(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089445
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】MEMSセンサ及びMEMSセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01P 15/08 20060101AFI20240626BHJP
G01C 19/5783 20120101ALI20240626BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240626BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
G01P15/08 102Z
G01C19/5783
B81B3/00
B81C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204811
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】ヘラー,マーティン ウィルフリード
(72)【発明者】
【氏名】藤田 有真
【テーマコード(参考)】
2F105
3C081
【Fターム(参考)】
2F105BB17
3C081AA01
3C081AA17
3C081BA22
3C081BA30
3C081BA32
3C081BA41
3C081BA46
3C081BA75
3C081CA02
3C081CA13
3C081CA17
3C081CA19
3C081CA20
3C081CA23
3C081CA28
3C081CA32
3C081CA40
3C081CA42
3C081DA03
3C081DA22
3C081EA02
(57)【要約】
【課題】MEMSセンサにおいて、センサ素子が配置される空間部を所定圧力に比較的容易に設定できるようにする。
【解決手段】MEMSセンサは、第1基板10と、第1基板10に接合される第2基板20とを備え、第1基板10と第2基板20とが接合される接合部6の内部にセンサ素子2が配置される空間部7が形成され、第1基板10に空間部7と接合部6の外部とを連通する連通路30が形成される。連通路30は、接合部6の内部に開口する内側開口部31と、接合部6の外部に開口する外側開口部32と、内側開口部31と外側開口部32とを接続する管部33とを有し、外側開口部32はシール層34によって閉塞されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に接合される第2基板と、
を備え、
前記第1基板と前記第2基板とが接合される接合部の内部にセンサ素子が配置される空間部が形成され、
前記第1基板に前記空間部と前記接合部の外部とを連通する連通路が形成され、
前記連通路は、前記接合部の内部に開口する内側開口部と、前記接合部の外部に開口する外側開口部と、前記内側開口部と前記外側開口部とを接続する管部とを有し、
前記外側開口部は、前記外側開口部をシールするシール層によって閉塞されている、
MEMSセンサ。
【請求項2】
前記第1基板と前記第2基板とが接合される複数の前記接合部の内部に複数の前記センサ素子がそれぞれ配置される複数の前記空間部が形成され、
前記第1基板に、少なくとも1つの前記空間部と前記接合部の外部とを連通する少なくとも1つの前記連通路が形成されている、
請求項1に記載のMEMSセンサ。
【請求項3】
前記第1基板は、シリコン基板であり、
前記連通路は、酸化シリコンによって形成されている、
請求項1に記載のMEMSセンサ。
【請求項4】
前記連通路上に前記連通路を保護する保護層が形成されている、
請求項3に記載のMEMSセンサ。
【請求項5】
前記内側開口部及び前記外側開口部は、前記第1基板の表面に形成され、
前記管部は、前記第1基板の内部に形成されている、
請求項1に記載のMEMSセンサ。
【請求項6】
前記シール層は、金属層である、
請求項1に記載のMEMSセンサ。
【請求項7】
第1基板を準備し、
第1基板に接合される第2基板を準備し、
前記第1基板に前記第2基板を接合して前記第1基板と前記第2基板とが接合される接合部の内部にセンサ素子が配置される空間部を形成し、
前記第1基板に、前記接合部の内部に開口する内側開口部と、前記接合部の外部に開口する外側開口部と、前記内側開口部と前記外側開口部とを接続する管部とを有して前記空間部と前記接合部の外部とを連通する連通路を形成し、
前記外側開口部に、前記外側開口部をシールするシール層を形成して前記外側開口部を前記シール層によって閉塞する、
MEMSセンサの製造方法。
【請求項8】
前記第1基板と前記第2基板とが接合される複数の前記接合部の内部に複数の前記センサ素子がそれぞれ配置される複数の前記空間部が形成され、
前記第1基板に、少なくとも1つの前記空間部と前記接合部の外部とを連通する少なくとも1つの前記連通路が形成される、
請求項7に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項9】
前記第2基板に、前記接合部の外部に前記外側開口部に対向するように前記第2基板の表面から窪む溝部を形成し、
前記第2基板に、前記第2基板の裏面から前記溝部に連通する連通穴を形成し、
前記第2基板の裏面から前記連通穴を通じて前記外側開口部に前記シール層を形成して前記外側開口部を前記シール層によって閉塞する、
請求項7に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項10】
前記第2基板の裏面を切削して前記第2基板に前記連通穴を形成する、
請求項9に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項11】
前記第2基板の裏面を研削して前記第2基板に前記連通穴を形成する、
請求項9に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項12】
前記第1基板に前記連通路に対応するトレンチを形成し、前記トレンチの内面に熱酸化膜を形成することにより、前記第1基板に前記連通路を形成する、
請求項7に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項13】
前記トレンチは、平面視で前記連通路の内側開口部及び外側開口部に対応する両端部が前記両端部の間の中央部に比して溝幅が大きく形成される、
請求項12に記載のMEMSセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、MEMSセンサ及びMEMSセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体微細加工技術を用いて製造されるMEMS(Micro Electro Mechanical System)センサが知られている。例えば特許文献1には、デバイス側基板とリッド側基板とをガラスフリットによって接合し、デバイス側基板に設けられたセンサ素子の電極を封止したMEMSセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つのセンサデバイスに加速度センサ及びジャイロセンサなどの複数のセンサを一体化させて複合させたMEMSコンボセンサでは、デバイス側基板とリッド側基板とを接合させたときに加速度センサのセンサ素子とジャイロセンサのセンサ素子とが配置される空間部の内部圧力が異なる場合がある。
【0005】
MEMSコンボセンサでは、デバイス側基板とリッド側基板とを接合させたときにセンサ素子が配置される空間部にセンサ素子に応じた内部圧力に設定することが望まれる。このようなMEMSセンサでは、センサ素子が配置される空間部に応じた圧力に比較的容易に設定できることが望まれる。
【0006】
本開示は、MEMSセンサにおいて、センサ素子が配置される空間部を所定圧力に比較的容易に設定できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、第1基板と、前記第1基板に接合される第2基板と、を備え、前記第1基板と前記第2基板とが接合される接合部の内部にセンサ素子が配置される空間部が形成され、前記第1基板に前記空間部と前記接合部の外部とを連通する連通路が形成され、前記連通路は、前記接合部の内部に開口する内側開口部と、前記接合部の外部に開口する外側開口部と、前記内側開口部と前記外側開口部とを接続する管部とを有し、前記外側開口部は、前記外側開口部をシールするシール層によって閉塞されている、MEMSセンサを提供する。
【0008】
本開示によれば、MEMSセンサにおいて、第1基板と第2基板との接合部の内部にセンサ素子が配置される空間部が形成され、第1基板に、空間部と接合部の外部とを連通する連通路が形成される。連通路は、接合部の内部に開口する内側開口部と、接合部の外部に開口する外側開口部と、内側開口部と外側開口部とを接続する管部とを有し、外側開口部はシール層によって閉塞される。これにより、MEMSセンサにおいて、センサ素子が配置される空間部を所定圧力に設定した状態で外側開口部をシール層によって閉塞することで、センサ素子が配置される空間部を所定圧力に比較的容易に設定することができる。MEMSコンボセンサについても、複数のセンサ素子がそれぞれ配置される複数の空間部をそれぞれ所定圧力に比較的容易に設定することができる。
【0009】
また、本開示は、第1基板を準備し、第1基板に接合される第2基板を準備し、前記第1基板に前記第2基板を接合して前記第1基板と前記第2基板とが接合される接合部の内部にセンサ素子が配置される空間部を形成し、前記第1基板に、前記接合部の内部に開口する内側開口部と、前記接合部の外部に開口する外側開口部と、前記内側開口部と前記外側開口部とを接続する管部とを有して前記空間部と前記接合部の外部とを連通する連通路を形成し、前記外側開口部に、前記外側開口部をシールするシール層を形成して前記外側開口部を前記シール層によって閉塞する、MEMSセンサの製造方法を提供する。
【0010】
本開示によれば、第1基板に第2基板が接合されて第1基板と第2基板とが接合される接合部の内部にセンサ素子が配置される空間部が形成され、第1基板に、接合部の内部に開口する内側開口部と、接合部の外部に開口する外側開口部と、内側開口部と外側開口部とを接続する管部とを有して空間部と接合部の外部とを連通する連通路が形成される。そして、外側開口部にシール層が形成されて外側開口部がシール層によって閉塞される。これにより、MEMSセンサにおいて、センサ素子が配置される空間部を所定圧力に設定した状態で外側開口部をシール層によって閉塞することで、センサ素子が配置される空間部を所定圧力に比較的容易に設定することができる。MEMSコンボセンサについても、複数のセンサ素子がそれぞれ配置される複数の空間部をそれぞれ所定圧力に比較的容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るMEMSセンサの概略平面図である。
【
図2】
図2は、第1基板アセンブリの平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す第1基板アセンブリのA部を示す拡大図である。
【
図4】
図4は、
図1のIV-IV線に沿うMEMSセンサの断面図である。
【
図5】
図5は、
図1のV-V線に沿うMEMSセンサの断面図である。
【
図6】
図6は、
図3のVI-VI線に沿うMEMSセンサの断面図である。
【
図7】
図7は、
図3のVII-VII線に沿うMEMSセンサの断面図である。
【
図8】
図8は、連通路用トレンチが形成された第1基板の平面図である。
【
図9】
図9は、
図8のIX-IX線に沿う第1基板の断面図である。
【
図10】
図10は、連通路用トレンチが熱酸化された第1基板の平面図である。
【
図13】
図13は、第1基板アセンブリ及び第2基板アセンブリの概略平面図である。
【
図14】
図14は、
図13のXIV-XIV線に沿う第1基板アセンブリ及び第2基板アセンブリの断面図である。
【
図15】
図15は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図16】
図16は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図17】
図17は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図18】
図18は、第2基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図19】
図19は、MEMSセンサの製造方法を説明する図である。
【
図20】
図20は、MEMSセンサの製造方法を説明する図である。
【
図21】
図21は、MEMSセンサの製造方法を説明する図である。
【
図22】
図22は、MEMSセンサの第1変形例を示す図である。
【
図23】
図23は、MEMSセンサの第2変形例を示す図である。
【
図24】
図24は、MEMSセンサの第3変形例を示す図である。
【
図25】
図25は、MEMSセンサの別の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本開示の第1実施形態に係るMEMSセンサの概略平面図である。
図1に示すように、本開示の第1実施形態に係るMEMSセンサ1は、センサ素子2として複数のセンサ素子を有するMEMSコンボセンサである。MEMSセンサ1は、センサ素子2を有するデバイス側基板としての第1基板10を備えた第1基板アセンブリ11と、センサ素子2を覆うように第1基板10に接合されるリッド側基板としての第2基板20を備えた第2基板アセンブリ21とを備えている。MEMSセンサ1は、半導体微細加工技術を用いて第1基板10及び第2基板20を加工して製造される。
【0014】
以下では、第1基板10及び第2基板20の表面に沿う所定方向をX方向とするとともにX方向と直交する方向をY方向とし、X方向及びY方向と直交する第1基板10及び第2基板20の厚さ方向をZ方向とする。
図1では、第2基板20が第1基板10のZ方向上側に接合されたMEMSセンサ1が示されている。
【0015】
センサ素子2は、第1センサ素子4としてのジャイロセンサ素子4と第2センサ素子5としての加速度センサ素子5とを有している。センサ素子2は、第1基板10と第2基板20とが接合される接合部6の内部に配置され、接合部6の内部にはセンサ素子2が配置される空間部7が形成されている。
【0016】
ジャイロセンサ素子4は、模式的に示されているが、可動部4aの移動を検出して角速度を検出するように構成された周知のジャイロセンサ素子である。ジャイロセンサ素子4は、第1基板10と第2基板20とが接合されるジャイロセンサ用接合部6aの内部に形成されたジャイロセンサ用空間部7aに配置されている。
【0017】
加速度センサ素子5は、模式的に示されているが、可動部5aの移動を検出して加速度を検出するように構成された周知のMEMS加速度センサ素子である。加速度センサ素子5は、第1基板10と第2基板20とが接合される加速度センサ用接合部6bの内部に形成された加速度センサ用空間部7bに配置されている。
【0018】
第1基板10には、互いにY方向に離間して複数のパッド部3が設けられている。パッド部3は、外部の電子部品などに接続されている。パッド部3は、ジャイロセンサ素子4に電気信号を入力したりジャイロセンサ素子4の電気信号を出力したりするように、また加速度センサ素子5に電気信号を入力したり加速度センサ素子5の電気信号を出力したりするようになっている。パッド部3には、ジャイロセンサ素子4と電気的に接続する配線が接続されるとともに加速度センサ素子5と電気的に接続する配線が接合され、且つ第1基板10と電気的に接続する配線が接続されている。
【0019】
図2は、第1基板アセンブリの平面図である。
図3は、
図2に示す第1基板アセンブリのA部を示す拡大図である。
図4は、
図1のIV-IV線に沿うMEMSセンサの断面図である。
図5は、
図1のV-V線に沿うMEMSセンサの断面図である。
図6は、
図3のVI-VI線に沿うMEMSセンサの断面図である。
図7は、
図3のVII-VII線に沿うMEMSセンサの断面図である。
【0020】
図4及び
図5に示すように、第1基板アセンブリ11は、表面である第1主面10aと、第1主面10aの反対側の裏面である第2主面10bとを有する第1基板10を備えている。第1基板10は、
図2に示すように、平面視で、X方向に延びる2辺とY方向に延びる2辺とを有して矩形状に形成されている。第1基板10として、単結晶シリコン基板が用いられる。
【0021】
第1基板10は、センサ素子2に対応して第1主面10aに一部が露出する空洞12を有している。空洞12は、ジャイロセンサ用空洞13と加速度センサ用空洞14とを有している。ジャイロセンサ用空洞13は、
図4に示すように、第1主面10aから第1基板10の厚さ方向に略直方体状に窪んで形成され、底壁部13aと底壁部13aから第1基板10の厚さ方向に延在する側壁部13bとを有している。
【0022】
第1基板10は、ジャイロセンサ素子4の可動部4aを支持する支持部15を有している。ジャイロセンサ素子4の可動部4aは、第1基板10の空洞13内に配置され、空洞13内に浮いた状態で支持部15に支持されている。ジャイロセンサ素子4の可動部4aは、第1基板10の一部によって形成されている。支持部15は、ジャイロセンサ素子4の周囲を囲むように平面視で略四角形状に環状に形成されたジャイロセンサ用支持部15aを有している。ジャイロセンサ用支持部15aの内周面は、空洞13の側壁部13bを構成する。
【0023】
加速度センサ用空洞14は、
図5に示すように、第1主面10aから第1基板10の厚さ方向に略直方体状に窪んで形成され、底壁部14aと底壁部14aから第1基板10の厚さ方向に延在する側壁部14bとを有している。
【0024】
第1基板10は、加速度センサ素子5の可動部5aを支持する支持部15を有している。加速度センサ素子5の可動部5aは、第1基板10の空洞14内に配置され、空洞14内に浮いた状態で支持部15に支持されている。加速度センサ素子5の可動部5aは、第1基板10の一部によって形成されている。支持部15は、加速度センサ素子5の周囲を囲むように平面視で略四角形状に環状に形成された加速度センサ用支持部15bを有している。加速度センサ用支持部15bの内周面は、空洞14の側壁部14bを構成する。
【0025】
第2基板アセンブリ21は、
図4及び
図5に示すように、表面である第1主面20aと、第1主面20aの反対側の裏面である第2主面20bとを有する第2基板20を備えている。第2基板20は、
図1に示すように、平面視で、X方向に延びる2辺とY方向に延びる2辺とを有して矩形状に形成されている。第2基板20は、第1基板10よりX方向に短く形成されている。第2基板20として、単結晶シリコン基板が用いられる。
【0026】
第2基板20は、第1主面20aから第2基板20の厚さ方向に略直方体状に窪む空洞22を有している。空洞22は、ジャイロセンサ用空洞23と加速度センサ用空洞24とを有している。ジャイロセンサ用空洞23は、
図4に示すように、底壁部23aと底壁部23aから第2基板20の厚さ方向に延在する側壁部23bとを有している。加速度センサ用空洞24は、
図5に示すように、底壁部24aと底壁部24aから第2基板20の厚さ方向に延在する側壁部24bとを有している。
【0027】
第2基板20は、センサ素子2を覆うように第1基板10に接合される。第1基板10と第2基板20とが接合される接合部6は、ジャイロセンサ用接合部6aと加速度センサ用接合部6bとを有している。ジャイロセンサ用接合部6aの内部にはジャイロセンサ用空間部7aが形成され、加速度センサ用接合部6bの内部には加速度センサ用空間部7bが形成されている。空間部7は、接合部6によって密閉され、本実施形態では、ジャイロセンサ用空間部7aは、加速度センサ用空間部7bより圧力が低く設定される。
【0028】
第1基板10と第2基板20とが接合される接合部6は、第1基板10に形成される第1基板側接合部17と、第2基板20に形成される第2基板側接合部27とを有している。第1基板10と第2基板20とが接合される接合部6は、
図4及び
図5に示すように、第1基板側接合部17と第2基板側接合部27とを接合する接合材8としてのガラスフリット8を有している。接合材8として、他の接合材を用いることも可能である。
【0029】
ジャイロセンサ用接合部6aでは、第1基板側接合部17は、ジャイロセンサ用第1基板側接合部17aと加速度センサ用第1基板側接合部17bとを有している。第2基板側接合部27は、ジャイロセンサ用第2基板側接合部27aと加速度センサ用第2基板側接合部27bとを有している。
【0030】
第1基板側接合部17aは、
図2に示すように、空洞13の周囲に形成され、平面視で略四角枠状に環状に形成される。第1基板側接合部17aは、
図4に示すように、第1基板10の第1主面10a上にスパッタ法などによって形成されたAl層によって形成される。本実施形態では、第1基板側接合部17aは、第1基板10の第1主面10a上に形成された保護層9上に設けられている。保護層9として、スパッタ法などによって形成されたAl層が用いられる。パッド部3は、第1基板10の第1主面上に形成された保護層9上に設けられ、スパッタ法などによって形成されたAl層によって形成される。保護層9として酸化シリコンの上にAl
2O
3(アルミナ)のような気密性の高い層を積層することによって形成することも可能である。この場合、酸化シリコンによって酸素や窒素を防止し、Al
2O
3(アルミナ)のような気密性の高い層によって水素やヘリウムを防止し、水素やヘリウム雰囲気下でもキャビティ内部の気圧を所望レベルに維持することができる。
【0031】
第2基板側接合部27aは、
図1に示すように、第1基板側接合部17aに対応して平面視で略四角枠状に環状に形成される。第2基板側接合部27aは、
図4に示すように、第2基板20の第1主面20a上にスパッタ法などによって形成されたAl層によって形成されている。第2基板側接合部27a上にはガラスフリット8が設けられる。
【0032】
第2基板側接合部27aは、第1基板側接合部17aにガラスフリット8を介して接合される。これにより、第1基板10と第2基板20とが接合される接合部6の内部に形成されたジャイロセンサ用空間部7aが密閉される。ジャイロセンサ用空間部7aに配置されるジャイロセンサ素子4は、図示されていないが、酸化シリコンによって形成される分離部によって第1基板10と電気的に分離されるとともに、ジャイロセンサ素子4とパッド部3とを電気的に接続する配線によってパッド部3に接続されている。
【0033】
MEMSセンサ1では、
図3に示すように、第1基板10に空間部7と接合部6の外部とを連通する連通路30が形成され、連通路30は、接合部6の内部に開口する内側開口部31と、接合部6の外部に開口する外側開口部32と、内側開口部31と外側開口部32とを接続する管部33とを有し、外側開口部32は、外側開口部32をシールするシール層34によって閉塞されている。連通路30の詳細については後述する。
【0034】
加速度センサ用接合部6bは、ジャイロセンサ用接合部6aと同様に形成されている。第1基板側接合部17bは、
図2に示すように、空洞14の周囲に形成され、平面視で略四角枠状に環状に形成される。第1基板側接合部17bは、
図5に示すように、第1基板10の第1主面10a上にスパッタ法などによって形成されたAl層によって形成される。本実施形態では、第1基板側接合部17bは、第1基板10の第1主面10a上に形成された保護層9上に設けられ、スパッタ法などによって形成されたAl層によって形成される。
【0035】
第2基板側接合部27bは、
図1に示すように、第1基板側接合部17bに対応して平面視で略四角枠状に環状に形成される。第2基板側接合部27bは、
図4に示すように、第2基板20の第1主面20a上にスパッタ法などによって形成されたAl層によって形成される。第2基板側接合部27b上にはガラスフリット8が設けられる。
【0036】
第2基板側接合部27bは、第1基板側接合部17bにガラスフリット8を介して接合される。これにより、第1基板10と第2基板20とが接合される接合部6の内部に形成された加速度センサ用空間部7bが密閉される。加速度センサ用空間部7bに配置される加速度センサ素子5は、図示されていないが、酸化シリコンによって形成される分離部によって第1基板10と電気的に分離されるとともに、加速度センサ素子5とパッド部3とを電気的に接続する配線によってパッド部3に接続されている。
【0037】
前述したように、MEMSセンサ1では、第1基板10に空間部7と接合部6の外部とを連通する連通路30が形成され、連通路30は、接合部6の内部に開口する内側開口部31と、接合部6の外部に開口する外側開口部32と、内側開口部31と外側開口部32とを接続する管部33とを有し、外側開口部32は、外側開口部32をシールするシール層34によって閉塞されている。
【0038】
ジャイロセンサ素子4が配置される空間部7aについて、
図3及び
図4に示すように、第1基板10に、空間部7と接合部6の外部とを連通する連通路30が形成されている。連通路30は、ジャイロセンサ用空間部7aとジャイロセンサ用接合部6aの外部とを連通するようになっている。
【0039】
連通路30は、接合部6aの内部に開口する内側開口部31と、接合部6aの外部に開口する外側開口部32と、内側開口部31と外側開口部32とを接続する管部33とを有している。内側開口部31及び外側開口部32は、第1基板10の第1主面10aに形成され、管部33は、第1基板10の内部に形成されている。
【0040】
図3に示すように、連通路30の内側開口部31及び外側開口部32はそれぞれ、これに限定されるものではないが、平面視でY方向に比してX方向に長い長穴状に形成されている。内側開口部31及び外側開口部32は、例えば、平面視で正方形又は円形であってもよい。連通路30の管部33は、これに限定されるものではないが、平面視でX方向に直線状に延び、接合部6の内部と接合部6の外部とを連通するように設けられている。管部33は、平面視で直線状に形成されているが、曲線状などの他の形状に形成するようにしてもよい。
【0041】
連通路30の管部33は、
図6に示すように、閉断面状に断面略三角形状に形成され、X方向に略同一断面を有している。管部33の両端部は、
図7に示すように、第1基板10の第1主面10aに開口され、管部33の両端部に、第1基板10の第1主面10aに開口された内側開口部31及び外側開口部32が設けられている。連通路30は、酸化シリコンによって形成される。管部33は、絶縁膜である酸化シリコン膜19によって形成されている。
【0042】
図8は、連通路用トレンチが形成された第1基板の平面図である。
図9は、
図8のIX-IX線に沿う第1基板の断面図である。連通路30は、
図8及び
図9に示すように、第1基板10に連通路30に対応する部分をフォトリソグラフィ及びエッチングなどによって除去してトレンチ16を形成した後に、熱酸化法によってトレンチ16の内面を熱酸化させ、熱酸化膜としての酸化シリコン膜19によって形成される。連通路30は、トレンチ16の内面にCVD法などによって形成された酸化シリコン膜19によって形成するようにしてもよい。
【0043】
トレンチ16は、酸化シリコン膜19によって連通路30が形成されるように、第1基板10の第1主面10a側が先細り状に断面略三角形状に形成される。
図8に示すように、トレンチ16は、長手方向両端部16aの溝幅W1が長手方向中央部16bの溝幅W2より大きく形成され、平面視で連通路30の内側開口部31及び外側開口部32に対応する両端部が両端部の間の中央部に比して溝幅が大きく形成される。トレンチ16は、例えば、溝幅W1が2μmに設定され、溝幅W2が1μmに設定され、深さが20~30μmに設定される。トレンチ16は、断面略矩形状に形成するようにしてもよい。
【0044】
図10は、連通路用トレンチが熱酸化された第1基板の平面図である。
図11は、
図10のXI-XI線に沿う第1基板の断面図である。
図12は、
図10のXII-XII線に沿う第1基板の断面図である。
図10から
図12に示すように、トレンチ16が熱酸化されると、管部33は、酸化シリコン膜19によって長手方向中央部が閉断面状に形成され、酸化シリコン膜19によって長手方向両端部が開口され、管部33の長手方向端部に内側開口部31及び外側開口部32が形成される。トレンチ16は、熱酸化によって連通路30が形成されるように設けられる。
【0045】
第1基板10上には、
図4に示すように、連通路30を保護する保護層9が連通路30を覆うように形成されている。保護層9には、連通路30の内側開口部31及び外側開口部32に対応して保護層9を貫通する内側貫通穴9a及び外側貫通穴9bが形成されている。内側貫通穴9a及び外側貫通穴9bはそれぞれ、これに限定されるものではないが、平面視で内側開口部31及び外側開口部32に略同一形状に長穴状に形成されている。
【0046】
このようにして、連通路30は、保護層9の内側貫通穴9a及び外側貫通穴9bを介してジャイロセンサ用空間部7aとジャイロセンサ用接合部6aの外部とを連通するようになっている。MEMSセンサ1では、ジャイロセンサ用空間部7aを所定圧力に設定するように、所定圧力状態において第1基板10上に外側開口部32をシールするシール層34が形成され、外側開口部32がシール層34によって閉塞される。
【0047】
図3及び
図4に示すように、シール層34は、平面視で略円形状に形成され、保護層9の外側貫通穴9bを埋めて外側開口部32を覆うように形成されている。シール層34は、スパッタ法などによって形成されたAl層35によって形成されている。シール層34は、Al層とは異なる金属層を用いるようにしてよく、また金属層以外のシール層を用いるようにしてもよい。保護層9として、スパッタ法などによって形成されたAl層が用いられているが、酸化シリコン膜などの他の保護層を用いることも可能である。シール層34についても酸化シリコンの上にAl
2O
3(アルミナ)のような気密性の高い層を積層することによって形成することも可能である。
【0048】
第1基板10と第2基板20とを大気圧などの第1圧力状態で接合した後に、第1圧力状態とは異なる真空などの第2圧力状態で外側開口部32をシールするシール層34を形成することで、ジャイロセンサ素子4が配置されるジャイロセンサ用空間部7aと加速度センサ素子5が配置される加速度センサ用空間部7bとをそれぞれ異なる所定圧力に設定することができる。
【0049】
このように、MEMSセンサ1では、第1基板10と第2基板20との接合部6の内部にセンサ素子2が配置される空間部7が形成され、第1基板10に、空間部7と接合部6の外部とを連通する連通路30が形成される。連通路30は、接合部6の内部に開口する内側開口部31と、接合部6の外部に開口する外側開口部32と、内側開口部31と外側開口部32とを接続する管部33とを有し、外側開口部32はシール層34によって閉塞される。
【0050】
これにより、MEMSセンサ1において、センサ素子2が配置される空間部7を所定圧力に設定した状態で外側開口部32をシール層34によって閉塞することで、センサ素子2が配置される空間部7を所定圧力に比較的容易に設定することができる。MEMSコンボセンサについても、複数のセンサ素子がそれぞれ配置される複数の空間部をそれぞれ所定圧力に比較的容易に設定することができる。
【0051】
次に、MEMSセンサ1の製造方法について説明する。
図13は、第1基板アセンブリ及び第2基板アセンブリの概略平面図である。
図14は、
図13のXIV-XIV線に沿う第1基板アセンブリ及び第2基板アセンブリの断面図である。以下では、ジャイロセンサ素子4が配置される第1基板アセンブリ11及び第2基板アセンブリ21の断面を用いてMEMSセンサ1の製造方法を説明するが、連通路30が形成されることを除き、加速度センサ素子5が配置される第1基板アセンブリ11及び第2基板アセンブリ21の部分についても同様に製造される。
【0052】
図13に示すように、MEMSセンサ1は、第1基板10を有する第1基板アセンブリ11と第2基板20を有する第2基板アセンブリ21とが重ね合わせて接合された状態においてマトリクス状に配置されている。MEMSセンサ1は、格子状に設定されたラインL1及びラインL2に沿ってダイシングブレードによるダイシングによってそれぞれ切削されて切り出される。
【0053】
そして、
図14に示すように、ラインL3及びラインL4に沿ってダイシングブレードによるダイシングによって切削されて、第2基板アセンブリ21のシール層34に対向する部分及びパッド部3に対向する部分が取り除かれ、MEMSセンサ1が製造される。
【0054】
図15から
図17は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
図15から
図17は、
図4及び
図14に示す第1基板アセンブリ11の断面図に対応する断面図で示している。MEMSセンサ1の製造では、シリコン基板である第1基板10と、センサ素子2を覆うように第1基板10に接合されるシリコン基板である第2基板20が準備される。
【0055】
第1基板10には、
図15に示すように、フォトリソグラフィ及びエッチングによって連通路30に対応するトレンチ16が形成される。トレンチ16の形成後に、
図16に示すように、熱酸化法によってトレンチ16の内面が熱酸化されて熱酸化膜としての酸化シリコン膜19が形成され、第1基板10に酸化シリコン膜19によって連通路30が形成される。連通路30は、内側開口部31、外側開口部32及び管部33を有している。
【0056】
次に、
図17に示すように、第1基板10に、第1主面10a上にスパッタ法などによって保護層9が形成され、保護層9には、フォトリソグラフィ及びエッチングによって連通路30の内側開口部31及び外側開口部32に対応して内側貫通穴9a及び外側貫通穴9bが形成される。第1基板10にはまた、スパッタ法によって保護層9上に第1基板側接合部17及びパッド部3に対応する部分にAl層が形成され、第1基板側接合部17及びパッド部3が形成される。
【0057】
その後に、フォトリソグラフィ及び異方性エッチングによって第1基板10がパターニングされ、次いで等方性エッチングによって第1主面10aに一部が露出する空洞12が形成されるとともに空洞12内にセンサ素子2の可動部が浮いた状態で配置され、第1基板アセンブリ11が製造される。
【0058】
図18は、第2基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
図18は、
図4及び
図14に示す第2基板アセンブリ21の断面図に対応する断面図で示している。
図18に示すように、第2基板20には、スパッタ法によって第2基板側接合部27に対応する部分にAl層が形成され、第2基板側接合部27が形成される。
【0059】
そして、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、第2基板20に第2基板側接合部27の内部に空洞22が形成されるとともに、第2基板20に第2基板側接合部27の外部に連通路30の外側開口部32に対向するように第1主面20aから窪む溝部28が形成される。溝部28は、これに限定されるものではないが、断面略矩形状に形成されるとともに平面視でY方向に直線状に延びるように形成される。その後に、第2基板側接合部27a上にガラスフリット8が設けられ、第2基板アセンブリ21が製造される。
【0060】
図19から
図21は、MEMSセンサの製造方法を説明する図である。第1基板アセンブリ11及び第2基板アセンブリ21の製造後、
図19に示すように、第1基板アセンブリ11に第2基板アセンブリ21が接合され、第1基板10にセンサ素子2を覆うように第2基板20が接合される。第1基板側接合部17と第2基板側接合部27とがガラスフリット8を介して接合される。第1基板側接合部17と第2基板側接合部27との接合は、第1圧力状態で行われる。
【0061】
このように、第1基板10に第2基板20が接合されることにより第1基板10と第2基板20とが接合される接合部6の内部にセンサ素子2が配置される空間部7が形成される。ジャイロセンサ用接合部6aの内部にジャイロセンサ素子4が配置されるジャイロセンサ用空間部7aが形成され、加速度センサ用接合部6bの内部に加速度センサ素子5が配置される加速度センサ用空間部7bが形成される。ジャイロセンサ用空間部7aは、連通路30によってジャイロセンサ用接合部6aの外部に連通しているが、加速度センサ用空間部7bは、第1圧力状態で密閉される。
【0062】
第1基板10及び第2基板20の接合後、
図20に示すように、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、第2基板20に、第2基板20の裏面である第2主面20bから溝部28に連通する連通穴29が形成される。連通穴29は、連通路30の外側開口部32に対向する位置に設けられ、平面視で略円形状に形成される。連通穴29は、シール層34が外側開口部32を覆うように平面視で長穴状、矩形状などの他の形状であってもよい。
【0063】
連通穴29の形成後には、
図21に示すように、第1圧力状態より低い第2圧力状態において第2基板20の裏面である第2主面20bにスパッタ法などによってAl層35が形成される。第2基板20の連通穴29に対応する部分では、Al層35は第2基板20の裏面から連通穴29を通じて保護層9の外側貫通穴9bを埋めて外側開口部32を覆うように形成される。これにより、外側開口部32にシール層34が形成されて外側開口部32がシール層34によって閉塞される。ジャイロセンサ用空間部7aは、第2圧力状態で密閉される。第2圧力状態を第1圧力状態と同じ圧力状態又は第1圧力状態より高い圧力状態にすることも可能である。
【0064】
シール層34の形成後、
図14に示すように、第2基板20の第2主面20b上に形成されたAl層35がエッチングによって取り除かれる。その後に、第2基板アセンブリ21がラインL1,L2,L3,L4に沿ってダイシングによって切断され、MEMSセンサ1が製造される。なお、第2基板20の第2主面20b上に形成されたAl層35を取り除くことなく、ダイシングによって切断してMEMSセンサ1を製造するようにしてもよい。
【0065】
このように、本実施形態に係るMEMSセンサ1の製造方法では、第1基板10に第2基板20を接合して第1基板10と第2基板20とが接合される接合部6の内部にセンサ素子2が配置される空間部7を形成し、第1基板10に、接合部6の内部に開口する内側開口部31と、接合部6の外部に開口する外側開口部32と、内側開口部31と外側開口部32とを接続する管部33とを有して空間部7と接合部6の外部とを連通する連通路30を形成し、外側開口部32に、外側開口部32をシールするシール層34を形成して外側開口部32をシール層34によって閉塞する。
【0066】
これにより、MEMSセンサ1において、センサ素子2が配置される空間部7を所定圧力に設定した状態で外側開口部32をシール層34によって閉塞することで、センサ素子2が配置される空間部7を所定圧力に比較的容易に設定することができる。MEMSコンボセンサについても、複数のセンサ素子がそれぞれ配置される複数の空間部をそれぞれ所定圧力に比較的容易に設定することができる。
【0067】
図22は、MEMSセンサの第1変形例を示す図である。
図22に示すように、MEMSセンサ1において、外側開口部32を閉塞するシール層34を、平面視でY方向に延びる直線状に形成するようにしてもよい。この場合、連通穴29は、平面視でY方向に延びる直線状に形成され、ダイシングによって第2基板20を切削して形成するようにしてもよい。
【0068】
このように、第2基板20の裏面を切削して第2基板20に連通穴29を形成することにより、ダイシングなどの通常のウエハ加工プロセスを用いて連通穴29を形成することができ、レーザ加工プロセスを用いて連通穴29を形成する場合に比して、比較的容易に連通穴29を形成することができる。
【0069】
図23は、MEMSセンサの第2変形例を示す図である。
図23に示すように、MEMSセンサ1において、接合材を用いることなく、第1基板側接合部17と第2基板側接合部27とを接合するようにしてもよい。第1基板側接合部17をAl層によって形成し、第2基板側接合部27をGe層によって形成し、第1基板側接合部17と第2基板側接合部27とを金属接合、具体的には共晶接合によって接合するようにしてもよい。第1基板側接合部17と第2基板側接合部27とを、他の金属接合によって接合するようにしてもよく、接合材8による接合又は金属接合による接合とは異なる接合によって接合するようにしてもよい。
【0070】
図24は、MEMSセンサの第3変形例を示す図である。
図24に示すように、MEMSセンサ1において、加速度センサ素子5が配置される空間部7bについても連通路30を形成するようにしてもよい。MEMSセンサ1において、ジャイロセンサ用の連通路30aと加速度センサ用の連通路30bとを形成し、加速度センサ用の連通路30bをジャイロセンサ用の連通路30aと同様に形成するようにしてもよい。
【0071】
この場合、ジャイロセンサ用の連通穴の形成後にジャイロセンサ用の連通路30aの外側開口部32aを第1圧力状態でシール層34aによって閉塞し、その後に加速度センサ用の連通穴の形成後に加速度センサ用の連通路30bの外側開口部32bを第1圧力状態と同一又は異なる第2圧力状態でシール層34bによって閉塞することで、ジャイロセンサ用空間部7aを加速度センサ用空間部7bとをそれぞれ所定圧力状態に保持することが可能である。
【0072】
図25は、MEMSセンサの別の製造方法を説明する図である。
図25に示すように、第2基板アセンブリ21を製造する際に、第2基板20に第2基板側接合部27の外部に連通路30の外側開口部32に対向するように第1主面20aから窪む溝部28について、第1主面20aから窪む第1溝部28aを形成するとともに第1溝部28aからさらに窪んで連通穴29を形成する第2溝部28bを形成し、第2基板20の裏面である第2主面20bをラインL5までバックグラインドによって研削して連通穴29を形成するようにしてもよい。
【0073】
MEMSセンサ1では、センサ素子2として2つのセンサ素子を備えているが、1つのセンサ素子又は3つ以上のセンサ素子を備えるようにしてもよい。センサ素子として複数のセンサ素子を有する場合、第1基板10と第2基板20とが接合される複数の接合部6の内部に複数のセンサ素子がそれぞれ配置される複数の空間部7が形成され、第1基板10に、少なくとも1つの空間部7と接合部6の外部とを連通する少なくとも1つの連通路30が形成される。
【0074】
本実施形態では、第1センサ素子がジャイロセンサ素子4であり、第2センサ素子が加速度センサ素子5であるが、第1センサ素子及び第2センサ素子として、赤外線イメージセンサ及び加速度センサ素子、あるいは圧力センサ素子及び加速度センサ素子など、種々のセンサ素子を用いることが可能である。
【0075】
このように、本実施形態に係るMEMSセンサ1では、第1基板10と第2基板20との接合部6の内部にセンサ素子2が配置される空間部7が形成され、第1基板10に、空間部7と接合部6の外部とを連通する連通路30が形成される。連通路30は、接合部6の内部に開口する内側開口部31と、接合部6の外部に開口する外側開口部32と、内側開口部31と外側開口部32とを接続する管部33とを有し、外側開口部32はシール層34によって閉塞される。
【0076】
これにより、MEMSセンサ1において、センサ素子2が配置される空間部7を所定圧力に設定した状態で外側開口部32をシール層34によって閉塞することで、センサ素子2が配置される空間部7を所定圧力に比較的容易に設定することができる。MEMSコンボセンサについても、複数のセンサ素子がそれぞれ配置される複数の空間部をそれぞれ所定圧力に比較的容易に設定することができる。
【0077】
また、第1基板10と第2基板20とが接合される複数の接合部6a、6bの内部に複数のセンサ素子4,5がそれぞれ配置される複数の空間部7a,7bが形成され、第1基板10に、少なくとも1つの空間部7aと接合部6aの外部とを連通する少なくとも1つの連通路30が形成される。これにより、MEMSコンボセンサについて、複数のセンサ素子がそれぞれ配置される複数の空間部をそれぞれ異なる所定圧力に比較的容易に設定することができる。
【0078】
また、第1基板10は、シリコン基板であり、連通路30は、酸化シリコンによって形成される。これにより、シリコン基板である第1基板10に連通路30に対応するトレンチ16を形成してトレンチ16を埋めるように熱酸化膜などの酸化シリコン膜19を形成することで、比較的容易に連通路30を形成することができる。
【0079】
また、連通路30上に連通路30を保護する保護層9が形成される。これにより、連通路30上に形成される保護層9によって、連通路30の管部33の密閉性を高めることができ、センサ素子2が配置される空間部7を所定圧力に維持することができる。
【0080】
また、内側開口部31及び外側開口部32は、第1基板10の表面10aに形成され、管部33は、第1基板10の内部に形成される。これにより、第1基板10の表面10aに連通路30に対応するトレンチ16を形成してトレンチ16を埋めるように熱酸化膜などの酸化シリコン膜19を形成することで、連通路30の内側開口部31、外側開口部32及び管部33を有する連通路30を比較的容易に形成することができる。
【0081】
また、シール層34は、金属層35である。これにより、シール層34を酸化シリコンによって形成する場合に比して、外側開口部32を金属層35によって密閉性を良く閉塞させることができ、センサ素子2が配置される空間部7を所定圧力に比較的容易に設定することができる。
【0082】
また、本実施形態に係るMEMSセンサの製造方法では、第1基板10に第2基板20が接合されて第1基板10と第2基板20とが接合される接合部6の内部にセンサ素子2が配置される空間部7が形成され、第1基板10に、接合部6の内部に開口する内側開口部31と、接合部6の外部に開口する外側開口部32と、内側開口部31と外側開口部32とを接続する管部33とを有して空間部7と接合部6の外部とを連通する連通路30が形成される。そして、外側開口部32にシール層34が形成されて外側開口部32がシール層34によって閉塞される。
【0083】
これにより、MEMSセンサ1において、センサ素子2が配置される空間部7を所定圧力に設定した状態で外側開口部32をシール層34によって閉塞することで、センサ素子2が配置される空間部7を所定圧力に比較的容易に設定することができる。MEMSコンボセンサについても、複数のセンサ素子がそれぞれ配置される複数の空間部をそれぞれ所定圧力に比較的容易に設定することができる。
【0084】
また、第1基板10と第2基板20とが接合される複数の接合部6a,6bの内部に複数のセンサ素子4,5がそれぞれ配置される複数の空間部7a,7bが形成され、第1基板10に、少なくとも1つの空間部7aと接合部6aの外部とを連通する少なくとも1つの連通路30が形成される。これにより、MEMSコンボセンサについて、複数のセンサ素子がそれぞれ配置される複数の空間部をそれぞれ異なる所定圧力に比較的容易に設定することができる。
【0085】
また、第2基板20に、接合部6の外部に外側開口部32に対向するように第2基板20の表面20aから窪む溝部28を形成し、第2基板20に、第2基板20の裏面20bから溝部28に連通する連通穴29を形成し、第2基板20の裏面20bから連通穴29を通じて外側開口部32にシール層34を形成して外側開口部32をシール層34によって閉塞する。これにより、エッチングプロセスなどの通常のウエハ加工プロセスを用いて溝部28及び連通穴29を形成し、所定圧力状態においてシール層34を形成して外側開口部32を閉塞することで、センサ素子が配置される空間部を所定圧力に比較的容易に設定することができる。
【0086】
また、第2基板20の裏面20bを切削して第2基板20に連通穴29を形成する。これにより、ダイシングなどの通常のウエハ加工プロセスを用いて連通穴29を形成することができ、レーザ加工プロセスを用いて連通穴を形成する場合に比して、比較的容易に連通穴を形成することができる。
【0087】
また、第2基板20の裏面20bを研削して第2基板20に連通穴29を形成する。これにより、バックグラインドなどの通常のウエハ加工プロセスを用いて連通穴29を形成することができ、レーザ加工プロセスを用いて連通穴を形成する場合に比して、比較的容易に連通穴を形成することができる。
【0088】
また、第1基板10に連通路30に対応するトレンチ16を形成し、トレンチ16の内面に熱酸化膜19を形成することにより、第1基板10に連通路30を形成する。これにより、シリコン基板である第1基板10に連通路30に対応する部分にトレンチ16を形成して熱酸化膜19を形成することで、比較的容易に連通路30を形成することができる。
【0089】
また、トレンチ16は、平面視で連通路30の内側開口部31及び外側開口部32に対応する両端部16aが両端部16aの間の中央部16bに比して溝幅が大きく形成される。これにより、シリコン基板である第1基板10に連通路30に対応する部分にトレンチ16を形成して酸化シリコン膜19を形成することで、内側開口部31と外側開口部32と管部33とを有する連通路30を比較的容易に形成することができる。
【0090】
本開示は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【0091】
[付記1]
第1基板と、
前記第1基板に接合される第2基板と、
を備え、
前記第1基板と前記第2基板とが接合される接合部の内部にセンサ素子が配置される空間部が形成され、
前記第1基板に前記空間部と前記接合部の外部とを連通する連通路が形成され、
前記連通路は、前記接合部の内部に開口する内側開口部と、前記接合部の外部に開口する外側開口部と、前記内側開口部と前記外側開口部とを接続する管部とを有し、
前記外側開口部は、前記外側開口部をシールするシール層によって閉塞されている、
MEMSセンサ。
[付記2]
前記第1基板と前記第2基板とが接合される複数の前記接合部の内部に複数の前記センサ素子がそれぞれ配置される複数の前記空間部が形成され、
前記第1基板に、少なくとも1つの前記空間部と前記接合部の外部とを連通する少なくとも1つの前記連通路が形成されている、
付記1に記載のMEMSセンサ。
[付記3]
前記第1基板は、シリコン基板であり、
前記連通路は、酸化シリコンによって形成されている、
付記1又は付記2に記載のMEMSセンサ。
[付記4]
前記連通路上に前記連通路を保護する保護層が形成されている、
付記3に記載のMEMSセンサ。
[付記5]
前記内側開口部及び前記外側開口部は、前記第1基板の表面に形成され、
前記管部は、前記第1基板の内部に形成されている、
付記1から付記4の何れか1項に記載のMEMSセンサ。
[付記6]
前記シール層は、金属層である、
付記1から付記5の何れか1項に記載のMEMSセンサ。
[付記7]
第1基板を準備し、
第1基板に接合される第2基板を準備し、
前記第1基板に前記第2基板を接合して前記第1基板と前記第2基板とが接合される接合部の内部にセンサ素子が配置される空間部を形成し、
前記第1基板に、前記接合部の内部に開口する内側開口部と、前記接合部の外部に開口する外側開口部と、前記内側開口部と前記外側開口部とを接続する管部とを有して前記空間部と前記接合部の外部とを連通する連通路を形成し、
前記外側開口部に、前記外側開口部をシールするシール層を形成して前記外側開口部を前記シール層によって閉塞する、
MEMSセンサの製造方法。
[付記8]
前記第1基板と前記第2基板とが接合される複数の前記接合部の内部に複数の前記センサ素子がそれぞれ配置される複数の前記空間部が形成され、
前記第1基板に、少なくとも1つの前記空間部と前記接合部の外部とを連通する少なくとも1つの前記連通路が形成される、
付記7に記載のMEMSセンサの製造方法。
[付記9]
前記第2基板に、前記接合部の外部に前記外側開口部に対向するように前記第2基板の表面から窪む溝部を形成し、
前記第2基板に、前記第2基板の裏面から前記溝部に連通する連通穴を形成し、
前記第2基板の裏面から前記連通穴を通じて前記外側開口部に前記シール層を形成して前記外側開口部を前記シール層によって閉塞する、
付記7又は付記8に記載のMEMSセンサの製造方法。
[付記10]
前記第2基板の裏面を切削して前記第2基板に前記連通穴を形成する、
付記9に記載のMEMSセンサの製造方法。
[付記11]
前記第2基板の裏面を研削して前記第2基板に前記連通穴を形成する、
付記9に記載のMEMSセンサの製造方法。
[付記12]
前記第1基板に前記連通路に対応するトレンチを形成し、前記トレンチの内面に熱酸化膜を形成することにより、前記第1基板に前記連通路を形成する、
付記7から付記11の何れか1項に記載のMEMSセンサの製造方法。
[付記13]
前記トレンチは、平面視で前記連通路の内側開口部及び外側開口部に対応する両端部が前記両端部の間の中央部に比して溝幅が大きく形成される、
付記12に記載のMEMSセンサの製造方法。
【符号の説明】
【0092】
1 MEMSセンサ
2,4,5 センサ素子
6,6a,6b 接合部
7,7a,7b 空間部
9 保護層
10 第1基板
16 トレンチ
19 熱酸化膜
20 第2基板
28,28a,28b 溝部
29 連通穴
30,30a,30b 連通路
31 内側開口部
32,32a,32b 外側開口部
33 管部
34,34a,34b シール層