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特開2024-89448制御装置、制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089448
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20240626BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240626BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240626BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J7/35 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204816
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智希
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AE03
5G066AE09
5G066HA15
5G066HB02
5G066HB09
5G066JA01
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA10
5G503GD03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】蓄電装置への負荷を抑制しつつ、単位期間の電力量の実績値が計画値に近くなるよう制御する制御装置、制御方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】需要家の設備が、発電装置と、蓄電装置と、データベースと、制御装置とを備えている電力系統において、制御装置6は、電力系統と電力のやり取りが可能な発電装置の出力と蓄電装置の入出力との和である合成入出力の所定の単位期間の積分値である第1電力量の計画値が設定されている場合に、単位期間の始期から現在時刻までの積分値である第2電力量と現在時刻から単位期間の終期までの積分値である第3電力量及び現在時刻から単位期間の終期までの積分値である第4電力量を計算して第1電力量の実績値を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統と電力のやり取りが可能な発電装置の出力と蓄電装置の入出力との和である合成入出力の所定の単位期間の積分値である第1電力量の計画値が設定されている場合、前記第1電力量の実績値を制御する制御装置であって、
前記合成入出力から前記計画値の前記単位期間の平均出力を減じた値の前記単位期間の始期から現在時刻までの積分値である第2電力量を計算する第1計算部と、
前記蓄電装置の出力が定格出力以内の所定の最大出力となるよう前記蓄電装置を制御した場合において、前記合成入出力から前記平均出力を減じた値の前記現在時刻から前記単位期間の終期までの積分値である第3電力量を計算する第2計算部と、
前記蓄電装置の入力が定格入力以内の所定の最大入力となるよう前記蓄電装置を制御した場合において、前記合成入出力から前記平均出力を減じた値の前記現在時刻から前記単位期間の終期までの積分値である第4電力量を計算する第3計算部と、
第1時刻から前記終期までの前記合成入出力の目標値を設定する第1設定部と、
前記目標値に基づいて、前記第1時刻から前記終期までの前記発電装置の出力と前記蓄電装置の入出力との少なくとも一方を制御する制御部と、
を含み、
前記第1時刻は、前記第2及び第3電力量の和又は前記第2及び第4電力量の和が前記計画値に対する誤差の所定の許容範囲内の所定値に達した時刻であり、
前記目標値は、
前記第1時刻において前記第2電力量が負である場合は前記最大出力で前記蓄電装置を制御した場合の前記合成入出力であり、
前記第1時刻において前記第2電力量が正である場合は前記最大入力で前記蓄電装置を制御した場合の前記合成入出力である、
制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記第1時刻から前記終期までの前記蓄電装置の入出力の指令値として、前記目標値から前記発電装置の出力を減じた値を設定する第2設定部を更に含む、
制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記第1設定部は、
前記第2電力量の絶対値が前記許容範囲の最大値に達した第2時刻より後において、前記第2電力量の絶対値が前記第2時刻における値以下で推移するように前記目標値を設定する、
制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記第1時刻より前において、前記平均出力から前記発電装置の出力を減じた値が前記最大出力よりも小さい所定の閾値よりも大きい第3時刻に、前記平均出力から前記合成入出力を減じた値が前記閾値になるように前記蓄電装置の出力の前記指令値を補正する補正部を更に含む、
制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の制御装置であって、
前記補正部は、
前記第1時刻より前において、前記発電装置の出力から前記平均出力を減じた値が前記閾値よりも小さい第4時刻に、前記発電装置の出力から前記平均出力を減じた値が前記閾値になるように前記蓄電装置の入力の前記指令値を補正する、
制御装置。
【請求項6】
電力系統と電力のやり取りが可能な発電装置の出力と蓄電装置の入出力との和である合成入出力の所定の単位期間の積分値である第1電力量の計画値が設定されている場合、前記第1電力量の実績値を制御する制御方法であって、
制御装置が、
前記合成入出力から前記計画値の前記単位期間の平均出力を減じた値の前記単位期間の始期から現在時刻までの積分値である第2電力量を計算するステップと、
前記蓄電装置の出力が定格出力以内の所定の最大出力となるよう前記蓄電装置を制御した場合において、前記合成入出力から前記平均出力を減じた値の前記現在時刻から前記単位期間の終期までの積分値である第3電力量を計算するステップと、
前記蓄電装置の入力が定格入力以内の所定の最大入力となるよう前記蓄電装置を制御した場合において、前記合成入出力から前記平均出力を減じた値の前記現在時刻から前記単位期間の終期までの積分値である第4電力量を計算するステップと、
第1時刻から前記終期までの前記合成入出力の目標値を設定するステップと、
前記目標値に基づいて、前記第1時刻から前記終期までの前記発電装置の出力と前記蓄電装置の入出力との少なくとも一方を制御するステップと、
を含み、
前記第1時刻は、前記第2及び第3電力量の和又は前記第2及び第4電力量の和が前記計画値に対する誤差の所定の許容範囲内の所定値に達した時刻であり、
前記目標値は、
前記第1時刻において前記第2電力量が負である場合は前記最大出力で前記蓄電装置を制御した場合の前記合成入出力であり、
前記第1時刻において前記第2電力量が正である場合は前記最大入力で前記蓄電装置を制御した場合の前記合成入出力である、
制御装置。
【請求項7】
電力系統と電力のやり取りが可能な発電装置の出力と蓄電装置の入出力との和である合成入出力の所定の単位期間の積分値である第1電力量の計画値が設定されている場合、前記第1電力量の実績値を制御する制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記合成入出力から前記計画値の前記単位期間の平均出力を減じた値の前記単位期間の始期から現在時刻までの積分値である第2電力量を計算する第1計算部と、
前記蓄電装置の出力が定格出力以内の所定の最大出力となるよう前記蓄電装置を制御した場合において、前記合成入出力から前記平均出力を減じた値の前記現在時刻から前記単位期間の終期までの積分値である第3電力量を計算する第2計算部と、
前記蓄電装置の入力が定格入力以内の所定の最大入力となるよう前記蓄電装置を制御した場合において、前記合成入出力から前記平均出力を減じた値の前記現在時刻から前記単位期間の終期までの積分値である第4電力量を計算する第3計算部と、
第1時刻から前記終期までの前記合成入出力の目標値を設定する第1設定部と、
前記目標値に基づいて、前記第1時刻から前記終期までの前記発電装置の出力と前記蓄電装置の入出力との少なくとも一方を制御する制御部と、
を実現させ、
前記第1時刻は、前記第2及び第3電力量の和又は前記第2及び第4電力量の和が前記計画値に対する誤差の所定の許容範囲内の所定値に達した時刻であり、
前記目標値は、
前記第1時刻において前記第2電力量が負である場合は前記最大出力で前記蓄電装置を制御した場合の前記合成入出力であり、
前記第1時刻において前記第2電力量が正である場合は前記最大入力で前記蓄電装置を制御した場合の前記合成入出力である、
制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統と電力のやり取りが可能な発電装置及び蓄電装置の合成入出力の単位期間における電力量の計画値が設定されている場合に、電力量の実績値を制御する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、単位期間の始期から各時刻までの電力量の計画値と、実績値との比が閾値を超えた場合に、蓄電装置を充放電することによって計画値と、実績値との比を閾値以内に維持する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5838006号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、計画値と、実績値との比が閾値を超える度に蓄電装置を充放電させるため、充放電の頻度が高くなり蓄電装置への負荷が大きくなる。
【0006】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、蓄電装置への負荷を抑制しつつ、単位期間の電力量の実績値が計画値に近くなるよう制御することが可能な制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための一の発明は、電力系統と電力のやり取りが可能な発電装置の出力と蓄電装置の入出力との和である合成入出力の所定の単位期間の積分値である第1電力量の計画値が設定されている場合、前記第1電力量の実績値を制御する制御装置であって、前記合成入出力から前記計画値の前記単位期間の平均出力を減じた値の前記単位期間の始期から現在時刻までの積分値である第2電力量を計算する第1計算部と、前記蓄電装置の出力が定格出力以内の所定の最大出力となるよう前記蓄電装置を制御した場合において、前記合成入出力から前記平均出力を減じた値の前記現在時刻から前記単位期間の終期までの積分値である第3電力量を計算する第2計算部と、前記蓄電装置の入力が定格入力以内の所定の最大入力となるよう前記蓄電装置を制御した場合において、前記合成入出力から前記平均出力を減じた値の前記現在時刻から前記単位期間の終期までの積分値である第4電力量を計算する第3計算部と、第1時刻から前記終期までの前記合成入出力の目標値を設定する第1設定部と、前記目標値に基づいて、前記第1時刻から前記終期までの前記発電装置の出力と前記蓄電装置の入出力との少なくとも一方を制御する制御部と、を含み、前記第1時刻は、前記第2及び第3電力量の和又は前記第2及び第4電力量の和が前記計画値に対する誤差の所定の許容範囲内の所定値に達した時刻であり、前記目標値は、前記第1時刻において前記第2電力量が負である場合は前記最大出力で前記蓄電装置を制御した場合の前記合成入出力であり、前記第1時刻において前記第2電力量が正である場合は前記最大入力で前記蓄電装置を制御した場合の前記合成入出力である、制御装置である。
【0008】
また、電力系統と電力のやり取りが可能な発電装置の出力と蓄電装置の入出力との和である合成入出力の所定の単位期間の積分値である第1電力量の計画値が設定されている場合、前記第1電力量の実績値を制御する制御方法であって、制御装置が、前記合成入出力から前記計画値の前記単位期間の平均出力を減じた値の前記単位期間の始期から現在時刻までの積分値である第2電力量を計算するステップと、前記蓄電装置の出力が定格出力以内の所定の最大出力となるよう前記蓄電装置を制御した場合において、前記合成入出力から前記平均出力を減じた値の前記現在時刻から前記単位期間の終期までの積分値である第3電力量を計算するステップと、前記蓄電装置の入力が定格入力以内の所定の最大入力となるよう前記蓄電装置を制御した場合において、前記合成入出力から前記平均出力を減じた値の前記現在時刻から前記単位期間の終期までの積分値である第4電力量を計算するステップと、第1時刻から前記終期までの前記合成入出力の目標値を設定するステップと、前記目標値に基づいて、前記第1時刻から前記終期までの前記発電装置の出力と前記蓄電装置の入出力との少なくとも一方を制御するステップと、を含み、前記第1時刻は、前記第2及び第3電力量の和又は前記第2及び第4電力量の和が前記計画値に対する誤差の所定の許容範囲内の所定値に達した時刻であり、前記目標値は、前記第1時刻において前記第2電力量が負である場合は前記最大出力で前記蓄電装置を制御した場合の前記合成入出力であり、前記第1時刻において前記第2電力量が正である場合は前記最大入力で前記蓄電装置を制御した場合の前記合成入出力である、制御方法である。
【0009】
また、電力系統と電力のやり取りが可能な発電装置の出力と蓄電装置の入出力との和である合成入出力の所定の単位期間の積分値である第1電力量の計画値が設定されている場合、前記第1電力量の実績値を制御する制御プログラムであって、コンピュータに、前記合成入出力から前記計画値の前記単位期間の平均出力を減じた値の前記単位期間の始期から現在時刻までの積分値である第2電力量を計算する第1計算部と、前記蓄電装置の出力が定格出力以内の所定の最大出力となるよう前記蓄電装置を制御した場合において、前記合成入出力から前記平均出力を減じた値の前記現在時刻から前記単位期間の終期までの積分値である第3電力量を計算する第2計算部と、前記蓄電装置の入力が定格入力以内の所定の最大入力となるよう前記蓄電装置を制御した場合において、前記合成入出力から前記平均出力を減じた値の前記現在時刻から前記単位期間の終期までの積分値である第4電力量を計算する第3計算部と、第1時刻から前記終期までの前記合成入出力の目標値を設定する第1設定部と、前記目標値に基づいて、前記第1時刻から前記終期までの前記発電装置の出力と前記蓄電装置の入出力との少なくとも一方を制御する制御部と、を実現させ、前記第1時刻は、前記第2及び第3電力量の和又は前記第2及び第4電力量の和が前記計画値に対する誤差の所定の許容範囲内の所定値に達した時刻であり、前記目標値は、前記第1時刻において前記第2電力量が負である場合は前記最大出力で前記蓄電装置を制御した場合の前記合成入出力であり、前記第1時刻において前記第2電力量が正である場合は前記最大入力で前記蓄電装置を制御した場合の前記合成入出力である、制御プログラムである。本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蓄電装置への負荷を抑制しつつ、単位期間の電力量の実績値が計画値に近くなるよう制御することが可能な制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電力系統1の配電線10に接続された制御装置2を示す図である。
図2】データベースに格納されている各種データを説明する図である。
図3】制御装置6の機能ブロックを説明する図である。
図4】各種電力の推移の一例を示す図である。
図5】計画値に対する合成入出力の誤差の蓄積を説明する図である。
図6】各種電力の推移の一例を示す図である。
図7】合成入出力の蓄積の一例を説明する図である。
図8】各種電力の推移の一例を示す図である。
図9】合成入出力の蓄積の一例を説明する図である。
図10】各種電力の推移の一例を示す図である。
図11】制御装置7の機能ブロックを示す図である。
図12】各種電力の推移の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
==実施形態==
<<需要家の設備2>>
図1は、電力系統1の配電線10に接続された本実施形態の需要家の設備2を示す図である。電力の利用の安定を実現するためには、電力の需要と供給を常に一致させるよう調整する所謂同時同量を達成する必要がある。図1における需要家は、同時同量が義務付けられた需要家である。
【0013】
需要家の設備2は、発電装置3と、蓄電装置4と、データベース5と、制御装置6とを備えている。以下、それぞれについて説明する。
【0014】
<発電装置3>
発電装置3は、電力系統1と電力のやり取りが可能に接続されている。発電装置3のエネルギー源については特に限定されず、例えば再生可能エネルギーであってもよいし、化石燃料であってもよい。本実施形態では、発電装置3として、太陽光発電装置とする。
【0015】
図1の電力PPVは、発電装置3の出力である。なお、以下の説明において、発電装置3についての「出力」とは、発電装置3が発電し、ある時刻において電力系統1に出力した電力(単位は[kW](キロワット))を意味する。
【0016】
<蓄電装置4>
蓄電装置4は、電力系統1と電力のやり取りが可能に接続されている。蓄電装置4としては、鉛蓄電池、リチウムイオン電池等を用いた蓄電装置を用いることができる。本実施形態では、蓄電装置4として、リチウムイオン電池を用いた蓄電装置とする。
【0017】
図1の電力Pは、蓄電装置4の入出力である。なお、以下の説明において、蓄電装置4について「入力」とは、蓄電装置4がある時刻において電力系統1から入力された電力を充電する電力(単位は[kW])を意味し、この場合の電力の値は負である。
【0018】
また、蓄電装置4について「出力」とは蓄電装置4が放電し、ある時刻において電力系統1に出力する電力(単位は[kW])を意味し、この場合の電力の値は正である。
【0019】
<データベース5>
データベース5は、後述する制御装置6が演算に用いるデータの一部を格納する。図2には、データベース5に格納されている各種データを示している。データベース5は、少なくとも、単位期間における電力量の計画値P、蓄電装置4の最大出力Prdch及び最大入力Prchといったデータを格納している。これらの詳細については制御装置6の説明の際に述べる。
【0020】
<制御装置6>
制御装置6は、発電装置3と蓄電装置4との合成入出力の単位期間の電力量(「第1電力量」に相当)の計画値Pが設定されている場合、対応する電力量の実績値Pを制御する制御装置である。
【0021】
ここで、「発電装置3及び蓄電装置4の合成入出力」とは、発電装置3の出力と、蓄電装置4の入出力との和であって、単位は[kW]である。以下では特に断らない限り、発電装置3及び蓄電装置4の合成入出力を、単に「合成入出力」と称する。
【0022】
また、「単位期間の電力量」とは、合成入出力の単位期間の積分値に相当する電力用であって、単位は[kWh](キロワット時)である。
【0023】
本明細書では、単位期間は、1暦日の0:00から0.5h(30分)ごとに設定された期間とする。つまり、1暦日には48の単位期間が含まれるとする。なお、それぞれの単位期間における電力量の計画値Pは、データベース5に格納されている(図2)。
【0024】
以下、先ずは制御装置6のハードウェア構成し、次いで機能ブロックについて説明する。
【0025】
・ハードウェア構成
制御装置6は、DSP601(Digital Signal Processor)と、記憶装置502とを備える(図1)。
【0026】
[DSP601]
DSP601は、記憶装置602に記憶された所定のプログラムを実行することにより、制御装置6が有する様々な機能を実現する。
【0027】
[記憶装置602]
記憶装置602は、DSP601によって、実行または処理される各種データを格納する非一時的な(例えば不揮発性の)記憶装置を含む。
【0028】
記憶装置602は、更に、例えばRAM(Random-Access Memory)等(後述するメモリ36a)を有し、様々なプログラムやデータ等の一時的な記憶領域として用いられる。
【0029】
・機能ブロック
図3は、制御装置6の機能ブロックを説明する図である。制御装置6は、計算部611と、計算部612と、計算部613と、判定部614と、設定部615と、設定部616と、制御部617とを含む。以下、それぞれについて、図4及び図5に示す具体例を参照しながら説明する。
【0030】
図4は、各種電力の推移の一例を示す図である。この図において、横軸は時刻t[h]であり、一の単位期間の始期(t=0)から終期(t=0.5h)までが示されている。また、縦軸は電力[kW]である。
【0031】
この図において、実線は平均出力P、破線は発電装置3の出力PPV(t)、一点破線は合成入出力P(t)、水平の点線は目標値Pを示している。また、合成入出力P(t)から発電装置3の出力PPV(t)を減じた値は、蓄電装置4の入出力P(t)を意味する。
【0032】
この例では、単位期間の電力量の計画値Pは100[kWh]に設定されている。この場合、対応する平均出力Pは200[kW]となる。つまり、単位期間に平均出力Pである200[kW]で一定に推移した場合の電力量が、計画値Pである100[kWh]となる。
【0033】
なお、一の単位期間は、補償開始時刻tを境とした前後の2の期間に分類されるが、補償開始時刻tの詳細は後述する。
【0034】
図5は、平均出力Pに対する合成入出力P(t)の誤差の蓄積を説明する図である(詳細は後述)。この図において、横軸は時刻t[h]であり、図4と同じである。また、縦軸は電力量[kWh]である。
【0035】
[計算部611]
計算部611は、電力量Pdif(t)を計算する。電力量Pdif(t)とは、合成入出力P(t)の平均出力Pからの誤差を単位期間の始期から現在時刻tまでの蓄積したものである。電力量Pdif(t)は、「第2電力量」に相当する。
【0036】
具体的には、電力量Pdif(t)は、合成入出力P(t)から計画値Pの単位期間の平均出力Pを減じた値を、単位期間の始期から現在時刻tまで積分した値に相当する電力量であって、次式で表わされる。
【数1】
【0037】
ここで、合成入出力P(t)は、発電装置3の出力PPV(t)と、蓄電装置4の入出力P(t)との和であることを用いた。
【0038】
計算部611は、計算した電力量Pdif(t)を、判定部614に出力する。なお、計算部611は、電力量Pdif(t)を常時計算し、計算結果を判定部614に出力する。
【0039】
図4の例では、単位期間の始期から補償開始時刻tに亘って、発電装置3の出力である電力PPV(t)は100[kW]で推移している。また、蓄電装置4の入出力である電力P(t)は0[kW]で推移している。よって、単位期間の始期から補償開始時刻tに亘って、合成入出力P(t)は100[kW]で推移している。
【0040】
ここで、単位期間の始期から補償開始時刻tに亘って蓄電装置4を稼働させていないため、蓄電装置4の入出力である電力P(t)は0[kW]で推移している。
【0041】
また、この例では説明の便宜上、例えば発電装置3の出力である電力PPV(t)が一定に推移するといった特殊な条件を想定している。しかし、本実施形態の制御装置6は、他の条件に対しても一般性を失うことなく適用することができる。
【0042】
図4の例では、単位期間の始期から補償開始時刻tまでにおいて、合成入出力P(t)は前述のように100[kW]であり、平均出力Pは200kWである。従って、現在時刻t(0≦t≦t)における電力量Pdif(t)は、次式となる。
【数2】
数式2の電力量Pdif(t)に-1を乗じた値を図5に示している。なお、時刻t(t≦t≦0.5)における電力量Pdif(t)については後述する。
【0043】
[計算部612]
計算部612は、電力量Pcdch(t)を計算する。電力量Pcdch(t)とは、現在時刻tから単位期間の終期までに亘って蓄電装置4の出力が所定の最大出力Prdchとなるよう蓄電装置4を制御したと仮定した場合において、合成入出力P(t)の平均出力Pからの誤差を蓄積したものである。電力量Pcdch(t)は、「第3電力量」に相当する。
【0044】
ここで、最大出力Prdchとは、蓄電装置4が出力可能な出力の範囲で(つまり、定格出力以内の出力の範囲で)、運用者等が予め定めた値とすればよい。本実施形態では、最大出力Prdchは、蓄電装置4の定格出力とする。
【0045】
電力量Pcdch(t)は、具体的には、蓄電装置4の出力が最大出力Prdchとなるよう蓄電装置4を制御した場合において、合成入出力P(t)(=Prdch+PPV(0))から平均出力Pを減じた値を、現在時刻tから単位期間の終期まで積分した値に相当する電力量であって、次式で表わされる。
【数3】
【0046】
計算部612は、計算した電力量Pcdch(t)を、判定部614に出力する。ここで、計算部612は、単位期間の始期から補償開始時刻tまで、電力量Pcdch(t)を常時計算し、判定部614に出力する。
【0047】
図4及び図5の例では、最大出力Prdchは、蓄電装置4の定格出力である200[kW]と設定される。最大出力Prdchは、データベース5に格納されている(図2)。
【0048】
また、現在時刻tから単位期間の終期までの電力PPV(t)は、この例では、単位期間の始期の電力PPV(0)=100[kW]と仮定される。よって、現在時刻tから単位期間の終期までの合成入出力P(t)は、300[kW]と仮定される。
【0049】
更に、前述のように、この単位期間において平均出力Pは200kWである。従って、この例における電力量Pcdch(t)は、次式となる。
【数4】
数式4の電力量Pcdch(t)を図5に示している(0≦t≦t)。
【0050】
[計算部613]
計算部613は、電力量Pcch(t)を計算する。電力量Pcch(t)とは、現在時刻tから単位期間の終期までに亘って蓄電装置4の入力が定格入力以内の所定の最大入力Prchとなるよう蓄電装置4を制御したと仮定した場合において、合成入出力P(t)の平均出力Pからの誤差を蓄積したものである。電力量Pcch(t)は、「第4電力量」に相当する。
【0051】
ここで、最大入力Prchとは、蓄電装置4が入力可能な入力(つまり、定格入力以内の出力)の範囲で、運用者等が予め定めた値とすればよい。本実施形態では、最大入力Prchは、蓄電装置4の定格入力とする。
【0052】
電力量Pcch(t)は、具体的には、蓄電装置4の入力が最大入力力Prchとなるよう蓄電装置力を制御した場合において、合成入出力P(t)から平均出力Pを減じた値を、現在時刻tから単位期間の終期まで積分した値に相当する電力量であって、次式で表わされる。
【数5】
【0053】
計算部613は、計算した電力量Pcch(t)を、判定部614に出力する。ここで、計算部613は、単位期間の始期から補償開始時刻tまで、電力量Pcch(t)を常時計算し、判定部614に出力する。
【0054】
図4及び図5の例では、最大入力Prchは、蓄電装置4の定格入力である-200[kW]と設定される。最大入力Prchは、データベース5に格納されている(図2)。
【0055】
また、前述のように、現在時刻tから単位期間の終期までの電力PPV(t)は、電力PPV(t=0)である100[kW]と仮定される。よって、現在時刻tから単位期間の終期までの合成入出力P(t)は、-100[kW]と仮定される。
【0056】
更に、前述のように、この単位期間において平均出力Pは200kWである。従って、この例における電力量Pcch(t)は、次式となる。
【数6】
なお、図5において、電力量Pcch(t)の図示は省略されている。
【0057】
[判定部614]
判定部614は、現在時刻tが補償開始時刻tに達したか否かを判定する。補償開始時刻tとは、単位期間の始期から補償開始時刻tにおいて蓄積された電力量の誤差であるPdif(t)を相殺するための制御を開始する時刻である(詳細は後述)。
【0058】
具体的には、補償開始時刻tは、電力量Pdif(t)及び電力量Pcdch(t)の和、又は電力量Pdif(t)及び電力量Pcch(t)の和が所定値に達した時刻である。本実施形態では、ここでの所定値は0[kWh]に設定される。なお、補償開始時刻tは、「第1時刻」に相当する。
【0059】
そして、判定部614は、補償開始時刻t及び計算部611が計算したこの時刻tの電力量Pdif(t)を、設定部615に出力する。
【0060】
図4の例では、電力量Pdif(t)及び電力量Pcdch(t)の和が0に達する時刻は、数式2と数式4から0.25hである(図5)。一方、電力量Pdif(t)及び電力量Pcch(t)の和は単位期間内において0に達しない。
【0061】
従って、図4の例では、判定部614は、単位期間の始期から0.25hに、補償開始時刻tに達したと判定する。この時刻の電力量Pdif(t=0.25)は、数式2から-25[kWh]である(図5)。
【0062】
そして、判定部614は、補償開始時刻tである0.25[h]及び電力量Pdif(t=0.25)=25[kWh]を、第1設定部に出力する。
【0063】
[設定部615]
設定部615は、補償開始時刻tから単位期間の終期までの合成入出力Pの目標値Pを設定する。
【0064】
目標値Pは、補償開始時刻tにおいて電力量Pdif(t)が負である場合は蓄電装置4最大出力Prdchで蓄電装置を制御した場合の合成入出力P(t)であって、次式となる。
【数7】
【0065】
一方、補償開始時刻tにおいて電力量Pdif(t)が正である場合は蓄電装置4最大入力Prchで蓄電装置4を制御した場合の合成入出力P(t)であって、次の式(8)となる。
【数8】
【0066】
数式7及び数式8において、本実施形態では、合成入出力P(t)のうち発電装置3の出力PPV(t)は、補償開始時刻t以降も、単位期間の始期における出力PPV(t=0)と仮定している。
【0067】
図4及び図5の例では、電力量Pdif(t)は負であるため、目標値Pは、最大出力Prdch(200[kW])で蓄電装置4を制御した場合の合成入出力P(t)である(数式7)。
【0068】
従って、設定部615は、300[kW]を時刻t(t≦t≦0.5h)における目標値Pに設定し、設定部616に出力する。
【0069】
[設定部616]
設定部616は、補償開始時刻tから単位期間の終期までの蓄電装置4の入出力P(t)の指令値として、目標値Pから発電装置3の出力PPV(t)を減じた値を設定する。
【0070】
図4の例では、前述のように、目標値Pは300[kW]である(図4の点線)。従って、設定部616は、300-PPV(t)を時刻t(t≦t≦0.5)における蓄電装置4の入出力P(t)の指令値に設定し、設定部616に出力する。
[制御部617]
制御部617は、目標値Pに基づいて、補償開始時刻tから単位期間の終期までの発電装置3の出力と、蓄電装置4の入出力との少なくとも一方を制御する。
【0071】
制御部617は、時刻tにおいて、発電装置3には指令信号SPV(t)を出力し、蓄電装置4には指令信号S(t)を出力する。なお、本実施形態では、制御部617は、蓄電装置4の入出力のみを制御し、発電装置3は制御しない。
【0072】
なお、発電装置3の出力を制御する場合、制御部617は、発電装置3が有するインバータの出力を低下又は停止等させることにより、出力PPV(t)を制御する。
【0073】
図4及び図5の例では、制御部617は、蓄電装置4の入出力P(t)が、設定部616から入力された指令値(300-PPV(t))となるように、蓄電装置4を制御するための指令信号S(t)を出力する。
【0074】
この例は、電力量PPV(t)は、時刻t(t≦t≦0.5)においても100[kW]で推移している。従って、制御部617は、時刻t(t≦t≦0.5)において蓄電装置4の入出力P(t)が200[kW]となるように、蓄電装置4を制御する。
【0075】
時刻t(t≦t≦0.5h)において制御部617が上述の制御を実行することにより、合成入出力P(t)は、300[kW]で推移する(図4)。
【0076】
この場合、時刻t(t≦t≦0.5h)における合成入出力P(t)の平均出力Pからの誤差の、単位期間の始期から現在時刻tまでの蓄積である電力量Pdif(t)は、数式1と、補償開始時刻tが0.25[h]であること用いて、次式となる。
【数9】
【0077】
図5には、時刻t(t≦t≦0.5h)における電力量Pdif(t)に-1を乗じた値が示されている。この例では、単位期間の終期において、電力量Pdif(t=0.5h)は0(零)となる。つまり、単位期間における電力量の計画値Pと実績値Pとが一致する。
【0078】
また、単位期間において、蓄電装置4は、補償開始時刻tより前は入出力をせず、補償開始時刻t以後に出力をするよう制御される。つまり、単位期間において、蓄電装置4は、入力、出力、又は入出力のない状態間で切り替えられる回数が1度のみである。
【0079】
以上説明したように、本実施形態の制御装置6によれば、蓄電装置4への負荷を抑制しつつ、単位期間の電力量の実績値が計画値Pに一致させるよう制御することが可能となる。
【0080】
==変形例==
上記実施形態では、単位期間における電力量の計画値Pと実績値Pが一致するように蓄電装置4の出力が制御されるが、これに限られるものではない。
【0081】
単位期間における電力量の実績値Pが、計画値Pに対する誤差の所定の許容範囲内であれば、必ずしもこれらが一致しなくてもよい場合がある。従って、本変形例では、判定部は、上述の処理に代えて、下記のように補償開始時刻tに達したか否かを判定する。
【0082】
本変形例の判定部は、電力量Pdif(t)及び電力量Pcdch(t)の和、又は電力量Pdif(t)及び電力量Pcch(t)の和が計画値Pに対する誤差の所定の許容範囲に達した時刻に、補償開始時刻tに達したと判定する。
【0083】
例えば、ここでの誤差の許容範囲を±3%以内とし、図4の例と同じ平均出力P(200[kW])が設定されているとする。また、発電装置3の出力PPV(t)の推移も図4の例と同じとする。
【0084】
この場合、電力量Pdif(t)及び電力量Pcdch(t)の和が-3[kWh](計画値P(100[kWh])に対する-3%の値)に到達する時刻は、0.265[h]となる。
【0085】
この場合、判定部は、時刻t=0.265[h]に補償開始時刻tに達したと判定し、上記実施形態と同様の処理が実行されると、電力量Pdif(t=0.5)は3[kWh]となる。つまり、単位期間の電力量の実績値Pは97[kWh]となる
【0086】
このような処理によれば、電力量Pdif(t=0.5h)は0(零)とはならないが、所定の許容範囲とすることができる。更に、上記実施形態に比べて補償開始時刻tを遅らせることができる。つまり、蓄電装置4の稼働時間を短くすることができ、蓄電装置4への負荷を低減することができる。
【0087】
==第2実施形態==
第1実施形態では、単位期間の始期から終期に亘って発電装置3の出力PPV(t)が一定に推移する条件を例示した。しかし、例えば、補償開始時刻t以降に発電装置3の出力が変動する場合がある。
【0088】
このような場合、詳細は後述するが、単位期間の電力量の実績値Pを、計画値Pから所定の許容範囲になるよう制御することができない場合がある。本実施形態の制御装置は、そのような場合に対処することが可能である。
【0089】
<発電装置3の出力が変動する場合の一例>
先ず、補償開始時刻t以降に発電装置3の出力が変動する場合に第1実施形態を適用した場合の一例を説明する。図6は、各種電力の推移の一例を示す図である。
【0090】
図6においても各種の線は図4と同様であり、実線は平均出力P、破線は発電装置3の出力PPV(t)、一点破線は合成入出力P(t)、水平の点線は目標値Pを示している。また、合成入出力P(t)から発電装置3の出力PPV(t)を減じた値は、蓄電装置4の入出力P(t)を意味する。
図6の例は、図4の例と比べると、補償開始時刻t(=0.25[h])以降において発電装置3の出力PPVが0[kW]に低下し、単位期間の終期まで0[kW]で推移している点で異なっている。
【0091】
このような条件は、補償開始時刻t以後に天候が悪化したために、太陽光発電装置である発電装置3の出力が低下した場合等が考えられる。
【0092】
この例では、補償開始時刻t以降の目標値Pが300[kW]である。これに対し、合成入出力P(t)は200[kW]で推移しており、目標値Pに達していない。
【0093】
これは、前述のように蓄電装置4の最大出力Prdchが200[kW]に設定されているためである。蓄電装置4の入出力P(t)の指令値は、目標値P(300[kW])から発電装置3の出力PPV(t)を減じた値であるため、この例では最大出力Prdchを超えて300[kW]となる(図6)。
【0094】
このように、蓄電装置4の入出力P(t)の指令値が最大出力Prdchを超えると、蓄電装置4の入出力P(t)は、上限である最大出力Prdchとなる。このような場合、合成入出力P(t)は、目標値Pに届かない。
【0095】
図7は、図6の例において、合成入出力P(t)の蓄積の一例を説明する図である。図7の実線で示した電力量P(t)は、合成入出力P(t)が図6に示した値で推移した場合に、合成入出力P(t)を単位期間の始期から時刻tまで積分した値の推移であって、次式で表わされる。
【数10】
ここで、特に時刻t=0.5における電力量P(t=0.5)は、単位期間における電力量の実績値Pに相当する。
【0096】
図7の点線L1は、合成入出力が平均出力Pを維持しながら推移した場合の合成入出力を単位期間の始期から時刻tまで積分した値である。この場合、時刻t=0.5で100[kWh]になる。
【0097】
図7の点線L2は、点線L1から3[kWh]を減じた値である。また、点線L3は、点線L1に3[kWh]を加えた値である。
【0098】
図7において、点線L1と、実線で示した電力量P(t)との差の絶対値が、電力量Pdif(t)の絶対値に相当する。
【0099】
図7からわかるように、この例では、電力量の実績値Pを計画値Pに一致するように蓄電装置4を制御することができない。更に、電力量の実績値Pの許容範囲が計画値Pの3%である場合に、許容範囲内となるように制御することができない。
【0100】
つまり、図6の例のように、補償開始時刻t以後に発電装置3の出力が低下した場合、電力量Pdif(t)を所定の許容範囲内又は所定値に制御することができない場合がある。本実施形態の制御装置6は、このような問題に対処することが可能である。
【0101】
<制御装置>
本実施形態の制御装置6について図8及び図9を用いて説明する。図6は、各種電力の推移の一例を示す図である。図9は、図8の例において、合成入出力P(t)の蓄積の一例を説明する図である。
【0102】
なお、図8においても各種の線は図4と同様であり、実線は平均出力P、破線は発電装置3の出力PPV(t)、一点破線は合成入出力P(t)、水平の点線は目標値Pを示している。また、合成入出力P(t)から発電装置3の出力PPV(t)を減じた値は、蓄電装置4の入出力P(t)を意味する。
【0103】
本実施形態の制御装置6は、第1実施形態に比べると、判定部614の処理が異なっている。
【0104】
[判定部]
本実施形態の判定部は、電力量Pdif(t)の絶対値が許容範囲の最大値に達した時刻(「第2時刻」に相当)を、補償開始時刻tと判定する。
【0105】
図8及び図9の例では、時刻t=0.25よりも前の時刻において、実線の電力量Pdif(t)が、破線L2に到達している(図9)。判定部614は、この時刻を補償開始時刻tと判定する。
【0106】
設定部615は、補償開始時刻tより後において、電力量Pdif(t)の絶対値が補償開始時刻tにおける値以下で推移するように目標値Pを設定する。
【0107】
この例では、設定部615は、蓄電装置4の最大出力Prdchである200[kW]を目標値Pとして設定する(図8)。
【0108】
このように目標値Pが設定されると、補償開始時刻t以降において、合成入出力P(t)は、目標値Pと同じ値で推移する(図8)。
【0109】
図9は、図8の例において、合成入出力P(t)の蓄積の一例を説明する図である。図9において、点線L1と、実線で示した電力量P(t)との差の絶対値が、電力量Pdif(t)の絶対値に相当する。
【0110】
更に、電力量Pdif(t)は、補償開始時刻t以降において、平均出力Pに対して3[kW]だけ低い値で推移する(図9)。その結果、単位期間における電力量の実績値P(t=0.5)は、97[kW]となり、計画値Pである100kWhに対して3%の誤差に抑えられる。
【0111】
==第3実施形態==
第1実施形態では、単位期間の始期から終期に亘って発電装置3の出力PPV(t)が一定に推移する条件を仮定した。しかし、例えば、補償開始時刻tより前に発電装置3の出力が変動する場合がある。
【0112】
このような場合、詳細は後述するが、電力量の実績値Pを、計画値Pから所定の許容範囲になるよう制御することができない場合がある。本実施形態の制御装置7は、そのような場合に対処することが可能である。
【0113】
<発電装置3の出力が変動する場合の一例>
先ず、補償開始時刻tより前に発電装置3の出力が変動する場合に第1実施形態を適用した場合の一例を説明する。
【0114】
図10は、各種電力の推移の一例を示す図である。なお、図10においても各種の線は図4と同様であり、実線は平均出力P、破線は発電装置3の出力PPV(t)、一点破線は合成入出力P(t)、水平の点線は目標値Pを示している。また、合成入出力P(t)から発電装置3の出力PPV(t)を減じた値は、蓄電装置4の入出力P(t)を意味する。
【0115】
図10の例は、図4の例と比べると、図4の補償開始時刻t(=0.25[h])より前の一部の期間Tにおいて発電装置3の出力PPVが50[kW]に低下している点で異なっている。
【0116】
このような条件は、補償開始時刻tより前に天候が一時的に悪化したために、太陽光発電装置である発電装置3の出力が低下した場合等が考えられる。
【0117】
この例では、補償開始時刻tが、図4の例の補償開始時刻t(=0.25[h])に比べて早く到達している。
【0118】
また、この例の補償開始時刻t以降の目標値Pは、第1実施形態と同じで300[kW]である(図10)。
【0119】
補償開始時刻tから期間Tの終期までの期間において、合成入出力P(t)が目標値Pに達していない。このように、合成入出力P(t)が目標値Pに達しない期間が存在すると、単位期間の終期において電力量Pdif(t)が0(零)を下回り、実績値Pと計画値Pとが一致しなくなる。
【0120】
<制御装置6>
図11は、本実施形態の制御装置6の機能ブロックを示す図である。本実施形態の制御装置6について説明する。制御装置6は、第1実施形態に比べると、補正部718を更に備えている。
【0121】
本実施形態の制御装置6は、第1~計算部611,612及び613と、判定部614については第1実施形態と同じであるため、これらの説明は省略する。
【0122】
[補正部718]
補正部718は、補償開始時刻tより前において、平均出力Pから発電装置3の出力を減じた値が所定の閾値よりも大きい時刻(「第3時刻」に相当)に、平均出力Pから合成入出力P(t)を減じた値が閾値になるように蓄電装置4の出力Pの指令値を補正する。
【0123】
ここでの所定の閾値Thとは、最大出力Prdchよりも小さい値(Th=α×PBo、α<1)である。本実施形態では、α=0.5とする。つまり、閾値Thは、100[kW]とする。
【0124】
補正部718は、設定部616から補正前の出力Pの指令値が入力されると、補正後の出力PBα(t)の指令値を制御部617に出力する。
【0125】
図12は、本実施形態の制御装置を用いた場合の、各種電力の推移の一例を示す図である。この例において発電装置3の出力PPV(t)は図10と同じである。
【0126】
なお、図12においても各種の線は図4と同様であり、実線は平均出力P、破線は発電装置3の出力PPV(t)、一点破線は合成入出力P(t)、水平の点線は目標値Pを示している。また、合成入出力P(t)から発電装置3の出力PPV(t)を減じた値は、蓄電装置4の入出力P(t)を意味する。
【0127】
図12の例では、平均出力Pから発電装置3の出力を減じた値が閾値Thよりも大きい時刻は、発電装置3の出力が50[kW]である期間Tに亘る時刻である。
【0128】
補正部718は、期間Tにおいて、蓄電装置4の出力P(t)の指令値を50[kW]に補正する。その結果、補償開始時刻tより前において、平均出力Pから合成入出力P(t)を減じた値が閾値Th(100[kW])と同じ値になる(図12)。
【0129】
つまり、時刻t=0.25[h]より前において、合成入出力P(t)が第1実施形態(図4)と同じ値になる。従って、補償開始時刻tも第1実施形態と同じ0.25[h]となり、補償開始時刻t以後の各種電力の推移も第1実施形態と同じになる。
【0130】
以上説明した本実施形態の制御装置6は、補償開始時刻tより前に発電装置3の出力が大きく変動した場合を想定して、補償開始時刻tより前の合成入出力を制御する。これによって、補償開始時刻tより前に発電装置3の出力が大きく変動した場合であっても、電力量の実績値Pが許容範囲内となるように制御することができる。
【0131】
なお、上記の説明は、補償開始時刻tより前において、発電装置3の出力PPV(t)が平均出力Pに対して不足し、それらの差が閾値Thよりも大きくなる場合を想定した。
【0132】
これに対し、補償開始時刻tより前において、発電装置3の出力PPV(t)が平均出力Pに対して過剰になり、それらの差が閾値Thよりも大きくなる場合もあり得る。
【0133】
この場合、補正部718は、補償開始時刻tより前において、発電装置3の出力から平均出力Pを減じた値が閾値よりも小さい時刻(「第4時刻」に相当)に、蓄電装置4の入力の指令値を補正する。このとき、補正部は、発電装置3の出力から平均出力Pを減じた値が閾値になるように蓄電装置4の入力の指令値を補正すればよい。
【0134】
==まとめ==
以上、実施形態の制御装置6は、電力系統と電力のやり取りが可能な発電装置3の出力と蓄電装置4の入出力との和である合成入出力P(t)の所定の単位期間の積分値である第1電力量の計画値Pが設定されている場合、第1電力量の実績値を制御する制御装置であって、合成入出力P(t)から計画値Pの単位期間の平均出力Pを減じた値の単位期間の始期から現在時刻までの積分値である第2電力量を計算する計算部611と、蓄電装置4の出力が定格出力以内の所定の最大出力Prdchとなるよう蓄電装置4を制御した場合において、合成入出力P(t)から平均出力Pを減じた値の現在時刻から単位期間の終期までの積分値である第3電力量を計算する計算部612と、蓄電装置4の入力が定格入力以内の所定の最大入力Prchとなるよう蓄電装置4を制御した場合において、合成入出力P(t)から平均出力Pを減じた値の現在時刻から単位期間の終期までの積分値である第4電力量を計算する計算部613と、第1時刻から終期までの合成入出力P(t)の目標値Pを設定する設定部615と、目標値Pに基づいて、第1時刻から終期までの発電装置3の出力と蓄電装置4の入出力との少なくとも一方を制御する制御部617と、を含み、第1時刻は、第2及び第3電力量の和又は第2及び第4電力量の和が計画値Pに対する誤差の所定の許容範囲内の所定値に達した時刻であり、目標値Pは、第1時刻において第2電力量が負である場合は最大出力Prdchで蓄電装置4を制御した場合の合成入出力P(t)であり、第1時刻において第2電力量が正である場合は最大入力Prchで蓄電装置4を制御した場合の合成入出力P(t)である。
【0135】
このような構成によれば、一の単位期間において、蓄電装置4を入力、出力、又は入出力のない状態間で切り替える回数が1度のみである。従って、蓄電装置4への負荷を抑制しつつ、単位期間の電力量の実績値Pが計画値Pに近くなるよう制御することが可能となる。
【0136】
また、上記実施形態において、第1時刻から終期までの蓄電装置4の入出力の指令値S(t)として、目標値Pから発電装置3の出力を減じた値を設定する設定部616を更に含む。このような構成によれば、電力量の実績値Pの過不足がないように制御することができる。
【0137】
また、上記実施形態において、設定部615は、第2電力量の絶対値が許容範囲の最大値に達した第2時刻より後において、第2電力量の絶対値が第2時刻における値以下で推移するように目標値Pを設定する。このような構成によれば、第1時刻以降に発電装置3の出力が変動する場合でも、電力量の実績値Pを許容範囲に制御することができる。
【0138】
また、上記実施形態において、第1時刻より前において、平均出力Pから発電装置3の出力Pを減じた値が最大出力Prdchよりも小さい所定の閾値よりも大きい第3時刻に、平均出力Pから合成入出力P(t)を減じた値が閾値になるように蓄電装置4の出力の指令値を補正する補正部718を更に含んでもよい。このような構成によれば、第1時刻よりも前に発電装置3の出力が不足する変動をする場合でも、電力量の実績値Pを許容範囲に制御することができる。
【0139】
また、上記実施形態において、補正部718は、第1時刻より前において、発電装置3の出力から平均出力Pを減じた値が閾値よりも小さい第4時刻に、平均出力Pから合成入出力P(t)を減じた値が閾値になるように蓄電装置4の入力の指令値を補正してもよい。このような構成によれば、第1時刻よりも前に発電装置3の出力が過剰になる変動をする場合でも、電力量の実績値Pを許容範囲に制御することができる。
【0140】
実施形態の制御方法は、電力系統1と電力のやり取りが可能な発電装置3の出力と蓄電装置4の入出力との和である合成入出力P(t)の所定の単位期間の積分値である第1電力量の計画値Pが設定されている場合、第1電力量の実績値を制御する制御方法であって、制御装置が、合成入出力P(t)から計画値Pの単位期間の平均出力Pを減じた値の単位期間の始期から現在時刻までの積分値である第2電力量を計算するステップと、蓄電装置4の出力が定格出力以内の所定の最大出力Prdchとなるよう蓄電装置4を制御した場合において、合成入出力P(t)から平均出力Pを減じた値の現在時刻から単位期間の終期までの積分値である第3電力量を計算するステップと、蓄電装置4の入力が定格入力以内の所定の最大入力Prchとなるよう蓄電装置4を制御した場合において、合成入出力P(t)から平均出力Pを減じた値の現在時刻から単位期間の終期までの積分値である第4電力量を計算するステップと、第1時刻から終期までの合成入出力P(t)の目標値Pを設定するステップと、目標値Pに基づいて、第1時刻から終期までの発電装置3の出力と蓄電装置4の入出力との少なくとも一方を制御するステップと、を含み、第1時刻は、第2及び第3電力量の和又は第2及び第4電力量の和が計画値Pに対する誤差の所定の許容範囲内の所定値に達した時刻であり、目標値Pは、第1時刻において第2電力量が負である場合は最大出力Prdchで蓄電装置4を制御した場合の合成入出力P(t)であり、第1時刻において第2電力量が正である場合は最大入力Prchで蓄電装置4を制御した場合の合成入出力P(t)である。
【0141】
このような方法によれば、一の単位期間において、蓄電装置4を入力、出力、又は入出力のない状態間で切り替える回数が1度のみである。従って、蓄電装置4への負荷を抑制しつつ、単位期間の電力量の実績値Pが計画値Pに近くなるよう制御することが可能となる。
【0142】
実施形態の制御プログラムは、電力系統1と電力のやり取りが可能な発電装置3の出力と蓄電装置4の入出力との和である合成入出力P(t)の所定の単位期間の積分値である第1電力量の計画値Pが設定されている場合、第1電力量の実績値Pを制御する制御プログラムであって、コンピュータに、合成入出力P(t)から計画値Pの単位期間の平均出力Pを減じた値の単位期間の始期から現在時刻までの積分値である第2電力量を計算する計算部611と、蓄電装置4の出力が定格出力以内の所定の最大出力Prdchとなるよう蓄電装置4を制御した場合において、合成入出力P(t)から平均出力Pを減じた値の現在時刻から単位期間の終期までの積分値である第3電力量を計算する計算部612と、蓄電装置4の入力が定格入力以内の所定の最大入力Prchとなるよう蓄電装置4を制御した場合において、合成入出力P(t)から平均出力Pを減じた値の現在時刻から単位期間の終期までの積分値である第4電力量を計算する計算部613と、第1時刻から終期までの合成入出力P(t)の目標値Pを設定する第1設定部と、目標値Pに基づいて、第1時刻から終期までの発電装置3の出力と蓄電装置4の入出力との少なくとも一方を制御する制御部617と、を実現させ、第1時刻は、第2及び第3電力量の和又は第2及び第4電力量の和が計画値Pに対する誤差の所定の許容範囲内の所定値に達した時刻であり、目標値Pは、第1時刻において第2電力量が負である場合は最大出力Prdchで蓄電装置4を制御した場合の合成入出力P(t)であり、第1時刻において第2電力量が正である場合は最大入力Prchで蓄電装置4を制御した場合の合成入出力P(t)である。
【0143】
このようなプログラムによれば、一の単位期間において、蓄電装置4を入力、出力、又は入出力のない状態間で切り替える回数が1度のみである。従って、蓄電装置4への負荷を抑制しつつ、単位期間の電力量の実績値Pが計画値Pに近くなるよう制御することが可能となる。
【符号の説明】
【0144】
電力系統 1
需要家の設備 2
発電装置 3
蓄電装置 4
データベース 5
制御装置 6
制御装置 7
DSP 601
記憶装置 602
計算部 611
計算部 612
計算部 613
判定部 614
設定部 615
設定部 616
制御部 617
補正部 718
設定部 716
図1
図2
図3
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図5
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図12