(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089628
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】畳、畳表部
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
E04F15/02 102K
E04F15/02 102C
E04F15/02 102E
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194257
(22)【出願日】2023-11-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2022203953
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】512060909
【氏名又は名称】株式会社浅井商店
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】淺井 泰勝
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA26
2E220AD03
2E220AD11
2E220GA22X
2E220GA28X
2E220GB35X
2E220GB42X
(57)【要約】
【課題】シワやヨレを防ぎ、高い物性強度を有し、防炎性能に優れたファブリック畳
(登録商標)20を提供すること。
【解決手段】畳床21を覆う畳表22に植物性天然繊維と化学繊維の混紡糸の布地を用い
たファブリック畳20において、畳床21と畳表22との間に、ポリエステル繊維を含む
ニードルパンチ不織布 24が配置され、ニードルパンチ不織布24は畳床21に対し貼
付固定され、畳表22とニードルパンチ不織布24とはこれらの間に配置されたホットメ
ルト接着剤により全面固着されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畳床を覆う畳表に植物性天然繊維と化学繊維との混紡糸の布地を用いたファブリック畳において、前記畳床と前記畳表との間に、低融点の繊維を含み、ニードルパンチ法により製造された不織布であるニードルパンチ不織布が配置され、前記畳表と前記ニードルパンチ不織布とがこれらの間に配置されたホットメルト接着剤により全面固着されていることを特徴とするファブリック畳。
【請求項2】
請求項1に記載のファブリック畳において、前記畳表の表面は抗菌機能、撥水機能及び防汚機能を有するファブリック畳。
【請求項3】
請求項1または2に記載のファブリック畳において、前記畳表の植物性天然繊維はコットン繊維であり、前記畳表の化学繊維は、少なくともモダクリル繊維とナイロン繊維とを含むものであり、前記植物性天然繊維は前記畳表の総重量の50%以上であるファブリック畳。
【請求項4】
請求項1または2に記載のファブリック畳において、前記畳床が低融点のポリエステルで製造された繊維である低融点のポリエステル繊維を含むファブリック畳。
【請求項5】
請求項1または2に記載のファブリック畳において、
前記畳床が低融点のポリエステルで製造された繊維である低融点のポリエステル繊維と植物性天然繊維とを含み、
前記ニードルパンチ不織布が、前記低融点の繊維として低融点のポリエステル繊維を含み、
前記畳床に含まれる低融点のポリエステル繊維と前記ニードルパンチ不織布に含まれる低融点のポリエステル繊維とが同じ種類のものであるファブリック畳。
【請求項6】
請求項1または2に記載のファブリック畳において、前記畳床が植物性天然繊維を含み、前記植物性天然繊維が、少なくともケナフ繊維とヤシ繊維とを含むファブリック畳。
【請求項7】
請求項1または2に記載のファブリック畳において、前記ニードルパンチ不織布が前記畳床に貼り付けられているファブリック畳。
【請求項8】
請求項1または2に記載のファブリック畳において、少なくとも前記畳床の上面と前記ニードルパンチ不織布との間に、多孔質物体を含む多孔質層を設けたファブリック畳。
【請求項9】
畳床を覆う畳表に植物性天然繊維と化学繊維との混紡糸の布地を用い、
前記畳床と前記畳表との間に、低融点繊維を含み、ニードルパンチ法により製造された不織布であるニードルパンチ不織布が配置され、前記畳表と前記ニードルパンチ不織布とはこれらの間に配置されたホットメルト接着剤により全面固着されたファブリック畳の製造方法において、
前記ニードルパンチ不織布を加熱処理することなく前記ニードルパンチ不織布の繊維構造を破壊しない程度の加圧処理をすることにより、前記畳床に対し前記ニードルパンチ不織布を貼付固定し、
前記畳表と前記ニードルパンチ不織布の間にホットメルト接着剤を導入し、
前記ホットメルト接着剤を固化することにより、前記畳表に対し前記ニードルパンチ不織布を全面固着するファブリック畳の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のファブリック畳の製造方法が、前記ニードルパンチ不織布を加熱処理することなく前記ニードルパンチ不織布の繊維構造を破壊しない程度の加圧処理をすることにより、前記畳床に対し前記ニードルパンチ不織布を貼付固定する工程を含むファブリック畳の製造方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載のファブリック畳の製造方法において、前記畳床は低融点のポリエステルで製造された繊維である低融点のポリエステル繊維を含むものであるファブリック畳の製造方法。
【請求項12】
畳床を覆う畳表に植物性天然繊維と化学繊維との混紡糸の布地を用いたファブリック畳において、前記畳表に、低融点の繊維を含み、ニードルパンチ法により製造された不織布であるニードルパンチ不織布が全面固着され、少なくとも前記畳床と前記畳表との間に、多孔質物体を含む多孔質層を設けたことを特徴とするファブリック畳。
【請求項13】
請求項12に記載のファブリック畳において、前記多孔質物体が、竹炭と活性炭との少なくとも一方を含むファブリック畳。
【請求項14】
請求項12または13に記載のファブリック畳において、前記多孔質層と前記畳表との間に機能部を設けたファブリック畳。
【請求項15】
請求項12または13に記載のファブリック畳において、前記畳床が、ケナフ繊維とヤシ繊維との少なくとも一方を含み、前記多孔質層が、前記畳床の上面と下面との両方に、それぞれ、直接接した状態で設けられたファブリック畳。
【請求項16】
請求項12または13に記載のファブリック畳が、床材の上に置くことにより敷かれる置き畳であるファブリック畳。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は畳表に植物性天然繊維を含む布地を使用したファブリック畳に関する。
【背景技術】
【0002】
植物性天然繊維は化学繊維より吸放湿性の高さという点で優れている。肌が素材表面に接したときの快適性は素材の吸放湿性によるところが大きいので、綿、麻、黄麻等の植物性天然繊維を含む布地は快適な畳表として適材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、植物性天然繊維を含む布地を畳表として使用した場合、伸縮性やドレープ性の高さからシワやヨレが発生し、また物性強度の不足から破れやすい。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑み、シワやヨレを防ぎ、高い物性強度を有するファブリック畳を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ファブリック畳において、畳床を覆う畳表に植物性天然繊維と化学繊維との混紡糸の布地を用い、畳床と畳表との間に、低融点繊維を含み、ニードルパンチ法により製造された不織布であるニードルパンチ不織布が配置されるとともに、畳表とニードルパンチ不織布とがこれらの間に配置されたホットメルト接着剤により全面固着されるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、畳表の裏面全体にニードルパンチ不織布を全面固着するので、シワやヨレを防ぎ、物性強度を高めることができる。
【0008】
さらに、畳表に、植物性天然繊維と自己消火性を有する化学繊維の混紡糸の布地を使用した場合には、畳の防炎性能を高めることができる。また、畳表の表面に抗菌処理と撥水、防汚処理とを施した場合には、汚れが付きにくく、衛生的な畳とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1に係るファブリック畳を示す部分断面図である。
【
図2】本実施例1に係るファブリック畳の製造工程のフローチャートである。
【
図3】本発明の実施例2に係るファブリック畳を示す部分断面図である。
【実施例0010】
以下に本発明を図面に基づき説明する。
図1に本発明の実施例1に係るファブリック畳20の部分断面図を示す。本実施例1に係るファブリック畳は、いわゆる置き畳(置敷き畳と称する場合もある)であり、例えば、フローリング(床板、床材)等の上に置いて用いるものである。本ファブリック畳20は畳床21、畳床21の表面を覆う畳表22、畳床21の裏面を覆う裏地23、畳床21と畳表22の間に介在させたニードルパンチ不織布24、及び畳床 21と裏地23の間に介在させたニードルパンチ不織布25等で構成されている。ニードルパンチ不織布24,25とは、いわゆる、ニードルパンチ法により製造された不織布をいう。
【0011】
畳床21は、植物性天然繊維と、低融点の繊維としての低融点のポリエステルで製造された低融点のポリエステル繊維等とから成る。低融点のポリエステル繊維としては、ポリエステル系バインダ繊維(熱融着繊維)が用いられている。低融点のポリエステル繊維は、例えば、軟化点が70℃~80℃ぐらいで、融点が130℃~220℃ぐらいのものとすることができる。そのため、低融点のポリエステル繊維を加熱することにより、植物性天然繊維同士を良好に接着することができる。植物性天然繊維として、ケナフ繊維、ヤシ繊維、ジュート、サイザル等が該当する。
本実施例において、植物性天然繊維としてケナフ繊維とヤシ繊維の2種類の植物性天然繊維が使用される。ケナフ繊維は軽く、対摩擦強度が大きく、弾性率が高いことに加え、多孔質的な構造から、吸放湿性、吸音性、断熱保温性等の機能を有する。ヤシ繊維は硬くコシがある。摩擦にも強いうえに、太陽光や温度の変化による変形や、変色、劣化等の変質を起こしにくい耐候性を持っている。
【0012】
畳床21は、例えば、以下のように製造することができる。
[1]植物性天然繊維とバインダである低融点のポリエステル繊維とを配合し、エアを用いて嵩高として繊維の集積体を形成する。
[2]この繊維の集積体を、高速で上下するニードルで繰り返し突き刺すニードルパンチ法により、これら植物性天然繊維と低融点のポリエステル繊維とを絡ませる。
[3]次に、これら植物性繊維と低融点のポリエステル繊維とを絡ませたものを、ヒートロールで巻き取る。それにより、バインダとしての低融点のポリエステル繊維が溶けて、固化することにより(以下、熱融着と称する場合がある)植物性天然繊維同士を空気層を介して適度に接着させる。また、ヒートロールにより圧縮させることにより、厚さ約5mm の不織布状のシートが得られる。
[4]その不織布状のシートを、適当な大きさにカットする。このカットしたものが畳床21である。畳床21は、硬質不織布マットと称することができる。
【0013】
このようにニードルパンチ法により植物性天然繊維と低融点のポリエステル繊維とが絡まされるため、植物性天然繊維同士の間に空気層が形成される。その結果、畳床21は、弾力性、吸音性、断熱保温性等の機能を有する。
また、畳床21が植物性天然繊維を含むため、植物性天然繊維の特徴である吸放湿性を有するものとすることができる。仮に、畳床を発砲スチロール等の樹脂により製造した場合には、放湿性が得られず、湿気がこもる(たまる)場合がある。そのため、ファブリック畳20を使用する場合に、むれたり、肌触りが悪い等不快感を感じる場合がある。それに対して、畳床21を植物性天然繊維を含むものとすることにより、湿気がこもり難くなるため、不快感を感じ難くすることができる。
【0014】
さらに、植物性天然繊維に含まれるヤシ繊維は硬くコシがある特性を有するが、このヤシ繊維同士が、低融点のポリエステル繊維の熱融着により接着することで、畳床としての強度が生まれ、型崩れを起こし難くすることができる。また、植物性天然繊維同士が密接に絡み合って、接着されているため、切断面から繊維がほつれ難くすることができる。
【0015】
畳表22は植物性天然繊維と化学繊維との混紡糸の布地からなり、植物性天然繊維としてコットンを使用している。コットンは繊維が中空でねじれ構造となっていることから、弾力性、保湿性、吸放湿性があり、柔らかな感触とサラサラとした触り心地の快適性を生む。また耐熱性があるので、熱による変形が少ない。
【0016】
畳表22を構成する化学繊維にはモダクリル繊維と、ナイロン繊維とが使用されている。モダクリル繊維は自己消火性を有する難燃繊維であり、様々な天然繊維や合成繊維と組み合わせても優れた難燃効果を発揮する。また、ナイロン繊維は耐久性に優れており、摩耗に強く裂け難い。
本実施例の畳表22は、ほぼ、植物性天然繊維(コットン)55%、モダクリル繊維29%、ナイロン繊維16%の比率で構成されている。
【0017】
またこの畳表22は、植物性天然繊維と植物性天然繊維より物性強度の高いナイロン繊維との混紡糸の布地であるため、植物性天然繊維の特徴と、ナイロン繊維の特徴(強い物性強度、難燃性を有する)とを備えた布地となっている。
【0018】
ニードルパンチ不織布24及びニードルパンチ不織布25は、ニードルパンチ法により製造されたものであり、例えば、低融点のポリエステル繊維と低融点のポリエステルより融点が高いポリエステル繊維(以下、単に、ポリエステル繊維または低融点のポリエステル繊維と区別するために高融点のポリエステル繊維と称する場合がある)とを配合したポリエステル100%のものとすることができる。例えば、ポリエステル繊維(高融点のポリエステル繊維)と低融点のポリエステル繊維とを、ニードルにより絡ませ、ヒートロールで巻き取る。低融点のポリエステル繊維の熱融着により、ポリエステル繊維同士が接着し、厚さ2mmに成型される。ヒートロールは、低融点のポリエステル繊維の融点以上、かつ、高融点のポリエステル繊維の融点より低い温度に加熱される。
このように、ニードルパンチ不織布24,25がニードルパンチ法により製造されることにより、ポリエステル繊維(高融点のポリエステル繊維)同士の間に空気層が形成されるため、弾力性、吸音性、断熱保温性等の機能を有する。さらに、これらニードルパンチ不織布24,25は、不織布であることから、通気性、ろ過性等の機能を有する。
【0019】
ニードルパンチ不織布24,25に含まれる低融点の繊維は低融点のポリエステルで製造された繊維である低融点のポリエステル繊維等とすることができる。低融点の繊維は、例えば、低融点の繊維より融点が高い繊維(単なる繊維、または、高融点の繊維と称する場合がある)同士を結びつけるバインダ繊維として機能するものであり、ニードルパンチ不織布には、低融点の繊維より融点が高い繊維等が含まれる。低融点のポリエステル繊維は、例えば、軟化点がおよそ70℃~80℃であり、融点がおよそ130℃~220℃のもの等とすることができる。繊維(高融点の繊維)は、例えば、ポリエステルで製造された繊維であるポリエステル繊維(または高融点のポリエステル繊維と称する場合がある)とすることができる。ポリエステル繊維は、例えば、融点が260℃ぐらいものとすることができる。
なお、ニードルパンチ不織布24,25には、高融点の繊維として植物性天然繊維を含めることができる。
【0020】
また、低融点ポリエステルの熱融着によりポリエステル繊維同士が接着され、厚さ2mmに成型されることにより、適当な物性強度(コシ)を有するものとすることができる。仮に、不織布が、低融点のポリエステル繊維を含まず、ニードルパンチ法により繊維同士が絡められて、ロールにより圧縮されて成型された場合には、弾力性、柔らかさは有しても、物性強度が低く、コシを有しないものとなる。それに対して、低融点のポリエステル繊維の熱融着により高融点のポリエステル繊維同士を接着させることにより、適当な物性強度を持たせることが可能となる。
なお、ニードルパンチ不織布24,25に用いられる低融点のポリエステル繊維には、畳床21に用いられたものと同じ種類の低融点のポリエステル繊維を使用することができる。
【0021】
ニードルパンチ不織布24と畳床21の表面(上面と称することができる)との間、およびニードルパンチ不織布25と畳床21の裏面(下面と称することができる)との間には、それぞれ、バインダとしてホットメルト接着剤が配置される。そして、ニードルパンチ不織布24と畳床21の表面とが、ほぼ常温における圧着で貼付固定され、ニードルパンチ不織布25と畳床21の裏面とが、ほぼ常温における圧着で貼付固定されている。
【0022】
植物性天然繊維および化学繊維の混紡糸の布地等から成る畳表22と、ニードルパンチ不織布24とは、これらの間に全面に均一に配置されたホットメルト接着剤により80℃~130℃の熱圧着により全面固着されている。
【0023】
布地を畳表22として活用する場合、布地にハリ、コシを与え、物性強度を高める為の物理的補強を行うことが要求される。仮に、布地のみを畳表として活用する場合(ニードルパンチ不織布が固着されていない場合)には、織物の伸縮性とドレープ性が起因してシワやヨレが発生してしまう。また物性強度上の弱さから、素材が耐えうる強度以上の力が加えられた箇所を起点として破断が起こり連続して引裂かれる現象が発生する。さらに、弾性力が不足し、硬い感触になる。
それに対して、ニードルパンチ不織布24は、素材及び製法の特性から、伸縮性とドレープ性が低く、物性強度が高い。また、繊維が複雑に絡み合っているので切断面からほつれ難い。
そこで、植物性天然繊維と化学繊維との混紡糸の布地等から成る畳表22の裏打ち材としてニードルパンチ不織布24を全面固着する。その結果、布地のシワ、ヨレを防ぎ、物性強度を高めることができる。
【0024】
なお、ニードルパンチ法により製造されたものであるため、ニードルパンチ不織布24,25は、弾力性を有する。そのため、畳表22にニードルパンチ不織布24,25を裏打ちすることにより、良好な弾力性を付与することが可能となる。
【0025】
下記の表1は畳表22に使用した布地にニードルパンチ不織布24を裏打ち材として全面固着した複合布地と、JAS規格に定める綿糸(JAS2等)の畳表との各々の物性強度試験の比較結果を示す。
複合布地は、畳表22の布地(348g/平方メートル)とニードルパンチ不織布24(150g/平方メートル)とをホットメルト接着剤(40g/平方メートル)により全面固着させたものである。JAS規格に定める綿糸の畳表は、JAS2等(経糸を綿糸として製織したイグサの畳表)(813g/平方メートル)の畳表を用いた。
【表1】
【0026】
これらの物性強度試験の比較より、畳表22の複合布地は、JAS2等の畳表よりも引張強さ、引裂強さにおいて物性強度が高いと言える。また試験試料の平方メートルあたりの重量は複合布地(538 g/平方メートル)がイグサの畳表(813g/平方メートル)よりも軽く、素材が軽量化されながらも、物性強度を増すことができた。
【0027】
畳表22の布地の表面には、鉄イオン触媒の酸化還元反応を利用することで、細菌・臭気の原因物質を破壊・分解する加工処理をしている。また、フッ素樹脂ポリマーを布地表面に加工処理することで、水性汚れが布地表面に付きにくくなる効果が得られる。
【0028】
裏面側に巻き込んだ畳表22の端部と、畳床21の裏面に貼付固定されたニードルパンチ不織布25とを覆うように裏地23が被せられて、これらの間に全面に均一に配置されたホットメルト接着剤をバインダとして、畳表22の端部およびニードルパンチ不織布25と裏地23とは80~130℃の熱圧着により全面固着されている。
【0029】
本実施例に係るファブリック畳の製造工程のフローチャートを
図2に示す。
「第1段階の畳床21の製造工程」において、溶融したホットメルト接着剤をスプレーガンで畳床21の上面(表面)に噴霧する。そして、予めホットメルト接着剤を片面に塗布したニードルパンチ不織布24を畳床21の上面に、ホットメルト接着剤が噴霧されていない面(下面、裏面)からプレスをかけて貼付固定する。プレス固定時には、熱を加えず、ニードルパンチ不織布24の繊維構造を破壊しない程度の加圧処理をする。
ついで、畳床21の下面(裏面)にホットメルト接着剤を噴霧し、ホットメルト接着剤が塗布されていないニードルパンチ不織布25をプレスで貼付固定する。
そして、ニードルパンチ不織布24及びニードルパンチ不織布25が貼付固定された畳床21をサイズカットする。
【0030】
「第2段階の布地を準備して畳床21と貼り合せる工程」において、畳床21のサイズに基づいて畳表22の布地をカットする。そして、ホットメルト接着剤が全面均一塗布されたニードルパンチ不織布24の上に畳表22を被せ、熱(80℃~130℃)でプレスして全面固着する。
【0031】
「第3段階の側面、裏面にホットメルトを塗布し、布地を巻き込む工程」において、畳床21の側面と裏面及びニードルパンチ不織布25の巻き込み部分に溶融したホットメルト接着剤をスプレーガンで噴霧して、畳表22を畳床21の側面および裏面に巻き込んで貼付する。
【0032】
「第4段階の裏面化粧用不織布とスベリ止めを貼り合わせて仕上げる工程」において、畳床21の裏面に貼付固定したニードルパンチ不織布25を裏面に巻き込んだ畳表22の端部の上からホットメルト接着剤が全面均一塗布された裏地23(裏面化粧用不織布の一例である)を被せ、熱(80℃~130℃)でプレスして全面固着する。さらに、裏地23である裏面化粧用不織布に、図示しないすべり止めを適宜貼り付ける。
【0033】
以上のように、本実施例によれば、シワやヨレを防ぎ、高い物性強度を有し、防炎性能に優れたファブリック畳を得ることができる。
【0034】
なお、畳床21の上面、下面の各々にそれぞれニードルパンチ不織布24,25を貼付する場合に用いられるホットメルト接着剤、ニードルパンチ不織布24,25と畳表22、裏布23とをそれぞれ貼付する場合に用いられるホットメルト接着剤等、これらホットメルト接着剤の各々の種類等は問わない。これらホットメルト接着剤は、互いに同じ種類のものであっても異なる種類のものであってもよいのである。
実施例2に係るファブリック畳において、畳床21は、実施例1に係るファブリック畳と同様に、ケナフ繊維、ヤシ繊維等の天然繊維素材を含むものである。これらケナフ繊維、ヤシ繊維等は、含有水分量が多く、温度が高くなると、臭いを発生する場合がある。
また、実施例2に係るファブリック畳は置き畳として用いられ、フローリング等の床材上に載置して用いられることが多い。そのため、畳床21から発生した臭いは上面からも下面からも拡散し易い。
以上のことから、畳床21の上面および下面に、それぞれ、直接接した状態で多孔質層130,132を設けた。
多孔質層130,132は、多孔質物体を含むものであり、多孔質物体において水分、臭いが吸収される。多孔質物体としては、例えば、炭化物(竹炭、活性炭等)、ゼオライト、シリカゲル、珪藻土等のうちの1つ以上を用いることができるが、これらのうちの炭化物を用いることが好ましい。
多孔質物体は多数の微細孔を有するものであり、多数の微細孔に汚れや臭いの元となる有機物を吸着することができる。多孔質層130,132は、例えば、これら多孔質物体の粒子または粉末を保持体に含有させることにより製造されたものとすることができる。保持体としては、例えば、不織布等の通気性が良好のものを使用することができる。多孔質物体を不織布に含有させることにより、多孔質物体に、効果的に、汚れや臭いの元となる有機物を吸着させることが可能となり、脱臭能力、清浄能力を高めることができる。また、多孔質物体が竹炭である場合には、抗菌効果も生じさせることができる。
多孔質層130,132には、例えば、竹炭パワーシート等の市販品を利用することもできる。竹炭パワーシートにおいて、例えば、竹炭が1平方メートル当たり40~50g付着されたものがある。
多孔質層130は、畳床21の上面に、ホットメルト接着剤が配置されて圧着されることにより貼り付けられ、多孔質層132は、畳床21の下面に、ホットメルト接着剤が配置されて圧着されて、貼り付けられる。
また、多孔質層132には、ニードルパンチ不織布25がホットメルト接着剤を用いて貼り付けられ、多孔質層130には、ホットメルト接着剤を用いて機能部134が貼り付けられる。
機能部134は、例えば、保持体に機能性物体が保持されたものとすることができる。機能性物体としては、悪臭を分解、消臭する機能、ホルムアルデヒドを分解する機能、繊維上の菌の増殖を抑制する機能、花粉やダニ由来のアレル物質を吸着、変形する機能等のうちの1つ以上を有するものとすることが好ましい。機能性物体として、金属フタロシアニンを含むものとすることが好ましい。保持体は、不織布等の通気性の良好のものを利用することが好ましい。機能部134としては、株式会社ダイワボウの商品名「アレルキャッチャー」を利用することが好ましい。
機能部134を設けることにより、より一層、ケナフ繊維、ヤシ繊維から発生する臭いが外部に放出され難くすることができる。また、機能部134を設けることにより、上述の効果以外に畳表22の布地が柔らかくなる効果が確認された。
そして、機能部134の上面にはニードルパンチ不織布24がホットメルト接着剤等を用いて貼り付けられ、ニードルパンチ不織布24には畳表22がホットメルト接着剤を用いて全面固着される。以下、実施例1における場合と同様にして、ファブリック畳120が製造される。
このように、実施例2に係るファブリック畳120によれば、湿度が高く、温度が高くなっても、臭いが拡散され難くすることができ、不快感が生じ難くすることができる。
また、実施例1に係るファブリック畳20による場合と同様に、畳表22に、物性強度を持たせることができるため、シワ、ヨレが生じ難くすることができる。
なお、機能部134は不可欠ではなく、多孔質層130,132を設けることにより、臭いの拡散を良好に抑制することができる。それに対して、機能部134を、畳床21と畳表22との間だけではなく、畳床21と裏布23との間にも設けることもできる。