(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089421
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240626BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20240626BHJP
E04F 15/16 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B3/30
E04F15/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204773
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】森田 大輝
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 浩昌
(72)【発明者】
【氏名】氏居 真弓
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA16
2E220AA33
2E220AA45
2E220BB02
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4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】優れた防滑性及び意匠性を発現できると共に、厚さを薄くしても耐傷性の低下を抑制することができる化粧シート及び化粧材を提供する。
【解決手段】単層フィルムからなる原反層14と、原反層14の裏面側に設けられて絵柄を印刷された絵柄層13とを備え、原反層14の表面側に、凸部10a,10bが形成された化粧シート10であって、原反層14は、凸部10bが、絵柄層13の絵柄の第一の絵柄部と平面視で重なる領域Aにおいてランダムに配列されると共に、凸部10aが、絵柄層13の絵柄の第一の絵柄部と異なる第二の絵柄部と平面視で重なる領域Bにおいて規則的に配列され、さらに、原反層14は、透明な熱可塑性樹脂と、造核剤とを含有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層フィルムからなる原反層と、
前記原反層の一方面側に設けられて絵柄を印刷された絵柄層とを備え、
前記原反層の他方面側に、凸部及び凹部の少なくとも一方が形成された化粧シートであって、
前記原反層は、前記凸部及び前記凹部の少なくとも一方が、前記絵柄層の前記絵柄の第一の絵柄部と平面視で重なる領域においてランダムに配列されると共に、前記絵柄層の前記絵柄の前記第一の絵柄部と異なる第二の絵柄部と平面視で重なる領域において規則的に配列され、
さらに、前記原反層は、透明な熱可塑性樹脂と、造核剤とを含有している
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記原反層は、コア部と、前記コア部の一方面側及び他方面側の少なくとも一つの面側に位置するスキン部とを有し、
前記スキン部は、前記熱可塑性樹脂と、前記造核剤とを含有している
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記原反層は、厚さが90μm以上150μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項4】
ランダムに配列された前記凸部又は前記凹部は、外径が25μm以上60μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項5】
ランダムに配列された前記凸部又は前記凹部は、1mm2当たり70個以上160個以下の範囲内で形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項6】
規則的に配列された前記凸部又は前記凹部は、十字形状、四角形状、三角形状、丸形状のうちのいずれか一つである
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記原反層の他方面側に表面保護層が設けられ、
前記表面保護層は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂のうちの少なくとも一種を含有するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の化粧シートと、
前記化粧シートを少なくとも一方の表面に貼り付けられる基材と
を有することを特徴とする化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建住宅やマンションやアパート等の床材の表面を化粧する化粧シート及び化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建住宅やマンションやアパート等の床材には、表面に凹凸形状を形成した化粧シートを木質合板等の基材に貼り付けることにより、滑り難くして転倒等を抑制する防滑性能を発現できるようにした化粧材が広く利用されている(例えば、下記特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-135482号公報
【特許文献2】特開2013-217066号公報
【特許文献3】特開2017-025576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したような化粧シートにおいては、天然木材の木目や導管を模倣した意匠が印刷されていても、表面に形成された凹凸形状によって、天然木材の絵柄としての意匠性が低下してしまっていた。
【0005】
さらに、前述したような化粧シートにおいては、近年、厚さをできるだけ薄くすることが求められているものの、厚さを薄くしてしまうと、硬度の低下を引き起こしてしまい、耐傷性が低下してしまうおそれがあった。
【0006】
このようなことから、本発明は、優れた防滑性及び意匠性を発現できると共に、厚さを薄くしても耐傷性の低下を抑制することができる化粧シート及び化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための、本発明に係る化粧シートは、単層フィルムからなる原反層と、前記原反層の一方面側に設けられて絵柄を印刷された絵柄層とを備え、前記原反層の他方面側に、凸部及び凹部の少なくとも一方が形成された化粧シートであって、前記原反層は、前記凸部及び前記凹部の少なくとも一方が、前記絵柄層の前記絵柄の第一の絵柄部と平面視で重なる領域においてランダムに配列されると共に、前記絵柄層の前記絵柄の前記第一の絵柄部と異なる第二の絵柄部と平面視で重なる領域において規則的に配列され、さらに、前記原反層は、透明な熱可塑性樹脂と、造核剤とを含有していることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記原反層は、コア層と、前記コア層の一方面側及び他方面側の少なくとも一つの面側に位置するスキン層とを有し、前記スキン層は、前記熱可塑性樹脂と、前記造核剤とを含有していると好ましい。
【0009】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記原反層は、厚さが90μm以上150μm以下であると好ましい。
【0010】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、ランダムに配列された前記凸部又は前記凹部は、外径が25μm以上60μm以下であると好ましい。
【0011】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、ランダムに配列された前記凸部又は前記凹部は、1mm2当たり70個以上160個以下の範囲内で形成されていると好ましい。
【0012】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、規則的に配列された前記凸部又は前記凹部は、十字形状、四角形状、三角形状、丸形状のうちのいずれか一つであると好ましい。
【0013】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記原反層の他方面側に表面保護層が設けられ、前記表面保護層は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂のうちの少なくとも一種を含有するものであると好ましい。
【0014】
他方、前述した課題を解決するための、本発明に係る化粧材は、上述した化粧シートと、前記化粧シートを少なくとも一方の表面に貼り付けられる基材とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原反層の凸部及び凹部の少なくとも一方が、絵柄層の絵柄の第一の絵柄部と平面視で重なる領域においてランダムに配列されると共に、絵柄層の絵柄の第二の絵柄部と平面視で重なる領域において規則的に配列され、さらに、原反層が、透明な熱可塑性樹脂と、造核剤とを含有していることから、優れた防滑性及び意匠性を発現できると共に、厚さを薄くしても耐傷性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る化粧シートの第一の実施形態の構成を表す概略断面図である。
【
図2】
図1の化粧シートの平面視抽出拡大図である。
【
図5】本発明に係る化粧シートの第二の実施形態の構成を表す概略断面図である。
【
図6】本発明に係る化粧シートの他の実施形態の第一領域の抽出拡大図である。
【
図7】本発明に係る化粧シートのさらに他の実施形態の第一領域の抽出拡大図である。
【
図8】本発明に係る化粧材の主な実施形態の構成を表す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る化粧シート及び化粧材の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではなく、例えば、各実施形態特有の技術的特徴を必要に応じて適宜組み合わせることも可能である。
【0018】
[化粧シート/第一の実施形態]
本発明に係る化粧シート及び化粧材の第一の実施形態を
図1から
図4に基づいて説明する。
【0019】
〈化粧シートの基本構成〉
図1に示すように、基材の貼り付け面との接着性を向上させる下地層11上には、所望の色彩を付与する着色層12が設けられている。着色層12上には、意匠性を付与する絵柄を印刷された絵柄層13が設けられている。絵柄層13上には、支持体となる透明樹脂シートで形成される原反層14が設けられている。原反層14上には、最表面の保護や艶を調整する表面保護層15が設けられている。
【0020】
なお、上述した化粧シート10において、着色層12が下地層としての機能を有するときには、下地層11を省略することも可能である。すなわち、着色層12が下地層11を兼ねることも可能である。また、上述した化粧シート10において、例えば、隠蔽性を特に必要としない場合には、着色層12を省略することも可能である。また、絵柄層13と原反層14との間の接着性が不足する場合には、絵柄層13と原反層14との間に接着層を介在させることも可能である。
【0021】
つまり、化粧シート10は、単層フィルムからなる原反層14の一方面側となる裏面側に絵柄層13が設けられ、原反層14の他方面側となる表面側に表面保護層15が設けられているのである。さらに、化粧シート10は、原反層14の表面側及び裏面側に、他のフィルムで形成されたラミネート層を有することのないものとなっている。
【0022】
図1に示すように、原反層14の表面側には、複数の凸部10a,10bが形成されている。表面保護層15は、原反層14の表面に沿うように凸部10a,10bの形状に倣って設けられている。つまり、化粧シート10の表面(
図1中、上面)には、立体的な意匠感を付与するため、絵柄層13の絵柄(例えば、木目の表面部と導管部)に同調させた凸部10a,10bが複数設けられている。
【0023】
図1に示すように、表面保護層15は、第一保護層である上塗層15Bと、上塗層15Bと原反層14との間に設けられた第二保護層である下塗層15Aとを有している。すなわち、表面保護層15は、下塗層15A、上塗層15Bの順に2種2層で構成されている。
【0024】
つまり、化粧シート10は、絵柄層13と、原反層14とを少なくとも有する構造となっており、例えば、戸建住宅やマンションやアパート等の床材の基材に貼り付けられて使用されている。続いて、各層について具体的に説明する。
【0025】
〈化粧シートの各層の構成〉
《下地層11》
下地層11は、
図1に示すように、原反層14の裏面側に位置し、主として接着性改善を目的で設けられ、表面処理後の表面安定化、金属表面の防食、粘着性の付与、接着剤の劣化防止等の機能も有している。下地層11は、原反層14の裏面側において、着色層12に積層して設けられている。言い換えれば、下地層11は、絵柄層13を設けられた着色層12の面と反対の面に設けられている。下地層11は、例えば、グラビア印刷法等により、固形分量が1g/m
2となるようにウレタン系樹脂を塗工して形成している。
【0026】
《着色層12》
着色層12は、
図1に示すように、原反層14の裏面側、より詳細には、絵柄層13の裏面側に位置すると共に、下地層11の表面側に位置し、主として隠蔽性を付与する目的で設けられている。着色層12は、例えば、グラビア印刷法等により、2液ウレタン系樹脂で印刷することにより設けることができる。前記2液ウレタン系樹脂は、ウレタン樹脂に酸化チタン等の白顔料を混ぜたものとすることも可能である。
【0027】
《絵柄層13》
絵柄層13は、
図1に示すように、原反層14の裏面側に位置すると共に、着色層12の表面側に位置し、主として意匠性を付与する目的で設けられている。絵柄層13は、例えば、印刷法等によりウレタン系樹脂等のインキで絵柄を印刷したものである。
【0028】
印刷法としては、グラビア印刷法を始めとして、例えば、オフセット印刷法、凸版印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等の各種の印刷法を適用することが可能である。
【0029】
インキとしては、ウレタン系樹脂を始めとして、例えば、塩酢ビ系インキ(シアン、マゼンタ、イエロー)や、有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤を適用することや、充填材、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、乾燥剤等の各種の添加剤を、溶剤又は希釈剤等と共に、合成樹脂等からなる結着剤中に分散してなるものを適用することが可能である。
【0030】
絵柄層13の模様の種類は、使用目的や使用者の嗜好等により任意であり、例えば、木目柄、石目柄、抽象柄等が一般的であるが、これらの種類に限定されない。
【0031】
《原反層14》
原反層14は、厚さが、90μm以上150μm以下の範囲内であると好ましく、90μm以上130μm以下の範囲内であるとより好ましい。原反層14の厚さが、90μm以上であると、化粧シート10を床材に用いる際に好適な強度を付与することができ、耐傷性の向上を図ることができる。
【0032】
他方、原反層14の厚さが、150μm以下であると、化粧シート10の厚みの薄さと強度とを両立しつつ、加工時において白化や割れといった不具合が生じることを抑制、すなわち、加工適性を向上することができると共に、絵柄層13の絵柄を表面側(表面保護層15側)から見るのに十分な透明性を維持することができる。特に、原反層14の厚さが、130μm以下であると、化粧シート10の厚みの薄さと強度とをより確実に両立しつつ、加工適性をより確実に向上させることができる。
【0033】
原反層14は、透明な熱可塑性樹脂に耐候剤等を添加したフィルムが適用される。原反層14を構成する熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、従来の化粧シートで基材層等として用いられていた熱可塑性樹脂と同様の材料を用いることができる。
【0034】
具体的な熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を挙げることができる。
【0035】
なかでも、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは好ましくなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。特に、各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)又はポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましく、更には、ポリオレフィン系樹脂を使用することが最も好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂として、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を30質量%以上100質量%以下含むポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
【0036】
原反層14は、透明な熱可塑性樹脂、例えば、透明なポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系の樹脂を用い、ナノサイズの添加剤としての分散剤等を添加して形成されたものである(以下「分散剤ナノ仕様」ともいう)。原反層14は、耐候剤を添加したものを使用することも可能である。原反層14は、樹脂材料と、当該樹脂材料の結晶化度を向上させる造核剤とを含有し、表面に凹凸形状を有している。造核剤は、外膜で包含されてベシクル化された造核剤ベシクルの状態で樹脂材料に添加されている。
【0037】
原反層14は、ナノサイズの添加剤として造核剤を含有している。ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形で熱可塑性樹脂に添加されて使用されることが好ましい。また、原反層14を構成する熱可塑性樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていることも可能である。原反層14は、造核剤を含むことから、結晶化度を向上させることができ、化粧シート10の耐擦傷性(耐傷性)を向上させることができる。
【0038】
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
【0039】
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まる。
【0040】
そのため、結晶性樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。この結果、結晶化度の高い高硬度の樹脂フィルムとすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した樹脂フィルムを実現することができる。
【0041】
造核剤を単純添加した場合、樹脂中の造核剤が二次凝集することで粒径が大きくなる。一方、造核剤ベシクルを添加する場合、樹脂中における分散性が向上するため、造核剤を単純添加した場合と比較して添加した造核剤量に対しする結晶核の数が大幅に増加する。このため、樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が小さくなり、曲げ加工時の割れや白化の発生を抑制することができる。よって、造核剤ベシクルを添加することにより結晶化度をより高めることができ、弾性率向上と加工性をより両立可能となる。
【0042】
原反層14は、例えば、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤が添加された樹脂材料により形成される。造核剤ベシクルを用いる場合、樹脂材料への造核剤の添加量は、造核剤ベシクル中の造核剤に換算した添加量である。なお、「主成分」とは、原反層14を構成する樹脂材料の50質量%以上を占める樹脂材料のことをいう。
【0043】
造核剤の添加量が0.05質量部未満の場合、ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、原反層14の耐傷性が十分に向上しないおそれがある。また、造核剤の添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のためポリプロピレンの球晶成長が逆に阻害され、結果的にポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、原反層14の耐傷性が十分に向上しないおそれがある。
【0044】
造核剤をナノ化する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。
【0045】
固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
【0046】
造核剤をナノ化する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味する。臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
【0047】
超臨界逆相蒸発法による具体的なナノ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。次に、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
【0048】
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法等によって調製される。造核剤ベシクルは、その中でも特に超臨界逆相蒸発法を用いて調整されることが好ましい。
【0049】
造核剤ベシクルを構成する外膜は例えば単層膜から構成される。また、その外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。本明細書では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
【0050】
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質等が挙げられる。
【0051】
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類又はトリアシルグリセロールとの混合物等の分散剤が挙げられる。
【0052】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマ、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0053】
コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
【0054】
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにすることも可能である。本実施形態に係る化粧シート10においては、造核剤ベシクルを、リン脂質からなる外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームとすることが好ましく、外膜をリン脂質から構成することによって、化粧シート10の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
【0055】
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いることも可能である。
【0056】
上述のように、本実施形態に係る化粧シート10において、原反層14は、樹脂材料(例えば、透明なポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂)と、造核剤とを含んで形成される。また、原反層14は、必要に応じて、例えば、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上を含有していると好ましい。
【0057】
また、本実施形態に係る化粧シート10は、原反層14を形成する際に、樹脂材料に対してベシクルに内包された造核剤を添加して樹脂材料を結晶化させる点に特徴を有している。造核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料中、すなわち、原反層14中への造核剤の分散性を飛躍的に向上するという効果を奏する。
【0058】
ところで、ベシクルに内包された造核剤を、完成された化粧シート10の状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。
【0059】
ベシクルの状態で添加された造核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっており、作製された化粧シート10の前駆体である積層体の状態においても原反層14に高分散されている。しかしながら、化粧シート10の作製工程において、通常、積層体は圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施され、このような処理によって造核剤を内包するベシクルの外膜が破砕したり、化学反応を生じたりする場合がある。
【0060】
このため、化粧シート10の処理工程によって、完成後の化粧シート10における造核剤の外膜が破砕したり、化学反応を生じたりしている状態にバラつきがあり、造核剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高い。そして、造核剤が外膜で包含されていない場合、造核剤の物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか造核剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。
【0061】
このように、本発明では、従来に比して、化粧シート10に対し、造核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、造核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シート10の状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
【0062】
《表面保護層15》
表面保護層15は、
図1に示すように、原反層14の表面側に位置し、耐磨耗性や耐水性、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能(表面物性)を付与する目的で設けられ、印刷法を用いて形成されるものである。表面保護層15は、例えば、裏面側に位置する各種層を透視可能な程度の透明性(例えば、無色透明、有色透明、半透明等)を有していると好ましい。
【0063】
表面保護層15は、厚さが特に限定されるものではないが、厚過ぎたり薄過ぎたりすると、効果に乏しく、また、厚すぎると可撓性が低下して割れ易くなってしまうため、2μm以上20μm以下であると好ましく、4μm以上10μm以下であるとより好ましい。
【0064】
表面保護層15は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂のうちの少なくとも一種の架橋型の樹脂を含有すると、耐候性、耐傷性、耐汚染性等をさらに向上させることができるので好ましい。これらの樹脂は、単独又は混合して用いることができる。例えば、表面保護層15として、上記樹脂のうち複数の樹脂を混合して用いることや、上記樹脂のうちの一つの樹脂と上記以外の他の樹脂とを混合して用いることも可能である。
【0065】
表面保護層15は、上記樹脂を既知のコーティング手段により塗布することで設けることができ、架橋の種類に応じて、熱、紫外線、電子線の照射が行われることで硬化されて形成される。このとき、表面保護層15は、原反層14の表面の凸部10a,10bの形状に沿って設けられ、その表面にも凸形状が反映されて形成される。
【0066】
表面保護層15は、耐候性の処方を行うため、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤を含有していると好ましい。また、表面保護層15は、有害なラジカルを補足し、樹脂自体の光,熱,水等による劣化を防止するため、ヒンダードアミン系の光ラジカル捕捉剤(ヒンダードアミン系の光安定剤)を含有していると好ましい。
【0067】
《凸部10a,10b》
そして、
図2に示すように、原反層14の、絵柄層13の絵柄(例えば、木目柄)の第一の絵柄部(例えば、木目表面部等のような、色が薄い又はインキが印刷されていない部分)と平面視で重なる領域A(以下「第一領域A」という。)には、複数の凸部10aがランダムに配列されている。他方、原反層14の、絵柄層13の絵柄(例えば、木目柄)の第二の絵柄部(例えば、木目導管部のような、色が濃い又はインキが印刷された部分)と平面視で重なる領域B(以下「第二領域B」という。)には、複数の凸部10bが規則的に配列されている。つまり、第一領域Aには、ランダムに配列された複数の凸部10aが設けられ、第二領域Bには、規則的に配列された複数の凸部10bが設けられているのである。
【0068】
複数の凸部10aは、平面視による形状(以下「平面形状」という。)が、例えば、
図3に示すように、それぞれ正方形等の矩形をなしている。これら凸部10aは、ランダム配列、すなわち、不規則な配列となっている。第一領域Aは、凸部10aがランダムに配列されることにより、靴下やストッキング等、室内を想定した防滑性を向上させることができると共に、擦れ等による不快な干渉音を軽減することができる。
【0069】
なお、凸部10aは、規則性を有することがないように配慮されて設けられていればよく、例えば、乱数計算によって算出された情報に基づいて、無作為(ランダム)に第一領域Aに配列される。ここで、「ランダムに配列」とは、1cm2当たりに形成された複数の凸部10aの隣り合う間の平均距離のばらつき(3σ:標準偏差σの3倍値)が0.1μm超となるように、凸部10aが配列されていることをいう。
【0070】
凸部10aは、高さHaが20μm以上80μm以下であると好ましい。高さHaが20μm未満であると、防滑性能が劣ってしまい、好ましくない。高さHaが80μmを超えると、凸形状を形成し難くなってしまい、好ましくない。なお、凸部10aの高さHaは、原反層14の凸部10aの底部と頂部との間の最短距離である。この高さHaは、原反層14の表面の第一領域Aにおいて隣り合う凹凸間の高低差でもある。
【0071】
また、凸部10aは、外径が25μm以上60μm以下であると好ましい。より具体的には、凸部10aは、平面視における一辺の長さLa(外径)が25μm以上60μm以下であると好ましい。長さLaが25μm未満であると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。長さLaが60μmを超えると、肉眼で視認され易くなって、意匠感の低下を招いてしまうおそれを生じ、好ましくない。
【0072】
また、凸部10aは、面密度(平面視における単位面積当たりの凸部の占める割合)が、0.05以上0.5以下であると好ましい。面密度が0.05未満又は0.5を超えると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。なお、凸部10aの平面形状が正方形の場合、凸部10aの面密度は、(La2×n)/Lc2で表すことができる。ここで、Lcは、平面視で任意に画定した正方形の一辺の長さであり、nは、この任意に画定した正方形の内側に存在する凸部10aの数である。
【0073】
また、凸部10aは、1mm2当りの数が、70個以上160個以下の範囲内で形成されていると好ましく、90個以上140個以下の範囲内で形成されているとより好ましく、110個以上120個以下の範囲内で形成されているとさらに好ましい。1mm2当りの数が、70個未満であると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。1mm2当りの数が、160個を超えると、肉眼で視認され易くなって、意匠感の低下を招いてしまうおそれを生じ、好ましくない。
【0074】
凸部10bは、平面形状が、例えば、
図4に示すように、それぞれ正方形等の矩形をなしている。これら凸部10bは、例えば、市松模様や千鳥格子等のような等間隔で規則性のある配列となっている。第二領域Bは、凸部10bが規則的に配列されることにより、自然な絵柄(例えば、導管柄)を再現できる、即ち意匠性を向上させることができると共に、防滑性を向上させることができる。
【0075】
なお、凸部10bは、規則性を有するように配慮されて設けられていればよく、例えば、市松模様的に第二領域Bに規則的に配列される。ここで、「規則的に配列」とは、1cm2当たりに形成された複数の凸部10bの隣り合う間の平均距離のばらつき(3σ:標準偏差σの3倍値)が0.1μm以下となるように、凸部10bが配列されていることをいう。
【0076】
凸部10bは、凸部10aと同様に、高さHbが20μm以上80μm以下であると好ましい。高さHbが20μm未満であると、防滑性能が劣ってしまい、好ましくない。高さHbが80μmを超えると、凸形状を形成し難くなってしまい、好ましくない。なお、凸部10bの高さHbは、凸部10aの高さHaと同様に、原反層14の凸部10bの底部と頂部との間の最短距離である。この高さHbは、原反層14の表面の第二領域Bにおいて隣り合う凹凸間の高低差でもある。
【0077】
また、凸部10bは、凸部10aと同様に、外径が25μm以上60μm以下であると好ましい。より具体的には、平面視における一辺の長さLb(外径)が25μm以上60μm以下であると好ましい。長さLbが25μm未満であると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。長さLbが60μmを超えると、肉眼で視認され易くなって、意匠感の低下を招いてしまうおそれを生じ、好ましくない。
【0078】
また、凸部10bは、凸部5aと同様に、面密度(平面視における単位面積当たりの凸部の占める割合)が、0.05以上0.5以下であると好ましい。面密度が0.05未満又は0.5を超えると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。なお、凸部10bの平面形状が正方形の場合、凸部10bの面密度は、(Lb2×n)/Lc2で表すことができる。ここで、Lcは、平面視で任意に画定した正方形の一辺の長さであり、nは、この任意に確定した正方形の内側に存在する凸部10bの数である。
【0079】
また、凸部10bは、凸部10aと同様に、1mm2当りの数が、70個以上160個以下の範囲内で形成されていると好ましく、90個以上140個以下の範囲内で形成されているとより好ましく、110個以上120個以下の範囲内で形成されているとさらに好ましい。1mm2当りの数が、70個未満であると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。1mm2当りの数が、160個を超えると、肉眼で視認され易くなって、意匠感の低下を招いてしまうおそれを生じ、好ましくない。
【0080】
このような凸部10a,10bは、原反層14を成形する際に、例えば、ダブリングエンボス法、押出ラミネート同時エンボス法等を適用することにより、化粧シート10の最表面側に形成することができる。
【0081】
〈化粧シート10の製造方法〉
本実施形態に係る化粧シート10は、以下の第一の工程から第三の工程により、インラインで製造することができる。ここで、「インライン」とは、フィルム同士をラミネートするラミネート工程を行うことなく、印刷による複数の工程を、一つのライン、すなわち、ワンパスで加工できることをいう。つまり、印刷から表面保護層15を設けるまでの製造工程をワンパスで行うことができる。
【0082】
《第一の工程》
第一の工程は、透明なポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂にナノサイズの添加剤としての分散剤を添加した樹脂材料を押出し成形した単層フィルムである原反層14を製造する工程である。
【0083】
具体的には、透明なポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂に造核剤ベシクルを混合すると共に必要に応じて無機顔料等を添加した樹脂材料を加熱溶融して押出機から押し出し、冷却ロールで冷却することにより、単層フィルムの原反層14を得る。この際、ダブリングエンボス法や、押出ラミネート同時エンボス法等を適用することにより、凸部10a,10bの形成が可能である。
【0084】
《第二の工程》
第二の工程は、第一の工程で製造した原反層14の裏面側に、絵柄層13と、着色層12と、下地層11とを、この順に設ける工程である。
【0085】
《第三の工程》
第三の工程は、第二の工程の後、又は、第二の工程の前に、第一の工程で製造した原反層14の表面側に、表面保護層15を設ける工程である。なお、上述した各工程は、第一の工程、第二の工程、第三の工程の順と、第一の工程、第三の工程、第二の工程の順との2通りの順番で行うことができる。
【0086】
このような工程により、下地層11、着色層12、絵柄層13、原反層14、表面保護層15をこの順に積層して凸部10a,10bを有する化粧シート10を得ることができる。
【0087】
従来の化粧シートは、複層であるため、絵柄層の付与と、ラミネートフィルム表面の表面保護層との同調表現が困難であった。これに対し、本実施形態に係る化粧シート10は上述のようにインラインで製造することができる。このため、本実施形態に係る化粧シート10では、インラインでの製造時に、原反層14の表裏面側への絵柄印刷とエンボス部10aとを付与することができるので、絵柄層13と表面保護層15との同調表現が容易にできる。
【0088】
本実施形態に係る化粧シート10は、以下の効果を奏する。
(1)単層フィルムからなる原反層14と、原反層14の裏面側に設けられて絵柄を印刷された絵柄層13とを備え、原反層14の表面側に、凸部10a,10bが形成された化粧シート10であって、凸部10aが第一領域Aにおいてランダムに配列されると共に、凸部10bが第二領域Bにおいて規則的に配列され、さらに、原反層14が、透明な熱可塑性樹脂と、造核剤とを含有している。そのため、優れた防滑性及び意匠性を発現できると共に、厚さを薄くしても耐傷性の低下を抑制することができる。
【0089】
(2)原反層14が、厚さ90μm以上150μm以下となっている。そのため、製造工程数の削減が可能であって、厚みの薄さと高い硬度とをより確実に両立可能な化粧シート10とすることができる。
【0090】
(3)凸部10aの外径が25μm以上60μm以下であることにより、さらに優れた意匠性と、高い防滑性能とを実現することができると共に、床として必要な耐汚染性を容易に維持することができる。
【0091】
(4)凸部10aが1mm2当たり70個以上160個以下の範囲内で形成されていることにより、さらに優れた意匠性と、さらに高い防滑性能とを実現することができると共に、床として必要な耐汚染性を確実に維持することができる。
【0092】
(5)表面保護層15が、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂のうちの少なくとも一種を含有することにより、適切な硬度を確実に発現可能な化粧シート10とすることができる。
【0093】
[化粧シート/第二の実施形態]
本発明に係る化粧シートの第二の実施形態を
図5に基づいて説明する。ただし、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0094】
〈化粧シートの基本構成〉
図5に示すように、化粧シート20は、下地層11と、着色層12と、絵柄層13と、原反層24と、表面保護層15とを備えている。つまり、本実施形態に係る化粧シート20は、第一の実施形態に係る化粧シート10の原反層14に代えて、原反層24を適用したものである。
【0095】
図5に示すように、原反層24は、熱可塑性樹脂製の透明なコア部24Cと、コア部24Cの一方面側及び他方面側の両面側に位置する対をなす透明なスキン部24A,24Bとを有している。すなわち、原反層24は、裏面側のスキン部24A、コア部24C、表面側のスキン部24Bの順に2種3部で構成されている。
【0096】
ここで、
図5において、原反層24は、裏面側のスキン部24Aと、コア部24Cと、表面側のスキン部24Bとが、各々別体をなしているかのように記載されているが、実際にはスキン部24A,24B及びコア部24Cは連続する一体物となっており、スキン部24A,24Bとコア部24Cとの間には界面が存在しない単層シート(単層フィルム)となっている。なお、原反層24は、裏面側のスキン部24A及び表面側のスキン部24Bのうちの少なくとも一方が設けられていればよい。言い換えると、少なくとも一つの面側に、スキン部が設けられていればよい。
【0097】
(コア部24C)
コア部24Cは、透明な熱可塑性樹脂に耐候剤等を添加したフィルムが適用される。コア部24Cを構成する熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、前述した実施形態に係る化粧シート10の原反層14で用いられていた熱可塑性樹脂と同様の材料を用いることができる。
【0098】
コア部24は、必要に応じて、例えば、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上を含有していると好ましい。
【0099】
(スキン部24A,24B)
スキン部24Bは、コア部24Cの表面側、すなわち、コア部24Cの表面保護層15側に位置している。スキン部24Aは、コア部24Cの裏面側、すなわち、コア部24Cの、スキン部24Bを設けた側(表面保護層15側)と反対側(絵柄層13側)に位置している。
【0100】
スキン部24A,24Bは、厚さが1μm以上50μm以下であると好ましく、2μm以上10μm以下であるとより好ましい。スキン部24A,24Bの厚さが、1μm以上であると、化粧シート20の耐傷性が十分に高くなる。スキン部24A,24Bの厚さが、50μm以下であると、化粧シート20の曲げ性が必要以上に高くなり過ぎないので、化粧シート20を貼り付ける貼り付け面が平面でないときでも、化粧シート20を貼り付け面に密着させた状態で施工することができる。
【0101】
スキン部24A,24Bは、コア部24Cと同種の熱可塑性樹脂、例えば、透明なポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系の樹脂を用い、ナノサイズの添加剤としての分散剤等を添加して形成されたものである(分散剤ナノ仕様)。スキン部24A,24Bは、コア部24Cと同様に、耐候剤を添加したものを使用することも可能である。スキン部24A,24Bを構成する熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、コア部24Cと同様の樹脂材料を適用することができる。
【0102】
スキン部24A,24Bは、樹脂材料と、当該樹脂材料の結晶化度を向上させる造核剤とを含有し、表面に凹凸形状を有している。造核剤は、外膜で包含されてベシクル化された造核剤ベシクルの状態で樹脂材料に添加されている。
【0103】
スキン部24A,24Bは、ナノサイズの添加剤として造核剤を含有している。ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形で熱可塑性樹脂に添加されて使用されることが好ましい。また、スキン部24A,24Bを構成する熱可塑性樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていることも可能である。
【0104】
スキン部24A,24Bは、造核剤を含むことから、結晶化度を向上させることができ、化粧シート20の耐擦傷性(耐傷性)を向上させることができる。つまり、本実施形態に係る化粧シート20は、スキン部24A,24Bが樹脂材料(例えば、透明なポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂等)と造核剤とを含有して形成されるのである。
【0105】
〈化粧シート20の製造方法〉
本実施形態に係る化粧シート20は、前述した実施形態に係る化粧シート10と同様、以下の第一の工程から第三の工程により、インラインで製造することができる。
【0106】
《第一の工程》
第一の工程は、透明なポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂を用いたコア部24Cと、コア部24Cの表裏面側にそれぞれ位置して、熱可塑性樹脂にナノサイズの添加剤としての分散剤を添加したスキン部24A,24Bと、を押出し成形した単層フィルムである原反層24を製造する工程である。
【0107】
具体的には、透明なポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂の材料に対して必要に応じて無機顔料等を添加して溶融混錬し、コア部用樹脂材料を得る。次に、透明なポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂の材料に造核剤ベシクルを混合してスキン部用樹脂材料を得る。
【0108】
続いて、コア部用樹脂材料及びスキン部用樹脂材料をそれぞれ加熱溶融して、例えば、コア部用樹脂材料をスキン部用樹脂材料で挟むようにこれら樹脂材料を押出機から同時に押し出して冷却ロールで冷却することにより、スキン部用樹脂材料/コア部用樹脂材料/スキン部用樹脂材料の順に重ね合わせたフィルムを形成した。これにより、スキン部24A/コア部24C/スキン部24Bの順に重なる原反層24を得ることができる。この際、前述した実施形態の場合と同様に、ダブリングエンボス法や、押出ラミネート同時エンボス法等を適用することにより、エンボス部10aの形成が可能である。
【0109】
《第二の工程》
第二の工程は、前述した実施形態と同様に、第一の工程で製造した原反層24の裏面側に、絵柄層13と、着色層12と、下地層11とを、この順に設ける工程である。
【0110】
《第三の工程》
第三の工程は、前述した実施形態と同様に、第二の工程の後、又は、第二の工程の前に、第一の工程で製造した原反層24の表面側に、表面保護層15を設ける工程である。なお、上述した各工程は、前述した実施形態と同様に、第一の工程、第二の工程、第三の工程の順と、第一の工程、第三の工程、第二の工程の順との2通りの順番で行うことができる。
【0111】
このような工程により、下地層11、着色層12、絵柄層13、原反層24、表面保護層15をこの順に積層した化粧シート20を得ることができる。
【0112】
したがって、本実施形態に係る化粧シート20は、前述した実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、さらに以下の効果を得ることができる。
【0113】
原反層24が、コア部24Cと、コア部24Cの一方面側及び他方面側の両面側に位置するスキン部24A,24Bとを有し、スキン部24A,24Bが、熱可塑性樹脂と、造核剤とを含有している。そのため、高い硬度と加工適性とを前述した実施形態の場合よりもさらに確実に両立可能な化粧シート20とすることができる。
【0114】
[化粧シート/他の実施形態]
なお、前述した実施形態においては、凸部10a,10bの平面形状が正方形である場合について説明した。しかしながら、本発明は、平面形状が正方形の凸部10a,10bに限定されるものではない。凸部は、平面形状が、例えば、長方形、四角以外の多角形(三角形、五角形、六角形等)、十字形とすることも可能である。
【0115】
例えば、
図6に示すように、平面形状が正三角形の凸部30aとすることも可能である。この凸部30aは、外径が25μm以上60μm以下であると好ましい。より具体的には、凸部30aは、平面視における一辺の長さLa(外径)が25μm以上60μm以下であると好ましい。長さLaが25μm未満であると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。長さLaが60μmを超えると、肉眼で視認され易くなって、意匠感の低下を招いてしまうおそれを生じ、好ましくない。
【0116】
上記凸部30aは、面密度が、0.05以上0.5以下であると好ましい。面密度が0.05未満又は0.5を超えると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。なお、凸部30aの平面形状が正三角形であるので、凸部30aの面密度は、{(√3/4)×La2×n}/Lc2で表すことができる。ここで、Lcは、平面視で任意に画定した正方形の一辺の長さであり、nは、この任意に画定した正方形の内側に存在する凸部40aの数である。
【0117】
上記凸部30aは、高さHaが20μm以上80μm以下であると好ましい。高さHaが20μm未満であると、防滑性能が劣ってしまい、好ましくない。高さHaが80μmを超えると、凸形状を形成し難くなってしまい、好ましくない。
【0118】
さらに、凸部は、平面形状が円形(正円形,楕円形等)とすることも可能である。
例えば、
図7に示すように、平面形状が正円形の凸部40aとすることも可能である。
この凸部40aは、外径が25μm以上60μm以下であると好ましい。より具体的には、凸部40aは、直径La(外径)が25μm以上60μm以下であると好ましい。長さLaが25μm未満であると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。長さLaが60μmを超えると、肉眼で視認され易くなって、意匠感の低下を招いてしまうおそれを生じ、好ましくない。
【0119】
上記凸部40aは、面密度が、0.05以上0.5以下であると好ましい。面密度が0.05未満又は0.5を超えると、防滑性の低下を引き起こし易くなり、好ましくない。なお、凸部40aの平面形状が正円形であるので、凸部40aの面密度は、{(π/4)×La2×n}/Lc2で表すことができる。ここで、Lcは、平面視で任意に画定した正方形の一辺の長さであり、nは、この任意に画定した正方形の内側に存在する凸部40aの数である。
【0120】
上記凸部40aは、高さHaが20μm以上80μm以下であると好ましい。高さHaが20μm未満であると、防滑性能が劣ってしまい、好ましくない。高さHaが80μmを超えると、凸形状を形成し難くなってしまい、好ましくない。
【0121】
また、前述した実施形態においては、断面視による形状(以下「断面形状」という。)が矩形、すなわち、底部と頂部との間の全長にわたって幅が一定の柱形状をなす凸部の場合について説明した。しかしながら、本発明は、断面形状が矩形の凸部に限定されるものではない。凸部は、断面形状が、例えば、台形や錐形等のように、底部から頂部に向かって、幅が徐々に小さくなる柱状形状とすることも可能である。
【0122】
また、前述した実施形態においては、突起形状の凸部の場合について説明した。しかしながら、本発明は、突起形状の凸部に限定されるものではない。突起形状の凸部に代えて、例えば、窪形状の凹部とすることも可能である。
【0123】
具体的には、例えば、第一領域Aに凹部及び凸部の両方をランダムに配列し、第二領域Bに凹部及び凸部の両方を規則的に配列することも可能である。また、第一領域Aに凸部をランダムに配列し、第二領域Bに凹部を規則的に配列することも可能である。また、第一領域Aに凹部をランダムに配列し、第二領域Bに凸部を規則的に配列することも可能である。
【0124】
また、前述した実施形態においては、原反層14,24が、造核剤を含んで形成される分散剤ナノ仕様の場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、無機フィラを追加含有させて形成される無機ナノ粒子仕様とさらにすることも可能である。すなわち、原反層14,24は、分散剤及び無機フィラの両方を含有することも可能である。上記無機フィラは、硬度の高いナノサイズの粒子である(無機ナノ粒子)。
【0125】
このような無機フィラとしては、例えば、ナノサイズのシリカ、ガラス、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料からなる微粒子が挙げられる。ここで、上記無機フィラは、例えば、樹脂材料100質量部に対して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で混合されると好ましい。
【0126】
[化粧材/主な実施形態]
本発明に係る化粧材の主な実施形態を
図8に基づいて説明する。ただし、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0127】
〈化粧材の基本構成〉
図8に示すように、化粧材100は、化粧シート10と、化粧シート10を少なくとも一方の表面に貼り付けられる基材101と、を有している。化粧板100は、化粧シート10の下地層11が接着剤層102を介して基材101に貼り付けられている。つまり、本実施形態に係る化粧材100は、第一の実施形態に係る化粧シート10を基材101に貼り合わせたものである。
【0128】
《基材101》
基材101は、木質合板等の木質基材、木粉とプラスチックとを混合した複合基材、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンや塩化ビニル(PVC)等の樹脂基材等の硬質性材料からなる。木質基材としては、例えば、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板等が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。なお、基材101は、アルミ等の金属やプラスチック等の樹脂、又は、それらの複合材料を適用することも可能である。基材101を設けることにより、傷の発生を抑制可能な化粧板100を提供することができる。
【0129】
《接着剤層102》
接着剤層102は、化粧シート10と基材101とを貼り付けるために基材101の少なくとも一方面に設けられる。基材101が、例えば、木質系材料からなる場合、接着剤層102は、酢酸ビニルエマルジョン系、2液硬化型ウレタン系等が一般的に適用される。
【0130】
なお、基材101の両面に接着剤層102を設けて、基材101の両面に化粧シート10をそれぞれ貼り付けた化粧材とすることも可能である。また、化粧シート10の下地層11に代えて接着剤層102を設ける一方、基材101に下地層11を設けることにより、基材101に化粧シートを貼り合わせることも可能である。また、基材101に木質合板等を適用したとき、下地層11及び接着剤層102を透明にすると、基材101の木質も意匠として利用することが可能となる。
【0131】
また、本実施形態においては、基材101と化粧シート10とを貼り合わせた化粧材100としたが、基材101と、前述した各実施形態の化粧シート20とを貼り合わせた化粧材とすることも当然にして可能である。
【0132】
したがって、本実施形態に係る化粧材100においては、前述した第一の実施形態の化粧シート10の場合と同様に、優れた耐汚染性及び触感性を発現できると共に、厚さを薄くしても耐傷性の低下を抑制することができる。
【実施例0133】
本発明に係る化粧シート及び化粧材の実施例を以下に説明するが、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0134】
[試験体及び比較体の作成]
〈試験体1〉
透明なポリプロピレン樹脂に耐候剤と共にナノサイズの添加剤としての分散剤を添加処方して(分散剤ナノ仕様)原反層の樹脂材料を用意した。そして、この樹脂材料を押出し成形しながらエンボス加工(凸部高さ50μm)することにより、原反層(厚さ100μm)を作製した。
【0135】
作製した原反層の裏面側に、コロナ処理を施した後、グラビア印刷法によりウレタン系樹脂で木目の絵柄を印刷して、絵柄層を設けた。なお、第一領域A(木目表面部)には、平面視で正方形状(一辺の長さ(外径)60μm)の凸部がランダムに配列されると共に、第二領域B(木目導管部)には、平面視で十字形状(長さ(外径)60μm)の凹部が市松模様的に規則をもって配列されるように、原反層にエンボス加工(防滑木目エンボス)を施している。
【0136】
続いて、グラビア印刷法により、酸化チタンの白顔料を混ぜた2液型ウレタン系樹脂で着色層(厚さ20μm)を設けた。さらに、グラビア印刷法により、固形分量が1g/m2となるようにウレタン系樹脂を塗工して下地層を設けた。
【0137】
次に、原反層の表面側に、紫外線硬化型樹脂を塗布してメタルハライドランプにて紫外線を照射して硬化させることにより表面保護層(厚さ10μm)を設けた。これにより、試験体1の化粧シートを作製した。
【0138】
また、MDF(広葉樹)の基材(厚さ3mm)を用意した。基材の表面に、2液水性エマルジョン接着剤(ジャパンコーティングレジン株式会社製「リカボンド(登録商標)」(重量比/BA-10L:BA-11B=100:2.5))をウェット状態で塗工(80g/m2)して接着剤層を設けた。そして、基材の接着剤層と化粧シートの下地層とを貼り合わせて、24時間養生することにより、化粧材の試験体1を作製した。
【0139】
〈試験体2〉
エンボス加工の凸部高さを70μmとした以外は、試験体1と同様にして、化粧材の試験体2を作製した。
【0140】
〈比較体1〉
第二領域Bの凹部を省略し、第一領域Aの凸部を第二領域Bにもランダムに配列するように原反層に全面にわたって形成するエンボス加工(凸部高さ50μm)を施す以外は、試験体1と同様にして、化粧材の比較体1を作製した。
【0141】
〈比較体2〉
第一領域Aの凸部を省略し、第二領域Bの凹部を第一領域Aにも規則的に配列するように原反層に全面にわたって形成するエンボス加工(凸部高さ50μm)を施す以外は、試験体1と同様にして、化粧材の比較体2を作製した。
【0142】
[試験内容]
〈防滑性試験〉
試験体1,2及び比較体1,2に対して、日本工業規格(JIS)A1454に準拠して防滑性試験を行って、滑り抵抗係数(CSR)を求めた。その結果を下記表1に示す。なお、表1において、CSRが0.36以上であったときは「○」で示し、CSRが0.36未満であったときは「×」で示した。
【0143】
〈足触り性試験〉
試験体1,2及び比較体1,2に対して、試験員10名が素足で触って、そのときの足触り感(滑り具合)が程良いと判定した人数を集計した。その結果を下記表1に示す。なお、表1において、程良いと判定した人が0人の場合には「×」で示し、程良いと判定した人が1~6人の場合には「△」で示し、心地良いと判定した人が7~10人の場合には「○」で示した。
【0144】
〈意匠性試験〉
試験体1,2及び比較体1,2に対して、試験員10名が目視観察し、そのときの見た目(意匠性)が良いと判定した人数を集計した。その結果を下記表1に示す。なお、表1において、見た目が良いと判定した人が0人の場合には「×」で示し、見た目が良いと判定した人が1~6人の場合には「△」で示し、見た目が良いと判定した人が7~10人の場合には「○」で示した。
【0145】
〈耐汚染性試験〉
試験体1,2及び比較体1,2に対して、日本農林規格(JAS)の「汚染A試験」に準拠して耐汚染性試験を行った。その結果を下記表1に示す。なお、表1において、着色残りを肉眼で確認できたときは「×」で示し、着色残りを肉眼で確認することは難しかったがルーペでは確認できたときは「△」で示し、着色残りをルーペでも確認できなかったときは「○」で示した。
【0146】
〈耐傷性試験〉
試験体1,2及び比較体1,2に対して、日本工業規格(JIS)K5600に準拠して鉛筆硬度試験を行って、耐傷性を確認した。その結果を下記表1に示す。なお、表1において、硬度F又はHの鉛筆で傷が付いた場合には「×」で示し、硬度F又はHの鉛筆で著しい凹みが発生した場合には「△」で示し、硬度F又はHの鉛筆で著しい凹みが発生せず、さらに傷が付かない場合には「○」で示し、硬度F又はHの鉛筆でも傷が付かない場合には「◎」で示した。
【0147】
[試験結果]
試験体1,2及び比較体1,2の試験結果を下記表1に示す。
【0148】
【0149】
表1からわかるように、比較例1においては、足触り性及び意匠性共に評価が低くなってしまい、比較例2においては、防滑性が低いため、総合評価がそれぞれNGとなってしまった。
【0150】
これに対し、試験体1,2においては、防滑性、足触り性、意匠性を含めてすべての評価が高く、総合評価がOKとなった。したがって、本発明によれば、優れた防滑性及び意匠性を発現できると共に、厚さを薄くしても耐傷性の低下を抑制できることが確認できた。
本発明に係る化粧シート及び化粧材は、優れた防滑性及び意匠性を発現できると共に、厚さを薄くしても耐傷性の低下を抑制できるので、建設産業を始めとして各種産業に極めて有効に利用することができる。