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特開2024-89639タイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089639
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20240626BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240626BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240626BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20240626BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
C08L7/00
C08K3/04
C08K3/36
C08K5/548
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207450
(22)【出願日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2022204658
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 剛矢
(72)【発明者】
【氏名】箕内 則夫
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA02
3D131BA05
3D131BA12
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC33
4J002AC011
4J002AC032
4J002AC061
4J002DA036
4J002DJ017
4J002EX088
4J002FD016
4J002FD017
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】優れた転がり抵抗性能及び耐摩耗性が得られる、タイヤトレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを50質量%以上含むジエン系ゴム100質量部に対して、窒素吸着比表面積80~150m/gのカーボンブラック14~30質量部と、窒素吸着比表面積120~250m/gのシリカ30~80質量部とを含有し、シリカとカーボンブラックとの含有割合(シリカ/カーボンブラック)が、質量比で、1より大きい、タイヤトレッド用ゴム組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを50質量%以上含むジエン系ゴム100質量部に対して、
窒素吸着比表面積80~150m/gのカーボンブラック14~30質量部と、
窒素吸着比表面積120~250m/gのシリカ30~80質量部とを含有し、
シリカとカーボンブラックとの含有割合(シリカ/カーボンブラック)が、質量比で、1より大きい、タイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
重荷重タイヤ用である、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
スルフィド結合を有するシランカップリング剤を、前記シリカの含有量に対して、6~15質量%の割合で含有する、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
メルカプト系のシランカップリング剤を、前記シリカの含有量に対して、6~15質量%の割合で含有する、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
前記シリカと前記カーボンブラックとの含有割合(シリカ/カーボンブラック)が、質量比で、1.2~5.0である、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のゴム組成物をトレッドに用いて作製した、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラックやバスなどに用いられる重荷重用タイヤとしては、耐摩耗性に優れた長寿命なタイヤが求められている。また、近年では環境負荷低減および燃費向上のため、転がり抵抗性能の要求も高まっている。
【0003】
耐摩耗性を向上させる方策としては、カーボンブラックを多量に配合する、小粒径のカーボンブラックを使用する、ストラクチャーの高いカーボンブラックを使用するなどの手法がとられる。しかしながら、これらの方策では転がり抵抗性能が低下してしまうおそれがある。一方で転がり抵抗性能を向上させる方策としては、シリカを少量配合するなどの手法がとられるが、耐摩耗性が低下してしまうというおそれがある。このように、耐摩耗性と転がり抵抗性能は二律背反の関係にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-125423号公報
【特許文献2】特開2019-56068号公報
【特許文献3】WO2014/157722A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、優れた転がり抵抗性能及び耐摩耗性が得られる、タイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0006】
なお、特許文献1には、低燃費性、耐チップカット性能の総合性能が顕著に改善されたタイヤ用ゴム組成物が記載されているが、シリカとカーボンブラックとの含有割合(シリカ/カーボンブラック)が本発明の範囲内である実施例の記載はない。
【0007】
特許文献2には、耐摩耗性および低転がり抵抗性が従来レベル以上に改良するようにした重荷重タイヤゴム組成物が記載されているが、カーボンブラックの含有量が本発明の範囲内である実施例の記載はない。
【0008】
特許文献3には、低転がり抵抗性、耐摩耗性、及び耐偏摩耗性を従来レベル以上に改良するようにした重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物が記載されているが、カーボンブラックとシリカの含有量、及びシリカとカーボンブラックの含有割合が本発明の範囲内である実施例の記載はない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] 天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを50質量%以上含むジエン系ゴム100質量部に対して、窒素吸着比表面積80~150m/gのカーボンブラック14~30質量部と、窒素吸着比表面積120~250m/gのシリカ30~80質量部とを含有し、シリカとカーボンブラックとの含有割合(シリカ/カーボンブラック)が、質量比で、1より大きい、タイヤトレッド用ゴム組成物。
[2] 重荷重タイヤ用である、[1]に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
[3] スルフィド結合を有するシランカップリング剤を、上記シリカの含有量に対して、6~15質量%の割合で含有する、[1]又は[2]に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
[4] メルカプト系のシランカップリング剤を、前記シリカの含有量に対して、6~15質量%の割合で含有する、[1]~[3]のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
[5] 前記シリカと前記カーボンブラックとの含有割合(シリカ/カーボンブラック)が、質量比で、1.2~5.0である、[1]~[4]のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載のゴム組成物をトレッドに用いて作製した、空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0010】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物によれば、優れた転がり抵抗性能及び耐摩耗性を有する空気入りタイヤが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを50質量%以上含むジエン系ゴム100質量部に対して、窒素吸着比表面積80~150m/gのカーボンブラック14~30質量部と、窒素吸着比表面積120~250m/gのシリカ30~80質量部とを含有し、シリカとカーボンブラックとの含有割合(シリカ/カーボンブラック)が、質量比で、1より大きいものとする。
【0013】
ジエン系ゴムは、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムのみで構成されてもよいが、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム等の他のゴム成分を、本来の効果を損なわない範囲においてさらに配合してもよい。ジエン系ゴムは、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを60質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは70質量%以上含むことである。一実施形態において、ジエン系ゴム100質量部は、天然ゴム及び/又はイソプレンゴム50~100質量部と、ブタジエンゴム0~50質量部を含んでもよく、より好ましくは、天然ゴム及び/又はイソプレンゴム60~100質量部と、ブタジエンゴム0~40質量部を含んでもよく、より好ましくは、天然ゴム及び/又はイソプレンゴム70~100質量部と、ブタジエンゴム0~30質量部を含んでもよい。他の実施形態において、ジエン系ゴム100質量部は、天然ゴム及び/又はイソプレンゴム60~80質量部と、ブタジエンゴム20~40質量部を含んでもよい。
【0014】
本実施形態に係るゴム組成物は、補強性充填剤として、シリカとカーボンブラックを含有するものである。シリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。
【0015】
シリカの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、30~80質量部であり、30~75質量部であることが好ましく、30~60質量部であることがより好ましい。シリカの含有量が上記範囲内である場合、優れた転がり抵抗性能および耐摩耗性が得られやすい。
【0016】
シリカの窒素吸着比表面積は、120~250m/gであり、160~250m/gであることが好ましく、160~210m/gであることがより好ましい。ここで、シリカの窒素吸着比表面積は、JIS K6430に記載のBET法に準じて測定されるBET比表面積である。
【0017】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。カーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、14~30質量部であり、14~25質量部であることが好ましい。カーボンブラックの含有量が上記範囲内である場合、優れた転がり抵抗性能および耐摩耗性が得られやすい。
【0018】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、80~150m/gであり、100~150m/gであることが好ましく、120~150m/gであることがより好ましい。ここで、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2に準拠して測定される。
【0019】
シリカとカーボンブラックの合計の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、40~120質量部であることが好ましく、50~100質量部であることがより好ましく、50~90質量部であることがさらに好ましい。
【0020】
シリカとカーボンブラックの含有割合、即ちカーボンブラックの含有量に対するシリカの含有量の比(シリカ/カーボンブラック)は、質量比で、1より大きく、1.2~5.0であることが好ましく、3.0~5.0であることがより好ましい。
【0021】
本実施形態に係るゴム組成物はシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製の「NXT」(3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン)、Momentive社製の「NXT Z45」、エボニック・デグサ社製の「VP Si363」式:HS-(CH-Si(OC(O(CO)-C1327(式中、m=平均1、n=平均2、k=平均5)などのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらはいずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
一実施形態において、シランカップリング剤としては、スルフィド結合を有するシランカップリング剤、即ちスルフィド系であることが好ましい。一実施形態において、シランカップリング剤としては、加工性、及び、転がり抵抗性能又は耐摩耗性の観点から、メルカプト系であることが好ましい。メルカプト系のシランカップリング剤のうち、メルカプト基(-SH)がブロックされたチオエステル結合(-S-CO-)を有し、メルカプト基を有しないシランカップリング剤、例えば3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシランは、スルフィド系のシランカップリング剤に対して転がり抵抗性能に優れていることから好ましい。メルカプト系のシランカップリング剤のうち、チオエステル結合とともにメルカプト基を有するシランカップリング剤は、スルフィド系のシランカップリング剤に対して耐摩耗性に優れていることから好ましい。チオエステル結合とともにメルカプト基を有するシランカップリング剤としては、ケイ素原子に結合したアルカノイルチオアルキル基を持つ第1結合単位と、ケイ素原子に結合したメルカプトアルキル基を持つ第2結合単位とを含むシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、-[O-Si(OR)(CSCOC15)-OR-で示される第1結合単位と、-[O-Si(OR)(CSH)-OR-で示される第2結合単位とを含む共重合体であって、第1結合単位と第2結合単位の合計量に対して第2結合単位を1~70モル%の割合で含むシランカップリング剤が挙げられ、例えば、Momentive社製の「NXT Z45」(第1結合単位:55モル%、第2結合単位:45モル%)が挙げられる。ここで、Rは、水素、ハロゲン、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、又は該アルキル基もしくはアルケニル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシ基で置換されたものを示す。Rは、炭素数1~30のアルキレン基、炭素数2~30のアルケニレン基、又は炭素数2~30のアルキニレン基を示す。RとRとで環構造を形成してもよい。x及びyはそれぞれ1以上の整数を示す。
【0023】
シランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、シリカの含有量に対して、6~15質量%であることが好ましく、7~13質量%であることがより好ましい。
【0024】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分以外に、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、オイル、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0025】
上記加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の含有量は、特に限定するものではないが、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。また、上記加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、及びグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の含有量は、特に限定するものではないが、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1~7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0026】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0027】
このようにして得られたゴム組成物は、乗用車用タイヤ、トラックやバスの大型タイヤなど、各種用途・各種サイズの空気入りタイヤのトレッドに適用することができるが、重荷重用タイヤに適用することが好ましい。ここで、重荷重用タイヤとは、耐久性に優れたタイヤであり、サイドウォールに「LIGHT TRUCK」又は「LT」の表示のあるライトトラック用タイヤ、サイドウォールに「HIGHWAY TREAD-J」、又は「HW-J」あるいは「EXTRA HEAVY TREAD」又は「EHT」の表示のあるトラック・バス用タイヤ、重機等の産業用車両に使用されるタイヤなどが挙げられる。
【0028】
該ゴム組成物は、常法に従い、例えば、押出加工によって所定の形状に成形され、他の部品と組み合わせてグリーンタイヤを作製した後、例えば140~180℃でグリーンタイヤを加硫成形することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例0029】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
ラボミキサーを使用し、下記表1~3に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練した(排出温度=160℃)。次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1~3中の各成分の詳細は、以下の通りである。なお、実施例1~7、及び比較例2~7は、比較例1のモジュラスの値と同程度になるように、シランカップリング剤、硫黄及び加硫促進剤の配合量等を調整している。また、実施例8~24、及び比較例9~12は、比較例8のモジュラスの値と同程度になるように、シランカップリング剤、硫黄及び加硫促進剤の配合量等を調整している。
【0031】
・天然ゴム:RSS#3
・ブタジエンゴム:UBEエラストマー(株)製「BR150L」
・イソプレンゴム:(株)ENEOSマテリアル製「IR2200」
・スチレンブタジエンゴム:(株)ENEOSマテリアル製「SBR1502」
・カーボンブラック1:東海カーボン(株)製「シースト3」、窒素吸着比表面積=74m/g
・カーボンブラック2:東海カーボン(株)製「シーストKH」、窒素吸着比表面積=93m/g
・カーボンブラック3:東海カーボン(株)製「シースト6」、窒素吸着比表面積=119m/g
・カーボンブラック4:東海カーボン(株)製「シースト9」、窒素吸着比表面積=142m/g
・シリカ1:ソルベイ社製「1115MP」、窒素吸着比表面積=115m/g
・シリカ2:エボニック社製「Ultrasil VN2」、窒素吸着比表面積=125m/g
・シリカ3:エボニック社製「Ultrasil VN3」、窒素吸着比表面積=180m/g
・シリカ4:エボニック社製「9100 GR」、窒素吸着比表面積=230m/g
・シランカップリング剤1:スルフィド系、エボニック社製「Si69」
・シランカップリング剤2:メルカプト系、モメンティブ社製「NXT」
・シランカップリング剤3:メルカプト系、モメンティブ社製「NXT Z45」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛2種」
・ステアリン酸:日油(株)製「ビーズステアリン酸」
・ワックス:日本精蝋(株)製「OZOACE0355」
・加工助剤:ランクセス社製「アクチプラストPP」
・老化防止剤:大内新興化学(株)製「ノクラック6C」
・加硫促進剤1:大内新興化学(株)製「ノクセラーD」
・加硫促進剤2:大内新興化学(株)製「ノクセラーNS」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
【0032】
得られた各ゴム組成物について、150℃で30分間加硫して所定形状の試験片を作製し、転がり抵抗性能、及び耐摩耗性を評価し、モジュラス(M300)を測定した。測定方法は次の通りである。
【0033】
・転がり抵抗性能:UBM社製の粘弾性試験機を用いて、周波数10Hz、静歪み10%、動歪み1%、温度60℃の条件で損失係数tanδを測定し、損失係数tanδの逆数について、表1においては比較例1の値を100とし、表2,3においては比較例8の値を100とした指数で示した。指数が大きいほど、tanδが小さく、転がり抵抗性能(即ち、低燃費性)に優れることを示す。
【0034】
・耐摩耗性:JIS K6264に準拠し、岩本製作所(株)製のランボーン摩耗試験機を用いて、負荷荷重40N、スリップ率30%、落砂量20gの条件で摩耗減量を測定し、摩耗減量の逆数について、表1においては比較例1の値を100とし、表2,3においては比較例8の値を100とした指数で示した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
【0035】
・モジュラス(M300):JIS K6251に準拠し、ダンベル状3号形の試験片を用いて引張試験を実施した時の300%伸張時のモジュラス(M300(MPa))を測定し、表1においては比較例1の値を100とし、表2,3においては比較例8の値を100とした指数で示した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
結果は、表1に示す通りである。比較例2はシリカとカーボンブラックとを併用し、シリカの含有量が下限値未満で、カーボンブラックの含有量が上限値を超え、シリカとカーボンブラックとの含有割合が質量比(シリカ/カーボンブラック)で1未満の例である。比較例2では、比較例1と比較し、転がり抵抗性能が向上したものの、耐摩耗性が悪化した。
【0040】
比較例3は、カーボンブラックの含有量が上限値を超え、シリカとカーボンブラックとの含有割合が質量比(シリカ/カーボンブラック)で1未満の例である。比較例3では、比較例1と比較し、転がり抵抗性能が向上したものの、耐摩耗性が悪化した。
【0041】
比較例4は、シリカとカーボンブラックとを併用し、カーボンブラックの含有量が下限値未満の例である。比較例4では、比較例1と比較し、耐摩耗性が劣っていた。
【0042】
比較例5は、窒素吸着比表面積が下限値未満であるカーボンブラックを使用した例である。比較例5では、比較例1と比較し、耐摩耗性が劣っていた。
【0043】
比較例6は、窒素吸着比表面積が下限値未満であるシリカを使用した例である。比較例6では、比較例1と比較し、耐摩耗性が劣っていた。
【0044】
比較例7は、カーボンブラックの含有量が下限値未満の例である。比較例7では、比較例1と比較し、耐摩耗性が劣っていた。
【0045】
実施例1~3は、シリカ含有量を所定範囲内で変量した例である。実施例1~3によれば、シリカ含有量が下限値に近いほど転がり抵抗性能に優れる傾向にあり、シリカ含有量が上限値に近いほど耐摩耗性に優れる傾向にあることがわかった。
【0046】
実施例4,5は、実施例1~3と比較し、カーボンブラックの含有量を減量し、シリカ含有量を変量した例である。実施例4,5によれば、実施例1~3と同様に、シリカ含有量が下限値に近いほど転がり抵抗性能に優れる傾向にあり、シリカ含有量が上限値に近いほど耐摩耗性に優れる傾向にあることがわかった。
【0047】
実施例6,7は、実施例1~3と比較し、窒素吸着比表面積が大きいシリカを使用した例である。実施例6,7によれば、実施例1~3と同様に、シリカ含有量が下限値に近いほど転がり抵抗性能に優れる傾向にあり、シリカ含有量が上限値に近いほど耐摩耗性に優れる傾向にあることがわかった。また、実施例1と実施例7との対比より、シリカの窒素吸着比表面積がより大きくなると転がり抵抗性能の向上効果が小さくなり、耐摩耗性の向上効果が大きくなる傾向にあることがわかった。
【0048】
次に表2,3に示すように、比較例9は、シリカとカーボンブラックとを併用し、カーボンブラックの含有量が上限値を超え、シリカとカーボンブラックとの含有割合が質量比(シリカ/カーボンブラック)で1未満の例である。比較例9では、比較例8と比較し、耐摩耗性が劣っていた。
【0049】
比較例10は、天然ゴムの含有割合が下限値未満の例である。比較例10では、比較例8と比較し、転がり抵抗性能が劣っていた。
【0050】
比較例11は、シリカとカーボンブラックとを併用し、カーボンブラックの含有量が上限値を超え、シリカとカーボンブラックとの含有割合が質量比(シリカ/カーボンブラック)で1未満の例である。比較例11では、比較例8と比較し、転がり抵抗性能及び耐摩耗性が劣っていた。
【0051】
比較例12は、シリカとカーボンブラックとを併用し、カーボンブラックの含有量が下限値未満の例である。比較例12では、比較例8と比較し、耐摩耗性が劣っていた。
【0052】
実施例8は、窒素吸着比表面積が下限値付近のシリカを使用した例であり、モジュラスを比較例8と同程度にするためにシリカを高配合した例である。実施例8では、比較例8と比較し、転がり抵抗性能及び耐摩耗性が優れていた。
【0053】
実施例9,10は、実施例8からシリカを窒素吸着比表面積が大きいものに変更し、シリカ含有量を所定範囲内で変量した例である。実施例9,10によれば、シリカ含有量が下限値に近いほど転がり抵抗性能に優れる傾向にあり、シリカ含有量が上限値に近いほど耐摩耗性に優れる傾向にあることがわかった。
【0054】
実施例11,12は、実施例9,10と比較し、カーボンブラックの含有量を減量し、シリカ含有量を変量した例である。実施例11,12によれば、実施例9,10と同様に、シリカ含有量が下限値に近いほど転がり抵抗性能に優れる傾向にあり、シリカ含有量が上限値に近いほど耐摩耗性に優れる傾向にあることがわかった。
【0055】
実施例13,14は、実施例12からシランカップリング剤を変更した例である。実施例13では、実施例12と比較し、転がり抵抗性能が向上した。実施例14では、実施例12と比較し、耐摩耗性が向上した。
【0056】
実施例15,16は、実施例11,12からカーボンブラックを窒素吸着比表面積が小さいものに変更した例である。実施例15,16では、実施例11,12と比較し、耐摩耗性は低下したものの、転がり抵抗性能は向上した。
【0057】
実施例17は、実施例16からカーボンブラックを窒素吸着比表面積がさらに小さいものに変更した例である。実施例17では、実施例16と比較し、耐摩耗性は低下したものの、転がり抵抗性能は向上した。
【0058】
実施例18,19は、実施例9,10からシリカを窒素吸着比表面積がさらに大きいものに変更した例である。実施18,19では、実施例9,10と比較して、耐摩耗性が向上した。
【0059】
実施例20は、実施例12からシリカを窒素吸着比表面積が大きいものに変更した例である。実施例20では、実施例12と比較して、耐摩耗性が向上した。
【0060】
実施例21,22は、実施例20からシランカップリング剤を変更した例である。実施例21では、実施例20と比較し、転がり抵抗性能が向上した。実施例22では、実施例20と比較し、耐摩耗性が向上した。
【0061】
実施例23,24は、実施例12からゴム成分の配合を変更した例である。実施例23,24では、いずれも比較例8と比較すると、転がり抵抗性能及び耐摩耗性が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のゴム組成物は、乗用車、ライトトラック、トラック・バス等の各種タイヤ用ゴム組成物に用いることができる。