(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089471
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】建築用接合プレート材及び建築部材の接合部構造
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20240626BHJP
E04B 1/18 20060101ALI20240626BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240626BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240626BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
E04H9/02 301
E04B1/18 E
E04B1/58 504Z
F16F15/02 Z
F16F7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204859
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183428
【氏名又は名称】住友林業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522496493
【氏名又は名称】株式会社カナイグループ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊川 佳伸
(72)【発明者】
【氏名】入江 康孝
(72)【発明者】
【氏名】松本 和喜
(72)【発明者】
【氏名】浅見 忠明
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】金井 亮太
(72)【発明者】
【氏名】金井 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 正芳
(72)【発明者】
【氏名】橋本 優也
【テーマコード(参考)】
2E125
2E139
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AA53
2E125AB04
2E125AE13
2E125CA03
2E125CA79
2E139AA01
2E139AC19
2E139BA06
3J048AA06
3J048AC06
3J048BC09
3J048BE10
3J048EA38
3J066AA26
3J066BA03
3J066BD07
3J066BF01
3J066BG05
(57)【要約】
【課題】塑性変形する部分が変形してエネルギーを吸収する際に、面外に変形し易くなったり、固定領域の間で変位し易くなったりするのを抑制できる建築用接合プレート材を提供する。
【解決手段】建築物を構成する隣接する一対の建築部材31,33,34の接合部に取り付けられて、負荷される一対の建築部材31,33,34の間の連結荷重を支持する建築用接合プレート材であって、梁31や柱33に固着される第1固定領域11と、耐力面材34に固着される第2固定領域12と、これらの間に挟まれた帯状塑性化領域13とを含んでいる。帯状塑性化領域13は、一方の端縁部から他方の端縁部まで連続する中間連続部14と、第1固定領域11側の、複数の開口穴15aが連設する第1領域側開口列部15と、第2固定領域12側の、複数の開口穴16aが連設する第2領域側開口列部16とを有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物を構成する隣接する一対の建築部材の接合部に取り付けられて、これらの建築部材を接合すると共に、接合部に負荷される一対の建築部材の間の連結荷重を支持する建築用接合プレート材であって、
一方の建築部材に固着される第1固定領域と、他方の建築部材に固着される第2固定領域と、これらの第1固定領域と第2固定領域との間に挟まれた帯状塑性化領域とを含んで形成されており、
前記帯状塑性化領域は、当該帯状塑性化領域の長さ方向の一方の端縁部から他方の端縁部まで連続する中間連続部と、該中間連続部を挟んだ前記第1固定領域側の、前記帯状塑性化領域の長さ方向に連設する複数の開口穴が形成された第1領域側開口列部と、前記中間連続部を挟んだ前記第2固定領域側の、前記帯状塑性化領域の長さ方向に連設する複数の開口穴が形成された第2領域側開口列部とを有している建築用接合プレート材。
【請求項2】
前記帯状塑性化領域における前記第1領域側開口列部に形成された複数の開口穴と、前記第2領域側開口列部に形成された複数の開口穴とが、同様の形状で同数形成されている請求項1記載の建築用接合プレート材。
【請求項3】
前記開口穴は、3か所の角部を湾曲形状に面取りした、不等辺の略直角三角形状の開口となっており、前記第1領域側開口列部の複数の前記開口穴と、前記第2領域側開口列部の複数の前記開口穴とが、不等辺の略直角三角形状の斜辺部を外側に向けて平行に配置すると共に、不等辺の略直角三角形状の直角部分を挟んだ長辺側の部分を対向させて平行に配置した状態で、前記帯状塑性化領域の長さ方向に各々連設している請求項2記載の建築用接合プレート材。
【請求項4】
前記開口穴は、3か所の角部を湾曲形状に面取りした、略二等辺三角形状の開口となっており、前記第1領域側開口列部の複数の前記開口穴と、前記第2領域側開口列部の複数の前記開口穴とが、略二等辺三角形状の頂部を内側に向けて突合せると共に、底辺部側を外側に向けて配置した状態で、前記帯状塑性化領域の長さ方向に各々連設している請求項2記載の建築用接合プレート材。
【請求項5】
前記第2固定領域が、前記第1固定領域及び前記帯状塑性化領域に対して、垂直な方向に折れ曲がって連続して設けられた部分を含んでいる請求項1~4のいずれか1項記載の建築用接合プレート材。
【請求項6】
前記第2固定領域が、2対の前記第1固定領域及び前記帯状塑性化領域に対して、垂直な方向に折れ曲がって連続して設けられた部分を含んでいる請求項5記載の建築用接合プレート材。
【請求項7】
前記第2固定領域が、2対の前記第1固定領域及び前記帯状塑性化領域と、平行に延設して連続して設けられた部分を含んでいる請求項1~4のいずれか1項記載の建築用接合プレート材。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項記載の建築用接合プレート材を用いた、建築物を構成する隣接する一対の建築部材の接合部構造であって、
接合される一方の建築部材における前記建築用接合プレート材の第1固定領域の固着面と、他方の建築部材における前記建築用接合プレート材の第2固定領域の固着面とが、面一に配置されており、
平坦な一枚の面形状の前記建築用接合プレート材が、前記第1固定領域を前記一方の建築部材の前記固着面に、前記第2固定領域を前記他方の建築部材の前記固着面に各々固着した状態で、隣接する一対の建築部材の接合部に取り付けられている建築部材の接合部構造。
【請求項9】
請求項5記載の建築用接合プレート材を用いた、建築物を構成する隣接する一対の建築部材の接合部構造であって、
一方の建築部材の側面に、他方の建築部材の端部が接合されるようになっており、
T字状又はL字状の断面形状を備える前記建築用接合プレート材は、前記第1固定領域が、前記他方の建築部材の端部に固着され、前記第2固定領域が、前記一方の建築部材の側面に固着された状態で、隣接する一対の建築部材の接合部に取り付けられている建築部材の接合部構造。
【請求項10】
前記第1固定領域は、前記他方の建築部材の端面部分に形成されたスリット溝に差し込まれて、前記他方の建築部材の端部に固着されている請求項9記載の建築部材の接合部構造。
【請求項11】
請求項6記載の建築用接合プレート材を用いた、建築物を構成する隣接する一対の建築部材の接合部構造であって、
一方の建築部材の側面に、他方の建築部材の端部が接合されるようになっており、コの字状の断面形状を備える前記建築用接合プレート材は、二対の前記第1固定領域及び前記帯状塑性化領域が、前記他方の建築部材の端面部分に形成された一対のスリット溝に各々差し込まれて前記他方の建築部材の端部に固着され、前記第2固定領域が、前記一方の建築部材の側面に固着された状態で、隣接する一対の建築部材の接合部に取り付けられている建築部材の接合部構造。
【請求項12】
請求項7記載の建築用接合プレート材を用いた、建築物を構成する隣接する一対の建築部材の接合部構造であって、
一方の建築部材の側面に、他方の建築部材の端部が接合されるようになっており、前記建築用接合プレート材は、二対の前記第1固定領域及び前記帯状塑性化領域が、前記他方の建築部材の端面部分に形成された一対のスリット溝に各々差し込まれて前記他方の建築部材の端部に固着され、前記第2固定領域が、前記一方の建築部材の側面に取り付けられたガセットプレートに固着された状態で、隣接する一対の建築部材の接合部に取り付けられている建築部材の接合部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用接合プレート材及び建築部材の接合部構造に関し、特に一対の建築部材の接合部に負荷される連結荷重を支持する建築用接合プレート材、及び該建築用接合プレート材を用いた建築部材の接合部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物を構成する隣接する一対の建築部材の接合部に取り付けられて、これらの建築部材を接合すると共に、接合部に負荷される連結荷重を支持する金物として、例えば柱と梁の二部材を丁字状に締結する際に用いる締結金物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特に特許文献1の締結金物では、例えば柱の側面に接触し、且つボルトや釘で柱に固定される前面部と、例えば梁の端面部に加工されたスリットに差し込まれ、且つドリフトピンで梁に固定される後縁部とを有しており、また前面部と後縁部は、地震時などに接合部に過大な荷重が作用したときに、塑性変形を誘発させることを目的として、帯状に延びる複数の枝状部を介して一体化されている。これによって、例えば地震時にドリフトピンなどに過大な荷重が作用しても、枝状部が、根元付近を支点として押し下げられるようにして塑性変形することで、エネルギーを吸収し、柱や梁に作用する負荷を軽減することによって、建築物の骨組構造を破壊させることなく保持可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の締結金物では、枝状部が押し下げられるように塑性変形してエネルギーを吸収することで、接合部に過大な荷重が作用したときに、柱や梁に作用する負荷を軽減することが可能であるが、その一方で、前面部と後縁部とを一体化する複数の帯状の枝状部は、例えば上下に隣接する当該枝状部の間に相当の大きさの空間部を介在させており、また、当該枝状部が細長い形状であることから、例えば差し込まれたスリットにおいて、締結金物がスリットの面外に変形し易くなって、梁等にヒビ割れを発生させたり、発生したヒビ割れが成長してゆくのを助長させたりすることが考えられる。このようなことから、締結金物(建築用接合プレート材)が塑性変形してエネルギーを吸収する際に、例えば差し込まれたスリットにおいて面外に変位し易くなるのを効果的に抑制するための、新たな技術の開発が望まれている。
また、特許文献1の締結金物では、枝状部が根元付近を支点として押し下げられるように塑性変形する際に、例えば柱に固定された一方の固定領域である前面部に対して、梁に固定された他方の固定領域である後縁部が、例えば空間部が菱形に変形することによって、前面部との間隔を狭めたり広げたりしながら、梁の軸方向に変位し易くなるので、これによっても、柱や梁にヒビ割れを発生させたり、発生したヒビ割れが成長してゆくのを助長させたりする場合があると考えられる。
【0006】
本発明は、一対の建築部材の接合部に過大な荷重が作用して、塑性変形を誘発させる部分が変形することによりエネルギーを吸収する際に、面外に変形し易くなったり、固定領域の間で変位し易くなったりするのを、効果的に抑制することのできる建築用接合プレート材、及び該建築用接合プレート材を用いた建築部材の接合部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、建築物を構成する隣接する一対の建築部材の接合部に取り付けられて、これらの建築部材を接合すると共に、接合部に負荷される一対の建築部材の間の連結荷重を支持する建築用接合プレート材であって、一方の建築部材に固着される第1固定領域と、他方の建築部材に固着される第2固定領域と、これらの第1固定領域と第2固定領域との間に挟まれた帯状塑性化領域とを含んで形成されており、前記帯状塑性化領域は、当該帯状塑性化領域の長さ方向の一方の端縁部から他方の端縁部まで連続する中間連続部と、該中間連続部を挟んだ前記第1固定領域側の、前記帯状塑性化領域の長さ方向に連設する複数の開口穴が形成された第1領域側開口列部と、前記中間連続部を挟んだ前記第2固定領域側の、前記帯状塑性化領域の長さ方向に連設する複数の開口穴が形成された第2領域側開口列部とを有している建築用接合プレート材を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
そして、本発明の建築用接合プレート材は、前記帯状塑性化領域における前記第1領域側開口列部に形成された複数の開口穴と、前記第2領域側開口列部に形成された複数の開口穴とが、同様の形状で同数形成されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の建築用接合プレート材は、前記開口穴が、3か所の角部を湾曲形状に面取りした、不等辺の略直角三角形状の開口となっており、前記第1領域側開口列部の複数の前記開口穴と、前記第2領域側開口列部の複数の前記開口穴とが、不等辺の略直角三角形状の斜辺部を外側に向けて平行に配置すると共に、不等辺の略直角三角形状の直角部分を挟んだ長辺側の部分を対向させて平行に配置した状態で、前記帯状塑性化領域の長さ方向に各々連設していることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の建築用接合プレート材は、前記開口穴が、3か所の角部を湾曲形状に面取りした、略二等辺三角形状の開口となっており、前記第1領域側開口列部の複数の前記開口穴と、前記第2領域側開口列部の複数の前記開口穴とが、略二等辺三角形状の頂部を内側に向けて突合せると共に、底辺部側を外側に向けて配置した状態で、前記帯状塑性化領域の長さ方向に各々連設していることが好ましい。
【0011】
さらにまた、本発明の建築用接合プレート材は、前記第2固定領域が、前記第1固定領域及び前記帯状塑性化領域に対して、垂直な方向に折れ曲がって連続して設けられた部分を含んでいることが好ましい。
【0012】
また、本発明の建築用接合プレート材は、前記第2固定領域が、2対の前記第1固定領域及び前記帯状塑性化領域に対して、垂直な方向に折れ曲がって連続して設けられた部分を含んでいることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の建築用接合プレート材は、前記第2固定領域が、2対の前記第1固定領域及び前記帯状塑性化領域と、平行に延設して連続して設けられた部分を含んでいることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、上記の建築用接合プレート材を用いた、建築物を構成する隣接する一対の建築部材の接合部構造であって、接合される一方の建築部材における前記建築用接合プレート材の第1固定領域の固着面と、他方の建築部材における前記建築用接合プレート材の第2固定領域の固着面とが、面一に配置されており、平坦な一枚の面形状の前記建築用接合プレート材が、前記第1固定領域を前記一方の建築部材の前記固着面に、前記第2固定領域を前記他方の建築部材の前記固着面に各々固着した状態で、隣接する一対の建築部材の接合部に取り付けられている建築部材の接合部構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0015】
さらに、本発明は、上記の建築用接合プレート材を用いた、建築物を構成する隣接する一対の建築部材の接合部構造であって、一方の建築部材の側面に、他方の建築部材の端部が接合されるようになっており、T字状又はL字状の断面形状を備える前記建築用接合プレート材は、前記第1固定領域が、前記他方の建築部材の端部に固着され、前記第2固定領域が、前記一方の建築部材の側面に固着された状態で、隣接する一対の建築部材の接合部に取り付けられている建築部材の接合部構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0016】
ここで、前記第1固定領域は、前記他方の建築部材の端面部分に形成されたスリット溝に差し込まれて、前記他方の建築部材の端部に固着されていることが好ましい。
【0017】
さらにまた、本発明は、上記の建築用接合プレート材を用いた、建築物を構成する隣接する一対の建築部材の接合部構造であって、一方の建築部材の側面に、他方の建築部材の端部が接合されるようになっており、コの字状の断面形状を備える前記建築用接合プレート材は、二対の前記第1固定領域及び前記帯状塑性化領域が、前記他方の建築部材の端面部分に形成された一対のスリット溝に各々差し込まれて前記他方の建築部材の端部に固着され、前記第2固定領域が、前記一方の建築部材の側面に固着された状態で、隣接する一対の建築部材の接合部に取り付けられている建築部材の接合部構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0018】
また、本発明は、上記の建築用接合プレート材を用いた、建築物を構成する隣接する一対の建築部材の接合部構造であって、一方の建築部材の側面に、他方の建築部材の端部が接合されるようになっており、前記建築用接合プレート材は、二対の前記第1固定領域及び前記帯状塑性化領域が、前記他方の建築部材の端面部分に形成された一対のスリット溝に各々差し込まれて前記他方の建築部材の端部に固着され、前記第2固定領域が、前記一方の建築部材の側面に取り付けられたガセットプレートに固着された状態で、隣接する一対の建築部材の接合部に取り付けられている建築部材の接合部構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の建築用接合プレート材又は該建築用接合プレート材を用いた建築部材の接合部構造によれば、一対の建築部材の接合部に過大な荷重が作用して、塑性変形を誘発させる部分が変形することによりエネルギーを吸収する際に、面外に変形し易くなったり、固定領域の間で変位し易くなったりするのを、効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい第1実施形態及び第2実施形態及びに係る建築用接合プレート材、及び建築部材の接合部構造を説明する略示正面図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の好ましい第1実施形態に係る建築用接合プレート材の正面図、
図2(b)は側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の好ましい第2実施形態に係る建築用接合プレート材の斜視図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態の建築用接合プレート材を用いた他の建築部材の接合部構造を説明する分解斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の好ましい第3実施形態に係る建築用接合プレート材、及びこれを用いた建築部材の接合部構造を説明する分解斜視図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の好ましい第4実施形態に係る建築用接合プレート材を用いた建築部材の接合部構造を説明する側面図、
図6(b)は、
図6(a)のA-Aに沿った断面図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(c)は、第1領域側開口列部及び第2領域側開口列部を形成する開口穴の他の形態を例示する略示正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい第1実施形態に係る建築用接合プレート材10は、
図1に示すように、例えば木製の角材からなる梁31と、土台32と、一対の柱33とによって囲まれる矩形架構の内側に、例えば合板からなる耐力面材34を取り付けて、耐震補強する際に、建築物を構成する隣接する一対の建築部材として、梁31と耐力面材34との接合部や、柱33と耐力面材34との接合部に取り付けられて、接合部構造20を形成するための金物として用いられる。本第1実施形態の建築用接合プレート材10は、地震時などに梁31と耐力面材34との接合部や、柱33と耐力面材34との接合部に過大な荷重が作用したときに、塑性変形を誘発させることでエネルギーを吸収し、梁31や柱33や耐力面材34に作用する負荷を軽減することによって、これらの建築部材31,33,34による骨組構造を破壊させることなく保持可能とすると共に、一方の建築部材31,33と他方の建築部材34に圧縮方向の力や引張り方向の力が生じるのを抑制して、これらの建築部材31,33,34にヒビ割れを発生させたり、発生したヒビ割れが成長してゆくのを助長させることがないようにする機能を備えている。
【0022】
そして、本第1実施形態の建築用接合プレート材10は、建築物を構成する隣接する一対の建築部材31,33,34の接合部に取り付けられて、これらの建築部材31,33,34を接合すると共に、接合部に負荷される一対の建築部材31,33,34の間の連結荷重を支持する接合用の金物であって、
図2にも示すように、一方の建築部材として梁31や柱33に固着される第1固定領域11と、他方の建築部材として耐力面材34に固着される第2固定領域12と、これらの第1固定領域11と第2固定領域12との間に挟まれた帯状塑性化領域13とを含んで形成されている。帯状塑性化領域13は、当該帯状塑性化領域13の長さ方向の一方の端縁部から他方の端縁部まで連続する中間連続部14と、中間連続部14を挟んだ第1固定領域側11の、帯状塑性化領域13の長さ方向に連設する複数の開口穴15aが形成された第1領域側開口列部15と、中間連続部14を挟んだ第2固定領域側12の、帯状塑性化領域13の長さ方向に連設する複数の開口穴16aが形成された第2領域側開口列部16とを有している。
【0023】
また、本第1実施形態では、帯状塑性化領域13における第1領域側開口列部15に形成された複数の開口穴15aと、第2領域側開口列部16に形成された複数の開口穴16aとが、好ましくは同様の形状で同数形成されている。
【0024】
さらに、本第1実施形態では、帯状塑性化領域13に形成された開口穴15a,16aは、好ましくは3か所の角部を湾曲形状に面取りした、不等辺の略直角三角形状の開口となっており、第1領域側開口列部15の複数の開口穴15aと、第2領域側開口列部16の複数の開口穴16aとが、好ましくは不等辺の略直角三角形状の斜辺部15b,16bを外側に向けて平行に配置すると共に、不等辺の略直角三角形状の直角部分を挟んだ長辺側の部分15c,16cを対向させて平行に配置した状態で、帯状塑性化領域の長さ方向に各々連設している。
【0025】
本第1実施形態では、建築用接合プレート材10は、金属製のプレート部材として、例えば厚さが1~20mm程度の鋼板からなり、例えば縦幅が100~600mm(本第1実施形態では、380mm)程度、横幅が100~600mm(本第1実施形態では、190mm)程度の大きさの縦長矩形状の正面形状を有する、1枚の平板状のプレート部材として形成されている。建築用接合プレート材10は、横幅方向の中央部分における縦幅方向の一方の端縁部から他方の端縁部に至る縦長の帯状の領域が、地震時などに接合部に過大な荷重が作用したときに塑性変形を誘発させる、帯状塑性化領域13となっている。この帯状塑性化領域13における、上述の中間連続部14を挟んだ両側に、第1領域側開口列部15と第2領域側開口列部16とを有している。第1領域側開口列部15及び第2領域側開口列部16は、各々縦長方向に列状に連設された、角部を湾曲形状に面取りした不等辺の略直角三角形状の開口穴15aを、好ましくは8箇所ずつ備えている。
【0026】
また、本第1実施形態では、建築用接合プレート材10における帯状塑性化領域13を挟んだ両側の第1固定領域11及び第2固定領域12には、各々、固定釘や固定ビス等の固定部材を梁31や柱33や耐力面材34に向けて打ち込んで、建築用接合プレート材10をこれらの建築部材31,33,34に固着させるための固定孔17が、分散配置されて複数箇所に形成されている。
【0027】
本第1実施形態では、好ましくは接合される一方の建築部材である梁31や柱33における、建築用接合プレート材10の第1固定領域11が固着される固着面と、他方の建築部材である耐力面材34における、建築用接合プレート材10の第2固定領域12が固着される固着面とが、面一に配置されており、平坦な一枚の面形状の建築用接合プレート材10は、第1固定領域11を梁31や柱33の固着面に、第2固定領域12を耐力面材34の固着面に、固定釘や固定ビス等の固定部材を用いて各々固着することで、梁31や柱33と、これらに隣接する耐力面材34とによる一対の建築部材の接合部に、取り付けることができる。これによって、本第1実施形態の建築用接合プレート材10を用いた、建築物を構成する隣接する一対の建築部材の接合部構造20を、容易に形成することが可能になる。
【0028】
そして、上述の構成を備える本第1実施形態の建築用接合プレート材10、及びこれを用いた建築部材の接合部構造20によれば、梁31や柱33と、耐力面材34との接合部に過大な荷重が作用して、帯状塑性化領域13が塑性変形することによりエネルギーを吸収する際に、帯状塑性化領域13は、当該帯状塑性化領域13の長さ方向の一方の端縁部から他方の端縁部まで連続する中間連続部14と、中間連続部14を挟んだ第1固定領域11側の、帯状塑性化領域13の長さ方向に連設する複数の開口穴15aが形成された第1領域側開口列部15と、中間連続部14を挟んだ第2固定領域12側の、帯状塑性化領域13の長さ方向に連設する複数の開口穴16aが形成された第2領域側開口列部16とを有しているので、中間連続部14の存在によって、帯状塑性化領域が面外変形し難くなりつつも、中間連続部14の両側の、複数の開口穴15a,16aが連設する第1領域側開口列部15及び第2領域側開口列部16において塑性変形のし易さを効果的に保持して、より効率良く、エネルギーを吸収することが可能になる。また開口穴15a,16aが、1列ではなく、第1領域側開口列部15及び第2領域側開口列部16の2列に増えて形成されていることで、1列の場合よりも変形箇所の数が増えることによって、エネルギー吸収効果を向上させ、鋼板の限られた領域内において、エネルギー吸収の効果を得るために効率良く塑性変形させる部分を確保することが可能になる。
【0029】
またこれによって、梁31や柱33や耐力面材34に作用する負荷を軽減することが可能になり、これらの建築部材31,33,34による骨組構造を破壊させることなく保持できる。
【0030】
特に、本第1実施形態では、建築用接合プレート材10の帯状塑性化領域13の第1領域側開口列部15及び第2固定領域側12を形成する、複数の開口穴15a,16aが、好ましくは3か所の角部を湾曲形状に面取りした、不等辺の略直角三角形状の開口となっており、第1領域側開口列部15の複数の開口穴15aと、第2領域側開口列部16の複数の開口穴16aとが、好ましくは不等辺の略直角三角形状の斜辺部15b,16bを外側に向けて平行に配置すると共に、不等辺の略直角三角形状の直角部分を挟んだ長辺側の部分15c,16cを対向させて平行に配置した状態で、帯状塑性化領域13の長さ方向に各々連設しているので、過大な荷重が作用した際に塑性変形する箇所の数が多くなって、より効率的にエネルギー吸収をすることが可能になる。また、中間連続部14における各4箇所の開口穴15a,16aによって囲まれる菱形形状の部分が、面内において回転するように変位して、好ましくは傾きを有していた菱形形状が、変形後に傾きのない菱形形状となることで、面内変形時に第1固定領域11と第2固定領域12の間隔が狭まるのを、効果的に抑制することが可能になり、これによって一方の建築部材である梁31や柱33と他方の建築部材である耐力面材34との接合部に圧縮方向の力や引張り方向の力が生じるのを抑制して、これらの建築部材31,33,34にヒビ割れを発生させたり、発生したヒビ割れが成長してゆくのを助長させることがないようにすることが可能になる。
【0031】
なお、第1領域側開口列部15及び第2領域側開口列部16を形成する複数の開口穴は、3か所の角部を湾曲形状に面取りした不等辺の略直角三角形状の開口穴15a,16aの他、後述するように、種々の形状のものを採用することが可能である(
図7(a)~(b)参照)。複数の開口穴は、
図2に示す配置の他、後述するように、種々の形態の配置とすることが可能である。
【0032】
図3は、本発明の好ましい第2実施形態に係る建築用接合プレート材18を示すものである。
図3に示す第2実施形態の建築用接合プレート材18は、
図1に示す矩形架構における土台32を他方の建築部材として、当該土台32に固着される第2固定領域19が、耐力面材34を一方の建築部材として固着される第1固定領域11及び帯状塑性化領域13に対して、垂直な方向に折れ曲がって連続して設けられた部分を含んで形成されている。その他の構成部分については、上記の第1実施形態の建築用接合プレート材10と同様となっている。
【0033】
すなわち、本第2実施形態の建築用接合プレート材18は、帯状塑性化領域13を挟んで第1固定領域11とは反対側に設けられた第2固定領域19が、第1固定領域11及び帯状塑性化領域13による平板状のプレート部分に対して、帯状塑性化領域13の側縁部から両側に垂直に折れ曲がって、張り出した状態で設けられていることで、全体としてT字形の断面形状を備えるように形成されている。また本第2実施形態の建築用接合プレート材18における、両側に垂直に折れ曲がった第2固定領域19の各々には、固定部材として例えばボルト部材を締着させるためのボルト孔19aが、列状に並べて複数開口形成されている。
【0034】
本第2実施形態の建築用接合プレート材18は、例えば
図1に示す、梁31と、土台32と、一対の柱33とによって囲まれる矩形架構の内側に、合板からなる耐力面材34を取り付けて耐震補強する補強構造において、建築物を構成する隣接する一対の建築部材として、土台32と耐力面材34との接合部に取り付けられて、接合部構造20’を形成するための金物として用いることができる。すなわち、帯状塑性化領域13の側縁部から両側に張り出して設けられた第2固定領域19を、ボルト孔19aにボルト部材19b(
図4参照)を締着させることによって、土台32の上面を固着面として、他方の建築部材である当該土台32の所定の位置に固着することができる(
図1参照)。また第1固定領域11を、固定孔17に固定釘や固定ビス等の固定部材を打ち込むことによって、耐力面材34の下端部分の側面を固着面として、一方の建築部材である当該耐力面材34の所定の位置に固着することで、建築物を構成する隣接する一対の建築部材である土台32と耐力面材34との接合部構造20’を、容易に形成することができる。
【0035】
また、本第2実施形態の好ましくはT字状の断面形状を備える建築用接合プレート材18は、例えば
図4に示すように、一方の建築部材として好ましくは柱33の側面に、他方の建設部材として好ましくは梁31の端面を接合する接合部において、第1固定領域11及び帯状塑性化領域13による平板状のプレート部分を、梁31の端面部分に形成されたスリット溝31aに差し込んで、例えばドリフトピン(
図5参照)等を用いて梁31の端部に固着し、垂直に両側に張り出した第2固定領域19を、柱33の側面にボルト部材19bを締着させることにより固着して状態で、隣接する梁31と柱33の接合部に取り付けて、建築部材の接合部構造20”を形成することもできる。
【0036】
本第2実施形態の建築用接合プレート材18によっても、帯状塑性化領域13は、当該帯状塑性化領域13の長さ方向の一方の端縁部から他方の端縁部まで連続する中間連続部14と、中間連続部14を挟んだ第1固定領域11側の、帯状塑性化領域13の長さ方向に連設する複数の開口穴15aが形成された第1領域側開口列部15と、中間連続部14を挟んだ第2固定領域19側の、帯状塑性化領域13の長さ方向に連設する複数の開口穴16aが形成された第2領域側開口列部16とを有しているので、上記の第1実施形態の建築用接合プレート材10と同様の作用効果が奏される。
【0037】
本第2実施形態の建築用接合プレート材18では、第2固定領域19が、帯状塑性化領域13の側縁部から片側に垂直に折れ曲がって、片側にのみ張り出した状態で設けられていることで、L字状の断面形状を備えていても良い。
【0038】
図5は、本発明の好ましい第3実施形態に係る建築用接合プレート材21を示すものである。
図5に示す第3実施形態の建築用接合プレート材21では、第1固定領域11及び帯状塑性化領域13が対になった平板状のプレート部分を、二枚備えており(二対の第1固定領域11及び帯状塑性化領域13を備えており)、第2固定領域22が、二対の第1固定領域11及び帯状塑性化領域13の間の部分において、これらを接続するようにして各帯状塑性化領域13の側縁部から垂直な方向に折れ曲がって、連続して設けられた部分を含んでいることで、全体としてコの字形の断面形状を備えるように形成されている。また本第3実施形態の建築用接合プレート材21における、垂直に折れ曲がった第2固定領域22には、ボルト締着孔23aを有する円形凸部23が、外側に突出した状態で複数設けられている。その他の構成部分については、上記の第1実施形態の建築用接合プレート材10や、第2実施形態の建築用接合プレート材18と同様となっている。
【0039】
本第3実施形態の好ましくはコの字状の断面形状を備える建築用接合プレート材21は、例えば一方の建築部材としての柱33の側面に、他方の建設部材としての梁31の端面を接合する接合部において、二対の第1固定領域11及び帯状塑性化領域13による二枚の平板状のプレート部分を、梁31の端面部分に形成された一対のスリット溝31aに差し込んで、例えばドリフトピン31b等を用いて梁31の端部に固着し、第2固定領域22を、柱33の側面にボルト部材23bを用いて固着した状態で、隣接する梁31と柱33の接合部に取り付けて、建築部材の接合部構造24を形成することができるようになっている。
【0040】
本第3実施形態の建築用接合プレート材21によっても、帯状塑性化領域13は、当該帯状塑性化領域13の長さ方向の一方の端縁部から他方の端縁部まで連続する中間連続部14と、中間連続部14を挟んだ第1固定領域11側の、帯状塑性化領域13の長さ方向に連設する複数の開口穴15aが形成された第1領域側開口列部15と、中間連続部14を挟んだ第2固定領域22側の、帯状塑性化領域13の長さ方向に連設する複数の開口穴16aが形成された第2領域側開口列部16とを有しているので、上記の第1実施形態の建築用接合プレート材10や第2実施形態の建築用接合プレート材18と同様の作用効果が奏される。
【0041】
図6(a),(b)は、本発明の好ましい第4実施形態に係る建築用接合プレート材25を示すものである。
図6(a),(b)に示す第4実施形態の建築用接合プレート材25では、第1固定領域11及び帯状塑性化領域13が対になった平板状のプレート部分を、二枚備えており(二対の第1固定領域11及び帯状塑性化領域13を備えており)、第2固定領域26が、二対の第1固定領域11及び帯状塑性化領域13の各々の帯状塑性化領域13の側縁部から、これらと平行に延設して外側に張り出した状態で、連続して設けられた部分を含んで形成されている。
【0042】
本第4実施形態の建築用接合プレート材25は、例えば一方の建築部材としての鋼管による柱33’の側面に、他方の建設部材としての木製の梁31の端面を接合する接合部において、二対の第1固定領域11及び帯状塑性化領域13による二枚の平板状のプレート部分を、梁31の端面部分に形成された一対のスリット溝31aに差し込んで、例えばドリフトピン31b等を用いて梁31の端部に固着し、各々の帯状塑性化領域13から延設する第2固定領域26を、鋼管による柱33’の側面に溶接等によって取り付けられたガセットプレート35を挟み込むようにして、好ましくはボルト部材36を用いて固着した状態で、隣接する梁31と柱33’の接合部に取り付けて、建築部材の接合部構造27を形成することができるようになっている。本第4実施形態では、建築用接合プレート材25は、上下方向に3体が連接した状態で取り付けられている。
【0043】
本第4実施形態の建築用接合プレート材25によっても、帯状塑性化領域13は、当該帯状塑性化領域13の長さ方向の一方の端縁部から他方の端縁部まで連続する中間連続部14と、中間連続部14を挟んだ第1固定領域11側の、帯状塑性化領域13の長さ方向に連設する複数の開口穴15aが形成された第1領域側開口列部15と、中間連続部14を挟んだ第2固定領域22側の、帯状塑性化領域13の長さ方向に連設する複数の開口穴16aが形成された第2領域側開口列部16とを有しているので、上記の第1実施形態の建築用接合プレート材10や第2実施形態の建築用接合プレート材18や第3実施形態の建築用接合プレート材21と同様の作用効果が奏される。
【0044】
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、第1領域側開口列部15や第2領域側開口列部16を形成する複数の開口穴は、3か所の角部を湾曲形状に面取りした不等辺の略直角三角形状の開口穴となっている必要は必ずしも無く、例えば
図7(a)~(c)に示すように、その他の種々の形状や配置とすることができる。
図7(a),(b)の開口穴の形状や配置によれば、開口穴が2列に設けられていることで、面外に変形し易くなるのを、効果的に抑制すると共に、鋼板の限られた領域内において、エネルギー吸収の効果を得るために効率良く塑性変形させる部分を確保することが可能になる。
図7(c)の開口穴の形状や配置によれば、開口穴が2列に設けられていることに加えて、さらに、2列の開口穴が互い違いに位置をずらせて好ましくは千鳥状に配置されていることで、第1固定領域と第2固定領域域の間隔が狭まるのを、効果的に抑制することが可能になる。
【符号の説明】
【0045】
10,18,21,25 建築用接合プレート材
11 第1固定領域
12,19,22,26 第2固定領域
13 帯状塑性化領域
14 中間連続部
15 第1領域側開口列部
15a 開口穴
15b 斜辺部
15c 直角部分を挟んだ長辺側の部分
16 第2領域側開口列部
16a 開口穴
16b 斜辺部
16c 直角部分を挟んだ長辺側の部分
17 固定孔
19a ボルト孔
19b ボルト部材
20,20’,20”,24,27 接合部構造
23 円形凸部
23a ボルト締着孔
31 梁(一方の建築部材)
31a スリット溝
31b ドリフトピン
32 土台(他方の建築部材)
33,33’ 柱(一方の建築部材)
34 耐力面材(他方の建築部材、一方の建築部材)
35 ガセットプレート
36 ボルト部材