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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089644
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】流体分離膜エレメント
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20240626BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20240626BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20240626BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B01D63/02
B01D71/02
B01D63/00 500
B01D69/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210975
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2022204064
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 慧
(72)【発明者】
【氏名】柿山 創
(72)【発明者】
【氏名】三原 崇晃
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA03
4D006JA13C
4D006JA13Z
4D006JA25A
4D006JA25C
4D006JA30A
4D006JA30C
4D006JB05
4D006JB06
4D006KE16R
4D006MA01
4D006MC03
4D006MC05X
4D006MC07
4D006MC09
4D006MC33
4D006MC39X
4D006MC40X
4D006MC46
4D006MC48
4D006MC51
4D006MC53
4D006MC58
4D006NA03
4D006NA39
4D006NA75
4D006PA01
4D006PB18
4D006PB19
4D006PB64
4D006PB66
4D006PB68
(57)【要約】
【課題】いかなる膜であっても、膜が伸縮する条件で膜の欠陥や破断を生じない流体分離膜エレメントを提供することを課題とする。
【解決手段】複数本の中空糸状無機膜がエレメント筒に収納されてなる流体分離膜エレメントにおいて、前記中空糸状無機膜の少なくとも一端部が樹脂aを含むポッティング部Aを有し、前記樹脂aの100℃におけるヤング率が0.1MPa以上1.1GPa以下である、流体分離膜エレメント。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の中空糸状無機膜がエレメント筒に収納されてなる流体分離膜エレメントにおいて、前記中空糸状無機膜の少なくとも一端部が樹脂層aを含むポッティング部Aを有し、前記樹脂層aの100℃におけるヤング率が0.1MPa以上1.1GPa以下である、流体分離膜エレメント。
【請求項2】
前記樹脂層aと前記中空糸状無機膜の100℃におけるヤング率が以下の式1を満たす、請求項1に記載の流体分離膜エレメント。
Y1 < Y2 ・・・式1
[式1において、Y1は樹脂層aの100℃におけるヤング率[GPa]を表し、Y2は中空糸状無機膜の100℃におけるヤング率[GPa]を表す]
【請求項3】
前記中空糸状無機膜の一端のポッティング部Aにおいて、前記エレメント筒に収納されてなるすべての前記中空糸状無機膜が前記樹脂層a中に存在する請求項1に記載の流体分離膜エレメント。
【請求項4】
前記中空糸状無機膜の一端のポッティング部Aにおいて、当該中空糸状無機膜の中空部が封止材で封止されてなる請求項1に記載の流体分離膜エレメント。
【請求項5】
前記封止材の100℃におけるヤング率が0.1MPa以上1.1MPa以下である請求項4に記載の流体分離膜エレメント。
【請求項6】
前記ポッティング部Aに隣接するストッパーを有する請求項1に記載の流体分離膜エレメント。
【請求項7】
前記ポッティング部Aにおいて、前記中空糸状無機膜の中空部が封止材で封止されてなり、封止材の100℃におけるヤング率が1.5GPa以上10GPa以下である、請求項6に記載の流体分離膜エレメント。
【請求項8】
前記中空糸状無機膜の他端部が樹脂層bを含むポッティング部Bを有し、
前記樹脂層bの100℃におけるヤング率が1.5GPa以上10GPa以下である、請求項1に記載の流体分離膜エレメント。
【請求項9】
複数本の中空糸状無機膜がエレメント筒に収納されてなる流体分離膜エレメントにおいて、前記中空糸状無機膜の一端部の中空部が封止材で封止されてなり、前記中空糸状無機膜の他端部がポッティング部Cを有する流体分離膜エレメントであって、前記中空糸状無機膜の中空部が封止された一端部が樹脂層cを含み、前記中空糸状無機膜同士および前記中空糸状無機膜と前記エレメント筒が前記樹脂層cを介して直接結合していない流体分離膜エレメント。
【請求項10】
前記樹脂層cの100℃におけるヤング率が1.5GPa以上10GPa以下である、請求項9に記載の流体分離膜エレメント。
【請求項11】
前記中空糸状無機膜の中空部が封止された一端部において、前記中空糸状無機膜がコーティング層を含み、前記コーティング層の100℃におけるヤング率が0.1MPa以上10GPa以下である、請求項9に記載の流体分離膜エレメント。
【請求項12】
前記中空糸状無機膜が炭素膜である、請求項1に記載の流体分離膜エレメント。
【請求項13】
請求項1~9のいずれかに記載の流体分離膜エレメントを収納した流体分離膜モジュール。
【請求項14】
請求項13に記載の流体分離膜モジュールを、100℃以上300℃以下で使用する流体分離膜プラント。
【請求項15】
請求項14に記載の流体分離膜プラントで精製された、精製流体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体分離膜エレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
各種混合ガスや混合液体から特定の成分を選択的に分離・精製する手法として、膜分離法がある。膜分離法は、分離膜の供給側と透過側で生じる圧力差や濃度差を駆動力とするため、他の流体分離法と比較して省エネルギーな手法として注目されている。
【0003】
例えば天然ガス精製プラントでは、主成分であるメタンガスに含まれる不純物の二酸化炭素を分離・除去するが、膜分離法を活用することで天然ガス原ガスの数MPa以上の高い噴出圧力を分離・精製に利用できる。
【0004】
膜分離法における分離膜は、容器に両端部を固定した分離膜エレメントとして使用されるが、膜に欠陥や破断が生じると、欠陥や破断からのリークによって著しく分離性が低下する。膜の欠陥や破断を抑制する方法としては、エレメント内に充填された分離膜の端部をコーティング剤で被覆して強度を向上させる方法(特許文献1参照)や、長さ方向に炭素含有率が異なる2以上の部分領域を有する中空糸状炭素膜を用いる方法(特許文献2参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-226618号公報
【特許文献2】特開2017-13004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、モジュールケース内に中空糸膜束が収容された中空糸膜モジュールであって、前記中空糸膜束を構成する中空糸膜が、その少なくとも一端部側から長さL1の範囲が合成樹脂製のコーティング剤で被覆されているものであり、さらに前記中空糸膜束が、合成樹脂製のコーティング剤で被覆された中空糸膜端部側から長さL2の範囲において接着剤で一体化されたものであり、前記合成樹脂製のコーティング剤が熱硬化性樹脂接着剤および熱可塑性樹脂接着剤から選ばれるものであり、前記の長さL1とL2の関係がL1>L2である、中空糸膜モジュールが開示されている。しかしながら、特許文献1の方法は、コーティングされた膜の端部が接着剤で固定されているため、膜が伸縮する運転条件では、伸縮による膜への歪みが緩和できず、欠陥や破断が生じる課題があった。また、膜端部へのコーティングや前処理といったプロセスの増加に伴い、膜モジュールのコストアップにつながる課題があった。
【0007】
特許文献2には、長さ方向に炭素含有率が異なる2以上の部分領域を有する中空糸状炭素膜を用いた分離膜モジュールが開示されている。しかしながら、特許文献2の方法では、連続プロセスでの焼成が困難であり、バッチ焼成によるコストアップにつながる課題があった。また、中空糸状炭素膜の両端が硬化性樹脂によって結束されており、各膜の伸縮率のバラツキが生じた際に、それぞれ独立には破断や欠陥を抑制できない課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、膜の性状にかかわらず膜が伸縮する運転条件で欠陥や破断を生じにくい流体分離膜エレメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
複数本の中空糸状無機膜がエレメント筒に収納されてなる流体分離膜エレメントにおいて、前記中空糸状無機膜の少なくとも一端部が樹脂層aを含むポッティング部Aを有し、前記樹脂層aの100℃におけるヤング率が0.1MPa以上1.1GPa以下である、流体分離膜エレメント。
【0010】
複数本の中空糸状無機膜がエレメント筒に収納されてなる流体分離膜エレメントにおいて、前記中空糸状無機膜の一端部の中空部が封止されてなり、前記中空糸状無機膜の他端部がポッティング部Cを有する、流体分離膜エレメント。
【発明の効果】
【0011】
本発明の流体分離膜エレメントは、昇降温時や湿度変化に伴う膜の伸縮が生じた場合であっても、柔軟な樹脂層aからなるポッティング部Aや、ポッティング部Cのみで固定されて一端部が固定されていない態様によって膜への応力が緩和され、歪みによる欠陥や破断の発生を抑制でき、流体の分離が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】態様1のストッパーを有する流体分離膜エレメントをベッセルに収納した流体分離膜モジュールの分離対象流体の流出入口を含む断面模式図を示す。
図2】態様1の流体分離膜エレメントの、ポッティング部Aを有する端面の断面模式図を示す。
図3】態様2の流体分離膜エレメントをベッセルに収納した流体分離膜モジュールの分離対象流体の流出入口を含む断面模式図を示す。
図4】態様2の流体分離膜エレメントの、樹脂層cを含む端面の断面模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明について例をあげて説明する。しかし、本発明はこの図面の例に限定して解釈されるものではない。
【0014】
本発明の一つの態様(以下、態様1と記載する)は、複数本の中空糸状無機膜がエレメント筒に収納されてなる流体分離膜エレメントにおいて、前記中空糸状無機膜の少なくとも一端部が樹脂aを含むポッティング部Aを有し、前記樹脂層aの100℃におけるヤング率が0.1MPa以上1.1GPa以下である流体分離膜エレメントである。
本発明の流体分離膜エレメントは複数本の中空糸状無機膜が収納されてなる。図1に態様1の流体分離膜エレメントをベッセルに収納した流体分離膜モジュールの分離対象流体の流出入口を含む断面模式図を示す。図2は、態様1の流体分離膜エレメントの、ポッティング部Aを有する端部の断面模式図である。
【0015】
態様1の流体分離膜エレメントは、流体分離膜である中空糸状無機膜3、エレメント筒5、分離対象流体のエレメント流出入口6、ストッパー17、ポッティング部を有する。
ここで中空糸状無機膜とは、分離対象流体に含まれる特定の成分(透過成分)の透過性が、他の成分(非透過成分)に対して高い、中空糸状の無機膜である。本発明の中空糸状無機膜は、流体分離を担う分離機能層のみの自立膜または、分離機能層と支持体を組み合わせた複合膜のいずれでもよい。中空糸状無機膜が自立膜の場合は、分離機能層が無機膜であり、中空糸状無機膜が複合膜の場合は、分離機能層と支持体がともに無機材料で構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の中空糸状無機膜としては、自立膜として炭素膜が、複合膜の分離機能層として炭素膜、ゼオライト膜、金属有機構造体(MOF)膜が好適に用いられる。
複合膜として好適なゼオライト膜としては、アルミノケイ酸塩、例えば、NaX型(FAU)、ZSM-5、MOR、シリカライト、及びA型等からなる膜が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。ゼオライト種は、水熱合成反応によって2次成長させるものと同程度のSi/Al比を有するものが好ましい。
【0017】
複合膜として好適なMOF膜としては、例えば、Cu-BTC、MOF-5、IRMOF-3、MIL-47、MIL-53、MIL-96、MMOF、SIM-1、ZIF-7、ZIF-8、ZIF-22、ZIF-69、ZIF-90等からなる膜が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0018】
自立膜および複合膜として好適な炭素膜としては、例えば、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、全芳香族ポリエステル、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、リグニン樹脂、ウレタン樹脂等を炭化した膜が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0019】
透過成分の透過性を向上させるために、自立膜である中空糸状無機膜あるいは、複合膜である中空糸状無機膜の分離機能層に、ナノ粒子を添加することができる。ナノ粒子としては、例えば、シリカ、チタニア、ゼオライト、金属酸化物、MOF、カーボンナノチューブ(CNT)等が挙げられる。
【0020】
複合膜の支持体としては、例えば、アルミナ、シリカ、コージェライト、ジルコニア、チタニア、バイコールガラス、ゼオライト、マグネシア、焼結金属等の多孔質無機材料や、炭化可能樹脂からなる多孔質有機材料を炭化した多孔質炭素材料等が好適に用いられる。炭化可能樹脂としては、例えば、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、全芳香族ポリエステル、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、リグニン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0021】
エレメント筒とは、本発明の流体分離膜である中空糸状無機膜を固定するための筐体である。エレメント筒は、分離対象流体の流出入口を有することが好ましい。エレメント筒の形状は、ベッセル内への収納を妨げない限り、特に限定されない。エレメント筒の素材としては、例えば、金属、樹脂、繊維強化プラスチック(FRP)等が挙げられ、使用される状況に応じて適宜選択することができる。ポッティング材の硬化収縮に対する追従性が高いことから、樹脂が好ましく、成型性と耐薬品性を兼ね備えることから、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホンがより好ましい。
【0022】
態様1の流体分離膜エレメントは、中空糸状無機膜の少なくとも一端部が樹脂層aを含むポッティング部Aを有することを特徴とする。すなわち、図2の中空糸状無機膜3は一端部にポッティング部A10を有し、ポッティング部Aは樹脂層a9とポッティング材13を含む。
【0023】
本発明の流体分離膜エレメントのポッティング部とは、中空糸状無機膜をエレメント筒に固定するための接着部位であり、エレメント筒の断面方向から見た際に、各中空糸状無機膜の外径とエレメント筒の内径の間に存在するすべての接着層を表す。流体分離膜エレメントのポッティング部は、1か所であっても複数個所であっても構わないが、中空糸状無機膜の位置を十分に固定し、中空糸状無機膜の有効膜面積を維持する観点から、略直線状に束ねた複数本の中空糸状無機膜の両端2箇所あるいは片端1箇所をポッティング材により固定することが好ましい。また、束ねた複数本の中空糸状無機膜をU字型に折り曲げた状態で中空糸状無機膜の両端を一箇所でポッティング材により固定してもよいし、中空糸状無機膜の一端のみをポッティング材で固定し、他端をポッティング材以外の手段で封止してもよい。
【0024】
本発明の流体分離膜エレメントのポッティング部は、1成分から構成されていてもよいし、複数成分から構成されていてもよい。
【0025】
ポッティング部中のポッティング材としては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエステル、液晶ポリエステル、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、成形性、硬化時間や接着性、硬度等のバランスの観点から、ポッティング材組成物中のポッティング材としてはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂が好ましく、耐熱性や耐薬品性が高いことからエポキシ樹脂がさらに好ましい。
【0026】
ポッティング部中のポッティング材としては、他の添加剤を含んでいてもよく、例えば、フィラー、界面活性剤、シランカップリング剤、ゴム成分などが挙げられる。フィラーとしては、例えば、シリカ、タルク、ゼオライト、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、硬化発熱の抑制、強度向上、増粘等の効果を奏する。また、界面活性剤やシランカップリング剤により、ポッティング材混合時の取扱い性向上やポッティング材充填時の流体分離用炭素膜間への浸潤性向上等の効果を奏する。また、ゴム成分により、硬化成形したポッティング材の靭性向上等の効果を奏する。ゴム成分は、ゴム粒子の形態で含有してもよい。
【0027】
態様1の流体分離膜エレメントのポッティング部Aに含まれる樹脂層aは、100℃におけるヤング率が0.1MPa以上1.1GPa以下であることを特徴とする。
【0028】
ポッティング部Aに含まれる樹脂層aとは、エレメント筒の断面方向から見た際に、中空糸状無機膜の外径とエレメント筒の内径の間に存在する層である。本発明の樹脂層はエレメント筒の長手方向に垂直な断面方向から見て、任意の中空糸状無機膜外径上の任意の点からエレメント筒の内径上の任意の点を結んだ直線と必ず交差する領域があるものを表し、ポッティング部の断面を3次元顕微鏡法など合理的に樹脂層と中空糸状無機膜を見分けることが可能な手法を用いて、2次元画像として前記領域があることを確認できる。
【0029】
態様1の流体分離膜エレメントは、樹脂層aの100℃におけるヤング率が0.1MPa以上であることで、流体で加圧された場合でもエレメントのシール性を損なうことなく運転が可能である。樹脂層aの100℃におけるヤング率は、0.5MPa以上であることがより好ましく、1MPa以上であることがさらに好ましい。一方で、樹脂層aの100℃におけるヤング率が1.1GPa以下であることで、高温環境下での運転時に樹脂層が柔軟であるため、膜の伸縮に伴う応力を緩和し、歪みによる欠陥や破断を抑制することができる。樹脂層aの100℃におけるヤング率は0.9GPa以下がより好ましく、0.8GPa以下がさらに好ましい。
【0030】
ポッティング部Aに含まれる樹脂層aとしては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられるが、高温での柔軟性の観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0031】
樹脂層aとして用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエステル、液晶ポリエステル、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0032】
樹脂層aの100℃におけるヤング率は、ポッティング部Aを含むエレメントの端面から、長手方向に垂直な方向に1cmの長さでエレメントを切断し、切断面におけるポッティング部Aに含まれる樹脂層aの任意の10箇所の点で、温調可能なナノインデンターを用いて10箇所の平均値として測定し、前記測定を5回繰り返した値の平均値をヤング率とすることができる。樹脂層aが添加剤を含む場合、添加剤を含む樹脂層のヤング率を表す。
【0033】
ポッティング部Aに含まれる樹脂層aの割合としては、ポッティング部Aのエレメント長さ方向に対し垂直な断面の断面積を100%とすると、10%以上90%以下であることが好ましい。ポッティング部Aに含まれる樹脂層aの割合は、イオンビームで断面を切り出しつつ連続的に走査型電子顕微鏡で観察するスライス&ビューや、透過型電子顕微鏡を用いたコンピューター断層撮影などでポッティング高さ方向に像をとり、エレメントの端面からポッティング高さの1/5間隔ごとに撮影した5枚の各像で樹脂層aの占有面積(膜部分は除く)を計算し、ポッティング部A全体の断面積で割った値の平均値として算出できる。ポッティング部Aに含まれる樹脂層aの割合が10%以上であることで、高温環境下での運転時に柔軟な層により、膜の伸縮に伴う応力を緩和し、歪みによる欠陥や破断を抑制することができる。樹脂層aの割合は、30%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。一方で、樹脂層aの割合が90%以下であることで、流体による圧力がかかった場合でもポッティング部Aの強度が担保され、ポッティング部の変形や剥離に伴うリークが抑制される。樹脂層aの割合は80%以下であることが好ましく、70%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
態様1の流体分離膜エレメントは、樹脂層aと中空糸状無機膜の100℃におけるヤング率が以下の式1を満たすことが好ましい。
Y1 < Y2(式1)
【0035】
[式1において、Y1は樹脂層aの100℃におけるヤング率(GPa)を表し、Y2は中空糸状無機膜の100℃におけるヤング率(GPa)を表す]
式1を満たすことで、樹脂層が中空糸状無機膜と比較して柔軟であり、高温での膜の伸縮に伴う応力が緩和されて、膜の欠陥や破断を抑制することができる。樹脂層aと中空糸状無機膜の100℃におけるヤング率の関係は、Y2はY1の5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることがさらに好ましい。
【0036】
中空糸状無機膜の100℃におけるヤング率は、エレメント筒に収納された中空糸状無機膜を100mm長で10本サンプリングし、温調制御可能な引張試験装置を用いた引張試験によって評価して、10本の平均値として算出することができる。中空糸状無機膜が支持体を含む場合、支持体を含めた中空糸状無機膜のヤング率を表す。
【0037】
樹脂層aと中空糸状無機膜の100℃におけるヤング率は、前述の手法で求めたY1とY2を比較する評価を行い、前記評価を5回繰り返してすべての評価について、Y1 < Y2である場合に式1を満たすとする。
【0038】
態様1の流体分離膜における中空糸状無機膜の一端のポッティング部Aにおいて、エレメント筒に収納されてなるすべての中空糸状無機膜が樹脂層a中に存在することが好ましい。つまり、図2の中空糸状無機膜3は、樹脂層a9中に存在する。すべての中空糸状無機膜が樹脂層a中に存在することで、高温環境下での運転時に柔軟な樹脂層aが膜の伸縮に伴う応力を緩和し、すべての中空糸状無機膜において歪みによる欠陥や破断を抑制する効果を奏する。
【0039】
すべての中空糸状無機膜が樹脂層a中に存在する状態とは、ポッティング部の長手方向に垂直な断面を、透過型電子顕微鏡を用いたコンピューター断層撮影や、物理的に切断して切断面を顕微鏡で観察する手法など、合理的にポッティング材と樹脂層aを見分けることが可能な手法を用いて、断面の2次元画像として、樹脂層a中にすべての中空糸状無機膜の外周が含まれていることで確認できる。
【0040】
態様1の流体分離膜エレメントは、ポッティング部Aが一端部のみに存在する場合、エレメントのポッティング部Aが存在する側において、中空糸状無機膜の中空部が封止材で封止されていることが好ましい。一端部のみのポッティング部Aが存在する側において、中空糸状無機膜の中空部が封止されていることで、ポッティング部A中の樹脂層aが接触している部分からのリークが生じた場合であっても、流体の中空糸状無機膜の中空部へのショートパスが抑制され、流体の分離が可能となる。
【0041】
中空部が封止材で封止されている状態は、中空糸状無機膜断面を3次元顕微鏡法など合理的に封止材と中空糸状無機膜を見分けることが可能な手法を用いて、2次元画像として封止材によって中空部が隙間なく埋められていることで確認することができる。3次元顕微鏡撮影は、封止材と中空糸状無機膜とを分離、観察可能であれば特に限定されないが、イオンビームで断面を切り出しつつ連続的に走査型電子顕微鏡で観察するスライス&ビューや、透過型電子顕微鏡を用いてコンピューター断層撮影を適用する方法など、封止材と中空糸状無機膜とを電子情報として分離、観察および解析可能な分析手法を適宜選択することが好ましい。
【0042】
ポッティング部Aにおいて、中空糸状無機膜の中空部を封止する封止材としては、100℃におけるヤング率が0.1MPa以上1.1GPa以下であることが好ましい。封止材の100℃におけるヤング率が0.1MPa以上であることで、透過した流体で加圧された場合でも中空部からのリークを防止し、分離効率低下を抑制することができる。封止材の100℃におけるヤング率は0.5MPa以上であることがより好ましく、1MPa以上であることがさらに好ましい。一方、封止材の100℃におけるヤング率が1.1GPa以下であることで、中空部封止の作業性が向上するため好ましい。封止材の100℃におけるヤング率は0.9GPa以下であることがより好ましく、0.8GPa以下であることがさらに好ましい。中空部を封止する封止材としては例えば、樹脂などの有機系接着剤や、セメントやシリケートなどの無機系接着剤などが挙げられる。耐熱性の観点から無機系の接着剤が好ましい。また、封止材に他の添加剤を含有してもよい。
【0043】
ポッティング部Aにおいて、封止材の存在箇所は特に限定されないが、作業性向上の観点から、中空糸状無機膜の端部に存在することが好ましい。
【0044】
中空糸状無機膜の中空部を封止材で封止する方法は、特に限定されないが、封止材を含むノズルを中空糸状無機膜の中空部に差し込み注入する方法や、エレメントの一端を封止材に浸漬させ、分離対象流体のエレメント流出入口から減圧して封止材を吸い上げる方法などがある。
【0045】
態様1の流体分離膜エレメントは、ポッティング部Aに隣接するストッパーを有することが好ましい。ポッティング部Aに隣接するストッパーを有することで、高圧流体でポッティング部A中の樹脂層aが変形した際にも、中空部への侵入を抑制することが可能である。
【0046】
ポッティング部Aに隣接するストッパーは、ポッティング部A中の樹脂層aが加圧により変形した際に、最初に接触するものであり、接触度合を高める観点から板状であることが好ましい。
【0047】
ポッティング部Aに隣接するストッパーの断面形状は特に限定されないが、耐圧性を高める観点から円状、楕円状が好ましく、円状がより好ましい。
【0048】
ポッティング部Aに隣接するストッパーの材質は、金属、樹脂、繊維強化プラスチック(FRP)等が挙げられ、設置場所の環境や使用される状況に応じて、適宜選択することができる。耐圧性や耐熱性が要求される用途においては、強度と成形加工性を兼ね備えた金属が好ましく、ステンレス、アルミニウムやこれらの合金がより好ましい。
【0049】
態様1の流体分離膜エレメントで、ポッティング部Aに隣接するストッパーを有する場合、中空糸状無機膜の中空部を封止する封止材としては、100℃でのヤング率が1.5GPa以上10GPa以下であることが好ましい。100℃でのヤング率が1.5GPa以上であることで、高圧流体で樹脂層aが変形し、ポッティング部Aに隣接するストッパーが加圧されて動いた際にも、樹脂層aの中空部への侵入を抑制することが可能である。100℃でのヤング率は2GPa以上であることがより好ましく、3GPa以上であることがさらに好ましい。一方、ストッパーを有する場合の封止材の100℃におけるヤング率はストッパーと接触した際の割れを防ぎ、封止作業性を向上させることができることから10GPa以下であることが好ましい。封止材の100℃におけるヤング率は8GPa以下であることがより好ましく、5GPa以下であることがさらに好ましい。
【0050】
態様1の流体分離膜エレメントは、収納されている中空糸状無機膜の他端部が樹脂層bを含むポッティング部Bを有し、前記樹脂層bの100℃におけるヤング率が1.5GPa以上10GPa以下であることが好ましい。すなわち、図1の中空糸状無機膜3は他端部にポッティング部B14を有し、ポッティング部Bは樹脂層b15を含む。ポッティング部Bに含まれる樹脂層bの100℃におけるヤング率が1.5GPa以上であることで、ポッティング部Bの強度が向上し、運転時の剥離などによるリークを抑制することができる。樹脂層bの100℃におけるヤング率は、2GPa以上であることがより好ましく、3GPa以上であることがさらに好ましい。一方で、樹脂層bの100℃におけるヤング率はポッティング時やエレメント筒端面切断時の作業性の観点から10GPa以下であることが好ましい。樹脂層bの100℃におけるヤング率は8GPa以下であることがより好ましく、5GPa以下であることがさらに好ましい。
【0051】
ポッティング部Bに含まれる樹脂層bの割合としては、ポッティング部Bのエレメント長さ方向に対し垂直な断面の断面積を100%とすると、10%以上90%以下であることが好ましい。ポッティング部Bに含まれる樹脂層bの割合は、イオンビームで断面を切り出しつつ連続的に走査型電子顕微鏡で観察するスライス&ビューや、透過型電子顕微鏡を用いたコンピューター断層撮影などでポッティング高さ方向に像をとり、エレメントの端面からポッティング高さの1/5間隔ごとに撮影した5枚の各像で樹脂層bの占有面積(膜部分を除く)を計算し、ポッティング部B全体の断面積で割った値の平均値として算出できる。ポッティング部Bに含まれる樹脂層bの割合が10%以上であることで、高温環境下での運転時に柔軟な層により、膜の伸縮に伴う応力を緩和し、歪みによる欠陥や破断を抑制することができる。樹脂層bの割合は、20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。一方で、樹脂層bの割合が90%以下であることで、流体による圧力がかかった場合でもポッティング部Bの強度が担保され、ポッティング部の変形や剥離に伴うリークが抑制される。樹脂層bの割合は70%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
態様1の流体分離膜エレメントのポッティング部を形成する方法としては、特に限定されないが、例えばエレメントの一端を封止し、分離対象流体のエレメント流出口からポッティング材を注入して硬化させる静置ポッティングや、エレメントを回転させながらポッティング材を注入して硬化させる遠心ポッティング等がある。エレメントの両端部のポッティング部を一度に形成できることから、遠心ポッティングが好ましい。
【0053】
本発明の別の態様(以下、態様2と記載する)は、複数本の中空糸状無機膜がエレメント筒に収納されてなる流体分離膜エレメントにおいて、前記中空糸状無機膜の一端部の中空部が封止されてなり、前記中空糸状無機膜の他端部がポッティング部Cを有する流体分離膜エレメントであって、前記中空糸状無機膜の中空部が封止された一端部が樹脂層cを含み、前記中空糸状無機膜同士および前記中空糸状無機膜と前記エレメント筒が前記樹脂層cを介して直接結合していない流体分離膜エレメントである。図3に態様2の流体分離膜エレメントをベッセルに収納した流体分離膜モジュールの分離対象流体の流出入口を含む断面模式図を示す。図4は、態様2の流体分離膜エレメントの、樹脂層cを含む端部の断面模式図である。
【0054】
態様2の流体分離膜エレメントは、流体分離膜である中空糸状無機膜3、エレメント筒5、分離対象流体のエレメント流出入口6を有し、中空糸状無機膜3の一端部の中空部12が封止材11で封止されており、他端部にポッティング部C19を有し、中空部12が封止された中空糸状無機膜3の一端部において、樹脂層c18、何も充填されていない空間である未充填層21を含む。
【0055】
態様2の流体分離膜エレメントが、中空糸状無機膜の中空部が封止された一端部が樹脂層cを含むことで、膜の稼働域が狭くなり、運転時や運搬時の膜の振動に伴う欠陥や破断を抑制することができる。
【0056】
中空糸状無機膜同士および中空糸状無機膜とエレメント筒が樹脂層cを介して直接結合していない状態とは、樹脂層cを含む一端部において、中空糸状無機膜間および中空糸状無機膜とエレメント筒の間に未充填層が存在する状態を表す。エレメントの端面から長手方向に垂直な断面を3次元顕微鏡法など合理的に樹脂層cと中空糸状無機膜を見分けることが可能な手法を用いて、断面の2次元画像として、任意の中空糸状無機膜外径上の任意の点から、前記中空糸状無機膜とは異なる任意の中空糸状無機膜の外径上の任意の点あるいはエレメント筒内径上の任意の点を結んだ直線が、未充填層と交差することで確認できる。
【0057】
中空糸状無機膜同士および中空糸状無機膜とエレメント筒が樹脂層cを介して直接結合していないことで、収納された膜の伸縮率にバラツキがあっても互いに干渉せず、1本1本の伸縮による欠陥や破断の発生をそれぞれ独立に抑制することができる。
【0058】
本態様の樹脂層cは100℃におけるヤング率が1.5GPa以上10GPa以下であることが好ましい。100℃におけるヤング率が1.5GPa以上であることで、中空糸状無機膜をエレメント筒内側面との衝突から保護する観点から好ましい。樹脂層cの100℃におけるヤング率は2GPa以上であることがより好ましく、3GPa以上であることがさらに好ましい。一方、樹脂層cの100℃におけるヤング率が10GPa以下であることで、成形しやすくなるため好ましい。樹脂層cの100℃におけるヤング率は8GPa以下であることがより好ましく、5GPa以下であることがさらに好ましい。
【0059】
本態様の樹脂層cの占有割合としては、エレメント筒内円の面積を100%とすると10%以上90%以下であることが好ましい。樹脂層cの占有割合が10%以上であることで、エレメントの運搬や運転時の振動に伴う中空糸状無機膜の欠陥や破断の発生を抑制することができるため好ましい。樹脂層cの占有割合は、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。一方で、樹脂層cの占有割合が90%以下であることで、昇降温時や湿度変化に伴う膜の伸縮が生じても中空糸状無機膜が変形する空間ができるため好ましい。樹脂層cの占有割合は80%以下であることがより好ましく、70%以下であることがさらに好ましい。
【0060】
態様2の流体分離膜エレメントは、中空糸状無機膜の中空部が封止された一端部において、中空糸状無機膜がコーティング層を含み、コーティング層の100℃におけるヤング率が0.1MPa以上10GPa以下であることが好ましい。本態様の中空糸状無機膜のコーティング層は、分離機能層の外側に存在する層である。中空糸状無機膜が自立膜である場合は、分離機能層とコーティング層を合わせたものを中空糸状無機膜とし、複合膜である場合は、支持体と分離機能層とコーティング層を合わせたものを中空糸状無機膜とする。上記のコーティング層を有することで、運転時の膜の伸縮や運搬時の振動等で樹脂層cと接触し、欠陥や破断の発生を抑制することができる。コーティング層の100℃におけるヤング率が0.1MPa以上であることで、樹脂層cと接触した際の緩衝効果を奏するため好ましい。コーティング層の100℃にけるヤング率は0.5MPa以上であることがより好ましく、1MPa以上であることがさらに好ましい。一方で、コーティング層の100℃におけるヤング率が10GPa以下であることで、コーティング時の成形がしやすくなるため好ましい。100℃におけるヤング率は8GPa以下であることがより好ましく、5GPa以下であることがさらに好ましい。
【0061】
本態様のコーティング層としては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられるが、高温運転時や運搬時の膜の振動等で樹脂層cとの接触による欠陥や破断の発生を抑制する観点から、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0062】
コーティング層として用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエステル、液晶ポリエステル、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0063】
本態様のコーティング層の存在場所は、以下の式2を満たすことが好ましい。
L1 ≦ L2(式2)
【0064】
[式2において、L1はコーティング層の高さを表し、L2は樹脂層cの高さを表す]
式2を満たすことで、中空糸状無機膜のポッティング部以外の分離機能層がすべて流体分離膜として機能し、流体分離膜エレメントとしての性能低下を抑制することができる。
【0065】
本態様のコーティング層の高さL1および樹脂層cの高さL2は、エレメントの端面から樹脂層およびコーティング層が存在する部分から存在しない部分に変わる境界までの長さを表す。
【0066】
本発明のエレメントが分離対象とする混合流体は、例えば、発電所や高炉などの排気ガスからの二酸化炭素分離・貯蔵システム、石炭ガス化複合発電におけるガス化した燃料ガス中からの硫黄成分除去、バイオガスの精製、有機ハイドライドからの水素の精製、エチレンセンターにおける混合ガス中のプロピレン精製などが挙げられるが、100℃以上で運転することで、発生した高温ガスの冷却に要するエネルギー低減の効果を奏する排気ガスからの二酸化炭素分離・貯蔵システム、エチレンセンターにおける混合ガス中のプロピレン精製などが好ましい。つまり本発明のエレメントにおいて、中空糸状無機膜はガス分離膜であることが好ましい。
【0067】
本発明の流体分離膜エレメントは、耐圧性の観点から、ベッセルに収納された流体分離膜モジュール(以下、単に「モジュール」と記載する場合がある)として使用することが好ましい。つまり、図1の流体分離膜モジュールは流体分離膜エレメントがベッセル4に収納されており、ベッセル4は分離対象流体の流出入口7と透過流体の流出入口16を含む。
【0068】
本発明の流体分離膜エレメントにおいて、ベッセルの断面形状は、ベッセルの耐圧性を向上させる観点から、楕円形や円形などが好ましく、円形がより好ましい。ここで、ベッセルの断面とは、ベッセルの、中空糸膜の長さ方向に垂直な断面を言う。ベッセルの材質としては、例えば、金属、樹脂、繊維強化プラスチック(FRP)等が挙げられ、設置場所の環境や使用される状況に応じて、適宜選択することができる。耐圧性や耐熱性が要求される用途においては、強度と成形加工性を兼ね備えた金属が好ましく、ステンレス、アルミニウムやこれらの合金がより好ましい。
【0069】
ベッセルに配置される分離対象流体の流出入口は、中空糸状無機膜へ分離対象流体を導く機能を有する。中空糸状無機膜が全量ろ過方式で用いられる場合には、分離対象流体の流出入口を少なくとも1箇所有していればよく、クロスフローろ過方式で用いられる場合には、分離対象流体の流出入口を合わせて2箇所以上有することが好ましい。ベッセルの機械的強度を保つ範囲において、分離対象流体の流出入口を複数有してもよい。この場合、流出入口と流体分離膜との間に、流体の通過を妨げない範囲でメッシュやフェルト等の布帛を配置することが好ましく、流体の拡散や流体分離膜の保護の効果を奏する。
【0070】
また、本発明の流体分離膜モジュールにおいて、流体分離膜エレメントをベッセルに固定する方法としては、流体分離膜エレメントを液密性あるいは気密性を確保できるアダプター(一例として、Oリング等)を介してベッセル内に固定する方法が好ましい。こうすることで、流体分離膜の性能が経時劣化した際に、エレメントのみを交換することができる。
【0071】
本発明の流体分離膜プラント(以下、単に「プラント」と記載する場合がある)は、本発明のエレメントまたは本発明のモジュールを含むプラントである。プラントは、エレメントまたはモジュールに加え、前処理設備、精製流体回収設備、副生流体回収設備等を含むことが好ましい。前処理設備は、分離前の分離対象流体からあらかじめ不純物を除去したり分離前の分離対象流体の組成を調製したりするための設備である。精製流体回収設備は、分離前の分離対象流体から不要な成分を除去した精製流体を回収し、必要に応じてさらに精製したりパイプライン等に供給したりするための設備である。副生流体回収設備は、分離前の分離対象から除去された副生流体を回収し、一例として、無害化後に排出する設備である。本発明のプラントにおいて、エレメントまたはモジュールと前処理設備、精製流体回設備、副生流体回収設備は配管等で接続され、分離前の分離対象流体が連続的に精製流体と副生流体に分離されることが好ましい。
【0072】
本発明のプラントは、本発明のモジュールを100℃以上300℃以下で使用することが好ましい。本発明のモジュールを100℃以上で使用することで、流体精製の際の冷却コストを低減することができるため好ましい。本発明のモジュールは120℃以上で使用することがより好ましく、150℃以上で使用することがさらに好ましい。一方で、本発明のモジュールを300℃以下で使用することで、本発明のエレメントの膜の伸縮に伴う欠陥や破断を抑制する効果を奏するため好ましい。本発明のモジュールは250℃以下で使用することがより好ましく、200℃以下で使用することがさらに好ましい。
【0073】
本発明の精製流体は、本発明の流体分離膜モジュールで精製された流体である。精製流体は、本発明のモジュールにおける精製工程の前後に別の精製工程や追加工程を含んで精製されていてもよく、異なる精製工程で精製された精製流体と混合して用いられていてもよい。別の精製工程や異なる精製工程としては、例えば、蒸留、吸着、吸収等が挙げられる。また、追加工程としては、例えば、別の流体と混合する成分調整等が挙げられる。
【0074】
本発明の精製流体は、分離性能を担保した本発明の流体分離膜モジュールで精製され、精製工程におけるロスを減らし、高効率に回収可能な低コスト流体として、各種産業用途において好適に用いることができる。
【実施例0075】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各実施例および比較例における評価は、以下の方法で行った。
【0076】
(エレメントのガス分離性能評価)
各実施例および比較例で作製したエレメントをSUS304製のベッセルに収納したモジュールを用いて、100℃または200℃におけるガス透過速度Qを測定した。測定ガスとしては、二酸化炭素、メタンを用い、JIS K7126-1(2006)の圧力センサ法に準拠して、外圧式により二酸化炭素およびメタンの単位時間あたりの透過側の圧力変化を測定した。ここで供給側と透過側の圧力差を0.1MPaに設定した。
【0077】
続いて、ガス透過速度Qを下記式により算出し、各成分のガス透過速度Qの比を分離係数αとした。ここで、膜面積はガスの透過に寄与する領域における外径および長さから算出した。
ガス透過速度Q=[透過ガス量(mоl)]/[膜面積(m)×時間(s)×圧力差(Pa)]
【0078】
二酸化炭素およびメタンのガス透過速度Qを測定し、(二酸化炭素の透過速度)/(メタンの透過速度)を分離係数として算出し、分離係数が40以上であれば「SS」、30以上であれば「S」、20以上30未満であれば「A」、10以上20未満であれば「B」、5以上10未満であれば「C」、2以上5未満であれば「D」、2未満であれば「E」とした。
【0079】
(各樹脂層、コーティング層、封止材のヤング率評価)
樹脂層、コーティング層および封止材を有するエレメントの端面から、長手方向に垂直な方向に1cmの位置でエレメントを切断した。切断片に含まれる樹脂層、コーティング層および封止材の任意の10箇所の点を断面側から温調ステージ付きのナノインデンター(Tribоindenter TI950、Hysitrоn社製)、Berkоvich圧子(圧子先端曲率半径150nm、ダイヤモンド社製)を用いて、試験速度10μN/sで、100℃、大気中の環境下でヤング率を測定した。10箇所の平均値を有効数字2桁で示した値を樹脂層、コーティング層および封止材のヤング率とした。
【0080】
(中空糸状無機膜のヤング率評価)
エレメント内に収納された中空糸状無機膜のうち任意の10本をそれぞれ100mmの長さでサンプリングし、断面SEM観察で、断面積を算出した。
【0081】
続いて、サンプリングした流体分離膜の両端を10mmずつ接着剤で補強し、補強部位を引張試験機(TENSILON(登録商標)/RTM-100、株式会社東洋ボールドウィン製)のチャックに固定し、試料長80mm、引張速度10mm/minの条件にてヤング率(GPa)を測定した。10本の平均値を有効数字2桁で示した値を中空糸状無機膜のヤング率とした。
【0082】
(ポッティング部中の樹脂層割合評価)
各ポッティング部において、エレメントの端面から長手方向に見た際のポッティング部充填高さをポッティング高さとして、ポッティング高さの1/5間隔ごとにエレメントの長手方向に垂直な断面で切断し、走査型電子顕微鏡で撮影した5枚の各像から樹脂層の占有面積を計算し、ポッティング部全体の断面積で割った5個の値の平均値として算出した。
【0083】
(中空糸状無機膜存在場所の確認)
中空糸状無機膜の存在場所の確認は、ポッティング部Aにおいて、エレメントの端面から長手方向に見た際のポッティング部充填高さをポッティング高さとして、ポッティング高さの1/5間隔ごとにエレメントの長手方向に垂直な断面で切断し、走査型電子顕微鏡で撮影した5枚の各像から、すべての中空糸状無機膜の外周が樹脂層a中に存在する場合は〇、樹脂層a中に存在しない膜が1本でも存在する場合は×とした。
【0084】
(中空部封止の有無確認)
中空糸状無機膜の中空部が封止されている端部において、エレメントの端面からエレメントの長手方向に走査型電子顕微鏡で連続的にスライス&ビュー観察を行い、2次元画像として中空部が封止材で完全に占有されている場合に封止「有」、中空部内に空間がある場合に封止「無」とした。
【0085】
(ストッパーの有無確認)
ストッパーの有無確認は、ポッティング部Aに隣接する板状のものの有無を判断し、ストッパーを有する場合には「有」、ストッパーがない場合には「無」とした。
【0086】
(製造例1:Y2=3.0GPaの流体分離用炭素膜の作製)
ポリサイエンス社製ポリアクリロニトリル(PAN)(重量平均分子量15万)10重量部、シグマ・アルドリッチ社製ポリビニルピロリドン(PVP)(重量平均分子量4万)10重量部および富士フイルム和光純薬製ジメチルスルホキシド(以下、DMSO)80重量部を混合し、100℃で攪拌して紡糸原液を調製した。
【0087】
得られた紡糸原液を25℃まで冷却した後、同心円状の三重口金を用いて、内管からDMSO80重量%水溶液を、中管から前記紡糸原液を、外管からDMSO90重量%水溶液をそれぞれ同時に吐出した後、25℃の純水からなる凝固浴へ導き、ローラーに巻き取ることにより原糸を得た。得られた原糸を水洗した後、循環式乾燥機を用いて25℃で24時間乾燥し、中空糸膜状の多孔質炭素膜の前駆体を作製した。
【0088】
得られた多孔質炭素膜の前駆体を250℃の電気炉中に通し、空気雰囲気下にて1時間加熱して不融化処理を行い、不融化糸を得た。続いて、不融化糸を炭化温度650℃で炭化処理し、外径300μm、内径100μmの流体分離用炭素膜を得た。得られた流体分離用炭素膜の100℃におけるヤング率Y2は3.0GPaであった。
【0089】
(製造例2:Y2=0.7GPaの流体分離用炭素膜の作製)
不融化糸を炭化温度450℃で炭化処理した以外は製造例1と同様にして流体分離用炭素膜を得た。得られた流体分離用炭素膜の100℃におけるヤング率Y2は0.7GPaであった。
【0090】
(実施例1:樹脂層aとしてポリエチレンを用いたエレメントの作製)
分離対象流体の流出入口を有するポリエーテルエーテルケトンパイプ(内径10mm)内に、信越化学社製シリコーングリースを側面に付着させた筒(外径7mmmm)を収納し、エレメント一端部において、パイプと筒の間にポッティング材としてサンユレック社製エポキシ樹脂SA-8091を注入して硬化させた。その後、筒を取り除き、パイプ内の未充填層に製造例1で作製した膜を50本収納し、樹脂層aとしてスタンダードテストピース社製高密度ポリエチレンペレットを180℃で膜とポッティング材の間に流し込み、一端部の静置ポッティングを行った。他端部は上記エポキシ樹脂のみで静置ポッティングを行い、実施例1のエレメントを作製した。前述の方法により評価した結果、実施例1のエレメントの100℃でのガス分離性能は「A」、ポッティング部A中の樹脂層aの割合は50%、中空部封止は「無」、中空糸状無機膜存在場所は「〇」、Y1は0.8、樹脂層bのヤング率は3.2であった。
【0091】
(実施例2:樹脂層aとしてポリスチレンを用いたエレメントの作製)
樹脂層aとしてスタンダードテストピース社製ポリスチレンペレットを180℃で流し込み、一端部の静置ポッティングを行った以外は実施例1と同様にして実施例2のエレメントを作製した。前述の方法により評価した結果、実施例2のエレメントの100℃でのガス分離性能は「B」、ポッティング部A中の樹脂層aの割合は50%、中空部封止は「無」、中空糸状無機膜存在場所は「〇」、Y1は1.1、樹脂層bのヤング率は3.2であった。
【0092】
(実施例3:製造例2で作製した膜を用いたエレメントの作製)
製造例2で作製した膜を50本収納した以外は実施例1と同様にして実施例3のエレメントを作製した。前述の方法により評価した結果、実施例3のエレメントの100℃でのガス分離性能は「C」、ポッティング部A中の樹脂層aの割合は50%、中空部封止は「無」、中空糸状無機膜存在場所は「〇」、Y1は0.8、樹脂層bのヤング率は3.2であった。
【0093】
(実施例4:ポッティング部Aで中空糸状無機膜の中空部が封止されているエレメントの作製)
静置ポッティングの際に、すべての中空糸状無機膜の一端を目止めして封止した以外は実施例1と同様にして実施例4のエレメントを作製した。前述の方法により評価した結果、実施例4のエレメントの100℃でのガス分離性能は「SS」、ポッティング部A中の樹脂層aの割合は50%、中空部封止は「有」、封止材のヤング率は0.7、中空糸状無機膜存在場所は「〇」、Y1は0.8、樹脂層bのヤング率は3.2であった。
【0094】
(実施例5:樹脂層aとしてシリコーン樹脂を用いたエレメントの作製)
樹脂層aとしてモメンティブジャパン社製シリコーン混和物TSE382-Cを用いて一端部の静置ポッティング部を行った以外は実施例1と同様にして実施例5のエレメントを作製した。前述の方法により評価した結果、実施例5のエレメントの200℃でのガス分離性能は「S」、ポッティング部A中の樹脂層aの割合は50%、中空部封止は「無」、中空糸状無機膜存在場所は「〇」、Y1は0.9、樹脂層bのヤング率は3.2であった。
【0095】
(実施例6:ポッティング部Aに隣接するストッパーを有するエレメントの作製)
SMC社製焼結金属エレメントESD-22-3-10をポッティング部Aに隣接させて作製した以外は、実施例2と同様にして実施例6のエレメントを作製した。前述の方法により評価した結果、実施例6のエレメントの100℃でのガス分離性能は「A」、ポッティング部A中の樹脂層aの割合は50%、中空部封止は「無」、中空糸状無機膜存在場所は「〇」、Y1は1.1、樹脂層bのヤング率は3.2であった。
【0096】
(実施例7:樹脂層aとしてポリエチレン、樹脂層bとしてポリスチレンを用いたエレメントの作製)
樹脂層bとしてスタンダードテストピース社製ポリスチレンペレットを180℃で流し込み、一端部の静置ポッティングを行った以外は、実施例1と同様にして実施例7のエレメントを作製した。前述の方法により評価した結果、実施例7のエレメントの100℃でのガス分離性能は「B」、ポッティング部A中の樹脂層aの割合は50%、中空部封止は「無」、中空糸状無機膜存在場所は「〇」、Y1は0.8、樹脂層bのヤング率は1.1であった。
【0097】
(実施例8:中空糸状無機膜の一端部の中空部が封止され、他端部がポッティングされており、樹脂層cとしてエポキシ樹脂を用いたエレメントの作製)
分離対象流体の流出入口を有するポリエーテルエーテルケトンパイプ(内径10mm)内に、信越化学社製シリコーングリースを側面に付着させた筒(外径7mmmm)を収納し、エレメント一端部において、パイプと筒の間に樹脂層cとしてサンユレック社製エポキシ樹脂SA-8091を注入して硬化させた。その後筒を取り除き、製造例1で作製した膜を50本収納し、エポキシ樹脂がある側の膜端部を封止材で封止した。封止した側とは逆側の膜端部を、ポッティング部Cとしてサンユレック社製エポキシ樹脂SA-8091を用いた静置ポッティングにより実施例6のエレメントを作製した。前述の方法により評価した結果、実施例8のエレメントの100℃でのガス分離性能は「SS」、中空部封止は「有」、樹脂層cのヤング率は3.2であった。
【0098】
(実施例9:樹脂層cとしてポリエチレンを用いたエレメントの作製)
樹脂層cとして、スタンダードテストピース社製高密度ポリエチレンペレットを180℃で流し込んだ以外は実施例8と同様にして実施例9のエレメントを作製した。前述の方法により評価した結果、実施例7のエレメントの100℃でのガス分離性能は「C」、中空部封止は「有」、樹脂層cのヤング率は0.8であった。
【0099】
(比較例1:樹脂層aとしてエポキシ樹脂を用いたエレメントの作製)
樹脂層aとしてサンユレック社製エポキシ樹脂SA-8091を用いた以外は実施例1と同様にして比較例1のエレメントを作製した。前述の方法により評価した結果、エレメントの100℃でのガス分離性能は「D」、ポッティング部A中の樹脂層aの割合は50%、中空部封止は「無」、中空糸状無機膜存在場所は「〇」、Y1は3.2、樹脂層bのヤング率は3.2であった。
【0100】
(比較例2:中空糸状無機膜の一部が樹脂層a外に存在するエレメントの作製)
膜10本をポッティング材のエポキシ樹脂層中に含まれるようにした以外は実施例1と同様にして比較例2のエレメントを作製した。前述の方法により評価した結果、比較例2のエレメントの100℃でのガス分離性能は「E」、ポッティング部A中の樹脂層aの割合は50%、中空部封止は「無」、中空糸状無機膜存在場所は「×」、Y1は0.8、樹脂層bのヤング率は3.2であった。
【0101】
(比較例3:製造例2で作製した膜を用い、樹脂層aとしてポリスチレンを用いたエレメントの作製)
製造例2で作製した膜を50本収納し、樹脂層aとしてスタンダードテストピース社製ポリスチレンペレットを180℃で流し込み、一端部の静置ポッティングを行った以外は実施例1と同様にして比較例3のエレメントを作製した。前述の方法により評価した結果、比較例3のエレメントの100℃でのガス分離性能は「E」、ポッティング部A中の樹脂層aの割合は50%、中空部封止は「無」、中空糸状無機膜存在場所は「〇」、Y1は1.1、樹脂層bのヤング率は3.2であった。
【0102】
(比較例4:中空糸状無機膜の一端部の中空部の封止なしのエレメントの作製)
膜の一端部の中空部の封止をしないで作製した以外は実施例8と同様にして比較例4のエレメントを作製した。前述の方法により評価した結果、比較例4のエレメントの100℃でのガス分離性能は「E」、中空部封止は「無」、樹脂層cのヤング率は3.2であった。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【符号の説明】
【0105】
1:分離機能層
2:支持体
3:中空糸状無機膜
4:ベッセル
5:エレメント筒
6:分離対象流体のエレメント流出入口
7:分離対象流体のベッセル流出入口
8:アダプター
9:樹脂層a
10:ポッティング部A
11:封止材
12:中空部
13:ポッティング材
14:ポッティング部B
15:樹脂層b
16:透過流体の流出入口
17:ストッパー
18:樹脂層c
19:コーティング層
20:ポッティング部C
21:未充填層
図1
図2
図3
図4