(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089388
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】射出成形機の制御装置、および射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240626BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204728
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】堀田 大吾
(72)【発明者】
【氏名】大野 大
(72)【発明者】
【氏名】北口 直樹
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL05
4F206JM06
4F206JN41
4F206JP11
4F206JP14
4F206JQ06
4F206JQ81
4F206JQ88
4F206JQ90
4F206JT06
4F206JT40
(57)【要約】
【課題】エジェクタロッドを適切な位置に配置することにより、射出成形機の種々の作業を良好に実施させることができる技術を提供する。
【解決手段】射出成形機の制御装置は、エジェクタ装置のエジェクタロッドを進退させる。前記制御装置は、前記射出成形機を動作させる第1動作モードおよび第2動作モードを含む複数の動作モードを設定可能である。前記制御装置は、前記第1動作モードにおいて前記エジェクタロッドが後退して待機する第1後退位置と、前記第2動作モードにおいて前記エジェクタロッドが後退して待機する第2後退位置と、を相互に異なる位置に設定している。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エジェクタ装置のエジェクタロッドを進退させる射出成形機の制御装置であって、
前記制御装置は、
前記射出成形機を動作させる第1動作モードおよび第2動作モードを含む複数の動作モードを設定可能であり、
かつ前記第1動作モードにおいて前記エジェクタロッドが後退して待機する第1後退位置と、前記第2動作モードにおいて前記エジェクタロッドが後退して待機する第2後退位置と、を相互に異なる位置に設定している、
射出成形機の制御装置。
【請求項2】
前記第2動作モードは、前記射出成形機が射出成形を行うモードであり、
前記第2後退位置は、前記第1動作モードで前記第1後退位置に配置された前記エジェクタロッドの先端よりも、当該エジェクタロッドの先端を固定プラテン側に突き出した位置である、
請求項1に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項3】
前記第2後退位置は、前記エジェクタロッドの先端が可動プラテンの前端面よりも前方にある位置である、
請求項2に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項4】
前記第1動作モードは、金型装置の交換に使用するモードであり、
前記第1後退位置は、前記第2動作モードで前記第2後退位置に配置された前記エジェクタロッドの先端よりも、当該エジェクタロッドの先端を固定プラテン側から離した位置である、
請求項1に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項5】
前記第1動作モードは、型締装置の型締モータを制限するモードであり、
前記第1後退位置は、前記第2動作モードで前記第2後退位置に配置された前記エジェクタロッドの先端よりも、当該エジェクタロッドの先端を固定プラテン側から離した位置である、
請求項1に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項6】
前記第1後退位置は、前記エジェクタロッドの先端が可動プラテンの前端面よりも後方にある位置、または前記前端面に一致する位置である、
請求項4または5に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第1動作モードの実施時に、型締装置を動作させる操作指令を受け付けた場合に、前記第1後退位置まで前記エジェクタロッドを自動的に移動させる、
請求項4または5に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1動作モードにおいて前記エジェクタロッドが前記第1後退位置にない場合に、型締装置による開閉移動を禁止する、
請求項1に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記第1動作モードにおいて前記エジェクタロッドを後退させる操作指令と異なる操作指令を受け付けた場合に、前記エジェクタロッドを前記第2後退位置に配置させる、
請求項1に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項10】
エジェクタロッドを進退させるエジェクタ装置と、
前記エジェクタ装置の動作を制御する制御装置と、を有する射出成形機であって、
前記制御装置は、
前記射出成形機を動作させる第1動作モードおよび第2動作モードを含む複数の動作モードを設定可能であり、
かつ前記第1動作モードにおいて前記エジェクタロッドが後退して待機する第1後退位置と、前記第2動作モードにおいて前記エジェクタロッドが後退して待機する第2後退位置と、を相互に異なる位置に設定している、
射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形機の制御装置、および射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、射出成形機で成形した成形品を突き出して取り出すエジェクタ装置を制御するエジェクタ制御装置が開示されている。エジェクタ制御装置は、型閉後にエジェクタの位置を検出して記憶し、この記憶したエジェクタ後退端位置(後退位置)に応じてエジェクタ用サーボモータの動作を制御する。
【0003】
ところで、射出成形機は、通常、可動プラテンの前端面(パンチ面)から固定プラテン側にエジェクタロッドが突出するように、エジェクタロッドの後退位置を設定している。これにより、射出成形のサイクル運転時に、エジェクタロッドの移動距離が短くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エジェクタ装置において設定された後退位置が前端面よりも突出している状態では、型締装置(固定プラテン、可動プラテン)から金型装置を取り外す作業において、エジェクタロッドと金型装置が干渉するおそれがある。
【0006】
本開示は、エジェクタロッドを適切な位置に配置することにより、射出成形機の種々の作業を良好に実施させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、エジェクタ装置のエジェクタロッドを進退させる射出成形機の制御装置であって、前記制御装置は、前記射出成形機を動作させる第1動作モードおよび第2動作モードを含む複数の動作モードを設定可能であり、かつ前記第1動作モードにおいて前記エジェクタロッドが後退して待機する第1後退位置と、前記第2動作モードにおいて前記エジェクタロッドが後退して待機する第2後退位置と、を相互に異なる位置に設定している、射出成形機の制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
一態様によれば、エジェクタロッドを適切な位置に配置することにより、射出成形機の種々の作業を良好に実施させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
【
図3】制御装置の構成要素の一例を機能ブロックで示す図である。
【
図5】型締装置、エジェクタ装置および金型装置を拡大して示す側面断面図である。
【
図6】
図6(A)は、表示装置に表示される表示画面を示す図である。
図6(B)は、複数の動作モードを選択する操作ボタンを示す図である。
【
図7】
図7(A)は、金型装置の取外作業の動作を示す図である。
図7(B)は、
図7(A)に続く動作を示す図である。
図7(C)は、
図7(B)に続く動作を示す図である。
図7(D)は、
図7(C)に続く動作を示す図である。
【
図8】
図8(A)は、準備モードにおいてエジェクタロッドを第1後退位置に配置した状態を示す図である。
図8(B)は、準備モードにおいて金型装置の交換作業を示す図である。
【
図9】
図9(A)は、射出成形モードにおいてエジェクタロッドを第2後退位置に配置した状態を示す図である。
図9(B)は、射出成形モードにおいてエジェクタロッドを移動させた状態を示す図である。
【
図10】動作モードに応じてエジェクタロッドの位置を誘導する動作方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
(射出成形機)
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸負方向側を操作側と呼び、Y軸正方向側を反操作側と呼ぶ。
【0012】
図1~
図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0013】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0014】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。
【0015】
型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0016】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0017】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0018】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0019】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0020】
尚、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0021】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0022】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0023】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0024】
尚、トグル機構150の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0025】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0026】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0027】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0028】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0029】
尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0030】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0031】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(
図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0032】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0033】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0034】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0035】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0036】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0037】
尚、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0038】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0039】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0040】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0041】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0042】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0043】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。尚、複数の型厚調整機構が組み合わせて用いられてもよい。
【0044】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0045】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
【0046】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0047】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動部として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0048】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0049】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0050】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120と相対移動可能に配置される。エジェクタロッド210の先端部は、可動金型820の進退構造部825と接触する。
【0051】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0052】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で後退位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の後退位置まで後退させる。
【0053】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0054】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0055】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0056】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの第1加熱器313と第1温度検出器314とが設けられる。
【0057】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに第1加熱器313と第1温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、第1温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が第1加熱器313を制御する。
【0058】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、第2加熱器323と第2温度検出器324とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が第2加熱器323を制御する。
【0059】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0060】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0061】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0062】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0063】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0064】
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0065】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0066】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0067】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0068】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0069】
尚、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0070】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0071】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0072】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0073】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0074】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0075】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0076】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0077】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0078】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0079】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0080】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0081】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0082】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0083】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0084】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0085】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0086】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0087】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0088】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0089】
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0090】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、
図1~
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0091】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する(
図4も参照)。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0092】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0093】
尚、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0094】
尚、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0095】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0096】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0097】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネル770の画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0098】
尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0099】
(制御装置の詳細)
次に、
図3を参照して、制御装置700の構成要素の一例について説明する。なお、
図3に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0100】
図3に示すように、制御装置700は、例えば、型締制御部711と、エジェクタ制御部712と、射出制御部713と、計量制御部714と、表示制御部715と、入力取得部716と、を有する。型締制御部711は、型締装置100を制御し、
図4に示す型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、及び型開工程を実施する。射出制御部713は、射出装置300の射出駆動源を制御し、射出工程を実施する。射出駆動源は、例えば射出モータ350であるが、油圧シリンダなどであってもよい。射出工程は、充填工程と保圧工程を含む。射出工程は、型締工程中に行われる。計量制御部714は、射出装置300の計量駆動源を制御し、計量工程を実施する。計量駆動源は、例えば計量モータ340であるが、油圧ポンプなどであってもよい。計量工程は、冷却工程中に行われる。
【0101】
充填工程は、シリンダ310の内部に設けられる射出部材の移動速度の実績値が設定値になるように射出駆動源を制御する工程である。充填工程は、射出部材を前方に移動させることで、射出部材の前方に蓄積された液状の成形材料(例えば樹脂)を金型装置800の内部に充填させる工程である。射出部材は、例えばスクリュ330であるが、プランジャであってもよい。
【0102】
射出部材の移動速度は、速度検出器を用いて検出する。速度検出器は、例えば射出モータエンコーダ351である。充填工程では、射出部材が前進することで、射出部材から成形材料に作用する圧力が上昇する。充填工程は、保圧工程の直前に、射出部材を一時停止させる工程、又は射出部材を後退させる工程を含んでもよい。
【0103】
保圧工程は、射出部材から成形材料に作用する圧力の実績値が設定値になるように射出駆動源を制御する工程である。保圧工程は、射出部材を前方に押すことで、金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充する工程である。圧力は、荷重検出器360などの圧力検出器を用いて検出する。圧力検出器として、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。
【0104】
突き出し工程は、成形された成形品20を金型装置800から取り出す工程である。エジェクタ制御部712は、型開工程の終了を認識すると、エジェクタロッド210を前進させてエジェクタプレート826を押し出す。これにより、エジェクタプレート826に固定されている複数のエジェクタピン827が、可動金型820から成形品20を突き出す。
【0105】
次に、この突き出し工程を行うエジェクタ装置200およびその周辺(可動プラテン120、可動金型820)の構成について、
図5を参照しながらさらに詳述していく。
【0106】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に設置されている。可動プラテン120は、例えば、可動金型820が取付けられる可動金型取付部510と、トグル機構150の第1リンク152(
図1参照)が揺動自在に取付けられる第1リンク取付部520と、を備える。また、可動プラテン120は、可動金型取付部510と第1リンク取付部520との間で、荷重(例えば、型締力とその反力)を伝達する荷重伝達部530を有する。
【0107】
可動金型取付部510は、型開閉方向視で、方形状を呈しており、その四隅にはタイバー140が配置される切欠きまたは貫通穴が形成されている。可動金型取付部510の内部には、当該可動金型取付部510を型開閉方向に貫通するエジェクタロッド用空間512が形成されている。エジェクタロッド用空間512は、型開閉方向視で可動金型取付部510の中央部に位置している。エジェクタロッド用空間512は、可動金型取付部510の前端面511から荷重伝達部530の内部空間にかけて形成されている。
【0108】
また、可動金型取付部510には、可動プラテン120に可動金型820を取付けるためのロック機構540が設けられている。例えば、ロック機構540は、可動金型取付部510の前端面511から突出して、可動金型820の側周面に連結する複数の構造体によって構成され得る。なお、図示は省略しているが、ロック機構540は、固定金型810を固定するために固定プラテン110にも設けられている。
【0109】
第1リンク取付部520は、荷重伝達部530の後端面の四隅に設けられている。第1リンク取付部520は、Z軸方向およびY軸方向に間隔をあけて配置される複数(4つ)のリンク取付板521で構成される。複数のリンク取付板521には、Y軸方向に貫通する第1リンクピン穴522が形成されている。各第1リンク152は、各リンク取付板521に対して揺動自在に連結する。
【0110】
荷重伝達部530は、型開閉方向視で、方形枠状に形成されている。荷重伝達部530は、その内部および後端面において、エジェクタ装置200を強固に保持している。
【0111】
可動金型820は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。可動金型820は、可動プラテン120に固定される型筐体部821と、型筐体部821の内部に進退可能に配置される進退構造部825と、を備える。また、型筐体部821は、可動プラテン120に固定される可動取付板822と、可動取付板822に固定されるスペーサブロック823と、スペーサブロック823に固定される可動型板824と、を有する。
【0112】
可動取付板822には、可動取付板822を型開閉方向に貫通するエジェクタロッド穴822aが形成される。エジェクタロッド穴822aの内径は、エジェクタロッド210の外径よりも大きい。可動金型820は、エジェクタロッド穴822aを構成する内壁に対してエジェクタロッド210が非接触で移動可能となるように、可動プラテン120に設置される。
【0113】
スペーサブロック823は、型開閉方向視で、方形枠状に形成される。スペーサブロック823は、可動取付板822と可動型板824との間に空間821sを形成する。この空間821sには、進退構造部825の一部(エジェクタプレート826等)が進退可能に配置される。
【0114】
可動型板824は、固定金型810との型締状態で、キャビティ空間801を形成する。キャビティ空間801への射出後に固化された成形品20は、型開時に可動型板824と共に後退し、その後に可動型板824から突き出される。
【0115】
また、型筐体部821は、空間821s内(可動取付板822と可動型板824の間)に、X軸方向に延在する複数のガイドピン829を有する。各ガイドピン829は、進退構造部825の進退をガイドする。
【0116】
進退構造部825は、例えば、型開閉方向に対して垂直な板状のエジェクタプレート826と、エジェクタプレート826から前方に突出する複数のエジェクタピン827と、を含む。
【0117】
エジェクタプレート826は、各ガイドピン829が板厚方向に挿通された状態で、空間821sに配置される。このエジェクタプレート826は、各ガイドピン829に外装されたリターンバネ828により、可動型板824から遠ざかる方向に付勢されている。
【0118】
各エジェクタピン827は、可動型板824を型開閉方向に貫通する複数のピン穴にそれぞれ配置される。各エジェクタピン827は、エジェクタプレート826と一体に進退する。エジェクタプレート826が可動取付板822に接触している状態で、各エジェクタピン827の前端面は可動型板824の前端面と面一になる。各エジェクタピン827は、射出成形時に成形品20に接触する。
【0119】
エジェクタ装置200は、上記したように、エジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を移動させる駆動機構220と、を有する。エジェクタロッド210は、可動金型取付部510のエジェクタロッド用空間512、および型筐体部821のエジェクタロッド穴822a、空間821sにおいて、型開閉方向(X軸方向)に進退する。エジェクタロッド210は、前進時に型筐体部821と相対的に進退構造部825を前方に押すことで、進退構造部825を前進させて成形品20を突き出す。また、エジェクタロッド210の後退時には、進退構造部825のリターンバネ828の付勢によって、エジェクタプレート826および各エジェクタピン827が一体に後退する。
【0120】
エジェクタ装置200の駆動機構220は、図示しない取付盤を介して可動プラテン120の荷重伝達部530に固定されている。駆動機構220は、上記したようにエジェクタモータおよび運動変換機構を含む構成を採用できるが、これに限らず、例えば、空圧や液圧等によるシリンダ機構を採用してもよい。また、エジェクタ装置200は、エジェクタロッド210と駆動機構220との間に、エジェクタロッド210のX軸方向の進退をガイドする図示しないエジェクタクロスヘッド等を備えてもよい。
【0121】
図3に戻り、制御装置700の表示制御部715は、射出成形の開始前、射出成形時の各工程および射出成形の終了後等において、射出成形に関わる表示画面の情報を送信して、表示装置760に表示させる。表示画面は複数用意され、表示制御部715は、画面の切換表示、画面の重ね表示を可能としている。
【0122】
制御装置700の入力取得部716は、表示装置760に表示した表示画面に基づいてユーザが操作装置750を操作した操作内容の情報を取得する。例えば、ユーザにより射出成形の設定内容が変更された場合に、入力取得部716は、その設定内容を記憶媒体702に記憶する。
【0123】
本実施形態に係る射出成形機10の制御装置700は、成形品20の射出成形の実施、射出成形の準備等を適切に行うために、複数の動作モードを有している。表示制御部715は、制御装置700の起動に伴って、これら複数の動作モードをユーザが選択可能な表示画面761(
図6(A)参照)を表示装置760に表示する。ユーザは、表示画面761に基づいて操作装置750を操作し、複数の動作モードから適宜の動作モードを選択する。
【0124】
図6(A)に示すように、表示装置760に表示される表示画面761には、複数の操作ボタンを表示する操作パネル画像部762が表示される。制御装置700は、操作ボタンに対するユーザによるタッチ操作、または表示画面761に表示されたポインタの押下(マウスのクリック等)に基づいて、射出成形機10における各種の動作を実施させる。なお、各操作ボタンは、表示画面761に表示されることに限らず、物理的なボタン等であってもよい。
【0125】
操作パネル画像部762は、複数の動作モードを設定する操作ボタンとして、準備モードボタン763、切ボタン764、半自動モードボタン765、手動モードボタン766および全自動モードボタン767を有する。またこの他にも、操作パネル画像部762は、型締装置100の開閉を操作するための型閉操作ボタン768aおよび型開操作ボタン768bと、エジェクタロッド210を進退させる後退操作ボタン769aおよび前進操作ボタン769bと、を有する。
【0126】
図6(B)に示すように、準備モードボタン763、切ボタン764、半自動モードボタン765、手動モードボタン766および全自動モードボタン767は、切ボタン764を中心において、略X字状に配置されている。準備モードボタン763、切ボタン764、半自動モードボタン765、手動モードボタン766および全自動モードボタン767の各々には、ユーザが選択し易いように各動作モードを示すマーク、ピクトグラム、文字等が表示されている。
【0127】
準備モードボタン763は、ユーザの操作下に、射出成形機10に準備モードを実施させる。準備モードとは、金型装置800の交換作業(取外作業および取付作業)を行う際に使用するモード(第1動作モードの一例。以下、準備モードと呼ぶことがある。)である。この準備モードにおいて、制御装置700は、型締装置100の型締モータ160の駆動を制限する。例えば、制御装置700の型締制御部711は、準備モードの型締モータ160の動作について、射出成形モード(半自動モード、全自動モード)の型締モータ160の動作よりも低速および低トルクに制限する。なお準備モードにおいて、型締制御部711は、型締モータ160に対して速度制限、トルク制限、動作ストローク制限等の制限値を設定してもよい。当然にこれらの制限値は、射出成形モードの制限値よりも小さく設定される。
【0128】
また、準備モードでは、基本的に、型締モータ160、型厚調整モータ183、駆動機構220(エジェクタモータ)のみの動作を許可する設定とし、計量モータ340、射出モータ350等の動作を禁止(インターロック)する。これにより、射出成形機10は、射出装置300を動作できず、射出成形が実施不能となる。なお、準備モードから射出成形モードへの遷移時間を短縮化するために、準備モードでも、ノズル320の第1加熱器313、第2加熱器323等は動作させてもよい。
【0129】
あるいは、準備モードは、金型装置800の交換以外に使用してもよい。例えば、金型装置800の交換以外に使われる場面としては、金型装置800の取付け状態において、エジェクタ装置200の動作ストロークを確認する、型開閉方向の動作ストロークを確認する(3プレート金型等で開放量を確認する)等があげられる。なお、エジェクタ装置200の動作ストロークの確認では、射出成形モードよりも駆動機構220を低速で動作させて、エジェクタ装置200の突き出し量等を確認させるようにするとよい。また、サービスマン等が部品交換をした後に動作確認を行う場合も、準備モードに設定して射出成形機10を試運転させるとよい。すなわち、部品の組付けが悪い状態で高速で動かすと破損リスクがあるため、まず準備モードにより低速で動作させることで、部品の組み付けを適切に確認することができる。
【0130】
一方、切ボタン764は、射出成形機10における運転の準備時、または運転の終了時に押されるボタンである。例えば、この切ボタン764がユーザに押された場合には、所定の装置(例えば、ノズル320の第1加熱器313、第2加熱器323)以外の装置の操作を全て禁止(インターロック)する。
【0131】
そして、射出成形機10は、制御装置700の制御に基づき、上記した成形サイクル(計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程)を自動的に行う自動モードを有する。自動モードは、第2動作モードの一例である。本実施形態に係る自動モードは、射出成形を1サイクルだけ自動で行う半自動モードと、成形プログラムに従って射出成形を連続して行う全自動モードと、を含む。射出成形機10は、自動モードとして半自動モードおよび全自動モードのうち一方のみを有する構成でもよい。
【0132】
半自動モードボタン765は、半自動モードを選択する際に押されるボタンである。ユーザは、例えば、成形プログラムの確認や成形品20を試し成形する際、連続運転を停止する際等においてこの半自動モード(前述の通り、第2動作モードの一例)を使用する。
【0133】
手動モードボタン766は、ユーザ自身が射出成形機10の各装置を動作させる時に押されるボタンである。ユーザは、例えば、操作パネル画像部762の各操作ボタンを操作することで、型締モータ160、計量モータ340、射出モータ350、エジェクタ装置200の各々を動作させて、各装置の動作確認等を行う。
【0134】
全自動モードボタン767は、全自動モードを選択する際に押されるボタンである。すなわち、ユーザは、上記した射出成形の各工程を順に行って成形品20を製造する作業を繰り返して行う場合に、この全自動モード(前述の通り、第2動作モードの一例)を使用する。
【0135】
制御装置700(
図3参照)は、上記した複数の動作モードのうちユーザに選択された動作モードに応じて、各装置の動作の許可や禁止、制限等を行う。例えば、制御装置700は、準備モードが設定された場合、射出制御部713および計量制御部714により射出装置300動作を禁止すると共に、型締制御部711により型締装置100の動作を制限する。
【0136】
金型装置800の交換作業は、この準備モードに設定された状態、換言すれば、型締装置100の動作を制限した(型締モータ160を低速化および低トルク化した)状態で行われる。次に、射出成形機10における金型装置800の交換作業(取外作業)について、
図7(A)~
図7(D)を参照しながら説明する。
【0137】
図7(A)に示すように、金型装置800の取外作業において、ユーザは、まず操作パネル画像部762の型閉操作ボタン768aを押すことで、金型装置800の固定金型810と可動金型820との型閉じを行う。型締制御部711は、先に準備モードの設定がなされていることで、低速および低トルクで可動金型820を前進させて、固定金型810に可動金型820を接触させる。可動金型820の移動は、型締モータ160を駆動する他に、型厚調整モータ183を駆動してもよい。
【0138】
そして、固定金型810と可動金型820との接触(型閉)状態で、固定金型810と可動金型820の外側に設置された図示しない連結部を用いて、固定金型810と可動金型820を一体化させる。なお、連結部は、金型装置800の固定用の治具等を適用してもよい。
【0139】
さらに、金型装置800の取外作業では、
図7(B)に示すように、クレーン890を用いて、型締装置100から取り外す金型装置800を支持する。クレーン890は、金型装置800の上方から吊り下げ用のワイヤ891を垂らしている。ユーザは、連結部により一体化した金型装置800をこのワイヤ891に取付けることで、クレーン890によって吊り下げ支持可能とする。
【0140】
クレーン890による金型装置800の取付状態で、
図7(C)に示すように、ユーザは、型締装置100に対して金型装置800をロックしていたロック機構540のロックを解除する。これにより、型締装置100から金型装置800が分離可能となる。
【0141】
そして、ユーザは、まず操作パネル画像部762の型開操作ボタン768bを押すことで、金型装置800の固定金型810と可動金型820との型開き(寸開)を行う。これにより、クレーン890に吊り下げられた可動金型820が可動プラテン120から離れる。その後に、ユーザは、自由状態になって金型装置800をクレーン890により移動させることで、金型装置800を別の場所に搬送する。
【0142】
また、別の金型装置800を型締装置100に取付ける取付作業では、上記の取外作業と逆の手順を実施していく(具体的な動作の説明は省略する)。これにより、射出成形機10は、固定プラテン110に別の固定金型810を固定する一方で、可動プラテン120に別の可動金型820を固定することができる。
【0143】
ここで、
図5に示すように、以上の金型装置800の交換作業において、エジェクタ装置200のエジェクタロッド210の先端が、可動プラテン120(可動金型取付部510)の前端面511よりも突出している状態について考慮する。例えば、クレーン890により金型装置800を吊した形態で可動プラテン120から金型装置800を取り外した際に、ワイヤ891の伸び等によって金型装置800が若干上下に動くことがある。このような金型装置800の変位によって、前端面511から突出しているエジェクタロッド210に金型装置800が衝突(干渉)して、エジェクタ装置200が破損する可能性が生じる。
【0144】
このため、本実施形態に係る射出成形機10は、
図8(A)および
図9(A)に示すように、エジェクタロッド210が後退して待機する後退位置を、複数の動作モードに応じて相互に異なる複数(2つ)の位置に設定している。1つ目の後退位置は、射出成形モードにおいて配置されたエジェクタロッド210の先端よりも、当該エジェクタロッド210の先端を固定プラテン110側から離した第1後退位置BP1である。特に本実施形態に係る第1後退位置BP1は、エジェクタロッド210の先端を、可動プラテン120の前端面511の後方側(X軸負方向側)に設定している。2つ目の後退位置は、第1後退位置BP1に配置されたエジェクタロッド210の先端よりも、当該エジェクタロッド210の先端を固定プラテン110側に突き出した第2後退位置BP2である。特に本実施形態に係る第2後退位置BP2は、エジェクタロッド210の先端を、可動プラテン120の前端面511よりも前方側(X軸正方向側)に設定している。なお、第1後退位置BP1および第2後退位置BP2は、エジェクタロッド210の機械的な後退限界位置よりもX軸正方向側(固定プラテン110側)に設定されており、エジェクタ装置200は、エジェクタロッド210の後退限界位置を別に備えていてよい。
【0145】
準備モードでは、エジェクタロッド210を第1後退位置BP1に配置する。例えば、前端面511を基準としてX軸負方向を-とし、X軸正方向を+とした場合に、第1後退位置BP1における前端面511からエジェクタロッド210の先端までの距離D1は、0mm~-30mm程度の範囲に設定されるとよい。したがって、第1後退位置BP1は、エジェクタロッド210の先端と前端面511とが一致する位置でもよい。これにより、金型装置800の交換作業を行うために準備モードに設定した場合に、可動プラテン120の前端面511からエジェクタロッド210の先端が突出していない状態となる。交換作業において金型装置800が上下に移動しても、エジェクタロッド210との接触を回避することができる。
【0146】
制御装置700は、ユーザによる準備モードの選択に伴って、エジェクタロッド210を第1後退位置BP1に移動させる制御を行ってもよい。ただし、準備モードは、上記したように金型装置800の交換作業以外にも別の作業がある。したがって、本実施形態では、準備モードにおいてユーザによる後退操作ボタン769aの操作に基づき、第2後退位置BP2に位置しているエジェクタロッド210を第1後退位置BP1に移動させる設定としている。
【0147】
制御装置700は、ユーザにより準備モードが選択されると、エジェクタロッド210を第1後退位置BP1に誘導させる制御を行う。例えば、制御装置700は、準備モードにおいてエジェクタロッド210が第2後退位置BP2にある場合に、型締装置100の開閉移動を禁止する。これにより、金型装置800の交換作業ができなくなるため、ユーザは、型締装置100の型閉じの操作よりも先に、エジェクタロッド210を第1後退位置BP1に移動させる操作を行うようになる。
【0148】
制御装置700は、ユーザによる後退操作ボタン769aの操作に基づきエジェクタロッド210が第1後退位置BP1に位置すること認識した場合に、型締装置100の開閉移動を許可する。これにより、射出成形機10は、エジェクタロッド210の先端が可動プラテン120の前端面511から確実に突出していない状態として、金型装置800の交換作業を実施させることができる。
【0149】
一方、上記した自動モード(半自動モード、全自動モード)および手動モードでは、
図9(A)に示すように、エジェクタロッド210を第2後退位置BP2に配置する。第2後退位置BP2(可動プラテン120の前端面511からエジェクタロッド210の先端までの間隔D2)は、可動取付板822の厚みやエジェクタロッド210とエジェクタプレート826との空走距離等に応じて適切な位置に設定されるとよい。
【0150】
これにより、成形品20を射出成形するために射出成形モードに設定した場合に、エジェクタロッド210の先端がエジェクタプレート826に充分に近い位置に配置される。
図9(B)に示すように、射出成形時のエジェクタロッド210の動作距離が小さくなるため、射出成形機10は、突き出し工程を含む射出成形全体としてサイクルを短縮できる。また、エジェクタロッド210がエジェクタプレート826に触れる際の衝撃を緩和することが可能となる。
【0151】
制御装置700は、エジェクタロッド210が第1後退位置BP1にある場合にユーザによる半自動モード、全自動モード、手動モードのいずれかの選択に伴って、第2後退位置BP2に移動させる制御を行ってもよい。ただし、半自動モード、全自動モード、手動モードでは、装置の動作確認等を行う等の別の作業がある。したがって、本実施形態では、ユーザによる前進操作ボタン769bの操作に基づき、第1後退位置BP1に位置しているエジェクタロッド210を第2後退位置BP2に移動させる設定としている。
【0152】
制御装置700は、ユーザにより半自動モード、全自動モード、手動モードのいずれかが選択されると、エジェクタロッド210を第2後退位置BP2に誘導させる制御を行うとよい。例えば、制御装置700は、半自動モード、全自動モード、手動モード等においてエジェクタロッド210が第1後退位置BP1にある場合に、射出成形の動作を禁止する。これにより、ユーザは、先にエジェクタロッド210を第2後退位置BP2に移動させる操作を行うようになる。
【0153】
制御装置700は、ユーザによる前進操作ボタン769bの操作に基づきエジェクタロッド210が第2後退位置BP2に位置すること認識した場合に、射出成形を許可する。この結果、エジェクタロッド210の先端がエジェクタプレート826に近い状態として、射出成形を安定して実施させることができる。なお、制御装置700は、空走距離が殆どない場合に、エジェクタロッド210を第1後退位置BP1に配置して、半自動モード、全自動モード、手動モードを行うことができる設定としてもよい。
【0154】
本実施形態に係る射出成形機10は、基本的には、以上のように形成され、以下、エジェクタロッド210の後退位置を変更する制御方法について、
図10を参照しながら説明する。
【0155】
制御装置700は、射出成形機10を動作させる際に、予め設定された複数の動作モード(準備モード、切モード、半自動モード、手動モード、全自動モード)のうちユーザにより選択された動作モードを認識する。例えば、制御装置700は、ユーザによって準備モードが選択されているか否かを判定する(ステップS1)。そして、準備モードが選択されている場合(ステップS1:YES)には、ステップS2に進み、準備モードが選択されていない場合(ステップS1:NO)には、ステップS5に進む。
【0156】
ステップS2において、制御装置700は、現在のエジェクタロッド210の位置が第1後退位置BP1にあるか否かを判定する。エジェクタロッド210が第1後退位置BP1にある場合(ステップS2:YES)には、ステップS3に進み、エジェクタロッド210が第1後退位置BP1にない場合(ステップS2:NO)には、ステップS4に進む。
【0157】
ステップS3において、制御装置700は、エジェクタロッド210が第1後退位置BP1に位置することに基づき、型締装置100による開閉移動を許可する。これにより、制御装置700は、ユーザによる型閉操作ボタン768aの操作に基づき、型締装置100を動作させる。その結果、ユーザは、固定金型810と可動金型820を閉塞した後に、金型装置800の交換作業を安定的に行うことができる(
図7も参照)。
【0158】
一方、ステップS4において、制御装置700は、エジェクタロッド210が第2後退位置BP2に位置することに基づいて、型締装置100による開閉移動を禁止(インターロック)する。これにより、ユーザは、型閉操作ボタン768aを操作しても、金型装置800が閉じずに交換作業ができなくなるため、エジェクタロッド210を第1後退位置BP1に移動させる操作を先に行うように誘導できる。なおこの際、制御装置700は、表示装置760、スピーカ等を介して、エジェクタロッド210の第1後退位置BP1への移動を要求する報知を行うとよい。そして、エジェクタロッド210が第1後退位置BP1に移動した状態で同じ処理フローを行えば、ステップS3において金型装置800の交換作業を良好に行うことができる。
【0159】
また、ステップS1において準備モード以外の場合(ステップS1:NO)には、エジェクタロッド210が第2後退位置BP2にあったほうが、都合がよい場合が多い。このためステップS5において、制御装置700は、エジェクタロッド210の位置が第2後退位置BP2にあるか否かを判定する。そして、エジェクタロッド210が第2後退位置BP2にある場合(ステップS5:YES)には、ステップS6に進み、エジェクタロッド210が第2後退位置BP2にない場合(ステップS5:NO)には、ステップS7に進む。
【0160】
ステップS6において、制御装置700は、エジェクタロッド210が第2後退位置BP2に位置することに基づき、射出成形機10による射出成形の動作を許可する。したがって、射出成形機10は、射出成形を実施して成形品を製造することができる。
【0161】
一方、ステップS7において、制御装置700は、エジェクタロッド210が第1後退位置BP1に位置することに基づき、射出成形の動作を禁止(インターロック)する。これにより、ユーザは、エジェクタロッド210を第2後退位置BP2に移動させるようになる。エジェクタロッド210が第2後退位置BP2に移動した状態で同じ処理フローを行えば、ステップS6において射出成形を良好に行うことができる。
【0162】
以上のように、本実施形態に係る射出成形機10および制御装置700は、複数の動作モードの各々においてエジェクタロッド210を適切な位置に配置させることで、射出成形機10の種々の作業を良好に実施させることができる。この結果、射出成形機10は、作業効率の向上、部品の破損の回避等を実現できる。特に、射出成形モード(第2動作モード)では、エジェクタロッド210を第2後退位置BP2に配置する。これにより、射出成形機10は、エジェクタロッド210の空走距離を短くして、成形品20の突き出し工程の効率化を図ると共に、エジェクタプレート826または成形品20に対する衝撃を緩和することができる。逆に、準備モード(第1動作モード)では、エジェクタロッド210を第1後退位置BP1に配置する。これにより、射出成形機10は、エジェクタロッド210と金型装置800が衝突することを回避して、金型装置800の交換作業を安定的に行うことができる。
【0163】
なお、本実施形態に係る射出成形機10および制御装置700は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、第2後退位置BP2は、準備モードで第1後退位置BP1に配置されたエジェクタロッド210の先端よりも、当該エジェクタロッド210の先端を固定プラテン110側に突き出した位置であればよく、前端面511よりも後方側に位置させてもよい。あるいは、第1後退位置BP1も、射出成形モードで第2後退位置BP2に配置されたエジェクタロッド210の先端よりも、当該エジェクタロッド210の先端を固定プラテン110から離した位置であればよく、前端面511から若干突出していてもよい。
【0164】
また、制御装置700は、準備モードの実施時にエジェクタロッド210が第2後退位置BP2にある状態で、型締装置100を動作させる操作指令を受け付けた場合に、第1後退位置BP1までエジェクタロッド210を自動的に移動させる構成としてもよい。例えば上記したように、ユーザは、準備モードにおいて金型装置800の交換作業を行う際に、型閉操作ボタン768aを押す操作を行う。エジェクタロッド210が第2後退位置BP2にある場合に、制御装置700は、この型閉操作ボタン768aを押す操作に基づいて、エジェクタロッド210を第1後退位置BP1に自動的に後退させる。これにより、ユーザがエジェクタロッド210を第1後退位置BP1に移動させることを忘れても、金型装置800の交換作業のために型締装置100を動作させた際にエジェクタロッド210を第1後退位置BP1にスムーズに配置できる。
【0165】
また、制御装置700は、準備モードにおいて、後退操作ボタン769aの押し操作により第1後退位置BP1にエジェクタロッド210を移動させた後、別の操作によってエジェクタロッド210を第2後退位置BP2まで戻す動作を行ってもよい。例えば、制御装置700は、操作装置750を介して後退操作ボタン769aを連続二回押す操作(ダブルクリック)を認識した場合に、第1後退位置BP1から第2後退位置BP2にエジェクタロッド210を戻す処理を行う。これにより、準備モードでもエジェクタロッド210を第2後退位置BP2に配置することで、金型装置800の交換作業を行う以外の作業において、エジェクタロッド210の動作を短縮化することができる。
【0166】
さらに、制御装置700は、射出成形モードや手動モードにおいて、前進操作ボタン769bの押し操作により第2後退位置BP2にエジェクタロッド210を移動させた後、別の操作によって第1後退位置BP1まで戻す動作を可能としてもよい。これにより、射出成形モードや手動モードでもエジェクタロッド210を第1後退位置BP1に配置して、種々の作業を行うことができる。換言すれば、上記の機能を有することによって、射出成形機10は、エジェクタロッド210の位置をユーザの任意に簡単に変えることが可能となる。
【0167】
今回開示された実施形態に係る制御装置700および射出成形機10は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0168】
10 射出成形機
200 エジェクタ装置
210 エジェクタロッド
700 制御装置
800 金型装置
BP1 第1後退位置
BP2 第2後退位置