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特開2024-89494屋根改修構造、水切部材および屋根改修構造の構築方法
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  • 特開-屋根改修構造、水切部材および屋根改修構造の構築方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089494
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】屋根改修構造、水切部材および屋根改修構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/40 20060101AFI20240626BHJP
   E04D 13/14 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
E04D3/40 P
E04D3/40 R
E04D13/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204896
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧田 均
(72)【発明者】
【氏名】根元 央希
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AZ04
2E108DF18
2E108GG09
2E108GG20
(57)【要約】
【課題】側壁内部の通気性能および排水性能を確保するとともに、側壁内部への雨水の逆流を防止する。
【解決手段】既存屋根材10の上に設置される新設屋根材20と、新設屋根材20の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁14との取り合いにおいて既存壁水切板16の上に設置される新設壁水切板50と、新設壁水切板50を支持する支持部材40と、新設壁水切板50の内側に浸入した水を堰き止める堰止部材70と、を備えており、新設壁水切板50は、新設屋根材20側の端部に形成された通気孔55を有し、支持部材40は、既存壁水切板16の上に所定の間隔をあけて複数設置されており、堰止部材70は、隣り合う支持部材40,40同士の間(空間S)で通気孔55に対向する位置に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存屋根材の上に設置される新設屋根材と、
前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁との取り合いにおいて既存壁水切板の上に設置される新設壁水切板と、前記新設壁水切板を支持する支持部材と、前記新設壁水切板の内側に浸入した水を堰き止める堰止部材と、を備えており、
前記新設壁水切板は、前記新設屋根材側の端部に形成された通気孔を有し、
前記支持部材は、前記既存壁水切板の上に所定の間隔をあけて複数設置されており、
前記堰止部材は、隣り合う前記支持部材同士の間で前記通気孔に対向する位置に設けられている
ことを特徴とする屋根改修構造。
【請求項2】
前記新設壁水切板は、前記既存屋根材が当接する前記側壁に沿って立ち上がる立上板部と、前記支持部材の上面を覆う上面板部と、前記支持部材の前記新設屋根材側の端面を覆う端面板部とを有し、
前記通気孔は、前記端面板部に形成され、
前記堰止部材は、前記上面板部の下面に取り付けられている。
ことを特徴とする請求項1に記載の屋根改修構造。
【請求項3】
前記堰止部材は、断面へ字形状を呈しており、前記上面板部の下面に当接する当接板部と、前記当接板部に対して屈曲し前記通気孔に対向する対向板部とを備えている
ことを特徴とする請求項2に記載の屋根改修構造。
【請求項4】
前記通気孔は、横長のスリット形状を呈しており、前記端面板部の下端から上方に間隔をあけて配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の屋根改修構造。
【請求項5】
既存屋根材の上に設置される新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁との取り合いにおいて用いられる水切部材であって、
既存壁水切板の上に設置される新設壁水切板と、前記新設壁水切板の内側に浸入した水を堰き止める堰止部材と、を備えており、
前記新設壁水切板は、前記既存屋根材が当接する前記側壁に沿って立ち上がる立上板部と、前記立上板部の下端部に連続して横方向に広がる上面板部と、前記上面板部の先端部に連続して垂れ下がる端面板部とを有し、
前記端面板部には、前記新設壁水切板の内外を連通させる通気孔が形成され、
前記堰止部材は、前記通気孔に対向する位置で前記上面板部の下面に取り付けられている
ことを特徴とする水切部材。
【請求項6】
前記堰止部材は、断面へ字形状を呈しており、前記上面板部の下面に当接する当接板部と、前記当接板部に対して屈曲し前記通気孔に対向する対向板部とを備えている
ことを特徴とする請求項5記載の水切部材。
【請求項7】
既存屋根材の上に新設屋根材を設置する新設屋根設置工程と、
前記新設屋根材側の端部に通気孔が形成された新設壁水切板に、前記通気孔に対向する堰止部材を取り付けて水切部材を形成する水切部材形成工程と、
前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁部との取り合いにおいて、既存壁水切板の上に複数の支持部材を間隔をあけて設置する支持部材設置工程と、
前記堰止部材が隣り合う前記支持部材の間に位置するように、前記新設壁水切板を前記支持部材の上に設置する水切部材設置工程と、を備えている
ことを特徴とする屋根改修構造の構築方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根改修構造、水切部材および屋根改修構造の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧スレート屋根を用いた既存屋根の改修工法としては、既存の化粧スレート屋根を残し、その上に新しい屋根を葺く「カバー工法」が知られている(例えば非特許文献1および特許文献1参照)。カバー工法では、既存の屋根材の上に粘着性の下葺材を敷設し、新設の屋根材を設置している。勾配屋根の水上や側部における外壁(側壁)との取り合い部分では、既存の壁水切板の上に下地板を新設し、この下地板を覆うように新たな壁水切板を設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「鋼板製屋根構法標準 SSR2007」社団法人日本金属屋根協会、社団法人日本鋼構造協会、2008年1月、p308-316
【0004】
【特許文献1】特開2017-172156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1の改修工法では、防水性能は確保されているものの、側壁の通気性能が確保されていない。新設の屋根構造において確保されていた側壁の通気性能が、改修後に失われるのは好ましくない。また、台風等の強風時に水切板の内部に雨水が浸入して逆流することも好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、側壁内部の通気性能および排水性能を確保できるとともに、側壁内部への雨水の逆流を防止できる屋根改修構造、水切部材および 屋根改修構造の構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための第一の本発明は、既存屋根材の上に設置される新設屋根材と、前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁との取り合いにおいて既存壁水切板の上に設置される新設壁水切板と、前記新設壁水切板を支持する支持部材と、前記新設壁水切板の内側に浸入した水を堰き止める堰止部材と、を備えており、前記新設壁水切板は、前記新設屋根材側の端部に形成された通気孔を有し、前記支持部材は、前記既存壁水切板の上に所定の間隔をあけて複数設置されており、前記堰止部材は、隣り合う前記支持部材同士の間で前記通気孔に対向する位置に設けられていることを特徴とする屋根改修構造である。
【0008】
本発明の屋根改修構造によれば、隣り合う支持部材間の隙間を通して側壁内部の通気性能を確保することができる。なお、本明細書中において「通気性能」とは、側壁内部の一定量の空気を外部に排出できること、および側壁内部と外部との空気の吸入・排出(吸排出)をできることを言う。また、隣り合う支持部材間の隙間を通して側壁内に浸入した水を排水する排水性能も確保できる。さらに、既存屋根材の上に新設屋根材を設置しているので、防水性能も確保できる。堰止部材を通気孔に対向して設けたことによって、通気孔から雨水等が浸入したとしても堰止部材で堰き止めることができる。したがって、側壁内部への雨水の逆流を防止することができる。
【0009】
本発明の屋根改修構造においては、前記新設壁水切板は、前記既存屋根材が当接する前記側壁に沿って立ち上がる立上板部と、前記支持部材の上面を覆う上面板部と、前記支持部材の前記新設屋根材側の端面を覆う端面板部とを有し、前記通気孔は、前記端面板部に形成され、前記堰止部材は、前記上面板部の下面に取り付けられているものが好ましい。このような構成によれば、隣り合う支持部材間の隙間で堰止部材の周囲を通過した空気を通気空間から外部に効率的に排出できるので、通気性能が高くなる。
【0010】
また、本発明の屋根改修構造においては、前記堰止部材は、断面へ字形状を呈しており、前記上面板部の下面に当接する当接板部と、前記当接板部に対して屈曲し前記通気孔に対向する対向板部とを備えているものが好ましい。このような構成によれば、堰止部材の構成が簡素になり、新設壁水切板に堰止部材を設置し易くなる。
【0011】
さらに、本発明の屋根改修構造においては、前記通気孔は、横長のスリット形状を呈しており、前記端面板部の下端から上方に間隔をあけて配置されているものが好ましい。このような構成によれば、雨水が通気孔から新設壁水切板の内部に浸入し難くなる。
【0012】
前記課題を解決するための第二の本発明は、既存屋根材の上に設置される新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁との取り合いにおいて用いられる水切部材であって、既存壁水切板の上に設置される新設壁水切板と、前記新設壁水切板の内側に浸入した水を堰き止める堰止部材と、を備えており、前記新設壁水切板は、前記既存屋根材が当接する前記側壁に沿って立ち上がる立上板部と、前記立上板部の下端部に連続して横方向に広がる上面板部と、前記上面板部の先端部に連続して垂れ下がる端面板部とを有し、前記端面板部には、前記新設壁水切板の内外を連通させる通気孔が形成され、前記堰止部材は、前記通気孔に対向する位置で前記上面板部の下面に取り付けられていることを特徴とする水切部材である。
【0013】
本発明の水切部材によれば、通気孔を介して側壁内部の通気性能を確保することができる。堰止部材を通気孔に対向して設けたことによって、通気孔から雨水等が浸入したとしても堰止部材で堰き止めることができるので、側壁内部への雨水の逆流を防止することができる。
【0014】
本発明の水切部材においては、前記堰止部材は、断面へ字形状を呈しており、前記上面板部の下面に当接する当接板部と、前記当接板部に対して屈曲し前記通気孔に対向する対向板部とを備えているものが好ましい。このような構成によれば、堰止部材の構成が簡素になり、新設壁水切板に堰止部材を設置し易くなる。
【0015】
前記課題を解決するための第三の本発明は、既存屋根材の上に新設屋根材を設置する新設屋根設置工程と、前記新設屋根材側の端部に通気孔が形成された新設壁水切板に、前記通気孔に対向する堰止部材を取り付けて水切部材を形成する水切部材形成工程と、前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁部との取り合いにおいて、既存壁水切板の上に複数の支持部材を間隔をあけて設置する支持部材設置工程と、前記堰止部材が隣り合う前記支持部材の間に位置するように、前記新設壁水切板を前記支持部材の上に設置する水切部材設置工程と、を備えていることを特徴とする屋根改修構造の構築方法である。
【0016】
本発明の屋根改修構造の構築方法によれば、隣り合う支持部材間の隙間を通して側壁内部の通気性能を確保することができる。また、隣り合う支持部材間の隙間を通して側壁内に浸入した水を排水する排水性能も確保できる。さらに、既存屋根材の上に新設屋根材を設置しているので、防水性能も確保できる。通気孔から雨水等が浸入したとしても堰止部材で堰き止めることができるので、側壁内部への雨水の逆流を防止することができる。また、新設壁水切板に予め堰止部材を取り付けて水切部材を形成してから、水切部材(堰止部材が固定された新設壁水切板)を設置するので、現場施工の手間と時間を軽減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る屋根改修構造、水切部材および屋根改修構造の構築方法によれば、側壁内部の通気性能および排水性能を確保できるとともに、側壁内部への雨水の逆流を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造を示した一部破断斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造を桁方向から見た断面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造を流れ方向から見た断面図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造の水切部材を示した斜視図である。
図5】(a)は既存屋根材を示した断面図、(b)は本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造の構築方法の新設屋根設置工程のうち改修粘着下葺材を敷設した状態を示した断面図である。
図6】(a)は本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造の構築方法の新設屋根設置工程のうち新設屋根材を敷設した状態を示した断面図、(b)は両面テープ敷設工程を示した断面図である。
図7】(a)は本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造の構築方法の支持部材設置を示した断面図、(b)は水切部材設置工程を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第一の実施形態に係る屋根改修構造、水切部材および屋根改修構造の構築方法について、図面を参照しながら詳細を説明する。まず、屋根改修構造および水切部材の構成を説明する。本実施形態に係る屋根改修構造は、既存屋根材を残した状態で新設屋根材を設置する改修構造である。図1乃至図3に示すように、屋根改修構造1は、既存屋根材10の上に設置される新設屋根材20と、支持部材40と、新設壁水切板50と、堰止部材70と、取合水切板60とを備えている。
【0020】
既存屋根材10は、改修前に構築されている板材であって、垂木(図示せず)上に設置された野地板11の上に、下葺材12を介して複数枚敷設されている。既存屋根材10は、野地板11に釘を用いて固定されている。下葺材12は、側壁14の下地14aの表面まで延在し、下地14aに沿って所定高さ立ち上がっている。具体的には、下葺材12の立上り寸法は200mm程度であり、後記する既存壁水切板16の立上り部16aの上端より50mm程度高く立ち上がっている。既存屋根材10の水勾配方向の上縁部および側縁部において、側壁14との取り合い部分には、笠木15が敷設され、笠木15上に既存壁水切板16が設置されている。既存壁水切板16の上端の立上り部16aは、側壁14の表面板材14bの下地縦材14cの内側に配置されている。下地縦材14cは、所定間隔をあけて表面板材14bの裏面側に配設されている。隣り合う下地縦材14cの間は、側壁14の内部で上下方向に広がる側壁通気層17(図1参照)となっている。側壁通気層17は、側壁14の下端部で、下方に向かって開口している。
【0021】
新設屋根材20は、撤去されず残置した既存屋根材10の上に新設される板材である。新設屋根材20は、既存屋根材10の上に、改修粘着下葺材21を介して複数枚敷設されている。改修粘着下葺材21は、下葺材の裏面に粘着層と剥離紙を備えて構成されており、施工時に剥離紙を剥がして既存屋根材10に貼りつけられる。改修粘着下葺材21は、既存屋根材10の表面から既存壁水切板16の表面に渡って敷設されている。新設屋根材20は、改修粘着下葺材21にて既存屋根材10の上に接着されるとともに、既存屋根材10および野地板11に釘を用いて固定されている。釘の先端部は、既存屋根材10を貫通して野地板11まで延在している。なお、新設屋根材20は、粘着性の改修粘着下葺材21を用いず、粘着層を有しない下葺材を介して敷設してもよい。新設屋根材20の水勾配方向の上縁部(以下、「上縁部」という場合がある)および側縁部は、既存壁水切板16の横板部16bの先端部に連続する縦板部16cの近傍まで延在している。新設屋根材20の上縁部および側縁部の表面には、シーリング材22が敷設されている。シーリング材22は、新設屋根材20の上縁部および側縁部と、既存壁水切板16の縦板部16cとを覆う不定形のシール材であって、縦板部16cの長手方向に沿って設けられている。シーリング材22は、既存壁水切板16の縦板部16cと新設屋根材20との隙間を埋めるように設けられている。
【0022】
支持部材40は、新設壁水切板50を支持する部材であって、ブロック状の木材にて構成されている。図4にも示すように、支持部材40は、既存壁水切板16の長手方向に延在する長尺の直方体形状を呈しており、既存壁水切板16の長手方向に沿って所定の間隔をあけて複数敷設されている。支持部材40は、既存壁水切板16の横板部16bの先端部寄りの部分であって、側壁14の表面板材14bよりも外側に突出している部分の上面に敷設されている。支持部材40は、既存壁水切板16の横板部16bの上に敷設された防水性両面テープ31を介して既存壁水切板16に仮固定されている。支持部材40は、上面から下方に向かって打たれた釘またはビス(図示せず)によって固定されている。釘またはビスは、防水性両面テープ31を貫通して下方まで延在している。なお、防水性両面テープ31は、必ずしも必要なものではなく、場合によっては設けなくてもよい。
【0023】
新設屋根材20の側縁部に沿って設けられた新設壁水切板50に設けられる支持部材40は、水勾配の上側となる側面が、側壁から離れるに連れて水勾配の下流側になるように傾斜している(図示せず)ことが好ましい。これによって、上下に隣り合う支持部材40,40間に流れ込んだ水が側壁14側に流れるのを抑制している。なお、水勾配の上側となる支持部材40の側面は傾斜していないものであってもよい。
【0024】
新設壁水切板50は、図1乃至図3に示すように、既存壁水切板16の上方で、支持部材40、と隣り合う支持部材40,40間の空間Sを覆う水切材であって、側壁14の表面を流れた水を新設屋根材20上に流す。図5にも示すように、新設壁水切板50は、金属製の板材を折曲げ加工して形成されており、立上板部51と上面板部52と端面板部53とを有している。
【0025】
立上板部51は、新設壁水切板50を側壁14に固定する部位であって、側壁14の表面板材14bに沿って立ち上がって、表面板材14bの下端部に当接して固定されている。立上板部51の上端部には、側壁14から離間する方向に突出するリップ部54が形成されている。なお、新設壁水切板50は、立上板部51の上端部にリップ部54が無い形状であってもよい。
【0026】
上面板部52は、支持部材40の上面と、隣り合う支持部材40,40間の空間Sを覆う部位である。上面板部52は、立上板部51の下端部に連続して形成され、立上板部51に対して新設屋根材20側に向かって屈曲している。新設屋根材20の上縁部に設けられた新設壁水切板50の上面板部52は、立上板部51に対して鈍角で屈曲し、先端側が斜め下方に傾斜している(図2参照)。新設屋根材20の側縁部に設けられた新設壁水切板50の上面板部52は、立上板部51に対して直角で屈曲している(図3参照)。上面板部52は、支持部材40を覆う部分から支持部材40および既存壁水切板16に向けてビス止めされて固定されている。このとき、ビスの先端部が既存壁水切板16の横板部16bを貫通するが、横板部16bの表面に防水性両面テープ31が敷設されていることで、横板部16bに形成されたビス孔とビスとの隙間が防水性両面テープ31で塞がれて、防水性を確保することができる。
【0027】
端面板部53は、支持部材40の新設屋根材20側の端面と、隣り合う支持部材40,40間の空間Sを新設屋根材20側から覆う部位である。端面板部53は、上面板部52の先端部に連続して形成され、下方に向かって直角に屈曲している。端面板部53は、支持部材40の端面に当接または近接している。端面板部53には、通気孔55が形成されている。
【0028】
通気孔55は、側壁14の側壁通気層17の空気を外部に通気させるための孔であって、前記空間Sに対向する位置に配置されており、支持部材40に対向する位置には形成されていない。通気孔55は、側壁14内に浸入した水を排水する機能も備えている。通気孔55は、横長のスリット形状を呈しており、新設壁水切板50の長手方向に沿って所定の間隔をあけて複数形成されている。通気孔55は、端面板部53の下端部に形成されており、端面板部53の下端から上方に一定間隔の間隔(通気孔55の高さ寸法と同等の間隔)をあけて配置されている。端面板部53の下端部には、シーリング材22を覆うスカート部56が形成されている。スカート部56は、端面板部53の下端部に連続して形成され、端面板部53に対して鈍角で屈曲し、先端側が斜め下方に傾斜している。スカート部56の先端部は、新設屋根材20の表面に当接または近接している。スカート部56とその内側のシーリング材22によって、雨水等が支持部材40側に逆流するのを抑制している。また、通気孔55が端面板部53の下端から一定間隔の高さに形成したことで、下流側から吹き込んだ雨水等の浸入を阻止するとともに、剛性の低下を抑制している。
【0029】
堰止部材70は、通気孔55から新設壁水切板50の内部に浸入した雨水等を堰き止める部材であって、側壁14の内部への雨水等の逆流を防止する。堰止部材70は、隣り合う支持部材40,40同士の間の空間Sで通気孔55に対向する位置に設けられている。堰止部材70は、断面へ字形状を呈しており、新設壁水切板50の長手方向に沿って延在している。堰止部材70は、通気孔55の幅より大きい長手方向寸法を備え、複数の通気孔55に跨って配置されている。堰止部材70は、当接板部71と、対向板部72とを備えている。当接板部71は、上面板部52の下面に当接する板状部であって、上面板部52に沿って配置されている。当接板部71は、上面板部52に溶接またはビス止めされて固定されている。対向板部72は、当接板部71に対して鈍角で屈曲し、斜め下方に延在している。対向板部72は、通気孔55に対向し、通気孔55の内側部分を覆っている。対向板部72の先端部は、通気孔55の下端部よりも下側に位置するのが好ましい。
【0030】
堰止部材70は、工場または施工現場にて、新設壁水切板50の設置前に予め上面板部52に固定される。新設壁水切板50と堰止部材70とで、一体化された水切部材80が構成されている。
【0031】
取合水切板60は、新設壁水切板50の上端部を覆う水切りであって、新設壁水切板50の上方の側壁14の表面板材14bに取り付けられている。取合水切板60は、新設壁水切板50の上端部に水が流れるのを抑制する部材である。取合水切板60は、当接板部61と張出板部62と垂下板部63とを備えている。当接板部61は、取合水切板60を側壁14に固定する部位であって、新設壁水切板50の上方で側壁14の表面板材14bに沿って立ち上がって、表面板材14bに当接して固定されている。張出板部62は、新設壁水切板50の立上板部51の上端部を上方から覆う部位である。張出板部62は、当接板部61の下端部に連続して形成され、側壁14から離間する方向に屈曲して張り出している。垂下板部63は、新設壁水切板50の立上板部51の上端部を側方から覆う部位である。垂下板部63は、張出板部62の先端部に連続して形成され、下方に向かって直角に屈曲している。垂下板部63の下端部は、立上板部51の上端より低い位置に配置されている。
【0032】
次に、本実施形態に係る屋根改修構造1の構築方法を図5乃至図7を参照しながら説明する。かかる屋根改修構造1の構築方法は、新設屋根設置工程と、水切部材形成工程と、両面テープ敷設工程と、通気部材設置工程と、水切部材設置工程と、取合水切板設置工程とを備えている。
【0033】
新設屋根設置工程は、既存屋根材10の上に新設屋根材20を設置する工程である。既存屋根材10は、図5の(a)に示すように、野地板11の上に、下葺材12を介して敷設されている。既存屋根材10と側壁14との取り合い部分には、笠木15が敷設され、笠木15上に既存壁水切板16が設置されている。新設屋根材20を設置するには、まず、図5の(b)に示すように、既存屋根材10の上に改修粘着下葺材21を敷設する。改修粘着下葺材21の先端部は、既存壁水切板16の縦板部16cに沿って立ち上がり、横板部16bの上面まで延在している。その後、図6の(a)に示すように、改修粘着下葺材21の上に新設屋根材20を敷設し、新設屋根材20の端部にシーリング材22を塗布する。シーリング材22は、新設屋根材20の端縁部と、既存壁水切板16の縦板部16cとの隙間を覆うように塗布する。
【0034】
水切部材形成工程は、図4に示すように、新設壁水切板50に堰止部材70を取り付けて水切部材80を形成する工程である。水切部材形成工程では、工場または施工現場にて、新設壁水切板50の設置前に予め堰止部材70を新設壁水切板50の上面板部52に固定する。具体的には、上面板部52の下面で、通気孔55の後方に相当する位置に、当接板部71を当接させて溶接またはビス止めにより固定する。
【0035】
両面テープ敷設工程は、図6の(b)に示すように、新設屋根材20の上縁部および側縁部(図6では上縁部を示す)と、側壁14との取り合いにおいて、既存壁水切板16の上に防水性両面テープ31を敷設する工程である。防水性両面テープ31は、支持部材40を既存壁水切板16に接着するためのものであって、既存壁水切板16の横板部16bの上面に貼り付ける。防水性両面テープ31の新設屋根材20側の先端部は、横板部16bに敷設された改修粘着下葺材21の表面に貼り付けられ、横板部16bの先端まで延在している。なお、防水性両面テープ31を敷設しないこともある。この場合、両面テープ敷設工程は省略される。
【0036】
支持部材設置工程は、図7の(a)に示すように、防水性両面テープ31の上に、支持部材40とを設置する工程である。支持部材設置工程では、支持部材40を、防水性両面テープ31のうち、側壁14より外側となる横板部16bの先端部寄りに設置して仮固定する。そして、上面から下方に向かけて、支持部材40に釘またはビス(図示せず)を打って固定する。釘またはビスは、防水性両面テープ31を貫通して下方まで打ち込む。釘またはビスの先端部は、表面に防水性両面テープ33を貫通することで、釘孔と釘(ビス孔とビス)との隙間が防水性両面テープ33で塞がれて、防水性を確保することができる。
【0037】
水切部材設置工程は、図7の(b)に示すように、堰止部材70が隣り合う支持部材40,40の間の空間Sに位置するように、新設壁水切板50を支持部材40の上に設置する工程である。水切部材設置工程では、上面板部52が支持部材40を覆うように新設壁水切板50を設置し、新設壁水切板を支持部材40と側壁14に固定する。具体的には、新設壁水切板50の立上板部51を側壁14の表面板材14bに当接して釘止めまたはビス止めするとともに、上面板部52を支持部材40に載置して釘止めまたはビス止めする。側壁14とリップ部54とで構成される入隅部には、シール材を設ける。釘またはビスの先端部は、支持部材40と既存壁水切板16の横板部16bを貫通する。横板部16bに形成された釘孔と釘との隙間またはビス孔とビスとの隙間は、防水性両面テープ31で塞がれる。新設壁水切板50の端面板部53は、支持部材40の新設屋根材20側の端面に近接して覆うとともに、隣り合う支持部材40,40間の空間Sの前面を覆う。端面板部53には通気孔55が形成されているので、側壁14の側壁通気層17は、空間Sのうち堰止部材70の下側の隙間と、通気孔55を介して外気に繋がる。よって、側壁14内と外部との通気性を確保できる。また、堰止部材70が通気孔55の内側を覆うので、通気孔55から浸入した水が側壁14側へ流れるのを抑制できる。
【0038】
取合水切板設置工程は、新設壁水切板50の上方に取合水切板60を設置する工程である。取合水切板設置工程では、図2に示すように、新設壁水切板50の上方の側壁14の表面板材14bに取合水切板60の当接板部61を接着する。当接板部61の上端部の接着面にはシール材を敷設しておく。これによって、取合水切板60の張出板部62と垂下板部63とが新設壁水切板50の上端部を覆って、新設壁水切板50の上端部に水が流れるのが抑制される。取合水切板60を設置すると、屋根改修構造1の構築が完了する。
【0039】
本実施形態の屋根改修構造1、水切部材80および屋根改修構造の構築方法によれば、隣り合う支持部材40,40間の空間Sを通して、側壁14の内部と外部との通気性能を確保することができる(側壁14内の一定量の空気を排水できるとともに、側壁14の内部と外部とで空気の吸入および排出が行える)。また、新設壁水切板50の端面板部53に通気孔55が形成されていることによって、空間Sを外気につなげることができる。さらに、堰止部材70が新設壁水切板50の上面板部52の下面に固定されているので、側壁14内の空気を、空間Sのうち堰止部材70の下方の隙間と通気孔55から外部に効率的に排出できるとともに、外部の空気を内部に吸入することができる。したがって、通気性能をより一層高めることができる。
さらに、支持部材40が一定の間隔で配置されているので、新設壁水切板50を安定した状態で釘止めまたはビス止めすることができる。
【0040】
また、本実施形態では、空間Sのうち堰止部材70の下方の隙間を通して側壁14の内部に浸入した水を通気孔55から外部に排水できる。つまり、通気性能に加えて排水性能も確保することができる。
さらに、堰止部材70を通気孔55に対向して設けたことによって、通気孔55から雨水等が浸入したとしても堰止部材70で堰き止めることができる。したがって、側壁14の内部への雨水の逆流を防止することができる。また、本実施形態では、堰止部材70は、通気孔55の幅よりも長く形成されているので、雨水等の堰止性能が高くなっている。
【0041】
堰止部材70は、断面へ字形状を呈し、当接板部71と対向板部72とを備えて構成されているので、堰止部材70の構成が簡素になり、堰止部材70の製造が容易になるとともに、新設壁水切板50に堰止部材70を設置し易くなる。さらに、現場での堰止部材70のカット等を行うことができ、施工性が良好になる。
通気孔55は、横長のスリット形状を呈しており、端面板部53の下端から上方に間隔をあけて配置されているので、雨水が通気孔55から新設壁水切板50の内部に浸入し難くなる。
【0042】
また、既存屋根材10を残置し、その上に新設屋根材20および新設壁水切板50を設置しているので、防水構造が二重になり、防水性能も高めることができる。また、既存壁水切板16の表面に、防水性両面テープ31が敷設されているので、既存壁水切板16の表面に支持部材40を仮固定して安定した状態で、釘止めまたはビス止めすることができる。さらに、新設壁水切板50を支持部材40と既存壁水切板16に釘止めまたはビス止めする際に、防水性両面テープ31が既存壁水切板16の釘孔またはビス穴に入り込むので、止水性を確保できる。
【0043】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記第一実施形態では、新設壁水切板50の通気孔55が横長のスリット形状であるが、通気孔の形状はこれに限定されるものではない。例えば、縦長のスリット形状であってもよいし、円形であってもよい。
また、前記実施形態では、通気孔55は、隣り合う支持部材40,40間の空間Sに相当する部分のみに形成されているが、これに限定されるものではなく、新設壁水切板50の全長に亘って所定間隔で形成されていてもよい。このような構成によれば、堰止部材70の設置位置を自由に変更することができる。
【0044】
さらに、前記実施形態では、堰止部材70は、断面へ字形状であるがこれに限定されるものではない。例えば、当接板部と対向板部との角度が直角の断面L字形状であってもよいし、断面門型形状や断面ロ型形状等の他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 屋根改修構造
10 既存屋根材
14 側壁
16 既存壁水切板
20 新設屋根材
31 防水性両面テープ
40 支持部材
50 新設壁水切板
51 立上板部
52 上面板部
53 端面板部
55 通気孔
60 取合水切板
70 堰止部材
71 当接板部
72 対向板部
80 水切部材
S (隣り合う支持部材同士の間の)空間

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7