(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089439
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】車両のドア構造
(51)【国際特許分類】
B60R 3/00 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
B60R3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204796
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】下川 政紀
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022AA02
3D022AC03
3D022AD01
3D022AE01
(57)【要約】
【課題】乗降用ドアとステップカバーとの間の隙間から漏れる光を抑制し、当該隙間を通して侵入している水を速やかに排出できる車両のドア構造を提供すること。
【解決手段】車両のドア構造は、ドアの下部に設けられ、乗降用ステップ20を照射可能なステップランプ40と、ドアのインナパネル12に取り付けられ、乗降用ステップ20を車両外方から覆うステップカバー30と、を備え、ステップカバー30は、ステップランプと対向する位置に形成された切欠部32aと、インナパネル12の下面部12b側に対向する面であり、車両側面視において切欠部32a近傍を頂点とする中間部32と、ステップランプよりも車幅方向外側にて中間部32からインナパネル12の下面部12bに向かって立設し、車両前後方向に延びる縦壁部51、及びステップランプよりも車両後方側にて縦壁部51から車幅方向内側へ延びる横壁53を有する仕切部50と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアの下方に乗降用ステップが備えられた車両のドア構造であって、
前記ドアの下部に設けられ、前記乗降用ステップを照射可能なステップランプと、
前記ドアのインナパネルに取り付けられ、前記乗降用ステップを車両外方から覆うステップカバーと、
を備え、
前記ステップカバーは、
前記ステップランプと対向する位置に形成された切欠部と、
前記インナパネルの下面側に対向する面であり、車両側面視において前記切欠部近傍を頂点とする湾曲面と、
前記ステップランプよりも車幅方向外側にて前記湾曲面から前記インナパネルの下面に向かって立設し、車両前後方向に延びる第1壁部、及び前記ステップランプよりも車両後方側にて前記第1壁部から車幅方向内側へ延びる第2壁部を有する仕切部と、
を備えたことを特徴とする、車両のドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラックなどの車高の高い車両では、乗降用ドアの下方に乗降用ステップが設けられている。乗降用ステップは、乗降用ドアよりも車両内方側に設けられているため、車両が走行しているとき、車両の側方を流れる走行風が乗降用ステップのスペースへ入り込むことによって、車両側方からの後方への走行風の流れが滞り、走行中における空気抵抗が増加することがある。
【0003】
そこで、下記特許文献1に記載のように、乗降用ドアの下方に乗降用ステップを覆うステップカバーを設けることにより、車両の走行中における空気抵抗を低減させることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乗降用ドアへのステップカバーの取り付けは、意匠性なども考慮され、乗降用ドアのインナパネルに取り付けられることが考えられる。乗降用ドアの下部に乗降用ステップを照射するステップランプを設けていることがあるが、乗降用ドアのインナパネルとステップカバーとの隙間からステップランプが照射した光が漏れ出て見栄えが悪くなるという問題がある。更に、洗車等の際に乗降用ドアのインナパネルとステップカバーとの隙間から水が入りステップカバーに水が流れて水垢等が付着して汚れるという恐れもある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、乗降用ドアとステップカバーとの間の隙間から漏れる光を抑制し、当該隙間を通して侵入している水を速やかに排出できる車両のドア構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0008】
本適用例に係る車両のドア構造は、ドアの下方に乗降用ステップが備えられた車両のドア構造であって、前記ドアの下部に設けられ、前記乗降用ステップを照射可能なステップランプと、前記ドアのインナパネルに取り付けられ、前記乗降用ステップを車両外方から覆うステップカバーと、を備え、前記ステップカバーは、前記ステップランプと対向する位置に形成された切欠部と、前記インナパネルの下面側に対向する面であり、車両側面視において前記切欠部近傍を頂点とする湾曲面と、前記ステップランプよりも車幅方向外側にて前記湾曲面から前記インナパネルの下面に向かって立設し、車両前後方向に延びる第1壁部、及び前記ステップランプよりも車両後方側にて前記第1壁部から車幅方向内側へ延びる第2壁部を有する仕切部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、ドアとステップカバーとの間の隙間から水が侵入した場合、その大部分は第1壁部により遮断され、第1壁部を超えてきた水は第1壁部の車内側下部に集まる。また、湾曲面は切欠部近傍を頂点として湾曲しており、つまり上に凸に湾曲していることから集まった水は車両前後方向に流れ、速やかに車外に排水することができる。
【0010】
また、ステップランプから照射される照射光は、第1壁部により車外側へ漏れるのが遮られるとともに、第2壁部により車両後方側へ漏れるのが遮られる。
【0011】
以上のことから、本発明によれば、乗降用ドアとステップカバーとの間の隙間から漏れる光を抑制し、当該隙間を通して侵入している水を速やかに排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る車両のドア構造の一実施形態を適用したトラックの側面図である。
【
図2】
図1に示すII-II線に沿う概略断面図である。
【
図3】ステップランプ及びステップカバーの斜視図である。
【
図4】ステップランプ及びステップカバーの側面視図である。
【
図5】(a)
図4のA-A線に沿う断面図、(b)
図4のB-B線に沿う断面図、(c)
図4のC-C線に沿う断面図、(d)
図4のD-D線に沿う断面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、
図1~
図5を適宜参照しつつ、本発明に係る車両のドア構造の一実施形態における構成、動作及び効果について説明する。なお、各図は理解しやすくするため実際の構造よりも簡略化し、部分的に拡大又は縮小して示している。
【0014】
(車両のドア構造の構成)
図1に示すトラック100は、その側面において本実施形態に係る車両のドア構造1を備えるものである。以下において、主にキャブ左側の乗降用ドア10を例に説明するが、キャブ右側の乗降ドアも同様の構成を有している。以下、「外面」とはトラック100の車外側の面を意味しており、「内面」とはトラック100の車内側の面を意味している。
【0015】
図1、
図2に示すように乗降用ドア10は、トラック100のキャブ101の左側面における乗降用の開閉可能なドアである。当該キャブ101には、乗降用ドア10の下方に乗降用ステップ20が設けられている。また、乗降用ドア10から乗降用ステップ20を覆うようにステップカバー30が設けられている。
図1に示すように車両側面視において乗降用ドア10と乗降用ステップ20との間には外面上、車両前後方向に延びた隙間Sが形成されている。
【0016】
図2に示すように、乗降用ドア10は車外側のアウタパネル11と車内側のインナパネル12とを備えている。アウタパネル11は、車両前後方向且つ上下方向に略平面状に拡がっている。インナパネル12は、アウタパネル11に対して車内側に張り出す形をしており、例えば接着剤とヘミング曲げ等によってアウタパネル11に固定されている。
【0017】
詳しくは、インナパネル12は、アウタパネル11より車内側にて車両前後方向及び上下方向に平面状に拡がっている本体部12aと、当該本体部12aの下端からアウタパネル11の下端に向かって延びている下面部12bと、を有している。下面部12bは車内側から車外側に向けて斜め下方に湾曲して延びている。また、下面部12bには、車幅方向中央部分にステップランプ40が設けられている。
【0018】
ステップランプ40は、乗降用ステップ20を照らすための照射光Lを照射する光源である。ステップランプ40は、乗降用ドア10が閉じているときはスイッチがOFFとなり、開かれるとスイッチがONとなって点灯し、乗降用ステップ20及び地面Eを照射する。なお、ステップランプ40のON及びOFFについては、例えばトラック100の運転席付近に設けられるステップランプスイッチ(図示せず)を操作することにより手動で切り替えることもできる。そのようなステップランプスイッチを操作することで、乗降用ドア10が閉じられている際にも乗降用ステップ20を照らすことができる。ステップランプ40としては、例えば照射光Lの照射方向を調整可能なものを使用することもできる。
【0019】
ステップカバー30は、乗降用ドア10に取り付けられる上部31と、上部31の下端から車内側から車外側に向けて斜め下方に湾曲して延びる中間部32と、中間部32下端から乗降用ステップ20の車外側を覆う下部33と、を備えている。ステップカバー30の材料としては、例えば、車両内面側に板金とし、車両外面側に樹脂である。
【0020】
詳しくは、ステップカバー30の上部31は乗降用ドア10のインナパネル12の車内側の面と当接し、図示しない締結部材(例えばボルト及びナット)により取り付けられている。なお、図示しないが補強のため上部31とインナパネル12との間に金属からなる補強板を介在させてもよい。
【0021】
また、ステップカバー30の下部33は、車両前後方向及び上下方向に平面状に拡がっている。当該下部33は、乗降用ドア10のアウタパネル11よりも僅かに車外側に位置している。
【0022】
ステップカバー30の中間部32は、インナパネル12の下面部12bと一定の間隔をあけており、外面側の隙間Sとつながる空間を形成している。この中間部32とインナパネル12の下面部12bとの間の空間にステップランプ40は配置されている。当該中間部32には、ステップランプ40と対向する位置に略矩形の照明用切欠部32aが形成されている。ステップランプ40の照射光Lは当該照明用切欠部32aを通して乗降用ステップ20に到達する。一方で中間部32には、ステップランプ40の照射光を遮る仕切部50が設けられている。
【0023】
図3から
図5に詳しく示すように、仕切部50は、ステップランプ40よりも車幅方向外側にて中間部32の上面からインナパネル12の下面部12bに向かって立設し、車両前後方向に延びる縦壁部51(第1壁部)と、ステップランプ40よりも車両後方側にて縦壁部51から車幅方向内側方向へ延びる反射壁部52(第2壁部)及び横壁部53(第2壁部)とを有している。また、仕切部50は各壁を中間部32に取り付けるための4つの取付部54a~54dを有している。
【0024】
詳しくは、縦壁部51の上端は、ステップランプ40から照射される光が車外に漏れるのを防ぐためステップランプ40の照射面(下面)近くまで延びている。一方で縦壁部51の上端は、トラック100の走行時の振動等でもインナパネル12の下面部12bと干渉しないよう、当該下面部12bと一定の間隔を有する位置にある。また、縦壁部51は、ステップカバー30の中間部32において、照明用切欠部32aの車外側の縁部近傍に位置している。特に縦壁部51において、照明用切欠部32aに対応する範囲には車内側の面に光を反射する反射材が設けられた反射部51aが形成されている。
【0025】
反射壁部52は、照明用切欠部32aの車両前後方向後側の縁部近傍に設けられている。反射壁部52のステップランプ40側の面、即ち車両前後方向前側の面には光を反射する反射材が設けられている。つまり、反射壁部52と縦壁部51の反射部51aにより照明用切欠部32aの縁部の2辺を囲っている。
【0026】
横壁部53は、縦壁部51の車両前後方向後端近傍において、縦壁部51と、ステップカバー30の上部31において車外側に膨出した膨出部31aとの間に設けられている。
【0027】
各取付部54a~54dは、縦壁部51の下端から中間部の上面に沿って当接して車幅内側に延びており、接着剤等で固着されている。反射壁部52及び横壁部53は、それぞれ対応する取付部54c、54dから立設している。
【0028】
図4に示すように、ステップカバー30の中間部32の上面は、車両側面視において照明用切欠部32a近傍を頂点とした湾曲面をなしている。そして、特に
図5(c)、
図5(d)に示すように、反射壁部52及び横壁部53の下部には排水用切欠部52a、53aが形成されている。
【0029】
このような構成により、乗降用ドア10とステップカバー30との間の隙間から水が侵入した場合、その大部分は縦壁部51により遮断され、当該縦壁部51を超えてきた水は縦壁部51の車内側下部に集まる。中間部32の上面は照明用切欠部32a近傍を頂点として湾曲しており、つまり上に凸に湾曲していることから集まった水は車両前後方向に流れていく。この際、反射壁部52及び横壁部53の下部に排水用切欠部52a、53aが形成されていることで、水の流れを遮ることなく、速やかに車外に排水することができる。
【0030】
また、ステップランプ40から照射される照射光Lは、縦壁部51により車外側へ漏れるのが遮られるとともに、反射壁部52及び横壁部53により車両後方側へ漏れるのが遮られる。さらに、照明用切欠部32aの縁部近傍にてステップランプ40側に反射材が設けられている反射壁部52及び横壁部53が配設されていることで、ステップランプ40の照射光Lは照明用切欠部32a側に偏光される。なお、ステップランプ40の車両前側においては反射壁や横壁が設けられていないが、車両前側は乗降用ドア10を開いた際には車内側に向くため、光が漏れても見栄えに対する影響は少ない。
【0031】
以上のことから、本実施形態に係る車両のドア構造によれば、乗降用ドアとステップカバーとの間の隙間から漏れる光を抑制し、当該隙間を通して侵入している水を速やかに排出できる。
【0032】
(その他)
以上で本発明に係る車両のドア構造の一実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限定されるものではない。
【0033】
上記実施形態においては、ステップカバー30の中間部32が車両側面視において照明用切欠部32a近傍を頂点とする湾曲面をなしているが、縦壁部(第1壁部)に底面を形成して、当該底面を車両側面視において切欠部近傍を頂点とする湾曲面としてもよい。
【0034】
また上記実施形態では反射壁部52と縦壁部51の反射部51aとにより照明用切欠部32aの縁部の2辺を囲っているが、他の辺に対応して反射壁部を形成してもよい。
【0035】
上記実施形態においては、
図1に示すように車両のドア構造1を適用したトラック100について説明したが、車両のドア構造をトラック以外の車両(例えばバス等の大型車両)に適用することもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 車両のドア構造
10 乗降用ドア
11 アウタパネル
12 インナパネル
20 補強プレート
30 ステップランプ
40 ステップカバー
41 取付部
42 カバー部
43 連結部
50 照射範囲調整部
51 第1反射板
52 第2反射板
53 第3反射板
100 トラック