(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089420
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】マットレス
(51)【国際特許分類】
A47C 27/04 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
A47C27/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204772
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000010032
【氏名又は名称】フランスベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 穏博
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AB00
3B096AB08
(57)【要約】
【課題】 解体時の作業効率を改善可能なマットレスを提供する。
【解決手段】 マットレスは、複数のコイルを有するスプリングユニットと、前記スプリングユニットを囲う壁部材と、を備える。前記スプリングユニットは、第1縁を含む下部と、第2縁を含み、前記下部と反対側に位置する上部と、を有し、前記第1縁および前記第2縁は、枠線が設けられていない部分を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイルを有するスプリングユニットと、
前記スプリングユニットを囲う壁部材と、を備え、
前記スプリングユニットは、第1縁を含む下部と、第2縁を含み、前記下部と反対側に位置する上部と、を有し、
前記第1縁および前記第2縁は、枠線が設けられていない部分を有する、
マットレス。
【請求項2】
前記スプリングユニットは、前記第1縁および前記第2縁の少なくとも一部に設けられる枠線を有する、
請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記スプリングユニットは、長手方向に長尺な略直方体状に形成され、
前記第1縁は、前記長手方向に並ぶ一対の第1短縁と、前記長手方向と直交する幅方向に並ぶ一対の第1長縁と、を有し、
前記第2縁は、前記長手方向に並ぶ一対の第2短縁と、前記幅方向に並ぶ一対の第2長縁と、を有し、
前記枠線は、前記一対の第1短縁と、前記一対の第2短縁とにそれぞれ設けられ、
前記枠線が設けられていない部分は、前記一対の第1長縁と、前記一対の第2長縁とにそれぞれ位置する、
請求項2に記載のマットレス。
【請求項4】
前記スプリングユニットと前記壁部材との間に設けられ、前記スプリングユニットの側部を囲う第1シート材と、
前記枠線が設けられていない部分と前記第1シート材との間に設けられる第2シート材と、をさらに備える、
請求項3に記載のマットレス。
【請求項5】
前記スプリングユニットと前記壁部材の外周面との間に位置し、前記スプリングユニットの外周に沿って設けられる紐状部材をさらに備え、
前記紐状部材は、前記外周面から突出する端部を有する、
請求項1に記載のマットレス。
【請求項6】
前記壁部材は、発泡体によって形成されている、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のマットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
マットレスは解体が難しく、廃棄時には埋め立てて処理することもある。ところが昨今、日本国内においてはごみの埋め立て地が十分に確保できず、ごみの処理方法に困窮している。そこで、解体が容易でリサイクルに適したマットレスが望まれていた。
【0003】
例えば特許文献1には、マットレスの外装体とスプリングユニットの分離作業に用いられる解体処理装置が開示されている。また、特許文献2には、解体しやすいように工夫されたマットレスの構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3459221号公報
【特許文献2】特開平9-191976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1,2を考慮しても、マットレスを解体するための技術に関しては、種々の改善の余地がある。そこで、本発明は、解体時の作業効率を改善可能なマットレスを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るマットレスは、複数のコイルを有するスプリングユニットと、前記スプリングユニットを囲う壁部材と、を備える。前記スプリングユニットは、第1縁を含む下部と、第2縁を含み、前記下部と反対側に位置する上部と、を有し、前記第1縁および前記第2縁は、枠線が設けられていない部分を有する。
【0007】
前記スプリングユニットは、前記第1縁および前記第2縁の少なくとも一部に設けられる枠線を有してもよい。前記スプリングユニットは、長手方向に長尺な略直方体状に形成され、前記第1縁は、前記長手方向に並ぶ一対の第1短縁と、前記長手方向と直交する幅方向に並ぶ一対の第1長縁と、を有し、前記第2縁は、前記長手方向に並ぶ一対の第2短縁と、前記幅方向に並ぶ一対の第2長縁と、を有してもよい。前記枠線は、前記一対の第1短縁と、前記一対の第2短縁とにそれぞれ設けられ、前記枠線が設けられていない部分は、前記一対の第1長縁と、前記一対の第2長縁とにそれぞれ位置してもよい。
【0008】
前記マットレスは、前記スプリングユニットと前記壁部材との間に設けられ、前記スプリングユニットの側部を囲う第1シート材と、前記枠線が設けられていない部分と前記第1シート材との間に設けられる第2シート材と、をさらに備えてもよい。
【0009】
前記マットレスは、前記スプリングユニットと前記壁部材の外周面との間に位置し、前記スプリングユニットの外周に沿って設けられる紐状部材をさらに備え、前記紐状部材は、前記外周面から突出する端部を有してもよい。前記壁部材は、発泡体によって形成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、解体時の作業効率を改善可能なマットレスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るマットレスの概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したタブの近傍を拡大して示す概略的な斜視図である。
【
図3】
図3は、マットレスの解体作業の一場面を概略的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、マットレスが備える内装体の概略的な斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示したV-V線に沿う内装体の概略的な断面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示したVI-VI線に沿う内装体の概略的な断面図である。
【
図7】
図7は、スプリングユニット、第1シート材、および第2シート材を示す概略的な分解斜視図である。
【
図8】
図8は、マットレスが備える内装体の概略的な平面図である。
【
図9】
図9は、マットレスが備える内装体の概略的な平面図である。
【
図10】
図10は、壁部材の形成に関する工程を示す概略的な断面図である。
【
図11】
図11は、垂直荷重試験における測定点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施形態につき図面を参照しながら説明する。
以下の説明において、マットレスを構成する各要素の「上面」はマットレスの使用時に人が乗る側を向く面を意味し、各要素の「下面」はマットレスの使用時に床側を向く面を意味する。また、各要素の「側周面」、「外周面」、および「内周面」は、上面と下面を繋ぐ面を意味する。
【0013】
各図には、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸を示す。X軸に沿う方向を第1方向Xと定義し、Y軸に沿う方向を第2方向Yと定義し、Z軸に沿う方向を第3方向Zと定義する。
【0014】
本実施形態において、第1方向Xはマットレス1の幅方向に相当し、第2方向Yはマットレス1の長手方向に相当する。第3方向Zと平行にマットレス1を見ることを平面視と呼ぶ。
【0015】
図1は、本実施形態に係るマットレス1の概略的な斜視図である。マットレス1は、例えば、第2方向Yに長尺な略直方体形状を有する。マットレス1の平面視における形状は、第1方向Xに沿う短辺と、第2方向Yに沿う長辺と、を有する。この場合におけるマットレス1の4つの角部は、滑らかな曲面状(R状)であってもよい。
【0016】
マットレス1は、外装体2と、エッジテープ3と、タブ4(引張りテープ)と、を備える。外装体2は、その内部に配置された内装体5(
図3参照)の下面および側面を覆う第1部分21と、内装体5の上面を覆う第2部分22と、を有する。第1部分21および第2部分22は、いずれも布材で構成される。第1部分21および第2部分22は、キルティング加工されたものであってもよい。
【0017】
エッジテープ3は、第1部分21と第2部分22とを接続する。これにより、外装体2は袋状に閉じられる。エッジテープ3の平面視における形状は、第1方向Xに沿う短辺と、第2方向Yに沿う長辺とを有する略長方形状である。タブ4は、エッジテープ3の短辺における略中央部に設けられる。
【0018】
図2は、タブ4の近傍を拡大して示す概略的な斜視図である。エッジテープ3は、平行な一対の縫合ラインLによって第1部分21の周縁部と第2部分22の周縁部とに縫い付けられる。
【0019】
エッジテープ3は、第1端部31と、第2端部32と、を有する。第1端部31は、エッジテープ3を第1部分21と第2部分22とに縫い付ける際に縫い始めとなる端とその近傍を含む部分である。第2端部32は、エッジテープ3を第1部分21と第2部分22とに縫い付ける際に縫い終わりとなる端とその近傍を含む部分である。
【0020】
第2端部32は、第1端部31の外側に重ねられる。言い換えると、第1端部31は、外装体2と第2端部32との間に位置する。これにより、第1端部31と第2端部32とが重なった領域Rが形成されている。
【0021】
タブ4は、例えばループ状であり、一部が領域Rと重なっている。タブ4は、第2端部32のうち領域Rを除く部分(図中の領域Rの右側部分)とも重なっているが、第1端部31のうち領域Rを除く部分(図中の領域Rの左側部分)とは重なっていない。
【0022】
タブ4は、
図2に示す例において、一対の縫合ラインLの一方のみと重なり、他方とは重なっていない。タブ4は、第2端部32の下方(第1部分21側)に配置され、好ましくは領域Rにおいて第1端部31と第2端部32との間に位置する。
【0023】
エッジテープ3は、縫い始めの端から縫い方向DLに沿って外装体2に縫い付けられる。この縫合作業が第2端部32に差し掛かったとき、タブ4は、第2端部32とともに外装体2に縫い付けられる。
【0024】
以上のような構成のエッジテープ3およびタブ4は、マットレス1の解体時において外装体2を剥がす作業の円滑化に寄与する。この効果につき、
図2および
図3を用いて説明する。
【0025】
図3は、マットレス1の解体作業の一場面を概略的に示す斜視図である。マットレス1の解体作業においては、図示したようにタブ4を引っ張ってエッジテープ3から引きちぎる。このとき、エッジテープ3の第2端部32を外装体2に縫い付ける下糸が破断する。そのため、第2端部32を外装体2から剥がしやすくなる。
【0026】
その後、
図2および
図3に示す引張方向DR(縫い方向DLの反対方向)にエッジテープ3を引っ張って外装体2から剥がしていく。第1端部31まで剥がし終えると、外装体2の第1部分21と第2部分22が完全に分離される。これにより、外装体2の内側に配置された内装体5を取り出すことが可能である。
【0027】
続いて、
図4乃至
図9を参照して内装体5の構造を説明する。
【0028】
図4は、マットレス1が備える内装体5の概略的な斜視図である。
図5は、
図4に示したV-V線に沿う内装体5の概略的な断面図である。
図6は、
図4に示したVI-VI線に沿う内装体5の概略的な断面図である。
図7は、スプリングユニット6、第1シート材81、および第2シート材82A,82Bを示す概略的な分解斜視図である。
図8および
図9は、マットレス1が備える内装体5の概略的な平面図である。
図5においては内装体5を第1方向Xに見て、
図6においては内装体5を第2方向Yに見ている。
図8および
図9においては、保護材71A,71Bおよびクッション材72A,72Bの図示を省略している。
図8は、第3方向Zに内装体5を見ている。
【0029】
内装体5は、
図4に示すように、上面FAと、下面FBと、を有している。内装体5は、例えば、第2方向Yに長尺な略直方体形状を有する。内装体5は、4つの角部C1,C2,C3,C4を有する。角部C1,C2,C3,C4は、滑らかな曲面状(R状)であってもよい。
【0030】
内装体5は、
図4乃至
図9に示すように、スプリングユニット6と、保護材71A,71Bと、クッション材72A,72Bと、第1シート材81と、第2シート材82A,82Bと、壁部材9と、を備える。
【0031】
図5および
図6に示すように、保護材71Aはスプリングユニット6の上面側に配置され、保護材71Bはスプリングユニット6の下面側に配置される。クッション材72Aは保護材71Aの上面側に配置され、クッション材72Bは保護材71Bの下面側に配置される。保護材71A,71Bは、例えばフェルト、サイザルまたは圧縮綿で形成される。クッション材72A,72Bは、例えばウレタンフォームなどの発泡体で形成される。
【0032】
スプリングユニット6は、
図7に示す例において、第2方向Yに長尺な略直方体状に形成される。スプリングユニット6は、下部61と、下部61と反対側に位置する上部62と、を有する。下部61は、外周に位置する第1縁610を含む。上部62は、外周に位置する第2縁620を含む。
【0033】
第1縁610は、
図8に示すように、第2方向Yに並ぶ一対の第1短縁611,612と、第1方向Xに並ぶ一対の第1長縁613,614と、を有する。第2縁620は、
図9に示すように、第2方向Yに並ぶ一対の第2短縁621,622と、第1方向Xに並ぶ一対の第2長縁623,624と、を有する。
【0034】
スプリングユニット6は、
図8および
図9に示す例において、複数のばね体64を有する。複数のばね体64は、第2方向Yに並ぶ。ばね体64は、1本の鋼線などの線材によって軸線をほぼ平行にする複数のコイル641を有する。
【0035】
複数のばね体64は、複数のヘリカル線65によって連結される。複数のヘリカル線65は、第2方向Yに延びるとともに、第1方向Xに並ぶ。ヘリカル線65は、隣り合うばね体64のコイル641の上端と下端とにそれぞれ巻き付けられている。これにより、隣り合うばね体64が連結される。
【0036】
スプリングユニット6の構成は、上記の例に限られない。スプリングユニット6は、例えば、第1方向Xに並ぶ複数のばね体64で構成されてもよい。この場合、第1方向Xに延びるとともに、第2方向Yに並ぶ複数のヘリカル線65によって、隣り合うばね体64が連結される。
【0037】
スプリングユニット6は、枠線66,67,68,69をさらに有する。枠線66,67,68,69は、例えば、略U字形状を有する。枠線66,67,68,69は、第1縁610および第2縁620の少なくとも一部に設けられる。
図7乃至
図9に示す例において、枠線66,67は一対の第1短縁611,612に設けられ、枠線68,69は一対の第2短縁621,622に設けられる。言い換えると、枠線66,67,68,69は、マットレス1の上面および下面における短辺側にそれぞれ設けられる。
【0038】
さらに、枠線66,67は第1長縁613,614の一部にも設けられ、枠線68,69は第2長縁623,624の一部にも設けられる。言い換えると、枠線66,67は第1縁610の角部にも設けられ、枠線68,69は第2縁620の角部にも設けられる。なお、枠線66,67は第1長縁613,614に設けられなくてもよいし、枠線68,69は第2長縁623,624に設けられなくてもよい。
【0039】
枠線66,67,68,69の端部66a,67a,68a,69aは、スプリングユニット6の内部に向けて折り曲げられている。言い換えると、枠線66,67,68,69の端部66a,67a,68a,69aの先端は、スプリングユニット6の内部に突出する。
【0040】
第1縁610および第2縁620の観点において、第1縁610は枠線66,67が設けられていない部分を有し、第2縁620は枠線68,69が設けられていない部分を有する。
【0041】
一対の第1長縁613,614のうち枠線66,67が設けられていない部分を部分NP1とし、一対の第2長縁623,624のうち枠線68,69が設けられていない部分を部分NP2とする。部分NP1は一対の第1長縁613,614にそれぞれ位置し、部分NP2は一対の第2長縁623,624にそれぞれ位置する。
【0042】
部分NP1は、第2方向Yにおいて、枠線66の端部66aと枠線67の端部67aとの間に位置し、部分NP2は、第2方向Yにおいて、枠線68の端部68aと枠線69の端部69aとの間に位置する。
【0043】
部分NP1の第2方向Yの長さは、第1長縁613,614のうち部分NP1以外の部分の第2方向Yの長さよりも大きい。部分NP2の第2方向Yの長さは、第2長縁623,624のうち部分NP2以外の部分の第2方向Yの長さよりも大きい。部分NP1の第2方向Yの長さは、例えば、部分NP2の第2方向Yの長さと等しい。部分NP1の第2方向Yの長さは、部分NP1の第2方向Yの長さと異なってもよい。
【0044】
枠線66,67,68,69は、例えば、鋼材や硬質合成樹脂などの硬質な材料で形成される。枠線66,67,68,69を形成する線材の太さは、例えば、ばね体64を構成する線材の太さやヘリカル線65を形成する線材の太さよりも大きい。
【0045】
枠線66,67,68,69を形成する線材の太さは、例えば、直径3mm以上である。一例では、直径は、3.5mmである。枠線66,67,68,69は、複数のクリップ(図示しない)によってばね体64とそれぞれ連結される。
【0046】
壁部材9は、第1シート材81および第2シート材82A,82Bを挟んで、スプリングユニット6、保護材71A,71B、およびクッション材72A,72Bを囲う。壁部材9は、例えば、枠形状を有する。
【0047】
より具体的には、壁部材9の長辺側の部分と短辺側の部分とは一体的に形成される。壁部材9の第3方向Zの長さは、例えば、スプリングユニット6の第3方向Zの長さよりも大きい。
【0048】
壁部材9は、例えば、コールドフォームなどの発泡体によって形成される。発泡体を形成する材料は、例えば、ウレタンである。壁部材9は、比較的硬い発泡体である。壁部材9を形成する発泡体は、例えば、第1シート材81および第2シート材82A,82Bよりも硬い。なお、壁部材9は、発泡体でなくてもよく、他の樹脂材料等によって形成されてもよい。
【0049】
壁部材9は、スプリングユニット6側の内周面90と、内周面90と反対側に位置する外周面91と、を有する。このような内装体5の構成においては、クッション材72Aおよび壁部材9の上面が内装体5の上面FAに相当し、クッション材72Bおよび壁部材9の下面が内装体5の下面FBに相当する。
【0050】
壁部材9は、例えば、スリット92(
図4参照)を有してもよい。スリット92は、外周面91からスプリングユニット6に向けて形成される。
図5に示す例において、スリット92は、外周面91から内周面90まで到達している。ただし、スリット92は、外周面91から内周面90の手前までの範囲に形成されてもよい。
【0051】
スリット92の第3方向Zにおける位置は、
図5に示す例において、スプリングユニット6と保護材71Aとの境界の第3方向Zにおける位置と同等である。スリット92は、
図4に示す例において、角部C1,C2,C3,C4にそれぞれ設けられる。壁部材9は、隣り合うスリット92の間でそれぞれスリット92よりも上側に位置する部分と、スリット92よりも下側に位置する部分とが繋がっている。
【0052】
なお、スリット92は、角部C1,C2,C3,C4のいずれか1つ、2つ、または3つに対して設けられてもよい。また、スリット92は、角部C1,C2,C3,C4以外の位置に設けられてもよい。
【0053】
第1シート材81は、スプリングユニット6と壁部材9との間に設けられる。第1シート材81は、スプリングユニット6の側部、保護材71A,71B、およびクッション材72A,72Bの側周面を囲う。第1シート材81の外周面は、例えば、内周面90と接触する。
【0054】
第2シート材82A,82Bは、第2方向Yに延びるとともに、第1方向Xに並んで設けられる。第2シート材82A,82Bは、略U字形状を有する。第2シート材82Aは、第2方向Yに沿う長辺部84Aと、第1方向Xに沿う短辺部85A,86Aと、を有する。第2シート材82Bは、第2方向Yに沿う長辺部84Bと、第1方向Xに沿う短辺部85B,86Bと、を有する。
【0055】
長辺部84B、スプリングユニット6、および長辺部84Aは、この順で第1方向Xに並ぶ。長辺部84A,84Bは、第1方向Xにおいて、部分NP1,NP2と第1シート材81との間に位置する部分をそれぞれ有する。
【0056】
短辺部86A、スプリングユニット6、および短辺部85Aはこの順で第2方向Yに並び、短辺部86B、スプリングユニット6、および短辺部85Bはこの順で第2方向Yに並ぶ。
【0057】
言い換えると、短辺部85A,85Bは、第2方向Yにおいて、枠線66,68と第1シート材81との間に位置し、短辺部86A,86Bは第2方向Yにおいて、枠線67,69と第1シート材81との間に位置する。
【0058】
短辺部85Aは第1方向Xにおいて短辺部85Bと間隔を置いて設けられ、短辺部86Aは第1方向Xにおいて短辺部86Bと間隔を置いて設けられる。言い換えると、スプリングユニット6は、第2方向Yにおいて、第2シート材82A,82Bと重ならない部分NP3を有する。
【0059】
第1シート材81および第2シート材82A,82Bは、例えば、ウレタンフォームなどの発泡体で形成される。第1シート材81の厚さは、例えば、第2シート材82A,82Bの厚さよりも小さい。第1シート材81の厚さは、第2シート材82A,82Bの厚さよりも大きくてもよいし、第2シート材82A,82Bの厚さと等しくてよい。
【0060】
マットレス1は、
図4に示すように、紐状部材S10をさらに備えてもよい。紐状部材S10は、一例では、てぐすによって形成されるが、この例に限られない。紐状部材S10の断面形状は、一例では円形状であるが、長方形状でもよいし、他の形状でもよい。
【0061】
紐状部材S10は、スプリングユニット6の外周に沿って設けられる。紐状部材S10は、例えば、スプリングユニット6の外周の全体にわたって設けられてもよいし、スプリングユニット6の外周の一部にのみ設けられてもよい。
【0062】
紐状部材S10は、スプリングユニット6と壁部材9の外周面91との間に位置している。紐状部材S10は、
図5および
図6に示すように、壁部材9の内部に設けられてもよい。この場合、紐状部材S10は、例えば、壁部材9の内部において内周面90側に位置する。紐状部材S10は、他の例では、壁部材9と第1シート材81との間に設けられてもよい。
【0063】
紐状部材S10は、外周面91から突出する端部S10aを有する。端部S10aは、
図4に示す例において、壁部材9のスリット92から突出する。端部S10aは、外周面91のうち、スリット92以外の部分から突出してもよい。
【0064】
端部S10aは、ユーザが持つことできる程度の長さを有していればよい。端部S10aは、マットレス1の解体時において、把持部としての機能を有する。紐状部材S10の端部S10aと反対側に位置する端部(図示しない)は、スプリングユニット6と繋がっていてもよいし、スプリングユニット6以外の部材と繋がっていてもよい。
【0065】
1本の紐状部材S10がスプリングユニット6の外周に沿って設けられてもよいし、複数本の紐状部材S10がスプリングユニット6の外周に沿って設けられてもよい。複数本の紐状部材S10が設けられる場合、複数の端部S10aが外周面91から突出してもよい。
【0066】
ここで、マットレス1の製造方法のうち、壁部材9の形成に関する工程について説明する。
図10は、壁部材9の形成に関する工程を示す概略的な断面図である。壁部材9の形成に際しては、積層体Mが作業台100の上に置かれる。積層体Mは、クッション材72B、保護材71B、スプリングユニット6、保護材71Aおよびクッション材72Aが順に積み重ねられる。さらに、積層体Mは、外周に第1シート材81および第2シート材82A,82Bが設けられる。
【0067】
作業台100には、複数の枠体110が設けられる。枠体110は、例えばヒンジによって作業台100の端部に連結され、破線で示すように寝た状態から実線で示すように起立した状態に回動可能である。
【0068】
枠体110は、例えば、金属材料、樹脂材料、および木材などによって形成される。枠体110は、積層体Mの4辺に対して設けられている。枠体110を起立させると、積層体Mの側周面が枠体110で囲われる。
【0069】
このとき、枠体110と積層体Mとの間には、隙間Gが形成される。枠体110を起立させた状態で、隙間Gに壁部材9の元となる液剤Qが注入される。隙間Gに注入された液剤Qが発泡することにより、壁部材9が形成される。
【0070】
これにより、壁部材9は、長辺側の部分と短辺側の部分とが一体的に形成される。作業台100および積層体Mは、例えば、液剤Qの注入前後および液剤Qの注入中において、所定の温度にて温度管理されてもよい。
【0071】
図示されていないが、作業台100には、スリット92を形成するための複数のプレートがさらに配置されてもよい。複数のプレートは、例えばプラスチックで形成される。壁部材9の形成の後、各プレートが取り除かれることにより、プレートの形状に応じたスリット92が壁部材9に形成される。図示されていないが、
図4を用いて説明した紐状部材S10が隙間Gに配置されてもよい。これにより、紐状部材S10は、壁部材9の内部に設けられる。
【0072】
壁部材9の形成の後、枠体110が取り除かれる。これにより、壁部材9とスプリングユニット6などが一体となった内装体5が形成される。その後、内装体5を外装体2の第1部分21および第2部分22をエッジテープ3により接続する工程などを経てマットレス1が完成する。
【0073】
マットレス1の解体時には、
図3を用いて説明した通り、エッジテープ3を外装体2から剥がし、第1部分21と第2部分22を分離して内装体5を取り出す。続いて、保護材71Aおよびクッション材72Aをスプリングユニット6および壁部材9から分離する。保護材71Aおよびクッション材72Aを分離すると、スプリングユニット6の上面側が露出する。この状態において、スプリングユニット6を取り出すことができる。
【0074】
以上のように構成されたマットレス1であれば、スプリングユニット6の第1縁610は部分NP1を有し、第2縁620は部分NP2を有する。そのため、取り出されたスプリングユニット6を解体する際、部分NP1および部分NP2において、枠線を切断する必要がない。
【0075】
スプリングユニットの周縁部の全周にわたって枠線を設けると、枠線を切断する作業が必要となる。枠線を形成する線材の太さは大きいため、枠線は市販の工具では切断しにくい。そのため、スプリングユニットの解体時の作業には時間がかかった。
【0076】
スプリングユニット6のばね体64およびヘリカル線65を形成する線材は、枠線を形成する線材よりも細い。そのため、ユーザは、ばね体64およびヘリカル線65を形成する線材を容易に切断することが可能である。
【0077】
スプリングユニット6であれば、枠線を切断することなく、ばね体64およびヘリカル線65を形成する線材を切断することによってスプリングユニット6を複数の部分に解体することが可能である。このように、本実施形態であれば、マットレス1の解体時の作業効率を改善することが可能である。
【0078】
例えば、大型のスプリングユニットは、廃棄時に自家用車などへの積み込みが困難であった。本実施形態に係るマットレス1であれば、枠線を切断することなく、スプリングユニット6を所望の大きさまで解体することが可能である。すなわち、ユーザは、自家用車などへ積み込むことが可能な大きさまでスプリングユニット6を解体し、廃棄することが可能である。
【0079】
本実施形態においては、一対の第1長縁613,614が部分NP1を有し、一対の第2長縁623,624が部分NP2を有する。そのため、解体時において、第1方向Xに沿ってスプリングユニット6を切断することが可能である。ユーザは、例えば、第1方向Xに並ぶ複数のヘリカル線65を切断することで、スプリングユニット6を複数の部分に解体することが可能である。
【0080】
このように、本実施形態に係るマットレス1であれば、スプリングユニット6の解体時において、枠線66,67,68,69が邪魔になりにくく、マットレス1の解体作業を効率的に行うことが可能である。
【0081】
本実施形態において、マットレス1は、壁部材9を備える。壁部材9は、比較的硬い材料で形成される。ここで、JIS S 1102「住宅用普通ベッド」に規定される垂直荷重試験の結果を示す。
【0082】
図11は、垂直荷重試験における測定点を示す図である。
図11に示す例においては、図中上側が頭側に相当し、図中下側が頭側に相当する。垂直荷重試験における測定点は、
図11に示すように、第1測定点A1、第2測定点A2、および第3測定点A3である。第2測定点A2は、マットレスの略中央部に相当する。
【0083】
これらの測定点A1,A2,A3は、マットレスの第2方向Yにおける略中央部に位置する。本実施形態に係るマットレス1の場合、これらの測定点A1,A2,A3は、第1方向Xにおいて、部分NP1,NP2と重なる。言い換えると、第1測定点A1および第3測定点A3は、スプリングユニット6の部分NP1,NP2とその近傍の領域に含まれる。
【0084】
垂直荷重試験では、加圧板によって力を加える。加圧板の大きさは、直径20cmである。この場合、第1測定点A1および第3測定点A3において、加圧板は、壁部材およびスプリングユニットに力を加える。
【0085】
上記の規格に基づき、第1測定点A1、第2測定点A2、および第3測定点A3のたわみ増加量D1を算出する。たわみ増加量D1は、以下の式で算出される。
[式] D1=δ350-δ150
式において、δ150は150N荷重時のたわみ量(mm)であり、δ350は350N荷重時のたわみ量(mm)である。
【0086】
マットレス1における試験結果は、第1測定点A1のたわみ増加量D1が27mmであり、第2測定点A2のたわみ増加量D1が31mmであり、第3測定点A3のたわみ増加量D1が30mmであった。
【0087】
本実施形態に係るマットレス1において、測定点A1,A2,A3のたわみ増加量D1には、ほとんど差がないことが確認された。マットレス1はスプリングユニット6を囲う壁部材9を備えるため、第1測定点A1および第3測定点A3は、第2測定点A2と同程度の硬さを有する。
【0088】
比較例に係るマットレスは、スプリングユニットの全周に枠線が設けられる。言い換えると、比較例に係るマットレスのスプリングユニットは、部分NP1,NP2を有さない。
【0089】
比較例に係るマットレスにおける試験結果は、第1測定点A1のたわみ増加量D1が24mmであり、第2測定点A2のたわみ増加量D1が28mmであり、第3測定点A3のたわみ増加量D1が26mmであった。
【0090】
マットレス1は、比較例に係るマットレスと比較して、各測定点A1,A2,A3において、同等のたわみ増加量D1を有することが確認された。言い換えると、マットレス1は、比較例に係るマットレスと比較して、各測定点A1,A2,A3において、同程度の硬さを有する。
【0091】
すなわち、マットレス1において、スプリングユニット6の部分NP1,NP2とその近傍では、硬さが維持されていることが確認された。より具体的には、マットレス1は、スプリングユニット6の部分NP1,NP2とその近傍において、スプリングユニット6の形状を維持することが可能である。
【0092】
マットレス1であれば、部分NP1,NP2とその近傍において、不自然な沈み込みを防ぐことが可能である。これにより、マットレス1は、比較例に係るマットレスと同等の寝心地を提供することが可能である。したがって、本実施形態にマットレス1であれば、解体時の作業効率の向上と寝心地の確保との両立が可能である。
【0093】
さらに、マットレス1であれば、壁部材9によって、マットレス1の外周側まで利用することが可能である。言い換えると、マットレス1の上面のうち、ユーザが使用可能な面積(有効面積)を広く確保することが可能である。
【0094】
スプリングユニット6は、一対の第1短縁611,612と、一対の第2短縁621,622とに設けられる枠線66,67,68,69を有する。これにより、スプリングユニット6が沈み込んだ際、一対の第1短縁611,612と、一対の第2短縁621,622において、スプリングユニット6のばね体64が絡まることを防止することが可能である。
【0095】
壁部材9は、スリット92を有する。これにより、マットレス1の解体時には、スリット92の近傍で壁部材9の上面FA側の端部を持ち上げると、スリット92を起点として壁部材9を容易に裂くことが可能である。これにより、壁部材9を上面側と下面側とに分離することが可能である。その結果、マットレス1の解体作業をより効率的することができる。
【0096】
図4を用いて説明した紐状部材S10が設けられている場合、紐状部材S10の端部S10aを引っ張ることで、紐状部材S10が壁部材9を切断し、壁部材9を上面側と下面側とに分離することが可能である。特に紐状部材S10がスプリングユニット6の外周の全体にわたって設けられている場合、壁部材9の全体を上面側と下面側とに分離することが可能である。
【0097】
マットレス1は、第1シート材81と、第2シート材82A,82Bと、を備える。第1シート材81および第2シート材82A,82Bは、壁部材9を形成する工程において、スプリングユニット6に液剤Qが流入することを防止する。
【0098】
特に、積層体Mのうち部分NP1,NP2の近傍では、隙間が生じやすい。本実施形態においては、第2シート材82A,82Bが部分NP1,NP2と第1シート材81との間に設けられる。これにより、当該隙間が形成されにくくなり、スプリングユニット6に液剤Qが流入することを確実に防止することが可能である。
【0099】
以上の実施形態は、本発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。本発明は、本実施形態にて開示した構成を種々の態様に変形して実施することができる。
【0100】
なお、上記の実施形態における外装体2と、上記実施形態とは異なる構造の内装体とを組み合わせてマットレスを構成することもできる。また、上記実施形態における内装体5と、上記実施形態とは異なる構造の外装体とを組み合わせてマットレスを構成することもできる。スプリングユニット6は、例えば、第2方向Yにおいて、複数(例えば、2つまたは3つ)に分割されたブロックで構成されてもよい。
【0101】
本実施形態において、部分NP1,NP2は一対の第1長縁613,614および一対の第2長縁623,624に位置しているが、部分NP1,部分NP2が一対の第1短縁611,612および一対の第2短縁621,622に位置するように枠線が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…マットレス、2…外装体、3…エッジテープ、4…タブ、5…内装体、6…スプリングユニット、9…壁部材、61…下部、62…上部、66,67,68,69…枠線、
71A,71B…保護材、72A,72B…クッション材、81…第1シート材、82A,82B…第2シート材、610…第1縁、611,612…第1短縁、613,614…第1長縁、620…第2縁、621,622…第2短縁、623,624…第2長縁、641…コイル、NP1,NP2…部分、S10…紐状部材、S10a…端部。