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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089477
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 3/04 20060101AFI20240626BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240626BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240626BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240626BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240626BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240626BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B60C3/04 B
B60C11/03 300B
B60C1/00 A
B60C11/00 B
B60C11/00 D
B60C11/13 B
C08L21/00
C08K3/36
C08L9/06
C08L7/00
C08L9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204867
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】権藤 聡
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA03
3D131BA05
3D131BA08
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB03
3D131BC12
3D131BC19
3D131CA03
3D131EA03U
3D131EB11V
3D131EB11W
3D131EB11X
3D131EB19V
3D131EB24U
3D131EB27V
3D131EB28V
3D131EB28W
3D131EB28X
3D131EB31V
3D131EB31W
3D131EB31X
3D131EB83V
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131EC12X
4J002AC01W
4J002AC02W
4J002AC06W
4J002AC08W
4J002BB18W
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】摩耗後のウェットグリップ性能の向上を図ることができる重荷重用タイヤを提供すること。
【解決手段】トレッド部を有する重荷重用タイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝を有し、前記トレッド部は、トレッド面を構成する第一層と、前記第一層の半径方向内側に隣接する第二層と、前記第二層の半径方向内側に存在する第三層とを少なくとも備え、前記第一層、前記第二層、および前記第三層がそれぞれゴム成分およびフィラーを含有するゴム組成物により構成され、タイヤ外径をDt(m)、前記第一層の厚みをt1(mm)、前記周方向溝の最深部の溝深さをH(mm)、前記第一層を構成するゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量をS1(質量部)、前記第二層を構成するゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量をS2(質量部)としたとき、Dtが0.80以上であり、t1/Hが0.90以下であり、S1/S2が1.0未満であり、S2とDtとの積(S2×Dt)が10.0超である重荷重用タイヤ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する重荷重用タイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝を有し、
前記トレッド部は、トレッド面を構成する第一層と、前記第一層の半径方向内側に隣接する第二層と、前記第二層の半径方向内側に存在する第三層とを少なくとも備え、
前記第一層、前記第二層、および前記第三層がそれぞれゴム成分およびフィラーを含有するゴム組成物により構成され、
タイヤ外径をDt(m)、前記第一層の厚みをt1(mm)、前記周方向溝の最深部の溝深さをH(mm)、前記第一層を構成するゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量をS1(質量部)、前記第二層を構成するゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量をS2(質量部)としたとき、
Dtが0.80以上であり、t1/Hが0.90以下であり、S1/S2が1.0未満であり、S2とDtとの積(S2×Dt)が10.0超である重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記第二層を構成するゴム組成物に含まれるフィラー中のシリカの含有率が30質量%以上である、請求項1記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
S2が30以上である、請求項1記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記第二層を構成するゴム組成物に含まれるゴム成分が、スチレンブタジエンゴムを10質量%以上含有する、請求項1記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記第二層を構成するゴム組成物に含まれるゴム成分が、スチレンブタジエンゴムを30質量%以上含有する、請求項1記載の重荷重用タイヤ。
【請求項6】
前記第二層を構成するゴム組成物に含まれるゴム成分が、イソプレン系ゴムを60質量%以上含有する、請求項1記載の重荷重用タイヤ。
【請求項7】
前記第一層を構成するゴム組成物がシリカを含有する、請求項1記載の重荷重用タイヤ。
【請求項8】
前記第一層を構成するゴム組成物に含まれるフィラー中のシリカの含有率が10質量%以上である、請求項1記載の重荷重用タイヤ。
【請求項9】
前記第一層を構成するゴム組成物に含まれるゴム成分が、スチレンブタジエンゴムを10質量%以上含有する、請求項1記載の重荷重用タイヤ。
【請求項10】
Dtが1.00以上である、請求項1記載の重荷重用タイヤ。
【請求項11】
前記第一層を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδ1)が0.24以上である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項12】
前記第一層を構成するゴム組成物の0℃における複素弾性率(0℃E*)が10.0MPa以上である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項13】
前記第一層を構成するゴム組成物のガラス転移温度が-60℃以上である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項14】
前記第一層を構成するゴム組成物の破断時伸びが500%以上である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項15】
前記第一層を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδを0℃tanδ1としたとき、
0℃tanδ1とDtとの積(0℃tanδ1×Dt)が0.18以上である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項16】
前記周方向溝の少なくとも一つの溝壁に、前記トレッド部の踏面に表れる溝縁よりも溝幅方向の外側に凹む凹部が設けられた、請求項1記載のタイヤ。
【請求項17】
溝壁に前記トレッド部の踏面に表れる溝縁よりも溝幅方向の外側に凹む凹部が設けられた周方向溝の、前記凹部のタイヤ半径方向外側端部からトレッド表面までの距離をLとしたとき、L/t1が1.0超である、請求項16記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タイヤのトレッド部を、タイヤ径方向内側に位置するベースゴムと、そのタイヤ径方向外側に位置するキャップゴムの2層構造(いわゆるキャップ/ベース構造)とし、前記ベースゴムに損失正接(tanδ)の小さなゴム組成物を適用して、タイヤの操縦安定性能および低燃費性能の向上を図ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-61214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のようなタイヤの場合、キャップゴム層の損失正接tanδが高いため、新品時のウェットグリップ性能は高い。しかしながら、走行を重ねるごとにキャップゴム層は自己発熱の影響により熱劣化を生じ硬くなるため、トレッド接地面の剛性が高くなり、路面に対する追従性が失われ、ウェットグリップ性能が低下することが懸念される。
【0005】
本発明は、摩耗後のウェットグリップ性能の向上を図ることができる重荷重用タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有する重荷重用タイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝を有し、前記トレッド部は、トレッド面を構成する第一層と、前記第一層の半径方向内側に隣接する第二層と、前記第二層の半径方向内側に存在する第三層とを少なくとも備え、前記第一層、前記第二層、および前記第三層がそれぞれゴム成分およびフィラーを含有するゴム組成物により構成され、タイヤ外径をDt(m)、前記第一層の厚みをt1(mm)、前記周方向溝の最深部の溝深さをH(mm)、前記第一層を構成するゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量をS1(質量部)、前記第二層を構成するゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量をS2(質量部)としたとき、Dtが0.80以上であり、t1/Hが0.90以下であり、S1/S2が1.0未満であり、S2とDtとの積(S2×Dt)が10.0超である重荷重用タイヤに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、重荷重用タイヤの摩耗後のウェットグリップ性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤのトレッドパターンを平面に展開した展開図である。
図2】本実施形態に係る周方向溝の一部が示された断面図である。
図3】本実施形態に係る他の周方向溝の一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態であるタイヤは、トレッド部を有する重荷重用タイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝を有し、前記トレッド部は、トレッド面を構成する第一層と、前記第一層の半径方向内側に隣接する第二層と、前記第二層の半径方向内側に存在する第三層とを少なくとも備え、前記第一層、前記第二層、および前記第三層がそれぞれゴム成分およびフィラーを含有するゴム組成物により構成され、タイヤ外径をDt(m)、前記第一層の厚みをt1(mm)、前記周方向溝の最深部の溝深さをH(mm)、前記第一層を構成するゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量をS1(質量部)、前記第二層を構成するゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量をS2(質量部)としたとき、Dtが0.80以上であり、t1/Hが0.90以下であり、S1/S2が1.0未満であり、S2とDtとの積(S2×Dt)が10.0超である重荷重用タイヤである。
【0010】
本発明の重荷重用タイヤの摩耗後のウェットグリップ性能が向上する理由については、理論に拘束されることは意図しないが、以下のように考えられる。
【0011】
トレッド部が複数の周方向溝を有することにより、トレッド部には周方向溝および接地端部により区切られた複数の陸部やブロック部を形成することとなる。周方向溝の最深部の溝深さに対する第一層の厚みの比(t1/H)を0.90以下とすることで、第二層の外面が周方向溝の溝底の最深部よりもタイヤ半径方向外側に位置するようになる。これにより、陸部やブロック内部が2以上のゴム層で形成されるようになる。トレッド部が摩耗し、第二層が露出すると、第二層が陸部やブロック部の中央部分に、第一層が陸部やブロック部のエッジ部分にそれぞれ存在することとなる。ここで、陸部やブロック部のエッジ部分(すなわち第一層)を構成するゴム組成物はシリカの含有量が少ないため、疎水性を発揮しやすくなり、撥水しやすく、除水効果が得られやすくなると考えられる。そのため、陸部やブロック部の中央部分(すなわち第二層)が路面に接しやすくすることができると考えられる。一方、陸部やブロック部の中央部分(すなわち第二層)を構成するゴム組成物はシリカの含有量が多く、親水性が高い状態になるので、ウェット路面に相互作用しやすくなり、ブレーキ性が高まると考えられる。さらに、トレッド部を三層以上とすることで、第二層、第三層間の界面において、ゴム分子鎖どうしの摩擦によりエネルギーロスを発生させやすくすることができ、摩耗後のウェットグリップ性能が向上すると考えられる。
【0012】
他方、タイヤの外径Dtを0.80m以上とすることで、転動時に大きな遠心力を発生させトレッド表面に付着した水を飛ばすことができると考えられる。しかし、外径Dtが0.80m以上の範囲でも外径Dt比較的小さい場合には遠心力が弱まり、トレッド表面に水が残りやすくなると考えられる。そこで、タイヤ外径Dtが小さくなるにつれて、ブロックの中央部分(すなわち第二層)を構成するゴム組成物中のシリカの含有量S2を増やし、親水性を高めることで、水が付着した状態でもウェットグリップ性能を担保することができると考えられる。そして、これらが協働することで、摩耗後のウェットグリップ性能の向上を図ることができるという特筆すべき効果が得られるものと考えられる。
【0013】
第二層を構成するゴム組成物に含まれるフィラー中のシリカの含有率は、摩耗後の陸部やブロックの親水性を高める観点から、30質量%以上であることが好ましい。
【0014】
第二層を構成するゴム組成物に含まれるゴム成分は、ゴム組成物内にスチレンのドメインを形成させ、エネルギーロスを発生させやすくする観点から、スチレンブタジエンゴムを10質量%以上含有することが好ましい。
【0015】
第二層を構成するゴム組成物に含まれるゴム成分は、制動時の変形に対して、反力を発生させ、大きな制動力を発揮させる観点から、イソプレン系ゴムを60質量%以上含有することが好ましい。
【0016】
第一層を構成するゴム組成物に含まれるフィラー中のシリカの含有率は、10質量%以上であることが好ましい。
【0017】
第一層を構成するゴム組成物に含まれるフィラー中のシリカの含有率を前記の範囲とすることにより、第一層、第二層間の馴染みがよくなり、摩耗後のトレッド表面に形成された界面が剥離することを抑制し、摩耗後のウェットグリップ性能を向上させやすくすることができると考えられる。
【0018】
第一層を構成するゴム組成物に含まれるゴム成分は、制動時の変形により、陸部やブロック部の端部においてもエネルギーロスを発生させやすくする観点から、スチレンブタジエンゴムを10質量%以上含有することが好ましい。
【0019】
第一層を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδ1)は、0.24以上であることが好ましい。
【0020】
0℃tanδ1を前記の範囲とすることにより、制動時の変形により、陸部やブロック部の端部においてもエネルギーロスを発生させやすくすることができると考えられる。
【0021】
第一層を構成するゴム組成物の0℃における複素弾性率(0℃E*)は、10.0MPa以上であることが好ましい。
【0022】
第一層を構成するゴム組成物の0℃E*を前記の範囲とすることにより、摩耗後の陸部やブロック部が過度に変形することを抑制し、反力を発生させやすくすることができると考えられる。
【0023】
第一層を構成するゴム組成物のガラス転移温度は-60℃以上であることが好ましい。
【0024】
第一層を構成するゴム組成物のガラス転移温度を-60℃以上とすることで、エネルギーロスを得やすくすることができ、摩耗後のウェットグリップ性能を向上させやすくすることができると考えられる。
【0025】
第一層を構成するゴム組成物のJIS K 6251:2017に準じて測定した破断時伸びは500%以上であることが好ましい。
【0026】
第一層を構成するゴム組成物の破断時伸びを前記の範囲とすることで、タイヤ摩耗時の表面状態がより平滑に保たれやすくなり、実接地面積の減少が抑制され、結果としてタイヤ摩耗後のウェットグリップ性能の低下が抑制できると考えられる。
【0027】
第一層の0℃における損失正接(0℃tanδ1)と外径Dtとの積(0℃tanδ1×Dt)は、0.18以上であることが好ましい。
【0028】
Dtが大きいほど、陸部やブロック部の端部も変形によりエネルギーロスを生じやすくさせることができると考えられる。そのため、0℃tanδ1とDtとの積を大きくすることで、陸部やブロック部でもエネルギーロスを生じさせ、摩耗後のウェットグリップ性能を向上させやすくすることができると考えられる。
【0029】
周方向溝の少なくとも一つの溝壁には、トレッド部の踏面に表れる溝縁よりも溝幅方向の外側に凹む凹部が設けることが好ましい。
【0030】
トレッド部が摩耗するにしたがい周方向溝の溝幅が拡大することで排水性が向上し、タイヤ摩耗後のウェットグリップ性能を向上させやすくすることができると考えられる。
【0031】
溝壁に前記トレッド部の踏面に表れる溝縁よりも溝幅方向の外側に凹む凹部が設けられた周方向溝の、前記凹部のタイヤ半径方向外側端部からトレッド表面までの距離をLとしたとき、L/t1は1.0超であることが好ましい。
【0032】
第一層よりもタイヤ半径方向内側に凹部が存在することにより、第二層目以降に前記空隙が生じることとなり、摩耗後の排水性が向上し、摩耗後のウェットグリップ性能を向上させやすくすることができると考えられる。
【0033】
<定義>
「トレッド部」は、タイヤの接地面を形成する部分であり、タイヤ半径方向断面において、ベルト層やベルト補強層、カーカス層などのスチールやテキスタイル材料によりタイヤ骨格を形成する部材を備える場合には、それらよりもタイヤ半径方向外側の部材である。
【0034】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、JATMAであれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている“標準リム”、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association,Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”であり、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。
【0035】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”、TRAであれば、表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値であり、正規リムと同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。
【0036】
「正規状態」は、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。なお、本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法は、前記正規状態で測定される。
【0037】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば“最大負荷能力”、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”、TRAであれば、表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値であり、正規リムと同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。
【0038】
「接地端」とは、正規状態のタイヤに正規荷重が負荷されキャンバー角0度で平面に接地したときの最もタイヤ幅方向外側の接地位置である。
【0039】
「トレッド部を構成する各ゴム層の厚み」は、タイヤを、タイヤ回転軸を含む面で切断した断面において、タイヤ赤道面上における各ゴム層の厚みであり、タイヤを周方向に72°ずつ回転させ、5か所の位置で求めたトレッドの厚みの平均値である。例えば、第一層の厚みは、タイヤ赤道面上における、トレッド最表面から第一層のタイヤ半径方向内側界面までのタイヤ半径方向の直線距離を指す。なお、タイヤ赤道面上に周方向溝を有する場合には、トレッド部を構成する各ゴム層の厚みは、タイヤ赤道面に最も近い陸部のタイヤ幅方向中央部における各ゴム層の厚みとする。「タイヤ赤道面に最も近い陸部」とは、タイヤ赤道面に存在する周方向溝の、タイヤ赤道面に最も近い溝縁を有する陸部を指すものとし、そのような陸部がタイヤ幅方向両横に存在する場合は、トレッド部を構成する各ゴム層の厚みは、当該2つの陸部のタイヤ幅方向中央部における各ゴム層の厚みの平均値とする。また、タイヤ赤道面上の陸部に通電部材などが存在し、界面が不明瞭である場合には、通電部材などにより遮られた界面を仮想的につなぎ合わせて測定するものとする。
【0040】
周方向溝、横溝を含め「溝」は、少なくとも3mmよりも大きい深さの凹みをいう。特にタイヤ表面における開口幅が2mm以下のものを「サイプ」と呼ぶ。
【0041】
「ブロック部」とは、トレッド部に形成されたトレッド表面における開口幅が2.0mmよりも大きい周方向溝、横溝、および接地端により区切られた領域を指し、幅方向溝を有さない場合には、前記周方向溝及び接地端部により区切られた、陸部を指す。
【0042】
「周方向溝の最深部の溝深さ」は、トレッド面と周方向溝の溝底の最深部とのタイヤ半径方向の距離によって求められる。なお、周方向溝の溝底の最深部とは、陸部またはブロック部に隣接した周方向溝のうち、最も深い溝深さを有する周方向溝の溝底の最深部である。
【0043】
溝壁にトレッド部の踏面に表れる溝縁よりも溝幅方向の外側に凹む凹部が設けられた周方向溝の、前記凹部のタイヤ半径方向外側端部からトレッド表面までの距離Lは、タイヤ半径方向断面において、タイヤ表面側からタイヤ内側方向に向けて溝幅が広がる変曲点から、該周方向溝のタイヤ最表面側での端部を繋いだ直線までの直線距離を指す(図3)。該周方向溝が、タイヤ表面側の端部からタイヤ内側に向けて溝幅が漸増し続ける場合には、Lは0である。
【0044】
「軟化剤」とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、ゴム組成物からアセトンを用いて抽出される成分である。軟化剤は、25℃で液体(液状)の軟化剤および25℃で固体の軟化剤を含む。ただし、通常タイヤ工業で使用されるワックスおよびステアリン酸は含まないものとする。
【0045】
「軟化剤の含有量」は、予めオイル、樹脂成分、液状ゴム成分等の軟化剤により伸展された伸展ゴム成分中に含まれる軟化剤の量も含む。また、オイルの含有量、樹脂成分の含有量、液状ゴムの含有量についても同様であり、例えば、伸展成分がオイルである場合には伸展オイルはオイルの含有量に含まれる。
【0046】
<測定方法>
「トレッド部を構成する各ゴム層の厚み」は、タイヤを、タイヤ回転軸を含む平面で切断し、ビード部の幅を正規リムの幅に合わせた状態で測定される。
【0047】
「0℃tanδ」は、動的粘弾性測定装置(例えば、GABO社製のイプレクサーシリーズ)を用い、温度0℃、周波数10Hz、初期歪10%、動歪±2.5%、伸長モードの条件下で測定される損失正接である。0℃tanδ測定用サンプルは、長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmの加硫ゴム組成物である。タイヤから切り出して作製する場合には、タイヤのトレッド部から、タイヤ周方向が長辺、タイヤ半径方向が厚さ方向となるように切り出す。
【0048】
「0℃E*」は、動的粘弾性測定装置(例えば、GABO社製のイプレクサーシリーズ)を用い、温度0℃、周波数10Hz、初期歪10%、動歪±2.5%、伸長モードの条件下で測定される複素弾性率である。本測定用サンプルは、0℃tanδの場合と同様にして作製される。
【0049】
「ゴム組成物のガラス転移温度(Tg)」は、動的粘弾性測定装置(例えば、GABO社製のイプレクサーシリーズ)を用い、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%および昇温速度2℃/minの条件下で、-60℃から40℃の範囲におけるtanδの温度分布曲線を測定し、得られた温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度(tanδピーク温度)をTgとして決定する。-60℃から40℃の範囲内において、tanδの最大値が2点存在した場合にはそのうちの温度が低い側をTgとする。また、-60℃から40℃の範囲において、温度上昇に伴いtanδが漸減する温度分布曲線が得られた場合には上述の定義から、Tgを-60℃とする。本測定用サンプルは、0℃tanδの場合と同様にして作製される。
【0050】
「破断時伸びEB」は、JIS K 6251:2017に準拠し、23℃雰囲気下にて、引張速度3.3mm/秒の条件で測定する破断時伸び(切断時伸び)(%)である。EB測定用サンプルは、厚さ1mmのダンベル状7号形の加硫ゴム試験片である。タイヤから切り出して作製する場合には、タイヤのトレッド部から、タイヤ周方向が引張方向、タイヤ半径方向が厚さ方向となるように切り出す。
【0051】
「スチレン含量」は、1H-NMR測定により算出される値であり、例えば、SBR等のスチレンに由来する繰り返し単位を有するゴム成分に適用される。「ビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)」は、JIS K 6239-2:2017に従い、赤外吸収スペクトル分析により算出される値であり、例えば、SBR、BR等のブタジエンに由来する繰り返し単位を有するゴム成分に適用される。「シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)」は、JIS K 6239-2:2017に従い、赤外吸収スペクトル分析により算出される値であり、例えば、BR等のブタジエンに由来する繰り返し単位を有するゴム成分に適用される。
【0052】
「ゴム成分中の総スチレン量」とは、ゴム成分100質量%中に含まれるスチレン単位の合計含有量(質量%)であって、各ゴム成分について、それぞれ、スチレン含量(質量%)にゴム成分中の質量分率を乗じて得られる値を算出し、それら値を総和した値である。具体的にはΣ(各スチレン単位含有ゴムのスチレン含量(質量%)×各スチレン単位含有ゴムのゴム成分中の含有量(質量%)/100)により算出される。
【0053】
「重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTIPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。例えば、SBR、BR等に適用される。
【0054】
「カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)」は、JIS K 6217-2:2017に準じて測定される。「シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)」は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される。
【0055】
「樹脂成分の軟化点」は、JIS K 6220-1:2015 7.7に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0056】
本発明の一実施形態であるタイヤの作製手順について、以下に詳細に説明する。但し、以下の記載は本発明を説明するための例示であり、本発明の技術的範囲をこの記載範囲にのみ限定する趣旨ではない。
【0057】
<タイヤ>
図1に、本発明の一実施形態に係るタイヤのトレッドパターンを平面に展開した展開図の一例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。トレッド部1には、図1に示すように、タイヤ周方向に連続して延びる周方向溝3、4、5によって、各一対のセンター陸部6、6、ミドル陸部7、7、及び、ショルダー陸部8、8が設けられている。センター陸部6は、センター周方向溝3とミドル周方向溝4との間に形成されている。ミドル陸部7は、ミドル周方向溝4とショルダー周方向溝5との間に形成されている。ショルダー陸部8は、ショルダー周方向溝5と接地端Teとの間に形成されている。
【0058】
センター陸部6には、センター陸部6を横断し、センター周方向溝3およびミドル周方向溝4と連通するセンター横溝19が複数本設けられ、独立したブロックが形成されている。ミドル陸部7には、ミドル陸部7を横断し、ミドル周方向溝4およびショルダー周方向溝5と連通するミドル横溝20が複数本設けられ、独立したブロックが形成されている。ショルダー陸部8には、ショルダー周方向溝5と連通するショルダー横溝21が複数本設けられている。
【0059】
図1において、センター周方向溝3は、ジグザグ状にのびている。また、センター周方向溝3は、センター長辺部3Aと、センター短辺部3Bとを交互に含んでいる。センター長辺部3Aは、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜している。センター短辺部3Bは、センター長辺部3Aとは逆向きに傾斜している。
【0060】
図1において、センター横溝19およびミドル横溝20は、直線状にのびているが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、波状や正弦波状やジグザグ状にのびるものでもよい。
【0061】
センター陸部6には、センター周方向溝3およびミドル周方向溝4と連通するセンターサイプ22が設けられている。かかるサイプは、センター陸部6のタイヤ周方向のブロック縁の接地時、幅を閉じる向きに変形するので、隣り合うサイプの壁面同士が密着して支え合い、陸部の剛性低下を抑制することができる。センターサイプ22は、ジグザグ状にのびているが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、波状や正弦波状や直線状にのびるものでもよい。
【0062】
図2は、本実施形態に係る周方向溝の一部が示された断面図である。図2において、上下方向がタイヤの半径方向であり、左右方向がタイヤの軸方向であり、紙面に垂直な方向がタイヤの周方向である。
【0063】
図示される通り、本実施形態に係るタイヤのトレッド部は、第一層11、第二層12および第三層13を備え、第一層11の外面がトレッド面を構成し、第二層12が第一層11のタイヤ半径方向内側に隣接し、第三層13が第二層12のタイヤ半径方向内側に存在している。また、本発明の目的が達成される限り、第二層12と第三層13との間、および/または第三層13とベルト層(非図示)との間に、さらに1または2以上のゴム層を有していてもよい。
【0064】
第一層11の厚みt1は、本発明の効果の観点から、5mm以上が好ましく、8mm以上がより好ましく、10mm以上がさらに好ましい。一方、t1は、20mm以下が好ましく、18mm以下がより好ましく、15mm以下がさらに好ましい。
【0065】
第二層12の厚みt2は、本発明の効果の観点から、1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましい。一方、t2は、15mm以下が好ましく、12mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。
【0066】
周方向溝の溝深さHは、本発明の効果の観点から、5mm超が好ましく、8mm超がより好ましく、10mm超がさらに好ましく、12mm超が特に好ましい。一方、Hは、26mm未満が好ましく、24mm未満がより好ましく、22mm未満がさらに好ましく、20mm未満が特に好ましい。
【0067】
本実施形態に係るタイヤは、周方向溝の溝底の最深部が、第二層12の外面よりもタイヤ半径方向内側に位置するように形成され、ブロック内部が2以上のゴム層で形成される。t1/Hは、本発明の効果の観点から、0.90以下であり、0.85以下が好ましく、0.80以下がより好ましく、0.75以下がさらに好ましく、0.70以下が特に好ましい。一方、t1/Hの下限値は特に制限されないが、0.20以上が好ましく、0.30以上がより好ましく、0.40以上がさらに好ましい。
【0068】
第二層12は、前記第二層の最外部に対してタイヤ半径方向内側に凹んだ凹部を有し、かつ、第一層11の一部が第二層12の前記凹部内に形成されていることが好ましく、凹部表面を第一層11が形成していることがより好ましい。このような構成とすることにより、トレッド部が摩耗し、第二層が露出すると、第二層が陸部やブロック部の中央部分に、第一層が陸部やブロック部のエッジ部分にそれぞれ存在することとなり、本発明の効果が発揮しやすくなると考えられる。
【0069】
図2では、周方向溝3は、周方向溝3の溝底の最深部が、周方向溝3に隣接する陸部における第二層12のタイヤ半径方向最外部よりもタイヤ半径方向内側に位置するように形成されている。具体的には、周方向溝3のタイヤ半径方向内側では、第二層12は、その最外部に対してタイヤ半径方向内側に凹んだ凹部を有し、第一層11の一部が第二層12の当該凹部内に所定の厚さで形成されている。周方向溝3は、第二層12のタイヤ半径方向最外部を越えて第二層12の凹部の内側へ入り込むように形成されている。
【0070】
周方向溝の少なくとも一つの溝壁には、トレッド部の踏面に表れる溝縁2よりも溝幅方向の外側に凹む凹部が設けることが好ましい。周方向溝の溝壁にかかる凹部を設けることで、トレッド内部に空隙を形成させ、当該空隙部で衝撃の吸収および伝播の抑制を行うことができると考えられる。図2では、周方向溝3は、両側の溝壁10に凹部9が設けられている。図2では、周方向溝3は、タイヤ表面側の端部からタイヤ半径方向内側に向けて溝幅が漸増し続けているが、このような態様に限定されない。
【0071】
図3は、本実施形態に係る他の周方向溝の一部が示された断面図である。図3では、周方向溝3は、トレッド表面14から距離Lの範囲において溝幅が一定であり、そこからタイヤ半径方向内側に向けて溝幅が漸増したのち、漸減し凹部9を形成している。
【0072】
溝壁に前記トレッド部の踏面に表れる溝縁よりも溝幅方向の外側に凹む凹部が設けられた周方向溝の、前記凹部のタイヤ半径方向外側端部からトレッド表面までの距離Lは、t1よりも大きいことが好ましい。第一層よりもタイヤ半径方向内側に凹部が存在することにより、第二層目以降に前記空隙が生じることとなり、摩耗後の排水性が向上し、摩耗後のウェットグリップ性能を向上させやすくすることができると考えられる。L/t1は、1.0超が好ましく、1.1超がより好ましく、1.2超がさらに好ましい。一方、L/t1の上限値は特に制限されないが、4.0未満が好ましく、3.0未満が好ましく、2.0未満がさらに好ましい。
【0073】
Lは、5mm超が好ましく、8mm超が好ましく、10mm超がさらに好ましい。一方、Lは、25mm未満が好ましく、21mm未満がより好ましく、16mm未満がさらに好ましい。
【0074】
周方向溝3の合計凹み量(図2および図3ではc1+c2)は、周方向溝3の溝幅W1の0.10~5.00倍が好ましく、0.20~3.00倍がより好ましく、0.30~1.00倍がさらに好ましい。なお、当該凹部を有する周方向溝が複数存在する場合には、何れかの周方向溝の合計凹み量が上記の関係を満たしていればよく、全ての凹部を有する溝が上記関係を満たしていてもよい。
【0075】
第一層を構成するゴム組成物の0℃tanδ(0℃tanδ1)は、ウェットグリップ性能の観点から、0.18以上が好ましく、0.20以上がより好ましく、0.22以上がさらに好ましく、0.24以上が特に好ましい。0℃tanδ1を前記の範囲とすることにより、制動時の変形により、陸部やブロック部の端部においてもエネルギーロスを発生させやすくすることができると考えられる。また、第二層を構成するゴム組成物の0℃tanδ(0℃tanδ2)は、0.18以上が好ましく、0.20以上がより好ましく、0.22以上がさらに好ましく、0.24以上が特に好ましい。一方、0℃tanδ1および0℃tanδ2は、低燃費性能の観点から、0.80以下が好ましく、0.60以下がより好ましく、0.50以下がさらに好ましく、0.40以下が特に好ましい。なお、ゴム組成物の0℃tanδは、後記のゴム成分、フィラー、軟化剤の種類や配合量により適宜調整することができる。
【0076】
第一層を構成するゴム組成物の0℃E*(0℃E*1)は、6.0MPa以上が好ましく、8.0MPa以上がより好ましく、10.0MPa以上がさらに好ましく、12.0MPa以上が特に好ましい。0℃E*1を前記の範囲とすることにより、摩耗後の陸部やブロック部が過度に変形することを抑制し、反力を発生させやすくすることができると考えられる。また、第二層を構成するゴム組成物の0℃E*(0℃E*2)は、8.0MPa以上が好ましく、10.0MPa以上がより好ましく、12.0MPa以上がさらに好ましく、14.0MPa以上が特に好ましい。一方、0℃E*1および0℃E*2は、路面追従性の観点から、40.0MPa以下が好ましく、30.0MPa以下がより好ましく、25.0MPa以下がさらに好ましい。なお、ゴム組成物の0℃E*は、後記のゴム成分、フィラー、軟化剤の種類や配合量により適宜調整することができる。
【0077】
第一層を構成するゴム組成物のTg(Tg1)は、ウェットグリップ性能の観点から、-60℃以上が好ましく、-57℃以上がより好ましく、-54℃以上がさらに好ましい。Tg1を-40℃以上とすることで、エネルギーロスを得やすくすることができ、摩耗後のウェットグリップ性能を向上させやすくすることができると考えられる。また、第二層を構成するゴム組成物のTg(Tg2)は、-60℃以上が好ましく、-55℃以上がより好ましく、-50℃以上がさらに好ましい。なお、Tg1およびTg2の上限値は特に制限されないが、20℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましく、0℃以下がさらに好ましく、-10℃以下が特に好ましい。なお、ゴム組成物のTgは、後記のゴム成分、フィラー、軟化剤の種類や配合量により適宜調整することができる。
【0078】
第一層を構成するゴム組成物のEB(EB1)は、耐摩耗性能の観点から、350%以上が好ましく、400%以上がより好ましく、450%以上がさらに好ましく、500%以上が特に好ましい。EB1を前記の範囲とすることで、タイヤ摩耗時の表面状態がより平滑に保たれやすくなり、実接地面積の減少が抑制され、結果としてタイヤ摩耗後のウェットグリップ性能の低下が抑制できると考えられる。また、第二層を構成するゴム組成物のEB(EB2)は、400%以上が好ましく、450%以上がより好ましく、500%以上がさらに好ましく、520%以上が特に好ましい。一方、EB1およびEB2の上限値は特に制限されない。なお、ゴム組成物のEBは、後記のゴム成分、フィラー、軟化剤の種類や配合量により適宜調整することができる。
【0079】
タイヤ外径Dtは、本発明の効果の観点から0.80m以上であり、さらに0.85m以上、0.90m以上、0.95m以上、1.00m以上とすることもできる。また、Dtは、1.50m以下が好ましく、1.30m以下がより好ましい。
【0080】
0℃tanδ1とDtとの積(0℃tanδ1×Dt)は、0.16以上が好ましく、0.17以上がより好ましく、0.18以上がさらに好ましい。Dtが大きいほど、陸部やブロック部の端部も変形によりエネルギーロスを生じやすくさせることができると考えられる。そのため、0℃tanδ1とDtとの積を大きくすることで、陸部やブロック部でもエネルギーロスを生じさせ、摩耗後のウェットグリップ性能を向上させやすくすることができると考えられる。一方、0℃tanδ1×Dtの上限値は特に制限されないが、0.80以下が好ましく、0.60以下がより好ましく、0.40以下がさらに好ましく、0.30以下が特に好ましい。
【0081】
[ゴム組成物]
本実施形態に係るタイヤは、前述したタイヤおよびトレッドの構成と、トレッド部の各層を構成するゴム組成物の前記の物性とが協働することにより、耐偏摩耗性能を改善することができる。以下、本実施形態に係るゴム組成物について説明するが、特に断りのない限り、トレッド部のいずれのゴム層にも適用可能なものとする。
【0082】
<ゴム成分>
本実施形態に係るゴム組成物は、ゴム成分としてジエン系ゴムが好適に用いられる。ジエン系ゴムとしては、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。これらのジエン系ゴムは、カーボンブラックやシリカ等のフィラーと相互作用可能な変性基で処理された変性ゴムであってもよく、不飽和結合の一部を水素添加処理した水添ゴムであってもよい。ジエン系ゴムは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、後述の軟化剤を用いてあらかじめ伸展された伸展ゴムを用いてもよい。
【0083】
ゴム成分中のジエン系ゴムの含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。また、ジエン系ゴムのみからなるゴム成分としてもよい。
【0084】
ジエン系ゴム成分としては、イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。第一層および第二層を構成するゴム成分は、イソプレン系ゴムを含むことが好ましく、イソプレン系ゴムおよびBRを含むことがより好ましく、イソプレン系ゴム、BR、SBRを含むことがさらに好ましい。第二層を構成するゴム成分は、イソプレン系ゴムを含むことが好ましく、イソプレン系ゴムおよびBRを含むことがより好ましく、イソプレン系ゴム、BR、SBRを含むことがさらに好ましい。
【0085】
(イソプレン系ゴム)
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
NRとしては、特に限定されず、タイヤ業界において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等が挙げられる。
【0087】
第一層を構成するゴム成分中のイソプレン系ゴムの含有量は、本発明の効果の観点から、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上が特に好ましい。また、該含有量の上限値は特に制限されないが、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましい。
【0088】
第二層を構成するゴム成分中のイソプレン系ゴムの含有量は、本発明の効果の観点から、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、45質量%以上がさらに好ましい。また、該含有量の上限値は特に制限されないが、99質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
【0089】
(BR)
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス含量が50質量%未満のBR(ローシスBR)、シス含量が90質量%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。これらのBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)、宇部興産(株)、JSR(株)等より市販されているものを使用することができる。ハイシスBRを含有することで耐摩耗性能を向上させることができる。ハイシスBRのシス含量は、95質量%以上が好ましく、96質量%以上より好ましく、97質量%以上さらに好ましい。なお、BRのシス含量は、前記測定方法により測定される。
【0091】
変性BRとしては、末端および/または主鎖がケイ素、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む官能基によって変性された変性ブタジエンゴム(変性BR)が好適に用いられる。
【0092】
その他の変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ-炭素結合で結合されているもの(スズ変性BR)等が挙げられる。また、変性BRは、水素添加されていないもの、水素添加されているもののいずれであってもよい。
【0093】
BRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から、30万以上が好ましく、35万以上がより好ましく、40万以上がさらに好ましい。また、架橋均一性等の観点からは、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。なお、BRのMwは、前記測定方法により測定される。
【0094】
第一層を構成するゴム成分中のBRの含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。また、該含有量の下限値は特に制限されないが、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。
【0095】
第二層を構成するゴム成分中のBRの含有量は、60質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。また、該含有量の下限値は特に制限されないが、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。
【0096】
(SBR)
SBRとしては特に限定はなく、未変性の溶液重合SBR(S-SBR)や乳化重合SBR(E-SBR)、これらの変性SBR(変性S-SBR、変性E-SBR)等が挙げられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物等でカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するもの等)等が挙げられる。なかでもS-SBRおよび変性SBRが好ましい。さらに、これらSBRの水素添加物(水素添加されたSBR)等も使用することができる。これらのSBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
本実施形態に係るSBRとして伸展SBRを用いることもでき、非伸展SBRを用いることもできる。伸展SBRを用いる場合、SBRの伸展量、すなわち、SBRに含まれる伸展軟化剤の含有量は、SBRのゴム固形分100質量部に対して、10~50質量部であることが好ましい。
【0098】
前記で列挙されたSBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記で列挙されたSBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)、ZSエラストマー(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0099】
SBRのスチレン含量は、40質量%以下が好ましく、36質量%以下がより好ましく、32質量%以下がさらに好ましく、28質量%以下が特に好ましい。また、SBRのスチレン含量は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。なお、SBRのスチレン含量は、前記測定方法により測定される。
【0100】
SBRの重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果の観点から、10万以上が好ましく、20万以上がより好ましく、30万以上がさらに好ましい。また、架橋均一性の観点から、重量平均分子量は200万以下が好ましく、180万以下がより好ましく、150万以下がさらに好ましい。なお、SBRの重量平均分子量は、前記測定方法により測定される。
【0101】
第一層を構成するゴム成分中のSBRの含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下が特に好ましい。また、該含有量の下限値は特に制限されないが、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。
【0102】
第一層を構成するゴム成分中の総スチレン量は、20質量%未満が好ましく、16質量%未満が好ましく、12質量%未満がさらに好ましく、8.0質量%未満が特に好ましい。また、第一層を構成するゴム成分中の総スチレン量の下限値は特に制限されないが、例えば、1.0質量%超が好ましく、2.0質量%超がより好ましく、3.0質量超がさらに好ましい。
【0103】
第二層を構成するゴム成分中のSBRの含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。また、該含有量の下限値は特に制限されないが、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
【0104】
第二層を構成するゴム成分中の総スチレン量は、20質量%未満が好ましく、16質量%未満が好ましく、12質量%未満がさらに好ましく、8.0質量%未満が特に好ましい。また、第一層を構成するゴム成分中の総スチレン量の下限値は特に制限されないが、1.0質量%超が好ましく、2.0質量%超がより好ましく、3.0質量超がさらに好ましい。
【0105】
(その他のゴム成分)
ゴム成分は、本発明の効果に影響を与えない範囲で、ジエン系ゴム以外の他のゴム成分を含有してもよい。ジエン系ゴム以外の他のゴム成分としては、タイヤ工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等の非ジエン系ゴムが挙げられる。これらその他のゴム成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記のゴム成分の他に、公知の熱可塑性エラストマーを含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0106】
<フィラー>
本実施形態に係るゴム組成物は、カーボンブラックおよび/またはシリカを含むフィラーが好適に使用される。第一層および第二層を構成するゴム組成物は、フィラーとしてカーボンブラックを含むことが好ましく、カーボンブラックおよびシリカを含むことがより好ましい。第三層を構成するゴム組成物は、フィラーとしてカーボンブラックを含むことが好ましい。
【0107】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては特に限定されず、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なお、一般的な鉱油を燃焼させて生成されるカーボンブラック以外に、リグニン等のバイオマス材料を用いたカーボンブラックを用いてもよい。また、タイヤやプラスチック製品等のカーボンブラックを含む製品を熱分解して得られたリサイクルカーボンブラックを用いてもよい。これらのカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
第一層をおよび第二層を構成するゴム組成物に含まれるカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、補強性の観点から、70m2/g以上が好ましく、90m2/g以上がより好ましく、110m2/g以上がさらに好ましく、130m2/g以上が特に好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、200m2/g以下が好ましく、180m2/g以下がより好ましく、160m2/g以下がさらに好ましい。第三層を構成するゴム組成物に含まれるカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、特に制限されない。なお、カーボンブラックのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0109】
ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、補強性の観点から、20質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましく、35質量部以上が特に好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点の観点からは、90質量部以下が好ましく、85質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましく、75質量部以下が特に好ましい。
【0110】
(シリカ)
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。なお、上記のシリカの他に、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたシリカを適宜用いてもよい。これらのシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0111】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、低燃費性能および耐摩耗性能の観点から、120m2/g以上が好ましく、150m2/g以上がより好ましく、170m2/g以上がさらに好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、350m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がさらに好ましい。なお、シリカのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0112】
第一層を構成するゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量S1は、特に制限されないが、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましく、20質量部以下が特に好ましい。
【0113】
第二層を構成するゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量S2は、本発明の効果の観点から、10質量部以上が好ましく、14質量部以上がより好ましく、18質量部以上がさらに好ましく、24質量部以上がさらに好ましく、30質量部以上が特に好ましい。また、該含有量は、80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましく、50質量部以下が特に好ましい。
【0114】
第三層を構成するゴム組成物のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、特に制限されない。
【0115】
S1/S2は、本発明の効果の観点から、1.0未満であり、0.90未満が好ましく、0.80未満がより好ましく、0.70未満がさらに好ましく、0.60未満が特に好ましい。一方、S1/S2の下限値は特に制限されないが、例えば、0超が好ましく、0.05超がより好ましく、0.10超がさらに好ましい。
【0116】
S2とDtとの積(S2×Dt)は、10.0超であり、12.0超が好ましく、14.0超がより好ましく、16.0超がさらに好ましく、18.0超が特に好ましい。また、タイヤ外径Dtが小さくなるにつれて、ブロックの中央部分(すなわち第二層)を構成するゴム組成物中のシリカの含有量S2を増やし、親水性を高めることで、水が付着した状態でもウェットグリップ性能を担保することができると考えられる。一方、S2×Dtの上限値は特に制限されないが、80.0未満が好ましく、60.0未満がより好ましく、50.0未満がさらに好ましく、40.0未満が特に好ましい。
【0117】
(その他のフィラー)
シリカおよびカーボンブラック以外のフィラーとしては、特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、タルク、クレー、バイオ炭(BIOCHAR)等、従来からタイヤ工業において一般的に用いられているものを配合することができる。これらその他のフィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0118】
ゴム成分100質量部に対するフィラーの合計含有量は、25質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、35質量部以上がさらに好ましく、40質量部以上が特に好ましい。また、該含有量は、140質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましく、80質量部以下が特に好ましい。
【0119】
第一層を構成するゴム組成物に含まれるフィラー中のシリカの含有率は、1質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。また、該含有率の上限は特に限定されないが、95質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましい。
【0120】
第二層を構成するゴム組成物に含まれるフィラー中のシリカの含有率は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、45質量%以上が特に好ましい。また、該含有率の上限値は特に限定されないが、95質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましい。
【0121】
(シランカップリング剤)
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、タイヤ工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができるが、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系シランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系シランカップリング剤;等が挙げられる。なかでも、スルフィド系シランカップリング剤および/またはメルカプト系シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、エボニックデグサ社、モメンティブ社等より市販されているものを使用することができる。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0122】
シランカップリング剤のシリカ100質量部に対する含有量は、シリカの分散性を高める観点から、1.0質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、5.0質量部以上がさらに好ましい。また、コストおよび加工性の観点からは、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましい。
【0123】
<その他の配合剤>
本実施形態に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、軟化剤、ワックス、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
【0124】
軟化剤としては、例えば、樹脂成分、オイル、液状ポリマー等が挙げられる。
【0125】
樹脂成分としては、タイヤ工業で慣用される石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられ、軟化剤Aとしては、テルペン系樹脂を含むことが好ましい。これらの樹脂成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0126】
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂;前記テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂;テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂;並びにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。
【0127】
石油樹脂としては、C5系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、C5C9系石油樹脂等が挙げられる。
【0128】
本明細書において「C5系石油樹脂」とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
【0129】
本明細書において「芳香族系石油樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。芳香族系石油樹脂の具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0130】
本明細書において「C5C9系石油樹脂」とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9系石油樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
【0131】
ロジン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化等で変性したロジン変性樹脂等が挙げられる。
【0132】
フェノール系樹脂としては、特に限定されないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0133】
樹脂成分の軟化点は、グリップ性能の観点から、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。また、加工性、ゴム成分とフィラーとの分散性向上という観点からは、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。なお、樹脂成分の軟化点は、前記測定方法により測定される。
【0134】
樹脂成分を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1.0質量部超が好ましく、1.5質量部超がより好ましく、2.0質量部超がさらに好ましい。また、発熱性抑制の観点からは、40質量部未満が好ましく、30質量部未満がより好ましく、20質量部未満がさらに好ましい。
【0135】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂等が挙げられる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル(ミネラルオイル)、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。プロセスオイルの具体例としては、例えば、MES(Mild Extract Solvated)、DAE(Distillate Aromatic Extract)、TDAE(Treated Distillate Aromatic Extract)、TRAE(Treated Residual Aromatic Extract)、RAE(Residual Aromatic Extract)等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルを使用することもできる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、MES、TDAE、重ナフテン系オイル等が挙げられる。また、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合機やエンジンに用いられた後の廃油や、調理店で使用された廃食用油を精製したものを用いてもよい。
【0136】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.1質量部超が好ましく、0.3質量部超がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、90質量部未満が好ましく、70質量部未満がより好ましく、50質量部未満がさらに好ましく、30質量部未満が特に好ましい。
【0137】
液状ポリマーは、常温(25℃)で液体状態のポリマーであれば特に限定されないが、例えば、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレンゴム重合体(液状IR)、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状スチレンイソプレンゴム共重合体(液状SIR)、ミルセンやファルネセンを含む重合体等が挙げられる。これらの液状ポリマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0138】
液状ポリマーを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部超が好ましく、3質量部超がより好ましく、5質量部超がさらに好ましい。また、液状ポリマーの含有量は、50質量部未満が好ましく、40質量部未満がより好ましく、30質量部未満がさらに好ましい。
【0139】
ゴム成分100質量部に対する軟化剤の含有量(複数の軟化剤を併用する場合は全ての合計量)は、特に制限されないが、1質量部超が好ましく、3質量部超がより好ましく、5質量部超がさらに好ましい。また、該含有量は、90質量部未満が好ましく、70質量部未満がより好ましく、50質量部未満がさらに好ましく、30質量部未満が特に好ましい。
【0140】
ワックスとしては、特に限定されず、タイヤ工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、石油系ワックス、鉱物系ワックス、合成ワックス等が挙げられ、石油系ワックスが好ましい。石油系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、これらの精選特殊ワックス等が挙げられ、パラフィンワックスが好ましい。なお、本実施形態に係るワックスは、ステアリン酸を含まないものとする。ワックスは、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、パラメルト社等より市販されているものを使用することができる。これらのワックスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0141】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部超が好ましく、0.8質量部超がより好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化防止の観点からは、10質量部未満が好ましく、5.0質量部未満がより好ましい。
【0142】
老化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤が挙げられ、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系老化防止剤、および、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のキノリン系老化防止剤が好ましい。これらの老化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0143】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐オゾンクラック性の観点から、0.5質量部超が好ましく、0.8質量部超がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部未満が好ましく、5.0質量部未満がより好ましい。
【0144】
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部未満が好ましく、5.0質量部未満がより好ましい。
【0145】
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部未満が好ましく、5.0質量部未満がより好ましい。
【0146】
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
【0147】
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保する観点から、0.1質量部超が好ましく、0.5質量部超がより好ましく、1.0質量部超がさらに好ましい。また、劣化防止の観点からは、5.0質量部未満が好ましく、4.0質量部未満がより好ましく、3.5質量部未満がさらに好ましい。なお、加硫剤として、オイル含有硫黄を使用する場合の加硫剤の含有量は、オイル含有硫黄に含まれる純硫黄分の合計含有量とする。
【0148】
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン等が挙げられる。これらの硫黄以外の加硫剤は、田岡化学工業(株)、ランクセス(株)、フレクシス社等より市販されているものを使用することができる。
【0149】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、カプロラクタムジスルフィド等が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、所望の効果がより好適に得られる点から、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、およびグアニジン系加硫促進剤からなる群より選ばれる1以上の加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤がより好ましい。
【0150】
第一層を構成するゴム組成物に配合される加硫促進剤は、スルフェンアミド系加硫促進剤を含む加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤と、チウラム系加硫促進剤および/またはグアニジン系加硫促進剤とを含む加硫促進剤がより好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤とチウラム系加硫促進剤とを含む加硫促進剤がさらに好ましい。
【0151】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、TBBSおよびCBSが好ましい。
【0152】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)またはその塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。なかでも、MBTSおよびMBTが好ましく、MBTSがより好ましい。
【0153】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、DPGが好ましい。
【0154】
チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等が挙げられる。なかでも、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)が好ましい。
【0155】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、8.0質量部未満が好ましく、6.0質量部未満がより好ましく、4.0質量部未満がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
【0156】
[ゴム組成物およびタイヤの製造]
本実施形態に係るゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
【0157】
混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。
【0158】
混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、70~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0159】
第一層11、第二層12、および第三層13を含むトレッドを備えたタイヤは、前記のゴム組成物を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、ゴム成分に対して上記各成分を必要に応じて配合した未加硫のゴム組成物を、所定の形状の口金を備えた押し出し機で第一層11、第二層12、および第三層13の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0160】
[タイヤの用途]
本実施形態に係るタイヤは、重荷重用タイヤとして好適に使用することができる。なお、重荷重用タイヤとは、四輪で走行する自動車に装着されることを前提としたタイヤであり、その最大負荷能力が1000kg以上のものを指す。重荷重用タイヤの最大負荷能力は、1200kg以上が好ましく、1400kg以上がより好ましい。
【0161】
本実施形態にかかるタイヤを重荷重用タイヤとして用いる場合には、カーカス層を形成する補強材として、スチールコードを用いることが好ましい。
【実施例0162】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。以下に示す各種薬品を用いて、表1の配合に従って得られるトレッド部の第一層、第二層、および第三層を有するタイヤを検討して下記評価方法に基づいて算出した結果を表2および表3に示す。
【0163】
以下、実施例および比較例において用いる各種薬品をまとめて示す。
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のUBEPOL BR(登録商標)150B(未変性BR、シス含量:97質量%、Mw:44万)
SBR:JSR(株)製のSBR1502(未変性E-SBR、スチレン含量:23.5質量%、Mw:44万、非油展)
カーボンブラック1:キャボットジャパン(株)製のVULCAN10H(N134、N2SA:144m2/g)
カーボンブラック2:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN330(N2SA:75m2/g)
シリカ:エボニックデグサ社製のULTRASIL(登録商標)VN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤:エボニックデグサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスNH-70S(芳香族系プロセスオイル)
樹脂成分:クレイトン社製のSylvatraxx(登録商標)4401(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355(パラフィンワックス)
老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製のノクラックRD(ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン))
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2種
硫黄:細井化学工業(株)製のHK-200-5(5%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS))
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン(DPG))
【0164】
(実施例および比較例)
表1に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度150~160℃になるまで1~10分間混練りし、混練物を得る。次に、2軸オープンロールを用いて、該混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得る。該未加硫ゴム組成物を用いて、トレッドの第一層、第二層(厚さ:12mm)、および第三層(厚さ:6mm)の形状に合わせて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、150℃で加硫して、表2および表3に記載の各試験用タイヤを得る。なお、周方向溝の溝幅は5mm、周方向溝の合計凹み量は2mmとする。
【0165】
<0℃tanδおよび0℃E*の測定>
各試験用タイヤのトレッド部の各ゴム層内部から、タイヤ周方向が長辺、タイヤ半径方向が厚さ方向となるように、長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmで切り出して作製される各加硫ゴム試験片について、動的粘弾性測定装置(GABO社製のイプレクサーシリーズ)を用い、温度0℃、周波数10Hz、初期歪10%、動歪±2.5%、伸長モードの条件下で損失正接tanδおよび複素弾性率E*を測定する。
【0166】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
各試験用タイヤのトレッド部の各ゴム層内部から、タイヤ周方向が長辺、タイヤ半径方向が厚さ方向となるように、長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmで切り出して作製される各加硫ゴム試験片について、動的粘弾性測定装置(GABO社製のイプレクサーシリーズ)を用い、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%および昇温速度2℃/minの条件下で、-60℃から40℃の範囲におけるtanδの温度分布曲線を測定し、得られた温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度(tanδピーク温度)を、ゴム組成物のTgとして決定する。
【0167】
<引張試験>
各試験用タイヤのトレッド部の各ゴム層内部から、タイヤ周方向が引張方向、タイヤ半径方向が厚さ方向となるように厚さ1mmで切り出されるダンベル状7号形の試験片について、JIS K 6251:2017に準じて、23℃雰囲気下にて、引張速度3.3mm/秒の条件で引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)を測定する。
【0168】
<摩耗後のウェットグリップ性能>
各試験用タイヤのトレッドの厚さが新品時の50%となるように、トレッドラジアスに沿ってトレッド部を摩耗させ、これらのタイヤを車両(2-Dトラック)の全輪に装着して湿潤アスファルト路面において、速度80km/hでブレーキをかけた地点からの制動距離を測定した。対照タイヤ(表2では比較例2、表3では比較例7)の制動距離を100として換算し、各試験用タイヤの制動距離の逆数を下記式により指数で表示した。指数が高いほど、摩耗後のウェットグリップ性能が維持されていることを示す。
(摩耗後のウェットグリップ性能指数)=(対照タイヤの摩耗後の制動距離)/(各試験用タイヤの摩耗後の制動距離)
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
【表3】
【0172】
<実施形態>
本発明の実施形態の例を以下に示す。
【0173】
〔1〕トレッド部を有する重荷重用タイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝を有し、前記トレッド部は、トレッド面を構成する第一層と、前記第一層の半径方向内側に隣接する第二層と、前記第二層の半径方向内側に存在する第三層とを少なくとも備え、前記第一層、前記第二層、および前記第三層がそれぞれゴム成分およびフィラーを含有するゴム組成物により構成され、タイヤ外径をDt(m)、前記第一層の厚みをt1(mm)、前記周方向溝の最深部の溝深さをH(mm)、前記第一層を構成するゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量をS1(質量部)、前記第二層を構成するゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量をS2(質量部)としたとき、Dtが0.80以上であり、t1/Hが0.90以下であり、S1/S2が1.0未満であり、S2とDtとの積(S2×Dt)が10.0超である重荷重用タイヤ。
〔2〕前記第二層を構成するゴム組成物に含まれるフィラー中のシリカの含有率が30質量%以上である、上記〔1〕記載の重荷重用タイヤ。
〔3〕S2が30以上である、上記〔1〕または〔2〕記載の重荷重用タイヤ。
〔4〕前記第二層を構成するゴム組成物に含まれるゴム成分が、スチレンブタジエンゴムを10質量%以上含有する、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
〔5〕前記第二層を構成するゴム組成物に含まれるゴム成分が、スチレンブタジエンゴムを30質量%以上含有する、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
〔6〕前記第二層を構成するゴム組成物に含まれるゴム成分が、イソプレン系ゴムを60質量%以上含有する、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
〔7〕前記第一層を構成するゴム組成物がシリカを含有する、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
〔8〕前記第一層を構成するゴム組成物に含まれるフィラー中のシリカの含有率が10質量%以上である、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
〔9〕前記第一層を構成するゴム組成物に含まれるゴム成分が、スチレンブタジエンゴムを10質量%以上含有する、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
〔10〕Dtが1.00以上である、上記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
〔11〕前記第一層を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδ1)が0.24以上である、上記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔12〕前記第一層を構成するゴム組成物の0℃における複素弾性率(0℃E*)が10.0MPa以上である、上記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔13〕前記第一層を構成するゴム組成物のガラス転移温度が-60℃以上である、上記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔14〕前記第一層を構成するゴム組成物の破断時伸びが500%以上である、上記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔15〕前記第一層を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδを0℃tanδ1としたとき、
0℃tanδ1とDtとの積(0℃tanδ1×Dt)が0.18以上である、上記〔1〕~〔14〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔16〕前記周方向溝の少なくとも一つの溝壁に、前記トレッド部の踏面に表れる溝縁よりも溝幅方向の外側に凹む凹部が設けられた、上記〔1〕~〔15〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔17〕溝壁に前記トレッド部の踏面に表れる溝縁よりも溝幅方向の外側に凹む凹部が設けられた周方向溝の、前記凹部のタイヤ半径方向外側端部からトレッド表面までの距離をLとしたとき、L/t1が1.0超である、上記〔16〕記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0174】
1 トレッド部
2 溝縁
3 センター周方向溝
4 ミドル周方向溝
5 ショルダー周方向溝
6 センター陸部
7 ミドル陸部
8 ショルダー陸部
9 凹部
10 溝壁
11 第一層
12 第二層
13 第三層
14 トレッド表面
19 センター横溝
20 ミドル横溝
21 ショルダー横溝
22 センターサイプ
Te 接地端
図1
図2
図3