(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089571
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】液化ガス荷役支援方法、及び液化ガス荷役支援システム
(51)【国際特許分類】
B67D 9/00 20100101AFI20240626BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20240626BHJP
B63B 25/08 20060101ALI20240626BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20240626BHJP
G06Q 50/00 20240101ALI20240626BHJP
【FI】
B67D9/00 Z
B63B25/16 D
B63B25/16 A
B63B25/08 A
F17C13/00 302D
F17C13/00 302A
G06Q50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204986
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】吉松 雄太
(72)【発明者】
【氏名】前田 晴義
(72)【発明者】
【氏名】神谷 紀代乃
(72)【発明者】
【氏名】土屋 隼人
(72)【発明者】
【氏名】小山 優
(72)【発明者】
【氏名】池田 猛
(72)【発明者】
【氏名】中島 隆博
(72)【発明者】
【氏名】能瀬 隆行
【テーマコード(参考)】
3E083
3E172
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3E083BB20
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB11
3E172BA06
3E172BD01
3E172EA03
3E172EA12
3E172EA13
3E172EA22
3E172EA23
3E172EA48
3E172EB03
3E172EB17
3E172GA03
3E172HA03
3E172KA22
3E172KA23
5L049CC00
5L050CC00
(57)【要約】
【課題】状態量が目標値に達する時刻を船が貯蔵設備に着船する時刻に精度よく合わせることができる液化ガス荷役支援方法を提供する。
【解決手段】液化ガス荷役支援方法は、船と貯蔵設備とを互いに接続することによって船と貯蔵設備との間で行われる液化ガスの荷役を支援する液化ガス荷役支援方法であって、船が貯蔵設備に着船するまでに要する着船所要時間を取得する所要時間取得工程と、所要時間取得工程で取得した着船所要時間と船及び貯蔵設備の少なくとも一方における状態量の目標値とに基づいて、状態量を制御する状態量可変装置の制御値を設定する制御値設定工程と、を備え、所要時間取得工程では、船から取得する航行情報に基づいて着船所要時間を取得する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船と貯蔵設備とを互いに接続することによって前記船と前記貯蔵設備との間で行われる液化ガスの荷役を支援する液化ガス荷役支援方法であって、
前記船が前記貯蔵設備に着船するまでに要する着船所要時間を取得する所要時間取得工程と、
前記所要時間取得工程で取得した着船所要時間と前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方における状態量の目標値とに基づいて、状態量を制御する状態量可変装置の制御値を設定する制御値設定工程と、を備え、
前記所要時間取得工程では、前記船から取得する航行情報に基づいて着船所要時間を取得する、液化ガス荷役支援方法。
【請求項2】
前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方における状態量は、互いに接続することによって前記船と前記貯蔵設備との間で液化ガスの荷役を行うことを可能にする前記船の船側配管及び前記貯蔵設備の設備側配管の少なくとも一方の配管の温度を含み、
前記状態量可変装置は、前記配管を冷却する冷却装置を含み、
前記制御値設定工程は、前記配管の目標冷却温度と着船所要時間とに基づいて、前記冷却装置の制御値である冷却制御値が設定される冷却制御値設定工程を含む、請求項1に記載の液化ガス荷役支援方法。
【請求項3】
前記制御値設定工程では、前記配管に対する単位時間当たりの冷却レートが冷却条件を満たすように制御値を設定し、
前記冷却条件は、前記配管の冷却レートの絶対値が所定の許容冷却レート以下となることである、請求項2に記載の液化ガス荷役支援方法。
【請求項4】
前記制御値設定工程では、前記配管のモデルに基づいて算出される前記配管で発生するボイルオフガス量である配管内ガス量が第1ボイルオフガス-消費電力条件も満たすように前記冷却装置の冷却制御値が設定され、
前記第1ボイルオフガス-消費電力条件は、配管内ガス量と前記冷却装置の消費電力とに基づく評価関数が所定の配管許容量以下となることである、請求項2に記載の液化ガス荷役支援方法。
【請求項5】
前記配管のモデルは、冷却制御値と、前記配管の温度である配管温度と、外気温度とを含むモデル関数で示される、請求項4に記載の液化ガス荷役支援方法。
【請求項6】
前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方における状態量は、前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方のタンク内のボイルオフガス量を含み、
前記状態量可変装置は、前記タンク内のボイルオフガス量を増減させることによって前記タンク内の圧力を調整するボイルオフガス増減装置を含み、
前記制御値設定工程は、前記ボイルオフガス増減装置の制御値である圧力制御値が設定される圧力制御値設定工程を含み、
前記圧力制御値設定工程では、前記所要時間取得工程で取得した着船所要時間と前記タンク内の所定の目標圧力とに基づいて圧力制御値が設定される、請求項1に記載の液化ガス荷役支援方法。
【請求項7】
前記圧力制御値設定工程では、前記タンクの内圧であるタンク圧に対する単位時間当たりの圧力変化率である圧力レートが圧力条件を満たし且つタンク内ガス量が第2ボイルオフガス-消費電力条件を満たすように圧力制御値が設定され、
前記状態量可変装置は、冷却装置を含み、
前記圧力条件は、前記タンクの圧力レートの絶対値が所定の許容圧力レート以下となることであり、
前記第2ボイルオフガス-消費電力条件は、前記タンク内ガス量と前記冷却装置の消費電力に基づく評価関数が所定のタンク許容量以下となることである、請求項6に記載の液化ガス荷役支援方法。
【請求項8】
船と貯蔵設備とを互いに接続することによって前記船と前記貯蔵設備との間で行われる液化ガスの荷役を支援する液化ガス荷役支援システムであって、
前記船から取得する航行情報を受信する受信機と、
前記受信機で受信した航行情報に基づいて前記船が前記貯蔵設備に着船するまでに要する着船所要時間を取得し、前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方における状態量の目標値と着船所要時間とに基づいて状態量を制御する状態量可変装置の制御値を設定する制御値設定装置と、を備える、液化ガス荷役支援システム。
【請求項9】
前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方における状態量は、互いに接続することによって前記船と前記貯蔵設備との間で液化ガスの荷役を行うことを可能にする前記船の船側配管及び前記貯蔵設備の設備側配管の少なくとも一方の配管の温度を含み、
前記状態量可変装置は、前記配管を冷却する冷却装置を含み、
前記制御値設定装置は、前記配管の目標冷却温度と着船所要時間とに基づいて前記冷却装置の制御値である冷却制御値を設定する、請求項8に記載の液化ガス荷役支援システム。
【請求項10】
前記制御値設定装置は、前記配管に対する単位時間当たりの冷却レートが冷却条件を満たすように冷却制御値を設定し、
前記冷却条件は、前記配管の冷却レートの絶対値が所定の許容冷却レート以下となることである、請求項9に記載の液化ガス荷役支援システム。
【請求項11】
前記制御値設定装置は、前記配管のモデルに基づいて算出される前記配管で発生するボイルオフガス量である配管内ガス量が第1ボイルオフガス-消費電力条件も満たすように前記冷却装置の制御値を設定し、
前記第1ボイルオフガス-消費電力条件は、前記配管内ガス量と前記冷却装置の消費電力に基づく評価関数が所定の配管許容量以下となることである、請求項10に記載の液化ガス荷役支援システム。
【請求項12】
前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方における状態量は、前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方のタンク内のボイルオフガス量を含み、
前記状態量可変装置は、前記タンク内のボイルオフガス量を増減させることによってタンク内の圧力を調整するボイルオフガス増減装置を含み、
前記制御値設定装置は、前記タンク内の所定の目標圧力と着船所要時間とに基づいて前記ボイルオフガス増減装置の制御値である圧力制御値を設定する、請求項8に記載の液化ガス荷役支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化ガスの荷役を支援する液化ガス荷役支援方法、及び液化ガス荷役支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガス貯蔵設備は、運搬船との間において液化ガスを荷役する。液化ガス貯蔵設備としては、例えば特許文献1の液化ガス貯蔵設備が知られている。特許文献1の液化ガス貯蔵設備では、荷役を行うにあたって運搬船との間で液化ガスの温度等の状態量を合わすために様々な作業を事前に行う必要がある。作業の一つとして、例えば配管の予冷作業がある。予冷作業では、液化ガスの液化温度以下の目標冷却温度まで配管の温度を下げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の液化ガス貯蔵設備では、運搬船等が停泊できる時間に制約があるので、着船して直ぐに荷役を開始できる状態であることが望まれている。それ故、着船時において予冷作業が完了していることが好ましい。他方、予冷作業では、配管を緩やかに冷却することが望ましい。そうすると、配管を液化温度以下まで冷却するに長時間を要する。冷却に長時間を要するので、予冷作業の完了が着船する時刻から遅れると、荷役の開始が遅れる。また、冷却温度を維持するために液化ガスを使用するので、予冷作業が着船する時刻より早すぎると、余分なボイルオフガスを発生させてしまう。同様に、状態量を合わす作業として調圧作業がある。そして、調圧作業もまた着船する時刻までに完了していることが好ましい。
【0005】
そこで本開示の目的は、状態量が目標値に達する時刻を船が貯蔵設備に着船する時刻に精度よく合わせることができる液化ガス荷役支援方法、及び液化ガス荷役支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の液化ガス荷役支援方法は、船と貯蔵設備とを互いに接続することによって前記船と前記貯蔵設備との間で行われる液化ガスの荷役を支援する液化ガス荷役支援方法であって、前記船が前記貯蔵設備に着船するまでに要する着船所要時間を取得する所要時間取得工程と、前記所要時間取得工程で取得した着船所要時間と前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方における状態量の目標値とに基づいて、状態量を制御する状態量可変装置の制御値を設定する制御値設定工程と、を備え、前記所要時間取得工程では、前記船から取得する航行情報に基づいて着船所要時間を取得する方法である。
【0007】
本開示の液化ガス荷役支援方法に従えば、船から取得する航行情報に基づいて着船所要時間が取得される。そして、取得した着船所要時間と船及び貯蔵設備の少なくとも一方における状態量の目標値とに基づいて、状態量を制御する状態量可変装置の制御値が設定される。それ故、高い精度の着船所要時間に基づいて制御値を設定できるので、状態量が目標値に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせることができる。
【0008】
本開示の液化ガス荷役支援システムは、船と貯蔵設備とを互いに接続することによって前記船と前記貯蔵設備との間で行われる液化ガスの荷役を支援する液化ガス荷役支援システムであって、前記船から取得する航行情報を受信する受信機と、前記受信機で受信した航行情報に基づいて前記船が前記貯蔵設備に着船するまでに要する着船所要時間を取得し、前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方における状態量の目標値と着船所要時間とに基づいて状態量を制御する状態量可変装置の制御値を設定する制御値設定装置と、を備えるものである。
【0009】
本開示の液化ガス荷役支援システムに従えば、船から取得する航行情報に基づいて着船所要時間が取得される。そして、取得した着船所要時間と船及び貯蔵設備の少なくとも一方における状態量の目標値とに基づいて、状態量を制御する状態量可変装置の制御値が設定される。それ故、高い精度の着船所要時間に基づいて制御値を設定できるので、状態量が目標値に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせることができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、状態量が目標値に達する時刻を船が貯蔵設備に着船する時刻に精度よく合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の液化ガス荷役支援システムが船及び貯蔵設備と通信している状態を示す図である。
【
図2】
図1に示す液化ガス荷役支援システム、船、及び貯蔵設備の構成を示すブロック図である。
【
図3】船が離れた位置から貯蔵設備に向かって航行する状態を示す図である。
【
図4】本実施形態の液化ガス荷役支援方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】船側配管及び設備側配管の温度の経時変化を示すグラフである。
【
図6】船側タンク及び設備側タンクのタンク圧の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る実施形態の液化ガス荷役支援システム1及び液化ガス荷役支援方法について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する液化ガス荷役支援システム1及び液化ガス支援方法は、本開示の一実施形態に過ぎない。従って、本開示は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0013】
天然ガス、窒素、及び水素等のガスは、生成された後、液体の状態、即ち液化ガスとして
図1に示すような船2によって運ばれる。また、運ばれた先には、液化ガスを貯蔵する貯蔵設備3がある。船2と貯蔵設備3とは、互いに接続することによって船2と貯蔵設備3との間で液化ガスの荷役を行う。このように荷役を行う船2と貯蔵設備3とは、以下のように構成されている。
【0014】
<船>
船2は、いわゆる運搬船であって、液化ガスを運搬する。船2は、港等の陸上基地にある貯蔵設備3に着船する。そして、船2は、貯蔵設備3との間で液化ガスを荷役する。このような機能を有する船2は、例えば船側タンク11と、船側配管12と、船側ユニット13とを有している。船側タンク11は、液化ガスを貯蔵する。船側配管12は、船側タンク11に接続されている。また、船側配管12は、貯蔵設備3に接続することができる。より詳細に説明すると、船側配管12は、接続口12aを有している。接続口12aは、後で詳述する貯蔵設備3の接続装置27を接続することができる。それ故、船側配管12を介して船側タンク11と貯蔵設備3とが互いに接続される。更に、船側配管12は、液化ガスが流れるようなっている。それ故、船2では、図示しない船側荷役ポンプによって船側タンク11から船側配管12を介して貯蔵設備3に液化ガスを払出したり、貯蔵設備3から船側配管12を介して船側タンク11に液化ガスを受け入れたりすることができる。
【0015】
船側ユニット13は、船2における状態量及び船2の状態を監視する。本実施形態において、船2における液化ガスの状態量は、船側配管12の温度、及び船側タンク11内の内圧、即ちタンク圧を含む。また、船側ユニット13は、
図2に示すようにGPS受信機14、船側冷却装置15、船側ボイルオフガス増減装置(以下、「船側BOG増減装置」という)16、船側温度センサ17、船側圧力センサ18、及び船側集中監視装置20を含んでいる。
【0016】
GPS受信機14は、GPS衛星(図示せず)からの信号を受信することによって、船2の現在位置を取得する。状態量可変装置の一例である船側冷却装置15は、船側配管12に設けられている。船側冷却装置15は、船側配管12を冷却する。より詳細に説明すると、船側冷却装置15は、船側配管12を冷却することによって船側配管12の温度、即ち船側配管温度を液化ガスの融点以下に保持する。船側冷却装置15は、本実施形態においてスプレーポンプを含む。スプレーポンプは、船側タンク11の液化ガスを船側配管12に移送する。船側冷却装置15は、入力される制御値に応じてスプレーポンプのON及びOFFを切換えることによって船側配管12を冷却する。
【0017】
状態量可変装置の一例である船側BOG増減装置16は、船側タンク11内のボイルオフガス量(以下、「BOG量」という)を増減させる。これにより、船側BOG増減装置16は、船側タンク11のタンク圧を調整する。より詳細に説明すると、船側BOG増減装置16は、例えば燃焼器及び気化器を有している。燃焼器は、船側タンク11内のボイルオフガス(以下、「BOG」という)を燃料として使用する。これにより、船側タンク11タンク圧が下げられる。他方、気化器は、船側タンク11内において液化ガスを気化させることによって船側タンク11タンク圧を上げる。船側BOG増減装置16は、入力に応じて燃焼器及び気化器を作動させる。船側BOG増減装置16は、燃焼器を作動させることによって船側タンク11内のBOG量を減少させる。これにより、船側タンク11のタンク圧が下がる。他方、船側BOG増減装置16は、気化器を作動させることによって船側タンク11内のBOG量を増加させる。これにより、船側タンク11のタンク圧が上がる。船側温度センサ17は、船側配管12の温度を検出する。船側圧力センサ18は、船側タンク11のタンク圧を検出する。
【0018】
船側集中監視装置20は、船2における状態量及び船2の状態を監視する。より詳細に説明すると、船側集中監視装置20は、GPS受信機14、船側冷却装置15、船側BOG増減装置16、船側温度センサ17、及び船側圧力センサ18と通信可能に接続されている。なお、船側集中監視装置20は、前述する構成14~18と有線及び無線の何れかで通信可能に接続されている。船側集中監視装置20は、GPS受信機14から現在位置に関する情報を取得する。また、船側集中監視装置20は、各種センサ17,18の検出値、即ち船側配管温度、及び船側タンク11のタンク圧を取得する。船側集中監視装置20は、船側冷却装置15及び船側BOG増減装置16を制御する。より詳細に説明すると、船側集中監視装置20は、制御値を船側冷却装置15及び船側BOG増減装置16の各々に出力することによって、船側冷却装置15及び船側BOG増減装置16の各々を制御する。
【0019】
なお、船側集中監視装置20は、船側メモリと、船側プロセッサとを有している。船側メモリは、GPS受信機14及び各種センサ17,18から取得した情報、及び後述する液化ガス荷役支援システム1から送信される制御値を記憶する。また、船側メモリは、予めプログラムを記憶している。船側プロセッサは、プログラムを実行する。船側プロセッサは、船側メモリが記憶する各種情報及び制御値に基づき、設備側冷却装置29及び設備側BOG増減装置30の各々を制御する。
【0020】
船側ユニット13は、取得した船2における状態量及び船2の状態を送信する。また、船側ユニット13は、送信されてくる情報を受信する。より詳細に説明すると、船側ユニット13は、船側送受信機21を有している。船側送受信機21は、衛星電話及びWiFiルータ等の無線通信機である。船側送受信機21は、GPS受信機14から取得した現在位置を含む航行情報及び各センサ17,18で夫々取得した検出値を無線通信で送信する。本実施形態では、船側送受信機21は、後述する液化ガス荷役支援システム1に無線通信及びインターネット回線を介して接続される。そして、船側送受信機21は、液化ガス荷役支援システム1とインターネット回線を介して種々の情報を送受信する。なお、インターネット回線に代えてWAN等の専用回線が用いられてもよく、船側送受信機21が接続される回線はインターネット回線に限定されない。
【0021】
<貯蔵設備>
図1に示す貯蔵設備3は、前述の通り陸上基地に設置される設備であって、液化ガスを貯蔵する。また、貯蔵設備3は、船2と接続することによって液化ガスの荷役を行う。このような機能を有する貯蔵設備3は、例えば設備側タンク25と、設備側配管26と、接続装置27と、設備側ユニット28とを有している。設備側タンク25は、例えば陸上に設置されている。設備側タンク25は、液化ガスを貯蔵する。設備側配管26は、設備側タンク25に接続されている。設備側配管26は、更に、接続装置27に接続されている。接続装置27は、船2と接続することができる。本実施形態において、接続装置27は、ローディングアームである。接続装置27は、船側配管12の接続口12aに接続することができる。それ故、2つの配管12,26は、接続装置27を介して互いに接続される。これにより、2つのタンク11,25は、配管12,26を介して互いに接続される。また、設備側配管26は、液化ガスが流れるようなっている。それ故、貯蔵設備3は、図示しない設備側荷役ポンプによって設備側タンク25から設備側配管26を介して船2に液化ガスを払出したり、船2から設備側タンク25に設備側配管26を介して液化ガスを受け入れたりすることができる。
【0022】
設備側ユニット28は、貯蔵設備3における状態量を監視する。本実施形態において、貯蔵設備3における液化ガスの状態量は、設備側配管26の温度、及び設備側タンク25のタンク圧を含む。また、設備側ユニット28は、
図2に示すように設備側冷却装置29、設備側ボイルオフガス増減装置(以下、「設備側BOG増減装置」という)30、設備側温度センサ31、設備側圧力センサ32、及び設備側集中監視装置34を含んでいる。
【0023】
状態量可変装置の一例である設備側冷却装置29は、設備側配管26に設けられている。設備側冷却装置29は、設備側配管26を冷却する。より詳細に説明すると、設備側冷却装置29は、設備側配管26を冷却することによって設備側配管26内の温度、設備側配管温度を液化ガスの融点以下に保持する。設備側冷却装置29は、本実施形態において循環ポンプを含む。循環ポンプは、設備側配管26から熱を奪うべく冷媒を循環させる。設備側冷却装置29は、入力される制御値に応じて循環ポンプを作動させることによって設備側配管26を冷却する。なお、本実施形態において、循環ポンプは、制御値に応じて駆動のオン及びオフを切り替えるだけのものであるが、制御値に応じて循環量を変動させるものであってもよい。
【0024】
状態量可変装置の一例である設備側BOG増減装置30は、設備側タンク25内のBOG量を増減させる。これにより、設備側BOG増減装置30は、設備側タンク25のタンク圧を調整する。より詳細に説明すると、設備側BOG増減装置30は、例えば再液化器及び気化器を有している。設備側BOG増減装置30は、入力に応じて再液化器及び気化器を作動させる。設備側BOG増減装置30は、再液化器を作動させることによって設備側タンク25内のBOGを再液化する。そうすると、設備側タンク25内のBOG量が減少する。これにより、設備側タンク25のタンク圧が下がる。なお、設備側BOG増減装置30は、ベントによって設備側タンク25内のBOGを排出することによって設備側タンク25のタンク圧を下げてもよい。他方、設備側BOG増減装置30は、気化器を作動させることによって設備側タンク25内のBOG量を増加させる。これにより、設備側タンク25のタンク圧が上がる。設備側温度センサ31は、設備側配管26の温度を検出する。設備側圧力センサ32は、設備側タンク25のタンク圧を検出する。
【0025】
設備側集中監視装置34は、貯蔵設備3における状態量を監視する。より詳細に説明すると、設備側集中監視装置34は、設備側冷却装置29、設備側BOG増減装置30、設備側温度センサ31、及び設備側圧力センサ32と通信可能に接続されている。なお、設備側集中監視装置34は、前述する構成29~32と有線及び無線の何れかで通信可能に接続されている。設備側集中監視装置34は、各種センサ31,32の検出値、即ち設備側配管温度、及び設備側タンク25のタンク圧を取得する。設備側集中監視装置34は、設備側冷却装置29及び設備側BOG増減装置30を制御する。より詳細に説明すると、設備側集中監視装置34は、制御値を設備側冷却装置29及び設備側BOG増減装置30の各々に出力することによって、設備側冷却装置29及び設備側BOG増減装置30の各々を制御する。
【0026】
なお、設備側集中監視装置34は、設備側メモリと、設備側プロセッサとを有している。設備側メモリは、各種センサ31,32から取得した情報、及び後述する液化ガス荷役支援システム1から送信される制御値を記憶する。また、設備側メモリは、予めプログラムを記憶している。設備側プロセッサは、プログラムを実行する。設備側プロセッサは、設備側メモリが記憶する各種情報及び制御値に基づき、設備側冷却装置29及び設備側BOG増減装置30の各々を制御する。
【0027】
設備側ユニット28は、取得した貯蔵設備3における状態量を送信する。また、設備側ユニット28は、送信されてくる情報を受信する。より詳細に説明すると、設備側ユニット28は、設備側送受信機35を有している。設備側送受信機35は、各センサ31,32から夫々取得した検出値を送信する。本実施形態では、設備側送受信機35は、後述する液化ガス荷役支援システム1にインターネット回線を介して接続されている。設備側送受信機35は、液化ガス荷役支援システム1とインターネット回線を介して種々の情報を送受信する。なお、設備側送受信機35とインターネット回線との接続は、有線及び無線通信の何れであってもよい。なお、インターネット回線に代えてWAN等の専用回線が用いられてもよく、設備側送受信機35が接続される回線はインターネット回線に限定されない。
【0028】
<液化ガス荷役システム>
液化ガス荷役支援システム1は、船2と貯蔵設備3とを互いに接続することによって船2と貯蔵設備3との間で行われる液化ガスの荷役を支援する。より詳細に説明すると、液化ガス荷役支援システム1は、着船するまでに船2及び貯蔵設備3における液化ガスの状態量(例えば温度及び圧力)が目標値となるように各状態量可変装置15,16,29,30の制御値を設定する。また、液化ガス荷役支援システム1は、船2及び貯蔵設備3に状態量可変装置15,16,29,30の制御値を提示する。そして、液化ガス荷役支援システム1は、船2及び貯蔵設備3に状態量可変装置15,16,29,30を制御値に応じて作動させることによって、着船時において液化ガスの状態量を目標値にする。このようにして液化ガスの荷役を支援する液化ガス荷役支援システム1は、例えばクラウドコンピュータによって実現される。但し、液化ガス荷役支援システム1は、クラウドコンピュータに限定されず、貯蔵設備3やそのほかの設備に備わるコンピュータ等であってもよい。液化ガス荷役支援システム1は、システム側送受信機40と、制御値設定装置41とを備えている。
【0029】
受信機の一例であるシステム側送受信機40は、インターネット回線を介して船2及び貯蔵設備3と通信可能に接続される。システム側送受信機40は、船2及び貯蔵設備3と種々の情報を送受信する。本実施形態において、システム側送受信機40は、船2及び貯蔵設備3から各々の液化ガスの状態量及び船2の現在位置を受信する。また、システム側送受信機40は、状態量可変装置15,16,29,30の制御値を船2及び貯蔵設備3の各々に送信する。より詳細に説明すると、システム側送受信機40は、船側送受信機21及び設備側送受信機35に制御値を送信する。
【0030】
制御値設定装置41は、システム側送受信機40で受信した航行情報(本実施形態において船2の現在位置)に基づいて船2が貯蔵設備3に着船するまでに要する着船所要時間を取得する。より詳細に説明すると、制御値設定装置41は、船2の現在位置を受信すると、現在位置、航路、及び船2の平均航行速度に基づいて着船所要時間を演算する。また、制御値設定装置41は、船2及び貯蔵設備3における状態量の目標値と着船所要時間とに基づいて状態量可変装置15,16,29,30の制御値を設定する。これにより、制御値設定装置41は、船2が貯蔵設備3に着船する時刻(以下、単に「着船時刻」という)に船2及び貯蔵設備3における状態量を目標値に精度よく合わせることができる。
【0031】
更に詳細に説明すると、船2及び貯蔵設備3の状態量には、前述の通り、例えば船側配管12及び設備側配管26の温度が夫々含まれる。そして、制御値設定装置41は、船側配管12及び設備側配管26の温度の目標値である目標冷却温度と着船所要時間とに基づいて冷却装置15,29の各々の制御値である冷却制御値を設定する。また、船2及び貯蔵設備3の状態量には、例えば船側タンク11及び設備側タンク25の各々のタンク圧が夫々含まれる。そして、制御値設定装置41は、船側タンク11及び設備側タンク25のタンク圧の目標値である目標圧力と着船所要時間とに基づいてBOG増減装置16,30の各々の制御値である圧力制御値を設定する。
【0032】
更に、制御値設定装置41は、システム側送受信機40を介して船側冷却装置15の冷却制御値及び船側BOG増減装置16の圧力制御値を船2の船側送受信機21に送信する。これにより、船側集中監視装置20は、船側送受信機21を介して前述する制御値を取得してオペレータに提示する。更に、船側集中監視装置20は、取得した冷却制御値に応じて船側冷却装置15の動作を制御する。本実施形態において、船側集中監視装置20は、冷却制御値に応じてスプレーポンプのオン及びオフを切り替える。これにより、着船時刻に合わせて船側配管12の温度を目標冷却温度に精度よく合わせることができる。また、船側集中監視装置20は、取得した圧力制御値に応じて船側BOG増減装置16の動作を制御する。本実施形態において、船側集中監視装置20は、圧力制御値に応じて船側BOG増減装置16の燃焼器を作動させて船側タンク11のタンク圧を下げたり、船側BOG増減装置16の気化器を作動させて船側タンク11のタンク圧を上げたりする。これにより、着船時刻に合わせて船側タンク11のタンク圧を目標圧力に精度よく合わせることができる。
【0033】
同様に、制御値設定装置41は、システム側送受信機40を介して設備側冷却装置29の冷却制御値及び設備側BOG増減装置30の圧力制御値を貯蔵設備3の設備側送受信機35に送信する。これにより、設備側集中監視装置34は、設備側送受信機35を介して前述する制御値を取得してオペレータに提示する。更に、設備側集中監視装置34は、取得した冷却制御値に応じて設備側冷却装置29の動作を制御する。本実施形態において、設備側集中監視装置34は、冷却制御値に応じて循環ポンプのオン及びオフを切り替える。これにより、着船時刻に合わせて設備側配管26の温度を目標冷却温度に精度よく合わせることができる。また、設備側集中監視装置34は、取得した圧力制御値に応じて設備側BOG増減装置30の動作を制御する。本実施形態において、設備側集中監視装置34は、圧力制御値に応じて設備側BOG増減装置30の再液化器を作動させて設備側タンク25のタンク圧を下げたり、設備側BOG増減装置30の気化器を作動させて設備側タンク25のタンク圧を上げたりする。これにより、着船時刻に合わせて設備側タンク25のタンク圧を目標圧力に精度よく合わせることができる。
【0034】
なお、制御値設定装置41は、システム側メモリと、システム側プロセッサとを有している。システム側メモリは、システム側送受信機40で受信する各種情報を記憶する。また、システム側メモリは、予めプログラムを記憶している。システム側プロセッサは、荷役支援プログラムを実行する。システム側プロセッサは、システム側メモリが記憶する各種情報に基づき、前述するような各種演算を行う。これにより、前述するように、制御値設定装置41は、着船時刻に船2及び貯蔵設備3における状態量が目標値となるように状態量可変装置15,16,29,30の制御値を設定することができる。即ち、システム側プロセッサは、荷役支援プログラムを実行することによって後述する液化ガス荷役支援方法を実施する。
【0035】
<液化ガス荷役支援方法>
液化ガス荷役支援システム1は、以下で説明する液化ガス荷役支援方法によって、船2と貯蔵設備3との間で行われる液化ガスの荷役を支援する。より詳細に説明すると、船2に関して、例えば
図3に示すように貯蔵設備3から離れた位置にて液化ガスの荷役を行う場所が貯蔵設備3に決められる。そして、荷役を行う場所が決められると、液化ガス荷役支援システム1は、液化ガス荷役支援方法を開始する。そうすると、
図4に示す液化ガス荷役支援方法のフローチャートにおいて、ステップS1に移行する。
【0036】
情報取得工程であるステップS1では、液化ガス荷役支援システム1が船2及び貯蔵設備3から各種情報を取得する。より詳細に説明すると、船2からは、GPS受信機14によって取得される現在位置が船側送受信機21によって無線通信で送信される。また、船2からは、各センサ17,18で夫々取得した検出値(本実施形態において、船側配管12の温度、及び船側タンク11のタンク圧)が船側送受信機21によって無線通信で送信される。そして、液化ガス荷役支援システム1は、システム側送受信機40によって船2から送信される現在位置及び検出値を受信する。他方、貯蔵設備3からは、各センサ31,32で夫々取得した検出値(本実施形態において、設備側配管26の温度、及び設備側タンク25のタンク圧)が設備側送受信機35によって送信される。そして、液化ガス荷役支援システム1は、システム側送受信機40によって貯蔵設備3から送信される検出値を受信する。このようにして制御値設定装置41が船2及び貯蔵設備3の各々から各種情報を取得すると、ステップS2に移行する。
【0037】
所要時間取得工程の一例であって所要時間演算工程であるステップS2では、船2が貯蔵設備3に着船するまでに要する着船所要時間が演算される。より詳細に説明すると、着船所要時間は、無線通信を用いて船2から取得する航行情報に基づいて演算される。本実施形態において、制御値設定装置41は、船2から取得した航行情報に含まれる船2の現在位置と貯蔵設備3の位置とに基づいて着船所要時間を演算する。例えば、制御値設定装置41は、船2の現在位置と貯蔵設備3の位置とに基づいて船2の航路を推定する。そして、制御値設定装置41は、推定した航路と船2の航行速度に基づいて着船所要時間を演算する。なお、前述する着船所要時間の演算方法は、一例であり、前述する方法以外の方法で演算されてもよい。制御値設定装置41が着船所要時間を演算すると、ステップS3及びS5に夫々移行する。
【0038】
制御値設定工程に含まれる冷却制御値設定工程であるステップS3では、所要時間演算工程で取得した着船所要時間と船2及び貯蔵設備3の各々の目標冷却温度とに基づいて冷却制御値が設定される。本実施形態において、制御値設定装置41は以下のようにして冷却制御値を設定する。即ち、制御値設定装置41は、配管12,26の各々に関する関数モデルg1,g2を記憶している。また、制御値設定装置41は、各冷却装置15,29の各々に関する関数モデルw1,w2を記憶している。関数モデルg1,g2は、配管12,26の各々において単位時間あたりに発生するBOG量dGit1,dGit2を導出する。関数モデルw1,w2は、冷却装置15,29の各々において単位時間あたりの消費電力量dWit1,dWit2を導出する。なお、関数モデルg1,g2,w1,w2は、例えば物理数値計算に基づくプロセスモデル、又は蓄積したデータベースから導き出される数値モデルである。本実施形態において、関数モデルg1,g2,w1,w2は、プロセスモデルである。
【0039】
より詳細に説明すると、制御値設定装置41が冷却制御値を設定するに際して、以下のように変数が規定されている。即ち、着船所要時間がtall、配管12,26の各々の現在の温度がKinit1,Kinit2、配管12,26の各々の現在の圧力がPinit1,Pinit2、各タンク11,25の現在の圧力がPtinit1,Ptinit2、各目標冷却温度がKtgt1,Ktgt2、処理単位時間がdt、tallに対する単位時間のインデックスをiとしてi番目の処理の時刻がti=i×dtと規定される。また、ti時の船2及び貯蔵設備3の各々の周りの外気温度(即ち、配管12,26周りの外気温度)がKiatm1,Kiatm2、ti時の各配管12,26で発生する総BOG量がGit1,Git2、ti時に単位時間当たりに各配管12,26で発生するBOG量がdGit1,dGit2と規定される。更に、ti時の各冷却装置15,29での総消費電力量がWit1,Wit2、ti時に単位時間当たりに各冷却装置15,29での消費電力量がdGit1,dGit2と規定される。更に、ti時の各配管12,26の温度がKi1,Ki2、ti時の各配管12,26の圧力がPi1,Pi2、各タンク11,25の現在の圧力がPti1,Pti2、ti時に単位時間当たりの温度変化率である冷却レートがdKi1,dKi2、冷却装置15,29に対する制御入力、即ち冷却制御値をInit1,Init2と規定する。以上の定義の下、各配管12,26において単位時間当たりに発生するBOGの予測量dGit1_est,dGit2_est、及び各冷却装置15,29において単位時間当たりに消費する電力量の予測量dWit1_est,dWit2_est、は、関数モデルg1,g2、w1,w2に基づいて以下の式(1)乃至(4)で夫々導出される。
【0040】
【数1】
なお、現在の時刻から着船するまでの外気温度Kiatm1,Kiatm2については、気象予報等の予測データが用いられる。
【0041】
そして、制御値設定装置41は、温度センサ17,31で夫々検出される現在の配管温度Kinit1,Kinit2を用いて以下のような演算を行う。即ち、制御値設定装置41は、以下の式(5)及び(6)に示される冷却条件を夫々満たしつつ、式(7)及び(8)に示す各配管12,26に関する評価関数Vt1,Vt2の各々が後述する第1ボイルオフガス-消費電力条件を満たすように冷却制御値Init1,Init2を設定する。なお、現在のインデックスiがicurであり、その時の配管12,26の温度がKinit1,Kinit2である。また、θk11、θk21は、予め定められる許容可能な温度差であり、θk12、θk22は、予め定められる許容可能な冷却レートである。更にVt1,Vt2は、現在の時刻tから着船までに配管12,26の各々で発生する総BOG量(即ち、配管内ガス量)及び冷却装置15,29で消費される電力に基づく評価関数である。
【0042】
【0043】
【数3】
なお、α1、β1、α2、及びβ3は、重み係数である。
【0044】
即ち、冷却条件は、着船時における各配管12,26の温度と目標冷却温度Ktgt1,Ktgt2との差の絶対値が許容温度差θk11、θk21以下であり、且つ配管12,26に対する冷却レートdKi1,dKi2の絶対値が許容冷却レートθk12、θk22以下であることである。また、第1ボイルオフガス-消費電力条件は、評価関数Vt1,Vt2が配管許容量以下、本実施形態において最小となることである。なお、配管許容量は、必ずしも最小値である必要はなく、所定の閾値であってもよい。そして、制御値設定装置41は、前述する冷却条件を満たしつつ第1ボイルオフガス-消費電力条件を満たすように冷却制御値Init1,Init2を設定する。なお、本実施形態において、冷却制御値Init1,Init2は、現在の時間から着船時までの値が演算される。そして、現在の時間から着船時まで設定される冷却制御値Init1,Init2に基づいて冷却装置15,29を制御することによって、
図5のグラフに示すように着船するまでに各配管12,26の温度を目標冷却温度Ktgt1,Ktgt2まで冷却させることができる。冷却制御値Init1,Init2が設定されると、ステップS4に移行する。
【0045】
冷却装置制御工程であるステップS4では、設定される冷却制御値Init1,Init2が送信される。より詳細に説明すると、制御値設定装置41は、システム側送受信機40を介して船2及び貯蔵設備3に送信する。船2では、船側送受信機21が冷却制御値Init1を受信すると、船側集中監視装置20が冷却制御値Init1をオペレータに提示する。本実施形態では、着船までの間、提示する冷却制御値Init1に基づいて船側冷却装置15を制御することによって、
図5に示すように船側配管12の温度が下がることをオペレータに示す。そして、オペレータが指示すると、船側集中監視装置20は、提示された冷却制御値Init1に基づいて船側冷却装置15を制御する。より詳細に説明すると、船側集中監視装置20が船側冷却装置15に冷却制御値Init1を出力して船側冷却装置15を作動させる。
【0046】
同様に、貯蔵設備3において、設備側送受信機35が冷却制御値Init2を受信すると、設備側集中監視装置34が冷却制御値Init2をオペレータに提示する。本実施形態では、着船までの間、提示する冷却制御値Init2に基づいて設備側冷却装置29を制御することによって、
図5に示すように設備側配管26の温度が下がることをオペレータに示す。そして、オペレータが指示すると、設備側集中監視装置34は、提示された冷却制御値Init2に基づいて設備側冷却装置29を制御する。より詳細に説明すると、設備側集中監視装置34が設備側冷却装置29に冷却制御値Init2を出力して設備側冷却装置29を作動させる。冷却制御値Init1,Init2に基づいて冷却装置15,29が制御されると、後述するステップS7に移行する。
【0047】
制御値設定工程に含まれる圧力制御値設定工程であるステップS5では、BOG増減装置16,30の制御値である圧力制御値が設定される。より詳細に説明すると、所要時間取得工程で取得した着船所要時間とタンク11,25内の所定の目標圧力とに基づいて圧力制御値が設定される。なお、制御値設定工程に含まれる冷却制御値設定工程及び圧力制御値設定工程は、本実施形態において並行して行われるが、一方の工程の後に他方の工程が行われるようにしてもよい。また、本実施形態において、制御値設定装置41は以下のようにして圧力制御値を設定される。即ち、制御値設定装置41は、タンク11,25の各々に関して関数モデルp1,p2を記憶している。関数モデルp1,p2は、タンク11,25の各々において単位時間あたりに発生するBOG量を導出する。なお、関数モデルp1,p2は、例えば物理数値計算に基づくプロセスモデル、又は蓄積したデータベースから導き出される数値モデルである。本実施形態において、関数モデルp1,p2は、プロセスモデルである。
【0048】
より詳細に説明すると、制御値設定装置41が圧力制御値を設定するに際して、以下のように変数が規定される。即ち、着船所要時間がtall、現在のタンク11,25の各々の現在のタンク圧がPinit1,Pinit2、各目標圧力がPtgt1,Ptgt2、処理単位時間がdt、tallに対する単位時間のインデックスをiとしてi番目の処理の時刻がti=i×dtと規定される。また、ti時の船2及び貯蔵設備3の各々の周りの外気温度がKiatm1,Kiatm2、ti時の各タンク11,25で発生する総BOG量がGip1,Gip2、ti時に単位時間当たりに各タンク11,25で発生するBOG量がdGip1,dGip2と規定される。更に、ti時の各タンク11,25のタンク圧がPi1,Pi2、ti時に単位時間当たりの圧力変化率である圧力レートがdPi1,dPi2、BOG増減装置16,30に対する制御入力、即ち圧力制御値をInip1,Inip2と規定される。更に、ti時の各配管12,26の温度がKi1,Ki2と規定される。以上の定義の下、各タンク11,25にいて単位時間当たりに発生するBOGの予測量dGip1_est,dGip2_estは、関数モデルp1,p2に基づいて以下の式(9)及び(10)ように導出される。
【0049】
【数4】
なお、現在の時刻から着船するまでの外気温度Kiatm1,Kiatm2については、気象予報等の予測データが用いられる。
【0050】
そして、制御値設定装置41は、圧力センサ18,32で夫々検出される温度Pinit1,Pinit2を用いて以下のような演算を行う。即ち、制御値設定装置41は、以下の式(11)及び(12)に示される圧力条件を夫々満たしつつ、式(13)及び(14)に示す各タンク11,25に関する評価関数Vp1,Vp2の各々が後述する第2ボイルオフガス-消費電力条件を満たすように圧力制御値Inip1,Inip2を設定する。なお、現在のインデックスiがicurであり、その時の各タンク11,25のタンク圧がPinit1,Pinit2である。なお、θp11、θp21は、予め定められる許容可能な圧力差であり、θp12、θp22は、予め定められる許容可能な圧力レートである。更にVp1,Vp2は、現在の時刻tから着船までにタンク11,25の各々で発生する総BOG量(即ち、タンク内ガス量)及び冷却装置15,29で消費される電力に基づく評価関数である。
【0051】
【0052】
【数6】
なお、α3、β3、α4、及びβ4は、重み係数である。
【0053】
即ち、圧力条件は、着船時における各タンク11,25のタンク圧と目標圧力Ptgt1,Ptgt2との差の絶対値が許容圧力差θp11、θp21以下であり、且つタンク11,25に対する圧力レートdPi1,dPi2の絶対値が許容圧力レートθp12、θp22以下であることである。また、第2ボイルオフガス-消費電力条件は、評価関数Vp1,Vp2がタンク許容量以下、本実施形態において最小となることである。なお、タンク許容量は、必ずしも最小値である必要はなく、所定の閾値であってもよい。そして、制御値設定装置41は、前述する冷却条件を満たしつつ第2ボイルオフガス-消費電力条件を満たすように圧力制御値Inip1,Inip2を設定する。なお、本実施形態において、圧力制御値Inip1,Inip2は、現在の時間から着船時までの値が演算される。そして、現在の時間から着船時まで設定される圧力制御値Inip1,Inip2に基づいてBOG増減装置16,30を制御することによって、
図6のグラフに示すように、着船するまでに各タンク11,25のタンク圧を目標圧力Ptgt1,Ptgt2まで冷却させることができる。圧力制御値Inip1,Inip2が設定されると、ステップS6に移行する。
【0054】
圧力装置制御工程であるステップS6では、設定される圧力制御値Inip1,Inip2が送信される。より詳細に説明すると、制御値設定装置41は、システム側送受信機40を介して船2及び貯蔵設備3に送信する。船2では、船側送受信機21が圧力制御値Inip1を受信すると、船側集中監視装置20が圧力制御値Inip1をオペレータに提示する。本実施形態では、着船までの間、提示する圧力制御値Inip1に基づいて船側BOG増減装置16を制御することによって、
図6に示すように船側タンク11のタンク圧が目標圧力になることをオペレータに示す。そして、オペレータが指示すると、船側集中監視装置20は、提示された圧力制御値Inip1に基づいて船側BOG増減装置16を制御する。より詳細に説明すると、船側集中監視装置20が船側BOG増減装置16に圧力制御値Inip1を出力して船側BOG増減装置16を作動させる。これにより、タンク11のタンク圧を増減させることができる。
【0055】
同様に、貯蔵設備3において、設備側送受信機35が圧力制御値Inip2を受信すると、設備側集中監視装置34が圧力制御値Inip2をオペレータに提示する。実施形態では、着船までの間、提示する圧力制御値Inip2に基づいて設備側BOG増減装置30を制御することによって、
図6に示すように設備側タンク25のタンク圧が目標圧力になることをオペレータに示す。そして、オペレータが指示すると、設備側集中監視装置34は、提示された圧力制御値Inip2に基づいて設備側BOG増減装置30を制御する。より詳細に説明すると、設備側集中監視装置34が設備側BOG増減装置30に圧力制御値Inip2を出力して設備側BOG増減装置30を作動させる。これにより、タンク25のタンク圧を増減させることができる。圧力制御値Inip1,Inip2に基づいてBOG増減装置16,30が制御されると、ステップS7に移行する。
【0056】
着船判定工程であるステップS7では、船2が貯蔵設備3に着船したか否かが判定される。より詳細に説明すると、制御値設定装置41は、船2から送信される現在位置に基づいて貯蔵設備3に着船したか否かを判定する。着船していないと判定されると、ステップS1に戻る。そして、再び、取得する各種情報に基づいて冷却制御値及び圧力制御値を修正すべく、それらが再設定される。そして、再設定された冷却制御値及び圧力制御値がオペレータに提示される。その後、オペレータの指示に従って、冷却制御値に基づいて冷却装置15,29が制御されると共に、圧力制御値に基づいてBOG増減装置が制御される。状態量可変装置15,16,29,30の各々に関する制御値の再設定は、船2が貯蔵設備3に着船するまで繰り返される。そして、船2が貯蔵設備3に着船すると、液化ガス荷役支援方法が終了する。
【0057】
本実施形態の液化ガス荷役支援方法では、無線通信を用いて船2から取得する航行情報に基づいて着船所要時間が取得される。そして、取得した着船所要時間と船2及び貯蔵設備3の状態量の目標値とに基づいて、状態量を制御する状態量可変装置15,16,29,30の制御値が設定される。それ故、高い精度の着船所要時間に基づいて制御値を設定できるので、状態量が目標値に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせることができる。
【0058】
本実施形態の液化ガス荷役支援方法では、船2及び貯蔵設備3の状態量は、配管12,26の温度であって、配管12,26の目標冷却温度と着船所要時間とに基づいて冷却装置15,29の冷却制御値が設定される。高い精度の着船所要時間に基づいて制御値を設定できるので、配管12,26の温度が目標冷却温度に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせることができる。
【0059】
本実施形態の液化ガス荷役支援方法では、冷却レートが冷却条件を満たすように冷却制御値が設定される。また、冷却条件が許容冷却レート以下になっている。それ故、配管12,26が急激に冷却されることを抑えることができる。
【0060】
本実施形態の液化ガス荷役支援方法では、配管内ガス量が第1ボイルオフガス-消費電力条件も満たすように冷却制御値が設定される。そして、第1ボイルオフガス-消費電力条件は配管内ガス量と冷却装置15,29の消費電力とに基づく評価関数が所定の配管許容量以下となることである。それ故、配管12,26内に発生するガス量と冷却装置15,29の消費電力を抑えることができる。
【0061】
本実施形態の液化ガス荷役支援方法では、配管12,26のモデルが冷却制御値と、配管12,26の温度と、外気温度とを含むモデル関数で示される。それ故、配管12,26の温度を容易に推定することができるので、配管12,26の温度を目標冷却温度に到達する時刻を着船時刻に更に高い精度で合わせることができる。
【0062】
本実施形態の液化ガス荷役支援方法では、着船所要時間とタンク11,25内の目標圧力とに基づいて圧力制御値が設定される。それ故、高い精度の着船所要時間に基づいて圧力制御値を設定できるので、タンク圧が目標圧力に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせることができる。
【0063】
本実施形態の液化ガス荷役支援方法では、圧力条件がタンク11,25の圧力レートの絶対値が所定の許容圧力レート以下となることであり、第2ボイルオフガス-消費電力条件がタンク内ガス量が所定のタンク許容量以下となることである。それ故、目標圧力に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせると共に、タンク11,25内における急激な圧力の増減が抑えられ且つタンク11,25内のBOG量と冷却装置15,29の消費電力が抑えられる。
【0064】
本実施形態の液化ガス荷役支援システム1では、無線通信を用いて船2から取得する航行情報に基づいて着船所要時間が取得される。そして、取得した着船所要時間と船2及び貯蔵設備3の状態量の目標値とに基づいて、状態量を制御する状態量可変装置15,16,29.30の制御値が設定される。それ故、高い精度の着船所要時間に基づいて制御値を設定できるので、状態量が目標値に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせることができる。
【0065】
本実施形態の液化ガス荷役支援システム1では、船2及び貯蔵設備3の状態量は、配管12,26の温度であって、配管12,26の目標冷却温度と着船所要時間とに基づいて冷却装置15,29の冷却制御値を制御値設定装置41が設定する。それ故、高い精度の着船所要時間に基づいて冷却制御値を設定できるので、配管12,26の温度が目標冷却温度に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせることができる。
【0066】
本実施形態の液化ガス荷役支援システム1では、冷却レートが冷却条件を満たすように冷却制御値を制御値設定装置41が設定する。また、冷却条件が許容冷却レート以下になっている。それ故、配管12,26が急激に冷却されることを抑えることができる。
【0067】
本実施形態の液化ガス荷役支援システム1では、配管内ガス量が第1ボイルオフガス-消費電力条件も満たすように冷却制御値を制御値設定装置41が設定する。そして、第1ボイルオフガス-消費電力条件は、配管内ガス量と冷却装置15,29の消費電力とに基づく評価関数が所定の配管許容量以下となることである。それ故、配管12,26内に発生するガス量と冷却装置15,29の消費電力を抑えることができる。
【0068】
本実施形態の液化ガス荷役支援システム1では、着船所要時間とタンク11,25内の目標圧力とに基づいて圧力制御値を制御値設定装置41が設定する。それ故、高い精度の着船所要時間に基づいて圧力制御値を設定できるので、タンク圧が目標圧力に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせることができる。
【0069】
<その他の実施形態>
本実施形態の液化ガス荷役支援方法及び液化ガス荷役支援システム1では、船2及び貯蔵設備3の少なくとも一方における状態量に配管12,26の温度、及びタンク11,25の圧力が含まれているが、必ずしも全てを含む必要はない。例えば、船2及び貯蔵設備3の少なくとも一方における状態量には、配管12,26の温度のみが含まれてもよく、また船側配管12の温度及び船側タンク11のタンク圧のみが含まれてもよい。また、船2及び貯蔵設備3の少なくとも一方における状態量には、配管12,26の温度、及びタンク11,25の圧力以外の他の状態量が含まれてもよい。それ故、船2及び貯蔵設備3の各々は、必ずしも冷却装置15,29及びBOG増減装置16,30を備えている必要はなく、また他の状態量を変えるべくそれら以外の状態量可変装置を備えてもよい。
【0070】
また、本実施形態の液化ガス荷役支援方法及び液化ガス荷役支援システム1では、演算することによって着船所要時間が取得されているが、以下のように着船所要時間が取得されてもよい。例えば、船2等で演算された着船所要時間を含む航行情報を制御値設定装置41が取得してもよい。また、配管内ガス量は、総BOG量に限定されず、単位時間当たりのBOG量であってもよい。
【0071】
<例示的な実施形態>
第1の局面における液化ガス荷役支援方法は、船と貯蔵設備とを互いに接続することによって前記船と前記貯蔵設備との間で行われる液化ガスの荷役を支援する液化ガス荷役支援方法であって、前記船が前記貯蔵設備に着船するまでに要する着船所要時間を取得する所要時間取得工程と、前記所要時間取得工程で取得した着船所要時間と前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方における状態量の目標値とに基づいて、状態量を制御する状態量可変装置の制御値を設定する制御値設定工程と、を備え、前記所要時間取得工程では、前記船から取得する航行情報に基づいて着船所要時間を取得する方法である。
【0072】
上記局面に従えば、船から取得する航行情報に基づいて着船所要時間が取得される。そして、取得した着船所要時間と船及び貯蔵設備の少なくとも一方における状態量の目標値とに基づいて、状態量を制御する状態量可変装置の制御値が設定される。それ故、高い精度の着船所要時間に基づいて制御値を設定できるので、状態量が目標値に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせることができる。
【0073】
第2の局面における液化ガス荷役支援方法では、第1の局面の液化ガス荷役支援方法において、前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方における状態量は、互いに接続することによって前記船と前記貯蔵設備との間で液化ガスの荷役を行うことを可能にする前記船の船側配管及び前記貯蔵設備の設備側配管の少なくとも一方の配管の温度を含み、前記状態量可変装置は、前記配管を冷却する冷却装置を含み、前記制御値設定工程は、前記配管の目標冷却温度と着船所要時間とに基づいて、前記冷却装置の制御値である冷却制御値が設定される冷却制御値設定工程を含む。
【0074】
上記局面に従えば、船及び貯蔵設備の少なくとも一方における状態量は、配管の温度であって、配管の目標冷却温度と着船所要時間とに基づいて冷却装置の冷却制御値が設定される。高い精度の着船所要時間に基づいて制御値を設定できるので、配管の配管温度が目標冷却温度に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせることができる。
【0075】
第3の局面における液化ガス荷役支援方法では、第2の局面の液化ガス荷役支援方法において、前記制御値設定工程では、前記配管に対する単位時間当たりの冷却レートが冷却条件を満たすように制御値を設定し、前記冷却条件は、前記配管の冷却レートの絶対値が所定の許容冷却レート以下となることである。
【0076】
上記局面に従えば、冷却レートが冷却条件を満たすように冷却制御値が設定される。また、冷却条件が許容冷却レート以下になっている。それ故、配管が急激に冷却されることを抑えることができる。
【0077】
第4の局面における液化ガス荷役支援方法では、第2又は3の局面の液化ガス荷役支援方法において、前記制御値設定工程では、前記配管のモデルに基づいて算出される前記配管で発生するボイルオフガス量である配管内ガス量が第1ボイルオフガス-消費電力条件も満たすように前記冷却装置の冷却制御値が設定され、
前記第1ボイルオフガス-消費電力条件は、配管内ガス量と前記冷却装置の消費電力とに基づく評価関数が所定の配管許容量以下となることである。
【0078】
上記局面に従えば、配管内ガス量が第1ボイルオフガス-消費電力条件も満たすように冷却制御値が設定される。そして、第1ボイルオフガス-消費電力条件は配管内ガス量と冷却装置の消費電力とに基づく評価関数が所定の配管許容量以下となることである。それ故、配管内に発生するガス量及び消費電力を抑えることができる。
【0079】
第5の局面における液化ガス荷役支援方法では、第4の局面の液化ガス荷役支援方法において、前記配管のモデルは、冷却制御値と、前記配管の温度である配管温度と、外気温度とを含むモデル関数で示される。
【0080】
上記局面に従えば、配管のモデルが冷却制御値と、配管温度と、外気温度とを含むモデル関数で示される。それ故、配管温度を容易に推定することができるので、配管温度を目標冷却温度に到達する時刻を着船時刻に更に高い精度で合わせることができる。
【0081】
第6の局面における液化ガス荷役支援方法では、第1乃至5の何れかの局面の液化ガス荷役支援方法において、前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方における状態量は、前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方のタンク内のボイルオフガス量を含み、前記状態量可変装置は、前記タンク内のボイルオフガス量を増減させることによってタンク内の圧力を調整するボイルオフガス増減装置を含み、前記制御値設定工程は、前記ボイルオフガス増減装置の制御値である圧力制御値が設定される圧力制御値設定工程を含み、前記圧力制御値設定工程では、前記所要時間取得工程で取得した着船所要時間と前記タンク内の所定の目標圧力とに基づいて圧力制御値が設定される。
【0082】
上記局面に従えば、着船所要時間とタンク内の目標圧力とに基づいて圧力制御値が設定される。それ故、高い精度の着船所要時間に基づいて圧力制御値を設定できるので、タンク圧が目標圧力に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせることができる。
【0083】
第7の局面における液化ガス荷役支援方法では、第6の局面の液化ガス荷役支援方法において、前記圧力制御値設定工程では、前記タンクの内圧であるタンク圧に対する単位時間当たりの圧力変化率である圧力レートが圧力条件を満たし且つタンク内ガス量が第2ボイルオフガス-消費電力条件を満たすように圧力制御値が設定され、前記圧力条件は、前記タンクの圧力レートの絶対値が所定の許容圧力レート以下となることであり、前記第2ボイルオフガス-消費電力条件は、前記タンク内ガス量と前記冷却装置の消費電力に基づく評価関数が所定のタンク許容量以下となることである。
【0084】
上記局面に従えば、圧力条件がタンクの圧力レートの絶対値が所定の許容圧力レート以下となることであり、第2ボイルオフガス-消費電力条件がタンク内ガス量と冷却装置の消費電力に基づく評価関数が所定のタンク許容量以下となることである。それ故、目標圧力に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせると共に、タンク内における急激な圧力の増減が抑えられ且つタンク内のボイルオフガス量及び冷却装置の消費電力が抑えられる。
【0085】
第8の局面における液化ガス荷役支援システムは、船と貯蔵設備とを互いに接続することによって前記船と前記貯蔵設備との間で行われる液化ガスの荷役を支援する液化ガス荷役支援システムであって、前記船から取得する航行情報を受信する受信機と、前記受信機で受信した航行情報に基づいて前記船が前記貯蔵設備に着船するまでに要する着船所要時間を取得し、前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方における状態量の目標値と着船所要時間とに基づいて状態量を制御する状態量可変装置の制御値を設定する制御値設定装置と、を備えるものである。
【0086】
上記局面に従えば、船から取得する航行情報に基づいて着船所要時間が取得される。そして、取得した着船所要時間と船及び貯蔵設備の少なくとも一方における状態量の目標値とに基づいて、状態量を制御する状態量可変装置の制御値が設定される。それ故、高い精度の着船所要時間に基づいて制御値を設定できるので、状態量が目標値に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせることができる。
【0087】
第9の局面における液化ガス荷役支援システムでは、第8の局面の液化ガス荷役支援システムにおいて、前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方における状態量は、互いに接続することによって前記船と前記貯蔵設備との間で液化ガスの荷役を行うことを可能にする前記船の船側配管及び前記貯蔵設備の設備側配管の少なくとも一方の配管の温度を含み、前記状態量可変装置は、前記配管を冷却する冷却装置を含み、前記制御値設定装置は、前記配管の目標冷却温度と着船所要時間とに基づいて前記冷却装置の制御値である冷却制御値を設定する。
【0088】
上記局面に従えば、船及び貯蔵設備の少なくとも一方における状態量は、配管の温度であって、配管の目標冷却温度と着船所要時間とに基づいて冷却装置の冷却制御値を制御値設定装置が設定する。それ故、高い精度の着船所要時間に基づいて冷却制御値を設定できるので、配管の配管温度が目標冷却温度に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせることができる。
【0089】
第10の局面における液化ガス荷役支援システムは、第9の局面の液化ガス荷役支援システムにおいて、前記制御値設定装置は、前記配管に対する単位時間当たりの冷却レートが冷却条件を満たすように冷却制御値を設定し、前記冷却条件は、前記配管の冷却レートの絶対値が所定の許容冷却レート以下となることである。
【0090】
上記局面に従えば、冷却レートが冷却条件を満たすように冷却制御値を制御値設定装置が設定する。また、冷却条件が許容冷却レート以下になっている。それ故、配管が急激に冷却されることを抑えることができる。
【0091】
第11の局面における液化ガス荷役支援システムは、第10の局面の液化ガス荷役支援システムにおいて、前記制御値設定装置は、前記配管のモデルに基づいて算出される前記配管で発生するボイルオフガス量である配管内ガス量が第1ボイルオフガス-消費電力条件も満たすように前記冷却装置の制御値を設定し、前記第1ボイルオフガス-消費電力条件は、前記配管内ガス量と前記冷却装置の消費電力に基づく評価関数が所定の配管許容量以下となることである。
【0092】
上記局面に従えば、配管内ガス量が第1ボイルオフガス-消費電力条件も満たすように冷却制御値を制御値設定装置が設定する。そして、第1ボイルオフガス-消費電力条件は配管内ガス量と冷却装置の消費電力に基づく評価関数が所定の配管許容量以下となることである。それ故、配管内に発生するガス量も抑えることができる。
【0093】
第12の局面における液化ガス荷役支援システムは、第8乃至11の何れかの局面の液化ガス荷役支援システムにおいて、前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方における状態量は、前記船及び前記貯蔵設備の少なくとも一方のタンク内のボイルオフガス量を含み、前記状態量可変装置は、前記タンク内のボイルオフガス量を増減させることによってタンク内の圧力を調整するボイルオフガス増減装置を含み、前記制御値設定装置は、前記タンク内の所定の目標圧力と着船所要時間とに基づいて前記ボイルオフガス増減装置の制御値である圧力制御値を設定する。
【0094】
上記局面に従えば、着船所要時間とタンク内の目標圧力とに基づいて圧力制御値を制御値設定装置が設定する。それ故、高い精度の着船所要時間に基づいて圧力制御値を設定できるので、タンク圧が目標圧力に達する時刻を着船時刻に精度よく合わせることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 液化ガス荷役支援システム
2 船
3 貯蔵設備
11 船側タンク
12 船側配管
15 船側冷却装置(状態量可変装置)
16 船側BOG増減装置(状態量可変装置)
25 設備側タンク
26 設備側配管
29 設備側冷却装置(状態量可変装置)
30 設備側BOG増減装置(状態量可変装置)
40 システム側送受信機(受信機)
41 制御値設定装置