(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089590
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】シートロック装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/427 20060101AFI20240626BHJP
B60N 2/20 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B60N2/427
B60N2/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027886
(22)【出願日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】63/476,451
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 崇大
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕二
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD01
3B087CD03
3B087DA06
(57)【要約】
【課題】部品増加や大型化をすることなく、衝撃を吸収することのできるシートロック装置を提供する。
【解決手段】シートロック装置は、乗物ボディに設けられるストライカ1と、乗物用シートSに設けられ、ストライカ1を係止することにより乗物用シートSを保持するロックユニットS4と、を備え、ストライカ1は、乗物ボディに取り付けられるベースブラケット10と、ロックユニットS4により係止されるロッド20と、を有し、ロッド20は、第1軸部21と、第2軸部22と、第1軸部21及び第2軸部22を連結する連結部23と、を有し、第1軸部21は、所定荷重を超える荷重が第1軸部21に入力された場合に変形する変形部21ccを有し、ベースブラケット10は、第1軸部21を支持する第1支持部12と、第2軸部22を支持する第2支持部13と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物ボディに設けられるストライカと、
乗物用シートに設けられ、前記ストライカを係止することにより前記乗物用シートを保持するロックユニットと、
を備え、
前記ストライカは、前記乗物ボディに取り付けられるベースブラケットと、前記ロックユニットにより係止されるロッドと、を有し、
前記ロッドは、第1軸部と、第2軸部と、前記第1軸部及び前記第2軸部を連結する連結部と、を有し、
前記第1軸部は、所定荷重を超える荷重が前記第1軸部に入力された場合に変形する変形部を有し、
前記ベースブラケットは、前記第1軸部を支持する第1支持部と、前記第2軸部を支持する第2支持部と、を有する、シートロック装置。
【請求項2】
前記ロッドのうち前記第1軸部に前記ロックユニットが係止され、
前記第1支持部は、前記ロックユニットが前記第1軸部に係止した部位である係合部よりも前記乗物用シートの前方向に配置される、請求項1に記載のシートロック装置。
【請求項3】
前記ロッドのうち前記第1軸部に前記ロックユニットが係止され、
前記ロックユニットが前記第1軸部に係止した部位である係合部の長さは、前記第1軸部における前記変形部から前記第1支持部に当接する位置までの長さに等しい、請求項1に記載のシートロック装置。
【請求項4】
前記ロッドのうち前記第1軸部に前記ロックユニットが係止され、
前記ロックユニットが前記第1軸部に係止した部位である係合部の長さは、前記第1軸部における前記変形部から前記第1支持部に当接する位置までの長さより短い、請求項1に記載のシートロック装置。
【請求項5】
前記ロッドのうち前記第1軸部に前記ロックユニットが係止され、
前記ロックユニットが前記第1軸部に係止した部位である係合部の長さは、前記第1軸部における前記変形部から前記第1支持部に当接する位置までの長さより長い、請求項1に記載のシートロック装置。
【請求項6】
前記ベースブラケットは、突出部を備え、
前記突出部は、所定荷重を超える荷重が前記第1軸部に入力された場合に、前記第1軸部または前記第2軸部が倒れる方向に配置される、請求項1に記載のシートロック装置。
【請求項7】
前記第1軸部及び前記第2軸部の周面を覆う補強部材を備え、
前記補強部材は、前記変形部よりも前記ベースブラケット側に配置される、請求項1に記載のシートロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用シートを乗物ボディに固定保持するシートロック装置が知られている。当該シートロック装置は、乗物ボディに設けられるストライカと、乗物用シートに設けられ、ストライカを係止するロックユニットとを備える。当該ストライカは、ロックユニットにより係止されるロッド、及び乗物ボディに取り付けられるベース部材を有する。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロッドが荷重により倒れる側のロッドの側面に設けられると共に、ベース部材の表面側に当接するように固定された補強部材を設けたシートロック装置が記載されている。
また、特許文献2には、下記のシートロック装置が記載されている。
具体的には、ベースブラケット(ベース部材)は、ロッドの端部を支持する支持部を有する。そして、支持部は、所定荷重を超える荷重がロッドに入力された場合に変形する。そして、支持部が変形することにより、当該支持部が支持するロッドの端部のベースブラケットに対する移動を許容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5373535号公報
【特許文献2】特許第7059128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、シートロック装置は補強部材を備えるため、部品点数が増加し、コストアップが発生するという問題があった。
また、特許文献2に記載の発明では、ロッドは、ベースブラケットとの固定部よりもロッド先端方向に延びる延長軸部を有するため、ストライカが大型化するという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、部品増加や大型化をすることなく、衝撃を吸収することのできるシートロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載のシートロック装置は、
乗物ボディに設けられるストライカと、
乗物用シートに設けられ、前記ストライカを係止することにより前記乗物用シートを保持するロックユニットと、
を備え、
前記ストライカは、前記乗物ボディに取り付けられるベースブラケットと、前記ロックユニットにより係止されるロッドと、を有し、
前記ロッドは、第1軸部と、第2軸部と、前記第1軸部及び前記第2軸部を連結する連結部と、を有し、
前記第1軸部は、所定荷重を超える荷重が前記第1軸部に入力された場合に変形する変形部を有し、
前記ベースブラケットは、前記第1軸部を支持する第1支持部と、前記第2軸部を支持する第2支持部と、を有する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシートロック装置において、
前記ロッドのうち前記第1軸部に前記ロックユニットが係止され、
前記第1支持部は、前記ロックユニットが前記第1軸部に係止した部位である係合部よりも前記乗物用シートの前方向に配置される。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のシートロック装置において、
前記ロッドのうち前記第1軸部に前記ロックユニットが係止され、
前記ロックユニットが前記第1軸部に係止した部位である係合部の長さは、前記第1軸部における前記変形部から前記第1支持部に当接する位置までの長さに等しい。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のシートロック装置において、
前記ロッドのうち前記第1軸部に前記ロックユニットが係止され、
前記ロックユニットが前記第1軸部に係止した部位である係合部の長さは、前記第1軸部における前記変形部から前記第1支持部に当接する位置までの長さより短い。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のシートロック装置において、
前記ロッドのうち前記第1軸部に前記ロックユニットが係止され、
前記ロックユニットが前記第1軸部に係止した部位である係合部の長さは、前記第1軸部における前記変形部から前記第1支持部に当接する位置までの長さより長い。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のシートロック装置において、
前記ベースブラケットは、突出部を備え、
前記突出部は、所定荷重を超える荷重が前記第1軸部に入力された場合に、前記第1軸部または前記第2軸部が倒れる方向に配置される。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載のシートロック装置において、
前記第1軸部及び前記第2軸部の周面を覆う補強部材を備え、
前記補強部材は、前記変形部よりも前記ベースブラケット側に配置される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、乗物用シートにおいて、前方に向かって所定荷重を超える荷重がかかる等してロックユニットからストライカに前方に引っ張る強い力が加わった場合に、ストライカのロッドが変形部により変形することで当該荷重を吸収できる。つまり、部品増加や大型化をすることなく、衝撃を吸収することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、ストライカにかかる荷重が所定荷重以下である場合に、第1支持部により効率よくロッドを支持できる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、ロックユニットと第1軸部の係合部の長さが、第1軸部における変形部から第1支持部に当接する位置までの長さに等しい構成においても、ストライカのロッドが変形することにより荷重を吸収できる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、ロックユニットと第1軸部の係合部の長さが、第1軸部における変形部から第1支持部に当接する位置までの長さより短い構成においても、ストライカのロッドが変形することにより荷重を吸収できる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、ロックユニットと第1軸部の係合部の長さが、第1軸部における変形部から第1支持部に当接する位置までの長さより長い構成においても、ストライカのロッドが変形することにより荷重を吸収できる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、ストライカのロッドが変形した際に、突出部により第1軸部または第2軸部を支持できるため、ストライカの強度を向上させることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、補強部材により第1軸部及び第2軸部を補強しつつも、ロッドが変形部により変形することを阻害しない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態の乗物用シート及びストライカの外観斜視図である。
【
図2】ロックユニット及びストライカの斜視図である。
【
図4A】ストライカが変形する様子を示す図である。
【
図4B】ストライカが変形する様子を示す図である。
【
図4C】ストライカが変形する様子を示す図である。
【
図5A】変形例1のストライカを示す正面図である。
【
図5B】変形例1のストライカを示す乗物用シート右方向から見た図である。
【
図6A】変形例2のストライカを示す正面図である。
【
図6B】変形例2のストライカを示す乗物用シート右方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0023】
図1は、本実施形態の乗物用シートS及びストライカ1の外観斜視図である。
なお、乗物用シートSのシートバックS1に対して着座者が着座する側が前方側(車体前方側)となる。
【0024】
乗物用シートSは、例えば自動車等の車両に設置されるシートである。
乗物用シートSは、
図1に示すように、シートバックS1と、シートクッションS2と、ヘッドレストS3と、ロックユニットS4と、シートベルトS5と、から主に構成される。
【0025】
シートバックS1は、シートに着座した乗員(以下、着座者という)の腰部及び背部を支持する。
シートバックS1は、シートバックS1の骨格をなす金属製のフレーム(不図示)と、クッションパッド(不図示)と、カバーとを備える。
フレームは、ウレタンフォーム等の比較的軟質な樹脂発泡材からなるクッションパッドによって被覆されている。
クッションパッドは、皮革、織布等からなるカバーによって被覆されている。
【0026】
シートクッションS2は、着座者の臀部及び大腿部を支持する。
シートクッションS2も、シートバックS1と同様に、金属製のフレームと、フレームを被覆するクッションパッドと、クッションパッドを被覆するカバーとを備える。
【0027】
シートベルトS5は、着座者をシートクッションS2及びシートバックS1に拘束する。
【0028】
乗物用シートSにおいて、シートバックS1は、シートバックS1の下端部に設けられる傾倒軸(不図示)を中心に、シートクッションS2に対して乗物用シートS前後方向に傾倒可能である。傾倒軸は、固定ブラケットS6を介して乗物ボディに固定される。
乗物用シートSは、倒伏状態と、起立状態とに設定可能である。
倒伏状態とは、シートバックS1がシートクッションS2の上に折り重なる状態である。
起立状態とは、シートバックS1がシートクッションS2に対して起立している状態である。
【0029】
ロックユニットS4は、乗物用シートSを起立状態から倒伏状態へ切り替えるための装置からなり、シートバックS1の上方部分に取り付けられている。
ロックユニットS4は、ロック部材S4aと、ロック操作レバーS4bと、を主に備える。
ロック部材S4aは、乗物ボディに取り付けられたストライカ1に対して着脱可能に係合する。
ロック操作レバーS4bは、ロック部材S4aをストライカ1にロック可能なロック可能状態と、ロック不能なロック不能状態との間で切り替える。
ロックユニットS4及びストライカ1は、シートロック装置である。
【0030】
乗物用シートSでは、起立状態のときに乗員がロック操作レバーS4bを操作すると、ロックユニットS4によりシートバックS1のロック状態が解除される。当該ロック状態の解除に伴って、乗員がシートバックS1をシート前方側へ回転させて折り畳むことができ、乗物用シートSが起立状態から倒伏状態へ切り替わる。
なお、乗物用シートSを倒伏状態から起立状態へ復帰させたい場合には、乗員がシートバックS1を不図示の渦巻きバネの付勢力に抗して手で持ち上げる等して、ロック部材S4aをストライカ1に係合させて、シートバックS1をロック状態に切り替えれば良い。
【0031】
ストライカ1は、乗物用シートSを起立状態でロックするための構成部品である。
ストライカ1は、車体の側方部分のうち、乗物用シートSのシート幅方向の外側部分に対向する位置に配置される。
【0032】
図2は、ロックユニットS4及びストライカ1の斜視図であり、
図3は、ストライカ1の正面図である。
ストライカ1は、
図2、
図3に示すように、ベースブラケット10と、ロッド20と、から主に構成される。
【0033】
ベースブラケット10は、乗物ボディに固定されるベースプレートであり、鋼材等の金属材料からなる板状の部材である。また、ベースブラケット10は、ロッド20よりも剛性が高く設定されている。
ベースブラケット10は、ベース本体部11と、第1支持部12と、第2支持部13と、取付部14と、から主に構成されている。
【0034】
ベース本体部11は、略平板形状であり、前方に向かうにつれて徐々に上下寸法が短くなるように形成されている。
【0035】
第1支持部12及び第2支持部13は、乗物用シートSの前後方向に互いに間隔をあけてベースブラケット10の略中央部分に形成される。
第1支持部12は、第2支持部13よりも乗物用シートS前側に位置する。
第1支持部12は、ロッド20の後述する第1端部21aを固定するための貫通孔12aを有する。
第2支持部13は、第1支持部12よりも乗物用シートS後ろ側に位置する。
第2支持部13は、ロッド20の後述する第2端部22aを固定するための貫通孔13aを有する。
【0036】
また、第1支持部12及び第2支持部13は、
図3に示すように、ベース本体部11よりもロッド20の後述する連結部23に向かって膨出する膨出形状を有している。そして、第1支持部12及び第2支持部13は、裏面(乗物ボディ側の面)において凹形状を有している。
そのため、ロッド20との組み付け剛性を高めることができる。また、ロッド20の第1端部21a及び第2端部22aがベースブラケット10から乗物ボディ側に張り出さないように構成することができる。
【0037】
取付部14は、第1支持部12及び第2支持部13を囲むように複数形成され、ベースブラケット10を乗物ボディに取り付けるために用いられる。
取付部14は、乗物ボディに固定するための複数の取り付け穴を有しており、不図示の取り付け部材(取り付けボルト、リベット等)を用いて乗物ボディに当接した状態で取り付けられる。
本実施形態において、当該取り付け穴は、ベース本体部11の後端部上下に2つ、ベース本体部11の前端部上に1つ設けられている。また、ベース本体部11の後端部下側に設けられた取り付け穴は長孔である。
【0038】
ロッド20は、
図3に示すように、ベースブラケット10上に取り付けられ、ロック部材S4aと係合するためにロック部材S4aに向かって長尺となるように延びている、U字を屈曲させた形状の係合部材である。
ロッド20は、鋼材等の金属材料からなる棒状または線状の部材である。
ロッド20は、第1軸部21と、第2軸部22と、連結部23と、から主に構成される。
【0039】
第1軸部21は、第1端部21a、第1固定部21b、第1軸本体部21cを有する。
第1端部21aは、第1軸部21におけるベースブラケット10側の端部である。
第1端部21aは、第1支持部12に、貫通孔12aを介して取り付けられ、第1支持部12の凹形状に収容されるため、ベースブラケット10から乗物ボディ側に突出しない。
【0040】
第1固定部21bは、貫通孔12aの縁部をベース本体部11の板厚方向に挟持することによって、第1端部21aを第1支持部12に固定する。
第1固定部21bは、例えば、かしめ加工によって形成される。
【0041】
第1軸本体部21cは、ベースブラケット10側から乗物用シートS側に向かって延びている。
第1軸本体部21cは、第1本体部21ca、第2本体部21cb、変形部21cc、第3本体部21cdを有する。
第1本体部21ca及び第3本体部21cdは、後述する第2軸本体部22cと平行に延びている。すなわち、第1本体部21ca及び第3本体部21cdは、乗物用シートS左右方向に平行に延びている。
第2本体部21cbは、第1本体部21caと、変形部21ccとの間に設けられ、乗物用シートS左右方向に対して斜め方向に延びている。
変形部21ccは、第2本体部21cbと、第3本体部21cdとの間に設けられ、第1軸本体部21cをロッド20の内側に屈曲させる。
【0042】
第2軸部22は、第2端部22a、第2固定部22b、第2軸本体部22cを有する。
第2端部22aは、第2軸部22におけるベースブラケット10側の端部である。
第2端部22aは、第2支持部13に、貫通孔13aを介して取り付けられ、第2支持部13の凹形状に収容されるため、ベースブラケット10から乗物ボディ側に突出しない。
【0043】
第2固定部22bは、貫通孔13aの縁部をベース本体部11の板厚方向に挟持することによって、第2端部22aを第2支持部13に固定する。
第2固定部22bは、例えば、かしめ加工によって形成される。
【0044】
第2軸本体部22cは、ベースブラケット10側から乗物用シートS側に向かって延びている。すなわち、第2軸本体部22cは、乗物用シートS左右方向に平行に延びている。
【0045】
また、第1軸部21のベースブラケット10から突出している部分の長さは、第2軸部22のベースブラケット10から突出している部分の長さよりも長くなるように設定されている。
第1軸部21のベースブラケット10から突出している部分の長さとは、第1軸部21の第1支持部12に当接する位置から連結部23側の端部までの長さである。
第2軸部22のベースブラケット10から突出している部分の長さとは、第2軸部22の第2支持部13に当接する位置から連結部23側の端部までの長さである。
【0046】
連結部23は、第1軸本体部21c及び第2軸本体部22cの延出端部(ベースブラケット10と反対側の端部)を連結する。
【0047】
図4Aは、以上のように構成されたストライカ1のロッド20が所定荷重を超える荷重によって変形する様子を示す。
【0048】
ロッド20の第1軸部21は、ロック部材S4aに係合する。
具体的には、
図4Aに示すように、第1軸部21の第3本体部21cdにロック部材S4aが係合する。
【0049】
例えば、車両前突時に、シートベルトS5によって拘束された着座者の上体に働く慣性に起因した荷重Fはロック部材S4aを介して第3本体部21cdに入力される。
所定荷重以下である荷重Fが第3本体部21cdに入力された場合、第3本体部21cdにかかる荷重Fを、第3本体部21cdよりも乗物用シートS前方向にある第1支持部12で耐えるように作用する。
具体的には、第1支持部12は、第3本体部21cdとロック部材S4aとの係合部よりも乗物用シートS前方向に配置されている。そのため、この配置関係により第1支持部12が筋交いのように機能する。したがって、第1支持部12が、第3本体部21cdとロック部材S4aとの係合部よりも乗物用シートS後ろ方向に配置されている場合よりも支持剛性が高い構造を実現している。
つまり、ストライカ1にかかる荷重が所定荷重以下である場合に、第1支持部12により効率よくロッド20を支持できる。
【0050】
一方、所定荷重を超える荷重Fが第3本体部21cdに入力された場合、
図4Aに示す二点鎖線のように、変形部21ccが伸びる方向に作用し、第1軸部21と第2軸部22の周長が等しくなるように変形する。これにより、第1支持部12及び第2支持部13に荷重Fによる応力を分散させることができる。
つまり、変形部21ccによりロッド20を変形しやすくし、ロッド20が荷重Fによる応力によって破断することを抑制できる。
【0051】
ロッドに変形部を有さない従来の構成では、所定荷重を超える荷重Fがロッドに入力された場合、第1支持部12にかかる応力が本実施形態よりも大きい。そのため、第1支持部12周辺に補強構造が必要となり、部品点数増加やコストアップを招いていた。
一方、本実施形態では、ロッド20が変形部21ccを有することで、所定荷重を超える荷重Fがロッド20に入力されると、
図4Aに示す二点鎖線のようにロッド20を変形させることができる。これにより、車両前突時等において発生するエネルギーの一部が、ロッド20の変形に消費される。したがって、衝撃をシートロック装置(ロックユニットS4及びストライカ1)によって吸収し、着座者が受ける衝撃を緩和することができる。
上記したように、本実施形態ではロッド20に変形部21ccを備えることにより上記効果を実現できる。つまり、シートロック装置を必要以上に大型化することなく、且つ補強部材等の部品を増やすことなく、上記効果を実現できる。
【0052】
また、
図4Aに示すように、第3本体部21cdとロック部材S4aとの係合部の長さをaとし、変形部21ccから第1支持部12に当接する位置までの長さをbとする。
図4Aに示す例においては、aとbの長さは同等である。
なお、aとbの長さについて、
図4Bに示すように、bは、aより長くても良い。また、
図4Cに示すように、bは、aより短くてもよい。
【0053】
次に、シートロック装置(ロックユニットS4及びストライカ1)の製造方法について説明する。
作業者は、まず、変形部21ccを有する第1軸部21と、第2軸部22と、連結部23と、を備えるようにロッド20を形成する(第1工程)。
次に、作業者は、第1工程において形成したロッド20をベースブラケット10に固定する(第2工程)。
なお、第1工程と第2工程の順序は、逆であってもよい。つまり、ロッド20をベースブラケット10に固定した後に、ロッド20が変形部21ccを有する第1軸部21と、第2軸部22と、連結部23と、を備えるように形成してもよい。
以上により、ストライカ1を含むシートロック装置が製造される。
【0054】
(変形例1)
次に、上記実施形態の変形例1について説明する。
以下では、上記実施形態との差異を中心に説明する。
【0055】
図5A、
図5Bに、変形例1のストライカ1を示す。
図5Aは、ストライカ1の正面図である。なお、
図5Aに示す二点鎖線は、
図4Aと同様に所定荷重を超える荷重が第3本体部21cdに入力され、ロッド20が変形した状態を示す。
図5Bは、ストライカ1を乗物用シートS右方向から見た図である。なお、
図5Bにおいては、ロッド20は省略されている。
【0056】
変形例1では、ベースブラケット10は、第1突出部15a(突出部)と、第2突出部15b(突出部)をさらに備える。
第1突出部15aは、貫通孔12aよりも乗物用シートS前方向に設けられる。
第2突出部15bは、貫通孔13aよりも乗物用シートS前方向に設けられる。
本実施形態の第1突出部15a及び第2突出部15bは、ベースブラケット10におけるベース本体部11をそれぞれU字に切り起こすことで形成される。
図5Bに示す破線は、第1突出部15a及び第2突出部15bを折り曲げる位置を示す。
なお、第1突出部15a及び第2突出部15bは、ベース本体部11をそれぞれコ字やM字に切り起こすことで形成されてもよい。
第1突出部15aを起こす角度は、
図5Aに示すように、変形したロッド20の第1軸部21を支持できる角度であればよい。
第2突出部15bを起こす角度は、
図5Aに示すように、変形したロッド20の第2軸部22を支持できる角度であればよい。
【0057】
つまり、突出部(第1突出部15a)は、所定荷重を超える荷重が第1軸部21に入力された場合に、第1軸部21が倒れる方向に配置される。
また、突出部(第2突出部15b)は、所定荷重を超える荷重が第1軸部21に入力された場合に、第2軸部22が倒れる方向に配置される。
【0058】
以上のように構成された第1突出部15a及び第2突出部15bにより、ロッド20が変形した場合に、第1軸部21及び第2軸部22を支持することができる。したがって、ストライカ1の強度を向上させることができる。
【0059】
なお、第1突出部15a及び第2突出部15bは、ベースブラケット10とは別部材により形成されてもよい。
【0060】
次に、変形例1のシートロック装置(ロックユニットS4及びストライカ1)の製造方法について説明する。
作業者は、上記実施形態と同様に第1工程を実施する。
次に、作業者は、ベースブラケット10に第1突出部15a及び第2突出部15bを形成する(第3工程)。
次に、作業者は、上記実施形態と同様に第2工程を実施する。
なお、第1工程、第3工程、第2工程の順序は、上記の例に限らない。
以上により、変形例1のストライカ1を含むシートロック装置が製造される。
【0061】
(変形例2)
次に、上記実施形態の変形例2について説明する。
以下では、上記実施形態との差異を中心に説明する。
【0062】
図6A、
図6Bに、変形例2のストライカ1を示す。
図6Aは、ストライカ1の正面図である。なお、
図6Aに示す二点鎖線は、
図4Aと同様に所定荷重を超える荷重が第3本体部21cdに入力され、ロッド20が変形した状態を示す。
図6Bは、ストライカ1を乗物用シートS右方向から見た図である。
【0063】
変形例2では、ストライカ1は、補強部材30をさらに備える。
補強部材30は、第1軸部21及び第2軸部22の周面を覆うように、且つ第1支持部12及び第2支持部13に当接するように構成される。
補強部材30は、例えば、溶接によりベースブラケット10に固定される。
【0064】
なお、補強部材30が配置される位置は
図6A、
図6Bに示す例に限らないが、変形部21ccよりもベースブラケット10側に設けられるのが好ましい。これにより、所定荷重を超える荷重が第3本体部21cdに入力された場合に、第1軸部21及び第2軸部22を補強しつつも、ロッド20が変形部21ccにより変形することを阻害しない。
【0065】
次に、変形例2のシートロック装置(ロックユニットS4及びストライカ1)の製造方法について説明する。
作業者は、上記実施形態と同様に第1工程及び第2工程を実施する。
次に、作業者は、補強部材30により、第1軸部21及び第2軸部22の周面を覆い、且つ第1支持部12及び第2支持部13に当接させる(第4工程)。
次に、作業者は、ベースブラケット10に補強部材30を固定する(第5工程)。
なお、第1工程、第2工程の順序は、上記の例に限らない。
以上により、変形例2のストライカ1を含むシートロック装置が製造される。
【0066】
以上、説明したとおり、本実施形態におけるシートロック装置は、乗物ボディに設けられるストライカ1と、乗物用シートSに設けられ、ストライカ1を係止することにより乗物用シートSを保持するロックユニットS4と、を備え、ストライカ1は、乗物ボディに取り付けられるベースブラケット10と、ロックユニットS4により係止されるロッド20と、を有し、ロッド20は、第1軸部21と、第2軸部22と、第1軸部21及び第2軸部22を連結する連結部23と、を有し、第1軸部21は、所定荷重を超える荷重が第1軸部21に入力された場合に変形する変形部21ccを有し、ベースブラケット10は、第1軸部21を支持する第1支持部12と、第2軸部22を支持する第2支持部13と、を有する。
したがって、乗物用シートSにおいて、前方に向かって所定荷重を超える荷重がかかる等してロックユニットS4からストライカ1に前方に引っ張る強い力が加わった場合に、ストライカ1のロッド20が変形部21ccにより変形することで荷重を吸収できる。つまり、部品増加や大型化をすることなく、衝撃を吸収することができる。
【0067】
また、本実施形態におけるシートロック装置において、ロッド20のうち第1軸部21にロックユニットS4が係止され、第1支持部12は、ロックユニットS4が第1軸部21に係止した部位である係合部よりも乗物用シートSの前方向に配置される。
したがって、ストライカ1にかかる荷重が所定荷重以下である場合に、第1支持部12により効率よくロッド20を支持できる。
【0068】
また、本実施形態におけるシートロック装置において、ロッド20のうち第1軸部21にロックユニットS4が係止され、ロックユニットS4が第1軸部21に係止した部位である係合部の長さは、第1軸部21における変形部21ccから第1支持部12に当接する位置までの長さに等しい。
したがって、ロックユニットS4と第1軸部21の係合部の長さが、第1軸部21における変形部21ccから第1支持部12に当接する位置までの長さに等しい構成においても、ストライカ1のロッド20が変形することにより荷重を吸収できる。
【0069】
また、本実施形態におけるシートロック装置において、ロッド20のうち第1軸部21にロックユニットS4が係止され、ロックユニットS4が第1軸部21に係止した部位である係合部の長さは、第1軸部21における変形部21ccから第1支持部12に当接する位置までの長さより短い。
したがって、ロックユニットS4と第1軸部21の係合部の長さが、第1軸部21における変形部21ccから第1支持部12に当接する位置までの長さより短い構成においても、ストライカ1のロッド20が変形することにより荷重を吸収できる。
【0070】
また、本実施形態におけるシートロック装置において、ロッド20のうち第1軸部21にロックユニットS4が係止され、ロックユニットS4が第1軸部21に係止した部位である係合部の長さは、第1軸部21における変形部21ccから第1支持部12に当接する位置までの長さより長い。
したがって、ロックユニットS4と第1軸部21の係合部の長さが、第1軸部21における変形部21ccから第1支持部12に当接する位置までの長さより長い構成においても、ストライカ1のロッド20が変形することにより荷重を吸収できる。
【0071】
また、本実施形態におけるシートロック装置において、ベースブラケット10は、突出部(第1突出部15a、第2突出部15b)を備え、突出部は、所定荷重を超える荷重が第1軸部21に入力された場合に、第1軸部21または第2軸部22が倒れる方向に配置される。
したがって、ストライカ1のロッド20が変形した際に、突出部により第1軸部21または第2軸部22を支持できるため、ストライカ1の強度を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態におけるシートロック装置は、第1軸部21及び第2軸部22の周面を覆う補強部材30を備え、補強部材30は、変形部21ccよりもベースブラケット10側に配置される。
したがって、補強部材30により第1軸部21及び第2軸部22を補強しつつも、ロッド20が変形部21ccにより変形することを阻害しない。
【0073】
また、本実施形態におけるシートロック装置の製造方法について説明する。すなわち、乗物ボディに設けられるストライカ1と、乗物用シートSに設けられ、ストライカ1を係止することにより乗物用シートSを保持するロックユニットS4と、を備え、ストライカ1は、乗物ボディに取り付けられるベースブラケット10と、ロックユニットS4により係止されるロッド20と、を有し、ロッド20は、第1軸部21と、第2軸部22と、第1軸部21及び第2軸部22を連結する連結部23と、を有し、第1軸部21は、所定荷重を超える荷重が第1軸部21に入力された場合に変形する変形部21ccを有し、ベースブラケット10は、第1軸部21を支持する第1支持部12と、第2軸部22を支持する第2支持部13と、を有するシートロック装置の製造方法であって、ロッド20を形成する第1工程と、ロッド20をベースブラケット10に固定する第2工程とを含む。
したがって、乗物用シートSにおいて、前方に向かって所定荷重を超える荷重がかかる等してロックユニットS4からストライカ1に前方に引っ張る強い力が加わった場合に、ストライカ1のロッド20が変形部21ccにより変形することで荷重を吸収できる、シートロック装置を製造できる。つまり、部品増加や大型化をすることなく、衝撃を吸収することができる、シートロック装置を製造できる。
【0074】
また、本実施形態におけるシートロック装置の製造方法において、ロッド20のうち第1軸部21にロックユニットS4が係止され、第1支持部12は、ロックユニットS4が第1軸部21に係止した部位である係合部よりも乗物用シートSの前方向に配置される。
したがって、ストライカ1にかかる荷重が所定荷重以下である場合に、第1支持部12により効率よくロッド20を支持できる、シートロック装置を製造できる。
【0075】
また、本実施形態におけるシートロック装置の製造方法において、ロッド20のうち第1軸部21にロックユニットS4が係止され、ロックユニットS4が第1軸部21に係止した部位である係合部の長さは、第1軸部21における変形部21ccから第1支持部12に当接する位置までの長さに等しい。
したがって、ロックユニットS4と第1軸部21の係合部の長さが、第1軸部21における変形部21ccから第1支持部12に当接する位置までの長さに等しい構成であって、ストライカ1のロッド20が変形することにより荷重を吸収できる、シートロック装置を製造できる。
【0076】
また、本実施形態におけるシートロック装置の製造方法において、ロッド20のうち第1軸部21にロックユニットS4が係止され、ロックユニットS4が第1軸部21に係止した部位である係合部の長さは、第1軸部21における変形部21ccから第1支持部12に当接する位置までの長さより短い。
したがって、ロックユニットS4と第1軸部21の係合部の長さが、第1軸部21における変形部21ccから第1支持部12に当接する位置までの長さより短い構成であって、ストライカ1のロッド20が変形することにより荷重を吸収できる、シートロック装置を製造できる。
【0077】
また、本実施形態におけるシートロック装置の製造方法において、ロッド20のうち第1軸部21にロックユニットS4が係止され、ロックユニットS4が第1軸部21に係止した部位である係合部の長さは、第1軸部21における変形部21ccから第1支持部12に当接する位置までの長さより長い。
したがって、ロックユニットS4と第1軸部21の係合部の長さが、第1軸部21における変形部21ccから第1支持部12に当接する位置までの長さより長い構成であって、ストライカ1のロッド20が変形することにより荷重を吸収できる、シートロック装置を製造できる。
【0078】
また、本実施形態におけるシートロック装置の製造方法は、ベースブラケット10に突出部(第1突出部15a、第2突出部15b)を形成する第3工程を含み、突出部は、所定荷重を超える荷重が第1軸部21に入力された場合に、第1軸部21または第2軸部22が倒れる方向に配置される。
したがって、ストライカ1のロッド20が変形した際に、突出部により第1軸部21または第2軸部22を支持できるため、ストライカ1の強度を向上させることができる、シートロック装置を製造できる。
【0079】
また、本実施形態におけるシートロック装置の製造方法は、補強部材30により、第1軸部21及び第2軸部22の周面を覆う第4工程を含み、補強部材30は、変形部21ccよりもベースブラケット10側に配置される。
したがって、補強部材30により第1軸部21及び第2軸部22を補強しつつも、ロッド20が変形部21ccにより変形することを阻害しない、シートロック装置を製造できる。
【0080】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、自動車等の車両に設置される乗物用シートSを例にして本発明を説明したが、本発明は、船舶や航空機といった車両以外の乗物用のシートにも適用可能である。
【0081】
また、上記実施形態では、ロックユニットS4は、シートバックS1の上方部分に取り付けられているとしたがこれに限らない。ロックユニットS4及びストライカ1は、車体の所定位置にそれぞれ設ければ良く、ドア、乗物用シート、車両扉(ワンボックス等の車両のバックドア)、トランク、ボンネット等の箇所に設けられ、ロックユニットS4及びストライカ1の何れか一方が移動側に何れか他方側を固定側に設ければよい。
【符号の説明】
【0082】
S 乗物用シート
S1 シートバック
S2 シートクッション
S3 ヘッドレスト
S4 ロックユニット
S4a ロック部材
S4b ロック操作レバー
S5 シートベルト
S6 固定ブラケット
1 ストライカ
10 ベースブラケット
11 ベース本体部
12 第1支持部
12a 貫通孔
13 第2支持部
13a 貫通孔
14 取付部
15a 第1突出部
15b 第2突出部
20 ロッド
21 第1軸部
21a 第1端部
21b 第1固定部
21c 第1軸本体部
21ca 第1本体部
21cb 第2本体部
21cc 変形部
21cd 第3本体部
22 第2軸部
22a 第2端部
22b 第2固定部
22c 第2軸本体部
23 連結部
30 補強部材