移動する。
【0058】
ジグベース41が、更に矢印Bの方向に移動すると、
図5Cに示すように、第2のロケートピン66の位置と、係合穴70の位置とが一致する。すると、スプリング71の付勢力によって、第2のロケートピン66の先端が矢印Dの方向、即ちY軸負方向に上昇する。これによって、第2のロケートピン66の先端が係合穴70に係合して、ジグベース41と第2のスライダ64とが連結される。なお、このとき、
図5Cには図示しないが、出力軸75(
図4参照)を介して、シリンダ73と接続したローラフック74(
図4参照)が、第2のロケートピン66の下方に設置されたローラ受72に入り込む。
【0059】
また、図示はしないが、ジグベース41が、第2のスライダ64に連結された状態で、ジグベース用ガイドレール61に沿って移動して、第1のスライダ63が備える第1のロケートピン65と連結する際も、前記したのと同様の動作が行われる。
【0060】
更に、図示はしないが、連結した第2のロケートピン66を解除する際には、シリンダ73に、出力軸75を下方(Y軸正側)に押し下げる力を作用させればよい。このとき、前記したローラフック74がローラ受72を下方(Y軸正側)に押し下げる。第2のロケートピン66は、ローラ受72が下方に押し下げられるのに伴って、スプリング71の付勢力に打ち勝って、下方に移動する。これによって、第2のロケートピン66の連結が解除される。
【0061】
(ジグベースの搬送方法)
図6Aから
図6Eを用いて、ジグベース41の搬送方法を、順を追って説明する。
図6Aは、実施形態の搬送装置によるジグベースの搬送方法を説明する第1の図である。
図6Bは、実施形態の搬送装置によるジグベースの搬送方法を説明する第2の図である。
図6Cは、実施形態の搬送装置によるジグベースの搬送方法を説明する第3の図である。
図6Dは、実施形態の搬送装置によるジグベースの搬送方法を説明する第4の図である。
図6Eは、実施形態の搬送装置によるジグベースの搬送方法を説明する第5の図である。
【0062】
図6A~
図6Eは、ジグベース41を、ベース部材60の右端側から左端側まで搬送する様子を示している。
【0063】
図6Aにおいて、ジグベース41は、第2のスライダ64と連結した状態になっている。即ち、ジグベース41に設けられた係合穴70に、第2のロケートピン66が係合している。
【0064】
第1のスライダ63と第2のスライダ64の互いに向かい合う側の側面にはラックギア77が形成されており、ラックギア77は、ベース部材60に設置されたピニオンギア76と噛み合っている。ピニオンギア76は、非図示のサーボモータで回転駆動される。
図6Aにおいて、ピニオンギア76は、時計回り、即ち矢印Eの方向に回転する。
【0065】
ピニオンギア76の回転に応じて、第1のスライダ63は、スライダ用ガイドレール62に沿って、矢印Fの方向に移動する。また、第2のスライダ64は、ジグベース41を連れ添って、スライダ用ガイドレール62に沿って、矢印Gの方向に移動する。即ち、ジグベース41は、矢印Hの方向に移動する。なお、ピニオンギア76を回転駆動するサーボモータには、当該サーボモータの回転角度を検出するエンコーダが取り付けられている。被処理材搬送部40は、ジグベース41が所定の位置(例えば、ベース部材60の左端や右端)にあるときにカウンターをリセットした後、エンコーダが発生したパルス数をカウントすることによって、ベース部材60におけるジグベース41の現在位置を認識することができる。
【0066】
図6Aにおいて、第1のスライダ63と第2のスライダ64とが、互いに逆方向に移動すると、
図6Bに示すように、ベース部材60の中央付近において、ジグベース41の係合穴70に、第1のスライダ63に設置された第1のロケートピン65が係合する。これによって、ジグベース41が備える2つの係合穴70には、それぞれ、第1のロケートピン65と第2のロケートピン66とが係合された状態になる。
【0067】
被処理材搬送部40は、エンコーダが発生したパルス数をカウントして、ジグベース41がベース部材60の中央付近に到達したことを検出すると、第2のロケートピン66の係合を外して、ジグベース41と第2のスライダ64との連結を解除する(
図6C)。なお、被処理材搬送部40は、第1のロケートピン65と係合穴70とが係合したこと、および第2のロケートピン66と係合穴70とが係合したことを電気的に検出して、
図6Bの状態になったことを検出してもよい。
【0068】
この後、被処理材搬送部40は、ピニオンギア76を逆回転、即ち反時計回りに回転させる。これによって、
図6Dに示すように、第1のスライダ63は、ジグベース41を連れ添って、スライダ用ガイドレール62に沿って、矢印Iの方向に移動する。即ち、ジグベース41は、矢印Kの方向に移動する。また、第2のスライダ64は、スライダ用ガイドレール62に沿って、矢印Jの方向に移動する。
【0069】
エンコーダが発生したパルス数が所定値に達すると、被処理材搬送部40は、ジグベース41がベース部材60の左端に達したと判断する。そして、被処理材搬送部40は、ピニオンギア76の回転方向を逆転させて、矢印Lの方向、即ち時計回りに回転させる。これによって、
図6Eに示すように、第1のスライダ63は、ジグベース41を連れ添って、スライダ用ガイドレール62に沿って、矢印Mの方向に移動する。即ち、ジグベース41は、矢印Oの方向に移動する。また、第2のスライダ64は、スライダ用ガイドレール62に沿って、矢印Nの方向に移動する。
【0070】
このように、被処理材搬送部40は、ジグベース41を、受け渡し側である第2のスライダ64から、受け取り側である第1のスライダ63に受け渡すことによって、ジグベース41を、ベース部材60の左端と右端の全域に亘って搬送する。なお、
図6A~
図6Eには図示しないが、逆に、ジグベース41を、受け渡し側である第1のスライダ63から、受け取り側である第2のスライダ64に受け渡すことも可能である。
【0071】
(表面処理装置の詳細構造)
図7を用いて、表面処理装置10の詳細構造を説明する。
図7は、実施形態の表面処理装置のチャンバー内部の上面図である。
【0072】
チャンバー20は、
図7に示すシャッター24とシャッター25とを備える。
【0073】
シャッター24は、X軸正側に移動することによって、被処理材Wにプラズマ処理を行う際に、プラズマ処理装置21が備えるHCD電極210を露出させる。また、シャッター24は、矢印Pに沿ってX軸負側に移動することによって、被処理材Wにスパッタリング処理を行う際にHCD電極210を格納する。これによって、使用しない電極の汚染を防止する。
【0074】
シャッター25は、X軸負側に移動することによって、被処理材Wにスパッタリング処理を行う際に、スパッタリング装置22が備えるスパッタ電極220を露出させる。また、シャッター25は、矢印Qに沿ってX軸正側に移動することによって、被処理材Wにプラズマ処理を行う際にスパッタ電極220を格納する。これによって、使用しない電極の汚染を防止する。
【0075】
なお、成膜中は、チャンバー20の内部の真空度、ガス流量、被処理材Wの搬送速度、電力、電圧値、電流値、放電状態、チャンバー20の内部の温度等に応じて、HCD電極210を軸Z1方向に移動させることによって、被処理材WとHCD電極210との間隔を適正に保つ。同様に、スパッタ電極220も軸Z2方向に移動させることによって、被処理材Wとスパッタ電極220との間隔を適正に保つ。
【0076】
チャンバー20のYZ平面に沿う両側面のうち、X軸負側の側面には、開閉扉23aが設置される。開閉扉23aは、扉枠部27に非図示のヒンジによって開閉可能に取り付けられる。扉枠部27は、チャンバー20の端部に形成されたフランジ26に、非図示のボルトとナットによって締結される。これによって、開閉扉23aは、矢印Rの方向に開閉する。なお、開閉扉23aは、上下方向(Y軸方向)に移動可能なシャッターで構成されてもよい。
【0077】
一方、チャンバー20のYZ平面に沿う両側面のうち、X軸正側の側面には、固定型のブランクパネル29が設置される。ブランクパネル29は、チャンバー20の端部に形成されたフランジ26に、非図示のボルトとナットによって締結される。
【0078】
被処理材搬送部40は、
図7に示すように、チャンバー20の内部に収容されて、ジグベース41に載置した被処理材Wを、前記したようにチャンバー20の左端と右端の間で搬送する。そして、プラズマ処理装置21は、搬送中の被処理材Wに対して、プラズマ処理を行う。また、スパッタリング装置22は、搬送中の被処理材Wに対して、スパッタリングを行う。なお、表面処理装置10が備える表面処理部は、プラズマ処理装置21とスパッタリング装置22に限定されるものではなく、その他の表面処理部を備えてもよい。また、チャンバー20に設置される表面処理部の数は、
図7の例に限定されない。即ち、チャンバー20は、プラズマ処理装置21を1つのみ備えてもよいし、スパッタリング装置22を1つのみ備えてもよい。
【0079】
(プラズマ処理装置の構造)
図8を用いて、プラズマ処理装置21の構造を説明する。
図8は、プラズマ処理装置の構造の一例を示す断面図である。
【0080】
プラズマ処理装置21は、プラズマガスを生成する際に用いる、アルゴン等の反応用ガスを供給するガス供給管89と、高周波電圧によって、ガス供給管89から供給された反応用ガスからプラズマガスを生成する一対の板状導体部84,85とを有する。反応用ガスとしては、例えば、酸素、アルゴン、窒素等が単独もしくは混合された状態で用いられる。
【0081】
ガス供給管89は、チャンバー20の側壁面に、Z軸(Z1軸)に沿って移動可能に支持された支持板87を厚さ方向に貫通しており、ガス供給管取付部材82によって支持板87に取り付けられている。また、ガス供給管89の内部には、ガス供給管89の延在方向に沿うガス流路80が形成されており、ガス流路80を介して、チャンバー20の外側からチャンバー20内に反応用ガスが供給される。ガス供給管89の、支持板87の外側(チャンバー20の外側)の端部には、ガス供給管89に反応用ガスを供給するガス供給部96が接続されている。また、ガス供給管89の他端側(チャンバー20の内側)の端部には、ガス流路80を流れた反応用ガスをチャンバー20内に導入する孔であるガス供給孔81が形成されている。ガス供給部96には、質量流量計に流量制御の機能を持たせた、非図示のマスフローコントローラ(MFC)を介して反応用ガスが供給される。
【0082】
一対の板状導体部84,85は、いずれも平板状に形成されており、アルミニウムなどの金属板、或いはその他の導体板を平行に配置することにより形成されている。板状導体部84,85は、支持板88によって支持されている。なお、一対の板状導体部84,85は、HCD電極210を形成する。支持板88は、例えば、ガラス、セラミック等の絶縁材料により形成されている。
【0083】
支持板88は、支持部材83によって支持されている。支持部材83は、円筒状の部材と、当該円筒状の部材の両端に位置する取付部材とを有し、Z1軸負側の端部が支持板87に取り付けられ、Z1軸正側の端部が支持板88に取り付けられている。
【0084】
支持板87を貫通するガス供給管89は、支持部材83の内側を通って支持板88の位置まで延び、支持板88を貫通している。そして、ガス供給管89に形成されるガス供給孔81は、支持板88における凹部90が形成される部分に配置される。
【0085】
一対の板状導体部84,85は、支持板88における凹部90が形成されている側に、凹部90を覆って配置される。その際、一対の板状導体部84,85は、互いに離間して配置されて、板状導体部84,85の間に空隙部86を形成している。空隙部86の間隔は、プラズマ処理装置21において導入する反応用ガスや供給する電力の周波数、さらには電極のサイズ等に応じて適宜設定するのが好ましいが、例えば、3mm~12mm程度である。
【0086】
一対の板状導体部84,85は、重ねられた状態で、保持部材97によって保持されている。そして、支持板88の凹部90と、板状導体部84,85と、の間には空間が形成される。
【0087】
このようにして形成された空間は、ガス供給管89により供給される反応用ガスが導入されるガス導入部98として機能する。ガス供給管89のガス供給孔81は、ガス導入部98に向けて開口している。
【0088】
また、一対の板状導体部84,85には、厚さ方向に貫通する貫通孔91,92が、それぞれ多数形成されている。即ち、ガス供給管89により供給される反応用ガスの流入側に位置する板状導体部85には、マトリクス状に所定の間隔で複数の貫通孔92が形成されており、ガス供給管89により供給される反応用ガスの流出側に位置する板状導体部84には、マトリクス状に所定の間隔で複数の貫通孔91が形成されている。
【0089】
板状導体部84の貫通孔91と、板状導体部85の貫通孔92とは、それぞれ円筒形状の孔であり、双方の貫通孔91,92は、同軸上に配置されている。そして、板状導体部84の貫通孔91は、反応用ガスの流入側の板状導体部85の貫通孔92よりも径が小さくなっている。このように一対の板状導体部84,85は、複数の貫通孔91,92が形成されたホロー電極構造を形成して、複数の貫通孔91,92を介して、生成されたプラズマガスが高密度で流れる。
【0090】
板状導体部84,85の間には、空隙部86が介在するが、空隙部86は静電容量を有するコンデンサとして機能する。そして、支持板88及び板状導体部84,85には、導電性の部材によって導電部(図示省略)が形成されて、当該導電部によって支持板88は接地95され、板状導体部85も接地95されている。また、高周波電源(RF)94は、一方の端部が接地95され、高周波電源94の他方の端部は、静電容量等を調整してプラズマとの整合性を得るためのマッチングボックス(MB)93を介して板状導体部84と導通している。従って、高周波電源94を稼働させた場合には、例えば13.56MHzなどの所定の周波数で板状導体部84の電位がプラスとマイナスに振れる。
【0091】
生成されたプラズマガスは、貫通孔91から流出する。そして、流出したプラズマガスは、貫通孔91のZ1軸正側において、板状導体部84,85と平行、即ちX軸に沿って延びるガス供給管99bに形成された複数のガス供給孔100からZ1軸正側に噴射する成膜用ガスと反応する。
【0092】
成膜用ガスは、非図示のマスフローコントローラ(MFC)を介して、チャンバー20内に導入される。成膜用ガスは、Z1軸に沿って延びるガス供給管99aと、X軸に沿って延びるガス供給管99bとによって供給される。
【0093】
なお、成膜用ガスとしては、プラズマ処理装置21が行う表面処理に応じた物質が用いられる。例えば、メタン、アセチレン、ブタジエン、チタニウムテトライソプロポキシド(TTIP)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラエトキシシラン(TEOS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラメチルシラン(TMS)等が用いられる。そして、プラズマガスと成膜用ガスとが反応して生成された前駆体によって、チャンバー20内の被処理材Wの成膜や洗浄等の表面処理が行われる。
【0094】
(プラズマ処理装置の構造)
図9を用いて、スパッタリング装置22の構造を説明する。
図9は、スパッタリング装置の構造の一例を示す断面図である。
【0095】
スパッタリング装置22は、冷却水管101と、マグネット104と、ターゲット107と、冷却ジャケット105と、支持板103とを備える。
【0096】
冷却水管101は、冷却ジャケット105に供給する冷却水の流路を形成する。
【0097】
マグネット104は、磁界を発生させる。
【0098】
ターゲット107は、マグネット104で発生させた磁界の内部で、
図1に非図示のガス供給装置から供給されて、
図9に非図示のガス流入部から流入させた不活性ガス(例えばアルゴン)をイオン化させて衝突させることにより、成膜に用いる原子をはじき出す。なお、ターゲット107は、例えば銅板であり、ターゲット107からはじき出された銅原子が被処理材Wの表面に密着することによって、被処理材Wの表面に銅の薄膜が形成される。なお、マグネット104とターゲット107とは、スパッタ電極220を形成する。
【0099】
冷却ジャケット105は、冷却水管101を通して供給された冷却水によって、ターゲット107を冷却する。
【0100】
支持板103は、マグネット104とターゲット107と冷却ジャケット105とを支持する。なお、冷却水管101は、チャンバー20の側壁面に、Z軸(Z2軸)に沿って移動可能に支持された支持板103を厚さ方向に貫通している。
【0101】
冷却水管101の内部には、冷却水管101の延在方向に沿う冷却水路102が形成されている。なお、
図9には示さないが、冷却水路102は、チャンバー20の外部から冷却ジャケット105に、冷却のための冷却水を供給する水路と、冷却ジャケット105からチャンバー20の外部に、冷却に用いた冷却水を排出する水路とを備える。このようにして、冷却水管101は、チャンバー20の外側と、チャンバー20内に配置される冷却ジャケット105との間で、冷却水を循環させる。なお、冷却水管101の、チャンバー20の外側の端部には、
図9に非図示の、冷却水の流入路および排出路が接続されている。一方、冷却水管101の他端側(チャンバー20の内側)の端部は、冷却ジャケット105に接続されている。冷却ジャケット105は、内部に冷却水の流路が形成され、冷却水が流れる。これにより、チャンバー20の外側と、冷却ジャケット105との間で、冷却水が循環する。なお、冷却水は、
図1に非図示の冷却装置から供給される。
【0102】
支持板103の下部には保持部材108が取り付けられている。保持部材108は、Z2軸負側から正側に向かって、マグネット104、冷却ジャケット105、ターゲット107の順で重ねられた状態で、ターゲット107の外周及び下面を保持する。
【0103】
支持板103とマグネット104との間には、絶縁材106が配置されている。絶縁材106は、マグネット104の平面視における外周部分にも配置されている。つまり、マグネット104は、絶縁材106を介して、支持板103と保持部材108とによって保持されている。
【0104】
スパッタリング装置22は、被処理材Wの表面に薄膜を形成する、所謂スパッタリングを行う。スパッタリング装置22がスパッタリングを行う際には、チャンバー20の内部を排気装置50(
図1参照)によって減圧した後、チャンバー20の内部に、
図1に非図示のガス供給装置からスパッタリングに用いるガスを流入させる。そして、スパッタリング装置22のマグネット104が発生した磁界によって、チャンバー20内のガスをイオン化させて、ターゲット107にイオンを衝突させる。これによって、ターゲット107の表面から、ターゲット107の原子をはじき出す。
【0105】
例えばターゲット107にアルミニウムを用いた場合、ターゲット107の近傍でイオン化されたガスのイオンがターゲット107に衝突した際に、ターゲット107は、アルミニウムの原子をはじき出す。ターゲット107からはじき出されたアルミニウムの原子は、Z2軸正側に向かう。チャンバー20内のターゲット107の表面に対向する位置には被処理材Wが位置するため、ターゲット107からはじき出されたアルミニウムの原子は、被処理材Wに向かって移動して被処理材Wに密着し、被処理材Wの表面に堆積する。これにより、被処理材Wの表面には、ターゲット107を形成する物質に応じた薄膜が形成される。
【0106】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、実施形態の被処理材搬送部40(搬送装置)は、平行に延びるスライダ用ガイドレール62(ガイドレール)と、スライダ用ガイドレール62に沿って、互いに異なる方向に摺動可能に設置された第1のスライダ63および第2のスライダ64と、第1のスライダ6または第2のスライダ64と連結することによって、第1のスライダ63または第2のスライダ64と一体的に移動するジグベース41(載置台)と、第1のスライダ63および第2のスライダ64から、ジグベース41が備える係合穴70に向けて突出して、係合穴70と係合した位置、および係合穴70から離脱した位置に移動する第1のロケートピン65(係合ピン)および第2のロケートピン66(係合ピン)と、を備えて、ジグベース41が第1のスライダ63と係合した状態と、ジグベース41が第2のスライダ64と係合した状態とを切り替えることによって、ジグベース41をスライダ用ガイドレール62に沿って搬送する。したがって、簡易な構造で、被処理材Wをチャンバー20の全域で安定して搬送することができる。また、被処理材搬送部40を構成する部品点数が少なく、構造も簡単であるため、運用時の手入れや維持管理が容易である。
【0107】
また、実施形態の被処理材搬送部40(搬送装置)において、第1のスライダ63と第2のスライダ64とは、向かい合う各々の側面に形成されたラックギア77が、回転駆動するピニオンギア76と噛み合うことによって、平行に延びるスライダ用ガイドレール62(ガイドレール)に沿って、互いに異なる方向に移動する。したがって、簡単な構造で、第1のスライダ63と第2のスライダ64とを互いに異なる方向に確実に移動させることができる。
【0108】
また、実施形態の被処理材搬送部40(搬送装置)において、ジグベース41(載置台)は、ジグベース41の受け渡し側である、第1のスライダ63または第2のスライダ64のいずれか一方と一体的に移動しながら、係合穴70と係合する方向に付勢された第1のロケートピン65(係合ピン)または第2のロケートピン66(係合ピン)の先端が、ジグベース41の裏面側に形成された、ジグベース41の移動方向に沿って係合穴70の位置で最も突出する斜面を形成する傾斜板69(傾斜部)に当接しながら移動して、係合穴70の位置で第1のスライダ63または第2のスライダ64のいずれか他方と係合して、ジグベース41の受け渡し側である、第1のスライダ63または第2のスライダ64のいずれか一方と係合した第1のロケートピン65(係合ピン)または第2のロケートピン66(係合ピン)の先端を、係合穴70から離脱した位置に移動させることによって、ジグベース41を、第1のスライダ63と第2のスライダ64との間で受け渡す。したがって、ジグベース41を、第1のスライダ63と第2のスライダ64との間で容易かつ確実に受け渡すことができる。また、これによって、被処理材搬送部40の延伸方向の全域に亘って、ジグベース41を搬送することができ、ストロークを大きくすることができる。
【0109】
また、実施形態の表面処理装置10は、被処理材搬送部40(搬送装置)を備えるとともに、被処理材搬送部40を収容するチャンバー20と、チャンバー20に収容された被処理材搬送部40に載置された被処理材Wに対して、少なくとも1種類の表面処理を行う表面処理部(例えば、プラズマ処理装置21やスパッタリング装置22)と、を備えて、被処理材Wを、スライダ用ガイドレール62(ガイドレール)に沿って搬送させながら、被処理材Wに対して表面処理を行う。したがって、チャンバー20内を搬送される被処理材Wに対して、均一な表面処理を行うことができる。
【0110】
(実施形態の変形例)
図10と
図11を用いて、実施形態の変形例である表面処理装置10cについて説明する。
図10は、実施形態の変形例である、2つのチャンバーを連結して構成した表面処理装置のチャンバー内部の上面図である。
図11は、チャンバーを接続する際の、ベース部材の接続方法の一例を示す図である。
【0111】
図10に示す表面処理装置10cは、表面処理装置10aと表面処理装置10bとをX軸に沿って連結したものである。表面処理装置10a,10bは、いずれも、前述した表面処理装置10と同じものである。
【0112】
表面処理装置10bは、表面処理装置10aを、Y軸の周りに180度旋回した状態で、フランジ26同士を当接させて、表面処理装置10aと連結される。説明のために、表面処理装置10aは被処理材搬送部40a(搬送装置)を備えて、表面処理装置10bは被処理材搬送部40b(搬送装置)を備えるものとする。
【0113】
被処理材搬送部40aと被処理材搬送部40bとは、ジグベース用ガイドレール61およびスライダ用ガイドレール62が、それぞれ接続するように連結される。なお、表面処理装置10aと表面処理装置10bとがそれぞれ備えるジグベース41のうち、いずれか一方は取り外されて、表面処理装置10cは、1つのジグベース41を備える。
【0114】
なお、表面処理装置10bは、表面処理装置10aをY軸の周りに180度旋回したものであるため、表面処理装置10aが備える第1のスライダ63と、表面処理装置10bが備える第2のスライダ64とは、連結された同じスライダ用ガイドレール62上にある。また、表面処理装置10aが備える第2のスライダ64と、表面処理装置10bが備える第1のスライダ63とは、連結された同じスライダ用ガイドレール62上にある。
【0115】
被処理材搬送部40aと被処理材搬送部40bとの連結位置付近には、
図10に非図示の第1のアロケート装置67と第2のアロケート装置68とが設置されている。この第1のアロケート装置67と第2のアロケート装置68との作用(
図5A~
図5C参照)によって、ジグベース41は、連結された被処理材搬送部40aと被処理材搬送部40bとの間で受け渡される。したがって、ジグベース41は、連結された被処理材搬送部40aと被処理材搬送部40bとに亘る範囲を、X軸に沿って移動することができる。
【0116】
表面処理装置10cは、表面処理装置10aと、表面処理装置10aをY軸の周りに180度旋回した表面処理装置10bとが連結されたものであるため、表面処理装置10cは、ジグベース41に載置された被処理材Wの両面に表面処理を行うことができる。
【0117】
なお、表面処理装置の連結形態は、
図10の例に限定されるものではない。例えば、同じ表面処理装置10を、Y軸の周りに180度旋回させることなく、同じ向きのままで連結してもよい。
【0118】
また、
図10には、同じサイズの表面処理装置を連結した例を示したが、異なるサイズの表面処理装置を複数連結する構成であってもよい。即ち、被処理材搬送部(搬送装置)のサイズを同一にする必要はない。更に、連結される表面処理装置は、被処理材Wを大気に開放せずにチャンバー20とのアクセスを可能とするロードロック室のように、表面処理部を備えないものであってもよい。
【0119】
図11は、被処理材搬送部40を構成するベース部材60の接続構造の一例を示す。ベース部材60を接続する際には、ベース部材60の端部同士を突き合わせて、双方のベース部材60に跨る連結プレート79をボルトで固定する。これによって、異なるベース部材60が連結された連結部78が形成される。なお、異なるベース部材60を接続した場合に、ジグベース用ガイドレール61(
図2参照)を全ストロークがカバーできる長いものに交換してもよい。
【0120】
(実施形態の変形例の作用効果)
以上説明したように、実施形態の変形例の被処理材搬送部40a,40b(搬送装置)は、第1のスライダ63と第2のスライダ64とをともに備えた複数の被処理材搬送部40a,40b(搬送装置)を、スライダ用ガイドレール62(ガイドレール)が接続するように連結させることによって、ジグベース41(載置台)の搬送範囲を拡大させたものである。したがって、被処理材Wに対する成膜条件や成膜工程の変更に応じて、複数のチャンバー20を連結して、被処理材Wの搬送範囲を容易に延長することができる。そして、その際に、モータ等の追加の駆動装置を付加する必要がない。
【0121】
また、実施形態の変形例の表面処理装置10cは、搬送装置が収容された複数のチャンバー20を、スライダ用ガイドレール62(ガイドレール)が接続するように連結して、被処理材Wを、複数のチャンバー20の内部で搬送させながら、被処理材Wに対して表面処理を行う。したがって、被処理材Wに対する成膜条件や成膜工程に応じた表面処理を容易に実現することができる。
【0122】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0123】
10,10a,10b,10c…表面処理装置、20…チャンバー、21…プラズマ処理装置(表面処理部)、22…スパッタリング装置(表面処理部)、23a,23b…開閉扉、24,25…シャッター、26…フランジ、27…扉枠部、29…ブランクパネル、40,40a,40b…被処理材搬送部(搬送装置)、41…ジグベース(載置台)、42…取付台、43…取付軸、45…被処理材載置部、50…排気装置、60…ベース部材、61…ジグベース用ガイドレール、62…スライダ用ガイドレール(ガイドレール)、63…第1のスライダ、64…第2のスライダ、65…第1のロケートピン(係合ピン)、66…第2のロケートピン(係合ピン)、67…第1のアロケート装置、68…第2のアロケート装置、69…傾斜板(傾斜部)、70…係合穴、71…スプリング、72…ローラ受、73…シリンダ、74…ローラフック、75…出力軸、76…ピニオンギア、77…ラックギア、78…連結部、79…連結プレート、80…ガス流路、81…ガス供給孔、82…ガス供給管取付部材、83…支持部材、84,85…板状導体部、86…空隙部、87,88…支持板、89…ガス供給管、90…凹部、91,92…貫通孔、93…マッチングボックス(MB)、94…高周波電源(RF)、95…接地、96…ガス供給部、97…保持部材、98…ガス導入部、99a,99b…ガス供給管、100…ガス供給孔、101…冷却水管、102…冷却水路、103…支持板、104…マグネット、105…冷却ジャケット、106…絶縁材、107…ターゲット、108…保持部材、210…HCD電極、220…スパッタ電極、W…被処理材