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特開2024-89632時計ムーブメント用クロノグラフ機構及び当該機構を備えた時計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089632
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】時計ムーブメント用クロノグラフ機構及び当該機構を備えた時計
(51)【国際特許分類】
   G04F 7/08 20060101AFI20240626BHJP
   G04B 27/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
G04F7/08 A
G04B27/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023199038
(22)【出願日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】22215514.5
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ジョリ、 リリアン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】文字盤の所定の目盛りの正反対に位置するクロノグラフ秒針の、正確なゼロリセットを提供するゼロリセット機構を提供する。
【解決手段】クロノグラフカウンタ22をゼロにリセットするゼロリセット機構40を備え、ハンマ50は、ゼロリセット制御部60によって、ハンマ50がカムトラックと接触しない休止位置とハンマ50がカムトラックと接触してゼロリセット部材225を基準位置に保持するゼロリセット位置の間で移動でき、ハンマ50は休止位置とゼロリセット位置の間でゼロリセット部材225への駆動トルクを発生させ、ハンマ50は、休止位置とゼロリセット位置の間の第1の経路に沿ったハンマ50の往動をガイドしかつゼロリセット位置と休止位置の間の第2の経路に沿ったハンマ50の復動をガイドするように形作られたガイド部材と協働し、第1の経路と第2の経路は一致しない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)であって、
・シャフト(223)と、前記シャフト(223)と一体となって回転する針(224)とを有するクロノグラフカウンタ(22)と、
・前記クロノグラフカウンタ(22)をゼロにリセットするためのゼロリセット機構(40)であって、前記シャフト(223)と一体のゼロリセット部材(225)と、前記ゼロリセット部材(225)と協働するようにかつ前記クロノグラフカウンタ(22)の進行方向の回転によって前記ゼロリセット部材(225)が基準位置に配置されるまでゼロリセット制御部(60)の作用下で駆動トルクを発生させるように形作られたハンマ(50)とを備えるゼロリセット機構(40)と
を備え、
前記ゼロリセット部材(225)は、前記クロノグラフカウンタ(22)の前記シャフト(223)の周りに、前記シャフト(223)に対する最小半径のゾーンを画定する近位端(227)から前記シャフト(223)に対する最大半径のゾーンを画定する遠位端(228)まで渦巻状に延びるカムトラック(226)を有する渦形カムであり、
前記ハンマ(50)は、前記ゼロリセット制御部(60)によって、前記ハンマ(120)が前記カム経路(226)と接触しない休止位置と、前記ハンマ(50)が前記カム経路(226)と接触して前記ゼロリセット部材(225)を前記基準位置に保持するゼロリセット位置との間で移動させることができ、前記ハンマ(50)は、前記休止位置と前記ゼロリセット位置との間で前記ゼロリセット部材(225)への駆動トルクを発生させ、
前記ハンマ(50)は、前記休止位置と前記ゼロリセット位置との間の第1の経路に沿った前記ハンマ(50)の往動をガイドするようにかつ前記ゼロリセット位置と前記休止位置との間の第2の経路に沿った前記ハンマの復動をガイドするように形作られたガイド部材(140)と協働し、前記ハンマ(50)の前記第1の経路と前記第2の経路は一致しないことを特徴とする、時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)。
【請求項2】
前記ガイド部材(140)は、前記休止位置と前記ゼロリセット位置との間の第1の一方向の直線経路に沿って、及び前記ゼロリセット位置と前記休止位置との間の少なくとも2つの異なる方向を有する第2の多方向経路に沿って前記ハンマ(50)をガイドするように形作られることを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)。
【請求項3】
前記ガイド部材(140)は、前記休止位置と前記ゼロリセット位置との間の第1の曲線経路に沿って、及び前記ゼロリセット位置と前記休止位置との間の前記第1の経路とは異なる第2の経路に沿って前記ハンマ(50)をガイドするように形作られることを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)。
【請求項4】
前記ガイド部材(140)は、前記ハンマ(50)の往動中は非作動となり、前記ハンマ(50)の復動中は作動中となるように形作られた係合解除可能なガイドヨーク(142)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)。
【請求項5】
前記係合解除可能なガイドヨーク(142)は、前記ハンマ(50)と一体のガイドペグ(55)と協働するガイドカム(145)を備え、前記ガイドカム(145)は、前記ハンマ(50)の往動中に前記ガイドヨーク(142)を係合解除するように形作られた第1の部分(146)と、前記ハンマ(50)の復動中に前記ハンマ(50)をガイドするように形作られた第2の部分(147)とを備えることを特徴とする、請求項4に記載の時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)。
【請求項6】
前記係合解除可能なガイドヨーク(142)は、前記係合解除可能なヨーク(142)をヨーク止め(144)に当接する中立平衡位置に再配置するように付勢されたガイドヨークばね(143)と協働することを特徴とする、請求項5に記載の時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)。
【請求項7】
前記ハンマ(50)は、その自由端に、前記ゼロリセット部材(225)のカムトラック(226)と接触し、前記ゼロリセット部材(225)が前記基準位置に配置されるまで前記ゼロリセット制御部(60)の作用下で駆動トルクを発生させるように構成された傾斜面(512)を有するアーム(510)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)。
【請求項8】
前記アーム(510)は、ゼロリセット動作中に前記ゼロリセット部材(225)のための角度位置決め停止部を形成するように構成された停止面(513)を有することを特徴とする、請求項7に記載の時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)。
【請求項9】
前記アーム(510)は、前記傾斜面(512)を延長して前記停止面(513)から突出する突出部を形成する端部嘴状部(514)を有することを特徴とする、請求項8に記載の時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)。
【請求項10】
前記ゼロリセット部材(225)は、前記近位端(227)と前記遠位端(228)とを接続する接続部分(230)を備え、前記接続部分(230)は前記カムトラック(226)に属さず、前記接続部分(230)は、前記ハンマ(50)が前記ゼロリセット位置にあるときに前記端部嘴状部(514)を受け入れて収容するための隙間を形成する凹部(232)を備えることを特徴とする、請求項9に記載の時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)。
【請求項11】
前記ガイド部材(140)は、前記ハンマ(50)の往動中は非作動となり、前記ハンマ(50)の復動中は作動中となるように形作られた係合解除可能なガイドヨーク(142)を備え、前記係合解除可能なガイドヨーク(142)は、前記ハンマ(50)と一体のガイドペグ(55)と協働するガイドカム(145)を備え、前記ガイドカム(145)は、前記ハンマ(50)の往動中に前記ガイドヨーク(142)を係合解除するように形作られた第1の部分(146)と、前記ハンマ(50)の復動中に前記ハンマ(50)をガイドするように形作られた第2の部分(147)とを備え、前記ガイドカム(145)の第2の部分(147)は、前記ハンマ(50)の復動中に前記端部嘴状部(514)を前記凹部(323)から係合解除するようにかつ前記端部嘴状部(514)が前記ゼロリセット部材(225)の遠位端(228)を迂回するように形作られることを特徴とする、請求項10に記載の時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)。
【請求項12】
前記クロノグラフカウンタ(22)が秒カウンタであることを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)。
【請求項13】
それは、分カウンタシャフト(213)を有する分カウンタ(21)と、前記分カウンタシャフト(213)と一体となって回転する分針(214)とを備え、前記分カウンタシャフト(213)はハート形の第2のゼロリセット部材(215)を担持することを特徴とする、請求項12に記載の時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)。
【請求項14】
前記ハンマ(50)は、前記第2のゼロリセット部材(215)と協働する第2のアーム(520)を備え、前記第2のアーム(520)は、前記第2のゼロリセット部材(215)が基準位置に位置するまで前記ゼロリセット制御部(60)の作用下で駆動トルクを発生させるように構成されることを特徴とする、請求項13に記載の時計ムーブメント(1)用クロノグラフ機構(10)。
【請求項15】
請求項1に記載のクロノグラフ機構(10)を備える時計ムーブメント(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計ムーブメント用クロノグラフ機構に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、ゼロリセット機構を含むクロノグラフ機構に関する。
【0003】
本発明はさらに、このようなクロノグラフ機構を含む時計に関する。
【背景技術】
【0004】
クロノグラフ機構は、いくつかのクロノグラフカウンタ、例えば分カウンタ及び秒カウンタによって要求に応じて時間を測定することを可能にする。
【0005】
クロノグラフ機構は一般に、クロノグラフカウンタをゼロにリセットするための、すなわちクロノグラフカウンタを基準位置に再配置するためのゼロリセット機構を含み、その結果、要求に応じて時間を再度測定することができる。
【0006】
従来、このようなゼロリセット機構は、例えば時計ムーブメントが取り付けられている中央部の外側からアクセス可能な押しボタン又は作動ピンによって、ユーザが操作できるゼロリセット制御部から成る。
【0007】
ゼロリセット制御部は、様々なクロノグラフカウンタによって運ばれるゼロリセットカムに衝突するゼロリセットハンマと直接的又は間接的に協働する。
【0008】
クロノグラフカウンタ及び関連する針は、ハンマがゼロリセットカムの表面を押し、クロノグラフカウンタがゼロリセットハンマとカムの幾何学的形状によって決定される基準位置に戻るまで該当するクロノグラフカウンタの位置を変更する駆動トルクを発生させることによってゼロにリセットされる。
【0009】
ゼロリセットカムは、単一の渦巻で形成され、リセットが常に同じ方向に行われる原因となる、偏心形状又は「カタツムリ」形状を有することが知られている。このような先行技術のゼロリセットカムの一例を図1に示す。
【0010】
これらの渦形カムは精度に欠け、カムのあらゆる角度位置でカウンタがゼロにリセットされることを保証できない。実際、渦形カムがその基準位置に非常に近い角度位置に、例えば数分の1秒の針の回転に相当する角度位置にある場合、様々な部分の間に存在する隙間は、カム上のハンマの滑りを意味することがあり、その結果、針がゼロにリセットされる方向に駆動されるのではなく、ユーザに見える針の逆方向の移動を引き起こす可能性がある。
【0011】
これらの欠点を克服するために、C.-A. Reymondinらによるリファレンスマニュアル「Theorie d'horlogerie」、Federation des Ecoles Techniques、2015年版、p.238に示されるように、2つの同一の渦巻であるが、反対方向に設けられているため、ハート形状であることを特徴とする、ハート形ゼロリセットカムが開発された。
【0012】
このようなゼロリセットカムを図2に示す。
【0013】
このようなハート形状をゼロにリセットするためのハンマは、馬の蹄のような形状のアームを含む(図2に見られる)。ハンマのストローク(直線又は円形)の終わりに、アームはハート部品によって形成された二重のローブの上にあり、カウンタと対応する針のゼロリセット位置に対応する安定位置に保持されることを確実にする。
【0014】
このタイプのゼロリセット機構は広く知られているが、いくつかの欠点がある。
【0015】
第一に、ゼロに戻るときの針の、特に秒針の位置決めは、しばしばランダムであり、精度に欠ける。これは、文字盤の目盛りに面するように1秒ごとに正確な角度位置にあることになっているジャンプ秒針の場合に特に有害である。
【0016】
第二に、ハート部品及びハンマの幾何学的形状を考えると、それらの界面における摩擦力は一定ではない。その結果、これらの部品が不均一に摩耗し、機構の長期信頼性に悪影響を及ぼす。
【0017】
第三に、ハート部品のいくつかの角度位置では、前述のマニュアルの図11~29に示されるように、ハンマは鋭いエッジでハート部品と擦れ合い、それによりこれらの部品の応力集中、摩耗及び機械的疲労が増加する。
【0018】
第四に、その回転中に得られるハート部品の慣性は、ハンマのストロークの終わりに直ちに基準位置にロックされず、静止する前に、減衰振動によって動かされたままであることを意味し、これは、経験豊富なユーザが期待する精度の感覚を損なう。
【0019】
したがって、クロノグラフ機構、特にこのようなクロノグラフ機構のカウンタをゼロにリセットする機構を改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
これに関連して、本発明の目的の1つは、上記課題の少なくとも1つを解決するクロノグラフ機構を提供することである。
【0021】
本発明の目的の1つは、特に文字盤の所定の目盛りの正反対に位置するクロノグラフ秒針の、正確なゼロリセットを提供するゼロリセット機構を提供することである。
【0022】
本発明の目的の1つは、ゼロリセットハンマがゼロリセットカムに衝突したときに針が逆方向に移動する現象を回避しながら、クロノグラフをその進行方向においてゼロにリセットすることを可能にする、信頼性の高い安全なゼロリセット機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
これに関連して、本発明は、時計ムーブメント用クロノグラフ機構であって、
・シャフトと、シャフトと一体となって回転する針とを有するクロノグラフカウンタと、
・前記クロノグラフカウンタをゼロにリセットするためのゼロリセット機構であって、シャフトと一体のゼロリセット部材と、ゼロリセット部材と協働するようにかつクロノグラフカウンタの進行方向の回転によってゼロリセット部材が基準位置に配置されるまでゼロリセット制御部の作用下で駆動トルクを発生させるように形作られたハンマとを備えるゼロリセット機構と
を備え、
ゼロリセット部材は、クロノグラフカウンタの前記シャフトの周りに、シャフトに対する最小半径のゾーンを画定する近位端からシャフトに対する最大半径のゾーンを画定する遠位端まで渦巻状に延びるカムトラックを有する渦形カムであり、
前記ハンマは、ゼロリセット制御部によって、ハンマがカムトラックと接触しない休止位置と、ハンマがカムトラックと接触してゼロリセット部材を前記基準位置に保持するゼロリセット位置との間で移動させることができ、ハンマは、休止位置とゼロリセット位置との間でゼロリセット部材への駆動トルクを発生させ、
ハンマは、休止位置とゼロリセット位置との間の第1の経路に沿ったハンマの往動をガイドするようにかつゼロリセット位置と休止位置との間の第2の経路に沿ったハンマの復動をガイドするように形作られたガイド部材と協働し、ハンマの第1の経路と第2の経路は一致しないことを特徴とする、クロノグラフ機構に関する。
【0024】
有利には、復路(すなわち、第2の経路)は往路(すなわち、第1の経路)とは異なり、その結果、復路は第1の経路から少なくとも実質的にずらされる。
【0025】
特にカムトラックと接触する部分におけるハンマの往路と復路の差により、クロノグラフカウンタがゼロにリセットされたときの、特に計時された分の開始に対応する位置でカウンタが停止されたときの、カムトラック上の十分な軸受面が確保される。これにより、ハンマとカムの接触は、カムのノーズではなく、渦巻の表面上で行われることが確実になる。これにより、カウンタが正しい側のその基準位置に戻ることが確実になる。
【0026】
前の段落で述べた特徴に加えて、本発明によるクロノグラフ機構は、個別に、又は技術的に可能な任意の組み合わせに従って検討される、以下のうちの1つ以上の相補的な特徴を有することができる。
・ガイド部材は、休止位置とゼロリセット位置との間の第1の一方向の直線経路に沿って、及びゼロリセット位置と休止位置との間の少なくとも2つの異なる方向を有する第2の多方向経路に沿ってハンマをガイドするように形作られる。
・ガイド部材は、休止位置とゼロリセット位置との間の第1の曲線経路に沿って、及びゼロリセット位置と休止位置との間の第1の曲線経路とは異なる第2の経路に沿ってハンマをガイドするように形作られる。
・ガイド部材は、ハンマの往動中は非作動となり、ハンマの復動中は作動中となるように形作られた係合解除可能なガイドヨークを備える。
・係合解除可能なガイドヨークは、ハンマと一体のガイドペグと協働するガイドカムを備え、前記ガイドカムは、ハンマの往動中にガイドヨークを係合解除するように形作られた第1の部分と、ハンマの復動中にハンマをガイドするように形作られた第2の部分とを備える。
・係合解除可能なガイドヨークは、前記係合解除可能なヨークをヨーク止めに当接する中立平衡位置に再配置するように付勢されたガイドヨークばねと協働する。
・ハンマは、その自由端に、ゼロリセット部材のカムトラックと接触し、ゼロリセット部材が基準位置に配置されるまでゼロリセット制御部の作用下で駆動トルクを発生させるように構成された傾斜面を有するアームを備える。
・アームは、ゼロリセット動作中にゼロリセット部材のための角度位置決め停止部を形成するように構成された停止面を有する。
・アームは、傾斜面を延長して停止面から突出する突出部を形成する端部嘴状部を有する。
・ゼロリセット部材は、近位端と遠位端とを接続する接続部分を備え、接続部分はカムトラックに属さず、前記接続部分は、ハンマがゼロリセット位置にあるときに端部嘴状部を受け入れて収容するための隙間を形成する凹部を備える。
・ガイドカムの第2の部分は、ハンマの復動中に端部嘴状部を凹部から係合解除するようにかつ端部嘴状部がゼロリセット部材の遠位端を迂回するように形作られる。
・クロノグラフカウンタは秒カウンタである。
・機構はまた、分カウンタシャフトを有する分カウンタと、分カウンタシャフトと一体となって回転する分針とを備え、分カウンタシャフトは第2のハート形のゼロリセット部材を担持する。
・ハンマは、第2のゼロリセット部材と協働する第2のアームを備え、第2のアームは、第2のゼロリセット部材が基準位置に配置されるまでゼロリセット制御部の作用下で駆動トルクを発生させるように構成される。
【0027】
本発明の別の態様は、本発明によるこのようなクロノグラフ機構を含む時計ムーブメントに関する。
【0028】
本発明の別の態様は、本発明によるクロノグラフ機構を含む、本発明によるこのような時計ムーブメントを含む時計に関する。
【0029】
時計は好ましくは、本発明による時計ムーブメントを受け入れて収容するように構成された時計ケースを含む腕時計である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の目的、利点及び特徴は、以下の図を参照して以下に示す詳細な説明を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
図1】技術的背景で既に説明した、先行技術のクロノグラフ機構のゼロリセットカムの第1の例の概略図である。
図2】技術的背景で既に説明した、先行技術のクロノグラフ機構のゼロリセットカムの第2の例の概略図である。
図3】クロノグラフ機構が中立休止位置にある、本発明による時計ムーブメントのクロノグラフ機構の概略2D表現である。
図4図3に示すクロノグラフ機構の一部の詳細図であり、特にゼロリセットハンマの第1のアームを示す。
図5】クロノグラフ機構が作動ゼロリセット位置にある、本発明による時計ムーブメントのクロノグラフ機構の概略2D表現である。
図6図5に示すクロノグラフ機構の一部の詳細図であり、特にゼロリセット部材と接触しているゼロリセットハンマの第1のアームを示す。
図7】ハンマをガイドするためのガイドカムを備える、本発明によるクロノグラフ機構の係合解除可能なガイドヨークの端部を示す詳細図である。
図8図3に示す中立休止位置と図5に示す作動ゼロリセット位置との間のハンマの往動中の第1の中間位置にある本発明によるクロノグラフ機構を示す。
図9図5に示す作動ゼロリセット位置と図3に示す中立休止位置との間のハンマの復動中の第1の中間位置にある本発明によるクロノグラフ機構を示す。
図10図5に示す作動ゼロリセット位置と図3に示す中立休止位置との間のハンマの復動中の第2の中間位置にある本発明によるクロノグラフ機構を示す。
図11】本発明によるクロノグラフ機構の秒カウンタにおけるハンマの復動を示す。
【0031】
すべての図において、別段の指示がない限り、共通の要素には同じ符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図3は、本発明による時計ムーブメント1に組み込まれたクロノグラフ機構10の概略平面図を示す。
【0033】
図3は特に、中立位置、すなわち非作動位置にあるクロノグラフ機構10を示す。クロノグラフカウンタは一例としてそれらの基準位置にあることに留意されたい。
【0034】
図5は、カウンタがそれらの当初位置に関係なくそれらの基準位置に再配置される、作動ゼロリセット位置にある同じクロノグラフ機構10を示す。
【0035】
本発明による時計ムーブメント1は従来の方式で、時計ムーブメント1の様々な要素のための、特にエネルギー源(図示せず)によって駆動される時間の分割専用の作動トレイン(図示せず)のための支持体として機能するプレート2を備える。
【0036】
エネルギー源50は、例えば、作動トレインに動力を供給するためのエネルギーの蓄えを構成するバレルである。
【0037】
従来、作動トレインは、時刻表示の針、具体的には、時の目盛りと協働する時針、分の目盛りと協働する分針、及び秒の目盛りと協働する秒針、すなわちトロトゥーズ針を駆動する。
【0038】
作動トレインは、従来、規制部材によって規制される。
【0039】
規制部材は、従来、振動子と脱進機とを含む。振動子は、電気振動子又は機械振動子であり得る。
【0040】
例えば、振動子は機械的なスプラングバランス型振動子である。このようなばねバランスは、例えば、2.5Hzから4Hzの間の振動周波数を有する。
【0041】
例えば、振動子は、高周波の電気振動子又は機械振動子であり、すなわち4Hzを超える周波数で振動する。
【0042】
例えば、振動子は、高周波の電気振動子又は機械振動子であり、すなわち5Hz以上の周波数で振動する。
【0043】
クロノグラフ機構10は、クロノグラフトレイン20を含み、クロノグラフトレイン20は、要求に応じて、クロノグラフオン/オフ制御部材30によって制御されるカップリング(図示せず)を介して作動トレインと運動学的に接続することができる。
【0044】
代替的な実施形態によれば、カップリングは、カップリングホイールが旋回することを可能にするヨークカップリングである。
【0045】
代替的な実施形態によれば、カップリングは、垂直カップリングである。
【0046】
別の代替的な実施形態によれば、カップリングは、差動カップリング入力の1つを遮断するためにクロノグラフ始動/停止制御部材によって制御されるカップリングヨークと協働する差動カップリングである。
【0047】
従来、クロノグラフトレイン20は、少なくとも1つのクロノグラフカウンタを備える。
【0048】
図3及び図5を参照すると、クロノグラフトレイン20は、秒カウンタ22によって形成される第1のクロノグラフカウンタと、分カウンタ21によって形成される第2のクロノグラフカウンタとを備える。
【0049】
分カウンタ21は、分カウンタシャフトと呼ばれるシャフト213に連結された分カウンタホイール211を備え、クロノグラフ分針214(図3に点線で示す)を駆動する。
【0050】
秒カウンタ22は、秒カウンタシャフトと呼ばれるシャフト223に連結された秒カウンタホイール221を備え、クロノグラフ秒針224(図3に点線で示す)を駆動する。
【0051】
好ましくは、分カウンタホイール211は分カウンタ21のシャフト213と一体であり、秒カウンタホイール221は秒カウンタ22のシャフト223に摩擦により取り付けられる。当然ながら、本発明の文脈から離れることなく、逆の構成も可能である。
【0052】
代替的な実施形態によれば、分カウンタホイール211及び秒カウンタホイール221は、それらのそれぞれのシャフト213、223に摩擦により取り付けられる。
【0053】
クロノグラフトレイン20はまた、フドロワイヤント秒カウンタとしても知られる追加の数分の1秒カウンタ(図示せず)を含むことができる。
【0054】
クロノグラフトレイン20は、クロノグラフ機構10の様々なカウンタ21、22間で所望の比を得るために、中間クロノグラフホイールセット23、24、25を含むことができる。クロノグラフトレイン20は、ムーブメントの必要性及び構造、ならびに時計ムーブメント1のプレート2上の分カウンタ21、秒カウンタ22、任意選択でフドロワイヤント秒カウンタのレイアウトに応じて、より多くの中間ホイールセットを含むことができる。
【0055】
クロノグラフ機構10はまた、分カウンタ21及び秒カウンタ22をゼロにリセットし、より具体的にはこれらのカウンタ21、22に関連する針214、224をゼロにリセットする機構40を特徴とする。
【0056】
ゼロリセット機構40は、クロノグラフカウンタ21、22のシャフト213、223と一体のゼロリセット部材215、225を備える。ゼロリセット部材215、225は、ハンマ50と協働してそれらを基準位置に配置し、カウンタ21、22の針214、224をゼロにリセットする。
【0057】
分カウンタ21及び秒カウンタ22のゼロリセット部材215、225は、例えば、カタツムリ、ハートなどの形状のゼロリセットカムであり、その形状により、ハンマ50のストロークの終わりに針214、224を基準位置に再配置することができる。
【0058】
図3から図11に示す例では、クロノグラフ分カウンタ21のゼロリセット部材215は、例えば、反対方向に配置された2つの同一の渦巻を有するハート部品である。以降の説明では、分カウンタ21のゼロリセット部材215を単にハートカム215と呼ぶ。
【0059】
本発明によれば、クロノグラフ秒カウンタ22のゼロリセット部材225は、単一の渦巻形状を有するカタツムリ形状のカムである。以降の説明では、秒カウンタ22のゼロリセット部材225を単に渦形カム225と呼ぶ。
【0060】
図3と同様に、中立休止位置にある秒カウンタ22及びハンマ50をより正確に示す図4を参照すると、渦形カム225は、秒カウンタ22のシャフト223の周りで渦巻状に半径方向に延びるカムトラック226の境界を、シャフト223に対するカムトラック226の最小半径のゾーンを画定する近位端227からシャフト223に対するカムトラック226の最大半径のゾーンを画定する遠位端228まで定める。カムトラック226は、シャフト223に駆動トルクを与えるためにハンマ50が圧迫する渦形カム225の外側トラックを画定する。
【0061】
カムトラック226の遠位端228と近位端227とは、カムトラック226の一部を形成しない接続部分230によって接続される。図示の例では、接続部分230は、秒カウンタ22のシャフト223に対して半径方向に延びる概ねS字状の形状を有する。
【0062】
接続部分230は、近位端227の近くに位置する凹部232を有する。凹部232は、そのストロークの終わり(ゼロリセット位置)にハンマ50の一部分、詳細には第1のアーム510の突出端を受け入れるのに適した隙間を形成する。
【0063】
接続部分230はまた、渦形カム225がゼロにリセットされたときにハンマ50に当接するように意図された領域を拡張するように遠位端228の近くに位置する追加の軸受面231を含むことができる。
【0064】
ゼロリセット機構40は、例えば押しボタン又は作動ピン61によって、ユーザが操作できるゼロリセット制御部60を含む。ゼロリセット制御部60は、回転軸66の周りを回転することができ、ゼロリセットハンマ50と直接的又は間接的に協働し、ゼロリセットハンマはその結果、カム215、225に作用して、関連するカウンタ21、22の針214、224をゼロにリセットする。
【0065】
図3及び図5に示すように、ゼロリセット制御部60は、それぞれのユーザ操作の間にゼロリセット制御部60を中立休止位置(図3)に再配置するように構成された弾性ゼロリセット要素62と協働する。弾性要素の弾性効果の下でゼロリセット制御部60を再配置すると、ハンマ50が中立位置に再配置される。
【0066】
ゼロリセット機構40はまた、ゼロリセット機構40を固定し、ハンマ50のそのゼロリセット位置までの完全な作動を確実にする保持部材64を含む。保持部材64は、ある一定の力がゼロリセット制御部60に加えられるまで、ゼロリセット制御部60の作動、ひいてはハンマ50の作動を一時的に保持するように構成される。
【0067】
保持部材64は、クロノグラフ機構10の針214、224が意図せずゼロにリセットされることを防止する安全部材である。保持部材64は、メカニカルヒューズの動的挙動と同様の動的挙動を有する。
【0068】
図2及び図5に示すように、保持部材64は、プレート2と一体の部分と、ゼロリセット制御部60の作動に対して保持力を加えるように配置された弾性部分とを備える。弾性部分は、保持力よりも大きい力がゼロリセット制御部60に加えられると変形するように構成され、これによりゼロリセット制御部60の完全な動きを解放し、ハンマ50がそのゼロリセット位置まで移動することを可能にする(図5)。ゼロリセット制御部60は、例えば、保持部材64の弾性部分に載置されるように設計されたスタッド65を備える。
【0069】
より具体的には、スタッド65は、保持部材64の弾性部分の自由端に形成された保持ノッチに寄り掛かる。保持ノッチは保持面と傾斜点とを有し、傾斜点を超えると保持部材64はゼロリセット制御部60の迅速で妨げられない作動を可能にし、これにより、ハンマ50がクロノグラフカウンタ21、22のゼロリセットカム215、225と接触し、これらのカムがそれらの基準位置に再配置されるまで、ハンマ50を完全に作動させることができる。
【0070】
ハンマ50は、その自由端に、秒カウンタ22の渦形カム225のカムトラック226に対して傾斜して当接するように構成された第1の軸受面を形成する傾斜面512を有する第1のアーム510を備える。ハンマ50の第1のアーム510は、図4及び図5により詳細に示される。
【0071】
詳細には、図4は、その中立休止位置にあるハンマ50の第1のアーム510を示し、一方、図6は、ハンマ50のストロークの終わりにそのゼロリセット位置にあるハンマ50の同じアーム510を示す。
【0072】
第1のアーム510は、渦形カム225の角度位置決めの基準として機能する位置決め停止部を形成する停止面513を有する。停止面513は、軸受面231及び/又はカムトラック226の遠位端228が停止面513と接触すると、渦形カムがゼロにリセットされたときに渦形カム225の回転を停止し、これにより渦形カム225をその基準位置に配置する。
【0073】
第1のアーム510の傾斜面512は、停止面513とともに、端部嘴状部514を形成する。端部嘴状部514は、傾斜面512を延長して停止面513から突出する突出部を形成する。
【0074】
したがって、ハンマ50の第1のアーム510は、従来技術から知られている馬の蹄の形状とは異なる形状を有する。
【0075】
端部嘴状部514は、ゼロリセット動作中、特に渦形カム225が臨界位置にある場合に、すなわち、既にその基準位置に又はその基準位置に極めて近い位置にある場合に、アーム510の傾斜面512とカムトラック226との間の十分なオーバーラップを確実にする。実際、これらの特定の位置で、従来の馬の蹄の形状のハンマを用いると、アーム510は、渦形カムを通常のゼロリセット方向に回転させる代わりに、渦形カムを「スリップ」させて押す可能性がある。この現象は、ユーザには、カウンタ針が通常のゼロリセット方向(この場合は時計回り)に回転するのではなく、逆方向に移動するように知覚され得る。
【0076】
したがって、このような端部嘴状部514により、傾斜面512の接触面が延長され、クロノグラフ機構10のゼロリセット制御部60が作動されたとき、及びハンマ50が渦形カム225に衝突するときに、その角度位置にかかわらず、渦形カム225が確実に作動する。
【0077】
渦形カム225の接続部分230にある凹部232は、図5に示すように、渦形カム225がその基準位置にあるとき及びハンマ50がそのストロークの終わりにあるときに、第1のアーム510の端部嘴状部514を受け入れて収容する。
【0078】
端部嘴状部514が凹部232に収容されるとき、渦形カム225の軸受面231、又はカムトラック226の少なくとも遠位端228は、ハンマ50の第1のアーム510の停止面513に当接している。
【0079】
ハンマ50は、分カウンタ21のハートカム215と協働するように構成された第2のアーム520を有する。
【0080】
図3及び図6に示すように、第2のアーム520は、Vを形成する2つの傾斜側面を有する軸受面521を有し、軸受面521は、分カウンタ21のハートカム215と協働するように構成される。
【0081】
このようにして、軸受面521の各傾斜面は、ゼロリセット制御部60が作動されたときのその相対位置に応じて、ハートカム215のハート形状の2つの渦巻のうちの一方と協働することができる。各傾斜面の傾斜は、クロノグラフ分針214と一体のシャフト213への駆動トルクを発生させ、時計回り又は反時計回りにハートカム215をその基準位置に再配置するように構成される。
【0082】
ハートカム215は、ハートカム215、ひいてはクロノグラフ分針214をそのゼロリセット位置の安定位置に維持するために、軸受面521の2つの傾斜面によって形成された先端を受け入れるためのノッチを2つの渦巻の間に有し、これにより針214がぐらつく現象を回避する。
【0083】
クロノグラフ機構10、特に、カウンタ21、22の針214、224をゼロにリセットすることは、以下のように行われる。
【0084】
ユーザによって操作され、保持部材64の保持力よりも大きな力がゼロリセット制御部60に加えられると、ゼロリセット制御部が解放され、ハンマ50が、図5に示すそのゼロリセット位置まで迅速かつ完全に移動することを可能にする。
【0085】
ハンマ50はその後、カウンタ21、22のゼロリセット部材215、225と接触していない図3に示すその中立休止位置から、図5に示すゼロリセット位置に移動し、カウンタ21、22のゼロリセット部材215、225をそれらの基準位置に再配置し、ゼロリセット制御部60がユーザによって解放されるまでそれらを安定位置に保持する。
【0086】
ハンマ50は、ゼロリセット制御部60が作動されたとき及びゼロリセット制御部60がユーザによって解放されたときにハンマ50をガイドするように形作られたガイド部材140と協働し、弾性ゼロリセット要素62の作用下で、ゼロリセット制御部60を中立休止位置に再配置する。このようにして、ガイド部材140は、第1の経路に沿ったハンマ50の往動及び第2の経路に沿ったハンマの復動を画定し、ガイドする。
【0087】
詳細には、ハンマ50の往動は、その中立休止位置からそのゼロリセット位置へのハンマ50のストロークに対応し、逆に、ハンマ50の復動は、そのゼロリセット位置からその中立休止位置へのハンマ50のストロークに対応する。
【0088】
弾性ゼロリセット要素62の弾性復帰の作用下でのハンマ50の復動は、往動の経路とは異なる経路を有する。詳細には、これは、ハンマ50の復動中に渦形カム225の角度位置を変えることなく、ゼロリセット位置で、凹部232に収容された端部嘴状部514を解放するために必要である。このようにして、カムのゼロへのリセットは影響を受けない。
【0089】
一例として、ハンマ50の往動中の経路は一方向であり、復動中の経路は少なくとも二方向である。
【0090】
一例として、ハンマ50の往動中の経路は直線かつ一方向であり、復動中の経路は直線かつ少なくとも2つの異なる方向である。
【0091】
一例として、ハンマ50の往動中の経路は円形であり、復動中の経路は、往動とは異なる経路を有するように曲線であり得る。
【0092】
往動と復動中でハンマ50のストロークを変更するために、ガイド部材140は、ハンマ50の往動又は復動に応じて係合解除することができかつハンマ50と一体のガイドペグ55と協働するガイドヨーク142を備える。
【0093】
図示の例では、係合解除可能なガイドヨーク142は、ハンマ50の往動中に係合解除され、すなわち非作動となり、復動中にハンマ50の一方向の経路を変更するように、特に端部嘴状部を凹部232から係合解除するように、かつ端部嘴状部514とカムの遠位端228との接触を避けるために端部嘴状部514を渦形カム225から十分に遠ざけるように構成される。
【0094】
係合解除可能なガイドヨーク142は、プレート2に平行な平面内で、その回転軸12を中心に回転可能である。ガイドヨークばね143が、ガイドヨーク142を、固定されたヨーク止め144に当接し、ガイドヨーク142の第1の回転方向におけるその角度方向の遊びをも制限する、その中立平衡位置に再配置するように付勢される。
【0095】
このガイドヨーク142に対するハンマ50による特別な作用なしに、ガイドヨーク142は、ガイドヨークばね143によって、ヨーク止め144に当接するこの中立位置に保持される。
【0096】
ガイドヨーク142は、ハンマ50のガイドペグ55と協働するガイドカム145を担持する。
【0097】
ガイドカム145は、ゼロリセット制御部60が作動されたときのガイドペグ55の前進により、ガイドヨーク142をヨーク止め144から遠ざけることによって、ガイドヨーク142の係合解除を可能にするように構成された第1の部分146を有する。
【0098】
ガイドカム145は、ゼロリセット制御部60が解放されたときにハンマ50の経路の方向を変えるように構成された第2の部分147を有する。
【0099】
係合解除可能なガイドヨーク142のガイドカム145をより詳細に示す図7を参照すると、ガイドカム145は、例えば、菱形の全体的な形状を有し、ガイドカム145の第1の部分146は、ハンマ50の往動ストローク中にガイドペグ55を受けるための第1の傾斜面146aを有する。ガイドペグ55が第1の傾斜面146aと接触するとき、第1の傾斜面146aの傾斜により、回転軸12を中心にガイドヨーク142を回転させることによって、ハンマ50が前進するにつれて係合解除ヨークを係合解除することができる。係合解除は、ガイドヨークばね143に対して力を加えることによって行われる。
【0100】
第1の部分146はまた、所定の長さの第1の平坦部146bを含み、ガイドペグ55がガイドカム145を通過しない限り、係合解除ヨークをこの係合解除位置に保持するように構成される。
【0101】
第2の部分147は、ハンマ50の復動中にガイドペグを受けてガイドするために緩やかな傾斜を形成する第2の傾斜面147aを有する。ハンマ50の復動中、ガイドヨーク142がヨーク止め144に当接してブロックされた状態で、ガイドペグ55がこの第2の傾斜面147aと接触すると、第2の傾斜面147aは、第1のアーム510が渦形カム225を迂回することができるように、ガイドペグ55、ひいてはハンマ50の方向を変える。第2の部分147はまた、所定の長さの第2の平坦部147bを含み、ハンマ50の復動中にガイドペグ55がガイドカム145を通過しない限り、ハンマ50を渦形カム225から離して保持するように構成される。
【0102】
ハンマ50は、ゼロリセット制御部60と一体の第1のガイドピン71と協働する、長円形の第1のガイドスロット51を有する。第1のガイドスロット51の向きは、ハンマ50とゼロリセット制御部60との間のいくらかの角度変位を許容しながら、ゼロリセット制御部60の回転運動をハンマ50の実質的な直線運動に変えるように決定される。第1のガイドスロット51及び第1のガイドピン71は、ガイド部材140に属する。この第1のスロット51は、ハンマ50の第1の端部に位置する。
【0103】
ハンマ50は、実質的にハンマ50の進行方向に配向された長円形の第2のガイドスロット52を特徴とする。第2のガイドスロット52は、ゼロリセット制御部60とは反対側のハンマ50の端部に位置する。
【0104】
第2のガイドスロット52は第2のガイドピン72と協働し、第2のガイドピン72は不動であり、例えばプレート2と一体である。
【0105】
第2のガイドスロット52及び第2のガイドピン72は、ガイド部材140に属し、ピボットスライド接続を形成し、第2のガイドスロット52の長円形の形状に沿った並進運動及び第2のガイドピン72によって形成されるピボットの周りのハンマ50の回転運動をガイドし、可能にする。
【0106】
ハンマ50はまた、第3のガイドスロット53を特徴とし、その外側輪郭は、往動と復動との間のハンマ50の角度方向の遊びの範囲を定める。第3のガイドスロット53は第3のガイドピン73と協働し、第3のガイドピン73は不動であり、例えばプレート2と一体である。
【0107】
ハンマ50の往動中、ゼロリセット制御部60はハンマ50の直線変位を開始する。ハンマ50は、第2のガイドスロット52と協働する第2のガイドピン72と、第3のガイドスロット53と協働する第3のガイドピン73の両方によって並進運動をガイドされる。ハンマばねを使用して、往動ストローク中にハンマ50を第3のガイドピン73に対して保持するように付勢された力を加えることができ、その結果、第3のガイドピン73は、第3のガイドスロット73の下側輪郭(図3に示すように)と接触して保持される。
【0108】
第1の部分146の第1の傾斜面146aの傾斜とガイド部材140によって課される制約とを前提として、ハンマ50の往動中のガイドペグ55の変位(この場合は直線である)は、ガイドペグ55の直進中にガイドカム145の方向を変えることによって、ガイドヨーク142の角度位置を変更する。ガイドペグ55がガイドカム55を通過すると、係合解除可能なガイドヨーク72は、ガイドヨークばね143の作用下でその休止位置に戻る。
【0109】
ハンマ50のこの往動中、2つのアーム510、520はゼロリセット部材215、225に衝突し、上述のようにそれぞれのシャフト213、223に駆動トルクを与える。このようにして、ゼロリセット部材215、225はそれらの基準位置に再配置される。
【0110】
ユーザがゼロリセットヨーク60を解放すると、弾性ゼロリセット要素62の作用下で、ハンマ50は初めに、ガイドペグ55が係合解除可能なガイドヨーク142のガイドカム145の第2の部分147と接触するまで、往動ストロークと同様の直線経路に沿って移動する。
【0111】
ガイドカム145の第2の傾斜面147aの傾斜と係合解除可能なガイドヨーク72の回転を阻止するヨーク止め144とを前提として、ガイドペグ55、ひいてはハンマ50は、ガイドカム145によって方向を変えられ、ハンマばね50に力を加える。
【0112】
ガイドカム145の形状によって与えられるハンマ50のこの角度オフセットは、詳細には第3のガイドスロット53の存在によって可能にされ、これにより、第2のガイドスロット52及び第2のガイドピン72によって形成されるピボットスライド接続の周りでハンマ50に角度の自由度が与えられる。
【0113】
例示として、図3は、ゼロリセット制御部60が操作されていないときの、本発明によるクロノグラフ機構10、特にその中立休止位置にあるハンマ50を示す。
【0114】
図8は、ハンマ50の往動中のハンマ50の中立休止位置とゼロリセット位置との間の中間位置にある本発明によるクロノグラフ機構10を示す。この図8では、ゼロリセット制御部60の回転により、ハンマ50がカウンタ21、22に向かって直線的に移動したことが分かる。ガイドペグ55は、ヨーク止め144から離れるようにガイドヨーク142の方向を変える。第1のアーム510の傾斜面512は、カムトラック226と接触しており、渦形カム225のゼロリセットを開始している。
【0115】
ハンマ50の更なる移動により、ハンマ50は上記の図5に示した位置になる。この図5では、アーム510、520がゼロリセット部材に衝突し、ゼロリセット部材215、225はそれらの基準位置に再配置される。
【0116】
図9及び図10は、ハンマ50の復動中の、図5のゼロリセット位置と図3の中立休止位置との間の本発明によるクロノグラフ機構10の2つの中間位置を示す。
【0117】
より具体的には、図9は、ガイドカム145の第2の部分147の第2の傾斜面147aの傾斜によってその方向を変えられるときのハンマ50の位置を示す。ハンマはその後、第1の方向t1の経路をたどる。
【0118】
図10は、ガイドカム145の第2の部分147の第2の平坦部147bによって離れて保持されるときのハンマ50の位置を示す。この位置から、ガイドペグ55がガイドカム145によって方向を変えられなくなると、ハンマばね(図示せず)の作用下で、ハンマ50は戻って第3のガイドピン73に当接し、第2の方向t2に移動し、その後図3に示すその当初の中立休止位置に戻る。
【0119】
図11は特に、ハンマ50の復動中の渦形カム225の周りの第1のアーム510の経路を示す。
【0120】
本発明は特に、往動中に一方向に直線経路に沿って移動し、復動中に少なくとも二方向に直線経路に沿って移動するハンマを用いて説明された。しかしながら、本発明はまた、ゼロリセット制御部及びガイド部材と協働するように構成され、係合解除可能なガイドカムを用いて第1のアームの復路にオフセットを作成するために、ハンマが往動及び復動中に円形経路、曲線経路又は複雑な経路を有し、復動中に複数の方向の経路を有することを可能にするハンマにも適用可能である。
【0121】
様々な図に示すように、クロノグラフ機構10は、コラムに寄り掛かる又は2つのコラムの間に置かれる様々なレバーの様々な動きを制御するためにコラムホイール63を含む。このようなコラムホイール63によるクロノグラフ機構10の動作は広く知られているので、このようなホイールがどのように動作するかについてさらに説明する必要はない。
【0122】
当然ながら、クロノグラフ機構10は、本発明の範囲を逸脱することなく、コラムホイール63に代わるカムを有するクロノグラフ機構であってもよい。
【0123】
本発明はまた、このような時計ムーブメントを備える時計、例えば腕時計に関する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-01-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)であって、
・シャフト(223)と、前記シャフト(223)と一体となって回転する針(224)とを有するクロノグラフカウンタ(22)と、
・前記クロノグラフカウンタ(22)をゼロにリセットするためのゼロリセット機構(40)であって、前記シャフト(223)と一体のゼロリセット部材(225)と、前記ゼロリセット部材(225)と協働するようにかつ前記クロノグラフカウンタ(22)の進行方向の回転によって前記ゼロリセット部材(225)が基準位置に配置されるまでゼロリセット制御部(60)の作用下で駆動トルクを発生させるように形作られたハンマ(50)とを備えるゼロリセット機構(40)と
を備え、
前記ゼロリセット部材(225)は、前記クロノグラフカウンタ(22)の前記シャフト(223)の周りに、前記シャフト(223)に対する最小半径のゾーンを画定する近位端(227)から前記シャフト(223)に対する最大半径のゾーンを画定する遠位端(228)まで渦巻状に延びるカムトラック(226)を有する渦形カムであり、
前記ハンマ(50)は、前記ゼロリセット制御部(60)によって、前記ハンマ(120)が前記カムトラック(226)と接触しない休止位置と、前記ハンマ(50)が前記カムトラック(226)と接触して前記ゼロリセット部材(225)を前記基準位置に保持するゼロリセット位置との間で移動させることができ、前記ハンマ(50)は、前記休止位置と前記ゼロリセット位置との間で前記ゼロリセット部材(225)への駆動トルクを発生させ、
前記ハンマ(50)は、前記休止位置と前記ゼロリセット位置との間の第1の経路に沿った前記ハンマ(50)の往動をガイドするようにかつ前記ゼロリセット位置と前記休止位置との間の第2の経路に沿った前記ハンマの復動をガイドするように形作られたガイド部材(140)と協働し、前記ハンマ(50)の前記第1の経路と前記第2の経路は一致しないことを特徴とする、時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)。
【請求項2】
前記ガイド部材(140)は、前記休止位置と前記ゼロリセット位置との間の第1の一方向の直線経路に沿って、及び前記ゼロリセット位置と前記休止位置との間の少なくとも2つの異なる方向を有する第2の多方向経路に沿って前記ハンマ(50)をガイドするように形作られることを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)。
【請求項3】
前記ガイド部材(140)は、前記休止位置と前記ゼロリセット位置との間の第1の曲線経路に沿って、及び前記ゼロリセット位置と前記休止位置との間の前記第1の経路とは異なる第2の経路に沿って前記ハンマ(50)をガイドするように形作られることを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)。
【請求項4】
前記ガイド部材(140)は、前記ハンマ(50)の往動中は非作動となり、前記ハンマ(50)の復動中は作動中となるように形作られた係合解除可能なガイドヨーク(142)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)。
【請求項5】
前記係合解除可能なガイドヨーク(142)は、前記ハンマ(50)と一体のガイドペグ(55)と協働するガイドカム(145)を備え、前記ガイドカム(145)は、前記ハンマ(50)の往動中に前記ガイドヨーク(142)を係合解除するように形作られた第1の部分(146)と、前記ハンマ(50)の復動中に前記ハンマ(50)をガイドするように形作られた第2の部分(147)とを備えることを特徴とする、請求項4に記載の時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)。
【請求項6】
前記係合解除可能なガイドヨーク(142)は、前記係合解除可能なガイドヨーク(142)をヨーク止め(144)に当接する中立平衡位置に再配置するように付勢されたガイドヨークばね(143)と協働することを特徴とする、請求項5に記載の時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)。
【請求項7】
前記ハンマ(50)は、その自由端に、前記ゼロリセット部材(225)のカムトラック(226)と接触し、前記ゼロリセット部材(225)が前記基準位置に配置されるまで前記ゼロリセット制御部(60)の作用下で駆動トルクを発生させるように構成された傾斜面(512)を有するアーム(510)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)。
【請求項8】
前記アーム(510)は、ゼロリセット動作中に前記ゼロリセット部材(225)のための角度位置決め停止部を形成するように構成された停止面(513)を有することを特徴とする、請求項7に記載の時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)。
【請求項9】
前記アーム(510)は、前記傾斜面(512)を延長して前記停止面(513)から突出する突出部を形成する端部嘴状部(514)を有することを特徴とする、請求項8に記載の時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)。
【請求項10】
前記ゼロリセット部材(225)は、前記近位端(227)と前記遠位端(228)とを接続する接続部分(230)を備え、前記接続部分(230)は前記カムトラック(226)に属さず、前記接続部分(230)は、前記ハンマ(50)が前記ゼロリセット位置にあるときに前記端部嘴状部(514)を受け入れて収容するための隙間を形成する凹部(232)を備えることを特徴とする、請求項9に記載の時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)。
【請求項11】
前記ガイド部材(140)は、前記ハンマ(50)の往動中は非作動となり、前記ハンマ(50)の復動中は作動中となるように形作られた係合解除可能なガイドヨーク(142)を備え、前記係合解除可能なガイドヨーク(142)は、前記ハンマ(50)と一体のガイドペグ(55)と協働するガイドカム(145)を備え、前記ガイドカム(145)は、前記ハンマ(50)の往動中に前記ガイドヨーク(142)を係合解除するように形作られた第1の部分(146)と、前記ハンマ(50)の復動中に前記ハンマ(50)をガイドするように形作られた第2の部分(147)とを備え、前記ガイドカム(145)の第2の部分(147)は、前記ハンマ(50)の復動中に前記端部嘴状部(514)を前記凹部(323)から係合解除するようにかつ前記端部嘴状部(514)が前記ゼロリセット部材(225)の遠位端(228)を迂回するように形作られることを特徴とする、請求項10に記載の時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)。
【請求項12】
前記クロノグラフカウンタ(22)が秒カウンタであることを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)。
【請求項13】
前記クロノグラフ機構(10)は、分カウンタシャフト(213)を有する分カウンタ(21)と、前記分カウンタシャフト(213)と一体となって回転する分針(214)とを備え、前記分カウンタシャフト(213)はハート形の第2のゼロリセット部材(215)を担持することを特徴とする、請求項12に記載の時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)。
【請求項14】
前記ハンマ(50)は、前記第2のゼロリセット部材(215)と協働する第2のアーム(520)を備え、前記第2のアーム(520)は、前記第2のゼロリセット部材(215)が基準位置に位置するまで前記ゼロリセット制御部(60)の作用下で駆動トルクを発生させるように構成されることを特徴とする、請求項13に記載の時計ムーブメント(1)用のクロノグラフ機構(10)。
【請求項15】
請求項1に記載のクロノグラフ機構(10)を備える時計ムーブメント(1)。
【外国語明細書】