(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089636
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】相互ロックにより中間部に固定された裏蓋を含む時計ケースを開けるための装置
(51)【国際特許分類】
G04D 1/10 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
G04D1/10
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023202296
(22)【出願日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】22215599.6
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ホイスラー、 クリストフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】時計ケースを開けるための工具、特に、裏蓋又は中間部を損傷する危険性なく、簡単かつ迅速に、時計の裏蓋を中間部から分離するための工具を提供する。
【解決手段】相互ロックにより中間部に固定された裏蓋を含む時計ケースを開けるための装置10であって、フレーム12に固定されかつ時計ケースを所定の位置に保持するように意図された取付具11と、フレームに対してX方向に平行移動可能な少なくとも1つのキャリッジ13、14であって、ナイフが固定された工具ホルダ130、140を含むキャリッジとを備え、さらに、使用者によって作動されるように設計された制御要素16を含み、制御要素は、作動されるとキャリッジが取付具に向かって又は取付具とは反対の方向に平行移動するように構成された伝達部材によってキャリッジに運動学的に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互ロックにより中間部に固定された裏蓋を含む時計ケースを開けるための装置(10)であって、それは、フレーム(12)に固定されかつ時計ケースを所定の位置に保持するように意図された取付具(11)と、前記フレーム(12)に対してX方向に平行移動可能な少なくとも1つのキャリッジ(13、14)であって、ナイフが固定された工具ホルダ(130、140)を含むキャリッジ(13、14)とを備え、前記装置(10)はさらに、使用者によって作動されるように設計された制御要素(16)を含み、前記制御要素(16)は、前記制御要素(16)が作動されると前記キャリッジ(13、14)が前記取付具(11)に向かって又は前記取付具(11)とは反対の方向に平行移動するように構成された伝達部材によって前記キャリッジ(13、14)に運動学的に接続されることを特徴とする装置(10)。
【請求項2】
前記取付具(11)の両側に、前記フレーム(12)に対して前記X方向に平行移動可能な2つのキャリッジ(13、14)を備え、前記伝達部材は、前記制御要素(16)が作動されると前記キャリッジ(13、14)が反対方向に平行移動するように構成される、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
2つの前記工具ホルダ(130、140)の間の最小距離を調整するためのモジュールを備え、前記モジュールは、各キャリッジ(13、14)のストロークの振幅を変更することができるように構成される、請求項2に記載の装置(10)。
【請求項4】
2つの前記工具ホルダ(130、140)の間の最小距離を調整するためのモジュールは、それぞれが前記工具ホルダ(130、140)の一方と前記取付具(11)との間に配置された2つの止め具(133、143)と、操作部材(22)が固定された位置決めシャフト(21)とを含み、前記位置決めシャフト(21)は、反対方向のねじ付き部分を用いて各止め具(133、143)と螺旋状の接続によって協働する、請求項3に記載の装置(10)。
【請求項5】
前記取付具(11)は、前記X方向と直交するZ方向における前記取付具(11)の平行移動を駆動するように構成された、その直線位置を調整するためのモジュールを備える、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項6】
前記取付具(11)の直線位置を調整するためのモジュールは、前記取付具(11)の構造体(116)内に平行移動可能であるように配置された取付具本体によって形成され、前記取付具本体は、螺旋状の接続で操作部材(113)と協働するねじ付き部分を含む、請求項5に記載の装置(10)。
【請求項7】
前記取付具(11)は、前記X方向と直交するZ方向を中心に回転することができ、前記Z方向を中心とする前記取付具(11)の回転を解放するように又は前記取付具(11)の回転を固定するように構成された、その角度位置を調整するためのモジュールを備える、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項8】
前記取付具(11)の角度位置を調整するためのモジュールは、基準角度位置で前記取付具(11)の進行を阻止するように適合された割出部材(119)を含む、請求項7に記載の装置(10)。
【請求項9】
前記取付具(11)の角度位置を調整するためのモジュールは、前記取付具(11)の凹部内に収容されたリング(115)を含み、前記リング(115)は、前記時計ケースを所定の位置に保持するように意図され、前記Z方向を中心に平行移動可能であり、阻止要素によって平行移動が固定される、請求項7又は8に記載の装置(10)。
【請求項10】
前記取付具(11)の角度位置を調整するためのモジュールは、前記取付具(11)に固定された弾性位置決め部材(118)を含み、前記弾性位置決め部材(118)は、圧縮状態で機能するように設計され、前記リング(115)が前記基準角度位置に到達すると前記リング(115)の凹部と協働するように設計される、請求項9に記載の装置(10)。
【請求項11】
前記キャリッジ(13、14)は、それが支持するナイフの位置を調整するためのモジュールを含み、前記調整モジュールは、前記ナイフを前記キャリッジ(13、14)に対してX方向に平行な少なくとも1つの方向に移動させるように構成される、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項12】
前記伝達部材は、前記制御要素(16)と回転において一体であるカム(17)を含み、前記カム(17)は2つのカムトラック(17)を備え、各カムトラック(17)とフォロア(131、141)が協働し、前記フォロア(131、141)はそれぞれ、各キャリッジ(13、14)に固定される、請求項2に記載の装置(10)。
【請求項13】
前記2つのカムトラック(17)は、対称性によって互いに対称であり、対称性の中心は前記カム(17)の回転軸と一直線になっている、請求項12に記載の装置(10)。
【請求項14】
前記X方向に直交するY方向を中心とする前記フレーム(12)に対する前記制御要素(16)の角度位置を調整するためのモジュールを備える、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項15】
前記X方向に直交するY方向を中心とする前記フレーム(12)に対する前記制御要素(16)の角度位置を調整するためのモジュールを備え、前記カム(17)は、前記制御要素(16)の角度位置を調整するためのモジュールを介して前記制御要素(16)に運動学的に接続される、請求項12又は13に記載の装置(10)。
【請求項16】
前記制御要素(16)の角度位置を調整するためのモジュールは、前記カム(17)と回転において一体である割出ホイール(160)と、前記制御要素(16)と前記割出ホイール(160)を回転において一体にするためにいくつかの角度位置のうちの1つで前記割出ホイール(160)と協働するように適合された割出要素(161)とを含む、請求項15に記載の装置(10)。
【請求項17】
前記フレーム(12)は、前記取付具(11)の両側に配置された2つのフランジ(120、121)を含み、前記フランジ(120、121)は、「第1のキャリッジ(13)」と呼ばれる前記キャリッジの一方に含まれる平行移動ガイドロッド(134)が貫通する開口部を含み、前記第1のキャリッジ(13)の工具ホルダ(130)は、前記ガイドロッド(134)と平行移動において一体である、請求項2に記載の装置(10)。
【請求項18】
「第2のキャリッジ(14)」と呼ばれる前記キャリッジの一方は、前記ガイドロッド(134)によってスライド可能に案内されるように構成される、請求項17に記載の装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロテクノロジー分野、特に時計製造分野における工具に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、相互ロックにより中間部(ミドル)に固定された裏蓋を含む時計ケースを開けるための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、時計の組み立て工程中に、特に時計ムーブメントを調整したりケース内部を清掃したりするために、又は防水テスト実施後に、時計のケースを開ける必要がある場面は数多くある。当然ながら、アフターサービスの際にも時計のケースを開ける必要がある。
【0004】
この開放は、裏蓋を中間部から取り外すことによって行われる。裏蓋を中間部に固定する方法には、裏蓋のねじ止め、バヨネット接続による裏蓋の固定、裏蓋の相互ロックなどがある。
【0005】
相互ロックにより中間部に固定される裏蓋の場合、裏蓋は、裏蓋を中間部から取り外すための工具の先端を受け入れるように設計された凹部をその周囲に含む。詳細には、工具の先端を凹部に係合した後、時計職人は工具を使用して中間部を押して裏蓋を中間部から取り外す。
【0006】
この作業は比較的難しく、このような作業を行う時計職人の細心の注意を必要とする。詳細には、この工具は、制御されていない動きに誤って巻き込まれた場合、裏蓋又は中間部を損傷するか又は少なくとも傷付けるリスクがある。
【0007】
裏蓋又は中間部が傷付くか又は損傷した場合、裏蓋又は中間部を研磨又は交換されるが、その費用は当然、時計の所有者が負担するはずがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、時計ケースを開けるための工具、特に、裏蓋又は中間部を損傷する危険性なく、簡単かつ迅速に、時計の裏蓋を中間部から分離するための工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の欠点を解消し、この目的のために、相互ロックにより中間部に固定された裏蓋を含む時計ケースを開けるための装置に関する。装置は、フレームに固定されかつ時計ケースを所定の位置に保持するように意図された取付具と、フレームに対してX方向に平行移動可能な少なくとも1つのキャリッジとを備える。キャリッジは、ナイフが固定される工具ホルダを含む。装置はさらに、使用者によって作動されるように設計された制御要素を含み、制御要素は、制御要素が作動されると、キャリッジが取付具に向かって又は取付具とは反対の方向に平行移動するように構成された伝達部材によってキャリッジに運動学的に接続される。
【0010】
特定の実施形態では、本発明はさらに、以下の特徴の1つ以上を単独で又は技術的に可能な任意の組み合わせで含むことができる。
【0011】
特定の実施形態では、装置は、取付具の両側に、フレームに対してX方向に平行移動可能な2つのキャリッジを備え、伝達部材は、制御要素が作動されるとキャリッジが反対方向に平行移動するように構成される。
【0012】
特定の実施形態では、装置は、2つの工具ホルダの間の最小距離を調整するためのモジュールを備え、モジュールは、各キャリッジのストロークの振幅を変更することができるように構成される。
【0013】
特定の実施形態では、2つの工具ホルダの間の最小距離を調整するためのモジュールは、それぞれが工具ホルダの一方と取付具との間に配置された2つの止め具と、操作部材が固定された位置決めシャフトとを含み、前記位置決めシャフトは、反対方向のねじ付き部分を用いて各止め具と螺旋状の接続によって協働する。
【0014】
特定の実施形態では、取付具は、X方向と直交するZ方向において取付具を平行移動させるように構成された、取付具の直線位置を調整するためのモジュールを備える。
【0015】
特定の実施形態では、取付具の直線位置を調整するためのモジュールは、取付具の構造体内に平行移動可能であるように配置された取付具本体によって形成され、取付具本体は、螺旋状の接続で操作部材と協働するねじ付き部分を含む。
【0016】
特定の実施形態では、取付具は、X方向に直交するZ方向を中心に回転することができ、Z方向を中心とする取付具の回転を解放するように又は取付具の回転を固定するように構成された、取付具の角度位置を調整するためのモジュールを備える。
【0017】
特定の実施形態では、取付具の角度位置を調整するためのモジュールは、基準角度位置で取付具の進行を阻止するように適合された割出部材を含む。
【0018】
特定の実施形態では、取付具の角度位置を調整するためのモジュールは、取付具の凹部内に収容されたリングを含み、前記リングは、時計ケースを所定の位置に保持するように意図され、Z方向の周りで平行移動可能であり、阻止要素によって平行移動が固定される。
【0019】
特定の実施形態では、取付具の角度位置を調整するためのモジュールは、取付具に固定された弾性位置決め部材を含み、弾性位置決め部材は、圧縮状態で機能するように設計され、かつリングが基準角度位置に到達するとリングの凹部と協働するように設計される。
【0020】
特定の実施形態では、少なくともキャリッジは、キャリッジが支持するナイフの位置を調整するためのモジュールを含み、前記調整モジュールは、ナイフをキャリッジに対してX方向に平行な少なくとも1つの方向に移動させるように構成される。
【0021】
特定の実施形態では、伝達部材は、制御要素と回転において一体であるカムを含み、前記カムは2つのカムトラックを備え、各カムトラックとフォロアが協働し、前記フォロアはそれぞれ、各キャリッジに固定される。
【0022】
特定の実施形態では、2つのカムトラックは、対称性によって互いに対称であり、対称性の中心はカムの回転軸と一直線になっている。
【0023】
特定の実施形態では、装置は、X方向に直交するY方向を中心とするフレームに対する制御要素の角度位置を調整するためのモジュールを備える。
【0024】
特定の実施形態では、カムは、制御要素の角度位置を調整するためのモジュールを介して制御要素に運動学的に接続される。
【0025】
特定の実施形態では、制御要素の角度位置を調整するためのモジュールは、カムと回転において一体である割出ホイールと、制御要素と割出ホイールを回転において一体にするためにいくつかの角度位置のうちの1つで割出ホイールと協働するように適合された割出要素とを含む。
【0026】
特定の実施形態では、フレームは、取付具の両側に配置された2つのフランジを含み、前記フランジは、「第1のキャリッジ」と呼ばれる1つのキャリッジに含まれる平行移動ガイドロッドが貫通する開口部を含み、第1のキャリッジの工具ホルダは、ガイドロッドと平行移動において一体である。
【0027】
特定の実施形態では、「第2のキャリッジ」と呼ばれる1つのキャリッジは、ガイドロッドによってスライド可能に案内されるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して、例として非限定的な方法で与えられる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【
図1】本発明の好ましい例示的な実施形態による時計ケースを開けるための装置の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、時計ケース、詳細には相互ロックにより中間部に組み付けられた裏蓋を備えるケースを開けるための装置10に関する。当業者に知られる方法で、この裏蓋は、工具、詳細にはナイフの先端を受け入れるように意図された凹部をその周囲に含む。
【0030】
図1から
図5に示すように、本発明の好ましい例示的な実施形態では、装置10は、以下で詳細に説明するように、裏蓋を中間部から分離することによって開けることができるように、ケースを所定の位置に保持するように意図された取付具11を含む。
【0031】
装置10は、取付具11が固定されるフレーム12と、取付具11が配置されるX方向においてフレーム12に対して平行移動可能な少なくとも1つのキャリッジ13又は14とを含む。キャリッジ13又は14は、ナイフが固定された工具ホルダ130又は140を含み、その自由端は、時計ケースを開けるために取付具11によって固定された時計の裏蓋の凹部に挿入されるように意図される。
【0032】
装置10はさらに、使用者によって作動されるように設計された制御要素16を含む。以下でより詳細に説明するように、制御要素16は、制御要素16が作動されると、制御要素16が作動される方向に応じてキャリッジ13又は14が取付具11に向かって又は取付具11と反対の方向に移動するように構成された伝達部材を介してキャリッジ13又は14に運動学的に接続される。
【0033】
言うまでもなく、装置10が単一のキャリッジ13又は14を含む本発明の実施形態は、ナイフを受け取るように意図された単一の凹部を含む時計の裏蓋に特に適している。
【0034】
以下の本文に記載され、図に示される本発明の実施形態では、装置10は2つのキャリッジ13及び14を含む。したがって、それは特に、その裏蓋がその周囲に2つの凹部を含むケースを開けるように意図される。当然ながら、以下で説明する要素は、第2のキャリッジ13又は14に関するもの又は後者に接続するものを除き、本発明の両実施形態に共通である。
【0035】
図から分かるように、2つのキャリッジ13及び14は、取付具11の両側で、フレーム12に対してX方向に平行移動することができる。言い換えれば、取付具11に関する基準座標系において、キャリッジ13及び14は互いに正反対である。言うまでもなく、本発明のこの例示的な実施形態では、裏蓋の凹部も互いに正反対である。伝達部材は、制御要素16が作動すると、キャリッジ13及び14が反対方向に移動するように構成される。このようにして、工具ホルダ130及び140によって支持されるナイフは、それらのそれぞれの凹部に同時に挿入され、ケースに同じ強度の反対の力をかける。
【0036】
本発明の好ましい例示的な実施形態では、制御要素16は、工具ホルダ130及び140を互いに接近又は離間させるために使用者によって旋回されるように設計されたレバーによって形成される。
【0037】
代わりに、制御要素16は、使用者によって回転及び/又は平行移動させることができる任意の把持部材によって形成されると考えることもできる。
【0038】
好ましくは、伝達部材は、制御要素16と回転において一体であるカム17を含む。好ましくは、制御要素16の回転軸とカム17の回転軸は一致する。これらの軸は、
図1においてY方向で示されており、この方向はX方向と直交している。
図3の断面で分かるように、カム17は伝動シャフト18に固定され、この場合は伝動シャフト18と伝動シャフト18が係合するカム17の開口部の正方形断面のおかげで、伝動シャフト18と回転において一体である。当然ながら、伝動シャフト18及びカム17は、ピン、キー、相補的な多角形などの伝動シャフト18の断面及びカム17開口部などの任意の適切な手段により回転を防止することができる。
【0039】
カム17は2つのカムトラック170を備え、各カムトラック170とフォロア131又は141が協働し、前記フォロア131及び141はそれぞれ、各キャリッジ13及び14に固定される。好ましい例示的な実施形態では、各カムトラック17は、
図3に示すように、曲線方向、本実施形態では半円の円弧に一致する方向に延びる貫通開口部によって形成される。
【0040】
キャリッジ13及び14が同一速度で移動するために、カムトラック17は対称性に従って互いに対称であり、対称性の中心はカム17の回転軸と一直線になっている。この対称性は
図3で見ることができる。
【0041】
好ましくは、フォロア131及び141は、
図3に示すように、それぞれカムトラック170を通って係合したフィンガの形態である。図に示す例示的な実施形態では、各キャリッジ13、14は、2つの平行な対向する壁を備える固定プレート132、142を含み、対向する壁の間にフォロア131、141が延び、各フォロア131及び141は、その両端の各々によって壁の一方に固定される。したがって、カム17は常に、
図1及び
図2に見られるように、各プレート132、142の壁の間に形成された空間内に配置される。
【0042】
伝動シャフト18は、以下でより詳細に説明するフレーム12の第1のフランジ120に旋回可能に取り付けられ、その両側にプレート132、142が配置される。
【0043】
有利には、装置10は、Y方向を中心とするフレーム12に対する制御要素16の角度位置を調整するためのモジュールを含むことができる。このような調整モジュールは、
図1、
図2及び
図4に示され、制御要素16の作動によって発生した力をキャリッジ13及び14に伝達してキャリッジ13及び14のそれぞれの動きを引き起こすために、制御要素16をカム17に運動学的に接続する。
【0044】
詳細には、制御要素16の角度位置を調整するためのモジュールは、伝動シャフト18を介してカム17と回転において一体である割出ホイール160を含み、伝動シャフト18は割出ホイール160と回転において一体である。伝動シャフト18及び割出ホイール160は、ピン、キー、又は伝動シャフト18と伝動シャフト18が係合する割出ホイール160の開口部との間の相補的な多角形の断面などの任意の適切な手段によって回転を防止することができる。
【0045】
制御要素16の角度位置を調整するためのモジュールはまた、制御要素16及び割出ホイール160の回転を固定するために、割出ホイール160のいくつかの角度位置の1つにおいて割出ホイール160と協働するように適合された割出要素161を含む。
【0046】
図1及び
図4に示すように、割出要素161は、制御要素16に固定され、割出ホイール160の複数の周辺孔のうちの1つに取り外し可能に係合するように適合され、これらの孔は、前記割出ホイール160の回転軸の周りに、すなわちY方向を中心に均等に分布している。ここで、孔の数が多いほど、制御要素16が占めることができる異なる角度位置の数が多いことが理解される。本実施例では、割出要素161は、制御要素16に固定されかつ割出ホイール160に対して回転可能に配置されたアームによって支持される割出フィンガによって形成される。
【0047】
有利には、装置10はまた、キャリッジ13及び14のそれぞれの移動の振幅を変更することができるように構成された、2つの工具ホルダ130及び140の間の最小距離を調整するためのモジュールを含むことができる。
【0048】
詳細には、
図3に見られるように、2つの工具ホルダ130及び140の間の最小距離を調整するためのモジュールは、それぞれが工具ホルダ130及び140の一方と取付具11との間に配置された2つの止め具133及び143と、操作部材22が固定された位置決めシャフト21とを含む。位置決めシャフト21は、反対方向のねじ付き部分によって止め具133及び143のそれぞれと螺旋状の接続によって協働する。このようにして、止め具133及び143は、操作部材22を作動すると反対方向に移動させることができる。図に示す本発明の例示的な実施形態では、位置決めシャフト21は、第1のフランジ120と実質的に平行なフレーム12の第2のフランジ121を通って回転できるように係合される。
【0049】
図1から
図4に示すように、操作部材22は、位置決めシャフト21の一端に固定されたローレットローラを含む。操作部材22はまた、微調整を可能にしながら止め具133、143の位置を固定するために、ローレットローラのための止め具を構成する調整ナット220を含み得る。このような調整ナット220は、位置決めシャフト21に回転自在に係合し、螺旋状の接続によって第2のフランジ121と協働する。
【0050】
上記及び図から推測できるように、2つの工具ホルダ130、140の間の最小距離を調整するためのモジュールは、制御要素16の移動端の位置を変更することを可能にする。
【0051】
第1及び第2のフランジ120、121は共に、装置10全体を支持するフレーム12のベース123に固定される。第1及び第2のフランジ120、121はまた、上記の本文から推測され、図に示されるように、取付具11の両側に配置される。第1及び第2のフランジ120及び121は、「第1のキャリッジ13」と呼ばれる一方のキャリッジに設けられた平行移動ガイドロッド134が貫通する開口部を含む。
【0052】
第1のキャリッジ13の工具ホルダ130は、ガイドロッド134と平行移動において一体である。本発明の好ましい例示的な実施形態では、ガイドロッド134は、取付具11の両側に互いに平行に配置され、取付具11が前記ガイドロッド134の間に介在する。この配置により、時計ケースを開けるときにガイドロッド134にかかる力を均一に分散させることができる。
【0053】
有利には、第1のキャリッジ13のプレート132は、
図2から
図4に示すように、2つのガイドロッド134を固定的に、すなわちいかなる自由度もなしに、それらの自由端の一方で接続する。
【0054】
図に示す例では、第2のキャリッジ14は、ガイドロッド134によってスライド可能に案内され得るように構成される。したがって、装置10の設計は簡素化され、比較的堅牢である。
【0055】
好ましくは、第1又は第2のキャリッジ13又は14の少なくとも1つは、その工具ホルダ130又は140に、それが支持するナイフの位置を調整するためのモジュールを含む。より具体的には、調整モジュールは、第1又は第2のキャリッジ13又は14に対して、X方向に平行な少なくとも1つの方向にナイフを移動させるように構成される。
【0056】
図3に見られるように、調整モジュールは、ナイフを受け入れるように設計されたハウジングを備えるスライド150と、スライド150を取付具11に向かって又は取付具11から遠ざけるようにスライド150に作用することができる調整ねじ151とを含むことができる。
【0057】
本発明の好ましい例示的な実施形態では、取付具11は、
図1に示すように、X方向に直交するZ方向における取付具11の平行移動を駆動するように構成された、取付具11の直線位置を調整するためのモジュールを備える。
【0058】
詳細には、取付具11の直線位置を調整するためのモジュールは、取付具11の構造体116内に平行移動可能であるように配置された取付具本体によって形成される。
図3及び
図5の断面図に示すように、取付具本体は、ケースを所定の位置に保持するように設計された支持体110を含み、支持体110は、取付具11の構造体116の管状部に平行移動の自由度を持って嵌合されたガイド部分111に接続される。
【0059】
ガイド部分111は、直接的に又は間接的に、螺旋状の接続で操作部材113と協働するねじ付き部分112によって延長される。本発明の好ましい実施形態では、ねじ付き部分112は、例えば取扱いを容易にするためにその周囲にスプラインが付けられたホイールのねじ山と直接協働する。
【0060】
有利には、
図3及び
図5に見られるように、ガイド部分111は、2つの工具ホルダ130及び140の間の最小距離を調整するためのモジュールの位置決めシャフト21が貫通する、好ましくは楕円形の形状の貫通孔114を有する。ここで、位置決めシャフト21は、取付具11がその最も端にある直線位置のいずれかを占めるとき、貫通孔114の各端部に延在することが理解される。
【0061】
有利には、取付具11は、Z方向を中心に回転移動可能であり、取付具11の角度位置を調整するためのモジュールを備えることができる。この調整モジュールは、Z方向を中心とする取付具11の回転を解放するように又は取付具11の回転を固定するように構成される。詳細には、取付具11の角度位置を調整するためのモジュールは、取付具11が占めることができる任意の角度位置での取付具11の回転を許可することができる。
【0062】
この目的のために、図に示す好ましい例示的な実施形態では、取付具11の角度位置を調整するためのモジュールは、リング115の回転軸がZ方向と一致するように、取付具11の、特に支持体110の凹部に収容された回転の形態を有するリング115を含む。リング115は、時計ケースを受け入れ、例えばピンによって時計ケースを所定の位置に保持するように設計される。リング115は、支持体110に固定された阻止要素によって平行移動が固定される。より具体的には、
図3及び
図5に示すように、リング115は、Z方向に延びる支持体110のスタッドが係合する中央開口部を含む。阻止要素は、リング115の一部を覆うようにねじによって中央スタッドに固定されたワッシャ117によって形成することができる。より詳細には、図に示す例では、ワッシャ117は、リング115の内周リップを覆うようにスタッドを越えて半径方向に延在する。言い換えれば、リング115は、リング115が平行移動するのを防ぐためにワッシャ117が協働するショルダを形成する内周リップを含む。
【0063】
取付具11の角度位置を調整するためのモジュールは、Z方向を中心とするリング115の回転を許容又は阻止することができる回転阻止要素を含むことができる。この阻止要素は、好ましくは、「基準位置」と呼ばれる少なくとも1つの所定の角度位置で取付具11の進行を阻止するように設計された割出し部材119によって形成される。より具体的には、割出部材119は、支持体110の半径方向の穴とリング115の半径方向の穴とに係合しかつ支持体110に対するリング115の回転を防止する
図5に示される位置と、リング115の半径方向の穴から引き出され、したがって、リング115の回転を解放する解放位置との間で平行移動可能なフィンガの形態であり得る。割出部材119は、弾性部材(図示せず)によってリング115の半径方向の穴の係合位置に拘束され得る。
【0064】
有利には、取付具11の角度位置を調整するためのモジュールは、取付具11に、特に支持体110に固定された弾性位置決め部材118を含むことができ、弾性位置決め部材118は、圧縮状態で機能するように意図され、リング115が基準角度位置に到達すると使用者に表示を提供するためにリング115の凹部と協働するように意図される。より具体的には、弾性位置決め部材118は、ボールスプリングパッドによって形成することができる。Z方向を中心とするリング115の回転中、リング115が基準位置に到達すると、弾性位置決め部材118は前記リング115の凹部と協働し、これは、一方では使用者の触覚フィードバックを生じさせ、他方では、前記リング115の回転を継続するために弾性位置決め部材118を前記リング115の凹部から取り除くべく抵抗に打ち勝つことを必要とする。
【0065】
基準位置が特定されると、リング115は、割出部材119によってこの位置にロックすることができる。
【0066】
したがって、取付具11は、所定の角度位置を迅速かつ容易に採用することができ、同時に、この位置に固定されたままであることが保証される。
【0067】
より一般的には、上述した実施及び実施形態は、非限定的な例として説明されており、したがって他の変形も考えられることに留意されたい。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互ロックにより中間部に固定された裏蓋を含む時計ケースを開けるための装置(10)であって、前記装置は、フレーム(12)に固定されかつ時計ケースを所定の位置に保持するように意図された取付具(11)と、前記フレーム(12)に対してX方向に平行移動可能な少なくとも1つのキャリッジ(13、14)であって、ナイフが固定された工具ホルダ(130、140)を含むキャリッジ(13、14)とを備え、前記装置(10)はさらに、使用者によって作動されるように設計された制御要素(16)を含み、前記制御要素(16)は、前記制御要素(16)が作動されると前記キャリッジ(13、14)が前記取付具(11)に向かって又は前記取付具(11)とは反対の方向に平行移動するように構成された伝達部材によって前記キャリッジ(13、14)に運動学的に接続されることを特徴とする装置(10)。
【請求項2】
前記取付具(11)の両側に、前記フレーム(12)に対して前記X方向に平行移動可能な2つのキャリッジ(13、14)を備え、前記伝達部材は、前記制御要素(16)が作動されると前記キャリッジ(13、14)が反対方向に平行移動するように構成される、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
2つの前記工具ホルダ(130、140)の間の最小距離を調整するためのモジュールを備え、前記モジュールは、各キャリッジ(13、14)のストロークの振幅を変更することができるように構成される、請求項2に記載の装置(10)。
【請求項4】
2つの前記工具ホルダ(130、140)の間の最小距離を調整するためのモジュールは、それぞれが前記工具ホルダ(130、140)の一方と前記取付具(11)との間に配置された2つの止め具(133、143)と、操作部材(22)が固定された位置決めシャフト(21)とを含み、前記位置決めシャフト(21)は、反対方向のねじ付き部分を用いて各止め具(133、143)と螺旋状の接続によって協働する、請求項3に記載の装置(10)。
【請求項5】
前記取付具(11)は、前記X方向と直交するZ方向における前記取付具(11)の平行移動を駆動するように構成された、前記取付具(11)の直線位置を調整するためのモジュールを備える、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項6】
前記取付具(11)の直線位置を調整するためのモジュールは、前記取付具(11)の構造体(116)内に平行移動可能であるように配置された取付具本体によって形成され、前記取付具本体は、螺旋状の接続で操作部材(113)と協働するねじ付き部分を含む、請求項5に記載の装置(10)。
【請求項7】
前記取付具(11)は、前記X方向と直交するZ方向を中心に回転することができ、前記Z方向を中心とする前記取付具(11)の回転を解放するように又は前記取付具(11)の回転を固定するように構成された、前記取付具(11)の角度位置を調整するためのモジュールを備える、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項8】
前記取付具(11)の角度位置を調整するためのモジュールは、基準角度位置で前記取付具(11)の進行を阻止するように適合された割出部材(119)を含む、請求項7に記載の装置(10)。
【請求項9】
前記取付具(11)の角度位置を調整するためのモジュールは、前記取付具(11)の凹部内に収容されたリング(115)を含み、前記リング(115)は、前記時計ケースを所定の位置に保持するように意図され、前記Z方向を中心に平行移動可能であり、阻止要素によって平行移動が固定される、請求項8に記載の装置(10)。
【請求項10】
前記取付具(11)の角度位置を調整するためのモジュールは、前記取付具(11)に固定された弾性位置決め部材(118)を含み、前記弾性位置決め部材(118)は、圧縮状態で機能するように設計され、前記リング(115)が前記基準角度位置に到達すると前記リング(115)の凹部と協働するように設計される、請求項9に記載の装置(10)。
【請求項11】
前記キャリッジ(13、14)は、前記キャリッジ(13、14)が支持するナイフの位置を調整するためのモジュールを含み、前記モジュールは、前記ナイフを前記キャリッジ(13、14)に対してX方向に平行な少なくとも1つの方向に移動させるように構成される、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項12】
前記伝達部材は、前記制御要素(16)と回転において一体であるカム(17)を含み、前記カム(17)は2つのカムトラック(17)を備え、各カムトラック(17)とフォロア(131、141)が協働し、前記フォロア(131、141)はそれぞれ、各キャリッジ(13、14)に固定される、請求項2に記載の装置(10)。
【請求項13】
前記2つのカムトラック(17)は、対称性によって互いに対称であり、対称性の中心は前記カム(17)の回転軸と一直線になっている、請求項12に記載の装置(10)。
【請求項14】
前記X方向に直交するY方向を中心とする前記フレーム(12)に対する前記制御要素(16)の角度位置を調整するためのモジュールを備える、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項15】
前記X方向に直交するY方向を中心とする前記フレーム(12)に対する前記制御要素(16)の角度位置を調整するためのモジュールを備え、前記カム(17)は、前記制御要素(16)の角度位置を調整するためのモジュールを介して前記制御要素(16)に運動学的に接続される、請求項12又は13に記載の装置(10)。
【請求項16】
前記制御要素(16)の角度位置を調整するためのモジュールは、前記カム(17)と回転において一体である割出ホイール(160)と、前記制御要素(16)と前記割出ホイール(160)を回転において一体にするためにいくつかの角度位置のうちの1つで前記割出ホイール(160)と協働するように適合された割出要素(161)とを含む、請求項15に記載の装置(10)。
【請求項17】
前記フレーム(12)は、前記取付具(11)の両側に配置された2つのフランジ(120、121)を含み、前記フランジ(120、121)は、「第1のキャリッジ(13)」と呼ばれる前記キャリッジの一方に含まれる平行移動ガイドロッド(134)が貫通する開口部を含み、前記第1のキャリッジ(13)の工具ホルダ(130)は、前記平行移動ガイドロッド(134)と平行移動において一体である、請求項2に記載の装置(10)。
【請求項18】
「第2のキャリッジ(14)」と呼ばれる前記キャリッジの一方は、前記平行移動ガイドロッド(134)によってスライド可能に案内されるように構成される、請求項17に記載の装置(10)。
【外国語明細書】