(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089473
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】カレー製品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 23/00 20160101AFI20240626BHJP
【FI】
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204861
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000228
【氏名又は名称】江崎グリコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾部 悠一郎
【テーマコード(参考)】
4B036
【Fターム(参考)】
4B036LF05
4B036LG02
4B036LH01
4B036LH14
4B036LH21
4B036LH29
4B036LH32
4B036LK01
4B036LP01
(57)【要約】
【課題】食べた人により高い満足感を与えられるカレー製品を提供すること。
【解決手段】花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物を配合してなるカレー製品
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物を配合してなるカレー製品。
【請求項2】
花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物の配合比が、花椒粉末1質量部に対し、グリシンが1~10質量部であり、ガーリック製油濃縮物が0.1~0.5質量部である、請求項1に記載のカレー製品。
【請求項3】
さらにトマト原料を含む、請求項1又は2に記載のカレー製品。
【請求項4】
さらに塩化カリウムを含有し、その含有量は、食に供されるときの塩化カリウム濃度が0.05~0.4質量%になるように配合されている、請求項1又は2 に記載のカレー製品。
【請求項5】
加熱処理されたカレー製品である、請求項1又は2に記載のカレー製品。
【請求項6】
花椒粉末、グリシン、ガーリック精油濃縮物及びその他のカレー原料を混合させる工程を含む、カレー製品の製造方法。
【請求項7】
花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物の配合比が、花椒粉末1質量部に対し、グリシンが1~10質量部であり、ガーリック製油濃縮物が0.1~0.5質量部である、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカレー製品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カレー製品は、老若男女問わず安定的に食べられている非常に人気の高い食品である。一方で、カレー製品に限らず、健康志向が高まる中、食品中の食塩含有量を低下することが望まれている。しかし、塩化ナトリウム含有量を低下すると、味の強さ、濃さが低く感じられてしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-298054公報
【特許文献2】特許第5733737
【特許文献3】特開2021-078396
【特許文献4】特開2022-64127
【特許文献5】特許第6808392
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、食べた人により高い満足感を与えられるカレー製品を提供することを課題とする。典型的には、本発明は、塩分が低くともカレーとしての味の満足度を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況の下、本発明者らは、カレー製品に配合し得る様々な材料の組み合わせを変更し、試行錯誤を繰り返した結果、カレー製品に、花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物を配合することにより、食べた人に高い満足度をもたらすことできることを見出した。従って、本発明は以下の項を提供する:
項1.花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物を配合してなるカレー製品。
【0006】
項2.花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物の配合比が、花椒粉末1質量部に対し、グリシンが1~10質量部であり、ガーリック製油濃縮物が0.1~0.5質量部である、項1に記載のカレー製品。
【0007】
項3.さらにトマト原料を含む、項1又は2に記載のカレー製品。
【0008】
項4.さらに塩化カリウムを含有し、その含有量は、食に供されるときの塩化カリウム濃度が0.05~0.4質量%になるように配合されている、項1~3のいずれか一項に記載のカレー製品。
【0009】
項5.加熱処理されたカレー製品である、項1~4のいずれか一項に記載のカレー製品。
【0010】
項6.花椒粉末、グリシン、ガーリック精油濃縮物及びその他のカレー原料を混合させる工程を含む、カレー製品の製造方法。
【0011】
項7.花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物の配合比が、花椒粉末1質量部に対し、グリシンが1~10質量部であり、ガーリック製油濃縮物が0.1~0.5質量部である、項6に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、食べた人により高い満足感を与えられるカレー製品を提供することを課題とする。典型的には、本発明は、塩分が低くともカレーとしての味の満足度を向上することを課題とする。本発明においては、味の満足度とは、先味(口に含んだ瞬間の味)・中味(咀嚼中に感じる味)・後味(飲み込む瞬間から飲み込んだ後の味)を総合的に考慮した、味の強さ、濃さを意味する。味の満足度は、例えば、後述の実施例に記載のような官能試験により評価することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明は、花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物を配合してなるカレー製品を提供する。本明細書において、カレー製品としては、カレーソース、カレーフィリングのような加温して喫食可能な形態の製品、カレールウのようなカレーを調製するための製品等が例示される。
【0014】
花椒は所謂中国産の山椒を示す。花椒は、特有の柑橘系の香りを有し、ピリッと舌が痺れるような独特の辛味を有する。花椒の産地は特に限定されないが、中国・山東省、中国・山西省、中国・河南省、中国・河北省、中国、西洲、中国・陝西省、中国・四川省が好ましく例示される。花椒粉末を配合することにより、カレー製品の先味を増強することができる。
花椒粉末の配合量は限定されないが、例えば、食に供されるときのカレー製品に、0.1重量%以下、好ましくは0.01%~0.05重量%、より好ましくは0.015%~0.04重量%となるように配合されていることが好ましい。より具体的には、例えば、カレーソース又はカレーフィリングに対しては、例えば、0.1重量%以下、好ましくは0.01%~0.05重量%、より好ましくは0.015%~0.04重量%の割合で配合される。カレールウに対しては、例えば、0.5重量%以下、好ましくは0.02~0.4重量%、より好ましくは0.05~0.2重量%の割合で配合される。カレーソース、カレールウ以外のカレー製品に関しては、これらの配合量に準じて配合量を決定できる。本発明において、花椒粉末を添加するのはあくまでもカレーソースの隠し味としてである。花椒粉末を上記割合で配合することにより、カレー製品の先味を適度に増強することができ、当該花椒粉末の風味と、グリシン及びガーリック精油濃縮物とが相まって、カレー製品の味の濃さ、強さを高め、満足度を高めることができるため好ましい。また、花椒粉末は、花椒粉末に由来するしびれをあまり感じない程度であることが好ましい。
【0015】
また、グリシンの配合量も特に限定されないが、例えば、食に供されるときのカレー製品に、0.5重量%以下、好ましくは0.01%~0.5重量%、より好ましくは0.02~0.3重量%となるように配合されていることが好ましい。より具体的には、例えば、カレーソース又はカレーフィリングに対しては0.5重量%以下、好ましくは0.01%~0.5重量%、より好ましくは0.02%~0.3重量%の割合で配合される。カレールウに対しては、例えば、2重量%以下、好ましくは0.05~1.5重量%、より好ましくは0.1%~1重量%の割合で配合される。カレーソース、カレールウ以外のカレー製品に関しては、これらの配合量に準じて配合量を決定できる。グリシンを上記割合で配合することにより当該グリシンがもたらす味と、花椒粉末及びガーリック精油濃縮物とが相まって、カレー製品の味の濃さ、強さを高め、満足度を高めることができるため好ましい。
【0016】
本発明において、ガーリック精油濃縮物とは、ニンニクを加熱して香り成分を抽出し、それを油に吸着させたものを示す。ガーリック精油濃縮物を配合することにより、カレー製品の中味を増強することができる。
ガーリック精油濃縮物の配合量も特に限定されないが、例えば、食に供されるときのカレー製品に、0.05重量%以下、好ましくは0.001%~0.05重量%、より好ましくは0.002%~0.03重量%となるように配合されていることが好ましい。より具体的には、例えば、カレーソース又はカレーフィリングに対しては0.05重量%以下、好ましくは0.001%~0.05重量%、より好ましくは0.002%~0.03重量%の割合で配合される。カレールウに対しては、例えば、0.3重量%以下、好ましくは0.005~0.2重量%、より好ましくは0.01~0.15重量%、特に好ましくは0.02~0.1重量%の割合で配合される。カレーソース、カレールウ以外のカレー製品に関しては、これらの配合量に準じて配合量を決定できる。ガーリック精油濃縮物を上記割合で配合することによりカレー製品の中味を適度に増強することができ、当該ガーリック精油濃縮物の風味と、花椒粉末及びグリシンとが相まって、カレー製品の味の濃さ、強さを高め、満足度を高めることができるため好ましい。
【0017】
本発明のカレー製品における花椒粉末とグリシンとの配合比は限定されないが、例えば、花椒粉末1質量部に対し、グリシンを5~20質量部とすることが好ましく、7~18質量部とすることがより好ましい。本発明のカレー製品における花椒粉末とガーリック精油濃縮物との配合比も限定されないが、例えば、花椒粉末1質量部に対し、ガーリック精油濃縮物を0.1~1質量部とすることが好ましく、0.2~0.8質量部とすることがより好ましい。本発明のカレー製品におけるグリシンとガーリック精油濃縮物との配合比も限定されないが、例えば、グリシン1質量部に対し、ガーリック精油濃縮物を0.01~0.1質量部とすることが好ましく、0.02~0.08質量部とすることがより好ましい。
【0018】
本発明のカレー製品における塩化ナトリウム濃度は限定されないが、例えば、食に供されるときのカレー製品に、1重量%以下、好ましくは0.005~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.3重量%となるように配合されていることが好ましい。より具体的には、例えば、カレーソース又はカレーフィリングに対しては1重量%以下、好ましくは0.005~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.3重量%の割合で配合され、カレールウに対しては6重量%以下、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.2~4重量%、特に好ましくは0.3~3重量%の割合で配合される。カレーソース、カレールウ以外のカレー製品に関しては、これらの配合量に準じて配合量を決定できる。カレー製品の塩化ナトリウム濃度を低減するとカレー製品全体としての味の強さ、濃さが落ちてしまうが、本発明によれば、花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物を配合することにより、当該カレー製品を食する人が感じる味の強さ、濃さの低下を抑えることができるため、比較的低塩化ナトリウム濃度においても満足度の高いカレー製品を提供することができるため好ましい。一方、塩化ナトリウム濃度が低くないカレー製品においても、花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物による満足度の向上効果自体は生じるため、花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物を配合する技術的な意義は塩化ナトリウム濃度が低くないカレー製品においても存在している。
本発明のカレー製品には、上記材料に加え、トマト原料をさらに配合することが好ましい。トマト原料とは、トマトを主な材料とする食品原料を意味し、例えば、トマトペースト、トマトピューレ、トマトジュース、トマトパウダー等が挙げられ、酸味及び旨味の強さの観点から、トマトペースト等が好ましい。トマト原料は酸味及び旨味が強い原料であり、カレー製品の中味と後味を増強することができる。また、本発明のカレー製品に含まれるガーリック精油濃縮物がカレー製品の中味を増強しつつ、さらにトマト原料の酸味を適度に抑えることにより、カレー様の風味も維持できるため、ガーリック精油濃縮物とトマト原料とを組み合わせることが好ましい。トマト原料を用いる場合、その配合量は特に限定されないが、例えば、食に供されるときのカレー製品に、10重量%以下、好ましくは0.1%~9重量%、より好ましくは0.3~8重量%となるように配合されていることが好ましい。より具体的には、例えば、カレーソース又はカレーフィリングに対しては10重量%以下、好ましくは0.1%~9重量%、より好ましくは0.3~8重量%の割合で配合される。カレールウに対しては、例えば、10重量%以下、好ましくは0.2~9重量%、より好ましくは0.3~8重量%、特に好ましくは0.4~6重量%の割合で配合される。カレーソース、カレールウ以外のカレー製品に関しては、これらの配合量に準じて配合量を決定できる。トマト原料を上記割合で配合することにより中味と後味を適度に増強し、そしてトマト原料がもたらす味と、花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物とが相まって、カレー製品の味の濃さ、強さを高め、満足度をさらに高めることができるため好ましい。
【0019】
本発明のカレー製品には、上記材料に加え、塩化カリウムをさらに配合することが好ましい。塩化カリウムを添加することにより、カレー製品の先味と後味を増強することができる。本発明のカレー製品における塩化カリウム濃度は限定されないが、例えば、食に供されるときのカレー製品に、0.5重量%以下、好ましくは0.05~0.4重量%、より好ましくは0.1~0.3重量%となるように配合されていることが好ましい。より具体的には、例えば、カレーソース又はカレーフィリングに対しては0.5重量%以下、好ましくは0.05~0.4重量%、より好ましくは0.1~0.3重量%の割合で配合され、カレールウに対しては3重量%以下、好ましくは0.1~2.5重量%、より好ましくは0.2~2重量%、特に好ましくは0.3~1.5重量%の割合で配合される。カレーソース、カレールウ以外のカレー製品に関しては、これらの配合量に準じて配合量を決定できる。塩化カリウムを添加することにより、カレー製品の先味と後味を適度に増強し、そして塩化カリウムがもたらす味と、花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物とが相まって、カレー製品の味の濃さ、強さを高め、満足度をさらに高めることができるため好ましい。
【0020】
本発明のカレー製品中に配合し得る好ましいスパイスとして、例えば、ターメリック、コリアンダー、クミン等が挙げられる。ターメリックは、カレーを黄色く着色し、少し土のような独特の香りと、ほろ苦い風味を有する。ターメリックは、花椒粉末1重量部に対して好ましくは3~20重量部、更に好ましくは4~16重量部用いることができる。コリアンダーは、柑橘類のようなさわやかな香りを有する。コリアンダーは、花椒粉末1重量部に対して好ましくは2~15重量部、更に好ましくは3~13重量部用いることができる。クミンは、特有の強い芳香や辛味、苦味を有する。クミンは、花椒粉末1重量部に対して好ましくは1~10重量部、更に好ましくは2~9重量部用いることができる。これらのスパイスは、一種単独又は二種以上(二種または三種)を組み合わせて使用することができる。これらのスパイスを使用することで、花椒粉末添加によるカレーとしての味の満足度を得やすくなる。本発明のカレー製品には、フェンネル、カルダモン等を配合してもよい。カルダモンは華やかで強い香りを出し、わずかに刺激性がある。また、フェンネルは甘い芳香がある。これらの一方又は両方を花椒粉末を組み合わせることで、カレーのキレを増す効果が増強される。カルダモンは、花椒粉末1重量部に対して好ましくは0.1~6重量部、更に好ましくは0.3~5重量部用いることができる。フェンネルは、花椒粉末1重量部に対して好ましくは0.2~10重量部、更に好ましくは0.3~3重量部用いることができる。
【0021】
カレー製品としてカレールウ、カレーソースを例にとり説明する。本明細書中では、「カレールウ」とは、カレーソースを調理する際に、水および各種の具材を加えて煮込んで調理される調理基材をいい、カレー粉を必須の原料として構成される。ルウの形態は、当該分野で公知の形態であり得る。ルウの形態の例としては、ブロック状(いわゆる固形ルウの形状)、フレーク状、顆粒状およびペースト状が挙げられる。なお、ルウがペースト状である場合、ルウは、ルウ中に含まれる水分によってではなく、低融点の油脂によって流動性を有する。好ましくは、ルウは固体(ブロック状、フレーク状または顆粒状)である。より好ましくはブロック状である。
こうしたカレールウは、カレー粉以外にその製品形態によって小麦粉、油脂、ビーフエキス・チキンエキス等各種調味料、各種香料等から選択される原材料から構成される。まず小麦粉と油脂を加熱混合して小麦粉ルウを得る。本明細書中で「小麦粉ルウ」とは、油脂および澱粉系原料を含む小麦粉ルウ原料を加熱することによって得られるものをいう。小麦粉ルウは、当該分野では、ホワイトルウ、白ルウ、ブラウンルウなどと呼ばれることもある。本明細書中では、当該分野での慣例に従って「小麦粉ルウ」との用語を用いるが、小麦粉ルウは必ずしも小麦粉を含まなくても良い。小麦粉ルウ原料は、油脂および澱粉系原料を含む。
【0022】
油脂としては、任意の植物油脂および動物油脂ならびにこれらを原料として得られた硬化油を用い得る。植物油脂の例としては、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、コーン油、サフラワー油、パーム油および米油が挙げられる。動物油脂の例としては、牛脂、ギー、バター、バターオイルおよびラードが挙げられる。油脂は好ましくは、菜種油、コーン油、パーム油、牛脂、ラードおよびバターからなる群より選択され、より好ましくはパーム油、牛脂、ラードおよびバターからなる群より選択される。これらの油脂は、単独であるいは混合して用いることができる。
澱粉系原料としては、任意の澱粉および穀粉を用い得る。澱粉の例としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉などの地下澱粉;コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉(例えば、もち米澱粉、粳米澱粉)などの地上澱粉;および架橋澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、可溶性澱粉、漂白澱粉などの化工デンプンが挙げられる。穀粉の例としては、小麦粉、ライ麦粉、ソバ粉、米粉、コーンフラワー、あわ粉、きび粉、はと麦粉およびひえ粉が挙げられる。澱粉系原料は、小麦粉を含むことが好ましく、小麦粉であることがより好ましい。小麦粉は、強力粉、中力粉、薄力粉のいずれであってもよいが、薄力粉が好ましい。必要に応じて1種または2種以上の澱粉系原料を選択して用いることができる。
【0023】
使用される小麦粉ルウ原料の全量に占める油脂の割合は、好ましくは30重量%~80重量%であり、より好ましくは40重量%~55重量%である。使用される小麦粉ルウ原料の全量に占める澱粉系原料の割合は、好ましくは10重量%~70重量%であり、より好ましくは45重量%~60重量%である。適度なとろみを付与し、原料の風味および香りを引き立たせ、かつ相互に馴染ませる効果を適切に得るために、最終的に得られるルウに小麦粉ルウが40重量%~70重量%含まれるように用いることが好ましい。
【0024】
小麦粉ルウ原料は、油脂および澱粉系原料に加えて、カレー粉、食塩、砂糖等の調味料を含有し得る。小麦粉ルウ原料はまた、本発明の方法の効果を損ねない限り、任意の他の原料を含有し得る。
このようにして得られた小麦粉ルウにカレー粉、香辛料、砂糖、乳製品、肉類・魚介類・野菜・果実等の乾燥粉砕物、ペースト(磨砕物)乃至エキス、調味料等の風味原料を順次加えながら、ルウの品温を65℃以下まで冷却混合処理してカレールウを得る。
【0025】
上記カレールウに、肉類・魚介類・野菜・果実等の具材、水等を順次加えながら、加熱混合してカレーソースを得ることができる。また、前述このようにして得られた小麦粉ルウにカレー粉、香辛料、砂糖、乳製品、肉類・魚介類・野菜・果実等の乾燥粉砕物、ペースト(磨砕物)乃至エキス、調味料等の風味原料、肉類・魚介類・野菜・果実等の具材、水等を順次加えながら、加熱混合することによってもカレーソースを得ることができる。
本発明は、こうしたカレールウ、カレーソース等のカレー製品を製造する過程で花椒粉末、グリシン、及びガーリック精油濃縮物を添加することに特徴がある。従って、一実施形態において、本発明は、花椒粉末、グリシン、ガーリック精油濃縮物及びその他のカレー原料を混合させる工程を含む、カレー製品の製造方法を提供する。花椒粉末、グリシン、ガーリック精油濃縮物及びその他のカレー原料(小麦粉ルウ、カレー粉、香辛料、砂糖、乳製品、肉類・魚介類・野菜・果実等の乾燥粉砕物、ペースト(磨砕物)乃至エキス、調味料等)の詳細、その使用量等については前期の通りである。花椒粉末、グリシン、ガーリック精油濃縮物及びその他のカレー原料を混合させる工程における温度は特に限定されないが、例えば、50~120℃、好ましくは60~110℃の範囲で適宜設定できる。上記混合工程の時間は特に限定されないが、例えば、40~240分、好ましくは60~180分の範囲で適宜設定できる。また、本発明の方法は、上記で得られたカレー製品をレトルトパウチに充填し、レトルト殺菌処理する工程をさらに含んでもよい。レトルト殺菌における温度は特に限定されないが、例えば、120~130℃、好ましくは120~125℃の範囲で適宜設定できる。上記レトルト殺菌の時間は特に限定されないが、例えば、15~40分、好ましくは20~30分の範囲で適宜設定できる。レトルト殺菌をすることにより、長期間賞味期限を維持することが可能となるため、当該レトルト殺菌工程を行うことが好ましい。
【0026】
上記の説明ではカレールウ、カレーソースを例にとり説明したが、カレールウ、カレーソース以外のカレー製品についても上記の記載を参考にして同様に製造ないし使用することが可能である。
【実施例0027】
次に実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものではない。
[試験方法]
実施例1
[1]予め加熱した開放型の加熱釜に油脂3重量部を投入し、油脂を溶解させた。このとき、溶解した油脂の品温は約60℃であった。次いで、この溶解した油脂に小麦粉4重量部を投入し、混合しながら、約50分間かけて到達品温が110℃になるように加熱して小麦粉ルウを製造した。
[2]上記[1]で得られた小麦粉ルウに、カレー粉(ターメリック24重量%、コリアンダー21重量%、クミン14重量%を含む)0.9重量部、粉末状の花椒(中国・山東省産)0.02重量部、砂糖3重量部、食塩0.3重量部、塩化カリウム0.2重量部、オニオンペースト0.8重量部、トマトペースト1重量部、グリシン0.2重量部、ガーリック製油濃縮物0.01重量部、水81重量部を順次加え、90℃まで加熱してカレーソースを製造した。肉・野菜などの具材とカレーソースをレトルトパウチに充填し、ヒートシールにより密封後、レトルト殺菌処理(121℃25分)を行った。そして、レトルト処理品を3~5分間湯煎したもの(実施例1のカレーソースと示す)を後述する官能試験に供した。
【0028】
さらに、以下の表1に示す配合については、上記実施例と同様にしてカレーソースを作製し、レトルト処理、湯煎した。以下、「ベース配合」とは、花椒粉末、グリシン、ガーリック精油濃縮物、トマトペースト及び塩化カリウムを用いず、それ以外については上記実施例と同様の材料を用いた配合を示す。
【0029】
得られた各カレーソースを用い、官能試験について熟練した複数名のパネラーにより官能評価を行った。官能試験の結果を以下に示す。官能試験の比較対象としてベース配合のみのカレー(ベース配合のみのカレーを本実施例において単に「ベース配合」と示すこともある)を使用した。
【0030】
【0031】
実施例2
ベース配合に、花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物を加える以外、前記実施例1と同様にして、カレーソースを得、レトルト殺菌、湯煎をする。得られたレトルト殺菌、湯煎済のカレーソースは、花椒粉末、グリシン及びガーリック精油濃縮物を加えることにより、実施例1ほどではないものの、カレー製品の味の濃さ、強さを高め、満足度を高めることができる。