(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089483
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】演算装置、演算方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20240626BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204878
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】内田 宗恒
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 啓介
(72)【発明者】
【氏名】北川 朋亮
(72)【発明者】
【氏名】田房 正宏
(72)【発明者】
【氏名】村田 良介
(72)【発明者】
【氏名】難波 元彦
(72)【発明者】
【氏名】行形 秀和
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA07
5L049AA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】適切な工程設計を補助可能な演算装置、演算方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】演算装置は、少なくとも一部が依存関係にある複数の工程を含む作業のモデルである作業モデルを取得する作業モデル取得部と、作業モデルに基づき、作業モデルに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第1作業指標値を算出する第1作業指標値算出部と、作業モデルに基づき、複数の依存関係のうちの一部の依存関係を解除した状態で、作業モデルに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第2作業指標値を算出する第2作業指標値算出部と、第1作業指標値と第2作業指標値とに基づき、解除された依存関係が作業負荷に与える寄与度を算出する寄与度算出部と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が依存関係にある複数の工程を含む作業のモデルである作業モデルを取得する作業モデル取得部と、
前記作業モデルに基づき、前記作業モデルに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第1作業指標値を算出する第1作業指標値算出部と、
前記作業モデルに基づき、複数の前記依存関係のうちの一部の依存関係を解除した状態で、前記作業モデルに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第2作業指標値を算出する第2作業指標値算出部と、
前記第1作業指標値と前記第2作業指標値とに基づき、解除された前記依存関係が作業負荷に与える寄与度を算出する寄与度算出部と、
を含む、
演算装置。
【請求項2】
前記第2作業指標値算出部は、依存関係が解除された一対の前記工程同士が、並列関係となるように、前記作業モデルを補正して、前記第2作業指標値を算出する、請求項1に記載の演算装置。
【請求項3】
前記作業モデル取得部は、工程のやり直しを行う必要が生じる変更事象が発生する確率分布が設定された、前記作業モデルを取得し、
前記第1作業指標値算出部は、前記確率分布に基づいて前記変更事象が発生するかを決定し、その決定内容に基づいて、前記第1作業指標値を算出し、
前記第2作業指標値算出部は、前記確率分布に基づいて前記変更事象が発生するかを決定し、その決定内容に基づいて、前記第2作業指標値を算出する、請求項1又は請求項2に記載の演算装置。
【請求項4】
前記第2作業指標値算出部は、前記変更事象が発生する工程である原因工程と、前記変更事象が発生した場合にやり直しが必要となる影響工程との依存関係のうちの、一部を解除した状態で、前記第2作業指標値を算出する、請求項3に記載の演算装置。
【請求項5】
前記作業モデルにおける各工程が第1方向及び第2方向に並ぶ工程表を生成する工程表生成部を更に含み、
前記工程表生成部は、前記依存関係毎の前記寄与度が表示されるように、前記工程表を生成する、請求項1又は請求項2に記載の演算装置。
【請求項6】
前記工程表生成部は、前記第1方向に並ぶ前記工程のそれぞれについて、その工程に後続して依存関係にある工程の数が表示され、前記第2方向に並ぶ前記工程のそれぞれについて、その工程に先行して依存関係にある工程の数が表示されるように、前記工程表を生成する、請求項5に記載の演算装置。
【請求項7】
前記寄与度に基づいて、前記作業における前記工程の実施順を設定し直す工程設定部を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の演算装置。
【請求項8】
前記作業負荷とは、前記作業の実行に要するリードタイムと、前記作業の実行に要するコストとの、少なくとも1つである、請求項1又は請求項2に記載の演算装置。
【請求項9】
少なくとも一部が依存関係にある複数の工程を含む作業のモデルである作業モデルを取得するステップと、
前記作業モデルに基づき、前記作業モデルに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第1作業指標値を算出するステップと、
前記作業モデルに基づき、複数の前記依存関係のうちの一部の依存関係を解除した状態で、前記作業モデルに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第2作業指標値を算出するステップと、
前記第1作業指標値と前記第2作業指標値とに基づき、解除された前記依存関係が作業負荷に与える寄与度を算出するステップと、
を含む、
演算方法。
【請求項10】
少なくとも一部が依存関係にある複数の工程を含む作業のモデルである作業モデルを取得するステップと、
前記作業モデルに基づき、前記作業モデルに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第1作業指標値を算出するステップと、
前記作業モデルに基づき、複数の前記依存関係のうちの一部の依存関係を解除した状態で、前記作業モデルに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第2作業指標値を算出するステップと、
前記第1作業指標値と前記第2作業指標値とに基づき、解除された前記依存関係が作業負荷に与える寄与度を算出するステップと、
をコンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、演算装置、演算方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の工程からなる作業について、各工程の実施順などを決める工程設計を実施する場合がある。例えば特許文献1には、複数部品から構成される構造物の建設計画において、各部品を、設計変更等により他の部品に直接影響する要素と影響しない要素に分割して、それらの要素をリンクとして接続することで、仮想要素ネットワークを生成する旨が記載されている。特許文献1によると、仮想要素ネットワークにより、変更がなされた場合のインパクトを算出して、担当者に通知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、変更がなされた場合のインパクトを算出できるが、適切に工程設計を行うには、注視すべき仕様情報の選択、設計工程の代替案検討等、改善の余地がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、適切な工程設計を補助可能な演算装置、演算方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る演算装置は、少なくとも一部が依存関係にある複数の工程を含む作業のモデルである作業モデルを取得する作業モデル取得部と、前記作業モデルに基づき、前記作業モデルに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第1作業指標値を算出する第1作業指標値算出部と、前記作業モデルに基づき、複数の前記依存関係のうちの一部の依存関係を解除した状態で、前記作業モデルに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第2作業指標値を算出する第2作業指標値算出部と、前記第1作業指標値と前記第2作業指標値とに基づき、解除された前記依存関係が作業負荷に与える寄与度を算出する寄与度算出部と、を含む。
【0007】
本開示に係る演算方法は、少なくとも一部が依存関係にある複数の工程を含む作業のモデルである作業モデルを取得するステップと、前記作業モデルに基づき、前記作業モデルに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第1作業指標値を算出するステップと、前記作業モデルに基づき、複数の前記依存関係のうちの一部の依存関係を解除した状態で、前記作業モデルに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第2作業指標値を算出するステップと、前記第1作業指標値と前記第2作業指標値とに基づき、解除された前記依存関係が作業負荷に与える寄与度を算出するステップと、を含む。
【0008】
本開示に係るプログラムは、少なくとも一部が依存関係にある複数の工程を含む作業のモデルである作業モデルを取得するステップと、前記作業モデルに基づき、前記作業モデルに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第1作業指標値を算出するステップと、前記作業モデルに基づき、複数の前記依存関係のうちの一部の依存関係を解除した状態で、前記作業モデルに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第2作業指標値を算出するステップと、前記第1作業指標値と前記第2作業指標値とに基づき、解除された前記依存関係が作業負荷に与える寄与度を算出するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、適切な工程設計を補助できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る演算装置の模式的なブロック図である。
【
図2】
図2は、作業モデルの一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、補正モデルの一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、補正モデルの一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、演算装置の処理フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0012】
(作業)
本実施形態に係る演算装置10は、工程設計の対象となる作業モデルに基づいて、作業における工程同士の依存関係が作業負荷に与える寄与度を算出する装置である。本実施形態における作業とは、複数の工程を含み、それらの各工程が実行されることで所定の目的が達成されるものを指す。さらに言えば、本実施形態における作業においては、少なくとも一部の工程同士が依存関係にある。依存関係とは、一方の工程が他方の工程の実行状況に依存している関係を指す。本実施形態では、依存関係として、一方の工程(先行工程)が終了しなければ他方の工程(後続工程)が開始できない関係(先行工程の終了後に後続工程を開始する関係)を含む。また、作業においては、依存関係にない工程同士が、同じ時間帯に並列して実行可能である並列関係にある。ここでの作業や工程の内容は任意のものであってよいが、例えば、作業が、製品の製造であり、工程が、製品を製造するためのそれぞれの加工工程であってもよい。
【0013】
また、本実施形態においては、作業に含まれる工程の少なくとも一部に変更事象が発生することがある。変更事象とは、工程のやり直しを行う必要が生じる事象を指す。ある工程に変更事象が生じた際には、その工程よりも前に実行した工程もやり直しする必要がある場合もある。そのため、変更事象が生じた工程である原因工程と、原因工程よりも前に実行された工程であって、変更事象が発生した場合にやり直しが必要となる影響工程とにも、依存関係があるといえる。すなわちこの場合、原因工程に変更事象が生じた後に、影響工程をやり直すという依存関係が成立している。なお、変更事象は、工程のやり直しが生じる任意の事象であってよいが、例えば、設計変更などを指してよい。
【0014】
(演算装置)
図1は、本実施形態に係る演算装置の模式的なブロック図である。本実施形態に係る演算装置10は、例えばコンピュータであり、
図1に示すように、入力部20と出力部22と通信部24と記憶部26と制御部28とを有する。入力部20は、ユーザの操作を受け付ける装置であり、例えばマウス、キーボード、タッチパネルなどであってよい。出力部22は、情報を出力する装置であり、例えば画像を表示するディスプレイなどであってよい。通信部24は、外部の装置などと通信するモジュールであり、例えばアンテナなどを含んでよい。通信部24による通信方式は、本実施形態では無線通信であるが、通信方式は任意であってよい。なお、演算装置10は、入力部20、出力部22及び通信部24を有さなくてもよい。また、演算装置10は、単体の装置で構成してもよいし、他の装置と一体に構成してもよいし、演算装置及びデータサーバ等の各種装置を組み合わせたシステムとして構成してもよく、特に限定されない。
【0015】
記憶部26は、制御部28の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部26が保存する制御部28用のプログラムは、演算装置10が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。
【0016】
制御部28は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。制御部28は、作業モデル取得部30と、第1作業指標値算出部32と、第2作業指標値算出部34と、寄与度算出部36と、工程表生成部38と、工程設定部40と、出力制御部42とを含む。制御部28は、記憶部26からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、作業モデル取得部30と第1作業指標値算出部32と第2作業指標値算出部34と寄与度算出部36と工程表生成部38と工程設定部40と出力制御部42とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部28は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、作業モデル取得部30と第1作業指標値算出部32と第2作業指標値算出部34と寄与度算出部36と工程表生成部38と工程設定部40と出力制御部42との少なくとも一部を、ハードウェアで実現してもよい。
【0017】
以下、演算装置10の処理内容について説明する。
【0018】
(作業モデルの取得)
図2は、作業モデルの一例を示す模式図である。演算装置10は、作業モデル取得部30により、作業モデルMを取得する。作業モデルMとは、少なくとも一部が依存関係にある複数の工程を含む作業のモデル(アルゴリズム)を指す。より詳しくは、作業モデルMは、対象となる作業に含まれる各工程Pが、依存関係や並列関係を持ちつつ、時系列で並列又は直列に並ぶように構築されたモデルといえる。
図2では、工程PA~PFを含む作業モデルMが例示されている。
図2の例では、工程PAと工程PB、工程PBと工程PC、工程PCと工程PDとは、互いに依存関係にある。従って、作業モデルMは、工程PBが工程PAの後に実行され、工程PCが工程PBの後に実行され、工程PDが工程PCの後に実行されるように、生成されている。また、工程PEと工程PFとも互いに依存関係にあり、作業モデルMは、工程PFが工程PEの後に実行されるように、生成されている。また、工程PA~PDと工程PE~PFとは、依存関係になく、並列関係にあるといえる。そのため、
図2の作業モデルMでは、工程PA~PDが実行され、かつ、工程PE~PFが実行されることで、作業が完了するものとなっている。なお、
図2は一例であり、工程Pの数や配列は、任意であってよい。また、作業モデルMは、少なくとも一部が依存関係にある複数の工程を含む任意のモデルであってよいが、例えば、DSM(Design Structure Matrix)であってよい。
【0019】
作業モデル取得部30は、任意の方法で作業モデルMを取得してもよい。例えば、ユーザによって作成された作業モデルMを取得してもよいし、他の装置により生成された作業モデルMを取得してもよいし、演算装置10が自動で作業モデルMを生成してもよい。
【0020】
また、作業モデルMにおいては、各工程Pについて、その工程Pの実行に要する作業負荷の度合いを示す工程指標値が設定されている。工程指標値は、任意に設定されてよく、例えば工程Pの内容に応じて自動で設定されてもよいし、ユーザにより設定されてもよい。また、工程指標値は、工程Pの実行に要する作業負荷の度合いを示す任意のパラメータであってよいが、本実施形態では、工程Pの実行に要するリードタイムを指す。また、工程指標値は、リードタイムに加えて、その工程Pの実行に要するコストも指してよいし、リードタイムを含まずにコストのみを含んでもよい。すなわち、工程指標値は、工程Pの実行に要するリードタイムと、工程Pの実行に要するコストとの、少なくとも1つであってよい。
【0021】
また、作業モデルMにおいては、少なくとも一部の工程Pについて、変更事象CPが設定されていることが好ましい。変更事象CPの内容は、予め設定されており、変更事象CPのそれぞれについて、その変更事象CPが発生する原因工程と、その変更事象CPが発生した場合にやり直しされる影響工程とが、設定されている。さらに言えば、それぞれの変更事象CPは、その変更事象CPが発生する確率を示す確率分布も設定されている。すなわち、作業モデルMは、変更事象CPが設定された工程Pを実行する際には、その工程Pに設定された変更事象CPが、確率分布に従って発生するように(又は発生しないように)、設定されているといえる。変更事象CPの内容(原因工程と影響工程)や、確率分布は、任意に設定されてよい。
図2の例では、工程PDに変更事象CPDが設定され、工程PFに変更事象CPFが設定されている。変更事象CPDは、工程PDが原因工程であり、工程PAが影響工程となるように設定されている。また、工程PA~PDはこの順で依存関係にある。従って、変更事象CPDが発生した際には、工程PA、PB、PC、PDの順で工程がやり直される。また、変更事象CPFは、工程PFが原因工程であり、工程PEが影響工程となるように設定されている。従って、変更事象CPFが発生した際には、工程PE、PFの順で工程がやり直される。なお、
図2は一例であり、変更事象CPの数や内容は任意であってよい。例えば、1つの工程Pに複数種類の変更事象CPが設定されていてもよい。
【0022】
(第1作業指標値の算出)
第1作業指標値算出部32は、作業モデルMに基づき、作業モデルMに示す作業を実行した際の作業負荷の度合いを示す第1作業指標値を算出する。第1作業指標値は、作業モデルMにおける各工程Pの工程指標値の合計値に対応する値である。すなわち本実施形態では、第1作業指標値は、作業モデルMに示す作業の実行に要するリードタイムを指す。また、第1作業指標値は、作業モデルMに示す作業の実行に要するリードタイムに加えて、その作業の実行に要するコストも指してよいし、リードタイムを含まずにコストのみを含んでもよい。すなわち、第1作業指標値は、作業モデルMに示す作業の実行に要するリードタイムと、作業モデルMに示す作業の実行に要するコストとの、少なくとも1つであってよいといえる。
【0023】
上述のように、作業モデルMは、各工程Pが依存関係や並列関係を持つように時系列で並び、各工程Pの工程指標値が設定されている。従って、第1作業指標値算出部32は、作業モデルMを用いて、各工程Pの工程指標値に基づいて、第1作業指標値を算出できる。具体的には、第1作業指標値算出部32は、依存関係にある先行工程の後に後続工程が実行され、かつ、並列関係にある工程同士が同じ時間帯に実行可能であることを条件として、工程指標値の合計値が最小となるように、第1作業指標値を算出する。
図2の例では、工程PA、PB、PC、PDがこの時系列順に実行され、工程PE、PFがこの時系列順に実行され、かつ、工程PA~PDと工程PE~PFとが重複する時間帯で実行されると仮定した場合に、工程PA~PFを全て実行した際の作業負荷(リードタイム)が、第1作業指標値として算出される。
【0024】
さらに言えば、本実施形態においては、作業モデルMには、変更事象CPとその確率分布とが設定されている。そのため、第1作業指標値算出部32は、それぞれの変更事象CPについて、変更事象CPの確率分布に基づいて、変更事象CPが発生するかを決定し、変更事象CPが発生するかの決定内容に基づいて、第1作業指標値を算出することが好ましい。すなわち、第1作業指標値算出部32は、変更事象CPが発生すると決定した場合には、その変更事象CPの原因工程に対応付けられた影響工程をやり直すことも条件として、工程指標値の合計値が最小となるように、第1作業指標値を算出する。一方、第1作業指標値算出部32は、変更事象CPが発生しないと決定した場合には、その変更事象CPの原因工程に対応付けられた影響工程をやり直さないことも条件として、工程指標値の合計値が最小となるように、第1作業指標値を算出する。例えば
図2において、工程PDの変更事象CPDが発生し、かつ、工程PFの変更事象CPFが発生しないと判断された場合には、工程PA、PB、PCがこの時系列順に実行され、その後の工程PDの実行後又は実行前に工程PA、PB、PCがこの時系列順でやり直され、その後に工程PDが実行され、工程PE、PFがこの時系列順に実行され、かつ、工程PA~PDと工程PE~PFとが重複する時間帯で実行されると仮定した場合に、全ての工程を実行した際の作業負荷(リードタイム)が、第1作業指標値として算出される。
【0025】
第1作業指標値算出部32は、変更事象CPの確率分布に基づいた任意の方法で、変更事象CPが発生するかを判断して、第1作業指標値を算出してもよい。例えば、第1作業指標値算出部32は、確率分布に基づき、モンテカルロ法を用いて、変更事象CPが発生するかを決定しつつ第1作業指標値を算出する処理を、複数回実行してもよい。
【0026】
(第2作業指標値の算出)
第2作業指標値算出部34は、作業モデルMに基づき、作業モデルM中の複数の依存関係のうちの一部の依存関係を解除した状態で、作業モデルMに示す作業を実行した際の作業負荷の度合いを示す第2作業指標値を算出する。第2作業指標値は、一部の依存関係を解除した作業モデルMにおける各工程Pの工程指標値の合計値に対応する値である。すなわち本実施形態では、第2作業指標値は、一部の依存関係を解除した作業モデルMに示す作業の実行に要するリードタイムを指す。また、第2作業指標値は、一部の依存関係を解除した作業モデルMに示す作業の実行に要するリードタイムに加えて、その作業の実行に要するコストも指してよいし、リードタイムを含まずにコストのみを含んでもよい。すなわち、第1作業指標値は、一部の依存関係を解除した作業モデルMに示す作業の実行に要するリードタイムと、一部の依存関係を解除した作業モデルMに示す作業の実行に要するコストとの、少なくとも1つであってよいといえる。
【0027】
上述のように、作業モデルMは、少なくとも一部の工程P同士に、依存関係が設定されている。第2作業指標値算出部34は、作業モデルMに含まれる依存関係のうちから、解除する依存関係を選択する。解除する依存関係の選択方法は任意であってよく、例えば、これまで解除していない依存関係を抽出して、解除する依存関係として選択してよい。また、解除する依存関係の数は、本実施形態では1つであるが、それに限られず、複数の依存関係を解除するものとして選択してもよい。
【0028】
そして、第2作業指標値算出部34は、選択した依存関係を解除するように(選択した依存関係にある工程P同士が依存関係を有さなくなるように)、作業モデルMを補正する。以下、選択した依存関係を解除した作業モデルMを、補正モデルMAと記載する。
図3は、補正モデルの一例を示す模式図である。第2作業指標値算出部34は、解除された依存関係にある一対の工程P同士が並列関係となるように、作業モデルMを補正して、補正モデルMAを生成する。
図3は、
図2に示す作業モデルMにおける工程PBと工程PCとの依存関係を解除して、補正モデルMAが生成された場合の例である。
図3に示すように、補正モデルMAにおいては、工程PBと工程PCとの依存関係が解除され、工程PBと工程PCとが並列関係となっている。より詳しくは、補正モデルMAにおいては、工程PA、工程PB、工程PDに依存関係があり、工程PA、工程PB、PDに依存関係がある。言い換えれば、先行工程である工程PAから、後続工程である工程PB、PCに分岐して依存関係があり、工程PB、PCから工程PDに合流して依存関係がある。
【0029】
第2作業指標値算出部34は、生成した補正モデルMAに基づいて、第2作業指標値を算出する。すなわち、第2作業指標値算出部34は、補正モデルMAにおいて依存関係にある先行工程の後に後続工程が実行され、かつ、並列関係にある工程同士が同じ時間帯に実行可能であることを条件として、工程指標値の合計値が最小となるように、第2作業指標値を算出する。
図3の例では、工程PAの後に、工程PB、PCが重複する時間帯で実行され、工程PB、PCの後に工程PDが実行され、工程PE、PFがこの時系列順に実行され、かつ、工程PA~PDと工程PE~PFとが重複する時間帯で実行されると仮定した場合に、工程PA~PFを全て実行した際の作業負荷(リードタイム)が、第2作業指標値として算出される。
【0030】
さらに言えば、本実施形態においては、補正モデルMAには、変更事象CPとその確率分布とが設定されている。そのため、第2作業指標値算出部34は、それぞれの変更事象CPについて、変更事象CPの確率分布に基づいて、変更事象CPが発生するかを決定し、変更事象CPが発生するかの決定内容に基づいて、第2作業指標値を算出することが好ましい。すなわち、第2作業指標値算出部34は、変更事象CPが発生すると決定した場合には、その変更事象CPの原因工程に対応付けられた影響工程をやり直すことも条件として、工程指標値の合計値が最小となるように、第2作業指標値を算出する。一方、第2作業指標値算出部34は、変更事象CPが発生しないと決定した場合には、その変更事象CPの原因工程に対応付けられた影響工程をやり直さないことも条件として、工程指標値の合計値が最小となるように、第2作業指標値を算出する。例えば
図3において、工程PFの変更事象CPFが発生し、かつ、工程PDの変更事象CPDが発生しないと判断された場合には、工程PAの後に、工程PB、PCが重複する時間帯で実行され、工程PB、PCの後に工程PDが実行され、工程PEが実行され、その後の工程PFの実行後又は実行前に工程PE、PFがこの時系列順でやり直され、かつ、工程PA~PDと工程PE~PFとが重複する時間帯で実行されると仮定した場合に、全ての工程を実行した際の作業負荷(リードタイム)が、第2作業指標値として算出される。
【0031】
第2作業指標値算出部34は、変更事象CPの確率分布に基づいた任意の方法で、変更事象CPが発生するかを判断してよい。例えば、第2作業指標値算出部34は、確率分布に基づき、モンテカルロ法を用いて、変更事象CPが発生するかを決定しつつ第2作業指標値を算出する処理を、複数回実行してもよい。
【0032】
図4は、補正モデルの一例を示す模式図である。以上の説明では、第2作業指標値算出部34は、変更事象CPによるやり直しに関連しない工程P同士(変更事象CPの原因工程と影響工程とに該当しない工程P同士)の依存関係を、解除する依存関係として選択して、補正モデルMAを生成していた。ただしそれに限られず、第2作業指標値算出部34は、変更事象CPの原因工程と影響工程との依存関係を、解除する依存関係として選択して、補正モデルMAを生成してもよい。言い換えれば、第2作業指標値算出部34は、変更事象CPによるやり直しに関連しない工程P同士の依存関係と、変更事象CPの原因工程と影響工程との依存関係との少なくとも一方を、解除する依存関係として選択して、補正モデルMAを生成してもよい。変更事象CPの原因工程と影響工程との依存関係を解除する場合、第2作業指標値算出部34は、その変更事象CPが生じた場合に、影響工程をやり直さないように、変更事象の内容を変更する。例えば
図4では、変更事象CPDにおいて、原因工程である工程PDと、影響工程である工程PAとの依存関係が解除される。この場合、第2作業指標値算出部34は、変更事象CPDが発生すると決定した場合には、工程PAをやり直さず、工程PDのみをやり直すことを条件として、第2作業指標値を算出してよい。また例えば、第2作業指標値算出部34は、変更事象CPDが発生すると決定した場合には、変更事象CPDが生じないことを条件として、すなわち工程PDもやり直さないことを条件として、第2作業指標値を算出してよい。
【0033】
第2作業指標値算出部34は、以上のように、依存関係の一部を解除した状態での第2作業指標値を算出する。第2作業指標値算出部34は、解除する依存関係を異ならせて同様の処理を繰り返して、解除された依存関係毎の(解除された依存関係が異なる補正モデルMA毎の)、第2作業指標値を算出する。
【0034】
(寄与度の算出)
寄与度算出部36は、第1作業指標値及び第2作業指標値に基づいて、解除された依存関係の寄与度Cを算出する。寄与度Cとは、解除された依存関係が、作業モデルMに示す作業の作業負荷に与える影響度合いを示す指標である。すなわち、第1作業指標値が依存関係を解除しない状態における作業負荷を示し、第2作業指標値が依存関係を解除した状態における作業負荷を示すため、第1作業指標値と第2作業指標値とを比較することで、解除された依存関係の、作業負荷に与える影響度合い(寄与度C)を、算出できる。
【0035】
第1作業指標値及び第2作業指標値に基づいた寄与度Cの算出方法は任意であるが、寄与度算出部36は、第1作業指標値と第2作業指標値との差分に基づいた値を、寄与度Cとして算出することが好ましい。寄与度算出部36は、解除された依存関係毎に、同様の処理を繰り返して、解除された依存関係毎に、寄与度Cを算出する。すなわち例えば、寄与度算出部36は、工程PA、PBの依存関係を解除した際の第2作業指標値に基づいて、工程PA、PBの依存関係の寄与度Cを算出し、工程PB、PCの依存関係を解除した際の第2作業指標値に基づいて、工程PB、PCの依存関係の寄与度Cを算出する。
【0036】
以下、本実施形態における寄与度Cの算出方法の例を説明する。例えば、それぞれの第1作業指標値の平均値をμall、それぞれの第1作業指標値の分散をσallとする。また、依存関係iを解除した状態における、それぞれの第2作業指標値の平均値をμ-i、それぞれの第2作業指標値の分散をσ-iとする。なお上述のように、本実施形態では、モンテカルロ法により変更事象が発生するかを決定しつつ第1作業指標値や第2作業指標値を算出する処理を、複数回実行しているため、それぞれの第1作業指標値や第2作業指標値の平均値とは、それらの複数回の算出結果における平均値を指し、それぞれの第1作業指標値や第2作業指標値の分散とは、それらの複数回の算出結果における分散を指す。
【0037】
寄与度算出部36は、次の式(1)に示すように、第1作業指標値の平均値に対する、依存関係iを解除した状態における第2作業指標値の平均値の乖離度合いを示す値Δμi
2を、算出する。また、寄与度算出部36は、次の式(2)に示すように、第1作業指標値の分散に対する、依存関係iを解除した状態における第2作業指標値の分散の乖離度合いを示す値Δσi
2を、算出する。
【0038】
【0039】
寄与度算出部36は、解除された依存関係のそれぞれについて、値Δμi
2を算出し、次の式(3)に示すように、解除された依存関係のそれぞれについての値Δμi
2の合計値に対する、依存関係iの値Δμi
2の比率を、作業負荷の平均値についての依存関係iの寄与度Cμiを算出する。同様に、寄与度算出部36は、解除された依存関係のそれぞれについて、値Δσi
2を算出し、次の式(4)に示すように、解除された依存関係のそれぞれについての値Δσi
2の合計値に対する、依存関係iの値Δσi
2の比率を、作業負荷の分散についての依存関係iの寄与度Cσiを算出する。
【0040】
【0041】
出力制御部42は、寄与度算出部36により算出された寄与度Cの情報を出力する。出力制御部42は、寄与度Cの情報を出力部22に出力(例えば画像表示)させてもよいし、通信部24を介して別の装置に出力(送信)してもよい。
【0042】
このように、本実施形態においては、第1作業指標値及び第2作業指標値に基づいて、依存関係の作業負荷に対する寄与度Cを算出する。そのため、寄与度Cが大きな工程の依存関係に着目して、工程の並列化などのプロセス改善案を検討することなどが可能となるため、適切な工程設計を補助することができる。
【0043】
(工程表の生成)
図5は、工程表の一例を示す模式図である。工程表生成部38は、作業モデルMに含まれる各工程Pを示す工程表Tを生成する。工程表生成部38が生成する工程表Tは、工程表T内における第1方向Xと、工程表T内における第2方向Yとに、各工程Pが並んだ表となっている。なお、第1方向Xと第2方向Yとは、本実施形態では直交しており、第1方向Xが行方向(横方向)であり、第2方向Yが列方向(縦方向)なので、以下、第1方向Xを行方向、第2方向Yを列方向として説明する。ただしそれに限られず、第1方向Xと第2方向Yとがその逆でもよい。また、第1方向Xと第2方向Yとは、互いに交差するものであればよい。工程表Tにおいては、作業モデルMに含まれる全ての工程Pが、行方向である第1方向Xに、作業の流れにおける上流から下流に向かう順に並び、かつ、作業モデルMに含まれる全ての工程Pが、列方向である第2方向Yに、作業の流れにおける上流から下流に向かう順に並んでいる。行方向に並ぶ工程Pは、自身を先行工程とした場合の後続工程との関係を示すものであり、列方向に並ぶ工程Pは、自身を後続工程とした場合の先行工程との関係を示すものである。
図5の例では、工程表Tに、行方向に並ぶ各工程P(本例では工程PA~PF)を示す欄T1Xと、列方向に並ぶ各工程P(本例では工程PA~PF)を示す欄T1とが含まれる例が示されている。
【0044】
工程表生成部38が生成する工程表Tには、工程P同士の依存関係の寄与度Cの情報が表示される。より詳しくは、工程表Tにおいては、行方向に並ぶ工程P(先行工程)と、その工程Pを先行工程とした後続工程である工程Pとが交差する位置の欄T2に、それらの工程P同士の依存関係についての寄与度Cが表示される。すなわち例えば、
図5に示すように、先行工程としての工程PAと後続工程としての工程PBとは依存関係にある。そのため、行方向に並ぶ工程PAから列方向側に延長した線と、列方向に並ぶ工程PBから行方向に延長した線とが交差する位置(すなわち工程PAの行、かつ工程PBの列上の位置)にある欄T2に、工程PAと工程PBとの依存関係の寄与度Cが、表示される。寄与度Cは、依存関係のそれぞれについて表示される。
図5の例では、欄T2において、寄与度Cが大きい程、面積が大きくなるような円が表示される。ただしそれに限られず、欄T2には、寄与度Cを示す任意の指標が示されていてよい。例えば、欄T2には、寄与度Cの大きさを示す任意の形状の図(例えば多角形)が表示されてもよいし、寄与度Cの数値が示されていてもよい。また例えば、第1作業指標値や第2作業指標値や寄与度Cが、リードタイムやコストなどの複数のパラメータを含む場合、パラメータ毎の寄与度Cの指標(本例では円)が、欄T2に並んで表示されてもよいし、ユーザの入力や自動切換えによって、パラメータ毎の寄与度Cの指標が欄T2に切り替え表示されてもよい。また例えば、寄与度Cとして、平均値及び分散を算出している場合には、平均値についての寄与度Cの指標(本例では円)と、分散についての寄与度Cの指標(本例では円)が、欄T2に並んで表示されてもよいし、ユーザの入力や自動切換えによって、それらの寄与度Cの指標が欄T2に切り替え表示されてもよい。
【0045】
工程表Tは、行方向に並ぶ工程Pのそれぞれについて、その工程Pに後続して依存関係にある工程(後続工程)の数が表示されることが好ましい。より詳しくは、工程表Tにおいては、行方向に並ぶ工程Pに対応する位置の欄T3Xに、その工程Pに対する後続工程の数を示す指標が表示される。
図5の例では、欄T3Xに、その工程Pに対する後続工程の数を示す数値と、後続工程の数を示す図とが示される。
図5の例では、後続工程の数を示す図として、後続工程の数が多い程長くなるような棒グラフが示されているが、後続工程の数を示す任意の形状の図であってよい。なお、欄T3Xには、後続工程の数を示す数値と後続工程の数を示す図とのいずれか一方が表示されてもよい。
【0046】
同様に、工程表Tは、列方向に並ぶ工程Pのそれぞれについて、その工程Pに先行して依存関係にある工程(先行工程)の数が表示されることが好ましい。より詳しくは、工程表Tにおいては、列方向に並ぶ工程Pに対応する位置の欄T3Yに、その工程Pに対する先行工程の数を示す指標が表示される。
図5の例では、欄T3Yに、その工程Pに対する先行工程の数を示す数値と、先行工程の数を示す図とが示される。
図5の例では、先行工程の数を示す図として、先行工程の数が多い程長くなるような棒グラフが示されているが、先行工程の数を示す任意の形状の図であってよい。なお、欄T3Yには、先行工程の数を示す数値と先行工程の数を示す図とのいずれか一方が表示されてもよい。
【0047】
工程表Tは、列方向に並ぶ工程Pのそれぞれについて、その工程Pの作業負荷の度合いを示す、工程指標値が表示されることが好ましい。より詳しくは、工程表Tにおいては、列方向に並ぶ工程Pに対応する位置の欄T4に、工程指標値を示す指標が表示される。
図5の例では、欄T4には工程Pのリードタイムを示す指標が表示されているが、それに限られず、工程Pのコストを示す指標も表示されてよい。
図5の例では、欄T4に、その工程Pの工程指標値を示す数値と、工程指標値の大きさを示す図とが示される。
図5の例では、工程指標値の大きさを示す図として、工程指標値が大きい程長くなるような棒グラフが示されているが、工程指標値の大きさを示す任意の形状の図であってよい。なお、欄T4には、工程指標値を示す数値と工程指標値の大きさを示す図とのいずれか一方が表示されてもよい。
【0048】
工程表Tは、列方向に並ぶ工程Pのそれぞれについて、その工程Pがクリティカルパスとなる確率も表示されることが好ましい。クリティカルパスとは、その工程Pが終了しないと、まだ終了していない他の工程Pを開始できないことを指す。工程表Tにおいては、列方向に並ぶ工程Pに対応する位置の欄T5に、その工程Pがクリティカルパスとなる確率が表示される。
図5の例では、欄T5に、クリティカルパスとなる確率を示す数値と、クリティカルパスとなる確率の大きさを示す図とが示される。
図5の例では、クリティカルパスとなる確率の大きさを示す図として、クリティカルパスとなる確率が大きい程長くなるような棒グラフが示されているが、クリティカルパスとなる確率の大きさを示す任意の形状の図であってよい。なお、欄T5には、クリティカルパスとなる確率を示す数値とクリティカルパスとなる確率の大きさを示す図とのいずれか一方が表示されてもよい。なお、クリティカルパスとなる確率は、作業モデルMに基づいた任意の方法で算出されてよい。
【0049】
出力制御部42は、工程表生成部38により生成された工程表Tの情報を出力する。出力制御部42は、工程表Tを出力部22に出力(例えば画像表示)させてもよいし、通信部24を介して別の装置に出力(送信)してもよい。
【0050】
このような工程表Tを生成することで、ユーザに寄与度Cなどを適切に認識させることが可能となり、適切な工程設計を補助することができる。ただし工程表Tの生成は必須ではない。
【0051】
(工程の設定)
演算装置10は、工程設定部40により、算出された寄与度Cに基づいて、作業における各工程の実施順を設定する、工程の再設計を実行してもよい。寄与度Cに基づいた工程の再設計の方法は任意であってよいが、例えば、工程設定部40は、例えば、寄与度Cが高くなる依存関係同士が、同じ時間帯に実行されるように、工程の実施順を設定してよい。これにより、例えばリードタイムを適切に短くした工程改善が可能となる。工程設定部40により再設計された工程の実施順の情報は、出力制御部42により出力されてよい。出力制御部42は、再設計された工程の実施順の情報を、出力部22に出力(例えば画像表示)させてもよいし、通信部24を介して別の装置に出力(送信)してもよい。ただし、演算装置10により工程の再設計は必須ではなく、例えばユーザが、算出された寄与度Cや工程表Tを参照して、実施してもよい。
【0052】
(処理フロー)
以上説明した演算装置10の処理のフローについて説明する。
図6は、演算装置の処理フローを説明するフローチャートである。
図6に示すように、演算装置10は、作業モデル取得部30により、対象となる作業をモデル化した作業モデルMを取得し(ステップS10)、第1作業指標値算出部32により、作業モデルMに基づいて、第1作業指標値を算出する(ステップS12)。演算装置10は、第2作業指標値算出部34により、作業モデルMに含まれる依存関係のうちから、解除する依存関係を選択する(ステップS14)。第2作業指標値算出部34は、選択した依存関係を解除するように作業モデルMを補正して補正モデルMAを生成し、補正モデルMAに基づいて、第2作業指標値を算出する(ステップS16)。演算装置10は、寄与度算出部36により、第1作業指標値及び第2作業指標値に基づいて、解除された依存関係の寄与度Cを算出する(ステップS18)。なお、全ての依存関係を解除する依存関係として選択済みでない場合には(ステップS20;No)、ステップS14に戻り、別の依存関係を解除する依存関係として選択して以降の処理を繰り返す。一方、全ての依存関係を解除する依存関係として選択済みの場合(ステップS20;Yes)、演算装置10は、工程表生成部38により、工程表Tを生成し(ステップS22)、本処理を終了する。
【0053】
(効果)
本開示の第1態様に係る演算装置10は、作業モデル取得部30と、第1作業指標値算出部32と、第2作業指標値算出部34と、寄与度算出部36とを含む。作業モデル取得部30は、少なくとも一部が依存関係にある複数の工程Pを含む作業のモデルである作業モデルMを取得する。第1作業指標値算出部32は、作業モデルMに基づき、作業モデルMに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第1作業指標値を算出する。第2作業指標値算出部34は、作業モデルMに基づき、複数の依存関係のうちの一部の依存関係を解除した状態で、作業モデルMに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第2作業指標値を算出する。寄与度算出部36は、第1作業指標値と第2作業指標値とに基づき、解除された依存関係が作業負荷に与える寄与度Cを算出する。本開示によると、寄与度Cが大きな工程の依存関係に着目して、工程の並列化などのプロセス改善案を検討することなどが可能となるため、適切な工程設計を補助することができる。
【0054】
本開示の第2態様に係る演算装置10は、第1態様に係る演算装置10であって、第2作業指標値算出部34は、依存関係が解除された一対の工程P同士が、並列関係となるように、作業モデルMを補正して、第2作業指標値を算出する。本開示によると、依存関係が解除された工程P同士を並列関係になるように補正することで、依存関係が解除された補正モデルMAを適切に作成して、寄与度Cを高精度に算出できる。そのため、本開示によると、適切な工程設計を補助することができる。
【0055】
本開示の第3態様に係る演算装置10は、第1態様又は第2態様に係る演算装置10であって、作業モデル取得部30は、工程Pのやり直しを行う必要が生じる変更事象CPが発生する確率分布が設定された、作業モデルMを取得する。第1作業指標値算出部32は、確率分布に基づいて変更事象CPが発生するかを決定し、その決定内容に基づいて、第1作業指標値を算出する。第2作業指標値算出部34は、確率分布に基づいて変更事象CPが発生するかを決定し、その決定内容に基づいて、第2作業指標値を算出する。本開示によると、確率分布に基づいて変更事象CPが発生するかを決定して、第1作業指標値や第2作業指標値を算出するため、変更事象CPの発生を考慮して、寄与度Cを高精度に算出できる。そのため、本開示によると、適切な工程設計を補助することができる。
【0056】
本開示の第4態様に係る演算装置10は、第3態様又は第2態様に係る演算装置10であって、第2作業指標値算出部34は、変更事象CPが発生する工程Pである原因工程と、変更事象CPが発生した場合にやり直しが必要となる影響工程との依存関係のうちの、一部を解除した状態で、第2作業指標値を算出する。本開示によると、原因工程と影響工程との依存関係も、解除する対象として選択するため、原因工程と影響工程との依存関係についての寄与度Cを適切に算出して、適切な工程設計を補助することができる。
【0057】
本開示の第5態様に係る演算装置10は、第1態様から第4態様のいずれかに係る演算装置10であって、作業モデルMにおける各工程Pが第1方向X及び第2方向Yに並ぶ工程表Tを生成する工程表生成部38を更に含む。工程表生成部38は、依存関係毎の寄与度Cが表示されるように、工程表Tを生成する。本開示によると、依存関係毎の寄与度Cを示す工程表Tを生成することで、ユーザに寄与度Cなどを適切に認識させることが可能となり、適切な工程設計を補助することができる。
【0058】
本開示の第6態様に係る演算装置10は、第5態様に係る演算装置10であって、工程表生成部38は、第1方向Xに並ぶ工程Pのそれぞれについて、その工程Pに後続して依存関係にある工程Pの数が表示され、第2方向Yに並ぶ工程Pのそれぞれについて、その工程Pに先行して依存関係にある工程Pの数が表示されるように、工程表Tを生成する。本開示によると、寄与度Cと共に、工程Pの後続工程や先行工程の数をユーザに認識させることが可能となり、適切な工程設計を補助することができる。
【0059】
本開示の第7態様に係る演算装置10は、第1態様から第6態様のいずれかに係る演算装置10であって、寄与度Cに基づいて、作業における工程の実施順を設定し直す工程設定部40を更に含む。本開示によると、寄与度Cに基づいて、工程を適切に再設計できる。
【0060】
本開示の第8態様に係る演算装置10は、第1態様から第7態様のいずれかに係る演算装置10であって、作業負荷とは、作業の実行に要するリードタイムと、作業の実行に要するコストとの、少なくとも1つである。本開示によると、リードタイムやコストについての、依存関係の寄与度Cを算出できるため、適切な工程設計を補助することができる。
【0061】
本開示の第9態様に係る演算方法は、少なくとも一部が依存関係にある複数の工程Pを含む作業のモデルである作業モデルMを取得するステップと、作業モデルMに基づき、作業モデルMに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第1作業指標値を算出するステップと、作業モデルMに基づき、複数の依存関係のうちの一部の依存関係を解除した状態で、作業モデルMに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第2作業指標値を算出するステップと、第1作業指標値と第2作業指標値とに基づき、解除された依存関係が作業負荷に与える寄与度Cを算出するステップと、を含む。本開示によると、適切な工程設計を補助することができる。
【0062】
本開示の第10態様に係るプログラムは、少なくとも一部が依存関係にある複数の工程Pを含む作業のモデルである作業モデルMを取得するステップと、作業モデルMに基づき、作業モデルMに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第1作業指標値を算出するステップと、作業モデルMに基づき、複数の依存関係のうちの一部の依存関係を解除した状態で、作業モデルMに示す作業を実行した際の作業負荷を示す第2作業指標値を算出するステップと、第1作業指標値と第2作業指標値とに基づき、解除された依存関係が作業負荷に与える寄与度Cを算出するステップと、をコンピュータに実行させる。本開示によると、適切な工程設計を補助することができる。
【0063】
以上、本開示の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
10 演算装置
30 作業モデル取得部
32 第1作業指標値算出部
34 第2作業指標値算出部
36 寄与度算出部
38 工程表生成部
M 作業モデル
P 工程