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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089466
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】定温輸送容器
(51)【国際特許分類】
   F25D 3/00 20060101AFI20240626BHJP
   F25D 23/06 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F25D3/00 D
F25D23/06 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204847
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(71)【出願人】
【識別番号】591244878
【氏名又は名称】玉井化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】三平 淳也
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 寿広
(72)【発明者】
【氏名】坂井 正忠
(72)【発明者】
【氏名】関谷 由佳
(72)【発明者】
【氏名】金澤 工
(72)【発明者】
【氏名】石井 圭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭司
【テーマコード(参考)】
3L044
3L102
【Fターム(参考)】
3L044AA04
3L044BA02
3L044CA11
3L044DC04
3L044KA04
3L102JA06
3L102JA09
3L102MB22
3L102MB27
(57)【要約】
【課題】潜熱蓄熱材の放熱を妨げずに、簡便に潜熱蓄熱材を保持可能な定温輸送容器を実現する。
【解決手段】定温輸送容器(10)は、容器本体(10A)の内面に設けられた、潜熱蓄熱材(P)を収容する収容部(20)を備え、収容部(20)は、潜熱蓄熱材(P)が摺動するレール(21)を備え、レール(21)は、リップ溝形構造であり、潜熱蓄熱材(P)が荷室(B)側に露出するように潜熱蓄熱材(P)を保持するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室を有する容器本体と、
前記容器本体の内面に設けられた、潜熱蓄熱材を収容する収容部と、を備え、
前記収容部は、前記潜熱蓄熱材が摺動するレールを備え、
前記レールは、リップ溝形構造であり、前記潜熱蓄熱材が前記荷室側に露出するように前記潜熱蓄熱材を保持するように構成されている、定温輸送容器。
【請求項2】
前記レールは、非発泡の樹脂または金属から構成されている、請求項1に記載の定温輸送容器。
【請求項3】
前記樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)系樹脂、ポリエチレン(PE)系樹脂、ポリプロピレン(PP)系樹脂、およびポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である、請求項2に記載の定温輸送容器。
【請求項4】
前記金属は、アルミニウム、ステンレス、およびスチールからなる群から選択される1種以上の樹脂である、請求項2に記載の定温輸送容器。
【請求項5】
前記容器本体は、直方体状の本体部と、当該本体部に追加された追加部と、を有する、請求項1~4の何れか1項に記載の定温輸送容器。
【請求項6】
前記容器本体を構成する壁部は、展開可能な板状パネルによって構成されている、請求項1~4の何れか1項に記載の定温輸送容器。
【請求項7】
前記板状パネルは、真空断熱材を備える、請求項6に記載の定温輸送容器。
【請求項8】
前記収容部は、前記容器本体に対して取り外し可能である、請求項1~4の何れか1項に記載の定温輸送容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定温輸送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、医療機器、検体、細胞及び化学物質並びに食品等の物品の中には、輸送や保管の際に品質を保持するために、所定温度範囲内で保温又は保冷を必要とするものがある。従来、このような温度管理が必要な物品を保温又は保冷する方法として、断熱性を有する輸送容器内に、予め凝固又は融解させた潜熱蓄熱材を収納配置して前記物品を収容する方法が知られている。この方法では、潜熱蓄熱材の融解潜熱を利用して保温又は保冷している。
【0003】
例えば特許文献1には、蓄冷材を保持する保持部を備えた保冷容器が開示されている。当該保持部は、保冷容器の壁部を構成する板の内面に設けられており、前方もしくは後方の少なくとも一方に向かって開口する袋形状を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-178931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来の定温輸送容器では、保持部が前方もしくは後方の少なくとも一方に向かって開口する袋形状であるため、保持部が潜熱蓄熱材の放熱を妨げる場合があり、改善の余地がある。
【0006】
本発明の一態様は、潜熱蓄熱材の放熱を妨げずに、簡便に潜熱蓄熱材を保持可能な定温輸送容器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様の定温輸送容器は、荷室を有する容器本体と、前記容器本体の内面に設けられた、潜熱蓄熱材を収容する収容部と、を備え、前記収容部は、前記潜熱蓄熱材が摺動するレールを備え、前記レールは、リップ溝形構造であり、前記潜熱蓄熱材が前記荷室側に露出するように前記潜熱蓄熱材を保持するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、潜熱蓄熱材の放熱を妨げずに、簡便に潜熱蓄熱材を保持可能な定温輸送容器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】101は、本発明の実施形態1に係る定温輸送容器の概略構成を示す斜視図であり、102は、本発明の実施形態1に係る定温輸送容器の内部の概略構成を示す斜視図である。
図2図1の101および102に示す定温輸送容器の収容部に備えられたレールの概略構成を示す斜視図である。
図3】潜熱蓄熱材Pが摺動する方向から見た、図2に示すレールの概略構成を示す図である。
図4】本発明の実施形態1に係る定温輸送容器の収容部に備えられたレールの変形例の概略構成を示す斜視図である。
図5】501および502は、本発明の実施形態2に係る定温輸送容器の構成例を示す斜視図である。
図6】601~606は、図5の501に示す定温輸送容器の航空コンテナC内での組立方法の手順を示す図である。
図7】701は、本発明の実施形態3に係る定温輸送容器の概略構成を示す斜視図であり、図7の702は、本発明の実施形態3に係る定温輸送容器の容器本体を展開した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1の101は、本実施形態に係る定温輸送容器10の概略構成を示す斜視図であり、図1の102は、本実施形態に係る定温輸送容器10の内部の概略構成を示す斜視図である。
【0011】
図1の101および102に示すように、定温輸送容器10は、荷室Bを有する容器本体10Aを備えている。容器本体10Aの荷室Bは、物品を収納するための空間である。
【0012】
容器本体10Aは、直方体形状の本体部10Bと、本体部10Bに追加された追加部10Cと、を有している。追加部10Cは、本体部10Bに対して突出するように追加されている。追加部10C内の空間は、本体部10B内の空間よりも小さい。図1の101および102に示す容器本体10Aは、航空機の搭載される航空コンテナに収納されるのに適した形状となっている。しかし、容器本体10Aは、航空コンテナに収納されるのに適した形状に限定されず、荷室Bが設けられていればよく、任意の形状を採用することができる。容器本体10Aは、追加部10Cが設けられていなくてもよい。
【0013】
容器本体10Aには、物品を出し入れするための開口部10Dが設けられている。開口部10Dは、本体部10Bの前方を開放するように形成されている。開口部10Dは、追加部10Cには形成されていない。
【0014】
本体部10Bは、直方体形状であり、天面部11と、第1側面部12と、第2側面部13と、底面部14と、後面部15と、前面部16と、を備えている。天面部11と底面部14とは、上下方向で、互いに対向している。また、第1側面部12と第2側面部13とは、左右方向で、互いに対向している。さらに、後面部15と前面部16とは、前後方向で、互いに対向している。開口部10Dは、天面部11、第1側面部12、および第2側面部13、底面部14によって構成されている。また、前面部16は、開口部10Dを閉塞するパネルであり、開口部10Dから分離できるように構成されている。
【0015】
また、追加部10Cは、当該追加部10C内の荷室Bを構成するボックス部17を備えている。ボックス部17は、本体部10Bの第1側面部12から突出するように設けられている。図1の102に示すように、第1側面部12には、本体部10B内の荷室Bと追加部10C内の荷室Bとを連通する開口部12bが設けられている。定温輸送容器10では、追加部10C内の物品は、開口部12bを介して出し入れされることになる。
【0016】
(容器本体10Aの材質)
容器本体10Aの材質は、断熱性を有し、かつ、発泡成形可能なものであれば特に限定されず、発泡樹脂成形体が好適に用いられる。発泡樹脂成形体は、発泡粒子を成形してなる発泡成形体(以下、ビーズ発泡成形体と称する場合がある)であってもよい。当該発泡成形体としては、具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、またはポリプロピレン系樹脂を含む発泡粒子を成形してなる発泡成形体が挙げられる。また、容器本体10Aを構成する発泡樹脂成形体は、発泡粒子を成形してなる発泡成形体に限定されず、ポリウレタン系樹脂液、またはポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂液を発泡させてなる発泡成形体であってもよい。さらに断熱性に優れる点で、容器本体10Aは、輻射伝熱抑制剤を含有する発泡樹脂成形体であることが好ましい。このような発泡樹脂成形体は、例えば、輻射伝熱抑制剤として作用し得るカーボンを含有する、カーボン含有ビーズ発泡成形体が挙げられる。ここでカーボンとは、グラファイト、グラフェン、活性炭、コークス、カーボンブラックなどが挙げられる。コスト及び断熱性向上効果のバランスから、カーボンは、グラファイト、カーボンブラックが好ましく、グラファイトがより好ましい。
【0017】
さらに、容器本体10Aは、2種類以上の発泡樹脂成形体の組合せにより、構成されていてもよい。前記組合せとして、具体的には、ポリエチレン系樹脂を発泡させた発泡体とポリスチレン系樹脂を発泡させた発泡体との組合せ等が挙げられる。
【0018】
さらに、容器本体10Aの材質は、発泡樹脂成形体と真空断熱材との組合せにより構成されていてもよい。その場合には、発泡樹脂成形体からなる容器本体10Aの外面又は内面を真空断熱材で覆う、あるいは、容器本体10Aを構成する壁の内部に真空断熱材を埋設させることにより、断熱性能の高い定温輸送容器が得られる。
【0019】
また、容器本体10Aは、組立式であることが好ましい。より好ましくは、容器本体10Aは、上述した材質の、複数の断熱パネルおよび/または断熱ボックスを組み立てて構成される。
【0020】
(潜熱蓄熱材P)
潜熱蓄熱材Pは、蓄熱成分そのものに加え、蓄冷成分を包含するものである。すなわち、潜熱蓄熱材Pは、蓄熱成分および蓄冷成分の少なくとも一方である。潜熱蓄熱材とは、蓄熱成分または蓄冷成分を直方体状のプラスチック製容器等に封入したものである。
【0021】
蓄熱成分または蓄冷成分を充填する容器の材質としては、特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン又はポリエステル等が挙げられる。蓄熱成分または蓄冷成分を充填する容器の材質として、これら例示されたもののうち1種類を単独で使用してもよいし、耐熱性やバリアー性を高めるために、これら例示されたもののうち2種類以上を組み合わせて使用してもよい。2種類以上を組み合わせて使用する場合、上記容器は、互いに異なる材質からなる多層構造を有していてもよい。
【0022】
また、潜熱蓄熱材Pは、蓄熱成分または蓄冷成分の少なくとも一方であることが好ましい。潜熱蓄熱材とは、蓄熱成分または蓄冷成分の相転移に伴う熱エネルギーを利用するものである。具体的には、蓄熱成分または蓄冷成分の相状態が、凝固状態(固体)から溶融状態(液体)に相転移する際に吸収する熱エネルギー、または溶融状態(液体)から凝固状態(固体)に相転移する際に放出する熱エネルギーを利用する。
【0023】
本実施形態に使用される潜熱蓄熱材を構成する組成物としては、特に限定されず、例えば、国際公開2014/125878号、国際公開2019/151074号、国際公開2016/068256号、国際公開2019/172260号、国際公開2018/180506号等に開示された組成物を用いることができる。
【0024】
ここで、本実施形態に係る定温輸送容器10は、潜熱蓄熱材Pを収容する収容部20を備えている。収容部20は、容器本体10Aの内面に設けられている。図1の101および102に示すように、収容部20は、天面部11、第1側面部12、およびボックス部17に設けられている。収容部20は、レール21を備えている。レール21には、潜熱蓄熱材Pが摺動する。
【0025】
図2は、本実施形態に係る定温輸送容器10に備えられたレール21の概略構成を示す斜視図である。図3は、潜熱蓄熱材Pが摺動する方向から見た、図2に示すレール21の概略構成を示す図である。レール21において、潜熱蓄熱材Pが前後に摺動する方向(前後方向)を長さ方向またはX方向とする。そして、潜熱蓄熱材Pが摺動する方向を前後方向としたとき、左右方向を幅方向またはY方向とする。さらに、X方向およびY方向の両方に垂直な方向、すなわち上下方向を、Z方向または高さ方向とする。
【0026】
図2および図3に示すように、レール21は、リップ溝形構造である。そして、レール21は、潜熱蓄熱材Pが荷室B側に露出するように潜熱蓄熱材Pを保持するように構成されている。
【0027】
ここで、「リップ溝形構造」とは、C型鋼様形状のことをいう。図3に示すように、レール21は、X方向から見て、C字形状を有する。それゆえ、レール21は、C型ガイドレールともいえる。より具体的には、レール21は、基板部22と、2つの側板部23と、2つの保持板部24と、を有している。基板部22は、XY平面に平行な、X方向に延びた矩形板状である。基板部22のY方向の2つの端部それぞれに側板部23が設けられている。側板部23は、X方向に延びる矩形板状であり、基板部22の上記端部からZ方向に延び、XZ平面に平行に延びている。そして、2つの側板部23それぞれの上端部には保持板部24が設けられている。保持板部24は、XY平面に平行であり、かつX方向に延びる矩形板形状を有している。2つの保持板部24はそれぞれ、側板部23に対して内側に延びており、基板部22上に位置している。保持板部24は、レール21にて保持された潜熱蓄熱材Pが荷室B側に倒れないように保持する機能を有する。基板部22、2つの側板部23、および2つの保持板部24によってC型形状が構成される。基板部22と保持板部24との距離、および2つの側板部23間の距離は、摺動する潜熱蓄熱材Pの寸法に応じて適宜設定可能である。
【0028】
ここで、従来の定温輸送容器は、(i)容器本体の内面に縫製されたネットに潜熱蓄熱材は断熱容器内面に縫製されたネットに潜熱蓄熱材が収納される構成、または(ii)容器本体の内面に潜熱蓄熱材を支える内箱が設けられた構成が挙げられる。
【0029】
上記(i)の構成では、次の問題がある。すなわち、1つのネットに複数枚の潜熱蓄熱材を収納する場合、ネットの奥深くに収納された潜熱蓄熱材は、取り出しにくくなる。また、大量の潜熱蓄熱材を容器本体に配置するに際し、1つ1つのネットに潜熱蓄熱材を収納するのは、作業者にとって手間がかかる。さらには、定温輸送容器の使用後の環境によっては、ネットにカビが発生し物品に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0030】
また、上記(ii)の構成は、例えば、容器本体の天面部に潜熱蓄熱材を配置する際に使用され、天面部に内箱が設けられる。このような構成では、次の問題がある。すなわち、搬送中の振動により、内箱内の潜熱蓄熱材の位置がずれてしまい、物品の温度管理に影響を及ぼすおそれがある。また、内箱の分だけ部品点数が多くなり、搬送コストが増大するという問題もある。
【0031】
本実施形態に係る定温輸送容器10によれば、レール21は、上述のリップ溝形構造を有し、かつ、潜熱蓄熱材Pが荷室B側に露出するように潜熱蓄熱材Pを保持するように構成されている。それゆえ、レール21には、潜熱蓄熱材Pの荷室Bへの放熱を妨げる部材が存在しない。それゆえ、定温輸送容器10の温度維持性能が向上する。
【0032】
さらに、定温輸送容器10によれば、容器本体10Aへの潜熱蓄熱材Pの収容部20として、リップ溝形構造のレール21を採用しているので、収容部20に対する潜熱蓄熱材Pの収納および取り出しが容易になる。さらには、収容部20での潜熱蓄熱材Pの位置ズレを防止することができ、温度維持性能が向上する。なお、収容部20は、レール21の他に、例えば、レール21を摺動する潜熱蓄熱材Pを係止するストッパーを備えていてもよい。当該ストッパーは、例えば、レール21において、潜熱蓄熱材Pの摺動方向の端部に配されている。
【0033】
定温輸送容器による物品の現場では、物品の温度管理上、迅速な容器本体への物品の梱包が求められ、搬送コスト面では省人力化が求められている。
【0034】
定温輸送容器10によれば、容器本体10Aのレール21に潜熱蓄熱材Pを摺動させるという作業だけで潜熱蓄熱材Pを容器本体10Aにセットできる。このような作業は、作業者にとって、作業時間の短縮に繋がる。それゆえ、定温輸送容器10によれば、搬送コスト低減および省人力化を実現できる。
【0035】
また、強度および成形容易性の観点から、レール21は非発泡の樹脂から構成されていることが好ましい。すなわち、レール21は、非発泡成形体であることが好ましい。非発泡成形体としては、一般的に適用されるブロー成形体、射出成形体およびシート成形体などが挙げられる。さらに、強度の観点から、レール21は、金属から構成されていることが好ましい。すなわち、レール21は、非発泡の樹脂または金属から構成されていることが好ましい。
【0036】
また、定温輸送容器10に収容される物品が食品または医薬品である場合、容器本体10A内の環境は、雑菌が発生しない衛生的な環境であることが必要である。この場合、レール21の材質は、レール21に付着した雑菌を除去できるようアルコール等で洗浄可能な材質であることが好ましい。そのような材質としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)系樹脂、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)などのオレフィン系樹脂、またはポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂などが挙げられる。好ましくは、レール21を構成する樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)系樹脂、ポリエチレン(PE)系樹脂、ポリプロピレン(PP)系樹脂、およびポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である。また、レール21が金属から構成されている場合、当該金属は、アルミニウム、ステンレス、およびスチールからなる群から選択される1種以上の樹脂である。
【0037】
また、収容部20は、容器本体10Aに対して取り外し可能であることが好ましい。これにより、容器本体10Aから収容部20を取り外すことが容易になり、定温輸送容器10の分解および組立作業が容易になる。容器本体10Aに対して取り外し可能な収容部20の態様は、特に限定されないが、例えば、面ファスナーまたは両面テープを介して、容器本体10Aの内面にレール21が離接可能に取り付けられた態様が挙げられる。容器本体10Aに対して取り外し可能な収容部20の具体的構成は、少なくともレール21が容器本体10Aに対して取り外し可能な構成であることが好ましい。
【0038】
(レールの変形例)
本実施形態に係る定温輸送容器に備えられたレールについて、図2および図3に示す構成の変形例について、説明する。図4は、本実施形態に係る定温輸送容器に備えられたレールの変形例の概略構成を示す斜視図である。
【0039】
図4に示すように、変形例のレール21Cは、2つの構成要素21Aおよび21Bから構成されている点が、図2および図3に示すレール21と異なる。
【0040】
構成要素21Aは、基板部22Aと、側板部23Aと、保持板部24Aと、を有している。基板部22Aは、XY平面に平行な、X方向に延びた矩形板状である。側板部23Aは、基板部22AのY方向の2つの端部のうち一方の端部に設けられている。側板部23Aは、X方向に延びる矩形板状であり、基板部22Aの上記一方の端部からZ方向に延び、XZ平面に平行に延びている。保持板部24Aは、側板部23Aの上端部に設けられている。保持板部24Aは、XY平面に平行であり、かつX方向に延びる矩形板形状を有しており、基板部22A上に位置している。
【0041】
また、構成要素21Bは、基板部22Bと、側板部23Bと、保持板部24Bと、を有している。基板部22B、側板部23B、および保持板部24Bはそれぞれ、上述した、基板部22A、側板部23A、および保持板部24Aと同様の構造である。
【0042】
構成要素21Aおよび構成要素21Bは、X方向において、寸法が略同じである。レール21Cにおいて、構成要素21Aおよび構成要素21Bは、X方向から見て、C型形状を構成するように配置されている。すなわち、基板部22Aにおける側板部23Aが設けられていない他方の端部と、基板部22Bにおける側板部23Bが設けられていない他方の端部とが対向するように、構成要素21Aおよび構成要素21Bは配置されている。
【0043】
変形例のレール21Cの構成によれば、Y方向において、構成要素21Aと構成要素21Bとの距離が可変である。それゆえ、様々な寸法の潜熱蓄熱材Pを保持することができ、レール21Cにて保持される潜熱蓄熱材Pの寸法自由度が向上する。
【0044】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0045】
本実施形態に係る定温輸送容器は、コンテナ内で組み立てが可能な構成となっている。本実施形態に係る定温輸送容器は、折り畳み可能な断熱パネルを備えた容器本体と、コンテナの追加部の荷室の寸法に合わせたボックス部と、を備えている。
【0046】
図5の501および502は、本実施形態に係る定温輸送容器の構成例を示す斜視図である。図5の501および502に示す定温輸送容器30および30Aは、航空機に搭載される航空コンテナC内で組み立てが可能な構成となっている。航空コンテナCは、直方体状のコンテナ本体部C1と、コンテナ本体部C1の側面から突出するように追加されたコンテナ追加部C2と、有する。
【0047】
図5の501に示すように、航空コンテナCに収容される定温輸送容器30は、上記実施形態1に係る定温輸送容器10と同様に、本体部と追加部とを有する容器本体を備えている。定温輸送容器30では、上記本体部がコンテナ本体部C1に収納され、上記追加部がコンテナ追加部C2に収納される。
【0048】
定温輸送容器30の上記本体部は、上記天面部に相当する天面パネル31と、上記第1側面部に相当する第1側面パネル32と、上記第2側面部に相当する第2側面パネル33と、上記底面部に相当する底面パネル34と、上記後面部に相当する後面パネル35と、を備えている。なお、図示していないが、定温輸送容器30は、上記前面部に相当する前面パネルを備えている。また、定温輸送容器30の上記追加部は、上記ボックス部に相当するボックス37を備えている。第1側面パネル32には、上記本体部の荷室と上記追加部の荷室とを連通する開口部32bが設けられている。
【0049】
定温輸送容器30において、底面パネル34と後面パネル35とは、互いに連結しており、連結パネル38を構成する。連結パネル38は、底面パネル34と後面パネル35との境界部分にて折り畳み可能になっている。
【0050】
また、天面パネル31、第1側面パネル32、第2側面パネル33、および連結パネル38は、互いに分離可能に連結している。例えば、天面パネル31、第1側面パネル32、第2側面パネル33、および連結パネル38は、嵌合部を介して連結している。
【0051】
ボックス37は、第1側面パネル32に対して離接可能に取り付けられている。例えば、ボックス37は、面ファスナーまたは両面テープを介して、第1側面パネル32に取り付けられている。
【0052】
また、図5の501に示すように、天面パネル31、第1側面パネル32、第2側面パネル33、およびボックス部17における荷室側の面には、潜熱蓄熱材Pを収容する収容部20が設けられている。収容部20の構成は、上記実施形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0053】
図5の502に示す定温輸送容器30Aは、航空コンテナCのコンテナ追加部C2を荷室として利用しない点が、図5の501に示す定温輸送容器30と異なる。より具体的には、定温輸送容器30Aは、ボックス37を備えておらず、第1側面パネル32の代わりに第1側面パネル32Aを備えた点が、定温輸送容器30と異なる。
【0054】
第1側面パネル32Aには、開口部が設けられていない。第1側面パネル32Aは、定温輸送容器30Aの荷室とコンテナ追加部C2内の空間を仕切るパネルである。
【0055】
ここで、図5の501に示す定温輸送容器30は、航空コンテナCにおけるコンテナ本体部C1およびコンテナ追加部C2の両方の内部空間を荷室として利用した構成である。一方、図5の502に示す定温輸送容器30Aは、航空コンテナCにおけるコンテナ本体部C1の内部空間のみを荷室として利用した構成である。
【0056】
少なくとも天面パネル31および連結パネル38に対して、第1側面パネル32は、第1側面パネル32Aと共通した構造によって、分離可能に取り付けられていることが好ましい。例えば、天面パネル31および連結パネル38と第1側面パネル32との嵌合部は、天面パネル31および連結パネル38と第1側面パネル32Aとの嵌合部と同じ構造であることが好ましい。
【0057】
換言すると、本実施形態に係る定温輸送容器30および30Aは、第1側面パネル32と第1側面パネル32Aとが交換可能に取り付けられていることが好ましい。この構成によれば、第1側面パネル32と第1側面パネル32Aとの交換により、定温輸送容器内の荷室容積を変えることが可能となる。それゆえ、収納する物品の量に応じて、航空コンテナC内の空間を荷室として有効に利用することができる。収納する物品が多量になる場合には、第1側面パネル32に交換して、荷室容積を拡張することも可能である。
【0058】
また、本実施形態に係る定温輸送容器30および30Aにおいて、当該定温輸送容器を構成するパネルおよびボックスは、折り畳み可能である、または、互いに分離可能である。それゆえ、定温輸送容器の使用後に、当該定温輸送容器を複数のパネルおよびボックスに分離またはパネルを折り畳むことにより、1つの航空コンテナに複数の定温輸送容器分のパネルをまとめて収納することができる。それゆえ、使用後に定温輸送容器を航空コンテナにて返送する際に、定温輸送容器の輸送効率が向上する。
【0059】
なお、図5の501および502に示す構成では、連結パネル38は、底面パネル34と後面パネル35との境界部分にて折り畳み可能になっていた。しかし、連結パネル38は、隣接する2つのパネルの境界部分にて折り畳み可能な構成であればよい。例えば、連結パネル38は、互いに連結した第2側面パネル33と後面パネル35とで構成されていてもよいし、互いに連結した天面パネル31と後面パネル35とで構成されていてもよい。
【0060】
さらに、本実施形態に係る定温輸送容器30および30Aは、航空コンテナC内で組立て可能である。図6の601~606は、航空コンテナC内での定温輸送容器30の組立方法の手順を示す図である。
【0061】
定温輸送容器30の組立方法では、航空コンテナCのコンテナ本体部C1に設けられた開口部C3から、定温輸送容器30を構成する各種パネルおよびボックスを搬入して、定温輸送容器30を組み立てる。まず、図6の601および602に示すように、連結パネル38を折り畳んだ状態でコンテナ本体部C1内に搬入する。そして、コンテナ本体部C1内にて折り畳んだ状態の連結パネル38を開いて、後面パネル35がコンテナ本体部C1の後面に接するように、底面パネル34および後面パネル35をセットする。これにより、コンテナ本体部C1内に、定温輸送容器30の底面部および後面部が構成される。
【0062】
次いで、図6の603および604に示すように、収容部20が取り付けられた第1側面パネル32を、底面パネル34および後面パネル35に取り付ける。これにより、定温輸送容器30の第1側面部が構成される。
【0063】
次いで、図6の605に示すように、開口部C3からボックス37を搬入する。そして、第1側面パネル32の開口部から、ボックス37をコンテナ追加部C2へ移動させる。そして、コンテナ追加部C2内のボックス37を第1側面パネル32に取り付ける。なお、第1側面パネル32およびボックス37の取付け方法は、図6の603~605に示す手順に限定されない。例えば、次の手順であってもよい。(1)図6の602に示す状態から、開口部C3からボックス37を搬入し、コンテナ追加部C2へ移動させる。(2)収容部20が取り付けられた第1側面パネル32を、底面パネル34および後面パネル35に取り付ける。(3)コンテナ追加部C2内のボックス37を第1側面パネル32に取り付ける。
【0064】
次いで、図6の606に示すように、収容部20が取り付けられた天面パネル31、および収容部20が取り付けられた第2側面パネル33を、底面パネル34および後面パネル35に取り付ける。これにより、定温輸送容器30の天面部および第2側面部が構成される。
【0065】
そして、図6の606に示す中間品に対して、潜熱蓄熱材Pを収容部20に収納し、さらに図示しない前面パネルをセットすることにより、定温輸送容器30が完成する。
【0066】
このように、定温輸送容器30は、航空コンテナC内で組み立て可能である。それゆえ、航空コンテナC内の空間を最大限利用して、定温輸送容器30の荷室空間を確保することができる。このため、物品の収納のために、航空コンテナC内の空間を荷室として効率的に利用できる。
【0067】
なお、図5の502に示す定温輸送容器30Aを航空コンテナC内で組み立てる場合には、図6の603~605に示す手順に替えて、収容部20が取り付けられた第1側面パネル32Aを、底面パネル34および後面パネル35に取り付ける手順を行えばよい。
【0068】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0069】
本実施形態に係る定温輸送容器は、コンテナ内で組み立てが可能な構成となっている。本実施形態に係る定温輸送容器は、容器本体の壁部が展開可能な板状パネルによって構成されている点が、実施形態1および2に係る定温輸送容器と異なる。
【0070】
図7の701は、本実施形態に係る定温輸送容器40の概略構成を示す斜視図であり、図7の702は、本実施形態に係る定温輸送容器40の容器本体40Aを展開した状態を示す斜視図である。
【0071】
図7の701および702に示すように、容器本体40Aは、直方体の箱状である。容器本体40Aの荷室を構成する壁部は、天面パネル41、第1側面パネル42、第2側面パネル43、底面パネル44、後面パネル45、および前面パネル46という6つの板状パネルにより構成されている。そして、これら板状パネルは、展開可能となるように、互いに境界部分で折り畳み可能に連結している。以下、天面パネル41、第1側面パネル42、第2側面パネル43、底面パネル44、後面パネル45、および前面パネル46の総称として、単に板状パネルと称する場合がある。
【0072】
より具体的には、天面パネル41と後面パネル45とは、互いの境界部分にて折り畳み可能となっている。また、第1側面パネル42、第2側面パネル43、後面パネル45、および前面パネル46はそれぞれ、底面パネル44の4辺にて、底面パネル44に対して折り畳み可能に連結している。
【0073】
また、図7の702に示す展開状態になるように、第1側面パネル42、第2側面パネル43、後面パネル45、および前面パネル46は、互いに分離可能に連結している。さらに、天面パネル41と、第1側面パネル42、第2側面パネル43、および前面パネル46とは、互いに分離可能に連結している。
【0074】
また、定温輸送容器40では、第1側面パネル42、第2側面パネル43、後面パネル45および前面パネル46それぞれに、収容部20が取り付けられている。
【0075】
定温輸送容器40の構成によれば、使用時には、図7の702に示す展開状態の容器本体40Aの底面パネル44に物品を載置する。そして、各種板状パネルを連結させて、図7の701に示す箱状の容器本体40Aを構成する。
【0076】
このように構成された容器本体40Aは、使用後に、各種板状パネルの連結を解除することによって、図7の702に示す展開状態に戻すことができ、嵩を低くして平坦化できる。それゆえ、定温輸送容器40の返却時や定温輸送容器40を使用しないときには、容器本体40Aをコンパクトにすることができる。よって、定温輸送容器40によれば、輸送コストを削減できるとともに、定温輸送容器40の保管場所のスペースを小さくすることができる。
【0077】
容器本体40A(板状パネル)の材質は、断熱性を有し、かつ、発泡成形可能なものであれば特に限定されず、実施形態1にて説明した発泡樹脂成形体が好適に用いられる。また、定温輸送容器40において、天面パネル41、第1側面パネル42、第2側面パネル43、底面パネル44、後面パネル45、および前面パネル46の少なくとも1つは、真空断熱材を備えることが好ましい。これにより、定温輸送容器40の断熱性能が向上する。なお、真空断熱材は、公知の方法によって、板状パネルに取り付けられ得る。
【0078】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
(まとめ)
本発明の実施形態は、以下の構成を有する。
【0080】
<1>荷室Bを有する容器本体10Aと、前記容器本体10Aの内面に設けられた、潜熱蓄熱材Pを収容する収容部20と、を備え、前記収容部20は、前記潜熱蓄熱材Pが摺動するレール21を備え、前記レール21は、リップ溝形構造であり、前記潜熱蓄熱材Pが前記荷室B側に露出するように前記潜熱蓄熱材Pを保持するように構成されている、定温輸送容器。
【0081】
<2>前記レール21は、非発泡の樹脂から構成されている、<1>の定温輸送容器。
【0082】
<3>前記樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)系樹脂、ポリエチレン(PE)系樹脂、ポリプロピレン(PP)系樹脂、およびポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である、<2>の定温輸送容器。
【0083】
<4>前記金属は、アルミニウム、ステンレス、およびスチールからなる群から選択される1種以上の樹脂である、<2>の定温輸送容器。
【0084】
<5>前記容器本体10Aは、直方体状の本体部10Bと、当該本体部10Bに追加された追加部10Cと、を有する、<1>~<4>の何れかの定温輸送容器。
【0085】
<6>前記容器本体40Aを構成する壁部は、展開可能な板状パネル(天面パネル41、第1側面パネル42、第2側面パネル43、底面パネル44、後面パネル45、前面パネル46)によって構成されている、<1>~<5>の何れかの定温輸送容器。
【0086】
<7>前記板状パネルは、真空断熱材を備える、<6>の定温輸送容器。
【0087】
<8>前記収容部20は、前記容器本体10Aに対して取り外し可能である、<1>~<7>の何れかの定温輸送容器。
【符号の説明】
【0088】
10 定温輸送容器
10A 容器本体
10B 本体部
10C 追加部
20 収容部
21、21C レール
41 天面パネル(板状パネル)
42 第1側面パネル(板状パネル)
43 第2側面パネル(板状パネル)
44 底面パネル(板状パネル)
45 後面パネル(板状パネル)
46 前面パネル(板状パネル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7