(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089629
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023195095
(22)【出願日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】10-2022-0180177
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】姜 成龍
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD02
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、耐湿信頼性が向上した積層型電子部品を提供することである。
【解決手段】本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む容量形成部と、第1~第6面を含む本体と、上記本体の第3及び第4面にそれぞれ配置される外部電極と、上記本体の第5及び第6面にそれぞれ配置されるサイドマージン部と、を含み、上記サイドマージン部のBa/Tiのモル比は1.025超過1.035未満を満たし、上記容量形成部のBa/Tiのモル比より高く、上記サイドマージン部に含まれたTi100モルに対するMgのモル数は1.0モル超過2.0モル未満であり、上記サイドマージン部に含まれたTi100モルに対するSnのモル数は、0.01モル以上5.0モル未満であることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む容量形成部と、前記第1方向に互いに対向する第1面及び第2面、前記第1面及び第2面と連結され、第2方向に互いに対向する第3面及び第4面、前記第1面~第4面と連結され、第3方向に互いに対向する第5面及び第6面を含む本体と、
前記本体の第3面及び第4面にそれぞれ配置される外部電極と、
前記本体の第5面及び第6面にそれぞれ配置されるサイドマージン部と、を含み、
前記サイドマージン部のBa/Tiのモル比は1.025超過1.035未満を満たし、前記容量形成部のBa/Tiのモル比より高く、
前記サイドマージン部に含まれたTi100モルに対するMgのモル数は、1.0モル超過2.0モル未満であり、
前記サイドマージン部に含まれたTi100モルに対するSnのモル数は、0.01モル以上5.0モル未満である、積層型電子部品。
【請求項2】
前記サイドマージン部のBa/Tiのモル比は、1.028以上1.032以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記サイドマージン部に含まれたTi100モルに対するMgのモル数は、1.3モル以上1.7モル以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記サイドマージン部に含まれたTi100モルに対するSnのモル数は1.0モル超過である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記サイドマージン部に含まれたTi100モルに対するSnのモル数は、2.5モル以上3.5モル以下である、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記サイドマージン部のうち、前記容量形成部に隣接した領域である界面部に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズは、160nm以上180nm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記界面部に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズに対するサイズの標準偏差は100nm以下である、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記界面部に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズは、前記容量形成部に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズより小さい、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記サイドマージン部のうち、前記容量形成部に隣接した領域である界面部の気孔率は、0.01%超過1.30%未満である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記サイドマージン部に含まれたTi100モルに対するMgのモル数は、前記容量形成部に含まれたTi100モルに対するMgのモル数より高い、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記サイドマージン部に含まれたTi100モルに対するSnのモル数は、前記容量形成部に含まれたTi100モルに対するSnのモル数より高い、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記本体は複数の誘電体層を含み、前記複数の誘電体層のうち少なくとも一つの前記第1方向の平均サイズは0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記本体は複数の内部電極を含み、前記複数の内部電極のうち少なくとも一つの前記第1方向の平均サイズは0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記サイドマージン部の前記第3方向の平均サイズは、それぞれ20μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記積層型電子部品のサイズは1005(長さ×幅:1.0mm×0.5mm)以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)等の映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話等の様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用されることができる。コンピュータ、モバイル機器等、各種の電子機器が小型化、高出力化するにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求が増大している。
【0004】
一方、積層セラミックキャパシタの小型及び高容量化のためには、電極有効面積の極大化(容量実現に必要な有効体積分率を増加)が求められる。上記のように、小型及び高容量の積層セラミックキャパシタを実現するために、積層セラミックキャパシタを製造する際に、内部電極を本体の幅方向に露出させることにより、マージンのない設計を通じて内部電極の幅方向の面積を極大化し、且つこのような本体を作製した後、焼成前の段階で本体の幅方向の電極露出面にサイドマージン部用セラミックグリーンシートを別途貼り付けた後に焼結する方法が適用されている。
【0005】
サイドマージン部用セラミックグリーンシートを別途貼り付ける方法によりサイドマージン部を形成することで、キャパシタの単位体積当たりの容量は向上させることができるが、本体とサイドマージン部の界面を介して外部からの水分浸透やめっき工程中のめっき液の浸透などにより、チップの寿命が短くなったり、不良が発生するなどの問題点が現れることがあり、これを解決するための開発が求められている。
【0006】
より具体的に、サイドマージン部の形成過程で、本体とサイドマージン部が接触する界面に気孔(pore)が多く生成され、信頼性が低下することがあり、上記気孔により電界集中が発生し、これにより絶縁破壊電圧(BDV:Breakdown Voltage)が低くなるという問題が発生する可能性がある。また、本体とサイドマージン部との境界に界面接合部が発生することによって、接合力の低下及び上記気孔による焼結緻密度の低下に伴う耐湿信頼性の低下が生じる可能性がある。また、薄層化が進行するにつれて誘電体層内に電界集中現象が発生する可能性、あるいは、チップが高温・高圧に脆弱になる可能性がある。
【0007】
これを防止するためには、高い有効体積を確保しながらも、信頼性を満たす適切な組成の設計が必要である。より具体的に、チップの信頼性を向上させるためには、サイドマージン部の誘電体結晶粒サイズを微粒化し、結晶粒界を強化して耐電圧特性を確保することが重要であり、気孔(pore)を介した水分浸透を防止するために、サイドマージン部の緻密度を確保する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本公開特許公報第2017-028013号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、耐湿信頼性が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、高温・高圧に優れた積層型電子部品を提供することである。
【0011】
但し、本発明が解決しようとするいくつかの課題は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む容量形成部と、上記第1方向に互いに対向する第1及び第2面、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面、上記第1~第4面と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面を含む本体と、上記本体の第3及び第4面にそれぞれ配置される外部電極と、上記本体の第5及び第6面にそれぞれ配置されるサイドマージン部と、を含み、上記サイドマージン部のBa/Tiのモル比は1.025超過1.035未満を満たし、上記容量形成部のBa/Tiのモル比よりも高く、上記サイドマージン部に含まれたTi100モルに対するMgのモル数は1.0モル超過2.0モル未満であり、上記サイドマージン部に含まれたTi100モルに対するSnのモル数は0.01モル以上5.0モル未満であることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のいくつかの効果の一つは、積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させることである。
【0014】
本発明のいくつかの効果の一つは、積層型電子部品の高温・高圧信頼性を向上させることである。
【0015】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示す。
【
図2】
図1の積層型電子部品において、外部電極を除いて示す斜視図である。
【
図3】
図1の積層型電子部品において、外部電極及びサイドマージン部を除いて示す斜視図である。
【
図4】内部電極の積層構造を示す分離斜視図を概略的に示す。
【
図5】
図1のI-I’線に沿った断面図を概略的に示す。
【
図6】
図1のII-II’線に沿った断面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張されることがあり、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0018】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されるものではない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素に対しては、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0019】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0020】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものであり、
図2は、
図1の積層型電子部品において外部電極を除いて示す斜視図であり、
図3は、
図1の積層型電子部品において外部電極及びサイドマージン部を除いて示す斜視図であり、
図4は、内部電極の積層構造を示す分離斜視図を概略的に示すものであり、
図5は、
図1のI-I’線に沿った断面図を概略的に示すものであり、
図6は、
図1のII-II’線に沿った断面図を概略的に示すものである。
【0021】
以下、
図1~
図6を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳細に説明する。但し、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は誘電体組成物を利用する様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用することができる。
【0022】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層111と第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含む容量形成部Acと、上記第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、上記第1~第4面1、2、3、4と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を含む本体110と、上記本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置される外部電極131、132と、上記本体110の第5及び第6面5、6にそれぞれ配置されるサイドマージン部114、115と、を含み、上記サイドマージン部114、115のBa/Tiのモル比は1.025超過1.035未満を満たし、上記容量形成部AcのBa/Tiのモル比より高く、上記サイドマージン部114、115に含まれたTi100モルに対するMgのモル数は1.0モル超過2.0モル未満であり、上記サイドマージン部114、115に含まれたTi100モルに対するSnのモル数は0.01モル以上5.0モル未満であることができる。
【0023】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0024】
より具体的に、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量を形成する容量形成部Acを含むことができる。
【0025】
本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0026】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2、第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1~第4面1、2、3、4と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0027】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0028】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り限定されない。一般的に、ペロブスカイト(ABO3)系材料を使用することができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。チタン酸バリウム系材料としては、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0029】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粉末に、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0030】
誘電体層111の厚さtdは特に限定する必要はない。
【0031】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、誘電体層111の厚さは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0032】
ここで、誘電体層111の厚さtdは、第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の厚さtdを意味することができる。
【0033】
一方、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の第1方向のサイズを意味することができる。また、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の平均厚さtdを意味することができ、誘電体層111の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0034】
誘電体層111の第1方向の平均サイズは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの誘電体層111を第2方向に等間隔である30個の地点で第1方向のサイズを測定した平均値であることができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0035】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層されてもよい。
【0036】
内部電極121、122は第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1及び第2内部電極121、122は本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0037】
より具体的に、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出することができ、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体110の第3面3には、第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には、第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0038】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132と連結されることができる。このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0039】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0040】
内部電極121、122を形成する材料は特に限定されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0041】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
一方、内部電極121、122の厚さteは特に限定する必要はない。
【0043】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0044】
ここで、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の第1方向のサイズを意味することができる。また、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さteを意味することができ、内部電極121、122の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0045】
内部電極121、122の第1方向の平均サイズは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの内部電極121、122を第2方向に等間隔である30個の地点で第1方向のサイズを測定した平均値であることができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0046】
一方、本体110は、容量形成部Acの第1方向の両端面(end-surface)上に配置されたカバー部112、113を含むことができる。
【0047】
より具体的に、容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112、及び容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0048】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部Acの上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0049】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0050】
一方、カバー部112、113の厚さtcは特に限定する必要はない。
【0051】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましくは20μm以下であってもよい。
【0052】
ここで、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の第1方向のサイズを意味することができる。また、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の平均厚さtcを意味することができ、カバー部112、113の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0053】
カバー部112、113の第1方向の平均サイズは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つのカバー部を第2方向に等間隔である30個の地点で厚さを測定した平均値であることができる。上記等間隔である30個の地点は、上部カバー部112で指定することができる。また、このような平均値の測定を下部カバー部113に拡張して平均値を測定すると、カバー部112、113の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0054】
一方、本体110の第3方向の両端面(end-surface)上にはサイドマージン部114、115が配置されてもよい。
【0055】
より具体的に、サイドマージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1サイドマージン部114、及び第6面6に配置された第2サイドマージン部115を含むことができる。すなわち、サイドマージン部114、115は、本体110の第3方向の両端面(end-surface)に配置されることができる。
【0056】
サイドマージン部114、115は、図示のように、本体110の第1及び第3方向の断面(cross-section)を基準に、第1及び第2内部電極121、122の第3方向の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0057】
サイドマージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
サイドマージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にサイドマージン部114、115が形成される箇所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極121、122を形成し、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部Acの第3方向の両端面(end-surface)に第3方向に積層して形成することもできる。
【0058】
第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0059】
一方、第1及び第2サイドマージン部114、115の幅wmは特に限定する必要はない。
【0060】
但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、第1及び第2サイドマージン部114、115の幅wmは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましくは20μm以下であってもよい。
【0061】
ここで、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の第3方向のサイズを意味することができる。また、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の平均幅wmを意味することができ、サイドマージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができる。
【0062】
サイドマージン部114、115の第3方向の平均サイズは、本体110の第1及び第3方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つのサイドマージン部を第1方向に等間隔である30個の地点で第3方向のサイズを測定した平均値であることができる。上記等間隔である30個の地点は、第1サイドマージン部114で指定することができる。また、このような平均値の測定を第2サイドマージン部115に拡張して平均値を測定すると、サイドマージン部114、115の第3方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0063】
本発明の一実施形態では、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0064】
外部電極131、132は本体110上に配置され、内部電極121、122と連結されることができる。
【0065】
より具体的に、外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結される第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は本体の第3面3に配置されて第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は本体の第4面4に配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0066】
外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに、多層構造を有してもよい。
【0067】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に配置されるめっき層131b、132bを含むことができる。
【0068】
電極層131a、132aに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であってもよく、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0069】
また、電極層131a、132aは、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であってもよい。
【0070】
また、電極層131a、132aは、本体110上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0071】
電極層131a、132aに使用される導電性金属は、静電容量の形成のために上記内部電極121、122と電気的に連結できる材質であれば、特に限定されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。電極層131a、132aは、上記導電性金属粉末にガラスフリットを添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することにより形成することができる。
【0072】
めっき層131b、132bは実装特性を向上させる役割を果たす。
【0073】
めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む単一層のめっき層131b、132bであってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0074】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bはNiめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよい。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0075】
以下では、本発明の一実施形態についてより詳細に説明する。
【0076】
積層セラミックキャパシタの小型及び高容量化のためには、電極有効面積の極大化(容量実現に必要な有効体積分率の増加)が求められる。上記のように小型及び高容量の積層セラミックキャパシタを実現するために、積層セラミックキャパシタを製造する際に、内部電極を本体の幅方向に露出させることにより、マージンのない設計により内部電極の幅方向の面積を極大化し、且つこのような本体を作製した後、焼成前の段階で本体の幅方向の電極露出面にサイドマージン部用セラミックグリーンシートを別途貼り付けた後に焼結する方法が適用されている。
【0077】
サイドマージン部用セラミックグリーンシートを別途貼り付ける方法によりサイドマージン部を形成することで、キャパシタの単位体積当たりの容量は向上させることができるが、本体とサイドマージン部の界面を介して外部からの水分浸透やめっき工程中のめっき液の浸透などにより、チップの寿命が短くなったり、不良が発生するなどの問題点が現れることがあり、これを解決するための開発が求められている。
【0078】
より具体的に、サイドマージン部の形成過程で、本体とサイドマージン部が接触する界面に気孔(pore)が多く生成され、信頼性が低下することがあり、上記気孔により電界集中が発生し、これにより絶縁破壊電圧(BDV:Breakdown Voltage)が低くなるという問題が発生する可能性がある。また、本体とサイドマージン部との境界に界面接合部が発生することによって、接合力の低下及び上記気孔による焼結緻密度の低下に伴う耐湿信頼性の低下が生じる可能性がある。また、薄層化が進行するにつれて誘電体層内に電界集中現象が発生する可能性があり、あるいは、チップが高温・高圧に脆弱になる可能性がある。
【0079】
これを防止するためには、高い有効体積を確保しながらも、信頼性を満たす適切な組成の設計が必要である。より具体的に、チップの信頼性を向上させるためには、サイドマージン部の誘電体結晶粒サイズを微粒化し、結晶粒界を強化して耐電圧特性を確保することが重要であり、気孔(pore)を介した水分浸透を防止するために、サイドマージン部の緻密度を確保する必要がある。
【0080】
そこで、本発明の一実施形態では、サイドマージン部114、115のBa/Tiのモル比が1.025超過1.035未満を満たし、上記容量形成部のBa/Tiのモル比よりも高く、サイドマージン部114、115に含まれたチタン(Ti)100モルに対するマグネシウム(Mg)のモル数は1.0モル超過2.0モル未満であり、サイドマージン部114、115に含まれたチタン(Ti)100モルに対する錫(Sn)のモル数は0.01モル以上5.0モル未満であることができる。
【0081】
本発明において、元素の含量を測定する方法は、次のような方法を用いることができる。
【0082】
非破壊工法の場合、TEM-EDSまたはSTEM-EDS を用いて測定しようとする領域の成分を分析することができる。焼結が完了した積層型電子部品の断面のうち測定しようとする領域で集束イオンビーム(FIB)装備を用いて薄片化された分析試料を準備する。例えば、容量形成部Acの中央部やサイドマージン部の界面部を測定することができる。そして、薄片化された試料をArイオンミリングを用いて表面のダメージ層を除去し、その後(S)TEM-EDSを用いて得られたイメージで各成分のマッピング(mapping)と定量分析を行う。この場合、各成分の定量分析グラフは、各元素の質量分率(wt%)で得られることができるが、これをモル分率(mol%)に換算して表すことができ、各元素間の比率で表すこともできる。
【0083】
また、破壊工法の場合、積層型キャパシタを粉砕して測定しようとする部分を選別し、このように選別された部分を誘導結合プラズマ分光分析器(ICP-OES)、誘導結合プラズマ質量分析器(ICP-MS)などの装置を用いて誘電体の成分を定性/定量的に分析することができる。
【0084】
サイドマージン部114、115のBa/Ti比率を、容量形成部AcのBa/Ti比率より高く制御し、且つ1.025モル超過1.035未満に調節することにより、サイドマージン部114、115のうち、容量形成部Acと隣接した領域である界面部に含まれた誘電体結晶粒サイズを微粒化することができる。
【0085】
このとき、サイドマージン部のBa/Tiのモル比は、1.028以上1.032以下がより好ましい。
【0086】
サイドマージン部114、115のBa/Tiのモル比を1.025超過1.035未満、より好ましくは1.028以上1.032以下に制御することにより、サイドマージン部114、115の界面部の気孔率を下げて耐湿信頼性を向上させることができる。
【0087】
サイドマージン部114、115のBa/Tiのモル比が1.025以下である場合、高温/高圧環境での誘電容量特性に劣るおそれがあり、サイドマージン部114、115のBa/Tiのモル比が1.035以上である場合は、耐湿信頼性に劣るおそれがある。
【0088】
容量形成部AcのBa/Ti比率は、容量を形成できる範囲であればよく、例えば、容量形成部AcのBa/Ti比率は1.025未満であってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0089】
界面部についてより具体的に説明すると、第1サイドマージン部114のうち、容量形成部Acに隣接した領域を第1界面部と定義することができ、第2サイドマージン部115のうち容量形成部Acに隣接した領域を第2界面部と定義することができる。
【0090】
本発明において界面部に対する説明は、第1界面部及び第2界面部に対する説明を含むことができる。
【0091】
このとき、界面部は、本体110とサイドマージン部114、115とが接する界面接合部からサイドマージン部114、115の外側に5.0μm以内の領域を意味することができる。
【0092】
例えば、第1サイドマージン部114のうち、容量形成部Acと接する界面から第1サイドマージン部114の外側に5.0μm以内の領域を第1界面部と定義することができる。このとき、容量形成部Acと第1サイドマージン部114とが接する界面は、内部電極114、115の第3方向の端を意味することができる。
【0093】
また、第2サイドマージン部115のうち、容量形成部Acと接する界面から第2サイドマージン部115の外側に5.0μm以内の領域を第2界面部と定義することができる。このとき、容量形成部Acと第2サイドマージン部115とが接する界面は、内部電極114、115の第3方向の端を意味することができる。
【0094】
言い換えれば、積層型電子部品100の第1及び第3方向の断面(cross-section)を基準に、内部電極121、122の第3方向の端からサイドマージン部114、115の外側の第2方向に5.0μm以内の領域を意味することができる。より具体的に、例えば、本体110の第1及び第3方向の断面(cross-section)を基準に、第1方向の中間において、サイドマージン部114、115のうち容量形成部が接する界面を中心線とする5μm×5μm以内の領域をSEMによってスキャンした領域を意味することができる。
【0095】
一方、サイドマージン部114、115のBa/Tiのモル比は、1.025超過1.035未満を満たし、容量形成部AcのBa/Tiのモル比よりも高く制御することにより、界面部に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズが160nm以上180nm以下を満たすように制御することが好ましい。
【0096】
ここで、誘電体結晶粒の平均サイズは、誘電体結晶粒の中心点を通る最小直線サイズと最大直線サイズの平均値に該当することができ、誘電体結晶粒の平均サイズは、前述の方法で測定した誘電体結晶粒の平均サイズを平均した値であることができる。
【0097】
界面部は電界集中現象に脆弱であり得るが、このとき、サイドマージン部114、115のBa/Tiのモル比を容量形成部AcのBa/Tiのモル比より高く制御することで、界面部に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズを容量形成部Acに含まれた誘電体結晶粒の平均サイズより小さく形成することにより、電界集中現象による絶縁破壊不良などを改善させることができる。
【0098】
界面部に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズが160nm未満である場合、緻密度が低下して耐湿信頼性に劣ることがあり、界面部に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズが180nm超過である場合、電界集中現象により絶縁破壊が発生する可能性がある。
【0099】
このとき、界面部に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズに対するサイズの標準偏差は100nm以下であり得る。
【0100】
誘電体結晶粒サイズの標準偏差は、誘電体結晶粒のサイズを測定した値から誘電体結晶粒の平均サイズを引いた値を意味する偏差を二乗し、全て加算して総和を求めた後、上記総和を、測定した誘電体結晶粒の数から1を引いた値で除した値を意味する分散に対して平方根をとって求めたものであり得る。
【0101】
標準偏差は、値の分布の均一度を示し、そのサイズが小さいほど、均一なサイズの結晶粒を有することを意味することができる。
【0102】
誘電体結晶粒のサイズに対する標準偏差の下限は特に限定せず、そのサイズが小さいほど散布が改善されるものであって、好ましいとみなしているが、実質的にこれを制御することは困難であり得るため、下限を50nmに設定することができる。
【0103】
誘電体結晶粒のサイズに対する標準偏差が100nm超過である場合、誘電体結晶粒間のサイズの偏差が大きくなり、電界集中現象による絶縁破壊電圧が発生するおそれがある。
【0104】
サイドマージン部114、115に含まれたマグネシウム(Mg)のモル数をチタン(Ti)100モルに対して1.0モル超過2.0モル未満、より好ましくは1.3モル以上1.7モル以下に制御する場合、界面部の誘電体結晶粒に対して低温焼結効果が現れることがあり、これにより気孔率が低下し、緻密度が向上して耐湿信頼性が向上することができる。
【0105】
本発明において、マグネシウム(Mg)は液相焼結助剤の役割を果たすことができ、誘電体粒子の粒成長を抑制することができ、より具体的には、誘電体結晶粒の結晶粒界(grain boundary)にマグネシウム(Mg)が配置されることにより、結晶粒間の焼結(sintering)が進行するのを抑制することができる。
【0106】
サイドマージン部114、115に含まれたマグネシウム(Mg)のモル数が1.0モル以下である場合、焼結遅延効果が不十分となるおそれがあり、マグネシウム(Mg)のモル数が2.0モル以上である場合は、誘電体結晶粒の粒成長を過度に抑制したり、焼結が進行しない可能性がある。
【0107】
このとき、サイドマージン部114、115に含まれたチタン(Ti)100モルに対するマグネシウム(Mg)のモル数は、容量形成部Acに含まれたチタン(Ti)100モルに対するマグネシウム(Mg)のモル数より高くてもよい。
【0108】
誘電容量に大きな影響を与えないサイドマージン部114、115のマグネシウム(Mg)のモル数を制御することにより、界面部の焼結緻密度を向上させることができ、容量形成部Acの誘電容量を低下させないことができる。
【0109】
一方、サイドマージン部114、115に含まれた錫(Sn)のモル数をチタン(Ti)100モルに対して0.01モル以上5.0モル未満、好ましくは1.0モル超過5.0モル未満、より好ましくは2.5モル以上3.5モル以下に制御する場合、界面部の誘電体結晶粒界の抵抗が向上し、絶縁破壊電圧特性が改善されることができる。
【0110】
サイドマージン部114、115に含まれたチタン(Ti)100モルに対する錫(Sn)のモル数が0.01モル以上5.0モル未満を満たす場合、誘電体結晶粒界の抵抗が向上でき、電界集中現象による絶縁破壊を抑制することができ、高温・高圧信頼性が向上することができる。
【0111】
サイドマージン部114、115に含まれた錫(Sn)は微量添加されても高温・高圧信頼性が向上することができるが、より好ましくは、2.5モル以上3.5モル以下に制御する場合、積層型電子部品の信頼性により優れることができる。
【0112】
サイドマージン部114、115に含まれた錫(Sn)のモル数が5.0モル以上である場合、高温・高圧信頼性が低下したり、耐湿信頼性又は絶縁破壊電圧に劣るおそれがある。
【0113】
このとき、サイドマージン部114、115に含まれたチタン(Ti)100モルに対する錫(Sn)のモル数は、容量形成部Acに含まれたチタン(Ti)100モルに対する錫(Sn)のモル数より高くてもよい。
【0114】
誘電容量に大きな影響を与えないサイドマージン部114、115の錫(Sn)のモル数を制御することにより、界面部の電界集中現象の制御による絶縁破壊電圧を向上させることができ、容量形成部Acの誘電容量を低下させないことができる。
【0115】
一方、誘電体のBa/Tiのモル比が高いほど気孔率(porosity)が高くなる傾向があり得る。ここで、形成された気孔(pore)は、外部からの水分が浸透する経路となることがあり、これは、耐湿信頼性の低下をもたらし得る。
【0116】
このとき、界面部の気孔率は1.30%未満であってもよく、下限は特に限定されないが、0.01%超過であってもよく、界面部の気孔率が1.30%未満を満たす場合、耐湿信頼性が向上することができる。
【0117】
界面部の気孔率が1.30%以上である場合、気孔を介した外部からの水分浸透が容易になり、耐湿信頼性が低下することがある。
【0118】
界面部の気孔率は(測定された領域に存在する気孔の面積の総合/測定した総面積)×100%と定義することができ、以下のような方法で計算することができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0119】
例えば、積層型電子部品の第1及び第3方向の断面(cross-section)を基準に、内部電極の端とサイドマージン部とが接する界面を中心線に置き、5μm×5μmの領域をSEMによってスキャンした画像イメージを得る。SEM測定装備の条件は、加速電圧2kV、試料距離(WD)3mm、絞りサイズ(aperture size)30μm、倍率12,000倍の条件で観察することができる。このとき、界面部領域である内部電極とサイドマージン部の界面からサイドマージン部の外側方向に5μmの領域のうち、界面部に存在する気孔の面積の総和を界面部の面積で除した百分率値を界面部の気孔率と計算することができる。
【0120】
積層型電子部品100のサイズは特に限定されない。
【0121】
但し、本発明の効果は、超小型の積層型電子部品100においてより優れることができ、例えば、1005(長さ×幅:1.0mm×0.5mm)以下のサイズにおいて耐湿信頼性、高温・高圧特性などに優れることができる。
【0122】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【0123】
以下、試験例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、これは発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が試験例によって限定されるものではない。
【0124】
(試験例)
下記表1は、試験例1~試験例9のサイドマージン部のBa/Tiのモル比、サイドマージン部のTi100モルに対するMgのモル数、サイドマージン部のTi100モルに対するSnのモル数、サイドマージン部のうち界面部の誘電体結晶粒の平均サイズ(±の前の数字)と標準偏差(±の後ろの数字)及び界面部の気孔率を示したものである。
【0125】
サンプルチップのサイズは1005(長さ×幅、1.0mm×0.5mm)サイズに該当する。元素測定領域は、積層型電子部品の第2方向の1/2地点で第1及び第3方向の断面(cross-section)を基準に、内部電極の第3方向の端と第2サイドマージン部とが接する界面を中心線に置き、5μm×5μmの領域をSEMによってスキャンした画像イメージを得た後、界面部領域である内部電極とサイドマージン部の界面からサイドマージン部の外側方向に5μmの領域に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズ、サイズの標準偏差及び気孔率を測定した。
【0126】
SEM測定装備の条件は、加速電圧2kV、WD3mm、開口寸法(aperture size)30μm、12,000倍率の条件で観察した。
【0127】
図7~
図9は、それぞれ試験例1~試験例9の超加速寿命試験HALT(Highly Accelerated Life Test)を行ったグラフであり、
図10~
図12は、それぞれ試験例1~試験例9の耐湿信頼性グラフに該当する。
【0128】
より具体的に、
図7の(a)は試験例1、(b)は試験例2、(c)は試験例3のHALTグラフ、
図8の(a)は試験例4、(b)は試験例5、(c)は試験例6のHALTグラフ、
図9の(a)は試験例7、(b)は試験例8、(c)は試験例9のHALTグラフである。
【0129】
図10の(a)は試験例1、(b)は試験例2、(c)は試験例3の耐湿信頼性グラフ、
図11の(a)は試験例4、(b)は試験例5、(c)は試験例6の耐湿信頼性グラフ、
図12の(a)は試験例7、(b)は試験例8、(c)は試験例9の耐湿信頼性グラフである。
【0130】
図7~
図9は、試験例1~試験例9において、超加速寿命試験であるHALT(Highly Accelerated Life Test)を行ったグラフである。
【0131】
超加速寿命試験(HALT)は、3段階に分けて評価を行い、温度条件85℃、電圧条件6.3Vで1時間行った後、温度条件85℃、電圧条件7.56Vで2時間行ってから、温度条件105℃、電圧条件7.56Vで2時間の間行った。各試験例当たりサンプルチップ200個について評価を行い、絶縁抵抗(IR)値が105Ω以下に低下したり短絡が発生した場合を不良と評価した。
【0132】
図10~
図12は、試験例1~試験例9において、耐湿信頼性評価を行ったグラフである。
【0133】
耐湿信頼性評価は85℃、相対湿度85%、電圧6.3Vの条件で48時間の間行った。各試験例当たりサンプルチップ200個について評価を行い、絶縁抵抗(IR)値が105Ω以下に低下したり短絡が発生した場合を不良と評価した。
【0134】
耐湿信頼性評価の場合、不良と判定されたサンプルチップが1個でもある場合、劣ると表現したが、不良と判定されたサンプルチップが3個を超える場合に、目標とする特性を満たしていないものと見なすことがよい。
【0135】
【0136】
試験例1のサイドマージン部内のBa/Tiのモル比は1.025であり、サイドマージン部内のMg含量はTi100モルに対して0モル、サイドマージン部内のSn含量は0モルに該当する。界面部の誘電体結晶粒の平均サイズは188nmであり、サイズに対する標準偏差は90nmであり、気孔率は1.11%と測定された。
【0137】
試験例2のサイドマージン部内のBa/Tiのモル比は1.030であり、サイドマージン部内のMg含量はTi100モルに対して0モル、サイドマージン部内のSn含量は0モルに該当する。界面部の誘電体結晶粒の平均サイズは172nmであり、サイズに対する標準偏差は96nmであり、気孔率は1.12%と測定された。
【0138】
試験例1に比べてBa/Tiの比率が高くなることによって気孔率が0.1%向上した数値を示しており、耐湿信頼性評価グラフを参照したとき、耐湿信頼性特性に劣っていることが分かる。
【0139】
試験例3のサイドマージン部内のBa/Tiのモル比は1.035であり、サイドマージン部内のMg含量はTi100モルに対して1.0モル、サイドマージン部内のSn含量は0モルに該当する。界面部の誘電体結晶粒の平均サイズは175nmであり、サイズに対する標準偏差は88nmであり、気孔率は1.14%と測定された。
【0140】
Mgが1.0モル添加されることで、試験例2に比べて、耐湿信頼性が改善されたことが確認できるが、不良と評価されたサンプルチップが存在する。
【0141】
試験例4のサイドマージン部内のBa/Tiのモル比は1.030であり、サイドマージン部内のMg含量はTi100モルに対して1.5モル、サイドマージン部内のSn含量は0モルに該当する。界面部の誘電体結晶粒の平均サイズは171nmであり、サイズに対する標準偏差は97nmであり、気孔率は1.11%と測定された。
【0142】
Mgが1.5モル添加されることで、耐湿信頼性評価において不良と判定されたサンプルチップがなく、耐湿信頼性が向上したことが確認できる。
【0143】
試験例5のサイドマージン部内のBa/Tiのモル比は1.030であり、サイドマージン部内のMg含量はTi100モルに対して1.5モル、サイドマージン部内のSn含量は1.0モルに該当する。界面部の誘電体結晶粒の平均サイズは178nmであり、サイズに対する標準偏差は88nmであり、気孔率は1.12%と測定された。
【0144】
Mgが1.5モル添加されることで、耐湿信頼性が向上したことが確認でき、Snが1.0モル添加されることで、HALT評価において3段階の過酷条件でのみ不良と判定されたサンプルチップが存在することから、高温特性が向上したことが分かる。
【0145】
試験例6のサイドマージン部内のBa/Tiのモル比は1.030であり、サイドマージン部内のMg含量はTi100モルに対して1.5モル、サイドマージン部内のSn含量は3.0モルに該当する。界面部の誘電体結晶粒の平均サイズは173nmであり、サイズに対する標準偏差は91nmであり、気孔率は1.11%と測定された。
【0146】
Mgが1.5モル添加されることで、耐湿信頼性が向上したことが確認でき、Snが3.0モル添加されることで、HALT評価において不良と判定されたサンプルチップが存在せず、これにより高温特性に最も優れることが分かる。
【0147】
試験例7のサイドマージン部内のBa/Tiのモル比は1.030であり、サイドマージン部内のMg含量はTi100モルに対して1.5モル、サイドマージン部内のSn含量は5.0モルに該当する。界面部の誘電体結晶粒の平均サイズは175nmであり、サイズに対する標準偏差は102nmであり、気孔率は1.12%と測定された。
【0148】
Mgが1.5モル添加されることで、耐湿信頼性評価では、散布はあるものの、優れていると見なすことができる。しかし、Snが5.0モルと過剰添加されることによりHALT評価では不良と判定されたサンプルチップが多数観察され、誘電体結晶粒のサイズに対する標準偏差も高い方であることを鑑みると、これは添加剤の固溶散布特性が良くないものと予測される。
【0149】
試験例8のサイドマージン部内のBa/Tiのモル比は1.030であり、サイドマージン部内のMg含量はTi100モルに対して2.0モル、サイドマージン部内のSn含量は3.0モルに該当する。界面部の誘電体結晶粒の平均サイズは178nmであり、サイズに対する標準偏差は102nmであり、気孔率は1.10%と測定された。
【0150】
Mgが2.0モル添加されることで、耐湿信頼性評価において不良と判定されたサンプルチップが存在することが確認できる。Snが3.0モル添加されることで、HALT評価では不良と判定されたサンプルチップが存在せず、これにより高温特性に優れることが分かる。
【0151】
試験例9のサイドマージン部内のBa/Tiのモル比は1.035であり、サイドマージン部内のMg含量はTi100モルに対して0モル、サイドマージン部内のSn含量は0モルに該当する。界面部の誘電体結晶粒の平均サイズは167nmであり、サイズに対する標準偏差は83nmであり、気孔率は1.32%と測定された。
【0152】
Ba/Tiの比率が高くなることで、気孔率が高くなったことが確認でき、Mg及びSn添加しないことによって耐湿信頼性及びHALT評価が良くないことが確認できる。
【0153】
要するに、Ba/Tiの比率が1.025超過1.035未満を満たす場合、気孔率が改善され、MgがTi100モルに対して1.0モル超過2.0モル未満添加される場合、耐湿信頼性に最も優れることが分かり、SnがTi100 モルに対して5.0モル未満添加する場合、高温特性に優れることが分かる。
【0154】
また、本発明において使用された「一実施形態」という表現は、互いに同じ実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態に説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明と理解することができる。
【0155】
本発明において使用された用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0156】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:サイドマージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極