(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089429
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240626BHJP
G02B 26/12 20060101ALI20240626BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G02B26/12
G02B26/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204783
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 健介
(72)【発明者】
【氏名】西山 隆彦
【テーマコード(参考)】
2H045
5J084
【Fターム(参考)】
2H045AA03
2H045AA06
2H045AA62
2H045BA12
2H045BA26
2H045CA85
5J084AA05
5J084AA10
5J084AC02
5J084AC04
5J084AC07
5J084AD01
5J084AD02
5J084BA02
5J084BA04
5J084BA20
5J084BA35
5J084BA36
5J084BA38
5J084BA49
5J084BB02
5J084BB04
5J084BB26
5J084BB40
5J084CA03
5J084EA01
5J084EA31
(57)【要約】
【課題】迷光を低減可能な測距装置を提供すること。
【解決手段】本測距装置(100)は、物体からの戻り光に基づき、物体との間の距離を測定する測距装置であって、光源と、光源からの光(L0)が内側を通過する筒状部材(42)と、筒状部材(42)を通過した光源からの光(L0)を複数の光(L1)に分割する回折素子(41)と、回折素子(41)により分割された複数の光(L1)それぞれに由来する戻り光(R)を反射するミラー面(62)を含み、光源からの光(L0)を通過させる貫通孔(61)がミラー面(62)に形成された穴あきミラー(6)と、を有し、穴あきミラー(6)と物体との間において、前記筒状部材の一方側の端部は、穴あきミラー(6)の貫通孔(61)と内側が連続するように配置される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体からの戻り光に基づき、前記物体との間の距離を測定する測距装置であって、
光源と、
前記光源からの光が内側を通過する筒状部材と、
前記筒状部材を通過した前記光源からの光を複数の光に分割する回折素子と、
前記回折素子により分割された前記複数の光それぞれに由来する前記戻り光を反射するミラー面を含み、前記光源からの光を通過させる貫通孔が前記ミラー面に形成された穴あきミラーと、を有し、
前記穴あきミラーと前記物体との間において、前記筒状部材の一方側の端部は、前記穴あきミラーの前記貫通孔と前記内側が連続するように配置される、測距装置。
【請求項2】
前記筒状部材の他方の端部は、前記光源が位置する方向とは反対側の端部であって、前記回折素子が配置される、請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記筒状部材は、前記穴あきミラーと一体に形成されている、請求項1または請求項2に記載の測距装置。
【請求項4】
前記穴あきミラーにおける前記ミラー面の外側に配置される遮光部材をさらに有する、請求項1または請求項2に記載の測距装置。
【請求項5】
前記遮光部材は、前記穴あきミラーを支持する支持部材を含む、請求項4に記載の測距装置。
【請求項6】
前記筒状部材と一体に形成され、前記穴あきミラーを支持する支持部材を有する、請求項1または請求項2に記載の測距装置。
【請求項7】
開口を含み、前記開口に挿入された前記穴あきミラーを支持する支持部材を有し、
前記開口は、前記光源からの光が前記穴あきミラーに対して前記穴あきミラーの表面方向へ離れるほど開口面積が大きくなるテーパ形状を含む、請求項1または請求項2に記載の測距装置。
【請求項8】
前記回折素子と前記物体との間に配置され、前記回折素子により分割された前記複数の光のそれぞれを走査する走査部をさらに有する、請求項1または請求項2に記載の測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体からの戻り光に基づき、該物体との間の距離を測定する測距装置が知られている。このような測距装置は、ロボットや、自動車、飛行体等の移動体に搭載され、移動体の周囲に存在する物体を認識する用途等において使用される。
【0003】
上記測距装置には、投受光部と、投受光部から投光された光を走査させる第1偏向機構および第2偏向機構と、を備え、投光された光の投光時期と、該光の物体による反射光の受光時期との時間差から、物体との間の距離を測定するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測距装置では、迷光により測距性能が低下する場合がある。
【0006】
本発明は、迷光を低減可能な測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本測距装置(100)は、物体からの戻り光に基づき、物体との間の距離を測定する測距装置であって、光源と、光源からの光(L0)が内側を通過する筒状部材(42)と、筒状部材(42)を通過した光源からの光(L0)を複数の光(L1)に分割する回折素子(41)と、回折素子(41)により分割された複数の光(L1)それぞれに由来する戻り光(R)を反射するミラー面(62)を含み、光源からの光(L0)を通過させる貫通孔(61)がミラー面(62)に形成された穴あきミラー(6)と、を有し、穴あきミラー(6)と物体との間において、前記筒状部材の一方側の端部は、穴あきミラー(6)の貫通孔(61)と内側が連続するように配置される。
【0008】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、迷光を低減可能な測距装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る測距装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の測距装置の発光部および受光部周辺の一例を示す斜視図である。
【
図3】回折素子による光分割の一例を示す図であり、
図3(a)は回折素子の側面図、
図3(b)は光の入射方向側から視た回折素子の斜視図、
図3(c)は回折素子の正面図である。
【
図4】
図1の測距装置における穴あきミラーおよび筒状部材の一例を示す拡大斜視図である。
【
図5】
図4の穴あきミラーおよび筒状部材を平面P1で切断した断面図である。
【
図6】
図1の測距装置の走査部の一例を示す斜視図である。
【
図7】
図1の測距装置の構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図1の測距装置における同期検出部の一例を示す図である。
【
図9】
図1の測距装置における制御部のハードウェア構成例を示す図である。
【
図10】
図1の測距装置における制御部の機能構成例を示すブロック図である。
【
図11】
図1の測距装置における制御部による処理例を示すフロー図である。
【
図12】第2実施形態に係る支持部材の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0012】
以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための測距装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0013】
以下に示す図でX軸、Y軸およびZ軸により方向を示す場合があるが、Z軸に沿うZ方向は、実施形態に係る測距装置が備える第2駆動体の回転軸である第2軸に沿う方向を示す。X軸に沿うX方向は、Z方向に交差する方向を示す。Y軸に沿うY方向は、X軸およびZ軸の両方に交差する方向を示す。
【0014】
また、X方向で矢印が向いている方向を+X方向、+X方向の反対方向を-X方向と表記し、Y方向で矢印が向いている方向を+Y方向、+Y方向の反対方向を-Y方向と表記し、Z方向で矢印が向いている方向を+Z方向、+Z方向の反対方向を-Z方向と表記する。但し、これらは測距装置の使用時における向きを制限するものではなく、測距装置は任意の向きに配置可能である。
【0015】
[第1実施形態]
以下、サービスロボットに搭載され、サービスロボットの進行方向または周囲に存在する物体との間の距離をTOF(Time of Flight)方式で測定する測距装置を一例として、実施形態を説明する。
【0016】
サービスロボットとは、工場内での資材運搬、接客施設での商品運搬および案内業務、施設内警備、或いは清掃等の主に役務の目的で使用される自律移動型の移動体をいう。サービスロボットに搭載される測距装置は、サービスロボットの進行方向または周囲に存在する物体を検出したり、サービスロボットが動作する施設の施設内地図等を作成したりするために使用される。
【0017】
<測距装置100の構成例>
(全体構成)
図1~
図6を参照して、本実施形態に係る測距装置100の構成の一例を説明する。
図1は、測距装置100の全体構成を例示する斜視図である。
図2は、測距装置100における光源および受光部の周辺を例示する斜視図である。
図3は、回折素子41による光分割の一例を示す図であり、
図3(a)は回折素子41の側面図、
図3(b)は光の入射方向側から視た回折素子41の斜視図、
図3(c)は回折素子41の正面図である。
図4は、測距装置100における穴あきミラー6および筒状部材42の一例を示す拡大斜視図である。
図5は、
図4の穴あきミラー6および筒状部材42を平面P1で切断した断面図である。
図6は測距装置100における走査部120を例示する斜視図である。
【0018】
測距装置100は、物体からの戻り光に基づき、該物体との間の距離を測定する装置である。ここで、戻り光とは、測距装置100から照射された光が物体等により反射または散乱され、測距装置100に戻る光をいう。測距装置100は、1つの物体に限らず、2以上の物体それぞれとの間の距離も測定できる。
【0019】
図1~
図6に示すように、測距装置100は、台部1と、保持部2と、光源3と、第1レンズ4と、穴あきミラー6と、第2レンズ7と、5つの受光部8と、イケール9と、回折素子41と、筒状部材42と、支持部材63と、遮光部材64と、走査部120と、を有する。なお、台部1、保持部2、第1レンズ4、第2レンズ7、イケール9、支持部材63および走査部120のそれぞれは、必須の構成部ではない。
【0020】
図1に示すように、台部1は、保持部2と回転ステージ10が設けられた平板状の部材である。台部1は、-Z方向側の面上における相互に異なる領域に、保持部2と回転ステージ10とを固定している。回転ステージ10は、台部1の+Y方向側の領域にネジ部材等により固定されている。保持部2は、台部1における回転ステージ10の-Y方向側の領域に、結合部材11を介してネジ部材等により固定されている。
【0021】
台部1は、その材質に特段の制限はないが、回転ステージ10は重量が大きい場合があるため、金属材料等の剛性が高い材料を含んで構成されることが好ましい。台部1は、平板状の部材に限られず、回転ステージ10と保持部2を設置可能であれば如何なるものであってもよい。例えばサービスロボットの筐体に保持部2と回転ステージ10が設置される場合には、サービスロボットの筐体が台部に対応する。
【0022】
保持部2は、天井パネル21と背面パネル22とが結合して構成された部材である。天井パネル21および背面パネル22は、それぞれ平板状の部材である。天井パネル21および背面パネル22は、その材質に特段の制限はなく、例えば金属材料または樹脂材料等を適用可能である。
【0023】
図1および
図2に示すように、天井パネル21の+Z方向側の面には、光源3、第1レンズ4および穴あきミラー6が設けられている。背面パネル22の+Y方向側の面には、第2レンズ7および5つの受光部8が設けられている。
【0024】
光源3は、光L0を発する。光源3は、例えばLD(Laser Diode:半導体レーザ)である。光L0は、例えばパルス状のレーザ光である。光源3は、光L0を+Z方向側に発する。但し、光源3は、LED(light emitting diode:発光ダイオード)等であってもよい。光L0の波長は、近赤外波長領域等の非可視の波長領域のレーザ光であると、人間にレーザ光を視認させずに測距可能な点において好適である。
【0025】
第1レンズ4は、ガラス材料または樹脂材料を含んで構成される。第1レンズ4は、光L0を略コリメート(略平行化)する。測距装置100は、第1レンズ4を有することにより、光源3から発せられた光L0の広がりを抑制でき、光利用効率を向上させることができる。第1レンズ4によりコリメートされた光L0は、穴あきミラー6に設けられた貫通孔61を通過した後、筒状部材42に入射する。
【0026】
筒状部材42は、光源3からの光L0が内側を通過する筒状の部材である。本実施形態では、筒状部材42は、穴あきミラー6と物体との間において、長手方向に沿う方向(例えばZ方向)から視た場合に穴あきミラー6の貫通孔61が内側に位置するように配置される。筒状部材42は、樹脂、金属材料等を含んで構成される。筒状部材42の内側および外側は、光の反射を低減するように黒塗りされることが好ましく、艶消しされることがさらに好ましい。
【0027】
本実施形態では、筒状部材42における光源3が位置する方向とは反対側の端部420に、回折素子41が配置される。換言すると、回折素子41は、穴あきミラー6に対して光源3が位置する方向とは反対方向に配置される。
【0028】
図3に示すように、回折素子41は、平面視において略円形の形状を有し、光L0の波長に対して光透過性を有する平板状の部材である。回折素子41は、ガラス、樹脂等の材料を含んで構成される。回折素子41の-Z方向側の面、+Z方向の面、またはその両方には、周期構造が形成されている。回折素子41は、入射される光L0を、周期構造を用いて回折させることにより5つの光L1に分割する。5つの光L1は、分割光L11~L15を含む。分割光L11は、回折素子41の0次光(透過光)である。分割光L12~L15は、回折素子41の1次回折光である。但し、光L0が回折素子41により分割される数は、5つに限らず、要求される空間分解能等に応じて適宜選択可能である。
【0029】
分割光L11~L15は、伝搬方向が相互に異なる平行光束である。分割光L11~L15は、走査部120により走査される。分割光L11~L15のそれぞれが走査された光である5つの走査光L2は、それぞれ照射領域における異なる位置に照射される。
【0030】
図3(a)に示す回折素子41による分割角度θLは、2.1度以上であってもよい。分割角度θLとは、回折素子41により分割された5つの光L1それぞれの、伝搬方向に沿う中心軸同士がなす角度をいう。分割角度θLは、回折素子41による回折光の伝搬方向に沿う中心軸同士がなす角度である回折角に対応する。
【0031】
ここで、規格であるIEC60825-1では、レーザ光出射する機器から100mm離れた位置において、直径7mmの受光面を有するセンサにより検出した場合の光強度によってレーザ光に対する安全性を規定している。分割角度θLを2.1度以上とすると、測距装置100から100mm離れた位置の直径7mmの受光面内に、回折素子41により分割した5つの光L1のうち3つ以下が入射する状態になる。これにより、測距装置100は、IEC60825-1の規定に準拠しやすくなる。
【0032】
人の目の瞳径および焦点距離に基づくと、5つの光L1のうちの同一直線上に並ぶ3つが並行して人の目に入射し得る角度は、±2.0度よりも小さい角度である。本実施形態では、回折素子41による分割角度θLを2.1度以上とすることにより、5つの光L1のうちの同一直線上の3つ以上が並行して人の目に入射することを防止し、人の目に対する安全性を意味するアイセーフを実現できる。また、本実施形態では、2.1度以上において分割角度θLをできるだけ小さくすることにより、アイセーフを実現しつつ、測距の空間分解能を向上させることができる。
【0033】
平面視における回折素子41の外形形状は、略円形に限らず、略矩形、略楕円形、略多角形等であってもよい。また、回折素子41の中央を透過する分割光L11と、4つの対角方向に分割される分割光L12~L15が得られる構成を例示したが、光L0が分割される方向は対角方向に限定されず、適宜選択可能である。
【0034】
図1および
図2に示すように、穴あきミラー6は、光源3と回折素子41との間に配置される。穴あきミラー6は、回折素子41により分割された複数の光L1のそれぞれに由来する戻り光を反射するミラー面62を含み、光源3からの光L0を通過させる貫通孔61がミラー面62に形成されている。穴あきミラー6は、金属、ガラス、樹脂等の材料を含んで構成される。ミラー面62には、アルミニウム等の金属からなる反射膜が蒸着等により形成される。
【0035】
光源3からの光L0は、穴あきミラー6の貫通孔61を通過する。貫通孔61を通過した光L0は、回折素子41により5つの光L1に分割され、走査部120により走査される。走査部120による5つの走査光L2に由来する5つの戻り光は、回折素子41および筒状部材42の外側を通ってミラー面62に入射する。ミラー面62により反射された5つの戻り光は、第2レンズ7により集光され、5つの受光部8に入射する。
【0036】
図4および
図5に示すように、支持部材63は、穴あきミラー6を支持する。遮光部材64は、穴あきミラー6におけるミラー面62の外側に配置される。支持部材63は、金属材料、樹脂材料等を含んで構成される。本実施形態では、遮光部材64は、支持部材63を含む。支持部材63は、遮光部材64として機能するため、
図4および
図5では、支持部材63と遮光部材64の符号を併記している。
【0037】
例えば、回折素子41が、穴あきミラー6と光源3との間に配置されると、回折素子41により回折され、分割された5つの光L1が穴あきミラー6の貫通孔61に入射する。5つの光L1に含まれる分割光L11~L15のうち、分割光L11は、光L0の進行方向と略平行な方向に伝搬して貫通孔61に入射する。一方、分割光L12~L15は、回折により、光L0の進行方向に対して角度を有する方向に伝搬して貫通孔61に入射する。分割光L12~L15が光L0の進行方向に対して角度を有する方向に伝搬し、貫通孔61の外縁や内壁等により散乱されることで、迷光が発生する場合がある。また、回折素子41による高次回折光が迷光となる場合がある。これらの迷光が第2レンズ7により集光されて5つの受光部8に入射することで、測距装置100における受光信号のSN(Signal Noise)比が低下し、測距性能が低下する場合がある。
【0038】
本実施形態では、回折素子41を筒状部材42の端部420に配置することにより、回折素子41により回折された光が貫通孔61の外縁や内壁等により散乱されることを低減し、迷光の発生を低減できる。また、回折素子41を筒状部材42の端部420に配置することにより、回折素子41が配置される位置が物体に近づくため、回折素子41による高次回折光が第2レンズ7に入射することを低減できる。このように、本実施形態では、迷光を低減可能な測距装置を提供することができる。また、本実施形態では、迷光を低減する結果、測距装置100における受光信号のSN(Signal Noise)比を向上させ、測距性能を高くすることができる。
【0039】
一方、走査部120により走査された光に由来する戻り光のうちの一部は、穴あきミラー6におけるミラー面62の外側を通り、ミラー面62により反射されずに、第2レンズ7に直接入射する場合がある。
図5において、戻り光Rは、戻り光のうち、ミラー面62により反射されるものを表し、迷光Rsは、戻り光のうち、ミラー面62の外側を通り、ミラー面62により反射されないものを表している。迷光Rsは、予め定められた光路を通る光ではないため、受光部8に入射すると、測距装置100における受光信号のSN比を低下させ、測距性能を低下させる。
【0040】
本実施形態では、ミラー面62の外側に遮光部材64を配置することにより、迷光Rsを遮光し、迷光Rsが受光部8に入射することを低減できるため、測距装置100における受光信号のSN比を向上させ、測距性能を高くすることができる。遮光部材64の外形のサイズは、第2レンズ7の直径と、回折素子41による分割角度と、によって決定される第2レンズ7の有効視野角以上の入射角で、第2レンズ7に入射する迷光Rsを遮光できるように定められることが好ましい。
【0041】
また、
図5に示すように、本実施形態では、支持部材63は、開口630を含み、開口630に挿入された穴あきミラー6を支持する。開口630は、光源3からの光L0が穴あきミラー6に対して入射する側から出射する側に向けて(穴あきミラー6の表面方向へ離れるほど)開口面積が大きくなるテーパ形状631を含む。開口630がテーパ形状631を含むことにより、戻り光Rのうち、ミラー面62の外縁近傍に入射する戻り光Rが支持部材63により遮られることを低減できる。これにより、本実施形態では、戻り光Rの光量を増大させることができるため、測距装置100における受光信号のSN比を向上させ、測距性能を高くすることができる。
【0042】
また、
図4および
図5に示すように、本実施形態では、筒状部材42は、穴あきミラー6と一体に形成されている。例えば、筒状部材42および穴あきミラー6のそれぞれを別々に製作した後、接着部材等により筒状部材42と穴あきミラー6とを接着することによって、筒状部材42を穴あきミラー6と一体に形成できる。この場合、ミラー面62における反射膜は、筒状部材42と穴あきミラー6とを接着する前に穴あきミラー6の表面に蒸着されてもよいし、筒状部材42と穴あきミラー6とを接着した後に穴あきミラー6の表面に蒸着されてもよい。また、筒状部材42と穴あきミラー6を樹脂材料により構成する場合には、筒状部材42および穴あきミラー6を射出成形で加工することにより、筒状部材42を穴あきミラー6と一体に形成することもできる。この場合には、ミラー面62における反射膜は、筒状部材42と穴あきミラー6とが成形加工された後、穴あきミラー6の表面に蒸着されてもよい。
【0043】
本実施形態では、筒状部材42を穴あきミラー6と一体に形成することにより、筒状部材42を支持するための部材を製作し、配置しなくてもよいため、測距装置100の製造効率を高くするとともに、測距装置100の製造コストを低減できる。また筒状部材42を支持するための部材の配置スペースを省略できるため、測距装置100を小型化することができる。
【0044】
走査部120は、回折素子41と物体との間の光路に配置され、回折素子41により分割された5つの光L1のそれぞれを走査する。走査部120による走査光L2は、物体に照射される。走査部120は、回転反射体5と、回転ステージ10と、を含む。走査部120は、第1方向および第1方向と交差する第2方向への走査光L2を物体に照射する。本実施形態では、測距装置100が走査部120を有することにより、広い範囲に存在する1以上の物体に対し、1以上の物体それぞれと間の距離を測定することができる。但し、測距装置100は、走査部120を必ずしも有さなくてもよい。測距装置100は、走査部120を有さない場合には、5つの光L1の照射方向に存在する物体との間の距離を測定できる。なお、走査部120は、回転反射体5に代えて揺動ミラー(往復ミラー)により、5つの光L1のそれぞれを走査してもよい。
【0045】
回転反射体5は、6つの光反射面51を有する。回転反射体5は、回転により光反射面51の角度を変化させることによって、5つの光L1のそれぞれを走査し、走査される5つの走査光L2を物体に照射する。
【0046】
図1では、図を簡素化するため、5つの光L1のうちの1つのみと、5つの走査光L2のうちの1つのみと、を表示している。また
図1では、5つの走査光L2のうちの1つを、任意のタイミングに+Y方向側に照射される1つのレーザビームとして表示している。
【0047】
回転反射体5は、例えばポリゴンミラーである。第1軸A1に沿う方向から視た回転反射体5の形状は略正六角形である。回転反射体5は、正六角形の各辺に対応する外周面に6つの光反射面51を有する。回転反射体5は、アルミニウム等の金属材料で形成した略正六角柱状の部材の外周面を、切削または鏡面研磨することにより製作できる。但し、回転反射体5は、金属材料または樹脂材料等で形成された回転体の外周面にアルミニウム等を鏡面蒸着することにより製作されてもよい。
【0048】
光反射面51の数は、6つに限定されず、1以上であればよい。光反射面51の数に応じて、回転反射体5による光の走査角度範囲が異なる。例えば、光反射面51の数が多いほど走査角度範囲は狭くなり、光反射面51の数が少ないほど走査角度範囲は広くなる。光反射面51の数は、要求される走査角度範囲に応じて適宜決定可能である。
【0049】
回転反射体5には、回転反射体5の中心軸と回転軸が略一致するように第1軸モータが取り付けられている。回転反射体5は、第1軸モータを駆動源にして第1軸A1周りに回転する。5つの光L1は、第1軸A1を中心にした円の円周方向に走査されるということもできる。回転反射体5の回転方向は一定である。例えば、回転反射体5は
図1における第1軸回転方向A11に沿って連続回転する。但し、回転反射体5は、第1軸回転方向A11とは反対方向に連続回転してもよい。
【0050】
図1において、ある時刻における、測距装置100の+Y方向側に物体が存在すると、5つの走査光L2が物体で反射または散乱された戻り光が測距装置100に向けて-Y方向側に戻される。戻り光は、再び回転反射体5の光反射面51に入射し、光反射面51により-Z方向側に反射される。-Z方向側に反射された戻り光のうち、穴あきミラー6のミラー面62に入射した戻り光は、ミラー面62により-Y方向側に反射され、5つの受光部8に到達する。本明細書に示す例では、5つの光L1が反射される光反射面51と戻り光が反射される光反射面51は同じ面である。なお、
図1の状態における時刻とは別の時刻における走査部120のA2軸周りの回転位置よび回転反射体5のA1周りの回転位置によっては、走査光L2が物体を照射する方向は、+Y方向に限らない。しかしながら、照射光が物体で反射されて測距装置100に向けて戻され、光反射面51に入射し、-Z方向に反射される点は、
図1の状態における時刻とは別の時刻においても同様である。
【0051】
5つの受光部8のそれぞれは、穴あきミラー6のミラー面62により反射された戻り光の受光信号を出力する。5つの受光部8は、より詳しくは、走査部120から照射された5つの走査光L2に由来する戻り光に基づいて、5つの走査光L2それぞれの走査角度ごとでの受光信号を出力する。「走査角度ごと」は、「単位時間当たりに走査光が走査される角度ごと」を意味する。
【0052】
5つの受光部8は、受光部81から受光部85を含む。5つの受光部8は、5つの走査光L2それぞれの走査角度ごとでの受光信号を出力する。なお、受光部8の数は5つに限定されず、回折素子41による分割数に合わせて適宜変更可能である。
【0053】
受光部81から受光部85のそれぞれは、例えばAPD(Avalanche Photodiode:アバランシェフォトダイオード)である。APDは、アバランシェ増倍と呼ばれる現象を利用して受光感度を向上させたフォトダイオードの一種である。但し、受光部81から受光部85のそれぞれは、フォトダイオード(Photodiode)や光電子増倍管等であってもよい。
【0054】
図6において、イケール9は、屈曲部を含み、回転反射体5を支持する。イケール9は、-Z方向側の面が回転ステージ10の載置面101に接触し、ネジ部材等により載置面101上に固定されている。イケール9は、基板91を介し、底面に交差する+X方向側の面に回転反射体5を支持する。イケール9の材質に特段の制限はないが、剛性を高く確保するために、金属等の高剛性の材料を含んで構成されることが好ましい。
【0055】
回転ステージ10は、回転反射体5を支持しつつ、自身が回転可能である。回転ステージ10は、イケール9を第2軸A2周りに回転させることにより、回転反射体5を第2軸A2周りに回転させる。回転反射体5による5つの走査光L2は、回転ステージ10の回転によって、第2方向に走査される。5つの走査光L2は、第2軸A2を中心にした円の円周方向に走査されるということもできる。
【0056】
回転ステージ10は、台部1上において、保持部2が設けられた領域とは異なる領域に設けられている。従って回転ステージ10が回転しても、保持部2、並びに保持部2が保持する光源3および5つの受光部8はそれぞれ不動であり、台部1に固定された状態が維持される。回転ステージ10は、載置面101と、ベアリング102と、マグネット103と、モータコア104と、を有する。
【0057】
載置面101は、第2軸A2に略直交し、第2軸A2周りに回転可能な面である。載置面101はイケール9を載置する。ベアリング102は、載置面101の回転を滑らかにする部材である。ベアリング102には、ボールベアリングまたはクロスローラベアリング等を適用してもよい。
【0058】
マグネット103は永久磁石からなる。モータコア104はモータを構成するステータの鉄心に該当する部材である。マグネット103とモータコア104とを含んでモータが構成されている。電流に応じてマグネット103が回転することにより、ベアリング102を介して載置面101が回転する。
【0059】
回転ステージ10の回転方向は、一定であり、例えば
図1における第2軸回転方向A21に対応する。但し、回転ステージ10は、第2軸回転方向A21とは反対方向に連続回転してもよい。
【0060】
測距装置100は、光L0の光軸と第2軸A2とが同軸になるように構成されている。光L0の光軸は、光L0の伝搬方向に沿う光L0の中心を通る軸を意味する。また同軸とは、複数の軸が略一致していることを意味する。
【0061】
走査光L2は、回転反射体5の回転により第1軸A1と交差する方向に走査されるとともに、回転ステージ10の回転により第2軸A2と交差する方向に走査される。第2軸A2と交差する方向は、例えば
4重力方向に略直交する水平方向である。第1軸A1は、第2軸A2に対して傾いて配置されればよい。
【0062】
測距装置100は、光源3、回転反射体5、5つの受光部8または回転ステージ10等の構成部の一部または全部を覆うための外装カバーを備えてもよい。外装カバーを備えると、測距装置100の内部へのゴミや埃等の侵入を防ぎ、回転反射体5等にゴミや埃等が付着することを防止できる。また回転反射体5や回転ステージ10が高速回転すると、回転に伴う風切り音が大きくなる場合がある。外装カバーを設けることにより音が周囲に伝わることを抑制できる。外装カバーの材質には、金属または樹脂材料等を適用可能である。
【0063】
一方、外装カバーを設けると、外装カバーにおける走査光L2が出射する出射窓以外の部分が走査光L2を遮るため、走査角度範囲が制限され、測距装置100による物体200の検出範囲または測距範囲が制限される場合がある。走査光L2の波長に対して光透過性を有する透明な樹脂材料で外装カバーを構成すると、このような走査角度範囲の制限を緩和できる。
【0064】
図7は、測距装置100の構成を例示するブロック図である。なお、
図7における実線で示した矢印は光の流れを示し、破線で示した矢印は電気信号の流れを示している。測距装置100は、受発光部110と、出射窓130と、制御部140と、を有する。
【0065】
走査部120は、駆動制御部150により、回転反射体5および回転ステージ10それぞれの回転を制御することによって、5つの走査光L2を物体200に照射する。
【0066】
駆動制御部150は、第1軸モータ151と、第2軸モータ152と、同期検出部153と、回転制御部402と、給電部155と、を有する。駆動制御部150は、同期検出部153から出力される回転反射体5の回転周期に対応する同期信号Snに基づき、回転制御部402により、第2軸モータ152による回転を制御する。
【0067】
同期検出部153は、第1軸エンコーダ531と、周期光発光部532と、周期光受光部533と、を有する。同期検出部153は、第1軸エンコーダ531から出力される第1角度検出信号En1に基づいて周期光発光部532に発光させ、周期光発光部532からの光を受光した周期光受光部533により同期信号Snを出力させる。第1角度検出信号En1は、回転反射体5の回転角度の検出信号である。
【0068】
周期光発光部532は、例えばLED等を含んで構成され、第1角度検出信号En1に基づき、例えば第1軸エンコーダ531が回転反射体5の回転原点に対応する角度を検出したタイミングにパルス光Opを発する。
【0069】
周期光受光部533は、フォトダイオード(Photo Diode)等を含んで構成され、周期光発光部532により発生されたパルス光Opを受光したタイミングに、第2軸ドライバ基板173を介して同期信号Snを回転制御部402に出力する。
【0070】
給電部155は、発電コイル551と、給電コイル552と、を有する。給電部155は、電磁誘導により第1軸モータ151等に非接触で給電する。なお、給電とは電力を供給することをいう。
【0071】
発電コイル551は、電磁誘導により逆起電力を発生し、第1軸モータ151、第1軸エンコーダ531および第1軸ドライバ基板163のそれぞれに給電可能なコイルである。給電コイル552は、発電コイル551に対向配置され、第2軸ドライバ基板173から流れる電流に応じて、電磁誘導により発電コイル551に逆起電力を発生させるコイルである。給電コイル552に電流を流すと、電磁誘導により非接触で発電コイル551に逆起電力が発生する。
【0072】
給電部155は、電磁誘導による非接触給電に限定されず、回転接点等により、外部から第1軸モータ151等に給電することもできる。回転接点とは、回転体に配置された金属製リングとブラシを介して、回転体に電気的に接続する構成をいう。
【0073】
基板91には、回転反射体5、第1軸モータ151、第1軸エンコーダ531、第1軸ドライバ基板163、周期光発光部532および発電コイル551等が設けられている。回転ステージ10には、第2軸モータ152、第2軸エンコーダ172、第2軸ドライバ基板173、周期光受光部533、給電コイル552等が設けられている。
【0074】
第1軸モータ151は、回転反射体5を第1軸A1周りに回転させる。第1軸モータ151には、DC(Direct Current)モータまたはAC(Alternating Current)モータ等を適用できる。
【0075】
第1軸エンコーダ531は、第1角度検出信号En1を出力する。第1軸エンコーダ531は、例えばロータリエンコーダである。
【0076】
第1軸ドライバ基板163は、第1軸モータ151に駆動信号を供給する電気回路等を含む基板である。第1軸ドライバ基板163は、第1角度検出信号En1に基づき、回転反射体5が所定の第1周波数(回転数)により回転するように制御できる。なお、第1周波数は、第1軸ドライバ基板163により制御されるため、回転制御部402の制御対象ではない。
【0077】
第1軸ドライバ基板163は、給電部155による給電が開始された場合に、第1軸モータ151により回転反射体5の回転を開始させ、給電部155による給電が停止された場合に、第1軸モータ151により回転反射体5の回転を停止させる。
【0078】
第2軸モータ152は、DCモータ、ACモータまたはステッピングモータ等の各種モータにより構成できる。第2軸エンコーダ172は、ロータリエンコーダ等により構成され、回転ステージ10の回転角度を検出する。
【0079】
第2軸ドライバ基板173は、第2軸モータ152に駆動信号を供給する電気回路等を含む実装基板である。第2軸ドライバ基板173は、回転制御部402からの第2軸制御信号Dr2に基づき、回転ステージ10を回転させる。また、第2軸ドライバ基板173は、第2軸エンコーダ172により検出された回転ステージ10の第2角度検出信号En2を回転制御部402に出力する。
【0080】
回転制御部402は、第2角度検出信号En2に基づき、回転ステージ10の回転を制御する。ここで、回転ステージ10の回転数である第2周波数は、回転制御部402の制御対象である。
【0081】
受発光部110は、発光部基板111と、発光ブロック112と、穴あきミラー6と、支持部材63と、受光ブロック113と、受光部基板114と、を含む。
【0082】
発光部基板111は、制御部140からの発光制御信号Dr1に応じて光源3を発光させる電気回路を含む実装基板である。
【0083】
発光ブロック112は、光源3と、発光部ホルダ31と、第1レンズ4と、第1レンズホルダ40と、を含む。発光部ホルダ31は光源3を保持する部材である。第1レンズホルダ40は第1レンズ4を保持する部材である。支持部材63は、上述したように、穴あきミラー6を保持する部材である。
【0084】
受光ブロック113は、第2レンズ7と、第2レンズホルダ71と、5つの受光部8と、受光部ホルダ80と、を含む。第2レンズホルダ71は第2レンズ7を保持する部材である。受光部ホルダ80は5つの受光部8を保持する部材である。
【0085】
受光部基板114は、受光信号Sを、制御部140に出力する電気回路を含む実装基板である。受光信号Sは、例えば受光部8が受光した光強度に応じた電気信号である。受光部基板114は、トランスインピーダンスアンプおよびオペアンプ等を含む。受光部基板114は、トランスインピーダンスアンプおよびオペアンプ等により受光信号Sを増幅処理することにより、受光信号Sを、後段の制御部140によるデータ処理が可能な状態にすることができる。
【0086】
制御部140は、測距装置100全体の動作を制御する。本実施形態では、制御部140は、5つの受光信号Sに基づき、物体200との間の距離に関連する5つの距離情報Dtを演算により取得する。制御部140は、5つの距離情報Dtを外部装置300に出力する。なお、距離情報とは、物体200との間の距離に関する情報をいう。
【0087】
制御部140は、電気回路または電子回路等を有する制御回路基板を含む。制御部140は、例えば背面パネル22等に設置される。この制御回路基板は、回転反射体5および回転ステージ10が回転しても動かない。
【0088】
制御部140は、受発光部110および走査部120のそれぞれに電気的に接続しており、信号およびデータを相互に送受可能である。また制御部140は、サービスロボットを制御可能な外部装置300に通信可能に接続している。本実施形態では、回転制御部402は、制御部140内に設けられているが、制御部140の外部に設けられていてもよい。
【0089】
制御部140は、例えば外部装置300からの測距制御信号Ctに応じて発光制御信号Dr1を出力し、発光部基板111を介して光源3を発光させる。5つの光L1それぞれが走査される5つの走査光L2は、出射窓130を透過して、測距装置100から外部に向けて照射される。
【0090】
出射窓130は、光L0の波長に対して光透過性を有するガラス材料または樹脂材料を含んで構成されている。出射窓130は、測距装置100が装置全体を覆う不透明な外装カバーを備える場合に、走査光L2を透過して出射させる窓として機能する。
【0091】
走査光L2が物体200により反射または散乱された5つの戻り光Rは、出射窓130を透過して回転反射体5の光反射面51に入射する。5つの戻り光Rは、光反射面51により反射され、穴あきミラー6のミラー面により5つの受光部8に向けて反射される。
【0092】
5つの戻り光Rは、第2レンズ7により集光されながら5つの受光部8にそれぞれ入射する。5つの受光部8は、5つの戻り光Rに基づいて、5つの走査光L2の走査角度ごとでの受光信号Sを出力する。5つの走査光L2に対応する5つの受光信号Sは、受光部基板114を介して制御部140に出力される。
【0093】
測距装置100は、例えば、サービスロボットが搭載するバッテリから供給される電力により駆動される。但し、測距装置100は、測距装置100自身が搭載するバッテリから電力供給されてもよい。またサービスロボットの動作範囲が広くない場合等には、商用電源からケーブルを用いて給電されるようにしてもよい。
【0094】
(同期検出部153の構成例)
図8は、同期検出部153の構成を例示する図である。
図8は、回転ステージ10をYZ平面により切断した状態を模式的に示している。
【0095】
図8に示すように、回転ステージ10は、回転可能な回転部10aと、回転しない固定部10bと、を含んで構成される。周期光発光部532は、回転部10aにおける載置面101に設けられた発光基板532aに実装される。周期光受光部533は、固定部10bに設けられた受光基板533aに実装される。
【0096】
周期光発光部532は、発光基板532aに入力される第1角度検出信号En1に応じて、周期光発光部532に対向配置された周期光受光部533に向けてパルス光Opを発する。周期光受光部533によるパルス光Opの受光信号は、受光基板533aにより二値信号に変換され、同期信号Snとして回転制御部402に出力される。
【0097】
(制御部140のハードウェア構成例)
図9は、制御部140のハードウェア構成を例示するブロック図である。制御部140は、コンピュータによって構築されており、CPU(Central Processing Unit)141と、ROM(Read Only Memory)142と、RAM(Random Access Memory)143と、FPGA(Field Programmable Gate Array)144と、HDD/SSD(Hard Disk Drive/Solid State Drive)145と、機器接続I/F(Interface)146と、通信I/F147と、を有する。これらは、システムバスAを介して相互に通信可能に接続している。
【0098】
CPU141およびFPGA144は、演算処理を含む制御処理を実行する。ROM142は、IPL(Initial Program Loader)等のCPU141の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM143は、CPU141のワークエリアとして使用される。HDD/SSD145は、プログラムや測距装置100の設定情報等の各種情報を記憶する。
【0099】
機器接続I/F146は、制御部140を機器と接続するためのインターフェースである。ここでの機器は、発光部基板111、受光部基板114、同期検出部153、給電部155、第2軸エンコーダ172および第2軸ドライバ基板173等である。
【0100】
通信I/F147は、外部装置300や通信ネットワーク等とデータを通信するためのインターフェースである。通信I/F147として、イーサネットインターフェース等を適用できる。制御部140は、通信I/F147を介してインターネットに接続し、インターネットを介して外部装置300との間で通信することもできる。
【0101】
(制御部140の機能構成例)
図10は、制御部140の機能構成の一例を説明するブロック図である。制御部140は、可変部401と、回転制御部402と、発光制御部403と、距離情報取得部404と、出力部405と、を有する。回転制御部402は、第1軸回転制御部421と、第2軸回転制御部422と、停止制御部423と、を有する。
【0102】
可変部401、回転制御部402、発光制御部403および距離情報取得部404の各機能は、FPGA144等により実現される。あるいは、これら各機能の少なくとも一部は、CPU141がROM142に格納されたプログラムに規定された処理を実行することにより実現されてもよい。これら各機能の少なくとも一部は、複数の回路または複数のソフトウェアによって実現されてもよい。また、これら各機能の少なくとも一部は、外部装置300等の制御部140以外の構成部により実現されてもよいし、制御部140と制御部140以外の構成部との分散処理により実現されてもよい。出力部405の機能は、通信I/F147等により実現される。
【0103】
可変部401は、以下の式(1)および式(2)における定数αを変更することにより、回転ステージ10の第2周波数fhを変化させる。
fh=M×fv/(N+α) ・・・(1)
0<|α|<1 ・・・(2)
式(1)において、Nは、回転ステージ10の1回転中に第1軸A1と交差する方向に走査される5つの走査光L2によって形成される走査線の数を表す。fvは第1周波数を表す。Mは、回転反射体5の一回転周期中に、第1方向に走査される5つの走査光L2によって形成される走査線の数を表す。m面の回転反射体5であればM=mである。回転反射体5に代えて揺動ミラー(往復ミラー)を用いる場合にはM=2となる。
【0104】
可変部401は、測距装置100に設けられた操作部等の外部からの設定入力情報Seに応じて定数αを変更することができる。
【0105】
第1軸回転制御部421は、給電部155に給電制御信号Stを出力し、給電部155から第1軸モータ151への給電を開始させることにより、第1軸モータ151に回転を開始させる。また第1軸回転制御部421は、給電部155に給電制御信号Stを出力し、給電部155から第1軸モータ151への給電を停止させることにより、第1軸モータ151に回転を停止させる。第1軸回転制御部421は、第1軸モータ151の回転の開始および停止のみを制御し、第1軸モータ151の回転速度等の制御は行わない。
【0106】
第2軸回転制御部422は、同期検出部153からの同期信号Snと、第2軸エンコーダ172からの第2角度検出信号En2と、に基づき、第2軸ドライバ基板173を用いて回転ステージ10の回転を制御する。
【0107】
停止制御部423は、同期検出部153から所定期間、同期信号Snが出力されない場合に、第2軸モータ152による回転ステージ10の回転を停止させる。
【0108】
発光制御部403は、発光部基板111を用いて光源3に発光制御信号Dr1を出力することにより、光源3の発光を制御する。また発光制御部403は、光源3が発光した時刻に対応する発光時刻情報t1を距離情報取得部404に出力する。
【0109】
距離情報取得部404は、走査光L2が物体200により反射または散乱された後、5つの受光部8により受光される5つの戻り光Rに基づいて、物体200との間の距離に関する情報である5つの距離情報Dtを演算により取得する。距離情報取得部404は、光源3により光L0が発せられた発光時刻情報t1を発光制御部403から入力する。また距離情報取得部404は、受光部基板114を介して、5つの受光部8から、5つの受光部8に対応する5つの受光信号Sを入力し、5つの受光信号Sに基づき5つの受光時刻情報t2を取得する。距離情報取得部404は、TOFの原理に基づき、以下の式(3)を演算することによって5つの距離情報Dtを取得できる。
Dt(n)=c×Δt(n)/2 ・・・(3)
【0110】
(3)式において、nは、分割光L11~L15それぞれに対応する自然数である。例えば、Dt(1)は分割光L11に基づき得られる距離情報、Dt(2)は分割光L12に基づき得られる距離情報、Dt(3)は分割光L13に基づき得られる距離情報、Dt(4)は分割光L14に基づき得られる距離情報、Dt(5)は分割光L15に基づき得られる距離情報である。cは光速(約3×108m/s)を表す。Δtは、発光時刻と受光時刻との間の時間差である。Δt(n)は、分割光L11~L15それぞれに対応する時間差である。
【0111】
分割光L11~L15は、光源3から同時に発せられた光L0を分割したものであるため、発光時刻はいずれも等しい。一方、分割光L11~L15に基づく5つの戻り光Rそれぞれの受光時刻は異なる。距離情報取得部404は、分割光L11~L15それぞれに基づく距離情報Dtを並行して演算により取得する。
【0112】
出力部405は、距離情報取得部404により取得された距離情報Dtを出力する。本明細書に示す例では、出力部405は、5つの受光部8による5つの受光信号Sに基づいて取得される物体との間の5つの距離情報Dtを外部装置300に出力する。
【0113】
測距装置100による距離測定方式は、TOF方式に限定されるものではない。例えば測距装置100は、振幅変調したレーザ光を物体に照射し、物体で反射または散乱された戻り光と照射したレーザ光との位相差に基づき、距離情報を取得する位相差検出方式等を用いてもよい。
【0114】
<制御部140による処理例>
図11は、制御部140による処理の一例を示すフローチャートである。制御部140は、測距装置100に電源が投入され、測距装置100が起動されたタイミングで
図11の処理を開始する。
【0115】
まず、ステップS111において、制御部140は、可変部401により走査線間隔またはリフレッシュレートを変更するか否かを判定する。例えば可変部401は、測距装置100の操作部を用いた測距装置100の操作者による設定入力に基づき、走査線間隔またはリフレッシュレートを変更するか否かを判定できる。
【0116】
ステップS111において、変更しないと判定された場合には(ステップS111、NO)、制御部140は、ステップS114に処理を移行する。一方、変更すると判定された場合には(ステップS111、YES)、制御部140は、ステップS112において、可変部401により、設定入力情報Seを受け付ける。
【0117】
続いて、ステップS113において、制御部140は、可変部401により設定入力情報Seに応じて定数αを変更する。これにより、上記(1)式に応じて、第2周波数fhが変化し、走査線間隔およびリフレッシュレートが変更される。
【0118】
続いて、ステップS114において、制御部140は、第1軸回転制御部421により、給電部155から第1軸モータ151への給電を開始する。第1軸モータ151は、給電部155による給電開始に応じて回転を開始することにより、回転反射体5の回転を開始させる。
【0119】
続いて、ステップS115において、制御部140は、第2軸回転制御部422により、同期検出部153からの同期信号Snと、第2軸エンコーダ172からの第2角度検出信号En2と、に基づき、回転ステージ10の回転を開始させる。以降、回転ステージ10は、第2軸回転制御部422による制御下において回転を続ける。
【0120】
続いて、ステップS116において、制御部140は、発光制御部403により、光源3に発光制御信号Dr1を出力することによって、光源3に光L0を発光させる。また発光制御部403は、光源3の発光時刻情報t1を距離情報取得部404に出力する。
【0121】
続いて、ステップS117において、制御部140は、5つの走査光L2に由来する戻り光Rに基づき5つの受光部8から出力される5つの受光信号Sを入力する。
【0122】
続いて、ステップS118において、制御部140は、距離情報取得部404により、受光信号Sに基づく戻り光Rの受光時刻情報t2と、光源3の発光時刻情報t1と、に基づいて5つの距離情報Dtを演算により取得する。
【0123】
続いて、ステップS119において、制御部140は、出力部405により、5つの距離情報Dtを外部装置300に出力する。
【0124】
続いて、ステップS120において、制御部140は、停止制御部423により、同期検出部153からの同期信号Snが出力されない期間が所定の期間閾値以下であるか否かを判定する。
【0125】
ステップS120において、期間閾値以下ではないと判定された場合には(ステップS120、NO)、制御部140は、ステップS122に処理を移行する。一方、期間閾値以下であると判定された場合には(ステップS120、YES)、制御部140は、ステップS121において、測距装置100による測距を終了するか否かを判定する。例えば、制御部140は、測距装置100の操作部を用いた操作者の操作入力に基づき測距を終了するか否かを判定できる。
【0126】
ステップS121において、終了しないと判定した場合には(ステップS121、NO)、制御部140は、ステップS116以降の処理を再度行う。一方、終了すると判定した場合には(ステップS121、YES)、制御部140は、ステップS122において、第2軸回転制御部422により回転ステージ10の回転を停止させるとともに、発光制御部403により光源3の発光を停止させる。
【0127】
続いて、ステップS123において、制御部140は、第1軸回転制御部421により、給電部155から第1軸モータ151への給電を停止させることにより、第1軸モータ151に回転を停止させる。第1軸モータ151は、給電部155による給電停止に応答して回転を停止し、回転反射体5の回転を停止させる。
【0128】
以上のようにして、制御部140は、測距装置100による測距動作を制御できる。
【0129】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る測距装置における穴あきミラーおよび筒状部材について説明する。なお、既に説明した実施形態と同一の名称、符号については、同一もしくは同質の部材又は構成部を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0130】
本実施形態に係る測距装置は、筒状部材と一体に形成され、穴あきミラーを支持する支持部材を有する点が第1実施形態とは異なる。
【0131】
図12は、本実施形態に係る支持部材63aの一例を示す斜視図である。支持部材63aは、穴あきミラー6を支持する。遮光部材64aは、穴あきミラー6におけるミラー面62の外側に配置される。本実施形態では、遮光部材64aは、支持部材63aを含む。支持部材63aは、遮光部材64aとして機能するため、
図12では、支持部材63aと遮光部材64aの符号を併記している。
【0132】
支持部材63aは、内側に延びる梁状の接続部632を3つ有する。支持部材63aは、接続部632を介して筒状部材42と接続することにより、筒状部材42と一体に形成されている。なお、接続部632の数は3つに限らず、1以上であればよい。このような支持部材63aおよび筒状部材42は、樹脂を材料とした射出成形加工等によって形成できる。
【0133】
本実施形態では、支持部材63aが筒状部材42と一体に形成されることにより、筒状部材42を支持するための部材を製作し、配置しなくてもよいため、測距装置100の製造効率を高くするとともに、測距装置100の製造コストを低減できる。また筒状部材42を支持するための部材の配置スペースを省略できるため、測距装置を小型化することができる。これ以外の作用効果は、第1実施形態で示したものとほぼ同じである。
【0134】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形または変更が可能である。
【0135】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【0136】
実施形態に係る測距装置および測距システムは、サービスロボットに限らず、自動車、飛行体等の移動体に搭載され、移動体の周囲に存在する物体を認識する用途等において使用可能である。
【0137】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 物体からの戻り光に基づき、前記物体との間の距離を測定する測距装置であって、 光源と、前記光源からの光が内側を通過する筒状部材と、前記筒状部材を通過した前記光源からの光を複数の光に分割する回折素子と、前記回折素子により分割された前記複数の光それぞれに由来する前記戻り光を反射するミラー面を含み、前記光源からの光を通過させる貫通孔が前記ミラー面に形成された穴あきミラーと、を有し、前記穴あきミラーと前記物体との間において、前記筒状部材の一方側の端部は、前記穴あきミラーの前記貫通孔と前記内側が連続するように配置される、測距装置である。
<2> 前記筒状部材の他方の端部は、前記光源が位置する方向とは反対側の端部であって、前記回折素子が配置される、前記<1>に記載の測距装置である。
<3> 前記筒状部材は、前記穴あきミラーと一体に形成されている、前記<1>または前記<2>に記載の測距装置である。
<4> 前記穴あきミラーにおける前記ミラー面の外側に配置される遮光部材をさらに有する、前記<1>から前記<3>のいずれか1つに記載の測距装置である。
<5> 前記遮光部材は、前記穴あきミラーを支持する支持部材を含む、前記<4>に記載の測距装置である。
<6> 前記筒状部材と一体に形成され、前記穴あきミラーを支持する支持部材を有する、前記<1>から前記<5>のいずれか1つに記載の測距装置である。
<7> 開口を含み、前記開口に挿入された前記穴あきミラーを支持する支持部材を有し、前記開口は、前記光源からの光が前記穴あきミラーに対して前記穴あきミラーの表面方向へ離れるほど開口面積が大きくなるテーパ形状を含む、前記<1>から前記<6>のいずれか1つに記載の測距装置である。
<8> 前記回折素子と前記物体との間に配置され、前記回折素子により分割された前記複数の光のそれぞれを走査する走査部をさらに有する、前記<1>から前記<7>のいずれか1つに記載の測距装置である。
【符号の説明】
【0138】
1…台部、2…保持部、3…光源、4…第1レンズ、5…回転反射体、6…穴あきミラー、7…第2レンズ、8…5つの受光部、81、82、83、84、85…受光部、9…イケール、10…回転ステージ、10a…回転部、10b…固定部、11…結合部材、21…天井パネル、22…背面パネル、31…発光部ホルダ、40…第1レンズホルダ、41…回折素子、42…筒状部材、420…端部、51…光反射面、61…貫通孔、62…ミラー面、63、63a…支持部材、630…開口、631…テーパ形状、632…接続部、64、64a…遮光部材、71…第2レンズホルダ、90…第1方向、91…基板、100…測距装置、101…載置面、102…ベアリング、103…マグネット、104…モータコア、110…受発光部、112…発光ブロック、113…受光ブロック、114…受光部基板、120…走査部、130…出射窓、140…制御部、401…可変部、402…回転制御部、403…発光制御部、404…距離情報取得部、405…出力部、421…第1軸回転制御部、422…第2軸回転制御部、423…停止制御部、150…駆動制御部、151…第1軸モータ、152…第2軸モータ、153…同期検出部、155…給電部、163…第1軸ドライバ基板、172…第2軸エンコーダ、173…第2軸ドライバ基板、200…物体、300…外部装置、531…第1軸エンコーダ、532…周期光発光部、532a…発光基板、533…周期光受光部、533a…受光基板、551…発電コイル、552…給電コイル、A1…第1軸、A11…第1軸回転方向、A2…第2軸、A21…第2軸回転方向、L0…光、L1…複数の光、L11、L12、L13、L14、L15…分割光、L2…走査光、R…戻り光、Rs…迷光、Dr1…発光制御信号、Dr2…第2軸制御信号、Ct…測距制御信号、Dt…距離情報、S…受光信号、Sn…同期信号、St…給電制御信号、En1…第1角度検出信号、En2…第2角度検出信号、Op…パルス光