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特開2024-89450顔画像データから燃え尽き症候群を検知し離職を予測するシステム
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  • 特開-顔画像データから燃え尽き症候群を検知し離職を予測するシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089450
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】顔画像データから燃え尽き症候群を検知し離職を予測するシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20240626BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204820
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】511179585
【氏名又は名称】テックウインド株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】弁理士法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(74)【代理人】
【識別番号】100158377
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 祥子
(72)【発明者】
【氏名】門伝 豊
(72)【発明者】
【氏名】土谷 瑞希
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祐子
(72)【発明者】
【氏名】大塚 泰正
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌毅
(72)【発明者】
【氏名】原 恵子
(72)【発明者】
【氏名】中村 准子
(72)【発明者】
【氏名】日下 由紀子
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】 燃え尽き症候群の早期発見と早期対策を可能とするシステム。
【解決手段】部位(1):対象人物の個人情報を出力する部位、部位(2):対象人物の顔画像データから対象人物の感情の特徴を検出する部位、部位(3):幸せ感情値に基づいて対象人物の燃え尽き症候群の有無を検知する部位、を有する装置。グループとその構成員との関係で燃え尽き判定に用いる閾値を設定することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部位(1):対象人物の個人情報を出力する部位、
部位(2):対象人物の顔画像データから対象人物の感情の特徴を検出する部位、
部位(3):対象人物の燃え尽き症候群の有無を検知する部位、
を有し、
部位(1)が、対象人物の識別情報、属性、職歴のいずれか1以上に関連する情報を出力し、
部位(2)が、撮像装置で取得した対象人物の顔画像データから上記対象人物の基本感情を認識し、認識された基本感情全体に対する幸せ表情の強度を出力し、
部位(3)が、部位(1)と部位(2)が出力する情報に基づいて、対象人物の幸せ表情の強度が閾値を下回る場合には燃え尽き症候群有と判定し、上記燃え尽き症候群有の期間に基づいて上記対象人物の離職可能性を予測する、
燃え尽き症候群を検出し離職リスクを予測する装置。
【請求項2】
部位(2)で用いる対象人物の顔画像データが、対象人物が撮影されていると自覚していない状態で取得されたものである、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
部位(3)が、さらに、上記装置のユーザーに検知の結果を通知し、上記結果に基づいて助言、指導、警告のいずれか1以上を行う、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
上記閾値が、対象人物が含まれるグループの全構成員について認識された基本感情の強度に基づいて設定される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
工程(1):対象人物の個人情報を出力する工程、
工程(2):対象人物の顔画像データから対象人物の感情の特徴を検出する工程、
工程(3):対象人物の燃え尽き症候群の有無を検知する工程、
を有し、
工程(1)で、対象人物の識別情報、属性、職歴のいずれか1以上に関連する情報を出力し、
工程(2)で、撮像装置で取得した対象人物の顔画像データから上記対象人物の基本感情を認識し、認識された基本感情全体に対する幸せ表情の強度を出力し、
部位(3)が、部位(1)と部位(2)が出力する情報に基づいて、対象人物の幸せ表情の強度が閾値を下回る場合には燃え尽き症候群有と判定し、上記燃え尽き症候群有の期間に基づいて上記対象人物の離職可能性を予測する、
燃え尽き症候群を検出し離職リスクを予測する方法。
【請求項6】
部位(2)で用いる対象人物の顔画像データが、対象人物が撮影されていると自覚していない状態で取得されたものである、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(3)で、さらに、上記方法のユーザーに検知の結果を通知し、上記結果に基づいて助言、指導、警告のいずれか1以上を行う、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
上記閾値が、対象人物が含まれるグループの全構成員について認識された基本感情の強度に基づいて設定される、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔画像データから燃え尽き症候群を検知し離職を予測する装置及び方法と、このような装置及び/又は方法を用いる燃え尽き症候群を検知し離職を予測するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
精神心理学者のハーバート・フロイデンバーガーが1974年代に初めて用いた「Burnout syndromeバーンアウトシンドローム」は、日本では「燃え尽き症候群」と呼ばれている。現在、燃え尽き症候群は、病状としてではなく、職業現象として国際疾病分類第11改訂版(ICD-11)に掲載されている。すなわち、燃え尽き症候群は「健康状態または医療サービスとの接触に影響を与える要因」の一つとして扱われ、特定の病気または健康状態として分類されていない。ここでは、燃え尽き症候群は、良好に管理されていない職場で受ける慢性的なストレスに起因する概念的な症状として定義されており、3つの現象:(1)気力の枯渇や強い疲労感,(2)職場や職務に対する忌避・否定・批判,(3)専門家としての能力や技能の低下で特徴づけられている。
【0003】
要するに、燃え尽き症候群は、それまで職務に没頭していた人が、心身の極度の疲労により燃え尽きたように意欲を失い、職場に適応できなくなることと捉えられている。燃え尽き症候群は、元々は医療や福祉・教師などの対人サービス業に従事する人に多いとされてきたが、現在ではさまざまな職種・業種に見られる。
【0004】
燃え尽き症候群から回復する方法として、十分な睡眠、定期的な休憩、必要に応じた薬物療法などが提唱されている。しかし、燃え尽き症候群に陥った本人は内面に強い倦怠感や焦りを感じているにも関わらず、外面では表情や発語が乏しくなるために、周囲が本人の苦境に気づきにくい場合が多い。また、従業員自身が身体の不調を燃え尽き症候群として自覚できない場合や、燃え尽き症候群の兆候を職場の同僚にとっては怠惰や意欲不足と誤解する場合もある。このように職場現象としての燃え尽き症候群に特有の事情のため、適切な対処がとられないまま燃え尽き状態が放置される場合がある。そして、燃え尽き症候群を抱える期間が長い場合、あるいは、燃え尽き症候群の程度が重い場合には自殺の危険性も高まると言われており、そのような重度の燃え尽き症候群を抱える従業員には休職や離職が必要となることがある。
【0005】
このため、近年では、職場の労務管理上、燃え尽き症候群の早期発見と早期対策が重要視されている。燃え尽き症候群の兆候を客観的な判断基準で検知する方法として、例えば、皮膚状態を分析する方法(特許文献1)、睡眠状態を分析する方法(特許文献2)、血液から特定のタンパク質を検出する方法(特許文献3)が知られている。しかしながら、これらの検知方法は専門家が操作する特別な機材を必要としており、多くの職場で導入することは難しい。
【0006】
職場の管理者が部下の態度や表情を慎重に観察して燃え尽き症候群の兆候を発見するべきである、という意見もある。しかし、このような方法は客観性や精度に欠ける。管理者が部下と対面する機会や時間が短い職場では、このような観察自体が難しい。平時(燃え尽きる前)と現在とで態度や表情を比べて燃え尽き症候群の兆候を発見する必要があるが、管理者が交代した場合や新しい職場では、そのような比較をすることができない。
【0007】
これまでに、人の感情を表情から自動的に判定する方法は、特許文献4、特許文献5、非特許文献6などで提案されているが、これらの方法は人の感情を簡単に判定することを目的としており、「燃え尽き症候群」という特定の精神状態には注目していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2017-501777号公報
【特許文献2】特開2020- 86818号公報
【特許文献3】特表2000-516818号公報
【特許文献4】特開2017- 86992号公報
【特許文献5】特開2020-149361号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献6】「表情による感情推定と音声による感情推定手法の検討」社団法人人工知能学会 人工知能学会研究会資料SIG-Challenge-057-9(11/20) 52-57頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明者は、専門が操作する特別な機材を必要とせず、多様な職場環境でも客観的に迅速に、燃え尽き症候群を従業員自身あるいは職場の管理者が検知することができる手段を求めた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、燃え尽き症候群の兆候のうち、「幸せ」表情の乏しさに注目した。そして、対象人物の幸せ表情の程度を数量化し、得られた数値を燃え尽き症候群の判定に用いることによって、客観的に迅速に燃え尽き症候群を検出することに成功した。更に、本発明者は、検出結果に基づいて、職場の個人及び/又は管理者に提供することによって、個人及び/又は管理者が燃え尽き症候群と離職リスクへの対処を促すシステムを構築した。すなわち本発明は以下のものである。
【0012】
(発明1)
部位(1):対象人物の個人情報を出力する部位、
部位(2):対象人物の顔画像データから対象人物の感情の特徴を検出する部位、
部位(3):対象人物の燃え尽き症候群の有無を検知する部位、
を有し、
部位(1)が、対象人物の識別情報、属性、職歴のいずれか1以上に関連する情報を出力し、
部位(2)が、撮像装置で取得した対象人物の顔画像データから上記対象人物の基本感情を認識し、認識された基本感情全体に対する幸せ表情の強度を出力し、
部位(3)が、部位(1)と部位(2)が出力する情報に基づいて、対象人物の幸せ表情の強度が閾値を下回る場合には燃え尽き症候群有と判定し、上記燃え尽き症候群有の期間に基づいて上記対象人物の離職可能性を予測する、
燃え尽き症候群を検出し離職リスクを予測する装置。
(発明2)
部位(2)で用いる対象人物の顔画像データが、対象人物が撮影されていると自覚していない状態で取得されたものである、
発明1の装置。
(発明3)
部位(3)が、さらに、上記装置のユーザーに検知の結果を通知し、上記結果に基づいて助言、指導、警告のいずれか1以上を行う、発明1の装置。
(発明4)
上記閾値が、対象人物が含まれるグループの全構成員について認識された基本感情の強度に基づいて設定される、発明1の装置。
(発明5)
工程(1):対象人物の個人情報を出力する工程、
工程(2):対象人物の顔画像データから対象人物の感情の特徴を検出する工程、
工程(3):対象人物の燃え尽き症候群の有無を検知する工程、
を有し、
工程(1)で、対象人物の識別情報、属性、職歴のいずれか1以上に関連する情報を出力し、
工程(2)で、撮像装置で取得した対象人物の顔画像データから上記対象人物の基本感情を認識し、認識された基本感情全体に対する幸せ表情の強度を出力し、
部位(3)が、部位(1)と部位(2)が出力する情報に基づいて、対象人物の幸せ表情の強度が閾値を下回る場合には燃え尽き症候群有と判定し、上記燃え尽き症候群有の期間に基づいて上記対象人物の離職可能性を予測する、
燃え尽き症候群を検出し離職リスクを予測する方法。
(発明6)
部位(2)で用いる対象人物の顔画像データが、対象人物が撮影されていると自覚していない状態で取得されたものである、
発明5の方法。
(発明7)
工程(3)で、さらに、上記方法のユーザーに検知の結果を通知し、上記結果に基づいて助言、指導、警告のいずれか1以上を行う、発明5の方法。
(発明8)
上記閾値が、対象人物が含まれるグループの全構成員について認識された基本感情の強度に基づいて設定される、発明5の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、職場の燃え尽き症候群を早期発見することができる。本発明のユーザーは燃え尽き症候と離職リスクに素早く対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の装置及び方法を用いた燃え尽き症候群を検出し離職リスクを予測するシステムを理解するためのイメージ図。
図2】本発明の装置及び方法を用いたシステムで行う処理フローの例。
図3】基本感情の値の変化の例。
図4】幸せ感情の値の変化の例。
図5】燃え尽き期間と離職する確率とのモデル相関。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[燃え尽き症候群を検出し離職リスクを予測する装置及び方法]
本発明の燃え尽き症候群を検出し離職リスクを予測する装置(以下「本発明装置」という)は、部位(1),(2),(3)を有する。
【0016】
[部位(1)]
部位(1)は、対象人物の個人情報を出力する。本発明において「対象人物」は、本発明装置を用いて燃え尽き症候群の有無が判定される人物を指す。
【0017】
上記個人情報は、単に、後述の部位(2)で取得した顔画像データに紐付けした識別情報であってよい。例えば、顔撮影ポイントPで2022年7月1日10時00分に撮影ボタンを押下した人物を表す番号:P202207011000が識別情報として出力される。この場合、本発明の装置は、対象人物が属する組織全体の燃え尽き程度を分析するために用いられる。
【0018】
部位(1)は、対象人物の属性や職歴などに関連する情報を出力することもできる。上記個人情報は、例えば、氏名、年齢、性別、社員コード、所属部署、勤続年数、職位、職能評価、過去に燃え尽き症候群と判定されたか否かなどである。
【0019】
上記個人情報は、対象人物の平時の表情の特徴を含むことができる。上記特徴は典型的には、対象人物の平時(燃え尽き症候群が発現していないと考えられる状態)の基本感情の特徴である。この場合、例えば、予め、対象人物がリラックスした状態で、或いは、対象人物が職場に参加した時点で、対象人物の顔画像データを採取する。次に上記対象人物の顔画像データから対象人物の基本感情を検出し、個々の基本感情ごとの頻出度を数値化したものを上記特徴として用いる。この場合の上記検出と上記数値化は、後述の部位(2)の動作によって行うことができる。
【0020】
このような個人情報を用いる場合には、対象人物毎に、燃え尽き状態の検知結果を通知して対象人物毎に燃え尽き状態の克服を促すように助言することができる。
【0021】
ここで「基本感情」とは、心理学の分野で知られている、人種、民族、性別、年齢に関わらず普遍的に人間が表出する感情である。このような基本感情として、心理学者ポール・エクマンが提唱した、「怒り」「嫌悪」「恐怖」「幸せ」「悲しみ」「驚き」「無表情(中立)」の基本7感情が通用している。本発明では、一般的には、基本感情として上記7感情を使用する。本発明では、上記基本7感情に心理学者ポール・エクマンが後に追加した「面白さ」「軽蔑」「満足」「困惑」「興奮」「罪悪感」「自負」「安心」「納得」「喜び」「羞恥」のいずれか1以上を加えることもできる。好ましくは、本発明では基本感情として「怒り」「嫌悪」「恐怖」「幸せ」「悲しみ」「驚き」「軽蔑」「無表情(中立)」の8感情を扱う。
【0022】
部位(1)が出力する上記個人情報は、本発明装置のユーザーによって予め部位(1)に入力され、部位(1)のデータベースに格納される。上記ユーザーは、上記対象人物、上記対象人物の職場の管理者、上記対象人物、管理者、職場のいずれかから権限移譲された者などである。一般的には、本発明装置のユーザーは、PC,タブレット、スマートフォンなどのインターネットに接続した端末機器で上記個人情報を入力し、入力された個人情報はインターネットに接続したサーバ上に保存される。
【0023】
[部位(2)]
部位(2)は、対象人物の顔画像データから対象人物の感情の特徴を検出する部位であり、具体的には、撮像装置で取得した対象人物の顔画像データから上記対象人物の基本感情を認識し、認識された基本感情全体に対する幸せ表情の強度を出力する部位である。
【0024】
上記撮像装置は、例えば、PC,タブレット、スマートフォンなどのカメラ付き端末機器や、職場内外の定点カメラである。本発明装置のユーザーは、一般的には、上記撮像装置で定期的に上記対象人物の顔画像データを取得する。取得された顔画像データは所定の目盛りに格納される。上記対象人物自身が定期的に上記顔画像データを取得することができる。
【0025】
上記顔画像データは、所定の条件で撮影した対象人物の静止画像であってもよく、一定時間の対象人物の顔を撮影した動画から切り出した画像であってもよく、一定時間の動画であってもよい。
【0026】
上記撮影は、対象人物が無自覚な状態、すなわち、今撮影されていると意識していない状態で行うことが好ましい。燃え尽き症候群と判定されたくないと思っている対象人物は、画像撮影の瞬間に無理やり明るい表情をとるか、笑顔を作ろうとする。この場合、判定が正確になされない。しかしながら、対象人物の画像データをいわゆる盗み撮りで取得すると倫理上あるいは職場規則上、問題がある。
【0027】
そこで、対象人物が「今、撮影されている」と意識する瞬間と、実際の撮影時刻とを、適度にずらせることが好ましい。例えば、職場の撮影地点で従業員(対象人物)に撮影ボタンを押下してもらい、押下時刻から適当な時間差を置いて撮影をすることで、対象人物の無自覚な状態における画像データの取得が可能になる。この場合、対象人物が「今、撮影されている」と身構えた時刻から十分な時間が経過した後に実際の撮影が実行されるので、取得された画像データは対象人物の無自覚な(平時の)表情に対応する。
【0028】
また、押下時刻から一定の時間内に複数回撮影をすることで、対象人物の無自覚な状態における画像データの取得が可能になる。この場合、撮影の回数を経る毎に対象人物の「今、撮影されている」という意識は少なくなって、最後に近い回で取得された画像データは対象人物の無自覚な(平時の)表情に対応する。
【0029】
押下時刻に1回撮影し、一定時間経過後に2回目の撮影をすることも好ましい。この場合、1回目の撮影で取得した画像データは確認用に使われ、2回目の撮影で取得した画像データから基本感情の強度を計測する。
【0030】
部位(2)は、公知の感情認識アプリケーションを用いて、上記顔画像データから個々の基本感情を認識する。好ましくは、部位(2)にはマイクロソフト(Microsoft)社が提供する感情認識AIサービス:FaceAPI が実装される。この場合、個々の基本感情が、それぞれの出現可能性あるいは検出確度によって、数値化される。より制度の高い推測アルゴリズムと多数のサンプルから学習したAI(人工知能)よって顔画像データから基本感情を認識するソフトウェアは日進月歩で開発されている。本発明では、より認識能力が高い感情認識AIサービスを用いる。
【0031】
例えば、顔画像データから幸せ表情だけを検出し、他の基本感情を検出できない場合に、部位(2)は「幸せ」値:1.00、「怒り」値:0、「嫌悪」値:0、「恐怖」値:0、「悲しみ」値:0、「驚き」値:0、「軽蔑」値:0、「無表情」値:0を出力することができる。
【0032】
例えば、顔画像データから主に幸せと無表情を検出した場合に、部位(2)は「幸せ」値:0.7、「怒り」値:0、「嫌悪」値:0、「恐怖」値:0、「悲しみ」値:0、「驚き」値:0、「軽蔑」値:0.1、「無表情」値:0.2を出力することができる。
【0033】
このような検出した基本感情の数値化は概念上のものであって、実際には部位(2)が生成するデータは数値であっても符号であってもよい。このように数値化された幸せ表情の程度:「幸せ」値は、認識された基本感情全体に対する幸せ表情の強度を表す。他の基本感情も、上述のように個々の強度に応じて数値化される。こうして得られた幸せ表情の強度は、その他の基本感情の強度と共に出力され、保存される。対象人物の顔画像データの蓄積に伴い、幸せ表情の強度を含む基本感情の数値データも蓄積される。
【0034】
[部位(3)]
部位(3)は、対象人物の燃え尽き症候群の有無を検知する。具体的には、部位(3)は、部位(1)と部位(2)が出力する情報に基づいて、対象人物の幸せ表情の強度が閾値を下回る場合には燃え尽き症候群有と判定し、上記燃え尽き症候群有の期間に基づいて上記対象人物の離職可能性を予測する。
【0035】
すなわち部位(3)は、部位(2)で出力した対象人物の「幸せ表情」値に部位(1)が出力する対象人物の個人情報を加味して、それぞれの対象人物が燃え尽き状態にあるか否かを判定する。例えば、対象人物Aが快活な性格(基本表情のうち笑顔の数値が高い)である場合、部位(1)は対象人物Aの個人情報として、高い「幸せ」値を出力する。さらに対象人物Aの所属する部署が繁忙期にある場合には、部位(1)が対象人物Aの属性情報として「繁忙」を出力する。この場合、部位(3)は対象人物Aに対しては閾値を低く設定して、部位(2)が出力する「幸せ表情」値とこの閾値を比較する。この場合、部位(3)は、比較結果が「閾値>対象人物Aの「幸せ表情」値」であれば「燃え尽き 有」と判定し、比較結果が「閾値≦対象人物Aの「幸せ表情」値」であれば「燃え尽き 無」と判定する。
【0036】
この例に限らず、ユーザーの要求や特性に応じて、部位(1)が出力する個人情報と部位(2)が出力する「幸せ表情」値(幸せ表情の強度)に様々な補正がなされ、部位(3)で用いる閾値が補正された結果、部位(3)における燃え尽き症候群の検知が行われる。
【0037】
部位(3)は、複数の判定基準(閾値)を設定して、燃え尽き症状のレベルを出力することもできる。例えば、燃え尽き状態が強いレベルから順に+3,+2,+1とランク分けしし、燃え尽き状態が疑われる場合を0、燃え尽きが全く観察されない場合を-1にランク分けすることもできる。これらの階層付けも、ユーザーの要求や特性に応じて多様に設定される。
【0038】
上記閾値を、対象人物が含まれるグループの全構成員について認識された基本感情の強度から算出された値として設定することもできる。この場合、本発明を利用する職場では、例えば職種や職位などによって人物(従業員)がグループ分けされる。典型的には、上記グループに属する人物(構成員)の基本感情強度の移動平均値を上記閾値として用いる。上記部位(2)で時々刻々認識され蓄積されるグループ構成員の基本感情の移動平均値が、時々刻々変化し得る閾値として用いられる。部位(3)で、この閾値とある時点における一人の対象人物の基本感情強度とを比較する。このような閾値設定方式をとると、ある時点での閾値はグループごとに異なる可能性があり、一定期間の閾値変化傾向はグループごとに異なる可能性がある。
【0039】
例えば20人の人物P1,P2,・・・P20が属するグループAでは、ある時点での構成員の基本感情強度として、例えば、「幸せ」値:V1P1,V1P2,・・・V1P20、「悲しみ」値:V2P1,V2P2,・・・V2P20、「無表情」値:V3P1,V3P2,・・・V3P20を利用する。さらに、構成員毎の全基本感情強度:VallP1,VallP2,・・・VallP20も利用することができる。例えば8つの基本感情を認識した場合には、人物P1の基本感情の和:(VallP1)は(V1P1)+(V2P1)+(V3P1)+・・・+(V8P1)を意味する。
【0040】
この場合、「幸せ」値:V1P1,V1P2,・・・V1P20の移動平均値を、この時点でのグループAの「幸せ」値の閾値:V1Aとすることができる。同様に、グループAの「悲しみ」値の閾値:V2A、グループAの「無表情」値の閾値:V3A、グループAの全基本感情強度の閾値:VallAも算出することができる。
【0041】
対象人物の燃え尽き症候群の有無を、構成員の感情強度とこの構成員が属するグループの閾値との大小関係で判定することができる。例えば、グループAに属する構成員P1について以下の判定が可能となる。
【0042】
・「幸せ」値に「V1P1<V1A」が成立する場合には「燃え尽き有」。
・「悲しみ」値に「V2P1<V2A」が成立する場合には「燃え尽き有」。
・「無表情」値に「V3P1>V3A」が成立する場合には「燃え尽き有」。
・全基本感情値に「VallP1<VallA」が成立する場合には「燃え尽き有」。
【0043】
部位(3)が「幸せ表情」値を含む各基本感情値の変化をグラフや表の形式で出力することもできる。この場合、対象人物は携帯端末上で自分の基本感情データを表示することができる。上述したグループの閾値をユーザー自身がグラフや表で確認できるような表示としてもよい。
【0044】
更に部位(3)は、各対象人物について連続して「燃え尽き 有」と判定した期間を算出し、この期間の長さに応じて当該対象人物の離職可能性を予測する。これまでに「燃え尽き 有」と判定されたことがなかった(初めて燃え尽き状態と判定された)対象人物の離職可能性は低く、燃え尽き状態が長く継続している対象人物の離職可能性は高い。燃え尽き状態と判定された期間と離職予測値との関係は、予めフィールド調査結果から統計的に求められ、部位(3)の予測プログラムに反映されている。
【0045】
部位(3)は、上述の燃え尽き状態の検知結果をユーザーに通知することができる。部位(3)は、通知と共に、検知結果に応じた助言、指導、警告をユーザーに提供することができる。
【0046】
例えば、部位(3)はユーザーである対象人物の携帯端末に以下のメッセージを送信することができる。
【0047】
・「燃え尽き状態が2週間継続しています。心身に大きな支障が発生して言う可能性があります。以下のURLからカウンセラーの予約をしてください。」
・「燃え尽き症候群の兆候が現れています。疲れが溜まっていませんか?定期的な休息を心がけましょう。」
・「今週は燃え尽き状態が検出されませんでした。これからも規則正しい睡眠と休息を心がけましょう。」
部位(3)は、ユーザーである職場(グループ)の管理者の携帯端末に例えば以下のメッセージを送信することができる。
・「燃え尽き症候群が1ヶ月以上検出されています。シフト管理ページに進んでシフトの確認/変更をしてください。」
・「燃え尽き状態が疑われるメンバーが見つかりました。以下のリンクから詳細情報を参照してください。」
・「燃え尽き状態にあるメンバーは見つかりませんでした。引き続き職場環境に気を付けましょう。」
上述のグループの閾値と構成員の値との関係を一定期間比較して警告を発することができる。例えば、期間内のある時点で「燃え尽き有」と判定され、かつ、「燃え尽き」の程度が大きくなっている場合に、対象人物の携帯端末に警告メッセージを送信表示することができる。例えばグループAの構成員P1に対して以下の時点で警告メッセージを送信表示することができる。
【0048】
・「幸せ」値に「V1P1<V1A」が成立し、かつ、V1P1がV1Aの20%に減少した時点。
・全基本感情値に「VallP1<VallA」が成立し、かつ、個人値と閾値との差:(VallA-VallP1)の増加が1週間継続した時点。
【0049】
このような警告が必要な時点に、「グループの構成員P1の離職リスクが高まった」と判定することもできる。
【0050】
燃え尽きの有無、警告などのメッセージの必要性の判定は、定期的に実行することができる。判定の頻度は、対象者やグループの特徴、業務の特徴に応じて適宜設定される。例えば、1週間、2週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年を単位とすることができる。
【0051】
[燃え尽き症候群を検出し離職リスクを予測する方法]
本発明の燃え尽き症候群を検出し離職リスクを予測する方法(以下「本発明方法」)は、本発明の燃え尽き症候群を検出し離職リスクを予測する方法は、工程(1),(2),(3)を有する。工程(1)は、部位(1)が上述の処理と動作を行う工程である。工程(2)は、部位(2)が上述の処理と動作を行う工程である。は、部位(3)が上述の処理と動作を行う工程である。すなわち本発明方法は、上述の本発明装置が燃え尽き症候群を検出し離職リスクを予測する方法を意味する。
【0052】
本発明方法の特徴:「対象人物の個人情報を出力する」、「対象人物の顔画像データから対象人物の感情の特徴を検出する」、「対象人物の燃え尽き症候群の有無を検知する」の詳細は、本発明装置の説明に従う。
【0053】
本発明方法の特徴:「対象人物の識別情報、属性、職歴のいずれか1以上に関連する情報を出力」、「撮像装置で取得した対象人物の顔画像データから上記対象人物の基本感情を認識し、認識された基本感情全体に対する幸せ表情の強度を出力」、「部位(1)と部位(2)が出力する情報に基づいて、対象人物の幸せ表情の強度が閾値を下回る場合には燃え尽き症候群有と判定し、上記燃え尽き症候群有の期間に基づいて上記対象人物の離職可能性を予測する」の詳細は、本発明装置の説明に従う。
【0054】
本発明方法の特徴:「ユーザーに検知の結果を通知し、上記結果に基づいて助言、指導、警告のいずれか1以上を行う」の詳細は、本発明装置の説明に従う。
【0055】
[効果]
本発明装置及び本発明方法は、特別な設備や専門家の操作を必要としない。本発明のユーザーは、携帯端末によって簡単に職場における最新の燃え尽き症候群に関する情報を得ることができ、さらに、燃え尽き症候群に対して早期対応をすることができる。ユーザーが対象人物自身(従業員)の場合、本来は望まない離職を避けることができる。ユーザーが職場の管理者の場合、職場のグループ構成員の離職リスクを下げることができる。
【実施例0056】
[典型的な装置・方法]
本発明の典型例を以下に説明する。
【0057】
(部位・工程(1))
ユーザーは、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末やPCからアクセスできる専用アプリケーションから、従業員の個人情報を入力する。この個人情報には、従業員の3つの属性:年齢、性別、笑顔度が含まれる。「笑顔度」は、予め従業員の画像又は動画をMicrosoft社のFaceAPIで分析し、従業員が平時・観察開始時に示した笑顔の頻度・程度を意味する。このような笑顔度は、従業員が平時・観察開始時に示した幸せ感情に紐付けされる。入力された個人情報はデータベースに格納される。部位・工程(1)では、データベースから個々の従業員に紐付けされた個人情報が抽出され出力される。
【0058】
(部位・工程(2))
ユーザーは、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末やPCからアクセスできる専用アプリケーション、あるいは、職場のネットワークカメラ(IPカメラ)から、予め設定された条件(撮影時刻、撮影頻度、動画・画像の別など)で、従業員の顔画像データを取得する。従業員が自身を撮影してもよい。取得した顔画像データは、対象人物の個人情報(氏名、社員番号など)と紐付けされる。
【0059】
部位・工程(2)は、取得した画像や動画データから、基本情報のそれぞれを検出して、それぞれの頻度や強度を数値化する。この例では基本情報として、怒り、軽蔑、嫌悪感、恐れ、幸せ、悲しみ、驚き、無表情、中立の8つの感情を数値化し出力する。
【0060】
顔画像データは職場の1営業日当たり1回以上取得し、各回で基本感情値が出力される。
【0061】
数値化された基本感情は、従業員の3つの属性に応じて補正する。補正後の基本感情値は対象人物の個人情報に紐付けされる。補正後の基本感情値はデータベースに格納し蓄積する。
【0062】
(部位・工程(3))
燃え尽き症候群の判定基準となる閾値は、予めユーザーによって設定されている。補正後の「幸せ表情」値が閾値を下回る場合には「燃え尽き有り」と判定し判定結果を出力する。
【0063】
従業員の燃え尽き状態からその従業員の離職傾向を推測するアルゴリズムは、予め設定されている。推測アルゴリズムは、ユーザーの職場で再現する可能性が高い相関に基づき、ユーザーの職場に適したサンプル調査の結果から統計的に導かれたものである。
【0064】
部位・工程(3)は従業員の燃え尽き症継続期間から当該従業員の離職可能性を算出し、算出結果を出力する。
【0065】
部位・工程(3)は、ユーザーに対して燃え尽き症候群の検出結果や離職可能性を示すと共に、ユーザーの指定する条件で就業者(グループ)の基本感情の変化や特徴を、例えば次の例1の表1の形式でユーザーの携帯端末に表示することができる。ユーザーはこのような変化や特徴で、部位・工程(3)の判定や予測の裏付けを確認することができる。
【0066】
[例1]
図1に、本発明の装置及び方法を用いた燃え尽き症候群を検出し離職リスクを予測するシステム(1000)の構造を、模式的に示す。
【0067】
ユーザーの端末機器(400)は、職場の固定カメラ(410)、従業員の端末機器(420,421,422)職場の管理者の端末機器(430,431,432)を含み、本システムにネットワーク上で接続されている。
【0068】
区画(100)が本発明の装置・工程(1)を受け持ち、対象人物の個人情報を受け取り格納する。区画(200)は本発明の装置・工程(2)を受け持ち、対象人物の顔画像データから対象人物の感情の特徴を検出する。区画(100)特格(200)は、既存の感情認識アプリケーションの実行部(500)に含まれる。
【0069】
区画(300)が本発明の装置・工程(3)を受け持ち、区画(301)で対象人物の燃え尽き症候群の有無を検知し、区画(302)で上記対象人物の離職可能性を予測する。
【0070】
区画(301)から、対象人物の燃え尽き状態の判定結果、対象人物の離職リスクの予測結果、必要に応じたユーザーへのメッセージが、ユーザーの端末機器(420,421,422,430,431,432)に送信される。
【0071】
[例2]
図2に、本発明の装置及び方法を用いた燃え尽き症候群を検出し離職リスクを予測するシステムで行う処理フローの例を示す。
【0072】
[例3]
図3には、ある従業員(従業員A)の「幸せ」値(1)、「悲しみ」値(2)、「無表情」値(3)の週平均値の変化が表示されている。部位・工程(3)は従業員(A)の携帯端末に図3で示される表を表示することができる。この例では、判定の閾値を「幸せ表情」値:0.55に設定し、「幸せ表情」値(1)が0.55未満の場合を「燃え尽き兆候有り」と判定する。この例では第8週から第10週までの期間に燃え尽きの兆候が現れたことが分かる。
【0073】
この例では、検出された「幸せ表情」値(1)が連続して閾値を下回る週数に応じて、部位・工程(3)は以下のメッセージを従業員Aの携帯端末やPCに表示する。
【0074】
・情報メッセージ:「燃え尽き状態に近づいています。休息や睡眠を十分にとりましょう。」
・注意メッセージ:「燃え尽き兆候が検出されました。心身状態に支障が生じていると思われます。休息と睡眠をとってください。シフト変更を希望する場合には下のサイトに進んでください。」
・警告メッセージ:「燃え尽き兆候が1週間連続しています。2日以内にグループ長にコンタクトして業務の見直しを検討してください。2日以内に下のサイトからカウンセラー予約をしてください。」
[例4]
図4は、職場のグループ(B)に属する4人の従業員(ID:04,ID:05,ID:06,ID:07)の「幸せ」値の変化(4,5,6,7)を示す。従業員(4,5,6,7)以外のメンバーのデータは省略している。図4には、グループBの従業員全員の「幸せ」値の平均値の変化(8)も示されている。部位・工程(3)はグループBの管理者の携帯端末に図4で示される表を表示することができる。
【0075】
従業員(ID:04)と従業員(ID:05)の「幸せ」値は3ヶ月連続で高いレベルにある。従業員(ID:06)はこの期間の後半に燃え尽き状態から回復した。従業員(ID:07)の「幸せ」値は低い状態にあり、燃え尽き状態が継続している。
この例では、閾値あるいは平均値を下回った「幸せ表情」値(1)が連続して検出された月数に応じて、部位・工程(3)は以下のメッセージをグループBの管理者の携帯端末やPCに表示する。
【0076】
・注意メッセージ:「従業員(ID:06)さんに燃え尽き兆候が1ヶ月連続しています。従業員(ID:06)さんのシフト変更を検討してください。」
・警告メッセージ:「従業員(ID:07)さんの燃え尽き兆候が3ヶ月連続しています。7日以内に従業員(ID:07)さんのシフトを変更してください。」
[例5]
部位・工程(3)が対象人物の離職可能性を予測する例である。この例では予め図5に示す従業員の燃え尽き期間(「幸せ表情」値が閾値:0.55を下回る期間)と、この従業員が離職する確率との関係が設定されている。ここで言う「離職確率」は、同じ「幸せ表情」値を示したサンプル(従業員)全体のうち、1年以内に離職した人数の割合を意味する。図5の予測モデルでは、燃え尽きが40日継続した従業員のうちの3割が最新の燃え尽き検出日から1年以内に離職すると予測する(実線矢印9)。
【0077】
従業員(ID:07)は分析開始:2020/01月から最新の分析時2020/03月まで60日継続して燃え尽き状態にある。この推測モデルでは従業員(ID:07)が1年以内に離職する確率は0.6である(点線矢印10)。
【0078】
従業員(ID:06)は分析開始:2020/02月から最新の分析時2020/03月まで30日継続して燃え尽き状態にある。この推測モデルでは従業員(ID:06)が1年以内に離職する確率は0.2である(点線矢印11)。
【0079】
部位・工程(3)は、このように予測した従業員(ID:06),(ID:07)の離職確率をグループBの管理者に提供することができる。グループBの管理者は、受け取った離職確率値を従業員(ID:06),(ID:07)が近い将来に職務不能になる可能性ととらえて、従業員(ID:06),(ID:07)の燃え尽き状態を取り除く行動をとることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の装置及び方法は、職場における燃え尽き症候群の課題を早期発見して対処するための、安価で信頼性の高い管理システムに用いられる。本発明は、企業内の労務管理や従業員の健康管理を支援するサービスの創出に貢献することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 「幸せ表情」値の変化
2 「悲しみ」値の変化
3 「無表情(中立)」の値の変化
4 従業員(ID:04)の「幸せ表情」値の変化
5 従業員(ID:05)の「幸せ表情」値の変化
6 従業員(ID:06)の「幸せ表情」値の変化
7 従業員(ID:07)の「幸せ表情」値の変化
9 燃え尽きが40日継続した従業員の離職可能性の推測
10 従業員(ID:07)の離職可能性の推測
11 従業員(ID:06)の離職可能性の推測
100 装置・工程(1)を受け持つ区画
200 装置・工程(2)を受け持つ区画
300 装置・工程(3)を受け持つ区画
301 対象人物の燃え尽き症候群の有無を検知する区画
302 対象人物の離職可能性を予測する区画
400 ユーザーの端末機器
410 職場の固定カメラ
420,421,422 従業員の端末機器
430,431,432 職場の管理者の端末機器
500 感情認識アプリケーションの実行部
1000 燃え尽き症候群を検出し離職リスクを予測するシステム
図1
図2
図3
図4
図5