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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089453
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】電子線照射装置
(51)【国際特許分類】
   G21K 5/04 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
G21K5/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204828
(22)【出願日】2022-12-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】503237806
【氏名又は名称】株式会社NHVコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】水谷 睦
(72)【発明者】
【氏名】山田 正広
(72)【発明者】
【氏名】下元 善夫
(57)【要約】
【課題】地震等の揺れが入力されても加速管ユニットと他装置とに跨がる収容管を用いることで生じ得ていた増大した揺れ荷重を加速管に対して掛からないようにし、加速管の破損等の懸念事項の解消が図れる電子線照射装置を提供する。
【解決手段】加速管ユニット13の給電構成として、自身に配策される給電ケーブル21を挿通して支持する収容管22が備えられる。加速管ユニット13に設置される支持装置23により、収容管22は少なくとも自身の管軸L2方向の相対移動の許容される態様にて支持される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメント及び加速管を有し、前記フィラメントから生じた熱電子を前記加速管にて収束及び加速させて被照射物に照射するための電子線として生成する加速管ユニットを、絶縁ガスの充填される圧力タンク内に設置してなるものであり、
前記加速管は、複数の加速電極の間に筒状体を介挿させた積層構造をなし、
前記加速管ユニットの給電構成として、前記フィラメント及び前記加速電極への電源供給を行う給電ケーブルと、前記圧力タンク内の他装置と前記加速管ユニットとに跨がって設けられて前記給電ケーブルを挿通して支持する収容管とを備え、前記加速管の管軸方向に対して前記収容管の管軸方向を交差する態様にて前記収容管を配置してなる電子線照射装置であって、
前記収容管の前記加速管ユニットに対する支持構成として、前記加速管ユニットに設置され、少なくとも前記収容管の管軸方向の相対移動を許容して支持する支持装置を備えて構成されている、電子線照射装置。
【請求項2】
前記支持装置は、更に前記収容管の管軸の直交方向の相対移動を許容して支持する構成である、請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項3】
前記支持装置は、ローラ部材を有し、前記収容管の相対移動の許容に前記ローラ部材の転動を利用する構成である、請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項4】
前記支持装置は、前記収容管に当接するローラ部材を有し、前記収容管の相対移動の許容に前記ローラ部材の転動を利用する構成である、請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項5】
前記支持装置は、前記収容管に当接する少なくとも一対のローラ部材を有し、前記収容管の相対移動の許容に前記ローラ部材の転動を利用する構成であり、
前記一対のローラ部材は、前記収容管の前記管軸を通る対称軸の両側の線対称位置に配置され、前記収容管の斜め下方の部位に当接する態様である、請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項6】
前記支持装置は、前記収容管の載置にて前記収容管を支持する構成である、請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項7】
前記圧力タンク内には、前記加速管ユニットに電源供給を行うための電源装置を設置してなるものであり、前記給電ケーブル及び前記収容管は、前記電源装置と前記加速管ユニットとに跨がって設けられるものであって、
前記収容管の一端部は、前記電源装置の筐体に対して不動に固定されるとともに、前記収容管の他端部は、前記加速管ユニットに設置される前記支持装置にて相対移動の許容とともに支持される構成である、請求項1に記載の電子線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線照射装置は、生成した電子線を被照射物に照射する装置である。電子線照射装置は、被照射物の例えば素材の性質改善や機能付加、殺菌・滅菌を図る目的等で用いられている。電子線照射装置の中でも走査型のものは、真空中でフィラメントから生じた熱電子を収束及び加速させて電子線とする加速管を備えている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
加速管は、管軸方向の等間隔に並設される複数の加速電極を有している。加速管の管軸方向を例えば上下方向に設定する装置の場合、加速管の上端部にはフィラメントが設けられている。フィラメント及び加速管等は、加速管ユニットとして一体的に構成されている。加速管ユニットは、加速管の管軸方向を上下方向に向けて電子線照射装置の圧力タンク内に設置されている。フィラメント及び加速管の加速電極は、それぞれ電源装置に接続されて加速管での電子線生成のための電源供給を受けている。電源装置についても、電子線照射装置の圧力タンク内に設置されている。圧力タンク内には、絶縁ガスが充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-320400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子線照射装置においては、電源装置と加速管ユニットとの間の距離を比較的大きく空けて設置されるものがある。この場合、電源装置から加速管ユニットに配策する給電ケーブルも長くなる。給電ケーブルは、圧力タンクに対する電界緩和のために、導電性の収容管の中を挿通されて収容管にて支持される。収容管は、一般的な取付態様として電源装置と加速管ユニットとに跨がって水平に配置されて、それぞれに対して取付ねじ等を用いて不動に固定される。
【0006】
ところで、地震等で電子線照射装置に揺れが生じると、電源装置と加速管ユニットとはそれぞれ固有の揺れとなる。つまり、電源装置と加速管ユニットとの間の距離が変化する状況となり得る。そのため、収容管を通じて相互が連結状態にあって相互間の距離が変化すると、特に収容管の管軸方向においては電子線照射装置に入力される揺れ以上に増大した揺れ荷重となる。増大した揺れ荷重は、電源装置及び加速管ユニットの各所に掛かることになる。
【0007】
一方で、加速管ユニットの加速管自身は、複数の加速電極の間にガラス筒状体を介在させた積層構造をなしている。つまり、加速管は、水平方向への横揺れの荷重に対して比較的脆弱な構造であるとも言える。したがって、電源装置と加速管ユニットとの間において生じる上記増大した揺れ荷重が加速管に対して掛かると、加速管の構造上、加速管のガラス筒状体を破断させることに繋がりかねない。
【0008】
またこのことは、加速管ユニットの給電構成として加速管ユニットと他装置である電源装置とが直接的に電気的に接続する上記構成のみとは限らない。例えば、電源装置と加速管ユニットとの間に他装置が介在する構成においても、加速管ユニットと他装置との間で同様に起こり得る。本発明者は、地震等の揺れが電子線照射装置に入力されても、加速管ユニットと他装置とに跨がる収容管を用いることで生じ得る増大した揺れ荷重が加速管に対して掛からないようにする構成の検討を行っていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本開示の一態様に係る電子線照射装置は、フィラメント及び加速管を有し、前記フィラメントから生じた熱電子を前記加速管にて収束及び加速させて被照射物に照射するための電子線として生成する加速管ユニットを、絶縁ガスの充填される圧力タンク内に設置してなるものであり、前記加速管は、複数の加速電極の間に筒状体を介挿させた積層構造をなし、前記加速管ユニットの給電構成として、前記フィラメント及び前記加速電極への電源供給を行う給電ケーブルと、前記圧力タンク内の他装置と前記加速管ユニットとに跨がって設けられて前記給電ケーブルを挿通して支持する収容管とを備え、前記加速管の管軸方向に対して前記収容管の管軸方向を交差する態様にて前記収容管を配置してなる電子線照射装置であって、前記収容管の前記加速管ユニットに対する支持構成として、前記加速管ユニットに設置され、少なくとも前記収容管の管軸方向の相対移動を許容して支持する支持装置を備えて構成されている。ちなみに、収容管の管軸方向は、収容管において大部分を占める主たる管軸を含む方向である。
【0010】
上記構成によれば、加速管ユニットの給電構成として、自身に配策される給電ケーブルを挿通して支持する収容管が備えられる。加速管ユニットに設置される支持装置により、収容管は自身の管軸方向の相対移動の許容される態様にて支持される。地震等で電子線照射装置に揺れが生じた場合、収容管の跨がる他装置と加速管ユニットとの固有の揺れの相互作用により収容管の管軸方向の揺れが増大し得る。増大した揺れ荷重が加速管ユニットに掛かると、加速管の破損等の懸念に繋がる。これに対し、収容管の管軸方向の相対移動を許容する支持構成とすることで、増大した揺れ荷重が加速管に掛かることを十分抑えることが可能である。加速管においての破損等の懸念事項の解消が十分に図れる。
【0011】
[2]上記[1]に記載の電子線照射装置において、前記支持装置は、更に前記収容管の管軸の直交方向の相対移動を許容して支持する構成である。
上記構成によれば、収容管の管軸方向と管軸の直交方向との相対移動をそれぞれ許容する支持構成とすることで、収容管を通じて加速管に掛かる揺れ荷重を十分小さく抑えることが可能である。加速管においての破損等の懸念事項の解消をより十分に図れることが期待できる。
【0012】
[3]上記[1]又は[2]に記載の電子線照射装置において、前記支持装置は、ローラ部材を有し、前記収容管の相対移動の許容に前記ローラ部材の転動を利用する構成である。
【0013】
上記構成によれば、ローラ部材の転動を利用して収容管の相対移動を許容する支持構成とすることで、収容管の相対移動は円滑であり、加速管に掛かる揺れ荷重を十分小さく抑えることが可能である。
【0014】
[4]上記[1]から[3]のいずれか1項に記載の電子線照射装置において、前記支持装置は、前記収容管に当接するローラ部材を有し、前記収容管の相対移動の許容に前記ローラ部材の転動を利用する構成である。
【0015】
上記構成によれば、収容管に当接するローラ部材の転動を利用して収容管の相対移動を許容する支持構成とすることで、収容管の相対移動は上記と同様に円滑であり、加速管に掛かる揺れ荷重を十分小さく抑えることが可能である。
【0016】
[5]上記[1]から[4]のいずれか1項に記載の電子線照射装置において、前記支持装置は、前記収容管に当接する少なくとも一対のローラ部材を有し、前記収容管の相対移動の許容に前記ローラ部材の転動を利用する構成であり、前記一対のローラ部材は、前記収容管の前記管軸を通る対称軸の両側の線対称位置に配置され、前記収容管の斜め下方の部位に当接する態様である。
【0017】
上記構成によれば、収容管に当接する一対のローラ部材の転動を利用して収容管の相対移動を許容する支持構成とすることで、収容管の相対移動は上記と同様に円滑であり、加速管に掛かる揺れ荷重を十分小さく抑えることが可能である。また、一対のローラ部材は、収容管の管軸を通る対称軸の両側の線対称位置に配置されて、収容管の斜め下方の部位に当接して収容管を支持する。少ない数のローラ部材にて、収容管を安定して支持することが可能である。
【0018】
[6]上記[1]から[5]のいずれか1項に記載の電子線照射装置において、前記支持装置は、前記収容管の載置にて前記収容管を支持する構成である。
上記構成によれば、収容管の載置にて収容管を支持する支持構成とすることで、収容管の設置は容易である。また、収容管の載置方向とは逆方向への相対移動が特に規制されないため、このことでも加速管に掛かる揺れ荷重を十分小さく抑えることが期待できる。
【0019】
[7]上記[1]から[5]のいずれか1項に記載の電子線照射装置において、前記圧力タンク内には、前記加速管ユニットに電源供給を行うための電源装置を設置してなるものであり、前記給電ケーブル及び前記収容管は、前記電源装置と前記加速管ユニットとに跨がって設けられるものであって、前記収容管の一端部は、前記電源装置の筐体に対して不動に固定されるとともに、前記収容管の他端部は、前記加速管ユニットに設置される前記支持装置にて相対移動の許容とともに支持される構成である。
【0020】
上記構成によれば、電子線照射装置の電源装置は比較的大型な装置であるため、電源装置と加速管ユニットとの相互作用による加速管の破損等の懸念はより高まる。そのため、電源装置と加速管ユニットとに跨がって配置される収容管の支持構成に対して適用する意義は大きい。
【発明の効果】
【0021】
本開示の電子線照射装置によれば、地震等の揺れが入力されても加速管ユニットと他装置とに跨がる収容管を用いることで生じ得ていた増大した揺れ荷重が加速管に対して掛からないようにでき、加速管の破損等の懸念事項の解消を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態における電子線照射装置の電気構成を含む概略構成図である。
図2】一実施形態における電子線照射装置の装置構成を示す概略構成図である。
図3】一実施形態における支持装置の装置構成を示す側面視図である。
図4】一実施形態における支持装置の装置構成を示す正面視図である。
図5】変更例における支持装置の装置構成を示す正面視図である。
図6】変更例における収容管の構成を示す側面視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、電子線照射装置の一実施形態について説明する。
(電子線照射装置10の電気構成)
図1に示す本実施形態の電子線照射装置10は、走査型の電子線照射装置である。電子線照射装置10は、熱電子の放出を行う例えばタングステン製のフィラメント11を備えている。加速管12は、フィラメント11から放出された電子の収束及び加速を行う装置である。本実施形態の加速管12は、自身の管軸L1方向が上下方向となる姿勢で配置される。加速管12は、上下方向の等間隔に並設される複数の加速電極12aを有している。加速管12は、各加速電極12aの間に円筒状のガラス筒状体12bをそれぞれ介挿させた積層構造をなしている。加速管12の上端部には、フィラメント11が設置されている。すなわち、加速管12に対してフィラメント11が一体的に取り付けられて、加速管ユニット13として一体的に構成されている。なお、加速管ユニット13は、加速管12及びフィラメント11の周囲部品(図示略)を含んでいてもよい。
【0024】
加速管ユニット13は、電源装置14から電源供給を受ける。フィラメント11は、電源装置14のフィラメント用電源14aから電源供給を受ける。フィラメント11は、所定の電源供給に基づいて自身の加熱により電子を放出する。加速管12の各加速電極12aは、電源装置14の加速電極用電源14bから電源供給を受ける。各加速電極12aは、各所への所定の電源供給に基づいて、フィラメント11から放出された電子を管軸L1上に収束させつつ下方に向けて加速させるような電界を加速管12内に生じさせる。つまり、加速管12では、各加速電極12aにて生じる電界にて下方に向く電子流、すなわち電子線eが生じるようになっている。
【0025】
加速管12の下端部には、走査管15が接続されている。加速管12と走査管15とは、互いに内部空間16が連通している。内部空間16では、電子線eが加速管12から走査管15に向けて進行する。走査管15は、自身の上端部から下端部に向けて拡開する形状をなしている。走査管15の上端部には、走査コイル17が設けられている。走査コイル17は、自身への所定の電源供給に基づいて、内部空間16の電子線eの向きを偏向、すなわち電子線eの走査を行う。
【0026】
走査管15の下端部には、例えば略長方形状の開口窓部15aが設けられている。開口窓部15aには、窓箔18が取り付けられている。窓箔18は、例えばチタン系の金属箔にて構成されている。窓箔18は、電子線eを透過させつつ、開口窓部15aを密閉させる機能を有している。つまり、加速管12と走査管15とに跨がる内部空間16は、密閉空間として構成されている。走査管15には、真空ポンプ19が接続されている。真空ポンプ19は、自身の駆動にて、電子線eの生じる内部空間16を真空状態とする。
【0027】
上記したフィラメント用電源14a、加速電極用電源14b、走査コイル17及び真空ポンプ19は、制御装置CUにて制御される。制御装置CUは、フィラメント用電源14a及び加速電極用電源14bを通じた電子線eの出力調整、走査コイル17を通じた電子線eの走査制御、及び真空ポンプ19を通じた加速管12及び走査管15の内部空間16の真空調整等を行う。
【0028】
そして、開口窓部15aに装着の窓箔18を介して出射される電子線eは、例えば搬送装置WCにより搬送される被照射物Wに対して照射される。なおこの場合、電子線照射装置10は、略長方形状の開口窓部15aの長手方向が搬送装置WCの搬送方向の直交方向に向く配置である。電子線eの所定走査が行われることで、開口窓部15aに対応した略長方形状の照射エリアAの電子線eの照射が行われる。電子線eの被照射物Wへの照射効果としては、例えば素材の性質改善や機能付加、殺菌・滅菌等が期待できる。
【0029】
(電子線照射装置10の装置構成)
図2に示す本実施形態の電子線照射装置10は、圧力タンク20を備えている。圧力タンク20内には、電源装置14と加速管ユニット13とが収容されるとともに、絶縁ガス(図示略)が充填される。電源装置14及び加速管ユニット13等は、絶縁ガスの雰囲気中に設置されている。
【0030】
圧力タンク20は、電源装置14を主として収容する第1収容部20aと、加速管ユニット13を主として収容する第2収容部20bと、第1及び第2収容部20a,20bを互いに連通させる連通通路20cとが一体的に構成されている。連通通路20cには、給電ケーブル21を挿通して支持する収容管22が配置されている。第1収容部20aは電源装置14に対応した形状と大きさ、第2収容部20bは加速管ユニット13に対応した形状と大きさ、連通通路20cは収容管22に対応した形状と大きさにそれぞれ設定されている。ちなみに、このように個別設定とすることで、圧力タンク20の全体の外形を小さく構成することが可能である。圧力タンク20の第1及び第2収容部20a,20bは、水平面を有する設置フロアFLaに水平方向に並設されている。
【0031】
圧力タンク20の第2収容部20bの設置される設置フロアFLaの下面には、走査管15が設置されている。走査管15は、圧力タンク20の外側での配置であって、第2収容部20bに収容される加速管ユニット13と接続されている。走査管15の下方には搬送フロアFLbがあり、搬送フロアFLb上には搬送装置WCが設置されている。加速管ユニット13にて生成した電子線eは走査管15から下方に出射されて、搬送装置WC上を搬送される被照射物Wに照射されるものとなっている。
【0032】
圧力タンク20の連通通路20cは、水平方向に延びる円筒状をなしている。連通通路20cの一端部は第1収容部20aと連結し、他端部は第2収容部20bと連結している。第1及び第2収容部20a,20b及び連通通路20cの内部空間20xは連通している。連通通路20c内には、給電ケーブル21を挿通して支持する収容管22が配置されている。
【0033】
収容管22は、導電金属材にて円筒状に作製されている。収容管22の一端部22aは、電源装置14にて不動に支持されている。収容管22の一端側部位は、本実施形態では図2の実線にて示すように、クランク状に屈曲する形状を含んでいる。なお図2の破線にて示すように、収容管22の一端側部位は、単に直線状をなしていてもよい。収容管22の他端部22bは、加速管12の上端部に支持装置23を用いて支持されている。収容管22の他端側部位は、一例として途中で一段径が小さく絞られる形状をなしている。収容管22は、連通通路20cの内周面に対して適切な距離を有して支持されている。収容管22は、内側に挿通される給電ケーブル21を支持する機能のみならず、連通通路20cに対する電界緩和の機能も有している。
【0034】
給電ケーブル21は、収容管22を用いて電源装置14と加速管ユニット13との間に配策される。給電ケーブル21は、電源装置14と加速管ユニット13とを電気的に接続する。給電ケーブル21は、加速管ユニット13のフィラメント11と加速管12の各加速電極12aとに電源装置14からの所定の電源供給を行う。加速管ユニット13の上端部は、フィラメント11、給電ケーブル21の一部、収容管22の一部、及び支持装置23等を含めてカバー部材13xにて覆われている。
【0035】
(支持装置23の詳細構成)
図3及び図4に示すように、支持装置23は、給電ケーブル21を挿通する収容管22の他端部22bを支持するものである。支持装置23は、加速管12の上端部に設置されている。収容管22の一端部22aは、電源装置14の筐体に対して不動に固定されている(図2参照)。収容管22は、電源装置14と支持装置23のある加速管ユニット13とに跨がって、収容管22の管軸L2方向を水平方向として支持されている。収容管22の管軸L2方向は、加速管12の管軸L1方向に対して交差する態様、本実施形態では直交する態様である。
【0036】
なお、収容管22の管軸L2方向は、本実施形態では収容管22において大部分を占める同一方向に延びる部分のその延びる方向であり、主たる管軸方向と定義する。また、収容管22の管軸L2方向は、本実施形態では加速管ユニット13と電源装置14とにおいて相互に近接離間する方向と同じ方向での設定であり、相互間の距離を直接的に大きく変化させる方向でもある。
【0037】
支持装置23は、固定ベース部24が加速管12の上端部に不動に固定されている。固定ベース部24には、スライド連結部25を介して支持ベース部26が連結されている。スライド連結部25には、スライドローラ25aが転動可能に組み込まれている。スライド連結部25は、自身のスライドローラ25aの転動により、支持ベース部26を固定ベース部24に対して直線往復移動を許容して連結する。固定ベース部24の加速管12への取付状態において、支持ベース部26の許容された移動軸L3方向は、水平方向でかつ収容管22の管軸L2の直交方向に設定されている。
【0038】
支持ベース部26には、一対の支持ローラ27a,27bが転動可能に取り付けられている。収容管22の管軸L2方向に見て(図4参照)、各支持ローラ27a,27bの回転軸L4,L5は、水平方向に対して傾斜した方向に設定されている。各回転軸L4,L5の傾斜角度は、互いに同角度の本実施形態では45°に設定されている。各回転軸L4,L5は、各支持ローラ27a,27bより加速管12に近い方向において互いに近接、遠い方向において互いに離間する傾斜態様である。一対の支持ローラ27a,27bは、収容管22の管軸L2を通る上下方向の対称軸L6に対して、水平方向の両側の線対称位置に配置されている。また、支持ベース部26の移動軸L3方向に見て(図3参照)、各支持ローラ27a,27bの回転軸L4,L5は、上下方向に向いて互いに一致する態様となっている。
【0039】
そして、支持装置23は、一対の支持ローラ27a,27bへの載置にて、給電ケーブル21の収容管22の他端部22bを支持している。各支持ローラ27a,27bは、収容管22の管軸L2方向に見て(図4参照)、水平方向の両側における収容管22の斜め下方の部位にそれぞれ当接する態様である。収容管22は、自身及び給電ケーブル21の自重にて、支持装置23の各支持ローラ27a,27bに支持されている。その際、支持装置23は、収容管22の管軸L2方向の相対移動を各支持ローラ27a,27bの転動により許容する。また、支持装置23は、収容管22の管軸L2の直交方向の相対移動を固定ベース部24に対する支持ベース部26の作動により許容する。また、支持装置23は、収容管22の上方への相対移動を特に規制しておらず、収容管22を各支持ローラ27a,27bに対して単に載置する態様である。
【0040】
(本実施形態の作用)
本実施形態の作用について説明する。
電源装置14と加速管ユニット13とは、両者に跨がって設けられる収容管22を挿通された給電ケーブル21にて電気的に接続されている。収容管22の一端部22aは、電源装置14に不動に設置されている。一方、収容管22の他端部22bは、本実施形態では加速管12に設置された支持装置23にて支持されている。本実施形態の支持装置23は、収容管22の管軸L2方向及び管軸L2の直交方向への相対移動を許容、すなわち水平方向のいずれにおいても相対移動を許容する支持構成である。
【0041】
そして、地震等で電子線照射装置10に揺れが生じた場合、電源装置14と加速管ユニット13との固有の揺れにより、電源装置14と加速管ユニット13との間の距離が変化する状況となり得る。すなわち、電源装置14と加速管ユニット13との間において、収容管22の管軸L2方向の距離が変化し得る。仮に収容管22を加速管ユニット13に不動に設置する従来の一般的な構成では、同方向において電子線照射装置10に入力される揺れよりも増大した揺れ荷重が加速管ユニット13に対して掛かることとなり、加速管12の破損等の懸念事項となっていた。
【0042】
これに対して本実施形態では、電源装置14と加速管ユニット13との間において収容管22の管軸L2方向の距離が変化しても、上記した支持装置23の支持構成により、加速管12に対する収容管22の同方向への相対移動が許容されている。つまり、電源装置14と加速管ユニット13との間の揺れの相互作用は十分に抑えられており、増大した揺れ荷重が加速管12に対して掛かることは十分に抑えられている。こうして本実施形態では、ガラス筒状体12bを含む積層構造をなす加速管12においての破損等の懸念事項の解消が図れるものとなっている。
【0043】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態の加速管ユニット13の給電構成として、自身に配策される給電ケーブル21を挿通して支持する収容管22が備えられている。加速管ユニット13に設置される支持装置23により、収容管22は自身の管軸L2方向の相対移動の許容される態様にて支持されている。地震等で電子線照射装置10に揺れが生じた場合、収容管22の跨がる他装置としての電源装置14と加速管ユニット13との固有の揺れの相互作用により収容管22の管軸L2方向の揺れが増大し得る。増大した揺れ荷重が加速管ユニット13に掛かると、加速管12の破損等の懸念に繋がる。これに対し、本実施形態のように収容管22の管軸L2方向の相対移動を許容する支持構成とすることで、増大した揺れ荷重が加速管12に掛かることを十分抑えることができる。加速管12においての破損等の懸念事項の解消を十分に図ることができる。
【0044】
(2)本実施形態では、収容管22の管軸L2方向と管軸L2の直交方向との相対移動をそれぞれ許容する支持構成としたことで、収容管22を通じて加速管12に掛かる揺れ荷重を十分小さく抑えることができる。加速管12においての破損等の懸念事項の解消をより十分に図れることが期待できる。
【0045】
(3)本実施形態の支持装置23は、スライド連結部25に組み込まれるスライドローラ25aと、収容管22に当接する一対の支持ローラ27a,27bとをローラ部材として有している。このようなローラ部材の転動を利用して収容管22の相対移動を許容する支持構成とすることで、収容管22の相対移動は円滑であり、加速管12に掛かる揺れ荷重を十分小さく抑えることができる。
【0046】
(4)本実施形態の支持装置23の一対の支持ローラ27a,27bは、収容管22の管軸L2を通る対称軸L6の両側の線対称位置に配置されて、収容管22の斜め下方の部位に当接して収容管22を支持している。このように少ない数のローラ部材にて、収容管22を安定して支持することができる。
【0047】
(5)本実施形態の支持装置23では、収容管22の載置にて収容管22を支持する支持構成としたことで、収容管22の設置は容易である。また、収容管22の載置方向とは逆方向である上方向への相対移動が特に規制されないため、このことでも加速管12に掛かる揺れ荷重を十分小さく抑えることが期待できる。
【0048】
(6)電子線照射装置10の電源装置14は比較的大型な装置であるため、電源装置14と加速管ユニット13との相互作用による加速管12の破損等の懸念はより高まる。そのため、本実施形態のように電源装置14と加速管ユニット13とに跨がって配置される収容管22の支持構成に対して適用する意義は大きい。
【0049】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0050】
・支持装置23による収容管22の支持構成を適宜変更してもよい。
例えば図5に示すように、スライド連結部25を省略して固定ベース部24と支持ベース部26とを互いに直接固定してもよい。なおこの場合、固定ベース部24と支持ベース部26とは一つのベース部材で作製可能である。図5に示す支持構成では、収容管22の管軸L3方向の相対移動が主として許容される態様である。つまり、収容管22の管軸L2方向の揺れは電源装置14と加速管ユニット13との間の相互作用で増大し得るため、図5に示す支持構成でも十分な効果が期待できる。
【0051】
支持ローラ27a,27bを一対用い、収容管22の管軸L2を通る対称軸L6の両側の線対称位置に配置するとともに収容管22の斜め下方の部位に当接させたが、収容管22に当接して支持するローラ部材の個数、配置位置は適宜変更してもよい。
【0052】
スライド連結部25に組み込まれるスライドローラ25aと、収容管22に当接する支持ローラ27a,27bといったローラ部材を用いたが、ローラ部材を用いる位置を適宜変更してもよい。また、いずれか一方のローラ部材の転動を利用する支持構成であってもよい。また、ローラ部材の転動を利用せず、例えば収容管22の相対移動を許容する単なる摩擦支持としてもよい。
【0053】
・収容管22の形状を適宜変更してもよい。図2にて示した収容管22は、一端部22aにクランク状の屈曲部分を有して構成されたもの、若しくは直線状に構成されたものであったが、これに限らない。例えば図6に示す収容管22は、中間部分に傾斜部分を有して一端部22a及び他端部22bが相互に平行に構成されている。図6に示す収容管22は、一端部22a及び他端部22bの管軸方向を主たる管軸L2方向としている。また、収容管22の管軸L2方向は少なくとも他端部22bの管軸を含む設定であったが、例えば図示しないが、収容管22の他端部22bが屈曲する形状をなしていてもよい。すなわち、収容管22の他端部22b以外の部分の管軸方向を主たる管軸L2方向とするものであってもよい。なお、収容管22の形状変更に対応して、圧力タンク20の連通通路20c等の形状変更もなされる。
【0054】
・電子線照射装置10の構成を適宜変更してもよい。
加速管ユニット13と跨がる電子線照射装置10の他装置として、電源装置14以外であってもよい。例えば電源装置14との間に中継装置を備えるものでは、他装置はその中継装置であってもよい。また、加速管ユニット13を複数備えるものでは、他装置はその相手側の加速管ユニット13であってもよい。
【0055】
・支持装置23及び電子線照射装置10の構成を上記変更例の他、適宜変更してもよい。
・本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【0056】
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)
フィラメント及び加速管を有し、前記フィラメントから生じた熱電子を前記加速管にて収束及び加速させて被照射物に照射するための電子線として生成する加速管ユニットを、絶縁ガスの充填される圧力タンク内に設置してなるものであり、
前記加速管は、複数の加速電極の間に筒状体を介挿させた積層構造をなし、
前記加速管ユニットの給電構成として、前記フィラメント及び前記加速電極への電源供給を行う給電ケーブルと、前記圧力タンク内の他装置と前記加速管ユニットとに跨がって設けられて前記給電ケーブルを挿通して支持する収容管とを備え、前記加速管の管軸方向に対して前記収容管の管軸方向を交差する態様にて前記収容管を配置してなる電子線照射装置であって、
前記収容管の前記加速管ユニットに対する支持構成として、前記加速管ユニットに設置され、少なくとも前記加速管ユニットと前記他装置との相互の近接離間する方向の前記収容管の相対移動を許容して支持する支持装置を備えて構成されている、電子線照射装置。
【0057】
(ロ)
前記支持装置は、更に前記加速管ユニットと前記他装置との相互の近接離間する方向の直交方向の相対移動を許容して支持する構成である、上記(イ)に記載の電子線照射装置。
【符号の説明】
【0058】
10…電子線照射装置
11…フィラメント
12…加速管
12a…加速電極
12b…ガラス筒状体(筒状体)
13…加速管ユニット
14…電源装置(他装置)
20…圧力タンク
21…給電ケーブル
22…収容管
22a…一端部
22b…他端部
23…支持装置
25a…スライドローラ(ローラ部材)
27a…支持ローラ(ローラ部材)
27b…支持ローラ(ローラ部材)
W…被照射物
e…電子線
L1…管軸(加速管の管軸方向)
L2…管軸(収容管の管軸方向)
L3…移動軸(管軸の直交方向)
L6…対称軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6