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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089464
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】硬化性組成物および硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/04 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
C08F290/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204845
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀典
(72)【発明者】
【氏名】玉井 仁
(72)【発明者】
【氏名】吉橋 健一
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA01
4J127BA051
4J127BA052
4J127BB022
4J127BB031
4J127BB091
4J127BB092
4J127BB102
4J127BB111
4J127BB221
4J127BB222
4J127BC021
4J127BC022
4J127BC131
4J127BC132
4J127BD061
4J127BD062
4J127BE341
4J127BE342
4J127BE34Y
4J127BG171
4J127BG172
4J127CB341
4J127EA13
4J127FA14
4J127FA15
(57)【要約】
【課題】圧縮永久歪と、破断時伸びと、に優れる硬化物を提供し得る、硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る硬化性組成物は、1分子当たり平均して1.8個以上の(メタ)アクリロイル基を分子の末端に有する(メタ)アクリル系重合体(A)と、1分子当たり平均して0.8~1.0個の(メタ)アクリロイル基を分子の一方の末端に有する(メタ)アクリル系重合体(B)と、多官能(メタ)アクリルモノマー(C)と、ラジカル開始剤(D)と、を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子当たり平均して1.8個以上の(メタ)アクリロイル基を分子の末端に有する(メタ)アクリル系重合体(A)と、
1分子当たり平均して0.8~1.0個の(メタ)アクリロイル基を分子の一方の末端に有する(メタ)アクリル系重合体(B)と、
多官能(メタ)アクリルモノマー(C)と、
ラジカル開始剤(D)と、
を含有する硬化性組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)および前記(メタ)アクリル系重合体(B)の少なくともいずれか一方の分子量分布(Mw/Mn)が1.8以下である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)は、ポリ(アクリル酸n-ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2-メトキシエチル)共重合体である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系重合体(B)は、ポリ(アクリル酸n-ブチル)である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、前記(メタ)アクリル系重合体(B)を5~50重量部含有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対し、前記多官能(メタ)アクリルモノマー(C)を0.5~2.0重量部含有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記多官能(メタ)アクリルモノマー(C)は、1分子当たり平均して2.5~3.5個の(メタ)アクリロイル基を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記ラジカル開始剤(D)は、光ラジカル開始剤である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
さらに、酸化防止剤(E)を含有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
さらに、単官能(メタ)アクリルモノマー(F)を含有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化してなる、硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム材料は、建築、自動車等様々な分野において、接着剤、シール材および封止材等として利用されている。
【0003】
このようなゴム材料に好適なものとして、これまでに末端に(メタ)アクリロイル基を有し、主鎖がリビングラジカル重合により得られる(メタ)アクリル系重合体およびそれらを用いた硬化性組成物について報告されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-147616号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術では、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物において、優れた圧縮永久歪と、破断時伸びと、を両立することが困難であり、この観点から改善の余地があった。
【0006】
上記のような状況にあって、本発明の一態様は、圧縮永久歪と、破断時伸びと、に優れる硬化物を提供し得る、硬化性組成物を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る硬化性組成物は、1分子当たり平均して1.8個以上の(メタ)アクリロイル基を分子の末端に有する(メタ)アクリル系重合体(A)と、1分子当たり平均して0.8~1.0個の(メタ)アクリロイル基を分子の一方の末端に有する(メタ)アクリル系重合体(B)と、多官能(メタ)アクリルモノマー(C)と、ラジカル開始剤(D)と、を含有する硬化性組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、圧縮永久歪と、破断時伸びと、に優れる硬化物を提供し得る、硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について、以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0010】
〔1.硬化性組成物〕
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物(以下、「本硬化性組成物」と称する場合がある)は、1分子当たり平均して1.8個以上の(メタ)アクリロイル基を分子の末端に有する(メタ)アクリル系重合体(A)と、1分子当たり平均して0.8~1.0個の(メタ)アクリロイル基を分子の一方の末端に有する(メタ)アクリル系重合体(B)と、多官能(メタ)アクリルモノマー(C)と、ラジカル開始剤(D)と、を含有する。
【0011】
(メタ)アクリロイル基を分子の末端に有する(メタ)アクリル系重合体からなる硬化性組成物を硬化してなる硬化物は、圧縮永久歪(C-Set、CS)に優れる硬化物であるとされていた。しかしながら、近年では、より優れた圧縮永久歪を有する硬化物の需要が高まっている。このような状況にあって、本発明者らは、より優れた圧縮永久歪を有する硬化物を提供すべく鋭意検討した結果、(メタ)アクリロイル基を分子の末端に有する(メタ)アクリル系重合体からなる硬化性組成物に多官能アクリルモノマーを配合することで、硬化物の圧縮永久歪を向上できるとの知見を得た。
【0012】
しかしながら、(メタ)アクリロイル基を分子の末端に有する(メタ)アクリル系重合体および多官能アクリルモノマーからなる硬化性組成物には、得られる硬化物の機械物性、特に、破断時伸びが低下するという問題があることを本発明者らは新たに見出した。
【0013】
上記のような状況にあって、本発明者らは、優れた破断時伸びを維持しつつ、より優れた圧縮永久歪を有する硬化物を提供すべくさらに鋭意検討した結果、(メタ)アクリロイル基を分子の末端に有する(メタ)アクリル系重合体および多官能アクリルモノマーからなる硬化性組成物に、さらに、(メタ)アクリロイル基を分子の一方の末端に有する(メタ)アクリル系重合体を配合してなる硬化性組成物によれば、優れた破断時伸びを有し、かつ、より優れた圧縮永久歪を有する硬化物を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
<(メタ)アクリル系重合体(A)>
(メタ)アクリル系重合体(A)は、1分子当たり平均して1.8個以上の(メタ)アクリロイル基を分子の末端に有する。本発明の一実施形態において、(メタ)アクリロイル基とは、下記一般式(1)で表される構造を有する基であり得る。
-OC(O)C(R)=CH (1)
(式中、Rは、水素原子または炭素数1~20の有機基を表す。)
としては、-H、-CH、-CHCH、-(CHCH(nは2~19の整数を表す)、-C(フェニル基)、-CHOH、-CN等が挙げられる。(メタ)アクリル系重合体(A)の反応性の観点からは、Rとしては、-Hまたは-CHが好ましい。
【0015】
(メタ)アクリル系重合体(A)の1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数は、1.8個以上であり、1.9個以上であってもよい。一方、(メタ)アクリロイル基の数の上限は、特に限定されないが、硬化物の柔軟性の観点から、好ましくは2.0個以下であり、より好ましくは2.0個未満である。
【0016】
(メタ)アクリル系重合体(A)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した場合に、好ましくは3,000~100,000であり、より好ましくは10,000~90,000であり、さらに好ましくは30,000~80,000である。数平均分子量が3,000以上であれば、硬化物の柔軟性およびゴム弾性を十分に得ることができる。数平均分子量が100,000以下であれば、重合体の粘度を抑えることができ、取扱いが容易である。本明細書において、GPC測定は、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
【0017】
(メタ)アクリル系重合体(A)の主鎖を構成する(メタ)アクリルモノマーは、特に限定されない。(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で用いてもよいし、複数種類を共重合させてもよい。
【0018】
(メタ)アクリル系重合体(A)は、炭素数1~3のアルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を有することが好ましい。炭素数1~3のアルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチルが挙げられる。(メタ)アクリル系重合体(A)は、炭素数1~3のアルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を、全繰り返し単位中に1~35重量%有することが好ましい。
【0019】
(メタ)アクリル系重合体(A)は、炭素数3~5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、炭素数1~2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(モノマー)および炭素数1~3のアルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル(モノマー)の共重合体である、(メタ)アクリル系重合体(A1)であることが好ましい。(メタ)アクリル系重合体(A1)の主鎖を構成するモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチルが挙げられる。特に、耐油性に優れるという利点があることから、(メタ)アクリル系重合体(A1)の主鎖を構成するモノマーとしては、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸2-メトキシエチルを組み合わせて使用することが好ましい。すなわち、本硬化性組成物含有する(メタ)アクリル系重合体(A)としては、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸2-メトキシエチルからなる主鎖を有する、ポリ(アクリル酸n-ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2-メトキシエチル)共重合体が特に好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル系重合体(A1)は、炭素数3~5のアルキル基を有するアクリル酸エステル、炭素数1~2のアルキル基を有するアクリル酸エステルおよび炭素数1~3のアルコキシ基を有するアクリル酸エステル由来の繰り返し単位を、(メタ)アクリル系重合体(A1)を構成する全繰り返し単位の80重量%以上有することが好ましく、90重量%以上有することがより好ましく、95重量%以上有することがさらに好ましく、上限は100重量%以下が好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル系重合体(A1)を構成する、炭素数3~5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、炭素数1~2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび炭素数1~3のアルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの比率(炭素数3~5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー/炭素数1~2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー/炭素数1~3のアルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー)は、80~15/19~50/1~35が好ましい。
【0022】
(メタ)アクリル系重合体(A)の分子量分布は、好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.7以下であり、さらに好ましくは1.6以下であり、よりさらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。分子量分布の理論上の下限は、1である。前記分子量分布は、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)である。分子量分布が1.8以下であれば、得られる硬化物の機械物性のコントロールが容易である。
【0023】
(メタ)アクリル系重合体(A)のTgは、特に限定されないが、例えば、-130~0℃であってもよく、-80~-20℃であってもよい。(メタ)アクリル系重合体(A)のTgが上記の範囲内であれば、分子量が大きい(メタ)アクリル系重合体(A)を用いる場合であっても、硬化性組成物のタックを抑制することができる。
【0024】
(メタ)アクリル系重合体(A)の重合法は、特に限定されず、例えば、特開2005-232419公報、特開2006-291073公報、特開2016-88944公報に記載の重合法が挙げられる。(メタ)アクリル系重合体(A)の末端に(メタ)アクリロイル基を導入する方法としては、例えば、特開2016-88944公報の段落〔0081〕~〔0087〕に記載の方法が挙げられる。
【0025】
本硬化性組成物における(メタ)アクリル系重合体(A)の含有量は特に限定されないが、本硬化性組成物100重量%中、50~98重量%であることが好ましく、60~95重量%であることがより好ましく、65~90重量%であることがさらに好ましい。
【0026】
<(メタ)アクリル系重合体(B)>
(メタ)アクリル系重合体(B)は、1分子当たり平均して0.8~1.0個の(メタ)アクリロイル基を分子の一方の末端に有している。より優れた伸びを有する硬化物を提供する観点からは、(メタ)アクリル系重合体(B)が有する(メタ)アクリロイル基の数は、1分子当たり平均で0.85~0.95個であることが好ましい。なお、(メタ)アクリル系重合体(B)が有する(メタ)アクリロイル基の具体的な態様については、<(メタ)アクリル系重合体(A)>項の記載を援用する。
【0027】
(メタ)アクリル系重合体(B)の主鎖を構成する(メタ)アクリルモノマーとしては、<(メタ)アクリル系重合体(A)>項で列挙した各(メタ)アクリル酸エステルモノマーが挙げられる。中でも、柔軟性に優れる硬化物を提供できるという利点があることから、(メタ)アクリル系重合体(B)の主鎖を構成する(メタ)アクリルモノマーとしては、アクリル酸n-ブチルが好ましい。換言すると、(メタ)アクリル系重合体(B)は、アクリル酸n-ブチルからなる主鎖を有する、ポリ(アクリル酸n-ブチル)であることが好ましい。
【0028】
(メタ)アクリル系重合体(B)の数平均分子量は、特に限定されないが、500~1,000,000であることが好ましく、3,000~100,000であることがより好ましく、4,000~80,000であることがさらに好ましく、5,000~50,000であることが特に好ましい(メタ)アクリル系重合体(B)の数平均分子量が500以上であれば、硬化性組成物において、(メタ)アクリル系重合体(B)に由来する特性を十分に発現されることができる。また、数平均分子量が1,000,000であれば、取扱い性が損なわれる虞がない。
【0029】
(メタ)アクリル系重合体(B)の分子量分布は、特に限定されないが、好ましくは1.8以下であり、1.7以下であることがより好ましく、1.6以下であることがより好ましく、1.5以であることがより好ましく、1.4以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル系重合体(B)の分子量分布が上記の範囲内であれば、低粘度で作業性の良好な硬化性組成物が得られる。好ましくは、(メタ)アクリル系重合体(A)および(メタ)アクリル系重合体(B)の少なくともいずれか一方の分子量分布(Mw/Mn)が1.8以下である。
【0030】
(メタ)アクリル系重合体(B)の重合方法および(メタ)アクリル系重合体(B)の末端に(メタ)アクリロイル基を導入する方法としては、<(メタ)アクリル系重合体(A)>項に記載した(メタ)アクリル系重合体(A)の重合法および(メタ)アクリル系重合体(A)の末端に(メタ)アクリロイル基を導入する方法と同様の方法を挙げることができる。
【0031】
本硬化性組成物における(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、5~50重量部であることが好ましく、10~45重量部であることがより好ましい。(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が上記の範囲内である場合、破断時の強度および伸びにより優れる硬化物を提供することができる。
【0032】
<多官能(メタ)アクリルモノマー(C)>
本硬化性組成物は多官能(メタ)アクリルモノマー(C)を含む。本明細書において、多官能(メタ)アクリルモノマーとは、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを意図する。
【0033】
多官能(メタ)アクリルモノマー(C)が分子内に有する(メタ)アクリロイル基の数は、2個以上である限り特に限定されないが、破断時の強度および伸びにより優れる硬化物を提供することができることから、1分子当たり平均して2.5~3.5個であることが好ましい。
【0034】
多官能(メタ)アクリルモノマー(C)の具体例としては、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジ(メタ)アクリレート、1,2-エチレンジ(メタ)アクリレート等の飽和炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジエトキシジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO-EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジエトキシジ(メタ)アクリレート、4,4-ジメルカプトジフェニルサルファイドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ジメチル)-5-エチル-5-アクリロイルオキシメチル-1,3-ジオキサン、2-[5-エチル-5-[(アクリロイルオキシ)メチル]-1,3-ジオキサン-2-イル]-2,2-ジメチルエチル、1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等の2官能の(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートポリヘキサノリドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。本硬化性組成物は、(メタ)アクリルモノマー(C)としては、これらのモノマーの1種類のみを含有してもよく、複数種類の組み合わせを含有してもよい。
【0035】
本硬化性組成物における多官能(メタ)アクリルモノマー(C)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、0.5~2.0重量部であることが好ましく、1.0~1.5重量部であることがより好ましい。多官能(メタ)アクリルモノマー(C)の含有量が上記の範囲内である場合、圧縮永久歪と破断時伸びとにより優れる硬化物を提供することができる。
【0036】
<ラジカル開始剤(D)>
本硬化性組成物は、ラジカル開始剤(D)を含む。ラジカル開始剤(D)としては、光ラジカル開始剤および熱ラジカル開始剤が挙げられるが、省エネルギー性に優れ、硬化時間が短いという観点からは、ラジカル開始剤(D)としては光ラジカル開始剤が好ましい。
【0037】
光ラジカル開始剤としては、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、3-ペンチルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、4-メトキシアセトフェノン、3-ブロモアセトフェノン、4-アリルアセトフェノン、p-ジアセチルベンゼン、3-メトキシベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4-クロロ-4’-ベンジルベンゾフェノン、3-クロロキサントーン、3,9-ジクロロキサントーン、3-クロロ-8-ノニルキサントーン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2-クロロチオキサントーン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(4-メチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、ジベンゾイル、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、1-〔4-(4-ベンゾイキシルフェニルサルファニル)フェニル〕-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、O-エトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン、1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]1,2-オクタンジオン、1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(0-アセチルオキシム)エタノン、4-ベンゾイル-4’メチルジフェニルサルファイド、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’,4’’-(ヘキサメチルトリアミノ)トリフェニルメタン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニル-エトキシ-フォスフィンオキサイド、商品名SPEEDCURE XKm(LAMBSON製)等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が挙げられる。
【0038】
熱ラジカル開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤、過硫酸塩開始剤、レドックス開始剤等が挙げられる。
【0039】
アゾ系開始剤としては、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(メチルイソブチレ-ト)等が挙げられる。
【0040】
過酸化物開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、過酸化ジクミル等が挙げられる。
【0041】
過硫酸塩開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0042】
レドックス開始剤としては、上記過硫酸塩開始剤と還元剤(メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等)との組み合わせ;有機過酸化物と第3級アミンに基づく系、例えば過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンに基づく系;有機ヒドロパーオキシドと遷移金属に基づく系、例えばクメンヒドロパーオキシドとコバルトナフテートに基づく系等が挙げられる。
【0043】
本硬化性組成物は、ラジカル開始剤(D)としてこれらの各種ラジカル開始剤の1種類のみを含有してもよく、複数種類の組み合わせを含有してもよい。
【0044】
本硬化性組成物におけるラジカル開始剤(D)の含有量は、硬化性および貯蔵安定性の観点から、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、0.1~5重量部であることがより好ましい。
【0045】
<酸化防止剤(E)>
本硬化性組成物は、さらに、酸化防止剤(E)を含むことが好ましい。本硬化性組成物が酸化防止剤(E)を含むことにより、耐熱性および耐候性に優れる硬化物を提供することができる。
【0046】
酸化防止剤(E)としては、各種の公知の酸化防止剤を使用することができる。一例としては、大成社発行の「酸化防止剤ハンドブック」、シーエムシー化学発行の「高分子材料の劣化と安定化」(235~242)等に記載された種々のものが挙げられるが、これらに限定されない。より具体的に、酸化防止剤(E)としては、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられるが、より耐熱性に優れる硬化物を提供できることから、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0047】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4-2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]o-クレゾール、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、メチル-3-[3-t-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート-ポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0048】
酸化防止剤(E)としては、市販の酸化防止剤を使用することもできる。市販の酸化防止剤としては、ノクラック200、ノクラックM-17、ノクラックSP、ノクラックSP-N、ノクラックNS-5、ノクラックNS-6、ノクラックNS-30、ノクラック300、ノクラックNS-7、ノクラックDAH、ノクラックCD(いずれも大内新興化学工業製)、MARKAO-30、MARKAO-40、MARKAO-50、MARKAO-60、MARKAO-616、MARKAO-635、MARKAO-658、MARKAO-80、MARKAO-15、MARKAO-18、MARK328、MARKAO-37(以上いずれも旭電化工業製)、IRGANOX-245、IRGANOX-259、IRGANOX-565、IRGANOX-1010、IRGANOX-1024、IRGANOX-1035、IRGANOX-1076、IRGANOX-1081、IRGANOX-1098、IRGANOX-1222、IRGANOX-1330、IRGANOX-1425WL(いずれもBASF製)、SumilizerGM、SumilizerGA-80(いずれも住友化学製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本硬化性組成物は、酸化防止剤(E)としてこれらの各種酸化防止剤の1種類のみを含有してもよく、複数種類の組み合わせを含有してもよい。
【0050】
本硬化性組成物が酸化防止剤(E)を含有する場合、本硬化性組成物における酸化防止剤(E)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、1~10重量部であることが好ましく、1~5重量部であることがより好ましい。酸化防止剤(E)の含有量が1重量部以上である場合、硬化物の耐候性の向上等の酸化防止剤に由来する効果を十分に発揮することができる。一方で、酸化防止剤(E)の含有量を10重量部以内とすることにより、酸化防止剤(E)の過剰な使用を抑制でき、経済的に有利となる。
【0051】
<単官能(メタ)アクリルモノマー(F)>
本硬化性組成物は、さらに、単官能(メタ)アクリルモノマー(F)を含むことが好ましい。本硬化性組成物が単官能(メタ)アクリルモノマー(F)を含むことにより、(a)硬化性組成物の粘度を下げることができ、取り扱い性に優れる硬化性組成物を提供できるとともに、(b)機械物性により優れる硬化物を提供できるという利点がある。本明細書において、単官能(メタ)アクリルモノマーとは、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを意図する。
【0052】
(メタ)アクリルモノマー(E)の具体例としては、上記<(メタ)アクリル系重合体(A)>項において(メタ)アクリル系重合体(A)の主鎖を構成する(メタ)アクリルモノマーとして例示した各モノマーに加えて、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデカニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシ-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸1-メチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸1-エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸3、5-ジヒドロキシ-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸メチルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸m-フェノキシベンジル、(メタ)アクリル酸エチルカルビトール、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルジエチレングリコ-ル、(メタ)アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸1,4-シクロヘキサンジメタノール、(メタ)アクリル酸グリセリン、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール-ポリテトラメチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール-ポリテトラメチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル四級化物、4-(メタ)アクリル酸-2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン、2-(メタ)アクリル酸-1,4-ジオキサスピロ[4,5]デシ-2-イルメチル、(メタ)アクリル酸3-エチル-3-オキセタニル、(メタ)アクリル酸γ-ブチロラクトン、(メタ)アクリル酸2-フェニルチオエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-3-(2-プロペニルオキシ)プロピル、無水フタル酸-(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル付加物、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、1,2-シクロヘキシルジカルボン酸-モノ[1-メチル-2-[(1-オキソ-2-プロペニル)オキシ]エチル]エステル、(メタ)アクリルロイルオキシ-エチルヘキサヒドロフタレート、(メタ)アクリルロイルオキシエチルサクシネート、2-(メタ)アクリルロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-ヒドロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-リン酸エステル、(メタ)アクリル酸エトキシ化-o-フェニルフェノール、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸フェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸パラクミルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ラウロキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ステアロキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸フェノキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリロキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ウンデシレノキシ、(メタ)アクリル酸ウンデシレノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン、アクリル酸ダイマー、(メタ)アクリル酸N-エチルマレイミド、(メタ)アクリル酸ペンタメチルピペリジニル、(メタ)アクリル酸テトラメチルピペリジニル、γ-[(メタ)アクリロイルオキシプロピル]トリエトキシシラン、γ-[(メタ)アクリロイルオキシプロピル]メチルジメトキシシラン、(メタ)アクリル酸2-イソシアネートエチル、(メタ)アクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸カルシウム、(メタ)アクリル酸バリウム、(メタ)アクリル酸ストロンチウム、(メタ)アクリル酸ニッケル、(メタ)アクリル酸銅、(メタ)アクリル酸アルミニウム、(メタ)アクリル酸リチウム、(メタ)アクリル酸ネオジウム、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルパーフルオロブチルメチル、(メタ)アクリル酸2,2-ジ-パーフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルメチル、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のモノマーが挙げられる。
【0053】
本硬化性組成物は、単官能(メタ)アクリルモノマー(F)としてこれらの各種モノマーの1種類のみを含有してもよく、複数種類の組み合わせを含有してもよい。
【0054】
本硬化性組成物が単官能(メタ)アクリルモノマー(F)を含有する場合、本硬化性組成物における単官能(メタ)アクリルモノマー(F)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、300重量部以下であることが好ましく、150重量部であることがより好ましく、100重量部以下であることがさらに好ましい。単官能(メタ)アクリルモノマー(F)の含有量が300重量部以下である場合、硬化性組成物の作業性が良好となり、かつ、硬化時の収縮を抑制することができる。特に、単官能(メタ)アクリルモノマー(F)の含有量が100重量部以下である場合、上記の効果に加えて、実使用に必要な強度を維持しつつ、優れた柔軟性を有する硬化物を得ることができる。
また、本硬化性組成物における単官能(メタ)アクリルモノマー(F)の含有量の下限は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、1重量部以上であり得る。
【0055】
<その他の添加剤>
本硬化性組成物は、(メタ)アクリル系重合体(A)、(メタ)アクリル系重合体(B)、多官能(メタ)アクリルモノマー(C)、ラジカル開始剤(D)、酸化防止剤(E)および単官能(メタ)アクリルモノマー(F)の他に、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、重合性のモノマーおよび/またはオリゴマー、ワックス、充填剤、微小中空粒子、可塑剤、溶剤、チクソ性付与剤(垂れ防止剤)、酸化防止剤(老化防止剤)、相溶化剤、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、消泡剤、発泡剤、防蟻剤、防かび剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
【0056】
その他の添加剤の具体例は、特開2006-291073号公報の段落〔0134〕~〔0151〕、特開2007-308692号公報の段落〔0232〕~〔0235〕、国際公開第05/116134号の段落〔0089〕~〔0093〕、特公平4-69659号公報、特公平7-108928号公報、特開昭63-254149号公報、特開昭64-22904号公報、特開2001-72854号公報等に記載されている。
【0057】
本硬化性組成物の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、(メタ)アクリル系重合体(A)、(メタ)アクリル系重合体(B)、多官能(メタ)アクリルモノマー(C)およびラジカル開始剤(D)、ならびに、必要に応じて、酸化防止剤(E)、単官能(メタ)アクリルモノマー(F)および/またはその他の添加剤を、攪拌および混合することにより製造することができる。
【0058】
〔2.硬化物〕
本発明の一実施形態において、本硬化性組成物を硬化してなる硬化物を提供する。本発明の一実施形態に係る硬化物(以下、本硬化物と称する場合がある)は、上記の構成を有するために、圧縮永久歪と、破断時伸びと、に優れる。本明細書において、硬化物の圧縮永久歪と、破断時伸びとは、実施例に記載の方法で評価することができる。
【0059】
本発明の一実施形態において、本硬化性組成物を硬化させる工程を有する本硬化物の製造方法(以下、本製造方法と称する場合がある)を提供する。本製造方法においては、硬化性組成物を光照射によって硬化させてもよく、加熱によって硬化させてもよい。省エネルギー性に優れ、硬化時間が短いという観点からは光照射(例えばUV)によって硬化させることが好ましい。また、本製造方法において、硬化性組成物を型枠に入れた後に硬化させてもよい。すなわち、硬化物は成型体であってもよい。
【0060】
本製造方法において光照射によって硬化性組成物を硬化させる場合、光照射の光源としては、例えば、水銀灯ランプ、LED、ハロゲンランプ等が挙げられる。ピーク照度は、1~10,000mW/cmであることが好ましく、10~5,000mW/cmであることがより好ましく、100~3,000mW/cmであることがさらに好ましい。積算光量は、10~10,000mJ/cmであることが好ましく、100~5,000mWmJ/cmであることがより好ましく、500~4,000mJ/cmであることがさらに好ましい。ピーク照度および積算光量が上記範囲であれば、硬化性組成物を良好に硬化させることができるとともに、得られる硬化物の機械物性を良好に維持することができる。
【0061】
また、本製造方法において加熱によって硬化性組成物を硬化させる場合、加熱によって硬化させる場合の温度は、50~250℃であることが好ましく、70~200℃であることがより好ましい。
【0062】
〔3.用途〕
本硬化性組成物から得られる硬化物の用途としては、特に限定されないが、例えば、スポーツ用品、玩具・遊具、文房具、医薬・医療・介護用品、履物、寝具・寝装品、家具、衣料、各種雑貨、輸送用品、OA機器、家電製品、オーディオ機器、携帯機器、産業用機械・機器、精密機器、電気・電子機器、電気・電子部品、建材用品、自動車部品、電池周辺材料等が挙げられる。これらの用途において、硬化物は、接着剤、粘着剤、シール材、コーティング材、成形体、封止材、成形部品、塗料、インク、発泡体、レジスト材、ガスケット、衝撃吸収材、衝撃緩衝材、圧力分散材、制振材、防振材、吸音材、防音材、断熱材、感触改善部材、ブッシュ、各種マウント、ローラ、フィルム、シート、テープ、シール、チップ、パッキン、Oリング、ベルト、チューブ、ホース、弁としての利用も可能である。
【0063】
自動車分野ではボディ部品として、気密保持のためのシール材、ガラスの振動防止材、車体部位の防振材、特にウインドシールガスケット、ドアガラス用ガスケットに使用することができる。シャーシ部品として、防振、防音用のエンジンおよびサスペンジョンゴム、特にエンジンマウントラバーに使用することができる。エンジン部品としては、冷却用、燃料供給用、排気制御用などのホース類、エンジンカバーおよびオイルパン用のガスケット、エンジンオイル用シール材などに使用することができる。また、排ガス清浄装置部品、ブレーキ部品にも使用できる。タイヤ部品としては、ビード部位、サイドウォール部位、ショルダー部位、トレッド部位、インナーライナー用の樹脂、空気圧センサー・パンクセンサーのシール材として利用可能である。また、各種電子部品・制御部品のシール材、封止材、ガスケット、コーティング材、モールド部材として利用可能である。また、銅製・アルミ製ワイヤーハーネスの被覆材、コネクタ部のシール材としても利用可能である。その他、ランプ、バッテリー、ウィンドウォッシャー液ユニット、エアコンディショナーユニット、クーラントユニット、ブレーキオイルユニット、電装部品、各種内外装品、オイルフィルター等のシール材、ガスケット、Oリング、パッキン、ベルト等の成形部品、イグナイタHICもしくは自動車用ハイブリッドICのポッティング材等としても利用可能である。
【0064】
電池周辺材料としては、硬化物は、電池のシール材、裏面封止材、各素子のモールド材、封止材、封止フィルム、コーティング材、ポッティング材、充填材、セパレーター、触媒固定用皮膜、保護フィルム、電極の結着剤、冷媒油用シール材、ホース材等に利用可能である。
【0065】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
本発明の一実施形態は、以下の構成を含んでいてもよい。
〔1〕1分子当たり平均して1.8個以上の(メタ)アクリロイル基を分子の末端に有する(メタ)アクリル系重合体(A)と、1分子当たり平均して0.8~1.0個の(メタ)アクリロイル基を分子の一方の末端に有する(メタ)アクリル系重合体(B)と、多官能(メタ)アクリルモノマー(C)と、ラジカル開始剤(D)と、を含有する硬化性組成物。
〔2〕前記(メタ)アクリル系重合体(A)および前記(メタ)アクリル系重合体(B)の少なくともいずれか一方の分子量分布(Mw/Mn)が1.8以下である、〔1〕に記載の硬化性組成物。
〔3〕前記(メタ)アクリル系重合体(A)は、ポリ(アクリル酸n-ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2-メトキシエチル)共重合体である、〔1〕または〔2〕に記載の硬化性組成物。
〔4〕前記(メタ)アクリル系重合体(B)は、ポリ(アクリル酸n-ブチル)である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
〔5〕前記(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、前記(メタ)アクリル系重合体(B)を5~50重量部含有する、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
〔6〕前記(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対し、前記多官能(メタ)アクリルモノマー(C)を0.5~2.0重量部含有する、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
〔7〕前記多官能(メタ)アクリルモノマー(C)は、1分子当たり平均して2.5~3.5個の(メタ)アクリロイル基を有する、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
〔8〕前記ラジカル開始剤(D)は、光ラジカル開始剤である、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
〔9〕さらに、酸化防止剤(E)を含有する、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
〔10〕さらに、単官能(メタ)アクリルモノマー(F)を含有する、〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
〔11〕〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の硬化性組成物を硬化してなる、硬化物。
【実施例0067】
本発明の一実施例について以下に説明する。本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0068】
〔材料〕
●(メタ)アクリル系重合体(A)
・合成例1に記載の方法で製造した(メタ)アクリル系重合体(A-1)
●(メタ)アクリル系重合体(B)
・合成例2に記載の方法で製造した(メタ)アクリル系重合体(B-1)
●多官能アクリルモノマー(C)
・ビスコート#295(大阪有機化学工業製、トリメチロールプロパントリアクリレート)
●ラジカル開始剤(D)
・Omnirad1173(IGM Resins B.V.製、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン)
・Omnirad819(IGM Resins B.V.製、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド)
●酸化防止剤(E)
・Irganox1010(BASF製、テトラキス[3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトール)。
【0069】
〔合成例1:(メタ)アクリル系重合体(A)の合成〕
(重合工程)
アクリル酸n-ブチル73重量部、アクリル酸エチル25重量部、アクリル酸2-メトキシエチル2重量部の混合物を用意し、脱酸素した。攪拌機付ステンレス製反応容器の内部を脱酸素し、0.31重量部の臭化第一銅、20重量部の上記の混合物を加え、加熱攪拌した。4.4重量部のアセトニトリル、1.3重量部のジエチル2,5-ジブロモアジペート(開始剤)を加えて混合した。混合液の温度を約80℃に調節した後、0.018重量部のペンタメチルジエチレントリアミンを加え、重合反応を開始させた。残る80重量部の上記混合物を逐次加えて、重合反応を進めた。重合反応の途中で、適宜ペンタメチルジエチレントリアミンを追加で加え、重合速度を調節した。重合工程を通して使用したペンタメチルジエチレントリアミンの総量は、0.10重量部であった。重合工程においては、重合熱により系内が過熱されるのを防ぎ、系内温度は約80~約90℃に調節した。重合反応率が約95%以上となった時点で、反応容器の気相部に酸素-窒素混合ガスを導入した。系内温度を約80~約90℃に保ちながら、反応液を数時間加熱攪拌して、重合触媒と酸素とを接触させた。アセトニトリルおよび未反応のモノマーを減圧脱揮して除去し、ポリ(アクリル酸n-ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2-メトキシエチル)共重合体(単に共重合体と称する場合がある)を得た。得られた共重合体は、濃緑色に着色していた。
【0070】
(精製工程)
重合工程で得られた共重合体を、酢酸ブチル((メタ)アクリル系重合体100重量部に対して約100重量部)で希釈した。希釈液に濾過助剤を加えて加熱処理し、濾過した。濾液に吸着剤(キョーワード700SENおよびキョーワード500SH)を加えて再度濾過し、清澄な液体を得た。この清澄な液体を濃縮し、ほぼ無色透明の精製物を得た。
【0071】
(アクリロイル基導入工程)
精製物として得られた共重合体をN,N-ジメチルアセトアミド(共重合体100重量部に対して約100重量部)に溶解させた。アクリル酸カリウム((共重合体の末端のBr基に対して約2モル当量)、熱安定剤(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-n-オキシル)、および吸着剤(キョーワード700SEN)を加え、約70℃にて数時間加熱攪拌した。N,N-ジメチルアセトアミドを減圧留去した後、酢酸ブチル(共重合体100重量部に対して約100重量部)で再度希釈し、濾過助剤を加えて固形分を濾別した。濾液を濃縮し、ポリ(アクリル酸n-ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2-メトキシエチル)共重合体を主鎖とし、末端にアクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体(A-1)を得た。(メタ)アクリル系重合体(A-1)は褐色に着色していた。
【0072】
(メタ)アクリル系重合体(A-1)の数平均分子量は約34,000であり、分子量分布は1.1であった。また、(メタ)アクリル系重合体(A-1)に導入されたアクリロイル基の数は、1分子あたり平均で約1.9個であった。
【0073】
〔合成例2:(メタ)アクリル系重合体(B-1)の合成〕
(重合工程)
攪拌機付き反応槽に臭化第一銅4.2重量部、アセトニトリル44重量部を加え、窒素雰囲気下で、70℃で15分間攪拌した。これに、アクリル酸n-ブチル100重量部、2-ブロモブチル酸エチル9.5重量部を添加し、攪拌混合した。ペンタメチルジエチレントリアミン0.17重量部を添加し、重合反応を開始させた。80℃で攪拌しながら、アクリル酸n-ブチル400重量部を連続的に滴下した。アクリル酸n-ブチルの滴下途中、ペンタメチルジエチレントリアミン0.68重量部を分割添加した。重合反応率が96%に達した時点で、アセトニトリルおよび未反応のモノマーを80℃で脱揮して除去し、数平均分子量11,800、分子量分布1.08の片末端に臭素基を有するポリ(アクリル酸n-ブチル)(重合体(P-1))を得た。
【0074】
重合体(P-1)100重量部に対して、濾過助剤2重量部(ラヂオライト900、昭和化学工業(株)製)、メチルシクロヘキサン100重量部を加えて、窒素雰囲気下で80℃にて攪拌し、固形分を濾別することにより、重合体(P-1)のメチルシクロヘキサン溶液を得た。
【0075】
(精製工程)
重合体(P-1)100重量部に対して、吸着剤4重量部(キョーワード(登録商標)500SH 2重量部/キョーワード(登録商標)700SL 2重量部:共に協和化学(株)製)を、重合体(P-1)のメチルシクロヘキサン溶液に加え、酸素・窒素混合ガス雰囲気下で80℃にて攪拌した。不溶分を除去し、重合体溶液を濃縮することで、数平均分子量11,800、分子量分布1.08の片末端に臭素基を有するポリ(アクリル酸n-ブチル)(重合体(P-2))を得た。
【0076】
(アクリロイル基導入工程)
重合体(P-2)100重量部をN,N-ジメチルアセトアミド100重量部に溶解し、アクリル酸カリウム(1.87重量部、浅田化学工業(株)製)、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.01重量部を加え、70℃で8時間加熱攪拌した。反応終了時の重合体は、数平均分子量11,900、分子量分布は1.08であった。反応混合物から、100℃にて4時間減圧下でN,N-ジメチルアセトアミドを留去して、片末端にアクリロイル基を有するポリ(アクリル酸n-ブチル)の粗生成物を得た。この粗生成物100重量部を100重量部のメチルシクロヘキサンで溶解させ、不溶分を除去し、重合体溶液から、80℃にて4時間減圧下で溶媒を留去して、片末端にアクリロイル基を有するポリ(アクリル酸n-ブチル)((メタ)アクリル系重合体(B-1))を得た。(メタ)アクリル系重合体(B-1)の数平均分子量は12,200、分子量分布は1.18であった。また、(メタ)アクリル系重合体(B-1)に導入されたアクリロイル基の数は、1分子あたり平均で0.87個であった。
【0077】
(硬化性組成物の調製)
表1および2に記載の組成(重量部)となるように、各成分を混合し、硬化性組成物を得た。具体的には、(メタ)アクリル系重合体(A-1)、(メタ)アクリル系重合体(B-1)および酸化防止剤(E)をマヨネーズ瓶に加えて120℃に加熱し、スパチュラで時折攪拌しながら、酸化防止剤(E)を溶解させた。次いで、混合物に多官能(メタ)アクリルモノマー(C)およびラジカル開始剤(D)を加えてスパチュラで攪拌し、さらに、あわとり練太郎ARE-310(シンキー製)で、撹拌(1,600rpm×1.5分)および脱泡(2,200rpm×3分)を施し、硬化性組成物を得た。
【0078】
(引張試験用硬化物の作製)
ポリプロピレン製型枠に、得られた硬化性組成物を厚さが2mmになるように流し込んで静置した。これによって、硬化性組成物を脱泡した。UV照射装置(フュージョンUVシステム製、機種:LIGHT HAMMER 6、光源:水銀灯ランプ、ピーク照度:250mW/cm、積算光量:2,000mJ/cm)にて、大気下で硬化性組成物にUV光を照射し、シート状硬化物を得た。得られたシート状硬化物から、JIS K 7113に規定されている3号形ダンベル型試験片を打抜いた。
【0079】
(引張試験)
上記3号形ダンベル型試験片を引張試験に供して、硬化物の機械物性(破断時伸び)を測定した。具体的には、破断時の伸び(チャック間距離に対する伸び)が80%以上の場合には◎(特に良好)、60%以上80%未満の場合は○(良好)、40%以上60%未満の場合は△(合格)、40%未満の場合は×(不良)と評価した。結果を表1、2に示す。なお、測定にはオートグラフ(AG-2000A、島津製作所製)を使用し、測定温度:23℃、引張速度:200mm/minとした。本明細書においては、上記の評価において、△以上の評価となる硬化物を、破断時伸びに優れる硬化物と評価する。
【0080】
(圧縮永久歪試験用硬化物の作製)
高分子計器製の圧縮永久歪試験片加硫金型に、得られた硬化性組成物を流し込み静置した。これによって、硬化性組成物を脱泡した。UV照射装置(フュージョンUVシステム製、機種:LIGHT HAMMER 6、光源:水銀灯ランプ)にて、硬化性組成物の一方の面からUV光(ピーク照度:500mW/cm、積算光量:3,000mJ/cm)を照射した。さらに、硬化性組成物の上記操作でUV光を照射した面とは反対の面からUV光を同条件にて照射した。これにより、直径29mm、厚さ12.5mmの圧縮永久歪試験用サンプルを得た。
【0081】
(圧縮永久歪の評価)
上記圧縮永久歪試験用サンプルを高分子計器製の圧縮永久歪試験器に供して、JIS K 6262に準拠した方法により、圧縮永久歪試験を実施した。試験条件は150℃、25%圧縮とし、70時間経過後に室温で30分回復時間を置いた後、圧縮永久歪を評価した。圧縮永久歪が10%未満の場合は〇(良好)、10%以上の場合は×(不良)と評価した。本明細書においては、上記の評価において、〇評価となる硬化物を、圧縮永久歪に優れる硬化物と評価する。
【0082】
〔評価結果〕
実施例および比較例の組成および各物性の評価結果を表1および2に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
表1より、(メタ)アクリル系重合体(B)および多官能(メタ)アクリルモノマー(C)を含む硬化性組成物を硬化してなる実施例1~9の硬化物は、圧縮永久歪および破断時伸びの両方に優れることが分かる。一方で、(メタ)アクリル系重合体(B)および多官能(メタ)アクリルモノマー(C)の両方あるいは何れか一方を含まない硬化性組成物を硬化してなる比較例1~7の硬化物は、圧縮永久歪または破断時伸びの何れかが不良となることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の一態様は、硬化性組成物の分野で好適に利用できる。