(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089474
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】飲料用缶、および飲料用缶の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 25/20 20060101AFI20240626BHJP
B65D 25/34 20060101ALI20240626BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B65D25/20 Q
B65D25/34 B
B41J2/01 123
B41J2/01 109
B41J2/01 201
B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204862
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】521469760
【氏名又は名称】アルテミラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113310
【弁理士】
【氏名又は名称】水戸 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】小島 真一
(72)【発明者】
【氏名】松島 妃美
【テーマコード(参考)】
2C056
3E062
【Fターム(参考)】
2C056EC37
2C056EC79
2C056FA13
2C056FB04
2C056FB09
2C056HA44
3E062AA04
3E062AB02
3E062AC03
3E062DA09
3E062JA02
3E062JA08
3E062JB23
3E062JC02
3E062JD10
(57)【要約】
【課題】縮径部にしわが生じにくい飲料用缶を実現する。
【解決手段】飲料用缶は、円筒状の缶胴部と、缶胴部に比べて径が小さい縮径部14とを含む缶体11と、缶体11における缶胴部および縮径部14の外周面に設けられ、色材を含むインクにより形成された画像層20と、画像層20上に設けられ、画像層20を被覆する被覆層30とを備え、縮径部14の外周面141に形成された画像層20は、予め定められた厚さD1を有する第1の領域211と、第1の領域211と比べて小さい厚さD2を有する第2の領域212とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料により形成され、円筒状の缶胴部と、当該缶胴部に比べて径が小さい縮径部とを含む缶本体部と、
前記缶本体部における前記缶胴部および前記縮径部の外周面に設けられ、色材を含むインクにより形成された画像層と、
前記画像層上に設けられ、当該画像層を被覆する被覆層とを備え、
前記縮径部の外周面に形成された前記画像層は、予め定められた厚さを有する第1の領域と、当該第1の領域と比べて厚さが小さい第2の領域とを含む
飲料用缶。
【請求項2】
前記縮径部の外周面に形成された前記画像層は、前記第1の領域と前記第2の領域とが、前記縮径部の周方向に隣接している請求項1に記載の飲料用缶。
【請求項3】
前記縮径部の外周面に形成された前記画像層は、それぞれが前記缶本体部の軸方向に延びる複数の前記第1の領域と複数の前記第2の領域とが、当該縮径部の周方向に交互に形成されている請求項2に記載の飲料用缶。
【請求項4】
前記縮径部の外周面に形成された前記画像層は、複数の前記第1の領域と複数の前記第2の領域とが、前記缶本体部の軸方向および当該縮径部の周方向に交互に形成されている請求項2に記載の飲料用缶。
【請求項5】
前記縮径部の外周面に形成された前記画像層における前記第1の領域の厚さが、前記缶胴部の外周面に形成された当該画像層の厚さよりも厚い請求項1に記載の飲料用缶。
【請求項6】
一端に開口を有し他端に底部を有する筒状に形成され且つ金属材料により形成された筒状体の外周面に、色材を含むインクを用いて画像層を形成する画像層形成工程と、
前記画像層上に、当該画像層を被覆する被覆層を形成する被覆層形成工程と、
前記画像層および前記被覆層が形成された前記筒状体の前記一端に、前記開口に向かうに従い外径が小さくなる縮径部を形成する縮径部形成工程とを備え、
前記画像層形成工程は、前記筒状体の前記縮径部が形成される縮径領域の外周面に、インクが塗布されていない非塗布部を含む前記画像層を形成する
飲料用缶の製造方法。
【請求項7】
前記画像層形成工程は、前記筒状体の前記外周面に、インク吐出口を有するインクジェットヘッドを用いてインクを吐出して、前記非塗布部を含む前記画像層を形成する請求項6に記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項8】
前記画像層形成工程は、前記筒状体の前記外周面に、前記インクジェットヘッドを用いて活性放射線により硬化するインクを吐出した後、当該外周面に活性放射線を照射してインクを硬化させて、前記画像層を形成し、
前記被覆層形成工程は、インクが硬化した前記画像層上に樹脂塗料を塗布して、前記被覆層を形成する請求項7に記載の飲料用缶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用缶、および飲料用缶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1には、筒状の金属材料により形成された缶本体部と、缶本体部の外周面にインクにより形成された画像層と、画像層上に形成され画像層を被覆する被覆層とを備える飲料用缶が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲料用缶では、缶本体部の表面に画像層および被覆層を形成した後、外径を縮めて縮径部を形成する場合がある。
縮径部を形成した飲料用缶では、例えば飲料を充填した後、温水に浸す温水処理等を施した場合に、縮径部において画像層や被覆層の一部が缶本体部から剥がれ、縮径部にしわが生じる場合がある。
本発明は、縮径部にしわが生じにくい飲料用缶を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が適用される飲料用缶は、金属材料により形成され、円筒状の缶胴部と、当該缶胴部に比べて径が小さい縮径部とを含む缶本体部と、前記缶本体部における前記缶胴部および前記縮径部の外周面に設けられ、色材を含むインクにより形成された画像層と、前記画像層上に設けられ、当該画像層を被覆する被覆層とを備え、前記縮径部の外周面に形成された前記画像層は、予め定められた厚さを有する第1の領域と、当該第1の領域と比べて厚さが小さい第2の領域とを含む。
ここで、前記縮径部の外周面に形成された前記画像層は、前記第1の領域と前記第2の領域とが、前記縮径部の周方向に隣接していることを特徴とすることができる。
また、前記縮径部の外周面に形成された前記画像層は、それぞれが前記缶本体部の軸方向に延びる複数の前記第1の領域と複数の前記第2の領域とが、当該縮径部の周方向に交互に形成されていることを特徴とすることができる。
また、前記縮径部の外周面に形成された前記画像層は、複数の前記第1の領域と複数の前記第2の領域とが、前記缶本体部の軸方向および当該縮径部の周方向に交互に形成されていることを特徴とすることができる。
また、前記縮径部の外周面に形成された前記画像層における前記第1の領域の厚さが、前記缶胴部の外周面に形成された当該画像層の厚さよりも厚いことを特徴とすることができる。
【0006】
他の観点から捉えると、本発明が適用される飲料用缶の製造方法は、一端に開口を有し他端に底部を有する筒状に形成され且つ金属材料により形成された筒状体の外周面に、色材を含むインクを用いて画像層を形成する画像層形成工程と、前記画像層上に、当該画像層を被覆する被覆層を形成する被覆層形成工程と、前記画像層および前記被覆層が形成された前記筒状体の前記一端に、前記開口に向かうに従い外径が小さくなる縮径部を形成する縮径部形成工程とを備え、前記画像層形成工程は、前記筒状体の前記縮径部が形成される縮径領域の外周面に、インクが塗布されていない非塗布部を含む前記画像層を形成する。
ここで、前記画像層形成工程は、前記筒状体の前記外周面に、インク吐出口を有するインクジェットヘッドを用いてインクを吐出して、前記非塗布部を含む前記画像層を形成することを特徴とすることができる。
また、前記画像層形成工程は、前記筒状体の前記外周面に、前記インクジェットヘッドを用いて活性放射線により硬化するインクを吐出した後、当該外周面に活性放射線を照射してインクを硬化させて、前記画像層を形成し、前記被覆層形成工程は、インクが硬化した前記画像層上に樹脂塗料を塗布して、前記被覆層を形成することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、縮径部にしわが生じにくい飲料用缶を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態が適用される飲料用缶の構成の一例を示した図である。
【
図3】(a)~(b)は、縮径部の外周面に形成された画像層および被覆層を説明する図である。
【
図4】本実施形態が適用される飲料用缶の製造方法(製造工程)の一例を示した図である。
【
図5】画像層および被覆層を形成する印刷システムの一例を示した図である。
【
図6】本実施形態のインクジェットヘッドの構成の一例を示す図である。
【
図7】(a)~(b)は、印刷部のインクジェットヘッドにより縮径領域にインクが塗布される領域を説明する図である。
【
図8】印刷部のインクジェットヘッドにより縮径領域にインクが塗布される領域の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態が適用される飲料用缶10の構成の一例を示した図である。
図1は、飲料用缶10の正面図である。以下の説明では、
図1の飲料用缶10における上方を、飲料用缶10の一端、
図1の飲料用缶10における下方を、飲料用缶10の他端と表記する場合がある。また、一端と他端とを結ぶ方向を、飲料用缶10の軸方向と表記する場合がある。
【0010】
本実施形態の飲料用缶10は、缶本体部の一例としての缶体11を備えている。缶体11は、一端に円形の開口部12を有する。また、缶体11は、他端が円形の底部13により塞がれている。さらに、缶体11には、縮径部(ネック部)14と、缶胴部15とが設けられている。なお、本実施形態では、後述するフランジ部を含めて縮径部14と表記する場合がある。
缶体11は、金属製であり、金属材料により形成されている。具体的には、缶体11は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等により形成されている。
【0011】
縮径部14は、缶体11の開口部12側に位置している。付言すると、縮径部14は、缶体11の一端側に設けられている。縮径部14は、開口部12に近づくに従い外径が次第に小さくなるように形成されている。
【0012】
缶胴部15は、円筒状に形成され、縮径部14よりも底部13側に位置している。ここで、缶胴部15とは、飲料用缶10の軸方向における長さが縮径部14よりも大きく、且つ、縮径していないかあるいは縮径割合が縮径部14における縮径割合よりも小さい部分を指す。なお、縮径とは、缶体11の外径を縮めることを意味する。缶体11に施す縮径処理については、後段にて詳細に説明する。
本実施形態の缶胴部15は、接続箇所19にて、縮径部14に連続している。また、缶胴部15は、縮径部14に接続されている箇所の外径(接続箇所19における外径)と、底部13側における外径とが略等しくなるように形成されている。すなわち、本実施形態の缶胴部15は、飲料用缶10の軸方向において、外径が略一定となっている。なお、本実施形態は、缶胴部15の縮径を排除するものではなく、缶胴部15は、縮径部14の縮径割合よりも小さい縮径割合で縮径させてもよい。
【0013】
本実施形態では、缶体11の一端に形成された開口部12を通じて、飲料用缶10の内部に飲料が充填される。
その後、この開口部12は、不図示の缶蓋により塞がれる。これにより、飲料が充填された飲料缶が完成する。
【0014】
充填される飲料としては、例えば、ビール等のアルコール系飲料や、清涼飲料等の非アルコール系飲料が挙げられる。
ここで、本実施形態において、飲料用缶10とは、飲料が充填される前の空缶をいい、飲料缶とは、内容物である飲料が充填された後の缶をいう。
【0015】
図2は、飲料用缶10の断面図を示す図であり、
図1の飲料用缶10におけるIIで示す部分の断面構造を示している。
本実施形態の飲料用缶10には、
図2に示すように、縮径部14の外周面141上に、画像層21が設けられている。また、飲料用缶10には、缶胴部15の外周面151上に、画像層22が設けられている。この例では、縮径部14の画像層21と、缶胴部15の画像層22とは、外周面141と外周面151とに跨って連続して形成されている。以下では、縮径部14の画像層21と缶胴部15の画像層22とをまとめて、画像層20と表記する場合がある。
【0016】
また、飲料用缶10には、画像層20の上に、画像層20を被覆する被覆層30が設けられている。この例では、被覆層30は、画像層20と同様に、縮径部14の外周面141と、缶胴部15の外周面151とに跨って、連続して形成されている。付言すると、被覆層30は、縮径部14の外周面141に形成された画像層21上と、缶胴部15の外周面151に形成された画像層22上とに、連続して形成されている。
【0017】
なお、図示は省略するが、飲料用缶10には、縮径部14の外周面141および缶胴部15の外周面151と、画像層20との間に、有色(例えば白色)の下地層が設けられていてもよい。有色の下地層を設けることで、有色の下地層によって缶体11の金属の地の影響が小さくなり、画像層20による画像の発色性が向上する。また、缶体11の金属の色を生かした画像を形成する場合には、縮径部14の外周面141および缶胴部15の外周面151と、画像層20との間に、無色の下地層が設けられていてもよい。
【0018】
画像層20は、インクによって形成された画像である。ここで、「画像を形成する」とは、単なる着色なども含む概念であり、縮径部14の外周面141や、缶胴部15の外周面151に対して、インクを載せることをいう。ここで、缶胴部15に画像(画像層20)を形成するにあたっては、缶胴部15の外周面151の全域にインクを付着させてもよく、缶胴部15の外周面151の一部にインクを付着させてもよい。なお、詳細については後述するが、本実施形態では、縮径部14に画像(画像層20)を形成する際には、縮径部14の外周面141の一部にインクを付着させる。
【0019】
本実施形態の画像層20は、活性放射線の照射により硬化するインクにより形成されている。活性放射線とは、インクに含まれる重合性の樹脂等に作用してインクを硬化させることが可能な放射線を意味し、例えば、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等である。画像層20の形成に用いるインクとしては、例えば、活性放射線の一例である紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクが挙げられる。
また、本実施形態の画像層20は、インクジェット印刷方式を用いて形成されている。
【0020】
被覆層30は、画像層20を被覆することで画像層20を保護する。被覆層30は、可視光に対する透過性を有し、被覆層30を介して画像層20による画像が飲料用缶10の外側から視認できるようになっている。
被覆層30は、熱硬化型の樹脂塗料により形成されている。また、被覆層30は、コーター等を用いて樹脂塗料を塗布する方法により形成されている。
【0021】
図3(a)~(b)は、縮径部14の外周面141に形成された画像層20(画像層21)および被覆層30を説明する図である。
図3(a)は、
図1の飲料用缶10におけるIIIAで示す部分に形成された画像層20の平面図であり、画像層20を縮径部14の外周面141に垂直な方向から見た図である。また、
図3(b)は、
図3(a)におけるIIIB部の画像層21および被覆層30の断面図である。なお、
図3(a)では、被覆層30の記載を省略している。
【0022】
本実施形態では、縮径部14の外周面141に形成された画像層21は、第1の厚さD1を有する第1の領域211と、第1の厚さD1と比べて小さい第2の厚さD2を有する第2の領域212とを含む。ここで、画像層21の第1の厚さD1および第2の厚さD2とは、縮径部14の外周面141に垂直な方向における画像層21の厚さを意味する。
詳細については後述するが、第1の領域211は、飲料用缶10の製造工程において画像層20(画像層21)を形成する際に、外周面141にインクを塗布した領域である。また、第2の領域212は、飲料用缶10の製造工程において画像層20(画像層21)を形成する際に、外周面141にインクを塗布していない領域である。付言すると、第2の領域212は、隣接する第1の領域211に塗布されたインクが流れ込むことにより形成されている。なお、第2の領域212には、インクが塗布されていない部分が含まれていてもよい。言い換えると、第2の領域212は、第2の厚さD2が0である部分が含まれていてもよい。
【0023】
画像層21における第1の領域211の第1の厚さD1は、例えば、1μm以上20μm以下の範囲から選択することができ、3μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。
また、画像層21における第2の領域212の第2の厚さD2は、画像層20(画像層21)を形成するインクの粘度や第2の領域212の面積等によっても異なるが、例えば、第1の厚さD1よりも薄く、且つ、0μm以上3μm以下の範囲である。
【0024】
本実施形態の画像層21は、それぞれが飲料用缶10の軸方向に延びる複数の第1の領域211と、複数の第2の領域212とが、縮径部14の周方向に交互に並んで形成されている。付言すると、画像層21では、第1の領域211と第2の領域212とが、縮径部14の周方向に隣接している。さらに付言すると、画像層21では、第1の領域211同士の間に、第2の領域212が飲料用缶10の軸方向に延びるスリット状に形成されている。
なお、画像層21における第1の領域211および第2の領域212の形状は一例であって、
図3(a)に示した形状に限定されるものではない。
【0025】
また、本実施形態の画像層21では、第1の領域211の面積(以下、S1と表記する。)が、第2の領域212の面積(以下、S2と表記する。)と比べて広くなっている。この例では、第1の領域211の面積S1と第2の領域212の面積S2との比率が、およそ、S1:S2=3:2(面積S2を1とした場合に、S1:S2=1.5:1)となっている。
なお、第1の領域211の面積S1と第2の領域212の面積S2との比率(S1:S2)は、例えば、1:1~2:1の範囲とすることができ、6:5~9:5(面積S2を1とした場合に、S1:S2=1.2:1~1.8:1)の範囲とすることが好ましい。
【0026】
第1の領域211の面積S1が上述した比率よりも小さい場合、すなわち、第2の領域212の面積S2が上述した比率よりも大きい場合、画像層21により縮径部14に形成される画像の色が薄くなる場合がある。
第1の領域211の面積S1が上述した比率よりも大きい場合、すなわち、第2の領域212の面積S2が上述した比率よりも小さい場合、飲料用缶10に飲料を充填した飲料缶に温水処理を施した場合に、縮径部14にしわが生じやすくなる場合がある。なお、縮径部14にしわが生じるメカニズムについては、後述する。
【0027】
また、第1の領域211および第2の領域212の軸方向の長さは、接続箇所19から開口部12側までの縮径部14の長さの3分の2以上であることが好ましい。
さらに、第1の領域211および第2の領域212を含む画像層21は、縮径部14の周方向の全域に亘って形成されていることが好ましい。第1の領域211および第2の領域212を含む画像層21が縮径部14の周方向の全域に亘って形成されていることで、縮径部14の周方向において一部の領域にしわが生じることが抑制される。本実施形態では、第1の領域211および第2の領域212を含む画像層21は、縮径部14の周方向の全域に形成されている。
【0028】
ここで、詳細については後述するが、本実施形態の飲料用缶10の製造工程では、缶体11のもととなる筒状体40(
図4参照)の外周面に画像層20および被覆層30を形成した後、筒状体40の縮径領域44(
図4参照)にネック加工を施して縮径部14を形成する。縮径部14では、ネック加工に伴って画像層20(画像層21)が径方向に縮められることで、画像層21の膜厚が増加する場合がある。これにより、本実施形態の飲料用缶10では、縮径部14に形成された画像層21における第1の領域211の厚さD1が、缶胴部15に形成された画像層22の厚さよりも厚くなっている。
また、ネック加工では、開口部12に近づくに従い縮径割合が大きくなり、これに伴って、開口部12に近づくに従い縮径部14に形成された画像層21の膜厚が厚くなる。これにより、本実施形態の飲料用缶10では、縮径部14に形成された画像層21における第1の領域211の厚さD1および第2の領域212の厚さD2は、接続箇所19から開口部12に向かうに従い、徐々に厚くなっている。
【0029】
被覆層30は、上述したように、コーター等を用いて樹脂塗料を塗布することにより形成されている。これにより、
図3(b)に示すように、画像層21上に積層される被覆層30は、上面の高さが一定となっている。そして、画像層21上に積層されている被覆層30は、第1の領域211上に形成されている部分と比べて、第2の領域212上に形成されている部分のほうが、厚さが大きくなっている。付言すると、画像層21上に積層されている被覆層30は、画像層21の第1の領域211と第2の領域212とに対応して、厚さが小さい部分と厚さが大きい部分とが、縮径部14の周方向に交互に並んで形成されている。
【0030】
被覆層30の厚さは、特に限定されるものではないが、厚さが大きい部分(すなわち、画像層21の第2の領域212上に形成される部分)において、1μm以上20μm以下の範囲とすることができる。
【0031】
続いて、画像層20を形成するインクについて説明する。本実施形態の画像層20は、活性放射線の照射により硬化するインク、より好ましくは紫外線硬化型インクにより形成されている。
紫外線硬化型インクは、紫外線重合性のビヒクル成分、重合開始剤および着色剤を含み、さらに必要に応じて樹脂粒子、有機溶剤およびその他の添加剤等を含む。
【0032】
紫外線重合性のビヒクル成分としては、分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。
このような化合物としては、例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、不飽和アクリル系樹脂、不飽和ウレタン系樹脂、不飽和エポキシ系樹脂、不飽和ポリアミド系樹脂、あるいはこれらの樹脂とエチレン系不飽和基を有する反応性希釈剤との混合物等が挙げられる。これらの中でも、耐候性、密着性等に優れたアクリルウレタンオリゴマーを用いることが好ましい。
【0033】
重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、α-アミノケトン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。
【0034】
着色剤としては、例えば染料や顔料等が挙げられるが、耐候性の観点から、顔料を用いることが好ましい。また、着色剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
画像層20を形成する紫外線硬化型のインクにおける着色剤の含有量は、例えば、インクの全質量中、1質量%以上10質量%以下とすることができる。
【0035】
着色剤として顔料を用いる場合、顔料としては、無機顔料または有機顔料を使用することができる。顔料は、1種を単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等が挙げられる。
【0036】
また、着色剤として顔料を用いる場合、インクジェットヘッドにおけるインクの吐出安定性の観点から、インク中に存在する顔料粒子の体積平均粒子径が0.05μm以上0.4μm以下の範囲であり、且つ体積最大粒子径が0.2μm以上1μm以下の範囲であることが好ましい。顔料粒子の体積平均粒子径が0.4μmより大きいか、または体積最大粒子径が1μmよりも大きい場合、インク組成物を安定して吐出することが困難となる傾向がある。なお、顔料粒子の体積平均粒子径および体積最大粒子径は、動的光散乱法を用いた測定機器によって測定できる。
【0037】
樹脂粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂粒子は、インク中での分散性を良くするために、必要に応じて、シランカップリング剤で表面改質されたものが用いられる。
【0038】
有機溶剤は、インクの粘度を調整するために使用される。有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、セロソルブ、ブチルセルソルブ等のエーテル類等が挙げられる。
【0039】
本実施形態では、画像層20を形成する紫外線硬化型のインクの30℃における粘度が、2mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上20mPa・s以下であることがより好ましい。付言すると、本実施形態では、このような範囲となるように、有機溶剤等によってインクの粘度が調整される。
インクの30℃における粘度をこのような範囲とすることで、インクジェットヘッドにより紫外線硬化型インクを吐出する際に、良好な吐出安定性を実現することができる。
紫外線硬化型インクの粘度は、コーンプレート型粘度計を用いて測定することができる。
【0040】
続いて、被覆層30を形成する樹脂塗料について説明する。本実施形態の被覆層30は、熱硬化型の樹脂塗料により形成されている。
熱硬化型の樹脂塗料としては、特に限定されないが、例えば、アルキル樹脂系、アクリル樹脂系、ビニル樹脂系、ポリエステル樹脂系、アミノ樹脂系、ポリウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系の塗料が挙げられる。これらの中でも、被覆層30の塗膜硬度および耐水性の観点から、アミノ樹脂系の塗料を用いることが最も好ましい。
【0041】
続いて、本実施形態の飲料用缶10の製造方法について説明する。
図4は、本実施形態が適用される飲料用缶10の製造方法(製造工程)の一例を示した図である。
飲料用缶10の製造に当たっては、まず、金属板(例えば、アルミニウム板)に対し、潤滑油を塗布した後、カッピングプレスによって打ち抜き加工、絞り加工を行い、カップを成形する(カップ成形)。
そして、ボディメーカーによって、このカップに対して、絞り、しごき(Drawing and Ironing)加工が行われ(DI成形)、さらに、パンチが底部成形金型に突き当てられる。これにより、下部にドーム形状を有するDI缶が形成される。
その後、DI缶の上端部を切り揃えるトリミング加工がトリマによって行われる(トリミング)。
【0042】
次いで、トリミング加工が施されたDI缶に残存している潤滑油をウォッシャによって洗い落とす(脱脂洗浄)。次いで、その後の印刷で用いるインクや塗料の密着性を高めるための化成処理が施される(化成処理)。
これらの処理により、開口42を一端に有し、他端に底部43を有する有底円筒状の筒状体40であって、飲料用缶10の缶体11となる筒状体40が形成される。筒状体40は、缶本体部の一例である。
【0043】
次いで、筒状体40の外周面41に対して、インクジェット印刷方式によりインクを塗布し硬化することで、画像層20が形成される(画像層形成工程)。
ここで、筒状体40は、開口42が形成される一端側に位置し、後述するネック加工によって縮径が行われ縮径部14となる領域(以下、縮径領域44と表記する)と、縮径領域44よりも底部13側に位置し缶胴部15となる領域(以下、缶胴領域45と表記する)とに分けることができる。そして、筒状体40の外周面41は、縮径領域44の外周面441と、缶胴領域45の外周面451とを含む。
詳細については後述するが、本実施形態の画像層形成工程では、縮径領域44の外周面441に対して、第1の領域211(
図3参照)に対応する部分にのみインクを塗布し、第2の領域212(
図3参照)に対応する部分にはインクを塗布しない。
【0044】
次いで、筒状体40の外周面41(縮径領域44の外周面441、缶胴領域45の外周面451)に形成された画像層20の上に、コーターを用いて樹脂塗料を塗布し硬化することで、被覆層30が形成される(被覆層形成工程)。
【0045】
次いで、飲料用缶10に充填する内容物である飲料を安定的に保つための樹脂塗料が筒状体40の内周面に塗布される(内面塗装)。
その後、筒状体40に対して、筒状体40の上部に位置する縮径領域44にネック成形金型に押付ながら口絞りするネック加工が、ネッカフランジャによって施される(ネック加工)。本実施形態では、このネック加工により、筒状体40の縮径領域44の縮径が行われ、缶体11(
図1参照)の縮径部14(
図1参照)が形成される。
【0046】
その後、縮径部14の一端側に対してスピニング加工が施され、開口部12の縁に近づくに従い径が次第に大きくなるフランジ部が形成される(フランジ加工)。以上により、
図1に示した飲料用缶10が得られる。
【0047】
本実施形態では、この飲料用缶10が、飲料メーカ等に出荷される。そして、飲料メーカ等では、この飲料用缶10の内部に内容物である飲料が充填される。
次いで、飲料が充填された飲料用缶10の開口部12に対して缶蓋が取り付けられ、飲料缶が得られる。
【0048】
図5は、画像層20および被覆層30を形成する印刷システム100の一例を示した図である。本実施形態は、この印刷システム100により、画像形成装工程における画像層20の形成、および被覆層形成工程における被覆層30の形成を行う。
印刷システム100は、筒状体40に対しての印刷を行う印刷装置200と、印刷装置200にて筒状体40に塗布された樹脂塗料を硬化させる加熱装置300とを備えている。さらに、印刷システム100は、印刷装置200の動作を制御する印刷制御部400を備えている。印刷制御部400は、プログラム制御されたCPU(Central Processing Unit)により構成されている。
【0049】
印刷装置200には、筒状体40が供給される缶体供給部510が設けられている。この缶体供給部510では、筒状体40を支持する支持部材560に対する筒状体40の取り付けが行われる。
具体的には、支持部材560は円筒状に形成され、円筒状の筒状体40に対してこの支持部材560が挿入されることで、支持部材560に対する筒状体40の取り付けが行われる。
【0050】
印刷装置200には、筒状体40を支持しながら移動する複数の移動ユニット550が設けられている。
本実施形態では、この移動ユニット550に、筒状体40を支持する上記の支持部材560が取り付けられ、筒状体40は、この移動ユニット550とともに移動する。
ここで、本実施形態では、移動ユニット550はリニア搬送機構により移動するが、移動ユニット550は、例えばチェーン搬送機構またはベルト搬送機構等により移動してもよい。
【0051】
缶体供給部510の下流側には、印刷部700が設けられている。
印刷部700は、インクジェット印刷方式を用い、上流側から移動してきた筒状体40の外周面41にインクを塗布する。本実施形態では、印刷部700は、筒状体40の外周面41に、活性放射線の照射により硬化するインク、より具体的には、紫外線硬化型インクを塗布する。
【0052】
インクジェット印刷方式による画像形成とは、インクジェットヘッドからインクを吐出させて、筒状体40にこのインクを付着させることにより行う印刷を指す。
より具体的には、インクジェットヘッドには、インクを吐出する吐出口が複数設けられ、インクジェット印刷方式による画像形成では、この複数の吐出口からインクを吐出することにより印刷を行う。
インクジェット印刷方式による画像形成では、公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、ピエゾ方式、サーマル(バブル)方式、コンティニュアス方式等を用いることができる。
【0053】
本実施形態の印刷部700には、図中左右方向に並んで配置された複数のインクジェットヘッド71が設けられている。具体的には、印刷部700には、シアンのインクを吐出する第1インクジェットヘッド711、マゼンタのインクを吐出する第2インクジェットヘッド712、イエローのインクを吐出する第3インクジェットヘッド713、黒のインクを吐出する第4インクジェットヘッド714が設けられている。
以下の説明において、第1インクジェットヘッド711~第4インクジェットヘッド714を互いに区別しない場合には、単に、「インクジェットヘッド71」と表記する。
【0054】
図6は、本実施形態のインクジェットヘッド71の構成の一例を示す図である。
本実施形態では、4つのインクジェットヘッド71は、筒状体40の移動方向に並んだ状態で配置されている。また、4つのインクジェットヘッド71の各々は、筒状体40の移動方向と直交(交差)する方向に沿うように配置されている。そして、それぞれのインクジェットヘッド71は、筒状体40の外周面41に対向する底部に、筒状体40の軸方向に沿って並ぶ複数のインク吐出口710を有している。インクジェットヘッド71は、印刷制御部400(
図5参照)による制御に基づいて、それぞれのインク吐出口710からインクを吐出する。詳細については後述するが、本実施形態のインクジェットヘッド71は、インク吐出口710のうち筒状体40の縮径領域44に対向する第1インク吐出口群71Aと、缶胴領域45に対向する第2インク吐出口群71Bとで、異なるタイミングでインクを吐出する。
【0055】
本実施形態では、筒状体40は寝た状態(筒状体40の軸方向が水平となる状態)で移動し、筒状体40の外周面41の一部が鉛直方向における上方を向く。そして、この4つのインクジェットヘッド71の下方を筒状体40が通過していく過程で、インクジェットヘッド71は、筒状体40の外周面41に対して、この外周面41の上方から下方に向けて、インク吐出口710からインクを吐出する。付言すると、インク吐出口710からインクが吐出されることで、外周面41のそれぞれのインク吐出口710に対応した箇所に、ドット状にインクが塗布される。さらに付言すると、それぞれのインク吐出口710から吐出されたドット状のインクが、画像を構成する画素(ピクセル)となる。
【0056】
より具体的には、本実施形態では、移動ユニット550が、複数設けられたインクジェットヘッド71の各々の設置個所にて停止する。そして、各インクジェットヘッド71によりインクの吐出が行われている間、移動ユニット550の各々に設けられたモータ等の駆動源によって、筒状体40が周方向に回転する。これにより、筒状体40の外周面41に対して周方向に亘ってインクが塗布され、外周面41に画像が形成される。付言すると、筒状体40の縮径領域44の外周面441および缶胴領域45の外周面451に、画像が形成される。
【0057】
ここで、本実施形態の印刷部700では、縮径領域44の外周面441にインクが塗布されない非塗布部462が含まれるように、筒状体40の外周面41に対してインクを塗布し画像を形成する。
図7(a)~(b)は、印刷部700のインクジェットヘッド71により縮径領域44にインクが塗布される領域を説明する図である。
図7(a)は、筒状体40の外周面に形成された画像を示した図であって、
図4におけるVIIA部の拡大図である。
図7(b)は、
図7(a)におけるVIIB部の断面図である。
【0058】
筒状体40における縮径領域44の外周面441に対しては、インクが塗布された塗布部461と、インクが塗布されていない非塗布部462とが含まれるように、インクジェットヘッド71によりインクが塗布される。
この例では、筒状体40の軸方向に延びる複数の塗布部461と、複数の非塗布部462とが、縮径領域44の周方向に並ぶように、インクジェットヘッド71(
図6参照)によりインクが塗布される。
【0059】
具体的には、インクジェットヘッド71は、印刷制御部400による制御により、複数のインク吐出口710(
図6参照)の第1インク吐出口群71A(
図6参照)によるインクの吐出と、インクの吐出の停止とを、交互に行うことにより、塗布部461と非塗布部462とを形成する。付言すると、第1インク吐出口群71Aによりインクが吐出された領域に塗布部461が形成され、第1インク吐出口群71Aによるインクの吐出が停止された領域に非塗布部462が形成される。
【0060】
第1インク吐出口群71Aによりインクを吐出する期間およびインクの吐出を停止する期間は、特に限定されないが、塗布部461と非塗布部462との比率(塗布部461:非塗布部462)が、1:1~2:1の範囲、好ましくは6:5~9:5の範囲となるように、制御することができる。
この例では、第1インク吐出口群71Aにより、縮径領域44の周方向に3ピクセル分インクを塗布し、2ピクセル分インクの塗布を停止することを繰り返すことで、塗布部461と非塗布部462とを形成している。この場合、塗布部461と非塗布部462との比率(塗布部461:非塗布部462)が3:2となる。
【0061】
ここで、
図7(b)にて破線および矢印Xで示すように、塗布部461に塗布されたインクは、時間経過に伴って、隣接する非塗布部462に流れ込む。このため、インクジェットヘッド71によりインクが塗布されなかった非塗布部462にも、インクが付着する。また、塗布部461におけるインクの厚みは、インクジェットヘッド71によりインクが塗布された直後と比べて小さくなる。
【0062】
なお、本実施形態の印刷部700では、缶胴領域45の外周面451に対しては、缶胴部15に形成する印刷図柄に従ってインクを塗布し、画像を形成する。付言すると、本実施形態の印刷部700では、缶胴領域45の外周面451に対して、周方向の全域に亘ってインクを塗布し、画像を形成する。
付言すると、インクジェットヘッド71は、印刷制御部400による制御により、複数のインク吐出口710の第2インク吐出口群71Bにより連続してインクを吐出する。これにより、缶胴領域45に対して、周方向の全域に亘ってインクを塗布することができる。
【0063】
図5に戻り、印刷部700の下流側には、光照射部750が設けられている。
光照射部750は、光源を備え、印刷部700による画像形成が行われた後の筒状体40に光を照射する。本実施形態の光照射部750は、筒状体40に紫外線を照射する。これにより、筒状体40の外周面41に付着したインクが硬化し、画像層20が形成される。
付言すると、筒状体40における縮径領域44では、外周面441に付着したインクが硬化することで、画像層21が形成される。より具体的には、外周面441の塗布部461に付着したインクが硬化することで、第1の厚さD1(
図3参照)を有する第1の領域211が形成される。また、外周面441の非塗布部462に付着したインクが硬化することで、第1の厚さD1と比べて小さい第2の厚さD2(
図3参照)を有する第2の領域212(
図3参照)が形成される。
また、筒状体40における缶胴領域45では、外周面451に付着したインクが硬化することで、画像層22が形成される。
【0064】
光照射部750の下流側には、塗料塗布部770が設けられている。
塗料塗布部770は、上流側から移動してきた筒状体40の外周面41に、画像層20を被覆する被覆層30を形成する樹脂塗料を塗布する。本実施形態では、塗料塗布部770は、加熱により硬化する熱硬化型の樹脂塗料を塗布する。
塗料塗布部770は、円筒または円柱状に形成され、筒状体40の外周面41に接触する接触部材771を備えている。
接触部材771は、接触部材771の対向位置に筒状体40が供給された後に、この筒状体40に向かって移動し、外周面41に接触する。
【0065】
また、塗料塗布部770は、樹脂塗料を収容する塗料収容部772を備えている。さらに、塗料塗布部770は、塗料収容部772内の樹脂塗料を接触部材771に供給する供給部材773を備えている。
塗料塗布部770では、筒状体40が周方向に回転する。また、接触部材771の外周面には、供給部材773によって樹脂塗料が供給されている。
これにより、塗料塗布部770は、筒状体40の外周面41の全域に樹脂塗料を塗布する。付言すると、塗料塗布部770は、筒状体40における縮径領域44の外周面441および缶胴領域45の外周面451の全域に、樹脂塗料を塗布する。
【0066】
ここで、本実施形態の飲料用缶10の製造方法においては、筒状体40の外周面41に形成されたインクを硬化して画像層20を形成した後、硬化したインク(画像層20)上に、被覆層30を形成する樹脂塗料を塗布している。
例えば、画像層20を形成するインクを硬化させる前に、インク上に被覆層30を形成する樹脂塗料を塗布する場合、樹脂塗料の一部がインクに吸収される場合がある。この場合、樹脂塗料とインクとが混じり合い、画像層20と被覆層30との界面が不明瞭となる場合がある。また、樹脂塗料とインクとが混じり合うと、縮径領域44の外周面に形成された画像層21の第1の領域211と第2の領域212との境界も不明瞭となりやすい。また、被覆層30の厚さが薄くなって、缶体11に被覆層30を設けることにより飲料用缶10の艶がなくなってしまう場合がある。
これに対し、本実施形態では、画像層20を形成するインクを硬化した後に、硬化したインク(画像層20)上に、被覆層30を形成する樹脂塗料を塗布することで、樹脂塗料とインクとが混じり合うことが抑制される。これにより、画像層20と被覆層30との界面や画像層21における第1の領域211と第2の領域212との境界が不明瞭となったり、被覆層30による艶が失われたりすることが抑制される。
【0067】
塗料塗布部770の下流側には、支持部材560からの筒状体40の取り外しが行われる取り外し部780が設けられている。
本実施形態では、この取り外し部780にて、支持部材560からの筒状体40の取り外しが行われ、印刷装置200の外部に排出される。
【0068】
印刷装置200から排出された筒状体40は、加熱装置300に搬送される。
加熱装置300では、筒状体40に対して熱風が吹き付けられる。これにより、筒状体40の外周面41に塗布された熱硬化型の樹脂塗料が加熱されて硬化し、被覆層30が形成される。
【0069】
以上により、外周面41に画像層20および被覆層30が形成された筒状体40が得られる。
この後、上述したように、画像層20および被覆層30が形成された筒状体40に対し、ネック加工およびフランジ加工を施すことで、縮径部14(
図1参照)および缶胴部15(
図1参照)を有する缶体11(
図1参照)の外周面に画像層20および被覆層30が形成された、
図1の飲料用缶10が得られる。
【0070】
ここで、本実施形態では、筒状体40の縮径領域44に形成された画像層21が第1の領域211と、第1の領域211と比べて厚さが小さい第2の領域212との双方を含むことで、飲料用缶10の製造工程において、縮径領域44に対しネック加工を施して縮径部14を形成する場合に、縮径部14にしわが生じることが抑制される。
具体的に説明すると、筒状体40の縮径領域44では、画像層21の第2の領域212上に積層される被覆層30の厚さが、第1の領域211上に積層される被覆層30の厚さよりも大きくなっている。ここで、被覆層30は、顔料などの着色剤を含む画像層21と比べて硬度が低い(すなわち、柔らかい)傾向がある。本実施形態では、縮径領域44に形成された画像層21が第2の領域212を含み、第2の領域212上に被覆層30の厚さが大きい部分を含むことで、縮径領域44に対しネック加工を施した場合に、画像層21および被覆層30が筒状体40に沿って変形しやすくなる。この結果、得られた飲料用缶10において、縮径部14の外周面141と画像層21および被覆層30との間に歪みが生じにくくなり、縮径部14にしわが生じることが抑制される。
【0071】
また、本実施形態では、画像層21の第1の領域211と第2の領域212とが、縮径領域44の周方向に隣接して配置されている。これにより、縮径領域44に対しネック加工を施した場合に、画像層21および画像層21上に積層される被覆層30とが、周方向の全域に亘って均等に変形しやすくなる。付言すると、例えば第1の領域211および第2の領域212が縮径領域44の周方向に連続し、第1の領域211と第2の領域212とが縮径領域の軸方向に隣接して配置されている場合と比べて、画像層21および被覆層30が周方向の全域に亘って、筒状体40に沿って変形しやすくなる。この結果、得られた飲料用缶10において、縮径部14の外周面141と画像層21および被覆層30との間に歪みがより生じにくくなり、縮径部14にしわが生じることがより抑制される。
【0072】
また、上記の製造工程により得られた飲料用缶10は、上述したように、飲料メーカ等に出荷され、内部に内容物である飲料が充填される。そして、飲料が充填された飲料用缶10の開口部12に対して缶蓋が取り付けられ、飲料缶となる。
ここで、飲料メーカ等では、飲料缶の表面が結露することを抑制するために、飲料が充填された後の飲料缶を温水に浸す温水処理を行う場合がある。そして、飲料缶(飲料用缶10)の縮径部14に形成された画像層21および被覆層30の構成によっては、温水処理によって縮径部14の外周面141から画像層21および被覆層30の一部が剥がれて弛み、縮径部14にしわが生じる場合がある。
これに対し、本実施形態では、縮径部14に形成された画像層21が第1の領域211と第2の領域212との双方を含むことで、上述したように、縮径加工による縮径部14の外周面141と画像層21および被覆層30との間の歪みが生じにくくなっている。これにより、飲料缶に対して温水処理を施した場合であっても、縮径部14の外周面141から画像層21および被覆層30が剥がれにくくなり、縮径部14にしわが生じることが抑制される。
【0073】
なお、非塗布部462を有するようにインクを塗布し画像層21を形成した筒状体40の縮径領域44では、周方向の全域に亘ってインクを塗布して画像層22を形成した缶胴領域45と比べて、単位面積当たりに含まれるインクが少ない。しかしながら、本実施形態では、筒状体40の縮径領域44に縮径加工を施すことで、縮径部14では、縮径加工に伴って、画像層21が径方向に縮められることで、画像層21の膜厚が増加する場合がある。このため、缶胴領域45と比べて縮径領域44に含まれるインクが少ない場合であっても、縮径領域44が縮径されて形成された縮径部14において、画像層21により形成される画像の色が薄くなることが抑制される。
【0074】
続いて、縮径領域44にインクを塗布される領域の他の例について説明する。
図7(a)~(b)に示した例では、筒状体40の軸方向に延びる複数の塗布部461と、複数の非塗布部462とが、縮径領域44の周方向に並ぶように、縮径領域44にインクを塗布したが、縮径領域44に対するインクの塗布のしかたはこれに限定されるものではない。
図8は、印刷部700のインクジェットヘッド71により縮径領域44にインクが塗布される領域の他の例を説明する図であって、縮径領域44の外周面441に形成された画像を示した図である。
【0075】
図8に示す例では、筒状体40における縮径領域44の外周面441に対し、インクが塗布された塗布部461と、インクが塗布されていない非塗布部462とが、互い違いに、碁盤目状に並ぶように形成されている。付言すると、それぞれの塗布部461とそれぞれの非塗布部462とは、筒状体40の軸方向および縮径領域44の周方向に隣接して配置されている。また、それぞれの塗布部461および非塗布部462は、画像を構成する画素(ピクセル)に対応し、それぞれの塗布部461は、インクジェットヘッド71のインク吐出口710から突出されたドット状のインクにより形成されている。
【0076】
この例では、塗布部461と非塗布部462との比率(塗布部461:非塗布部462)が、およそ1:1となっている。
図8に示す塗布部461および非塗布部462は、インクジェットヘッド71における第1インク吐出口群71A(
図6参照)によるインクの吐出と、インクの吐出の停止とを、印刷制御部400により制御することにより形成することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいては様々な変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0078】
10…飲料用缶、11…缶体、12…開口部、13…底部、14…縮径部、15…缶胴部、20、21、22…画像層、30…被覆層、40…筒状体、44…縮径領域、45…缶胴領域、71…インクジェットヘッド、100…印刷システム、200…印刷装置、211…第1の領域、212…第2の領域、300…加熱装置、400…印刷制御部、461…塗布部、462…非塗布部、700…印刷部、710…インク吐出口