IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

特開2024-89468尿素結合化合物の製造方法、および尿素結合化合物の製造装置
<>
  • 特開-尿素結合化合物の製造方法、および尿素結合化合物の製造装置 図1
  • 特開-尿素結合化合物の製造方法、および尿素結合化合物の製造装置 図2
  • 特開-尿素結合化合物の製造方法、および尿素結合化合物の製造装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089468
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】尿素結合化合物の製造方法、および尿素結合化合物の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 273/18 20060101AFI20240626BHJP
   C07C 275/28 20060101ALI20240626BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240626BHJP
【FI】
C07C273/18
C07C275/28
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204854
(22)【出願日】2022-12-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「NEDO先導研究プログラム・未踏チャレンジ2050」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 憲治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓
(72)【発明者】
【氏名】山根 典之
(72)【発明者】
【氏名】田村 正純
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC57
4H006AD15
4H006BA08
4H006BA30
4H006BB15
4H006BC10
4H006BD30
4H006BD33
4H006BD36
4H006BE41
4H039CA71
4H039CB30
(57)【要約】
【課題】穏和な反応条件下で、脱水剤又は化学的な水和剤を使用せずとも、副生水を反応場からへ除去しつつ、選択率が高く、かつ高効率で尿素結合化合物を製造する尿素結合化合物の製造方法、および尿素結合化合物の製造装置の提供。
【解決手段】酸化セリウムおよび沸点が100℃超である溶媒の存在下で、二酸化炭素と、沸点が100℃超である少なくとも1種のアミンとを、反応温度100℃以上、かつ前記アミンおよび前記溶媒の沸点以下の条件下で反応させて、尿素結合化合物及び副生水を生成し、かつ前記副生水を蒸発により反応場から除去する尿素結合化合物の製造方法尿素結合化合物の製造方法、および製造装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化セリウムおよび沸点が100℃超の溶媒の存在下で、二酸化炭素と、沸点が100℃超である少なくとも1種のアミンとを、反応温度100℃以上、かつ前記アミンおよび前記溶媒の沸点以下の条件下で反応させて、尿素結合化合物及び副生水を生成し、かつ前記副生水を蒸発により反応場から除去する尿素結合化合物の製造方法。
【請求項2】
蒸発した前記副生水を前記二酸化炭素の気流によって前記反応場から除去する請求項1に記載の尿素結合化合物の製造方法。
【請求項3】
前記アミンが、アニリンである請求項1に記載の尿素結合化合物の製造方法。
【請求項4】
前記アミンが、ブチルアニリンである請求項1に記載の尿素結合化合物の製造方法。
【請求項5】
前記アミンが、メチレンジアニリン、及びジアミノトルエンの少なくとも1種である請求項1に記載の尿素結合化合物の製造方法。
【請求項6】
酸化セリウムおよび沸点が100℃超の溶媒が存在する反応器に、二酸化炭素と、沸点が100℃超である少なくとも1種のアミンと、を供給し、反応温度が100℃以上、かつ前記アミンおよび前記溶媒の沸点以下の条件下で、前記二酸化炭素と前記アミンとを反応させて、尿素結合化合物及び副生水を生成する反応工程と、
前記反応工程における前記反応器から、気相として排出された、未反応の前記二酸化炭素、未反応の前記アミン、前記副生水および前記溶媒を冷却して、気相として、未反応の前記二酸化炭素と、液相として、未反応の前記アミン、前記副生水および前記溶媒と、に分離する第1の冷却工程と、
前記第1の冷却工程で、液相として分離された、未反応の前記アミン、前記副生水および前記溶媒を蒸留により、気相として、前記副生水と、液相として、未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、に分離する第1の蒸留工程と、
前記反応工程における前記反応器から、液相として排出された、前記尿素結合化合物、未反応の前記アミンおよび前記溶媒を蒸留して、気相として、未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、液相として、前記尿素結合化合物と、に分離する第2の蒸留工程、又は、前記反応工程における前記反応器から、液相として排出された、前記尿素結合化合物、未反応の前記アミンおよび前記溶媒を冷却して、液相として、未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、固相として、前記尿素結合化合物と、に分離する第2の冷却工程と、
を有し、
前記第1の冷却工程で分離された未反応の前記二酸化炭素と、前記第1の蒸留工程で分離された未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、前記第2の蒸留工程又は前記第2の冷却工程で分離された未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、を前記反応工程で再利用する、
尿素結合化合物の製造方法。
【請求項7】
前記反応工程における前記反応器から、前記液相と共に固相として排出された固体触媒を前記液相と分離する分離工程と、
前記分離工程で分離した固体触媒を再生する触媒再生工程と、
をさらに有し、
前記触媒再生工程で再生された固体触媒を、前記反応工程で再利用する請求項6に記載の尿素結合化合物の製造方法。
【請求項8】
酸化セリウムおよび沸点が100℃超の溶媒が存在する反応器を有し、前記反応器に、二酸化炭素と、沸点が100℃超である少なくとも1種のアミンと、を供給し、反応温度が100℃以上、かつ前記アミンおよび前記溶媒の沸点以下の条件下で、前記二酸化炭素と前記アミンとを反応させて、尿素結合化合物及び副生水を生成する反応塔と、
前記反応塔における前記反応器から、気相として排出された、未反応の前記二酸化炭素、未反応の前記アミン、前記副生水および前記溶媒を冷却して、気相として、未反応の前記二酸化炭素と、液相として、未反応の前記アミン、前記副生水および前記溶媒と、に分離する第1の冷却塔と、
前記第1の冷却塔で、液相として分離された、未反応の前記アミン、前記副生水および前記溶媒を蒸留により、気相として、前記副生水と、液相として、未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、に分離する第1の蒸留塔と、
前記反応塔における前記反応器から、液相として排出された、前記尿素結合化合物、未反応の前記アミンおよび前記溶媒を蒸留して、気相として、未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、液相として、前記尿素結合化合物と、に分離する第2の蒸留塔、又は、前記反応塔における前記反応器から、液相として排出された、前記尿素結合化合物、未反応の前記アミンおよび前記溶媒を冷却して、液相として、未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、固相として、前記尿素結合化合物と、に分離する第2の冷却塔と、
を備え、
前記第1の冷却塔で分離された未反応の前記二酸化炭素と、前記第1の蒸留塔で分離された未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、前記第2の蒸留塔又は第2の冷却塔で分離された未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、を前記反応塔で再利用する、
尿素結合化合物の製造装置。
【請求項9】
前記反応塔における前記反応器から、前記液相と共に固相として排出された固体触媒を前記液相と分離する分離塔と、
前記分離塔で分離した固体触媒を再生する触媒再生塔と、
をさらに備え、
前記触媒再生塔で再生された固体触媒を、前記反応塔で再利用する請求項8に記載の尿素結合化合物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,尿素結合化合物の製造方法、および尿素結合化合物の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
尿素結合化合物は、-NH-C(=O)-NH-構造を持つ化合物の総称である。
尿素結合化合物は、医薬品、肥料、ポリウレタン(その原料であるイソシアネート化合物)等の原料として、非常に有用な化合物である。
【0003】
従来の尿素結合化合物の製造方法としては、ホスゲンをカルボニルソースとしてアミンと直接反応させる方法が主流である。この方法は、極めて有害で腐食性の高いホスゲンを用いるため、その輸送や貯蔵等の取扱に細心の注意が必要であり、製造設備の維持管理及び安全性の確保のために多大なコストがかかっていた。また、本方法で製造する場合、原料や触媒中に塩素などのハロゲンが含まれており、得られる尿素結合化合物中には、簡単な精製工程では取り除くことのできない微量のハロゲンが含まれる。このように、微量に存在するハロゲンを極微量にするために、徹底的な精製工程が必須となる。さらに、最近では、人体に極めて有害なホスゲンを利用することから、本製造方法での製造設備の新設が許可されないなど行政指導が厳しくなされてきており、ホスゲンを用いない新たな製造方法が強く望まれている。
【0004】
従来の尿素結合化合物の製造方法としては、酸化セリウム触媒を用いて、二酸化炭素とアミンから尿素結合化合物の製造方法が知られている(非特許文献1参照)。しかし、副生する水を除去するために、脱水剤を使用していたり、二酸化炭素の反応性を高めるために反応圧力を0.5~5MPaの高圧にしていたりした。
その他、従来の尿素結合化合物の製造方法としては、1)有機第一級アミンと二酸化炭素とを用いて、尿素結合の熱解離温度より低温で、尿素結合を有する化合物(A)を製造する方法(特許文献1)、2)インジウムを含むイオン性液体系複合触媒システム下でアミン、二酸化炭素及びアルキレンオキシド化合物を反応させ、ウレア及びカルバメート類化合物を同時に製造する方法(特許文献2)も知られている。いずれも、反応圧力が8MPaという高圧であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2019/221210号公報
【特許文献2】特開2015-93870号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Catalysis 343 (2016) 75-85
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記文献を含め、穏和な反応条件下で、二酸化炭素とアミンを、固体触媒の存在下で反応させて、脱水剤又は化学的な水和剤を使用せずとも、副生水を反応場から除去して、選択率が高く、かつ高収率で尿素結合化合物を合成する報告例はなかった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、穏和な反応条件下で、脱水剤又は化学的な水和剤を使用せずとも、副生水を反応場から除去しつつ、選択率が高く、かつ高収率で尿素結合化合物を製造する尿素結合化合物の製造方法、および尿素結合化合物の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決する手段は、次の態様が含まれる。
<1>
酸化セリウムおよび沸点が100℃超の溶媒の存在下で、二酸化炭素と、沸点が100℃超である少なくとも1種のアミンとを、反応温度100℃以上、かつ前記アミンおよび前記溶媒の沸点以下の条件下で反応させて、尿素結合化合物及び副生水を生成し、かつ前記副生水を蒸発により反応場から除去する尿素結合化合物の製造方法。
<2>
蒸発した前記副生水を前記二酸化炭素の気流によって前記反応場から除去する<1>に記載の尿素結合化合物の製造方法。
<3>
前記アミンが、アニリンである<1>に記載の尿素結合化合物の製造方法。
<4>
前記アミンが、ブチルアニリンである<1>に記載の尿素結合化合物の製造方法。
<5>
前記アミンが、メチレンジアニリン、及びジアミノトルエンの少なくとも1種である<1>に記載の尿素結合化合物の製造方法。
<6>
酸化セリウムおよび沸点が100℃超の溶媒が存在する反応器に、二酸化炭素と、沸点が100℃超である少なくとも1種のアミンと、を供給し、反応温度が100℃以上、かつ前記アミンおよび前記溶媒の沸点以下の条件下で、前記二酸化炭素と前記アミンとを反応させて、尿素結合化合物及び副生水を生成する反応工程と、
前記反応工程における前記反応器から、気相として排出された、未反応の前記二酸化炭素、未反応の前記アミン、前記副生水および前記溶媒を冷却して、気相として、未反応の前記二酸化炭素と、液相として、未反応の前記アミン、前記副生水および前記溶媒と、に分離する第1の冷却工程と、
前記第1の冷却工程で、液相として分離された、未反応の前記アミン、前記副生水および前記溶媒を蒸留により、気相として、前記副生水と、液相として、未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、に分離する第1の蒸留工程と、
前記反応工程における前記反応器から、液相として排出された、前記尿素結合化合物、未反応の前記アミンおよび前記溶媒を蒸留して、気相として、未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、液相として、前記尿素結合化合物と、に分離する第2の蒸留工程、又は、前記反応工程における前記反応器から、液相として排出された、前記尿素結合化合物、未反応の前記アミンおよび前記溶媒を冷却して、液相として、未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、固相として、前記尿素結合化合物と、に分離する第2の冷却工程と、
を有し、
前記第1の冷却工程で分離された未反応の前記二酸化炭素と、前記第1の蒸留工程で分離された未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、前記第2の蒸留工程又は前記第2の冷却工程で分離された未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、を前記反応工程で再利用する、
尿素結合化合物の製造方法。
<7>
前記反応工程における前記反応器から、前記液相と共に固相として排出された固体触媒を前記液相と分離する分離工程と、
前記分離工程で分離した固体触媒を再生する触媒再生工程と、
をさらに有し、
前記触媒再生工程で再生された固体触媒を、前記反応工程で再利用する<6>に記載の尿素結合化合物の製造方法。
<8>
酸化セリウムおよび沸点が100℃超の溶媒が存在する反応器を有し、前記反応器に、二酸化炭素と、沸点が100℃超である少なくとも1種のアミンと、を供給し、反応温度が100℃以上、かつ前記アミンおよび前記溶媒の沸点以下の条件下で、前記二酸化炭素と前記アミンとを反応させて、尿素結合化合物及び副生水を生成する反応塔と、
前記反応塔における前記反応器から、気相として排出された、未反応の前記二酸化炭素、未反応の前記アミン、前記副生水および前記溶媒を冷却して、気相として、未反応の前記二酸化炭素と、液相として、未反応の前記アミン、前記副生水および前記溶媒と、に分離する第1の冷却塔と、
前記第1の冷却塔で、液相として分離された、未反応の前記アミン、前記副生水および前記溶媒を蒸留により、気相として、前記副生水と、液相として、未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、に分離する第1の蒸留塔と、
前記反応塔における前記反応器から、液相として排出された、前記尿素結合化合物、未反応の前記アミンおよび前記溶媒を蒸留して、気相として、未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、液相として、前記尿素結合化合物と、に分離する第2の蒸留塔、又は、前記反応塔における前記反応器から、液相として排出された、前記尿素結合化合物、未反応の前記アミンおよび前記溶媒を冷却して、液相として、未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、固相として、前記尿素結合化合物と、に分離する第2の冷却塔と、
を備え、
前記第1の冷却塔で分離された未反応の前記二酸化炭素と、前記第1の蒸留塔で分離された未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、前記第2の蒸留塔又は第2の冷却塔で分離された未反応の前記アミンおよび前記溶媒と、を前記反応塔で再利用する、
尿素結合化合物の製造装置。
<9>
前記反応塔における前記反応器から、前記液相と共に固相として排出された固体触媒を前記液相と分離する分離塔と、
前記分離塔で分離した固体触媒を再生する触媒再生塔と、
をさらに備え、
前記触媒再生塔で再生された固体触媒を、前記反応塔で再利用する<8>に記載の尿素結合化合物の製造装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、穏和な反応条件下で、脱水剤又は化学的な水和剤を使用せずとも、副生水を反応場から除去しつつ、選択率が高く、かつ高収率で尿素結合化合物を製造する尿素結合化合物の製造方法、および尿素結合化合物の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置を示す概略構成図である。
図2】第2実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置を示す概略構成図である。
図3】実施例に係る尿素結合化合物の製造装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
「好ましい態様の組み合わせ」は、より好ましい態様である。
【0013】
本発明の尿素結合化合物の製造方法は、酸化セリウムおよび沸点が100℃超の溶媒との存在下で、二酸化炭素と、沸点が100℃超である少なくとも1種のアミンとを、反応温度100℃以上、かつアミンおよび溶媒の沸点以下の条件下で反応させて、尿素結合化合物及び副生水を生成(下記スキーム参照)し、かつ副生水を蒸発により反応場から除去する製造方法である。
【0014】
【化1】
【0015】
本発明の尿素結合化合物の製造方法では、上記手法により、穏和な反応条件下で、脱水剤又は化学的な水和剤を使用せずとも、副生水を反応場からへ除去しつつ、選択率が高く、かつ高効率で尿素結合化合物を製造できる。
本発明の尿素結合化合物の製造方法は、次の知見により、見出された。
【0016】
本発明者らは、尿素結合化合物の製造に際し、沸点が100℃超のアミンと二酸化炭素から尿素結合化合物を直接合成する方法に着目した。そして、発明者らは、次の知見を得た。
酸化セリウム(固体触媒)と溶媒との存在下で、二酸化炭素を導入しながら、アミンと反応させると、脱水剤又は化学的な水和剤を使用せずとも、沸点差を利用して尿素結合化合物と共に副生する副生水を反応場から除くことができる。それにより、低温、常圧の等の穏和な反応条件下で、二酸化炭素とアミンとの反応が進行する。
【0017】
以上の知見により、本発明の尿素結合化合物の製造方法では、穏和な反応条件下で、脱水剤又は化学的な水和剤を使用せずとも、副生水を反応場から除去しつつ、選択率が高く、かつ高効率で尿素結合化合物を製造できることが見出された。
【0018】
また、本発明の尿素結合化合物の製造方法では、固体触媒として、酸化セリウムを用いることで、従来のイオン性液体触媒での反応後の生成物等との分離の難しさや、触媒自体が熱分解を起こさないよう、反応温度の上限に制約があるという問題も解決できる。
【0019】
以下、本発明の尿素結合化合物の製造方法について、さらに詳細に説明する。
【0020】
本発明の尿素結合化合物の製造方法において、反応工程では、酸化セリウムおよび沸点が100℃超の溶媒の存在下、沸点が100℃超のアミンと二酸化炭素を直接反応させて尿素結合化合物を生成する。
本反応工程では、沸点が100℃超のアミンと二酸化炭素を反応させると尿素結合化合物の他に副生水も生成する。
【0021】
このときの反応条件を、反応温度が100℃以上(つまり、水の沸点以上)、かつアミンおよび溶媒の沸点以下の条件下とすると、溶媒およびアミンが液状のままで、副生水が蒸発して、反応場から除去され、尿素結合化合物の生成を促進させることが可能となる。
また、蒸発した副生水は二酸化炭素の気流によって反応場から除去することがよい。
【0022】
ここで、「蒸発により副生水を反応場から除去する」とは、尿素結合化合物が生成した反応場(つまり、アミン、固体触媒及び溶媒が存在する領域)から、全ての副生水を除去する以外に、一部の副生水が反応場に残留することも包含する。なお、反応場中に残留した副生水は、蒸留により分離可能である。
【0023】
(二酸化炭素)
二酸化炭素は、工業ガスとして調製されたものだけでなく、各製品を製造する工場や製鉄所、発電所等からの排出ガスから分離回収したものも用いることができる。
【0024】
(アミン)
アミンとしては、芳香環に官能基であるアミノ基が1つまたは2つ結合した化合物であればよく、アニリン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N-プロピルアニリン、N-ブチルアニリン、4,4‘-メチレンジアニリン、2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノトルエン等が挙げられる。
特に、収率向上の観点から、反応温度を高く設定でき、アミンとしては、高沸点なアルキルアニリン、具体的には4-ブチルアニリンが好ましい。
同じく、収率向上の観点から、アミンとしては、アミノ基を2つ有するアニリン、具体的には、4,4‘-メチレンジアニリン、及び、2,4-ジアミノトルエンの少なくとも1種が好ましい。また、これらアミンはポリウレタン(その中間体であるイソシアネート化合物の原料)として有用である。
【0025】
アミンの沸点は、常圧下で100℃超であるが、アミンと副生水との蒸留による分離性の観点から、101~400℃が好ましい。
【0026】
(触媒)
触媒としては、酸化セリウムが適用される。
ここで、尿素結合化合物の直接合成に用いる触媒は、酸塩基複合機能を有することが必要である。特に、触媒は、酸性度が比較的低く且つ塩基性度が比較的高い性質を有することが好ましい。尿素結合化合物が生成する機構として、適度な酸・塩基複合機能触媒において、アミンは、ルイス酸点上に吸着され、それに隣接する塩基点である格子酸素によりアミノ基の水素原子が吸着、活性化されることでアミンの求核性が向上する。二酸化炭素とアミンから生成したカルバミン酸の触媒表面吸着種に活性化されたアミンが付加することで、RHN-C(=O)-NHRが生成される機構が考えられる。この機構を発揮する触媒として、酸化セリウムが適している。
また、酸化セリウムは、固体触媒であるため、反応温度の上限に制約もなく、反応後の分離も容易である。
以上の理由から、触媒としては、酸化セリウムが適用される。
【0027】
酸化セリウムの製造方法の一例は、次の通りである。
酸化セリウムは、セリウム化合物(セリウムアセチルアセトナート水和物、水酸化セリウム、硫酸セリウム、酢酸セリウム、硝酸セリウム、硝酸アンモニウムセリウム、炭酸セリウム、蓚酸セリウム、過塩素酸セリウム、燐酸セリウム、ステアリン酸セリウム等)を空気雰囲気下で焼成することにより製造できる。
酸化セリウム以外の固体触媒も、同様に製造できる。
【0028】
なお、試薬の固体触媒を利用する場合、試薬のまま利用してもよいし、試薬を空気雰囲気下で乾燥した乾燥品又は焼成した焼成品を利用してもよい。
また、セリウムを溶解させた溶液から沈殿させ、濾過、乾燥、焼成して製造した固体触媒を利用できる。
【0029】
固体触媒の形態は、粉体、成型体のいずれの形態であってもよい。成型体の固体触媒は、触媒のみで、球状、ペレット状、シリンダー状、リング状、ホイール状、顆粒状などに成形してもよい。また、成型体の固体触媒は、固体触媒を被担持体(コージェライト製又はステンレス製のハニカム等)に塗布した成型体であってよい。
【0030】
固体触媒は、溶媒中に分散又は固定化した形態で使用する。ここで、固体触媒を溶媒中に固定化するとは、例えば、固体触媒が被担持体(コージェライト製又はステンレス製のハニカム等)に塗布された成型体を溶媒中に浸漬して配置することを示す。
【0031】
触媒性能が低下した場合は、反応器から触媒を取り出して、メタノールやエタノールなどのアルコールで洗浄後、空気中で100℃程度の温度で乾燥することで、再生することもできる。
【0032】
(溶媒)
溶媒は、固体触媒を分散又は固定化し、反応基質であるアミンを溶解させるための溶媒である。
溶媒は、二酸化炭素とアミンとの反応に影響を与えない溶媒が適用される。
溶媒としては、沸点が100℃超の溶媒であればよく、エーテル系、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が挙げられる。
具体的には、溶媒としては、トルエン、デカン、ドデカン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラリン、ジフェニルメタン、フェニルシクロヘキセン、ジフェニルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも、特に、選択率が高く、高効率で尿素結合化合物を生成する観点から、溶媒としては、親水性溶媒が好ましく、エーテル系溶媒(エーテル結合を有する溶媒)がより好ましく、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテルがより好ましい。
ここで、親水性溶媒とは、25℃の水1Lに溶解する量が5g超えの溶解性(g/L-HO)を示す溶媒である。
【0033】
(反応条件)
二酸化炭素とアミンとの反応条件は、反応温度が100℃以上(つまり、水の沸点以上)、かつアミンおよび溶媒の沸点以下の条件とする。
反応温度は、アミンおよび溶媒の沸点にもよるが、高効率な尿素結合化合物生成の観点から、101~300℃が好ましく、140~240℃がより好ましい。
【0034】
反応圧力は、常圧(1気圧)でもよく、加圧してもよい。加圧する際は、反応器の肉厚が必要となるため設備コストの観点から、反応圧力は、2MPa未満であることが好ましい。高圧ガス設備にも該当しなくなるため、反応圧力は、1MPa未満とすることが、より好ましい。
【0035】
二酸化炭素とアミンとの反応は、例えば、反応場としての、固体触媒を分散又は固定し、アミンを溶解した溶媒中に、二酸化炭素を導入して実施する。二酸化炭素は、例えば、バブリング装置を使用し、バブリングさせながら導入することが好ましい。特に連続的に導入することがより好ましい。
【0036】
例えば、実験室レベルでのビーカースケールでは、溶媒を収容したビーカーに、内径2mm程度のチューブから二酸化炭素を吹込めばよい。チューブの先にバブラーを設置してもよい。実機レベルでのスケールでは、スパージャーを用いて、二酸化炭素の導入と反応器内の流動を促進することができる。
【0037】
二酸化炭素、アミン、触媒、溶媒の各導入量は、反応器の容量に合わせて、適宜調整することが好ましい。
【0038】
二酸化炭素とアミンとの反応後の各成分は、冷却又は蒸留等により分離し、反応に再利用してもよいし、そのまま、排出してもよい。二酸化炭素については、二酸化炭素を循環させる場合とそのまま排出する場合とで、ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment:LCA)の観点から選択できる。
【0039】
次に、本発明の尿素結合化合物の製造方法および製造装置については、図面を参照しつつ説明する。
【0040】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置を示す概略構成図である。
第1実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置は、例えば、図1に示すように、二酸化炭素とアミンとを連続的に反応させて、尿素結合化合物及び副生水を生成する反応塔10を備える。
そして、反応塔10では、反応工程が実施される。
【0041】
また、第1実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置は、例えば、反応塔10から気相として排出された各成分を冷却および蒸留し、分離および再生するための、冷却塔11(第1の冷却塔の一例)と、蒸留塔12(第1の蒸留塔の一例)と、冷却塔13と、分離塔14と、を備える。
そして、各塔では、各々、冷却工程(第1の冷却工程の一例)と、蒸留工程(第1の蒸留工程の一例)と、冷却工程と、分離工程と、が実施される。
【0042】
また、第1実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置は、例えば、反応塔10から液相として排出された各成分を蒸留および冷却し、分離および再生するための、蒸留塔21と、分離塔22と、冷却塔23と、を備える。
そして、各塔では、蒸留工程(第2の蒸留工程の一例)と、分離工程と、冷却工程と、が実施される。
【0043】
図1中、100Aは、反応塔10に導入するアミンRNHを示す。
100Bは、反応塔10に導入する二酸化炭素COを示す。
100Cは、反応塔10に導入する溶媒Solを示す。
101は、反応塔10から排出される気相(未反応二酸化炭素CO、未反応アミンRNH、副生水HOおよび溶媒Sol)を示す。
102は、冷却塔11(第1の冷却塔の一例)から排出される気相(未反応二酸化炭素CO)を示す。
103は、冷却塔11(第1の冷却塔の一例)から排出される液相(未反応アミンRNH、副生水HOおよび溶媒Sol)を示す。
104は、蒸留塔12(第1の蒸留塔の一例)から排出され気相(副生水HO)を示す。
105は、蒸留塔12(第1の蒸留塔の一例)から排出され液相(未反応アミンRNHおよび溶媒Sol)を示す。
106は、冷却塔13から排出される液相(副生水HO)を示す。
107は、分離塔14から排出される液相(未反応アミンRNH)を示す。
108は、分離塔14から排出される液相(溶媒Sol)を示す。
201は、反応塔10から排出される液相(尿素結合化合物Urea、未反応アミンRNH、および溶媒Sol)を示す。
202は、蒸留塔21(第2の蒸留塔の一例)から排出される気相(未反応アミンRNHおよび溶媒Sol)を示す。
203は、蒸留塔21(第2の蒸留塔の一例)から排出される液相(尿素結合化合物Urea)を示す。
204は、分離塔22から排出される液相(未反応アミンRNH)を示す。
205は、分離塔22から排出される液相(溶媒Sol)を示す。
206は、冷却塔23から排出される固相(尿素結合化合物Urea)を示す。
なお、図示しないが、各塔は、配管によって連結されている。
【0044】
(反応塔10:反応工程)
反応塔10では、反応工程が実施される。
反応工程は、酸化セリウム及び溶媒が存在する反応器10Aに、二酸化炭素と、沸点が100℃超である少なくとも1種のアミンと、を連続的に供給し、反応温度が100℃以上、かつアミンおよび溶媒の沸点以下の条件下で、二酸化炭素とアミンとを反応させて、尿素結合化合物及び副生水を生成する。
【0045】
具体的には、反応器10Aに、固体触媒が固定化されて、溶媒を収容する。反応器10A中の溶媒に、液相のアミンを下方から供給すると共に、常圧(気相)の二酸化炭素を下方からバブリングしながら導入する。そして、反応器10A内を所定の反応温度、反応圧力とする。それにより、二酸化炭素とアミンとを反応させて、尿素結合化合物及び副生水を生成する。
【0046】
反応塔10(その反応器10A)は、例えば、半回分式反応器、流通式反応器(連続槽型反応器、管型反応器等)のいずれの反応器を適用してもよい。
【0047】
(冷却塔11(第1の冷却塔の一例))
冷却塔11では、冷却工程(第1の冷却工程)が実施される。
冷却工程は、反応塔(反応工程)における反応器10Aから、気相として排出された、未反応の二酸化炭素、未反応のアミン(反応塔10の反応器10A中の未反応のアミンの一部が気化したアミン)、副生水(蒸発した副生水)および溶媒(反応塔10の反応器10A中の溶媒の一部が気化した溶媒)を冷却する。このとき、未反応のアミン、副生水、溶媒は、未反応の二酸化炭素の気流に乗って、反応塔10から排出される。
それにより、気相として、未反応の二酸化炭素と、液相として、未反応のアミン、副生水および溶媒と、に分離される。そして、これら成分は冷却塔11から排出される。
【0048】
ここで、冷却塔11(冷却工程)における、冷却温度は、未反応のアミン、副生水および溶媒の沸点未満(具体的には、100℃未満)とする。
【0049】
(蒸留塔12(第1の蒸留塔の一例))
蒸留塔12では、蒸留工程(第1の蒸留工程)が実施される。
蒸留工程では、冷却塔11(冷却工程)で、液相として分離された、未反応のアミン、副生水および溶媒を蒸留する。
それにより、気相として、副生水と、液相として、未反応のアミンおよび溶媒と、に分離される。そして、これら成分は、蒸留塔12から排出される。
【0050】
ここで、蒸留塔12(蒸留工程)における、蒸留温度は、副生水の沸点以上、未反応のアミンおよび溶媒の沸点未満とする。
【0051】
(冷却塔13)
冷却塔13では、冷却工程が実施される。
冷却工程では、蒸留塔12(蒸留工程)から、気相として排出された副生水を冷却する。それにより、副生水は、液化される。そして、副生水は液相として冷却塔13から排出される。
【0052】
(分離塔14)
分離塔14では、例えば、蒸留塔と冷却塔により、未反応のアミンおよび溶媒を分離する分離工程が実施される。
分離工程では、蒸留塔12(蒸留工程)から、液相として排出された、未反応のアミンおよび溶媒を、互いの沸点差を利用して分離及び液化するように、蒸留および冷却する。
それにより、液相として、未反応のアミンと、溶媒と、に分離される。そして、これら成分は、分離塔14から排出される。
【0053】
(蒸留塔21(第2の蒸留塔の一例))
蒸留塔21では、蒸留工程(第2の蒸留工程の一例)が実施される。
蒸留工程では、反応塔10(反応工程)における反応器10Aから、液相として排出された、尿素結合化合物、未反応のアミンおよび溶媒を蒸留する。
それにより、気相として、未反応のアミンおよび溶媒と、液相として、尿素結合化合物と、に分離される。そして、未反応のアミンおよび溶媒は、蒸留塔21から排出され、目的物である尿素結合化合物は、蒸留塔21から回収される。
【0054】
ここで、蒸留塔21(蒸留工程)における、蒸留温度は、未反応のアミンおよび溶媒の沸点以上、尿素結合化合物の沸点未満とする。
【0055】
(分離塔22)
分離塔22では、例えば、2つの冷却塔により、未反応のアミンおよび溶媒を分離する分離工程が実施される。
分離工程では、例えば、蒸留塔21(蒸留工程)から、気相として排出された、未反応のアミンおよび溶媒を、互いの沸点差を利用して分離及び液化するように、冷却する。
それにより、液相として、未反応のアミンと、溶媒と、に分離される。そして、これら成分は、分離塔24から排出される。
【0056】
(冷却塔23)
冷却塔23では、例えば、液相の尿素結合化合物を冷却する冷却工程が実施される。
冷却工程では、例えば、蒸留塔21(蒸留工程)から、液相として排出された、尿素結合化合物を融点まで冷却し、固化する。
それにより、固相として、尿素結合化合物を回収する。
なお、冷却塔23を設けず、蒸留塔24で、液相として、排出された尿素結合化合物を、融点以下まで自然冷却により固化して、回収してもよい。
【0057】
(再利用)
第1実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置において、冷却塔11(第1の冷却工程)で分離された未反応の二酸化炭素(気相)と、分離塔14で分離された未反応のアミンおよび溶媒と、分離塔22で分離された未反応のアミンおよび溶媒を、反応塔10(反応工程)で再利用する。
なお、蒸留塔12、21で分離された未反応のアミンおよび溶媒(つまり、未反応のアミンおよび溶媒の混合液)を、分離せずに、そのまま、反応塔10(反応工程)で再利用してもよい。
【0058】
以上の過程を経て、第1実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置では、尿素結合化合物が製造される。
【0059】
[第2実施形態]
図2に、第2実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置を示す概略構成図を示す。
第2実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置は、例えば、図2に示すように、反応塔10から液相として排出された各成分から個体触媒を分離し、かつ当該各成分を冷却および蒸留し、分離および再生するための、分離塔31と、触媒再生塔32と、冷却塔41と、分離塔42と、を備える。
なお、第2実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置は、反応塔10から液相として排出された各成分を処理する各塔以外は、第1実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置と同様な構成である。そのため、第1実施形態と同じ事項については、説明を省略する。
【0060】
図2中、301は、液相(尿素結合化合物Urea、未反応のアミンRNH、および溶媒Sol)と共に固相として排出された固体触媒Catを示す。
302は、分離塔31で分離された固体触媒Catを示す。
302は、触媒再生塔32で再生された固体触媒Catを示す。
401は、分離塔31から排出される液相(尿素結合化合物Urea、未反応アミンRNH、および溶媒Sol)を示す。
402は、冷却塔41から排出される液相(未反応アミンRNH、および溶媒Sol)を示す。
403は、冷却塔41から排出される固相(尿素結合化合物Urea)を示す。
404は、分離塔42から排出される液相(未反応アミンRNH)を示す。
405は、分離塔42から排出される液相(溶媒Sol)を示す。
その他、符号は、図1に付された符号と同じ対象を示す。
【0061】
(分離塔31)
分離塔31では、分離工程が実施される、
分離工程では、反応塔10(反応工程)における反応器10Aから、液相(尿素結合化合物、未反応のアミン、および溶媒)と共に固相として排出された固体触媒を液相と分離する。
具体的には、フィルター等を利用して、固体触媒を液相と分離する。分離された固体触媒は、固体触媒を含むスラリーとして、分離塔31から排出される。
そして、固体触媒と分離された液相(尿素結合化合物、未反応のアミン、および溶媒)は、分離塔31から排出され、蒸留塔21へと送られる。
【0062】
(触媒再生塔32)
触媒再生塔32では、触媒再生工程が実施される。
触媒再生工程では、分離塔31(分離工程)で分離された固体触媒を再生する。
具体的には、触媒再生工程では、例えば、固体触媒を焼成して、固体触媒上の不純物等を焼き飛ばすことにより、固体触媒を再生する。
なお、焼成は、例えば、300~700℃(好ましくは400~600℃)で3時間程実施する。なお、急激な昇温により固体触媒の構造破壊を防ぐため、焼成前に、110℃で2時間程度乾燥させることが好ましい。
【0063】
(触媒再利用)
そして、第2実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置では、触媒再生塔32(触媒再生工程)で再生した固体触媒を、反応塔10(反応工程)で再利用する。
なお、例えば、反応炉10A内の溶媒中に粉末状の固体触媒を分散させた状態とした場合、分離塔31(分離工程)及び触媒再生塔32(触媒再生工程)は、反応器10Aから、液相と共に固相として一部の固体触媒が排出されることがあるため、設けることがよい。
一方で、反応器10内に固体触媒を固定化した場合、分離塔31(分離工程)及び触媒再生塔32(触媒再生工程)は設けなくてもよい。
【0064】
(冷却塔41(第2の冷却塔の一例))
冷却塔41では、冷却工程(第2の冷却工程)が実施される。
冷却工程は、反応塔10(反応工程)における反応器10Aから排出され、かつ固体触媒と分離された、液相(尿素結合化合物、未反応のアミン、および溶媒)を冷却する。
それにより、尿素結合化合物を固化させた後、フィルター等により回収することで、液相として、未反応のアミンおよび溶媒と、固相として尿素結合化合物と、に分離される。
【0065】
ここで、冷却塔41(第2の冷却工程)における、冷却温度は、尿素結合化合物の融点以下とする。
【0066】
(分離塔42)
分離塔42では、例えば、蒸留塔と冷却塔により、未反応のアミンおよび溶媒を分離する分離工程が実施される。
分離工程では、冷却塔41から、液相として排出された、未反応のアミンおよび溶媒を、互いの沸点差を利用して分離及び液化するように、蒸留および冷却する。
それにより、液相として、未反応のアミンと、溶媒と、に分離される。そして、これら成分は、分離塔42から排出される。
【0067】
(再利用)
第2実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置において、分離塔42で分離された未反応のアミンおよび溶媒を、反応塔10(反応工程)で再利用する。
なお、冷却塔42で分離された未反応のアミンおよび溶媒(つまり、未反応のアミンおよび溶媒の混合液)を、分離せずに、そのまま、反応塔10(反応工程)で再利用してもよい。
【0068】
[その他形態]
第1及び第2実施形態に係る尿素結合化合物の製造装置(又は製造方法)では、反応塔10から排出される液相としての成分に微量の副生水が含まれることもある。その場合、反応塔10から排出される成分から、副生水を分離するための蒸留塔(蒸留工程)および冷却塔(冷却工程)を設けてもよい。
ただし、反応塔10から排出される液相としての成分から、微量の副生水を分離するのは難しく、大量のエネルギーを要するため、微量の副生水は分離しないことがよい。
【実施例0069】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0070】
(参考例1)
回分式反応器(内容積190mL)に、触媒としてCeO:0.34g(≒2mmol)、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン:8mLを導入した。そして、更に、n-ブチルアニリンを20mmolとなる量で導入した。
その後、圧力5MPaでCOを反応器に導入し、160℃、4時間で、COとアニリンとを反応させた。
その後、反応器を空冷し、室温まで冷えたら、生成物を採取し、GC(ガスクロマトグラフィー)で分析した。
それにより、収率、ダイマーの尿素結合化合物の選択率、トリマー以上の尿素結合化合物の選択率を求めた。その結果は、次の通りであった。
収率=72%
ダイマーの尿素結合化合物の選択率=99%
その他化合物の選択率=1%
【0071】
(比較例1)
回分式反応器(内容積190mL)に、触媒としてCeO:0.34g(≒2mmol)、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン:8mLを導入した。そして、更に、n-ブチルアニリンを20mmolとなる量で導入した。
その後、圧力0.5MPaでCOを反応器に導入し、160℃、4時間で、COとアニリンとを反応させた。
その後、フラスコを空冷し、室温まで冷えたら、生成物を採取し、GC(ガスクロマトグラフィー)で分析した。
それにより、収率、ダイマーの尿素結合化合物の選択率、トリマー以上の尿素結合化合物の選択率を求めた。その結果は、次の通りであった。
収率=55%
ダイマーの尿素結合化合物の選択率=94%
その他化合物の選択率=6%
【0072】
(比較例2)
回分式反応器(内容積190mL)に、触媒としてCeO:0.34g(≒2mmol)、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン:8mLを導入した。そして、更に、n-ブチルアニリンを20mmolとなる量で導入した。
その後、圧力0.1MPaでCOを反応器に導入し、160℃、4時間で、COとアニリンとを反応させた。
その後、フラスコを空冷し、室温まで冷えたら、生成物を採取し、GC(ガスクロマトグラフィー)で分析した。
それにより、収率、ダイマーの尿素結合化合物の選択率、トリマー以上の尿素結合化合物の選択率を求めた。その結果は、次の通りであった。
収率=24%
ダイマーの尿素結合化合物の選択率=81%
その他化合物の選択率=19%
【0073】
(実施例1~12)
図3に示す反応装置を用いて尿素結合化合物を合成した。具体的には、流通式(連続式)、ナス型フラスコ200mL(上部冷却温度20℃)に、触媒としてCeO:0.1g(≒0.58mmol)、溶媒としてトリグリム:2mLを導入した。そして、更に、表1に示すアミンを10mmolとなる量で導入した。
その後、圧力0.1MPa、流量200mL/minでCOをバブリングさせながらフラスコ内に導入し、表1に示す反応温度及び反応時間で、COとアミンとを反応させた。
その後、フラスコを空冷し、室温まで冷えたら、生成物を採取し、GC(ガスクロマトグラフィー)で分析した。
それにより、収率、ダイマーの尿素結合化合物の選択率、トリマー以上の尿素結合化合物(表中、その他と表記)の選択率を求めた。その結果を表1に示す。
ここで、図3中、10はフラスコ、43は凝集装置、44は熱電対を示す。
また、100Aはフラスコに導入されるアミン、100Bはフラスコに導入される二酸化炭素、100Cはフラスコに導入される二酸化炭素、100は反応後にフラスコ外に排出される二酸化炭素及び水を示す。
【0074】
【表1】
【0075】
以上から、参考例1、比較例1及び比較例2では、回分式反応器を用いた反応で、圧力が低くなるほど、収率や選択率が低くなることがわかる。
一方、本実施例では、回分式反応器よりも反応条件としては厳しい連続式反応器を用いているにもかかわらず、低圧力という穏和な反応条件下で、脱水剤又は化学的な水和剤を使用せずとも、副生水を反応場からへ除去しつつ、選択率が高く、高効率で尿素結合化合物を製造できることがわかる。また、連続式反応器を用いれば、副生水が反応系内に留まらずに系外に排出されることから、反応時間を増加させることで、収率を向上することができる。
【0076】
(実施例13)
図2に示す製造装置を用いて尿素結合化合物を製造した。具体的には、触媒として酸化セリウム10gと、溶媒としてトリグリム200g、反応基質として4-ブチルアニリン1mol(149g)を反応塔10の反応器10Aに充填した。その後、反応器10Aを170℃程度に加熱して、圧力0.1MPa、流量1L/minでCOを供給した。30h反応させる中で、副生する水、一部揮発した未反応の4-ブチルアニリン、一部揮発した溶媒のトリグリムは、未反応のCOの気流と共に反応器10A上部から排気され、冷却塔11に供給された。冷却塔11にて室温で冷却することで、CO以外の成分は凝縮して液化し、COは反応器10A上流のCO供給ラインにリサイクルした。液化した成分は蒸留塔12にて100℃程度で蒸留することで、水のみを分離し、さらに、蒸留塔14にて220℃程度で蒸留することで、溶媒のトリグリムのみを気化して、未反応の4-ブチルアニリンと分離して、反応器10A前の供給ラインにリサイクルした。
また、反応器10Aから排出した触媒及び液相の尿素結合化合物、未反応の4-ブチルアニリン、トリグリムは、分離塔31にてフィルターを用いて触媒を分離した。分離した触媒は、触媒再生塔32にて触媒を再生して、反応器10Aにリサイクルした。触媒分離後の尿素結合化合物、未反応の4-ブチルアニリン、トリグリムは、冷却塔41にて室温程度に冷却することで、尿素結合化合物のみを固化、分離し、さらに、蒸留塔42にて220℃程度で蒸留することで、溶媒のトリグリムのみを気化して、未反応の4-ブチルアニリンと分離して、反応器10A前の供給ラインにリサイクルした。
このようにして製造した尿素結合化合物は、4-ブチルアニリン基準で、30%の収率、99%以上の選択率で製造することができた。
【符号の説明】
【0077】
10 反応塔
11 冷却塔(第1の冷却塔の一例)
12 蒸留塔(第1の蒸留塔の一例)
13 冷却塔
14 分離塔
21 蒸留塔(第2の蒸留塔の一例)
22 分離塔
41 冷却塔(第2の冷却塔の一例)
43 凝縮装置
44 熱電対
図1
図2
図3