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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089488
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/04 20060101AFI20240626BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20240626BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20240626BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F16C11/04 F
G06F1/16 312E
G06F1/16 312F
G06F1/16 312J
G06F1/16 312L
H05K5/02 C
H04M1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204886
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】劉 ガロ
(72)【発明者】
【氏名】森野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
【テーマコード(参考)】
3J105
4E360
5K023
【Fターム(参考)】
3J105AA05
3J105AB22
3J105AB33
3J105AB42
3J105AC07
4E360AA02
4E360AB05
4E360AB12
4E360BA04
4E360BB12
4E360BB22
4E360GA02
4E360GB46
4E360GC02
4E360GC08
5K023AA07
5K023BB01
5K023DD08
5K023KK10
5K023LL06
5K023QQ02
5K023QQ05
(57)【要約】
【課題】外観品質の低下を抑制することができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、第1筐体部材と第2筐体部材とを相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、第1姿勢時に互いに離間する前記第1筐体部材の第1端部と前記第2筐体部材の第2端部との間を埋めるように配置される背表紙部品と、可撓性を有し、前記背表紙部品と前記第1筐体部材の内面及び前記第2筐体部材の内面との間に跨るように設けられ、前記背表紙部品と前記第1端部との間の隙間及び前記背表紙部品と前記第2端部との間の隙間を覆うシート部材と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
内面を有する第1筐体部材と、
内面を有し、前記第1筐体部材と隣接する第2筐体部材と、
前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、
前記第2筐体部材と隣接する前記第1筐体部材の第1端部と、前記第1筐体部材と隣接する前記第2筐体部材の第2端部とに沿って延在し、前記第1姿勢時に互いに離間する前記第1端部と前記第2端部との間を埋めるように配置され、前記第2姿勢時には前記第1端部と前記第2端部とを跨ぐように配置される背表紙部品と、
可撓性を有し、前記背表紙部品と前記第1筐体部材の内面及び前記第2筐体部材の内面との間に跨るように設けられ、前記背表紙部品と前記第1端部との間の隙間及び前記背表紙部品と前記第2端部との間の隙間を覆うシート部材と、
を備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記ヒンジ装置は、
前記第1筐体部材の内面に固定された金属製の第1ブラケットと、
前記第1ブラケットに対して相対的に回動可能に設けられ、前記第2筐体部材の内面に固定された金属製の第2ブラケットと、
を有し、
前記シート部材は、前記背表紙部品に固定されると共に、前記第1筐体部材側の端が前記第1ブラケットと前記第1筐体部材の内面との間に挟み込まれ、前記第2筐体部材側の端が前記第2ブラケットと前記第2筐体部材の内面との間に挟み込まれている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記ヒンジ装置は、さらに、
前記第1筐体部材の内面側に配置され、潤滑剤が塗布された第1可動部と、
前記第2筐体部材の内面側に配置され、潤滑剤が塗布された第2可動部と、
を有し、
前記シート部材は、防油性能を有し、前記第1可動部と前記第1筐体部材の内面及び前記第2可動部と前記第2筐体部材の内面との間に介在している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器であって、
さらに、前記第1筐体部材と前記第2筐体部材との間に亘って設けられ、前記第1筐体部材及び前記第2筐体部材が相対的に回動することに応じて折り曲げられる折曲領域を有するディスプレイを備え、
前記ヒンジ装置は、さらに、
前記第1端部及び前記第2端部に沿って延在し、前記第2姿勢時に前記第1端部及び前記第2端部を跨ぐように配置され、前記ディスプレイの裏面を支持するヒンジベースと、
前記ヒンジベースと前記第1ブラケットとを連結する第1アーム部材と、
前記ヒンジベースと前記第2ブラケットとを連結する第2アーム部材と、
を有し、
前記シート部材は、前記第1筐体部材の内面と前記第1アーム部材との間及び前記第2筐体部材の内面と前記第2アーム部材との間に介在している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記シート部材は、不織布で構成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記シート部材は、
前記背表紙部品と前記第1筐体部材の内面との間に跨るように設けられ、前記背表紙部品と前記第1端部との間の隙間を覆う第1シート部と、
前記背表紙部品と前記第2筐体部材の内面との間に跨るように設けられ、前記背表紙部品と前記第2端部との間の隙間を覆う第2シート部と、を有し、
前記第1シート部及び前記第2シート部は、1枚のシートで形成され、前記第1筐体部材の内面から前記背表紙部品を通過して前記第2筐体部材の内面まで延在している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記シート部材は、
前記背表紙部品と前記第1筐体部材の内面との間に跨るように設けられ、前記背表紙部品と前記第1端部との間の隙間を覆う第1シート部と、
前記第1シート部とは別体で形成され、前記背表紙部品と前記第2筐体部材の内面との間に跨るように設けられ、前記背表紙部品と前記第2端部との間の隙間を覆う第2シート部と、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項1に記載の電子機器であって、
さらに、前記背表紙部品を通過して前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とに跨るように設けられたフレキシブル基板を備え、
前記シート部材は、前記背表紙部品の長手方向で少なくとも前記フレキシブル基板が配置されていない範囲に設けられる
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体部材同士をヒンジ装置で連結した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル式の液晶ディスプレイを有し、物理的なキーボードを持たないPCやスマートフォン等の電子機器が急速に普及している。この種の電子機器として、例えば有機EL(Electro Luminescence)等で構成されたフレキシブルディスプレイを用い、筐体間を折り畳み可能とした構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-015522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器は、筐体間を折り畳んだ状態で大きく離間する左右の筐体部材間の開口を埋める背表紙部品を備える。背表紙部品は、筐体間を開いた際には筐体部材の内側に収容される。このため、背表紙部品は、回動動作時に左右の筐体部材と干渉することを避ける必要があり、筐体間を折り畳んだ状態でも各筐体部材との間にある程度の干渉防止用の隙間を確保しておく必要がある。その結果、このような電子機器は、当該隙間を通して内部部品、例えば金属製のヒンジ装置の構成部品が見えてしまい、外観品質を低下させることが分かってきた。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、外観品質の低下を抑制することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、内面を有する第1筐体部材と、内面を有し、前記第1筐体部材と隣接する第2筐体部材と、前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、前記第2筐体部材と隣接する前記第1筐体部材の第1端部と、前記第1筐体部材と隣接する前記第2筐体部材の第2端部とに沿って延在し、前記第1姿勢時に互いに離間する前記第1端部と前記第2端部との間を埋めるように配置され、前記第2姿勢時には前記第1端部と前記第2端部とを跨ぐように配置される背表紙部品と、可撓性を有し、前記背表紙部品と前記第1筐体部材の内面及び前記第2筐体部材の内面との間に跨るように設けられ、前記背表紙部品と前記第1端部との間の隙間及び前記背表紙部品と前記第2端部との間の隙間を覆うシート部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、外観品質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を閉じて0度姿勢とした状態を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す電子機器を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す平面図である。
図3図3は、図2に示す電子機器の内部構造を模式的に示す平面図である。
図4図4は、図3中のIV-IV線に沿う模式的な断面図である。
図5図5は、図4に示す電子機器を0度姿勢とした状態を示す模式的な断面図である。
図6A図6Aは、背表紙部品の内面にシート部材を貼り付けた状態を示す模式的な平面図である。
図6B図6Bは、図6A中のB-B線に沿う模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を閉じて0度姿勢とした状態を示す斜視図である。図2は、図1に示す電子機器10を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す平面図である。図3は、図2に示す電子機器10の内部構造を模式的に示す平面図である。
【0011】
図1図3に示すように、電子機器10は、第1筐体12Aと、第2筐体12Bと、ヒンジ装置14と、ディスプレイ16とを備える。本実施形態の電子機器10は、本のように折り畳み可能なタブレット型PC或いはノート型PCを例示する。電子機器10は、スマートフォン又は携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0012】
各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。第1筐体12Aは、第1筐体部材17Aと、第1カバー部材18Aとを備える。第1筐体部材17Aは、第2筐体12Bと隣接する第1端部17Aa以外の3辺に立壁を形成した矩形の枠状部材である。第1カバー部材18Aは、第1筐体部材17Aの裏面開口を閉じるプレート状部材である(図4も参照)。同様に、第2筐体12Bは、第1筐体12Aと隣接する第2端部17Ba以外の3辺に立壁を形成した第2筐体部材17Bと、第2筐体部材17Bの裏面開口を閉じる第2カバー部材18Bとを備える。筐体部材17A,17Bの表面開口は、ディスプレイ16で閉じられる。
【0013】
各部材17A,17B,18A,18Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属部材、或いは炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板等で構成される。
【0014】
ヒンジ装置14は、筐体12A,12Bを0度姿勢と180度姿勢との間で相対的に回動可能に連結している。ヒンジ装置14は、図1に示す0度姿勢で形成される端部17Aa,17Ba間の隙間を隠す背表紙としても機能する。ディスプレイ16は、筐体12A,12B間に亘って延在している。
【0015】
以下、電子機器10について、筐体12A,12Bの並び方向をX方向、これと直交する端部17Aa,17Baに沿う方向をY方向、筐体12A,12Bの厚み方向をZ方向、と呼んで説明する。また、筐体12A,12B間の角度姿勢について、互いに面方向で重なるように積層された状態を0度姿勢(図1参照)と呼び、互いに面方向と垂直する方向(X方向)に並んだ状態を180度姿勢(図2参照)と呼んで説明する。0度と180度の間の姿勢は適宜角度を刻んで呼ぶことができ、例えば筐体12A,12Bの互いの面方向が直交した状態が90度姿勢となる。これらの角度は説明の便宜上のものであり、実際の製品では角度数字の示す正確な角度位置から多少ずれた角度位置となることも当然生じ得る。
【0016】
図3に示すように、第1筐体12Aは、マザーボード20を搭載している。マザーボード20は、例えばCPU(Central Processing Unit)20a、通信モジュール20b、SSD(Solid State Drive)20c等の電子部品を実装している。なお、第1筐体12Aは、マザーボード20以外にも各種電子部品が搭載される。
【0017】
第2筐体12Bは、バッテリ装置21、ディスプレイボード22、及びサブカード23を搭載している。ディスプレイボード22は、ディスプレイ16の制御基板である。サブカード23は、例えば電源ボタンやUSB(Universal Serial Bus)規格に準拠した外部コネクタ等を実装した基板である。バッテリ装置21、ディスプレイボード22、及びサブカード23は、それぞれ端部17Aa,17Baを跨ぐフレキシブル基板26,27,28を用いてマザーボード20と接続されている。なお、第2筐体12Bは、バッテリ装置21等以外にも各種電子部品が搭載される。
【0018】
図4は、図3中のIV-IV線に沿う模式的な断面図である。図5は、図4に示す電子機器10を0度姿勢とした状態を示す模式的な断面図である。
【0019】
図1及び図4に示す0度姿勢において、筐体12A,12Bは、二つ折りに折り畳まれた状態となる。ディスプレイ16は、可撓性を有するシート状のフレキシブルディスプレイであり、例えば有機ELで構成されている。0度姿勢時、ディスプレイ16は、図2に示す第1筐体12A側の領域R1と第2筐体12B側の領域R2とが対向するように配置され、領域R1,R2間の境界領域である折曲領域R3が円弧状に折り曲げられた状態となる。図2及び図5に示す180度姿勢において、筐体12A,12Bは、互いに左右に並んで配置される。この際、ディスプレイ16は、領域R1,R2及び折曲領域R3がXY平面上に並んで配置され、全体として1枚の平板形状を成す。
【0020】
ディスプレイ16は、領域R1が第1筐体12Aに対して相対的に固定され、領域R2が第2筐体12Bに対して相対的に固定される。具体的には、領域R1の裏面16aが第1プレート30Aを介して第1筐体12Aと固定され、領域R2の裏面16aが第2プレート30Bを介して第2筐体12Bと固定される。なお、図3はディスプレイ16及びプレート30A,30Bを取り外した状態を示している。
【0021】
図4及び図5に示すように、プレート30A,30Bは、相互間にヒンジ装置14を挟んで左右に配置され、それぞれの表面30Aa,30Baでディスプレイ16の裏面16aを支持する。ディスプレイ16の裏面16aは、領域R1が第1プレート30Aの表面30Aaに粘着固定され、領域R2が第2プレート30Bの表面30Baに粘着固定される。プレート30A,30Bは、例えば炭素繊維にエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂を含侵させた炭素繊維強化樹脂板と、この炭素繊維強化樹脂板の裏面の外周を囲むマグネシウム合金製の金属フレームとを有する構成である。
【0022】
ディスプレイ16の折曲領域R3は、筐体12A,12Bに対して相対移動可能である。180度姿勢時、折曲領域R3の裏面16aは、ヒンジ装置14で支持される(図4参照)。0度姿勢時、折曲領域R3は、円弧状に折り曲げられ、裏面16aの一部がヒンジ装置14で支持され、大部分はヒンジ装置14から離間する(図5参照)。
【0023】
図3図5に示すように、本実施形態のヒンジ装置14は、ヒンジベース31と、第1サポートプレート32Aと、第2サポートプレート32Bとを有する。
【0024】
ヒンジベース31は、端部17Aa,17Baを跨ぐ位置に設けられ、端部17Aa,17Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。ヒンジベース31は、アルミニウム等の金属材料で形成されたブロック状部品である。ヒンジベース31には、180度姿勢でX方向に並ぶ2本のヒンジ軸14A,14Bが支持されている。
【0025】
第1ヒンジ軸14Aには、第1リンクアーム33Aの第1端部が軸周りに回転可能に支持されている(図3参照)。第1リンクアーム33Aの第2端部は、第1ブラケット34Aに対して回転軸を用いて相対回転可能に連結されている。第1ヒンジ軸14Aには、さらに、第1サポートアーム35Aの第1端部が軸周りに回転可能に支持されている。第1サポートアーム35Aの第2端部は、第1ブラケット34Aに対して回転軸を用いて相対回転可能に連結されている。第1サポートアーム35Aは、第1リンクアーム33AとY方向に並んでいる。第1ブラケット34Aは、ねじ等で第1筐体部材17Aの内面17Abに固定されている。
【0026】
第2ヒンジ軸14Bには、第2リンクアーム33Bの第1端部が軸周りに回転可能に支持されている(図3参照)。第2リンクアーム33Bの第2端部は、第2ブラケット34Bに対して回転軸を用いて相対回転可能に連結されている。第2ヒンジ軸14Bには、さらに、第2サポートアーム35Bの第1端部が軸周りに回転可能に支持されている。第2サポートアーム35Bの第2端部は、第2ブラケット34Bに対して回転軸を用いて相対回転可能に連結されている。第2サポートアーム35Bは、第2リンクアーム33BとY方向に並んでいる。第2ブラケット34Bは、ねじ等で第2筐体12Bの内面17Bbに固定されている。
【0027】
図3に示すように、ヒンジ装置14は、1枚の第1ブラケット34Aに第1リンクアーム33A及び第1サポートアーム35Aを1本ずつ連結した第1可動部14Cを複数有する。各第1可動部14Cは、ヒンジベース31の長手方向であるY方向に沿って互いに間隙を空けて並んでいる。つまり第1可動部14Cは、ヒンジベース31の長手方向に沿って断続的に連結されている。第2ブラケット34B、第2リンクアーム33B、及び第2サポートアーム35Bも、第1可動部14Cと同様な第2可動部14Dを構成している。
【0028】
ヒンジベース31と第1ブラケット34Aとを回動可能に連結する第1アーム部材としては、第1リンクアーム33A及び第1サポートアーム35Aの一方のみを用いてもよいし、本実施形態のように両方を用いてもよいし、さらにベースのアーム部材を追加してもよい。同様に、ヒンジベース31と第2ブラケット34Bとを回動可能に連結する第2アーム部材としては、第2リンクアーム33B及び第2サポートアーム35Bの一方のみを用いてもよいし、本実施形態のように両方を用いてもよいし、さらにベースのアーム部材を追加してもよい。
【0029】
これによりヒンジ装置14は、ブラケット34A,34B間がヒンジベース31を介して相対的に回動可能に連結され、つまり筐体12A,12B間を相対的に回動可能に連結している。ヒンジベース31内には、筐体12A,12B間の回動動作を同期させるギヤ機構や、筐体12A,12B間の回動動作に所定の回動トルクを付与するトルク機構等も設けられている。
【0030】
ところで、可動部14C,14Dでは、リンクアーム33A,33B及びサポートアーム35A,35Bがブラケット34A,34Bに対して回転し、或いはスライドする。可動部14C,14Dは、このように金属部品同士が摺動するため、グリース等の潤滑剤38が適宜箇所に塗布されている(図4参照)。本実施形態では、特にサポートアーム35A,35Bは、金属シャフト35Aa,35Baがブラケット34A,34Bに形成されたスライダ溝34Aa,34Ba内をスライドしながら回転する。このため、金属シャフト35Aa,35Baとスライダ溝34Aa,34Baとの摺動部には、潤滑剤38が必須となっている。なお、この部分の潤滑剤38は、その周囲の部品、例えばサポートアーム35A,35Bの表面等にも流出して付着する。勿論、潤滑剤38は、リンクアーム33A,33Bの各摺動部の他、ヒンジ装置14の各所に塗布されている。
【0031】
図1図4及び図5に示すように、ヒンジベース31の外面には、背表紙部品36が取り付けられている。背表紙部品36は、ヒンジベース31の外面形状に合わせた略U字状の断面を有するプレートである。背表紙部品36は、例えばアルミニウム合金やステンレス等の熱伝導材料で形成されている。背表紙部品36は、外面品質を高めるための化粧カバーである。フレキシブル基板26~28は、端部17Aa,17Baを跨ぐ位置では、ヒンジベース31と背表紙部品36との間を通過している。
【0032】
図4に示す180度姿勢時、ヒンジベース31は、筐体12A,12B内に収容され、互いに近接した端部17Aa,17BaをX方向に跨ぐ。図5に示す0度姿勢時、ヒンジベース31は、大きく離間した端部17Aa,17Ba間に形成される開口を埋めるように配置される。この際、背表紙部品36が最外面に配置されることで、折り畳まれた電子機器10の外観意匠の低下を防止する(図1参照)。背表紙部品36は、0度姿勢以外、例えば90度姿勢等でも端部17Aa,17Ba間に形成される開口を覆うことができる。
【0033】
なお、例えばヒンジベース31が図3に示すようにY方向に延在した構成ではなく、1又は複数の小型のピース部品等で構成されている場合、背表紙部品36は、ヒンジ装置14とは別に各筐体部材17A,17Bに支持されてもよい。つまり背表紙部品36は、必ずしもヒンジ装置14の構成要素でなくてもよく、要は端部17Aa,17Ba間に形成される開口を覆うことができれば、その構成や取付態様は限定されない。但し、本実施形態では、背表紙部品36がヒンジ装置14の構成部品であることで、背表紙部品36を筐体部材17A,17Bに取り付けるための個別の構成や機構が不要であり、構成の簡素化が図られている。
【0034】
図3図5に示すように、サポートプレート32A,32Bは、アルミニウム等の金属材料で形成されたプレートであり、左右対称形状である。サポートプレート32A,32Bは、筐体部材17A,17Bの内面17Ab,17Bb側に設けられ、端部17Aa,17Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。
【0035】
第1サポートプレート32Aは、第1プレート30Aとヒンジベース31との間に配置される。第1サポートプレート32Aは、第1プレート30A側の縁部が第1ブラケット31Aに対して回転軸を介して相対回転可能に連結されている。第1サポートプレート32Aは、ヒンジベース31側の縁部がヒンジベース31に対して相対移動可能である。第2サポートプレート32Bの構成及び第2プレート30B及びヒンジベース31に対する取付構造等は、第1サポートプレート32Aの構成及び取付構造等と左右対称でよい。
【0036】
サポートプレート32A,32Bは、筐体12A,12Bの回動動作に応じて揺動する。180度姿勢時、サポートプレート32A,32Bは、その表面でディスプレイ16の折曲領域R3の裏面16aを支持する。180度以外の角度姿勢では、サポートプレート32A,32Bは、ディスプレイ16との間に隙間を設けた状態、又はディスプレイ16を変形させない程度の僅かな力でディスプレイ16に接触する(図5参照)。
【0037】
ところで、このような電子機器10では、背表紙部品36は、筐体12A,12B間の回動動作時に筐体部材17A,17Bと干渉することを避ける必要がある。このため、例えば図5に示す0度姿勢時、背表紙部品36は、各筐体部材17A,17Bとの間にそれぞれ僅かな隙間G1,G2が形成されることを避けることはできない。その結果、電子機器10は、各隙間G1,G2から内部部品が見えしまい(図5中の視点A参照)、外観品質が低下する。特に、ヒンジ装置14を構成するリンクアーム33A,33B、サポートアーム35A,35B、及びブラケット34A,34B等は、いずれもステンレス等で形成された金属製部品であって、メタル光沢を有する。そして、これら金属製部品は、いずれも隙間Gを臨む位置にあって、隙間G1,G2を通した光を反射するため、一層目立ち易い。
【0038】
そこで、本実施形態の電子機器10は、隙間G1,G2から内部部品が視認されることを防止する目隠し部材して機能するシート部材40を備える。図6Aは、背表紙部品36の内面36aにシート部材40を貼り付けた状態を示す模式的な平面図である。図6Bは、図6A中のB-B線に沿う模式的な断面図である。なお、図4及び図5では、他の部品と区別して明示するため、シート部材40を太線の破線で図示している。
【0039】
図4図6Bに示すように、シート部材40は、背表紙部品36と、第1筐体部材17Aの内面17Ab及び第2筐体部材17Bの内面17Bbとの間に跨るように設けられ、隙間G1,G2を覆う。本実施形態のシート部材40は、1枚のシートで形成され、第1筐体部材17Aの内面17Abから背表紙部品36を通過して第2筐体部材17Bの内面17Bbまで延在している。
【0040】
以下では、シート部材40について、背表紙部品36と第1筐体部材17Aの内面17Abとの間に跨るように設けられ、隙間G1を覆う部分を第1シート部40Aと呼び、背表紙部品36と第2筐体部材17Bの内面17Bbとの間に跨るように設けられ、隙間G2を覆う部分を第2シート部40Bと呼んで説明することもある。シート部材40は、第1シート部40Aと第2シート部40Bとを、それぞれ別体のシートで構成してもよい。但し、シート部材40は、1枚構造のシートで形成した方が、シート部40A,40Bを別体のシートで形成した場合に比べ、背表紙部品36に位置決めや固定が容易で製造効率がよいという利点がある。
【0041】
図4及び図5に示すように、シート部材40は、X方向の中央部が背表紙部品36の内面36aに固定され、第1筐体部材17A側の端が第1ブラケット34Aと第1筐体部材17Aの内面17Abとの間に挟み込まれて保持され、第2筐体部材17B側の端が第2ブラケット34Bと第2筐体部材17Bの内面17Bbとの間に挟み込まれて保持されている。
【0042】
シート部材40は、可撓性を有し、且つX方向での幅寸法がある程度の余裕(弛み)を設けた寸法とされている。これによりシート部材40は、筐体部材17A,17B間の回動動作を邪魔せず、当該回動動作に追従して変形しつつ隙間G1,G2を覆う。
【0043】
シート部材40は、隙間G1,G2を覆うことができ、且つ可撓性を有するものであれば、その材質は限定されない。シート部材40の材質は、例えば不織布、織物、編物、樹脂シート、又は樹脂フィルム等を例示できる。但し、シート部材40は、筐体部材17A,17B間の回動動作に合わせて周囲の部品と摺動する。この摺動時に生じるカサカサ音等の異音の発生や耐久性等を考慮して、本実施形態のシート部材40は、例えばPET樹脂又はPP樹脂で形成された厚み0.15mmの不織布を用いている。なお、シート部材40は、隙間G1,G2の奥側で目立つことがないよう、黒色等の濃色に着色されていることが好ましい。
【0044】
図6A及び図6Bに示すように、シート部材40は、背表紙部品36の内面36aに例えば接着剤や両面テープ等で固定され、X方向の両側部がそれぞれ羽根状に左右に突出している。第1シート部40Aと第2シート部40Bを別体のシートで構成する場合は、各シート部40A,40Bをそれぞれ内面36aに固定すればよい。
【0045】
図3及び図6Bに示すように、シート部材40は、背表紙部品36の長手方向(Y方向)で2以上に分割された構成としてもよい。これによりシート部材40の1枚当たりのY寸法を短くすることができ、背表紙部品36に対する固定作業の効率が向上する。
【0046】
この際、シート部材40は、背表紙部品36の長手方向で少なくともフレキシブル基板26~28が配置されていない範囲に設けられることが好ましい。すなわち、フレキシブル基板26~28は、例えば黒色に形成でき、シート部材40と同様に隙間G1,G2を覆うことができる。そこで、例えば図3に示すように、シート部材40は、Y方向に並んだ2枚構造とし、2枚のシート部材40,40間の隙間はフレキシブル基板27で補完する構成としてもよい。そうするとシート部材40の使用量を低減できてコストを削減でき、またシート部材40のY寸法を短縮できるため背表紙部品36に対する固定作業も一層容易となる。
【0047】
従って、当該電子機器10は、シート部材40によって背表紙部品36と筐体部材17A,17Bとの隙間G1,G2を覆い隠すことができる。このため、電子機器10は、当該隙間G1,G2を通して内部部品が露呈することを防止でき、外観品質の低下を抑制することができる。
【0048】
特に、本実施形態のシート部材40は、一端側が背表紙部品36の内面36aに固定され、他端側がブラケット34A,34Bと筐体部材17A,17Bの内面17Ab,17Bbとの間に挟み込まれて保持されている。このため、シート部材40は、ブラケット34A,34B及びこれと連結されたアーム33A、33B,35A,35B等の金属製部品を一層確実に覆い隠すことができる。その結果、これら金属製部品のメタル光沢が隙間G1,G2を通した光を反射することを防止でき、外観品質の低下を一層抑制できる。
【0049】
本実施形態のシート部材40は、隙間G1,G2を覆う目隠し以外の機能も有する。
【0050】
上記したように、シート部材40は、背表紙部品36と内面17Ab,17Bbとの間に跨るように設置される。換言すれば、第1シート部40Aは、第1アーム部材であるアーム33A,35Aと第1ブラケット34Aを内面17Ab側から覆っている(図4及び図5参照)。同様に、第2シート部40Bは、第2アーム部材であるアーム33B,35Bと第2ブラケット34Bを内面17Bb側から覆っている。
【0051】
つまりシート部材40は、ヒンジ装置14の可動部14C,14Dと、筐体部材17A,17Bの内面17Aa,17Baとの間に介在している。このため、シート部材40は、可動部14C,14Dに塗布された潤滑剤38が内面17Ab,17Bbに付着し、図4に示す180度姿勢時に背表紙部品36の外面36bに付着することを防止できる。その結果、電子機器10は、背表紙部品36の外面36bに潤滑剤38が付着し、これが図5に示す0度姿勢時に外観上に露出して外観品質を低下させること、及び背表紙部品36に触れたユーザに不快感を与えることを防止できる。
【0052】
ところで、上記したように、シート部材40は、例えば不織布で構成されている。このため、不織布に形成される微細な孔部を通して潤滑剤38が浸透し、これが背表紙部品36の外面36bに付着する可能性もある。そこで、図6Bに示すように、シート部材40は、グリース等の潤滑剤38の浸透を防止するため、表面に防油性能を有するコーティング40a,40bを設けておくことが好ましい。
【0053】
コーティング40a,40bは、例えば防油コーティングや撥水コーティングであり、シート部材40での潤滑剤38の浸透を抑えることができるものであればよい。当該コーティングは、少なくともヒンジ装置14の可動部14C,14D側を向いた表面のコーティング40aを設けるとよい。なお、本実施形態のコーティング40a,40bは、製造効率の観点から、例えば液状のコーティング剤が入った容器にシート部材40を浸して設けるため、シート部材40の両面に塗布されている。
【0054】
図4及び図5中の参照符号42A,42Bは、内面17Ab,17Bbに設けられた熱伝導部材である。熱伝導部材42A,42Bは、グラファイトシート等の熱伝導性シートや伝熱ラバー等の熱伝導性クッションである。熱伝導部材42A,42Bは、180度姿勢時に背表紙部品36を介して左右の筐体部材17A,17Bを熱的に接続し、CPU20a等の発熱によって高温となる第1筐体12A側の熱を第2筐体12B側に移動させるためのものである。このように、本実施形態の電子機器10は、熱伝導部材42A,42Bの作用によって潤滑剤38が背表紙部品36の外面36bに一層付着し易い構造となっているため、シート部材40による潤滑剤38の付着防止作用が一層効果的なものとなる。熱伝導部材42A,42Bは、省略されてもよい。
【0055】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0056】
上記では、本のように二つ折りに折り畳み可能な電子機器10を例示したが、本発明は、同形の筐体同士を二つ折りに折り畳む構成以外、例えば大形の筐体の左右縁部にそれぞれ小形の筐体を折り畳み可能に連結した観音開きの構成、1つの筐体の左右縁部にそれぞれ折り畳み方向の異なる筐体を連結したS型の折り畳み構成、大形の筐体の左右一方の縁部に小形の筐体を折り畳み可能に連結したJ型の折り畳み構成等、各種構成に適用可能であり、筐体の連結数は4以上としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 電子機器
12A 第1筐体
12B 第2筐体
14 ヒンジ装置
14C 第1可動部
14D 第2可動部
16 ディスプレイ
17A 第1筐体部材
17B 第2筐体部材
26~28 フレキシブル基板
31 ヒンジベース
34A 第1ブラケット
34B 第2ブラケット
36 背表紙部品
38 潤滑剤
40 シート部材
40A 第1シート部
40B 第2シート部
40a,40b コーティング
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B