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特開2024-89461判定モデル学習装置、判定モデル学習方法、判定モデル学習プログラム、判定装置、判定方法、判定プログラム、および浄水施設
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089461
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】判定モデル学習装置、判定モデル学習方法、判定モデル学習プログラム、判定装置、判定方法、判定プログラム、および浄水施設
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/30 20060101AFI20240626BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B01D21/30 A
B01D21/01 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204841
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】権 大維
(72)【発明者】
【氏名】上中 哲也
(72)【発明者】
【氏名】布 光昭
(72)【発明者】
【氏名】松永 晃
(72)【発明者】
【氏名】チャン ティタントゥイ
(57)【要約】
【課題】凝集フロックの形成状態を迅速にかつ精度よく判定する。
【解決手段】モデル学習装置(14)は、凝集剤の注入率と、凝集剤の注入地点よりも上流側における液体の水質データと、凝集剤が注入された液体を撹拌することにより形成される凝集フロックを対象地点で撮影した複数のフロック画像の各々から得られる画像特徴量の標準偏差とを説明変数とし、対象地点における凝集フロックの形成状態を目的変数として機械学習を行うことにより、判定モデルを構築する学習部(41)を備え、対象地点は、フロック形成池の前半部分に位置し、複数のフロック画像は、水質データの測定地点から対象地点まで液体が移動する時間が経過した経過時点を含む所定期間内において単位時間毎に撮影したものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊固形物を含む液体に注入され前記浮遊固形物を凝集させる薬剤の注入率と、前記薬剤の注入地点よりも上流側における前記液体の濁度を含む水質データと、前記薬剤が注入された前記液体を撹拌することにより形成される凝集フロックを対象地点で撮影した複数のフロック画像の各々から得られる画像特徴量のばらつき度合とを説明変数とし、前記対象地点における前記凝集フロックの形成状態を目的変数として機械学習を行うことにより、判定モデルを構築する学習部を備え、
前記対象地点は、フロック形成池の前半部分に位置し、
前記複数のフロック画像は、前記水質データの測定地点から前記対象地点まで前記液体が移動する時間が経過した時点を含む所定期間内において単位時間毎に撮影したものである、
判定モデル学習装置。
【請求項2】
前記フロック形成池は、複数の形成池で構成され、
前記対象地点は、最上流の前記形成池に含まれる、請求項1に記載の判定モデル学習装置。
【請求項3】
前記画像特徴量は、1つの前記フロック画像に含まれる、
前記凝集フロックの個数、
前記凝集フロックの各々の面積、
前記面積の合計値、および、
前記凝集フロックの各々の周囲長、
の少なくともいずれかである、請求項1に記載の判定モデル学習装置。
【請求項4】
前記ばらつき度合は、標準偏差である、請求項1に記載の判定モデル学習装置。
【請求項5】
浮遊固形物を含む液体に注入され前記浮遊固形物を凝集させる薬剤の注入率と、前記薬剤の注入地点よりも上流側における前記液体の濁度を含む水質データと、前記薬剤が注入された前記液体を撹拌することにより形成される凝集フロックを対象地点で撮影した複数のフロック画像の各々から得られる画像特徴量のばらつき度合とを説明変数とし、前記対象地点における前記凝集フロックの形成状態を目的変数として機械学習を行うことにより、判定モデルを構築する学習ステップを含み、
前記対象地点は、フロック形成池の前半部分に位置し、
前記複数のフロック画像は、前記水質データの測定地点から前記対象地点まで前記液体が移動する時間が経過した時点を含む所定期間内において単位時間毎に撮影したものである、
判定モデル学習方法。
【請求項6】
請求項1に記載の判定モデル学習装置としてコンピュータを機能させるための判定モデル学習プログラムであって、前記学習部としてコンピュータを機能させるための判定モデル学習プログラム。
【請求項7】
浮遊固形物を含む液体に注入され前記浮遊固形物を凝集させる薬剤の注入率と、前記薬剤の注入よりも上流側における前記液体の濁度を含む水質データと、前記薬剤が注入された前記液体を撹拌することにより形成される凝集フロックを対象地点で撮影した複数のフロック画像の各々から得られる画像特徴量のばらつき度合とを説明変数とし、前記対象地点における前記凝集フロックの形成状態を目的変数として機械学習を行うことにより構築された判定モデルを用いて、前記形成状態を判定する判定部を備え、
前記対象地点は、フロック形成池の前半部分に位置し、
前記複数のフロック画像は、前記水質データの測定地点から前記対象地点まで前記液体が移動する時間が経過した時点を含む所定期間内において単位時間毎に撮影したものである、
判定装置。
【請求項8】
前記フロック形成池は、複数の形成池で構成され、
前記対象地点は、最上流の前記形成池に含まれる、請求項7に記載の判定装置。
【請求項9】
前記画像特徴量は、1つの前記フロック画像に含まれる、
前記凝集フロックの個数、
前記凝集フロックの各々の面積、
前記面積の合計値、および、
前記凝集フロックの各々の周囲長、
の少なくともいずれかである、請求項7に記載の判定装置。
【請求項10】
前記ばらつき度合は、標準偏差である、請求項7に記載の判定装置。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか1項に記載の判定装置を備える浄水施設。
【請求項12】
浮遊固形物を含む液体に注入され前記浮遊固形物を凝集させる薬剤の注入率と、前記薬剤の注入地点よりも上流側における前記液体の濁度を含む水質データと、前記薬剤が注入された前記液体を撹拌することにより形成される凝集フロックを対象地点で撮影した複数のフロック画像の各々から得られる画像特徴量のばらつき度合とを説明変数とし、前記対象地点における前記凝集フロックの形成状態を目的変数として機械学習を行うことにより構築された判定モデルを用いて、前記形成状態を判定する判定ステップを含み、
前記対象地点は、フロック形成池の前半部分に位置し、
前記複数のフロック画像は、前記水質データの測定地点から前記対象地点まで前記液体が移動する時間が経過した時点を含む所定期間内において単位時間毎に撮影したものである、
判定方法。
【請求項13】
請求項7に記載の判定装置としてコンピュータを機能させるための判定プログラムであって、前記判定部としてコンピュータを機能させるための判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊固形物を凝集させる薬剤が注入された液体を撹拌することにより形成される凝集フロックの形成状態を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の水処理システムは、まず、被処理水の水質を所定期間以下で測定すると共に、上記被処理水を処理した処理水の画像を所定期間以下で撮像する。次に、上記水処理システムは、撮像した画像に対して所定の画像処理を施した処理画像から特徴量を取得する。そして、上記水処理システムは、取得した特徴量と、上記測定した水質の値と、学習データとを用いて、被処理水への処理が適切であるか否かを判定し、判定結果を通知する。上記学習データは、例えば、上記特徴量と上記水質の値と上記処理水の凝集状態とに基づいてあらかじめ求めた関係式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-047039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記水処理システムの判定方法には、未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明の一態様は、薬剤が注入された液体を撹拌することにより形成される凝集フロックの形成状態を迅速にかつ精度よく判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る判定モデル学習装置は、浮遊固形物を含む液体に注入され前記浮遊固形物を凝集させる薬剤の注入率と、前記薬剤の注入地点よりも上流側における前記液体の濁度を含む水質データと、前記薬剤が注入された前記液体を撹拌することにより形成される凝集フロックを対象地点で撮影した複数のフロック画像の各々から得られる画像特徴量のばらつき度合とを説明変数とし、前記対象地点における前記凝集フロックの形成状態を目的変数として機械学習を行うことにより、判定モデルを構築する学習部を備え、前記対象地点は、フロック形成池の前半部分に位置し、前記複数のフロック画像は、前記水質データの測定地点から前記対象地点まで前記液体が移動する時間が経過した時点を含む所定期間内において単位時間毎に撮影したものである。
【0007】
本発明の別の態様に係る判定モデル学習方法は、浮遊固形物を含む液体に注入され前記浮遊固形物を凝集させる薬剤の注入率と、前記薬剤の注入地点よりも上流側における前記液体の濁度を含む水質データと、前記薬剤が注入された前記液体を撹拌することにより形成される凝集フロックを対象地点で撮影した複数のフロック画像の各々から得られる画像特徴量のばらつき度合とを説明変数とし、前記対象地点における前記凝集フロックの形成状態を目的変数として機械学習を行うことにより、判定モデルを構築する学習ステップを含み、前記対象地点は、フロック形成池の前半部分に位置し、前記複数のフロック画像は、前記水質データの測定地点から前記対象地点まで前記液体が移動する時間が経過した時点を含む所定期間内において単位時間毎に撮影したものである。
【0008】
本発明のさらに別の態様に係る判定装置は、浮遊固形物を含む液体に注入され前記浮遊固形物を凝集させる薬剤の注入率と、前記薬剤の注入よりも上流側における前記液体の濁度を含む水質データと、前記薬剤が注入された前記液体を撹拌することにより形成される凝集フロックを対象地点で撮影した複数のフロック画像の各々から得られる画像特徴量のばらつき度合とを説明変数とし、前記対象地点における前記凝集フロックの形成状態を目的変数として機械学習を行うことにより構築された判定モデルを用いて、前記形成状態を判定する判定部を備え、前記対象地点は、フロック形成池の前半部分に位置し、前記複数のフロック画像は、前記水質データの測定地点から前記対象地点まで前記液体が移動する時間が経過した時点を含む所定期間内において単位時間毎に撮影したものである。
【0009】
本発明のさらに別の態様に係る浄水施設は、上記構成の判定装置を備える。
【0010】
本発明のさらに別の態様に係る判定方法は、浮遊固形物を含む液体に注入され前記浮遊固形物を凝集させる薬剤の注入率と、前記薬剤の注入地点よりも上流側における前記液体の濁度を含む水質データと、前記薬剤が注入された前記液体を撹拌することにより形成される凝集フロックを対象地点で撮影した複数のフロック画像の各々から得られる画像特徴量のばらつき度合とを説明変数とし、前記対象地点における前記凝集フロックの形成状態を目的変数として機械学習を行うことにより構築された判定モデルを用いて、前記形成状態を判定する判定ステップを含み、前記対象地点は、フロック形成池の前半部分に位置し、前記複数のフロック画像は、前記水質データの測定地点から前記対象地点まで前記液体が移動する時間が経過した時点を含む所定期間内において単位時間毎に撮影したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、薬剤が注入された液体を撹拌することにより形成される凝集フロックの形成状態を迅速にかつ精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る水処理システムの概要を示す図である。
図2】上記水処理システムにおけるフロック判定システムの要部構成の一例を示すブロック図である。
図3】上記水処理システムにおける教師データ作成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】上記水処理システムにおけるモデル学習処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】上記水処理システムにおける判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】上記水処理システムの一実施例と、該実施例に対する比較例とにおける凝集フロックの形成状態の判定の正解率を、分類モデルごとに示す棒グラフである。
図7】上記水処理システムの別の実施例における凝集フロックの形成状態の判定の正解率を表形式で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図1図5を参照して説明する。
【0014】
(水処理システム)
図1は、本実施形態に係る水処理システムの概要を示す図である。本実施形態の水処理システム1は、例えば浄水施設であり、例えば河川等から浄水施設に流入する原水に含まれる懸濁物質等の浮遊固形物を、凝集剤によって凝集させ、重力沈降によって原水から分離する凝集沈殿プロセスを実現するものである。図1に示すように、水処理システム1は、上記凝集沈殿プロセスを実現する設備として、着水井101、急速混和池102、フロック形成池103、および沈澱池104を備える。
【0015】
着水井101は、導水管によって送られてくる原水による水面の動揺を抑制し、着水井101以降の設備に送られる原水の水理的な安定性を確保するための槽である。着水井101には水質計111が設けられている。水質計111は、着水井101に着水した原水の水質を測定する。当該水質は、少なくとも濁度であり、他の例として、色度、水温、導電率、pH(水素イオン濃度指数)、アルカリ度(酸消費量)、紫外線吸光度等が挙げられる。水質計111によって測定された水質を示す水質データは、フロック判定システム2に入力される。
【0016】
着水井101と急速混和池102との間の導水管105には流量計112が設けられている。流量計112は、着水井101から急速混和池102に送られる処理水の流量を測定する。流量計112によって測定された流量のデータは、凝集剤注入装置113に入力される。
【0017】
急速混和池102は、着水井101から送られてきた原水に凝集剤を注入して、急速撹拌するための混和池である。ここで、凝集剤とは、原水に含まれる物質を凝集させるための薬剤である。凝集剤は、例えばポリ塩化アルミニウム(PAC:PolyAluminumChloride)や硫酸アルミニウム(硫酸バンド)等の薬剤であり、凝集剤注入装置113によって急速混和池102に注入される。具体的には、凝集剤注入装置113は、流量計112からの流量のデータと、設定された注入率とに基づいて、凝集剤の注入量を決定して急速混和池102に注入する。上記注入率は、フロック判定システム2に入力される。
【0018】
また、急速混和池102には、上記急速撹拌を行うための急速撹拌機114が設けられている。急速撹拌機114は、例えば、フラッシュミキサである。急速撹拌機114は、一定の撹拌速度で動作するものであってもよいし、モータの制御によって撹拌速度を調節できるものであってもよい。急速混和池102では、凝集剤の注入と、急速撹拌機114の撹拌とによって微小な凝集フロックが形成される。このような微小な凝集フロックを含む処理水は後段のフロック形成池103に送られ、フロック形成池103以降の設備において凝集フロックのさらなる集塊化が促進される。
【0019】
フロック形成池103は、処理水中においてより大きな凝集フロックを形成するための撹拌槽である。フロック形成池103は複数の形成池を含み、各形成池には緩速撹拌機115が設けられている。緩速撹拌機115による処理水の撹拌によって凝集フロックのさらなる集塊化が促進される。緩速撹拌機115は、例えばフロキュレータである。フロック形成池103の処理水は、所定時間の撹拌の後に後段の沈澱池104に送られる。
【0020】
また、フロック形成池103にはカメラ116が設けられている。カメラ116は、具体的には、フロック形成池103の前半部分に配置され、より具体的には、フロック形成池103における複数の形成池のうち、最上流の形成池に配置される。
【0021】
カメラ116は、フロック形成池103にて形成された凝集フロックを撮影する。当該凝集フロックの撮影画像(以下、「フロック画像」と称する。)は、画像処理装置117に入力される。
【0022】
画像処理装置117は、単位時間毎に撮影された上記フロック画像に対し、二値化処理等の画像処理を行って、凝集フロックの画像特徴量を抽出する。該画像特徴量は、上記凝集フロックの個数、上記凝集フロックの各々の面積、該面積の合計値、および、上記凝集フロックの各々の周囲長の少なくともいずれかである。作業者は、上記撮影画像および上記画像特徴量を参照して、上記凝集フロックの形成状態を確認することができる。上記画像特徴量のデータは、フロック判定システム2に入力される。
【0023】
上記凝集フロックの形成状態が良好である場合の例としては、原水の水質データに対して、凝集フロックの量、サイズなどが適度である場合、上記凝集フロックの形状が球形に近い場合、などが挙げられる。一方、上記凝集フロックの形成状態が不良である場合の例としては、原水の水質データに対して、凝集フロックの量、サイズなどが過剰または不足である場合、上記凝集フロックの形状が不定形である場合、などが挙げられる。
【0024】
なお、凝集フロックの形成状態の良否は、上記凝集フロックの径、面積、体積、外周長など、或いは、これらを組み合わせて算出する値など、を用いて判定すればよい。これらの値は、上記撮影画像から直接計測により求めてもよいし、画像解析手法を用いて画像処理装置117が算出してもよい。また、凝集フロックの形成状態は、良否の2段階で表現してもよいし、5段階・10段階等の多段階で表現してもよいし、上記形成状態に対応する何らかの数値で表現してもよい。
【0025】
沈澱池104は、フロック形成池103からの流入水に含まれる集塊化した凝集フロックを沈降分離するための池である。上記流入水が沈澱池104に所定時間(例えば1~3時間程度)滞留することにより、フロック形成池103において形成された粒径の大きな凝集フロックが重力により沈降する。これにより、凝集フロックが処理水から分離され、その上澄み液が沈澱水として、図示しない濾過池に送られる。なお、沈澱池104の後段には、上記濾過池に送られる処理水に対してオゾン処理や生物活性炭処理等の付加的な処理を施す設備が設けられてもよい。また、沈澱池104に沈澱した凝集フロックは汚泥として引き抜かれ、図示しない汚泥処理設備に送られる。
【0026】
上記濾過池は、沈澱池104から流入する沈澱水を濾過する濾過設備を備えた池である。上記濾過池では、沈澱水に残留する微小な固形物が濾過によって分離される。濾過された沈澱水は塩素剤によって消毒された後、水道水として需要者に供給される。
【0027】
(フロック判定システム)
図1に示すように、水処理システム1は、フロック判定システム2を備える。フロック判定システム2は、上記原水の水質データと、上記凝集剤の注入率と、上記フロック画像の画像特徴量とを用いて、カメラ116が設けられた地点(対象地点)における凝集フロックの形成状態を判定するものである。
【0028】
ここで、上記注入率は、原水に注入する凝集剤の、原水に対する割合である。上記注入率は、ジャーテストの結果、過去の知見、所定の計算式などを用いて決定されている。なお、フロック判定システム2は、ハードウェアおよびソフトウェアの構成群を備えた1台の情報処理装置によって構成されてもよいし、複数台の情報処理装置によって構成されてもよい。
【0029】
図2は、フロック判定システム2の要部構成の一例を示すブロック図である。フロック判定システム2は、入力装置11、記憶装置12、教師データ作成装置13、モデル学習装置14(判定モデル学習装置)、判定装置15、および出力装置16を含んでいる。
【0030】
入力装置11は、ユーザの入力を受け付け、当該入力に基づく入力信号を、各種装置へ出力する。また、入力装置11は、外部の装置(例えば、水質計111、凝集剤注入装置113、画像処理装置117など)から出力された情報を入力データとして受信し、受信した入力データを記憶装置12へ出力する。
【0031】
出力装置16は、判定装置15が生成した情報を出力する。出力装置16による出力方法は特に限定されない。例えば、出力装置16は、当該情報を画像として表示する表示装置であってもよいし、当該情報を音声として出力する音声出力装置であってもよいし、出力信号を他の入力装置に送信する信号送信装置であってもよい。
【0032】
記憶装置12は、フロック判定システム2にて使用されるプログラムおよびデータを保持する。記憶装置12は、入力データ記憶部21、教師データ記憶部22、および判定モデル記憶部23を含む。入力データ記憶部21は、入力装置11からの入力データを記憶する。具体的には、入力データ記憶部21は、外部の装置から入力装置11を介して出力された、上記原水の水質データ、上記凝集剤の注入率、および上記フロック画像の画像特徴量と、ユーザから入力装置11を介して出力された凝集フロックの形成状態とを記憶する。なお、教師データ記憶部22および判定モデル記憶部23が保持(記憶)するデータについては後述する。
【0033】
(教師データ作成装置)
教師データ作成装置13は、モデル学習装置14が機械学習する場合に用いられる教師データ群を作成する。教師データ作成装置13は、ハードウェアおよびソフトウェアの構成群を備えた1台の情報処理装置によって構成されてもよいし、複数台の情報処理装置によって構成されてもよい。本実施形態では、説明の簡略化のために、教師データ作成装置13は1台の情報処理装置によって構成されるものとして説明する。
【0034】
教師データ作成装置13は、制御部30を備えている。制御部30は、教師データ作成装置13の各部を統括して制御する。制御部30は、一例として、プロセッサおよびメモリにより実現される。この例において、プロセッサは、ストレージ(不図示)にアクセスし、ストレージに格納されているプログラム(不図示)をメモリにロードし、当該プログラムに含まれる一連の命令を実行する。これにより、制御部30に含まれている各部が構成される。
【0035】
制御部30は、説明変数作成部31および目的変数作成部32を含む。説明変数作成部31は、入力データ記憶部21に記憶された入力データを用いて、説明変数を作成する。目的変数作成部32は、入力データ記憶部21に記憶された凝集フロックの形成状態を用いて、目的変数を作成する。説明変数作成部31が作成した説明変数と、目的変数作成部32が作成した目的変数との組合せを教師データとして教師データ記憶部22に記憶する。
【0036】
具体的には、上記教師データの説明変数は、或る測定時点における水質データおよび注入率を含む。さらに、上記説明変数は、上記測定時点における水質データの測定地点(水質計111の設置地点)の原水が処理されて、対象地点(カメラ116の設置地点)まで移動する時間が経過した時点(以下、「経過時点」と称する。)を含む所定期間(例えば1分間)内において、単位時間毎(例えば10秒)に撮影された複数のフロック画像から算出された複数の画像特徴量の標準偏差(以下、「経過時点における標準偏差」と称する。)を含む。また、上記教師データの目的変数は、上記経過時点における凝集フロックの形成状態である。なお、上記標準偏差以外にも、例えば、分散、最大値および最小値、尖度、歪度など、上記複数の画像特徴量に関する種々のばらつき度合を利用することができる。
【0037】
(モデル学習装置)
モデル学習装置14は、教師データ記憶部22に記憶された、教師データの集合である教師データ群を用いて、上記経過時点における凝集フロックの形成状態を判定するための判定モデルを機械学習する。モデル学習装置14は、ハードウェアおよびソフトウェアの構成群を備えた1台の情報処理装置によって構成されてもよいし、複数台の情報処理装置によって構成されてもよい。本実施形態では、説明の簡略化のために、モデル学習装置14は1台の情報処理装置によって構成されるものとして説明する。
【0038】
モデル学習装置14は、制御部40を備えている。制御部40は、モデル学習装置14の各部を統括して制御する。なお、制御部40は、制御部30と同様のハードウェア構成であるので、その説明を省略する。
【0039】
制御部40は学習部41を含む。学習部41は、教師データ記憶部22から読み出した、教師データ群を用いて機械学習を行い、学習モデルとしての判定モデルを構築する。上記教師データ群における各教師データについて、上記測定時点における水質データおよび注入率と、上記経過時点における標準偏差とが説明変数であり、上記経過時点における凝集フロックの形成状態が目的変数である。
【0040】
学習部41は、例えば、ランダムフォレスト(RF:Random Forest)、勾配ブースティング(GBR:Gradient Boosted tree Regression)またはニューラルネットワーク(NN:Neural Network)により得られる分類モデルを上記判定モデルとして生成する。記憶装置12の判定モデル記憶部23は、上記判定モデルを記憶する。
【0041】
以上のように、本実施形態のモデル学習装置14は、凝集剤注入装置113が注入する凝集剤の注入率と、上記凝集剤の注入地点よりも上流側に設置された水質計111が測定する水質データと、急速混和池102にて上記凝集剤が注入された液体を急速撹拌機114が撹拌することにより形成される凝集フロックを対象地点でカメラ116が撮影した複数のフロック画像の各々から画像処理装置117が算出する画像特徴量の標準偏差とを説明変数とし、上記対象地点における上記凝集フロックの形成状態を目的変数として機械学習を行うことにより、判定モデルを構築する学習部41を備え、上記対象地点は、フロック形成池103の前半部分に位置し、上記複数のフロック画像は、上記水質データの測定地点から上記対象地点まで上記液体が移動する時間が経過した経過時点を含む所定期間内において単位時間毎に撮影したものである。
【0042】
上記の構成によれば、凝集フロックを撮影する対象地点がフロック形成池103の前半部分に位置するので、上記対象地点がフロック形成池103の後半部分に位置する場合に比べて、凝集フロックの形成状態を迅速に判定する判定モデルを構築することができる。その結果、上記形成状態が悪い場合にも迅速に対応して、上記形成状態を改善することができる。また、上記凝集剤の注入前における液体(原水)の濁度を含む水質データだけでなく、上記凝集剤の注入率と、フロック画像の各々から得られる画像特徴量の標準偏差とを、説明変数に含めて機械学習を行うことにより、精度のよい判定モデルを構築することができる。
【0043】
また、上記複数のフロック画像は、上記水質データの測定地点から上記対象地点まで上記液体が移動する時間が経過した経過時点を含む所定期間内において単位時間毎に撮影したものである。従って、同じ液体に関する上記注入率、上記水質データ、および上記画像特徴量の標準偏差を説明変数として機械学習を行うので、さらに精度のよい判定モデルを構築することができる。従って、構築された判定モデルを用いることにより、測定時点の水質データおよび注入率と、経過時点における画像特徴量の標準偏差とから、凝集フロックの形成状態を迅速にかつ精度よく判定することができる。
【0044】
(判定装置)
判定装置15は、記憶装置12の判定モデル記憶部23に記憶された判定モデルを用いて、対象地点における直近の凝集フロックの形成状態を判定する。判定装置15は、ハードウェアおよびソフトウェアの構成群を備えた1台の情報処理装置によって構成されてもよいし、複数台の情報処理装置によって構成されてもよい。本実施形態では、説明の簡略化のために、判定装置15は1台の情報処理装置によって構成されるものとして説明する。
【0045】
判定装置15は、制御部50を備えている。制御部50は、判定装置15の各部を統括して制御する。なお、制御部50は、制御部30と同様のハードウェア構成であるので、その説明を省略する。
【0046】
制御部50は判定部51を含む。判定部51は、入力データ記憶部21に記憶された入力データを用いて、直近の説明変数を作成する。該直近の説明変数は、直近の経過時点における標準偏差と、上記直近の経過時点に対応する上記測定時点における水質データおよび注入率とである。次に、判定部51は、判定モデル記憶部23から読み出した判定モデルを用いて、上記直近の説明変数から、上記対象地点における上記直近の経過時点の凝集フロックの形成状態を判定する。そして、判定部51は、判定結果を出力装置16に出力させる。
【0047】
以上のように、本実施形態の判定装置15は、凝集剤注入装置113が注入する凝集剤の注入率と、上記凝集剤の注入地点よりも上流側に設置された水質計111が測定する水質データと、急速混和池102にて上記凝集剤が注入された液体を急速撹拌機114が撹拌することにより形成される凝集フロックを対象地点でカメラ116が撮影した複数のフロック画像の各々から画像処理装置117が算出する画像特徴量の標準偏差とを説明変数とし、上記対象地点における上記凝集フロックの形成状態を目的変数として、モデル学習装置14が機械学習を行うことにより構築された判定モデルを用いて、凝集フロックの形成状態を判定する判定部51を備え、上記対象地点は、フロック形成池103の前半部分に位置し、上記複数のフロック画像は、上記水質データの測定地点から上記対象地点まで上記液体が移動する時間が経過した経過時点を含む所定期間内において単位時間毎に撮影したものである。
【0048】
上記の構成によれば、凝集フロックを撮影する対象地点がフロック形成池103の前半部分に位置するので、上記対象地点がフロック形成池103の後半部分に位置する場合に比べて、凝集フロックの形成状態を迅速に判定することができる。その結果、上記形成状態が悪い場合にも迅速に対応して、前記形成状態を改善することができる。
【0049】
また、凝集剤の注入前における液体(原水)の濁度を含む水質データだけでなく、上記凝集剤の注入率と、フロック画像の各々から得られる画像特徴量の標準偏差とを、説明変数に含めて機械学習を行うことにより構築された判定モデルを利用することにより、上記形成状態を精度よく判定することができる。
【0050】
また、上記複数のフロック画像は、上記水質データの測定地点から上記対象地点まで上記液体が移動する時間が経過した経過時点を含む所定期間内において単位時間毎に撮影したものである。従って、同じ液体に関する上記注入率、上記水質データ、および上記画像特徴量の標準偏差を説明変数として機械学習を行うことにより構築された判定モデルを利用することにより、上記形成状態をさらに精度よく判定することができる。
【0051】
(教師データ作成処理)
図3は、上記構成の水処理システム1における教師データ作成処理の流れの一例を示すフローチャートである。図3に示すように、まず、説明変数作成部31は、入力データ記憶部21から、或る測定時点における水質データおよび注入率を取得する(ステップS11、以下「ステップ」の記載を省略する。)。また、説明変数作成部31は、入力データ記憶部21から、上記測定時点に対応する経過時点を含む所定期間内における複数の画像特徴量を取得し、該複数の画像特徴量の標準偏差を算出する(S12)。
【0052】
一方、目的変数作成部32は、入力データ記憶部21から上記経過時点における凝集フロックの形成状態を取得する(S13)。なお、S11~S13の順序は任意である。
【0053】
次に、説明変数作成部31および目的変数作成部32は、上記測定時点における水質データおよび注入率と、上記経過時点における標準偏差とを説明変数とし、上記経過時点における凝集フロックの形成状態を目的変数とし、上記説明変数および上記目的変数の組合せを教師データとして、教師データ記憶部22に記憶する(S14)。その後、S11に戻って、上記教師データ作成処理を繰り返す。これにより、教師データ記憶部22に教師データ群が記憶される。
【0054】
(モデル学習処理)
図4は、上記構成の水処理システム1におけるモデル学習処理(判定モデル学習方法)の流れの一例を示すフローチャートである。図4に示すように、まず、学習部41は、教師データ記憶部22から教師データ群を取得する(S21)。次に、学習部41は、取得した教師データ群を用いて、判定モデルを機械学習する(S22、学習ステップ)。そして、学習部41は、機械学習した判定モデルを判定モデル記憶部23に記憶する(S23)。その後、上記モデル学習処理を終了する。
【0055】
(判定処理)
図5は、上記構成の水処理システム1における判定処理(判定方法)の流れの一例を示すフローチャートである。図5に示すように、まず、判定部51は、入力データ記憶部21から、直近の経過時点を含む所定期間内における複数の画像特徴量を取得し、該複数の画像特徴量の標準偏差を算出する(S31)。また、判定部51は、上記直近の経過時点に対応する測定時点における水質データおよび注入率を取得する(S32)。なお、S31およびS32の順序は任意である。
【0056】
次に、判定部51は、判定モデル記憶部23から判定モデルを取得し、該判定モデルを用いて、上記水質データ、上記注入率、および上記標準偏差から、上記対象地点における上記直近の経過時点の凝集フロックの形成状態を判定する(S33、判定ステップ)。そして、判定部51は、判定結果を出力装置16に出力させる(S34)。その後、上記判定処理を終了する。
【0057】
〔実施例1〕
上記構成のフロック判定システム2の一実施例および比較例について、図6を参照して説明する。
【0058】
本実施例では、所定期間における画像特徴量の標準偏差は、1分間における6枚のフロック画像から算出された、凝集フロックの面積の標準偏差である。図2に示す教師データ記憶部22に記憶された説明変数および目的変数を用いて、種々の分類モデルを判定モデルとして機械学習した。そして、機械学習された判定モデルを用いて凝集フロックの形成状態を判定し、実際の形成状態との正誤を調べた。
【0059】
上記分類モデルとしては、LDA(線形判別分析、Linear Discriminant Analysis)、LSVM(線形サポートベクターマシン、Linear Support Vector Machine)、NLSVM(非線形サポートベクターマシン、Non-Linear Support Vector Machine)、QDA(二次判別分析、Quadratic Discriminant Analysis)、kNNC(k近傍法によるクラス分類、k-Nearest Neighbor Classification)、NB(単純ベイズ分類器、Naive Bayes classifier)、DT(決定木、Decision Tree)、RF(ランダムフォレスト、Random Forests)、およびGPC(ガウスプロセス分類、Gaussian Process Classification)を利用した。
【0060】
一方、比較例は、上記実施例に比べて、教師データにおける説明変数から、上記標準偏差を省略した点が異なり、その他は同様とした。
【0061】
図6は、実施例および比較例における凝集フロックの形成状態の判定の正解率(精度)を、分類モデルごとに示す棒グラフである。図6において、実施例のグラフは白抜きで示しており、比較例のグラフはハッチングで示している。
【0062】
図6に示すように、大部分の分類モデルについて、上記判定の正解率は、比較例に比べて実施例の方が上昇した。また、残りの分類モデルについて、上記判定の正解率は、実施例と比較例とで同じであった。すなわち、上記判定の正解率は、比較例に比べて実施例の方が低下することは無かった。
【0063】
〔実施例2〕
上記構成のフロック判定システム2の別の実施例について、図7を参照して説明する。
【0064】
図2に示す教師データ記憶部22に記憶された説明変数には、「経過時点を含む所定期間における画像特徴量の標準偏差」が含まれている。本実施例では、上記画像特徴量として、上記凝集フロックの個数、上記凝集フロックの各々の面積、該面積の合計値、および、上記凝集フロックの各々の周囲長を利用した。また、上記標準偏差に代えて、10、25、50、75、および90パーセンタイル値、最大値および最小値、並びに平均値および標準偏差を含むばらつき度合を上記説明変数に追加した。また、所定期間における画像特徴量のばらつき度合は、1分間における6枚のフロック画像から算出された、画像特徴量のばらつき度合である。
【0065】
本実施例の上記説明変数と、図2に示す教師データ記憶部22に記憶された目的変数とを用いて、種々の分類モデルを判定モデルとして機械学習した。上記分類モデルとしては、上述のLDA、LSVM、NLSVM、kNNC、NB、DT、およびRFを利用した。そして、機械学習された判定モデルを用いて凝集フロックの形成状態を判定し、実際の形成状態との正誤を調べた。さらに、本実施例では、上記画像特徴量の標準偏差の幾つかを除外して機械学習された判定モデルを用いて凝集フロックの形成状態を判定し、実際の形成状態との正誤を調べた。
【0066】
図7は、本実施例における凝集フロックの形成状態の判定の正解率を表形式で示す図である。図7において、項目「test0」は、上記画像特徴量の標準偏差の全て(上記凝集フロックの個数、上記凝集フロックの各々の面積、該面積の合計値、および、上記凝集フロックの各々の周囲長の標準偏差)を利用した場合を示している。また、項目「test1」は、上記画像特徴量の標準偏差のうち、上記凝集フロックの個数の標準偏差を除外した場合を示している。
【0067】
また、項目「test2」は、上記画像特徴量の標準偏差のうち、上記凝集フロックの各々の面積の標準偏差を除外した場合を示している。また、項目「test3」は、上記画像特徴量の標準偏差のうち、上記凝集フロックの各々の面積の合計値の標準偏差を除外した場合を示している。また、項目「test4」は、上記画像特徴量の標準偏差のうち、上記凝集フロックの各々の周囲長の標準偏差を除外した場合を示している。また、項目「test5」は、上記画像特徴量の標準偏差の全てを除外した場合を示している。
【0068】
図7に示すように、上記画像特徴量の標準偏差の全てを利用した場合(test0)の上記判定の正解率は、他の場合(test1~test5)と同じか、或いは高かった。これに対し、上記画像特徴量の標準偏差のうち、上記凝集フロックの個数の標準偏差を除外した場合(test1)と、上記凝集フロックの各々の面積の合計値の標準偏差を除外した場合(test3)とは、test0の場合に比べて、LSVMおよびDTの各分類モデルを用いた上記判定の正解率が低下した。
【0069】
また、上記画像特徴量の標準偏差のうち、上記凝集フロックの各々の面積の標準偏差を除外した場合(test2)と、上記凝集フロックの各々の周囲長の標準偏差を除外した場合(test4)とは、test0の場合に比べて、LSVM、kNNC、およびDTの各分類モデルを用いた上記判定の正解率が低下した。そして、上記画像特徴量の標準偏差の全てを除外した場合(test5)は、test0の場合に比べて、LSVM、kNNC、およびDTの各分類モデルを用いた上記判定の正解率が低下した。
【0070】
ところで、近時注目されているアンサンブル学習は、機械学習された複数の推定モデルを用いて推定した複数の推定結果を最終的に多数決で決定するものである。このようなアンサンブル学習の利用を考慮すると、或る説明変数を除外することにより上記推定結果の正解率が低下するような推定モデルが多いほど、上記説明変数の上記正解率への寄与度が高いと考えられる。従って、図7を参照すると、画像特徴量の標準偏差は、上記判定の正解率への寄与度が高く、このうち、上記凝集フロックの各々の面積の標準偏差と、上記凝集フロックの各々の周囲長の標準偏差とが、上記判定の正解率への寄与度がさらに高いことが理解できる。
【0071】
(付記事項)
なお、凝集フロックの形成状態が不良であるとの判定結果を出力装置16が出力した場合、ユーザは、上記判定結果に基づいて、注入率を再設定し、フロック判定システム2を介して凝集剤注入装置113に指示してもよい。この場合、凝集フロックの形成状態を改善することができる。
【0072】
〔ソフトウェアによる実現例〕
フロック判定システム2(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部30・40・50に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0073】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0074】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0075】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0076】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1 水処理システム
2 フロック判定システム
11 入力装置
12 記憶装置
13 教師データ作成装置
14 モデル学習装置(判定モデル学習装置)
15 判定装置
16 出力装置
21 入力データ記憶部
22 教師データ記憶部
23 判定モデル記憶部
30、40、50 制御部
31 説明変数作成部
32 目的変数作成部
41 学習部
51 判定部
101 着水井
102 急速混和池
103 フロック形成池
104 沈澱池
105 導水管
111 水質計
112 流量計
113 凝集剤注入装置
114 急速撹拌機
115 緩速撹拌機
116 カメラ
117 画像処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7