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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089569
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】移動観覧席
(51)【国際特許分類】
   E04H 3/12 20060101AFI20240626BHJP
   A47C 1/126 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
E04H3/12 B
A47C1/126
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204984
(22)【出願日】2022-12-21
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】510274430
【氏名又は名称】コトブキシーティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】田中 健史
【テーマコード(参考)】
3B099
【Fターム(参考)】
3B099FA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】座席の取り付け、取り外しが容易で、レイアウト変更が可能な移動観覧席を提供することを目的とする。
【解決手段】移動観覧席100は、上下方向に間隔を置いて水平配置した複数段の床台10と、床台10の各段に左右方向に配列される複数の座席20と、床台10の各段に設けられ、床台10を支持し、前後方向に移動可能な複数の脚部とを備え、複数の脚部が連携して進退変位することにより、複数段の床台10が階段状に展開した展開位置と、上下方向に整列した収納位置との間を展開・収納可能な移動観覧席100であって、座席20はクッション性素材で構成され、床台10の各段の前端部に、工具を使用することなく着脱可能に取り付けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に間隔を置いて水平配置した複数段の床台と、前記床台の各段に左右方向に配列される複数の座席と、前記床台の各段に設けられ、前記床台を支持し、前後方向に移動可能な複数の脚部とを備え、
前記複数の脚部が連携して進退変位することにより、前記複数段の床台が階段状に展開した展開位置と、前記複数段の床台が前記上下方向に整列した収納位置との間を展開・収納可能な移動観覧席であって、
前記座席はクッション性素材で構成され、前記床台の各段の前端部に、工具を使用することなく着脱可能に取り付けられていることを特徴とする移動観覧席。
【請求項2】
前記座席は、前記床台の前記前端部に設けられた面ファスナーにより着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の移動観覧席。
【請求項3】
前記座席は、長辺部と短辺部を備えるL字の立体形状を有し、前記L字の内角をなす長辺部内面と短辺部内面において、前記長辺部内面が床台の上面に当接し、前記短辺部内面が前記床台の前端と当接するように、前記床台に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の移動観覧席。
【請求項4】
前記床台の各段は、ステップを備え、
前記移動観覧席は、前記座席が配置された座席領域と、前記座席が配置されず、前記ステップが配置された通路領域とを有し、
前記座席領域と、前記通路領域とのレイアウトが変更可能となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の移動観覧席。
【請求項5】
前記床台の各段は、ステップを備え、
前記移動観覧席は、前記座席が配置された座席領域と、前記座席が配置されず、前記ステップが配置された通路領域とを有し、
前記座席領域と、前記通路領域とのレイアウトが変更可能となっていることを特徴とする請求項3に記載の移動観覧席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動観覧席に関する。より詳細には、床台を階段状に展開収納可能な移動観覧席に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高さの異なる複数段の床台を全体的に階段状に展開された展開位置と、全体的に上下方向に整列する収納位置との間で、互いに連動して前後移動可能な移動観覧席が知られている。
【0003】
このような移動観覧席には、所要に応じて、背もたれ付きの椅子や、背もたれのないベンチタイプのものが、単独の椅子、又は連結椅子の形で取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-152917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、ベンチタイプの連続椅子を配設することで所定数の観客の着座を可能ならしめている。従来の移動観覧席では、これらの椅子は、構造上や安全性の問題から、床台の上に固定用の基部を設け、ねじ止め等により強固に固定されている。座席を変更したり、座席を取り外して雛壇として使用したりするために座席の取り付け、取り外しを行う場合には、メーカーや、専門業者に依頼して、工具を用いた大掛かりな作業が必要であった。
【0006】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、座席の取り付け、取り外しが容易で、レイアウト変更が可能な移動観覧席を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様にかかる移動観覧席は、上下方向に間隔を置いて水平配置した複数段の床台と、前記床台の各段に左右方向に配列される複数の座席と、前記床台の各段に設けられ、前記床台を支持し、前後方向に移動可能な複数の脚部とを備え、前記複数の脚部が連携して進退変位することにより、前記複数段の床台が階段状に展開した展開位置と、前記複数段の床台が上下方向に整列した収納位置との間を展開・収納可能な移動観覧席であって、前記座席はクッション性素材で構成され、前記床台の各段の前端部に、工具を使用することなく着脱可能に取り付けられている。
【0008】
上記態様において、前記座席は、前記床台の前端部に設けられた面ファスナーにより着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0009】
上記態様において、前記座席は、長辺部と短辺部を備えるL字の立体形状を有し、前記L字の内角をなす長辺部内面および短辺部内面において、前記長辺部内面が床台の上面に当接し、前記短辺部内面が前記床台の前端と当接するように、前記床台に取り付けられていてもよい。
【0010】
上記態様において、前記床台の各段は、ステップを備え、前記移動観覧席は、前記座席が配置された座席領域と、前記座席が配置されず、前記ステップが配置された通路領域とを有し、前記座席領域と、前記通路領域とのレイアウトが変更可能となっていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
上記態様に係る移動観覧席によれば、座席の取り付け、取り外しが容易で、レイアウト変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る移動観覧席の展開位置における斜視図である。
図2】同移動観覧席の展開位置における側面図であり、(A)は、座席を取り付けた状態を示し、(B)は座席を取り外した状態を示す。
図3】同移動観覧席の収納位置における側面図であり、(A)は、座席を取り付けた状態を示し、(B)は座席を取り外した状態を示す。
図4】同移動観覧席の座席を説明する図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図、(C)は正面図、(D)は、背面図である。
図5】同移動観覧席の使用形態の例を説明する図であり、(A)は第1の使用形態の、(B)は第2の使用形態に、(C)は第3の使用形態の、(D)は第4の使用形態の、(E)は、第5の使用形態を示す。
図6】同実施の形態の変形例に係る移動観覧席における斜視図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る移動観覧席の座席および座席を設置する床台の一部を示す図であり、(A)は座席の平面図、(B)は床台の一部の平面図、(C)は座席の側面図、(D)は床台の一部の側面図である。
図8】(A),(B)は、同移動観覧席の、座席の床台への取り付けを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る移動観覧席を、図面に基づく実施例に従って説明する。なお、実施の形態は例示であって本発明はこれに限定されない。また、以下の実施例の説明において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0014】
本明細書において、移動観覧席の「前」は、使用位置において最下段に向かう方向を、「後」は最上段に向かう方向を、「左」とは前を向いた時の左方を、「右」は同右方をいう。
【0015】
また、各図において複数ある同一の部材を示す符号は必要に応じて適宜省略する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1~5を参照して、第1の実施の形態に係る移動観覧席100を説明する。移動観覧席100は、学校の講堂、体育館等の床面FL上に設置されて観客席として使用される。なお、後述するように、本実施の形態に係る移動観覧席100は、座席20のレイアウトが変更可能に構成されているが、最初に標準の使用形態である第1の使用形態について説明する。
【0017】
図1,2に示すように、移動観覧席100は、概略として、上下方向に段差となる間隔をあけて配置される複数段の床台10と、各床台10上に配置される複数の座席20と、最上段の床台10tを除く各床台10を水平状態で前後方向に移動可能に支持する脚部30と、最上段の床台10tを支持し、壁面または壁面内等の収納スペースに固定される固定部40とを備える。
【0018】
移動観覧席100は、図1に示す第1の使用形態において、最上段の床台10tおよび各段の床台10には、所定の数の座席20が、前後方向に整列するように左右方向に配列された座席領域SAと、座席20を備えない通路領域AAを備える。通路領域AAでは、各段の床台10の左右方向の同じ位置に、段差の略半分の高さのステップ11が載置されている。ステップ11は、底面が開口した矩形の箱状部材であり、上面の後端部を除く周縁部および、通路領域の床台10の前端部には、例えばゴムまたはシリコーン製の細幅の帯状の滑り止め12、13が設けられている。底部にもゴムまたはシリコーン製の滑り止め(図示せず)を備える。また、移動観覧席100の側面には、内部構造を目隠しするための着脱可能な側板14を備えてもよい。
【0019】
移動観覧席100は、脚部30が互いに連携して進退変位することにより、図1図2(A),(B)に示す展開位置と、図3(A),(B)に示す収納位置との間を展開・収納可能に構成されている。展開位置では、移動観覧席100を構成する複数段の床台10が1段ずつ階段状に展開しており、収納位置では、複数段の床台10が全体的に上下に整列している。
【0020】
図2(A),(B)に示すように、各床台10は水平方向に延在し、移動観覧席100の左右方向に水平に延在する貫材15の下端部に支持されている。また、床台10は、床台10の左右方向に間隔をもって配置され、貫材15の下端部から前方向に水平に延在する縦梁16を備える。
【0021】
最上段の床台10tは、(詳細な図示は省略するが、)貫材15に結合され、下方に向かって鉛直に延在する、少なくとも左右一対の支柱41を備える。また、各支柱41の基部から貫材15の方向へ斜めに延在し、貫材15の背面で、最上段の床台10tを支持する筋交い42を備える。このように固定部40は、最上段の床台10tを片持ち状に支持している。支柱41の下端部は、前後方向に延在する台座43に結合されており、台座43は床面FLに固定され、支柱41は壁面Wに固定具44により固定されている。
【0022】
脚部30は、貫材15の背面に結合され、支柱41と同等の少なくとも左右一対の支柱31を備える。また、脚部30は、筋交い42と同等の筋交い32を備える。このように、脚部30は、床台10を片持ち状に支持している。
【0023】
支柱31は、最上段の床台10tに結合された支柱41から下段に向かうごとに、段差分ずつ短くなっている。また、各対の支柱31の横方向の間隔は、最上段の床台10tに結合されものから床台10毎に、台車33の横幅の略2倍ずつ狭くなっている。台車33は、それぞれ複数のローラ(図示せず)を備え、前後方向に進退変位できるようになっている。
【0024】
そして、図3(A),(B)の収納位置から、1段目の台車33を前進させると、台車33は、1つ上の段の係合部材34と係合することにより、連携して階段状に展開することが可能となっている。また、図2(A),(B)の展開位置から、1段目の台車を後退させると、順次係合部材34の係合が解除され、収納位置に移動することが可能となっている。収納、展開は、手動であってもよいが、自動であってもよい。
【0025】
図4(A)は、座席20の斜視図、図4(B)は同側面図、図4(C)は同正面図、図4(D)は同低面図である。図4(B)では、座席20を取り付けた状態の床台10を破線で示している。図4(A)~図4(D)に示すように、座席20は、共に略直方体形状を有し、互いに直交する長辺部21と短辺部22とを備えるL字の立体形状を有する。L字の内角を形成する長辺部内面23および短辺部内面22aにおいて、前記長辺部内面23が床台10の上面に当接し、短辺部内面22aが床台10の前端10aと当接するように、床台10に取り付けられている。すなわち、取付状態において、長辺部21の上面が座面となる。この結果、図4(B)に示すように、座席20は、短辺部22の前後方向の長さ(短辺部22の厚み)dだけ、床台10の前端10aから前方に突出している。また、図4(C)に示すように、座席20は、正面視が短辺部22外面の矩形形状を示す。これにより、移動観覧席100は、座席20を配列したときに、正面視で矩形形状の座席20が配列された特有の外観を示す。また、座席20は、ウレタン等のクッション性素材で一体に形成されている。
【0026】
座席20の底面(長辺部内面)23の前端部には、左右1対の面ファスナー24が取り付けられている。また、座席20は図示しないカバーを備えていてもよい。この場合、カバーを着脱式とすることで、座席20が汚れた際の取替を容易にすることができる。また、配色の異なるカバーを用意すれば、取り換えることで、移動観覧席100の全体の外観を容易に変更することができる。面ファスナー24は、接着剤や、カバーに縫い付けることにより座席20に取り付けられている。面ファスナー24は、座部の左右方向の全長に亘る1本の面ファスナーを用いてもよいが、左右1対とすることが、固定強度と着脱の容易さの兼合いから好ましい。
【0027】
座席20の前後方向および左右方向の寸法は、図示の例ではそれぞれが1名分の座席として利用可能な寸法となっている。しかし、これに限らず、左右方向の寸法を複数名分の座席として利用可能な寸法にしてもよい。また、全ての座席20を同じ寸法とする必要はなく、1名分の座席と複数名分の座席とを組み合わせて用いてもよい。座席20の前後方向の寸法は、床台10の前後方向の寸法の略半分とされ、座席20の後方が、通路として利用可能になっている。座席20の底面(長辺部内面23)から座面(長辺部21の上面)までの高さは、床台10間の段差よりも小さく設計されており、座席20を載置した状態で、移動観覧席100を収納可能となっている。また、座席20を設置した床台10の1段下の床台10から、座面までの高さが、適切な座面高となるように設計されている。
【0028】
図1に示すように、各床台10の前端部の、座席20の面ファスナー24と対応する位置には、座席20側の面ファスナー24と対応する寸法の面ファスナー17が座席20を座席領域SAの左右方向に隙間なく配列したときに対応する位置となるように、接着剤または両面テープにより取り付けられている。また、リベットにより取り付けられていてもよい。
【0029】
これにより、座席20は、床台10の前端部に着脱可能に取り付けられている。すなわち、座席20を取り付ける際には、床台10の面ファスナー17と座席20の面ファスナー24を位置合わせして、座席20を載置するだけで、特別な道具を使用することなく、座席20を床台10に取り付け、固定することが可能である。
【0030】
また、座席20を取り外す際には、座席20の底面(長辺部内面)23の前端を支点として、座席20の後端部を持ち上げるように回転させることで、特別な工具を使用することなく、座席20を床台10から取り外すことが可能である。
【0031】
このような作業は、メーカーや専門業者に依頼することなく、移動観覧席100の使用者、例えば学校に設置する場合には、教師、さらには児童、生徒であっても容易に行うことができる。また、座席20は、金属や樹脂等を備えない、クッション性の材質で一体に形成されているため、このような作業に当たっての安全性が高くなっている。
【0032】
尚、面ファスナー17および24としては、着席時の動作によっては容易にずれることがなく、かつ、取り外し作業に支障がない程度の接着強度で接着可能なものを市場より適切に選択して使用することができる。例えば、一般的な、一方がフック面であり、他方がループ面であるものであってもよい。また、それぞれの面に、フックとループの両方が植え込まれた区別のないタイプを用いると、糸くずやごみ等の付着の影響による吸着力の低下が抑制できるので好ましい。
【0033】
上記構成により、移動観覧席100では、図1図2(A),図3(A)の第1の使用形態(標準使用形態)から座席を全て取り外して、図2(B),図3(B)の第2の使用形態(ひな壇)として使用することが可能である。
【0034】
移動観覧席100をひな壇として使用する場合には、床台10および最上段の床台10tの前端に取り付けた面ファスナー17が露出するが、面ファスナー17は、薄厚であるためほとんど突出せず、柔軟な素材であるため、使用者が引掛かったり、足を取られて怪我をする虞がない。それどころか、逆に、僅かな突出と面ファスナーの吸着性により滑り止めとしての機能を奏するので安全性が向上する。
【0035】
また、上記実施の形態に係る移動観覧席100では、座席20を1つ1つ独立して取り付け、取り外しすることができるので、一部の座席が汚損または破損した場合に、汚損または破損した座席20のみを取り外し、交換することが容易である。
【0036】
なお、上記実施の形態では、一例として、最上段の床台10tを含めて5段の床台を備え、各段に1つの通路領域AAと、2つの座席領域SAを有し、各座席領域SAには、3つの座席20を配置したものを図示して説明した。しかし、床台10の段数、1段の床台10に配置される座席20の数、および、通路領域および座席領域の数等は、必要に応じて設定することが可能であることはいうまでもない。
【0037】
さて、移動観覧席100では、座席20が着脱可能に取り付けられていることから、容易にレイアウトを変更することができる。図5(A)~(E)を参照して説明する。まず、図5(A)の中央に通路領域を設定し、左右に、それぞれ、座席20を4つずつ並べた座席領域SAを設定した形態を標準使用形態(第1の使用形態)とする。
【0038】
そして、図5(B)に示すように、全ての座席20を取り外した状態として、ひな壇として使用することができる(第2の使用形態)。図中、PAはひな壇領域を示す。
【0039】
さらに、図5(C)に示すように、第1の使用形態から、1つ飛ばしで座席20を取り外すことで、座席20が1席ごとに離隔した第3の使用形態とすることができる。
【0040】
また、図5(D)に示すように、第1の使用形態から、一方の座席を全て取り外して、座席領域SAの一方をひな壇領域PAとした、第4の使用形態とすることもできる。
【0041】
さらに、図5(E)に示すように、第1の使用形態の、各段の一方の座席領域SAから座席を2つ取り外して、他方の座席領域SAに移動させるとともに、ステップの位置を変更して通路領域を移動させることで、座席領域SAの大きさを変更した第5の使用形態とすることができる。この時、標準仕様形態で通路領域AAであった場所に座席20を配置する場合には、当該箇所に面ファスナー17を設置する必要があるが、面ファスナー17の取付は、両面テープなどでできるため、使用者も容易にすることが可能である。あるいは、予め第1の使用形態と、第5の使用形態とで使用することが予定されている場合には、製造時に、第1の使用形態の座席領域SAと、第5の使用形態の座席領域SAに対応する箇所に面ファスナー17が取り付けられていてもよい。なお、レイアウトの変更は、これに限らず、座席領域SAに配置する座席20の数、座席領域SAの数と通路領域AAの数、ひな壇領域PAの数を任意に変更することが可能である。
【0042】
近年では、感染症の流行等の状況に応じて、スペースに対して、着席する人数を変更したいという要望が増大している。従来の移動観覧席では座席数を減らす場合には、座席に「使用禁止」の表示等をすることにより座席数の変更に対応していた。しかし、特に学校等、使用者が児童などの場合には、そのような表示のみでは実効的ではない場合も多い。本実施の形態に係る移動観覧席100では、容易に座席を着脱できるため、このような要望に応じて、座席数自体を変更することが容易である。
【0043】
また、本実施の形態に係る移動観覧席100では、座席20を長辺部21と短辺部22を備えるL字の立体形状を有し、L字の内角をなす長辺部内面23と短辺部内面22aにおいて、長辺部内面23が床台10の上面に当接し、短辺部内面22sが床台10の前端10aと当接するように、床台10に取り付けるように構成した。これにより、壁面等の収納位置に収納されたときには、上下方向に整列した各段の座席20が、図3(A)に示すように、上下方向に整列した床台10の前端から、それぞれ短辺部22の厚みdだけ突出する。したがって、収納位置にあるときに、児童等が、床台の前端に衝突した場合の衝撃を和らげる役割を果たすという副次的な効果を奏することができる。
【0044】
(変形例)
図6は、第1の実施の形態の1つの変形例に係る移動観覧席100Aの展開位置における斜視図である。図6は、取り外した座席20を拡大して描画している。
【0045】
移動観覧席100Aは概略として、移動観覧席100と同等の構成を有するが、座席20が、L字の立体形状を有するのに対して、座席20Aが直方体形状であり、座席20の前面と、床台10の前端10aが面一になっている点で異なる。移動観覧席100Aにおいて、面ファスナー24は、座席20Aの底面23Aの前端部に配置されている。このように、座席20は側面L字形状に限定することなく、座席の取り付け、取り外しが容易で、レイアウト変更が可能な移動観覧席を提供するという本願特有の効果を奏することが可能である。このような変形は下記に説明する第2の実施の形態に係る座席220にも適用することができる。
【0046】
(第2の実施の形態)
図7は、第2の実施の形態に係る移動観覧席200の座席220と、床台210の座席220の取付位置に対応する部分を示す図である。座席220は、概略として第1の実施の形態に係る座席20と同様の構成を有するが、図7(A)、図7(C)に示すように、底面(長辺部21の内面)223に、面ファスナー24に代えてフック25を備える点で異なる。フック25は、円柱状の基端部25aと、基端部25aより拡径された半球状の頭部25bとを備え、底面223の前後方向中間部の左右2か所に底面223から突出するように設けられている。
【0047】
床台210も、概略として第1の実施の形態に係る床台10と同一であるため全体の図示は省略する。図7(B)、図7(D)に示す通り、床台210のフック25に対応する位置には、孔18が設けられている。孔18は、前端部18aがフック25の頭部25bより若干大きい円形で、後端部18bが前端部18aより狭幅となった鍵穴形状を有する。
【0048】
そして、座席220を取りつける際には、図8(A)に示すように、フック25の頭部25bを、孔18の前端部18aに位置合わせをして、フックの頭部25bを孔18の前端部18aに通す。そして、フックの頭部25bを孔18の後端部18bにガイドさせるように座席220を後方へ向けてスライドさせ、フック25の基端部25aが、孔18の後端に当接させる。このようにして、移動観覧席200では、工具を用いることなく、座席220を床台210から着脱可能になっている。このように、座席220の床台210への着脱手段は、面ファスナーに限らず、本実施の形態のようにフック25と床台210に設けた鍵穴形状の孔18を用いても、第1の実施の形態と同様に、座席の取り付け、取り外しが容易で、レイアウト変更が可能な移動観覧席を提供するという本願特有の効果を奏することが可能である。
【0049】
尚、図示の例では、床台210の孔18は鍵穴形状が前後方向に配置されているが、これに限らず、孔18の鍵穴形状が左右方向に配置されていてもよい。この場合、座席220のフック25の形状等に変更はなく、座席を左右方向にスライドさせることで、座席220を床台210から着脱可能である。
【0050】
(更なる変形例)
本実施の形態に係る移動観覧席には、さらに、以下のような変形を加えることも可能である。
(1)座席20,20Aとして、数種類の色の座席20を用意して、使用時の的に応じて各座席の色を変更することができるように構成する。例えば、試合の応援などの場合に、応援するチームごとに領域を分けて座席を配置して、エリアごとにそれぞれのチームの色の座席の色に変更する。また、単にデザイン的な観点から、色を変更することにより移動観覧席100全体の雰囲気を変化させることが可能である。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、また、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて技術常識と組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10 :床台
10t :床台(最上段)
11 :ステップ
17 :面ファスナー(床台側)
20,20A :座席
21 :(座席の)上面
22 :(座席の)前端部
23,23A :(座席の)底面
24 :面ファスナー(座席側)
30 :脚部
100,100A,200 :移動観覧席
AA :通路領域
SA :座席領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8