(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089649
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】電力変換装置、無線通信装置、センサおよび無線給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/27 20160101AFI20240626BHJP
【FI】
H02J50/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213216
(22)【出願日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2022204167
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 明寿也
(72)【発明者】
【氏名】假家 義裕
(72)【発明者】
【氏名】伊東 健治
(72)【発明者】
【氏名】坂井 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】平井 司
(57)【要約】
【課題】電磁波を高い効率で直流電源電圧に変換する薄膜トランジスタから構成された整流回路とループアンテナを用いた電力変換装置、無線通信装置、センサおよび無線給電装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置10は、薄膜トランジスタから構成される整流回路と、前記整流回路の静電容量成分と共振する誘導性成分を有するループアンテナと、を備え、前記ループアンテナの電気長が受電する電磁波の1/8波長以上3/4波長以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタから構成される整流回路と、
前記整流回路の静電容量成分と共振する誘導性成分を有するループアンテナと、
を備え、
前記ループアンテナの電気長が、
受電する電磁波の1/8波長以上3/4波長以下である、
電力変換装置。
【請求項2】
前記整流回路と前記ループアンテナとを電気的に接続する接続配線をさらに備え、
前記接続配線は、
誘電体と接し、前記整流回路と前記ループアンテナとを接続する電気長が
受電する電磁波の1/16波長以下である、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記整流回路は、
2つ以上の薄膜トランジスタから成るダイオードから構成されてなる、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記整流回路は、
倍電圧整流回路である、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記ループアンテナは、
同一平面において並列に2つ以上接続されて配置されてなる、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記整流回路の構成素子は、
前記整流回路の高周波グラウンドに対して線対称に配置されてなる、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記整流回路は、
ブリッジ型整流回路である、
請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記ループアンテナ、前記接続配線、および、
前記整流回路の入力電極が、同層に形成されてなる、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記ループアンテナ、前記接続配線、もしくは、前記整流回路を構成する少なくともいずれかの電極の外皮が結晶性の高い金属材料および炭素材料を含む、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記薄膜トランジスタの半導体層は、
カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、および有機半導体からなる群より選ばれる1種以上を含有する、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記整流回路と前記ループアンテナとが共振する周波数は、
UHF帯である、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項12】
請求項1または2に記載の電力変換装置を含む、
無線通信装置。
【請求項13】
請求項1または2に記載の電力変換装置を含む、
センサ。
【請求項14】
請求項1または2に記載の電力変換装置を含む、
無線給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、無線通信装置、センサおよび無線給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信装置では、無線信号(電波)から電力を受けて動作する非接触型のものが増加している。中でも、無線通信装置のタグとしてRFID(Radio Frequency IDentification)技術を用いた無線通信システムの開発が進められている。
【0003】
RFIDタグは、ICチップ等の半導体集積回路装置と、リーダ/ライタと呼ばれる無線送受信機および通信するためのアンテナと、を有している。RFIDタグは、タグ内に設置されたアンテナが、リーダ/ライタから送信される電波を受信し、受信した電波を整流回路で整流して直流電源電圧を生成する。この直流電源電圧は、ICチップ内の内部回路に供給され、タグが動作する。
【0004】
最近では、RFIDタグの低コスト化に向けて、タグICを薄膜トランジスタ(thin film transistor;TFT)回路に置き換える試みが注目されている。TFT技術では、高分子ポリマーや無機セラミックスといった大面積基板上に電子回路を大量製造することができ、RFIDタグの製造コスト削減を期待することができる。
【0005】
一方で、その電気特性は、シリコンICや個別半導体回路よりも劣るため、TFT回路の高性能化が必要となる。中でも、電波を受信してタグの駆動電力を生成する、アンテナと整流回路、即ち、レクテナから成る電力変換装置の効率改善が重要課題の1つである。この電力変換装置の変換効率が改善すれば、TFT回路を用いたRFIDタグの通信距離が向上し、タグの適用範囲が広がると期待できる。この効率改善に向けた方策としては、アンテナと整流回路との間のインピーダンス整合をとることで電力反射を抑えることが重要であり、種々の方針が考えられる。
【0006】
例えば、特許文献1では、アンテナと整流回路との間に、インピーダンス整合回路として個別キャパシタを設け、アンテナとインピーダンス整合をとっている。これにより、特許文献1では、電力の反射を抑え、受電効率の向上が可能となる。
【0007】
また、特許文献2では、電力ロスの要因となる整合回路をなくし、ダイポールアンテナの形状を調整することで、アンテナのインピーダンスを調整し、整流回路とインピーダンス整合をとっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5731040号
【特許文献2】特許第7015054号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1のようにインピーダンス整合回路を用いた場合、そのインピーダンス整合回路の寄生成分、例えば抵抗性、容量性および誘導性成分等により電力ロスが生じるという問題点があった。さらに、TFT整流回路は、シリコンICまたは個別半導体に比べて、高インピーダンスを示すため、寄生成分への電力ロスの影響が大きくなるという問題点があった。
【0010】
また、特許文献2のような形状を調整したダイポールアンテナは、寄生抵抗成分のあるキャパシタまたはインダクタを比較的多く含む構造である。このため、特許文献2のような形状を調整したダイポールアンテナは、本質的にアンテナで電力ロスを生じてしまうという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高い効率で電磁波を直流電源電圧に変換する電力変換装置、無線通信装置、センサおよび無線給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電力変換装置は、[1]薄膜トランジスタから構成される整流回路と、前記整流回路の静電容量成分と共振する誘導性成分を有するループアンテナとを備え、前記ループアンテナの電気長が1/8波長以上3/4波長以下である。
【0013】
また、本発明に係る電力変換装置は、[2]上記[1]に係る発明において、前記整流回路と前記ループアンテナとを電気的に接続する接続配線をさらに備え、前記接続配線は、誘電体と接し、前記整流回路と前記ループアンテナとを接続する電気長が1/16波長以下である。
【0014】
また、本発明に係る電力変換装置は、[3]上記[1]または[2]に係る発明において、前記整流回路は、2つ以上の薄膜トランジスタから成るダイオードから構成されてなる。
【0015】
また、本発明に係る電力変換装置は、[4]上記[1]~[3]のいずれか1つに係る発明において、前記整流回路は、倍電圧整流回路である。
【0016】
また、本発明に係る電力変換装置は、[5]上記[1]~[3]のいずれか1つに係る発明において、前記ループアンテナは、同一平面において並列に2つ以上接続されて配置されてなる。
【0017】
また、本発明に係る電力変換装置は、[6]上記[1]~[3]のいずれか1つに係る発明において、前記整流回路の構成素子は、前記整流回路の高周波グラウンドに対して線対称に配置されてなる。
【0018】
また、本発明に係る電力変換装置は、[7]上記[1]~[3]のいずれか1つに係る発明において、前記整流回路がブリッジ型整流回路である。
【0019】
また、本発明に係る電力変換装置は、[8]上記[2]に係る発明において、前記ループアンテナ、前記接続配線、および、前記整流回路の入力電極が、同層に形成されてなる。
【0020】
また、本発明に係る電力変換装置は、[9]上記[2]に係る発明において、前記ループアンテナ、前記接続配線、もしくは、前記整流回路を構成する少なくともいずれかの電極の外皮が結晶性の高い金属材料および炭素材料を含む。
【0021】
また、本発明に係る電力変換装置は、[10]上記[1]~[3]のいずれか1つに係る発明において、前記薄膜トランジスタの半導体層は、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、および有機半導体からなる群より選ばれる1種以上を含有する。
【0022】
また、本発明に係る電力変換装置は、[11]上記[1]~[3]のいずれか1つに係る発明において、前記整流回路と前記ループアンテナとが共振する周波数は、UHF帯である。
【0023】
また、本発明に係る無線通信装置は、[12]上記[1]~[3]のいずれか1つに係る電力変換装置を含む。
【0024】
また、本発明に係るセンサは、[13]上記[1]~[3]のいずれか1つに係る電力変換装置を含む。
【0025】
また、本発明に係る無線給電装置は、[14]上記[1]~[3]のいずれか1つに係る電力変換装置を含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高い効率で電磁波を直流電源電圧に変換することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置の構造を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置が備えるループアンテナ構造の例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置が備える電極の外皮を示す断面模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置が備える整流回路に倍電圧整流回路を適した場合の回路図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置が備える整流回路に倍電圧全波整流回路を適用した場合の回路図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置が備える整流回路におけるダイオード接続されたTFTの断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態1の変形例1に係る電力変換装置が備えるループアンテナ構造の例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態1の変形例2に係る電力変換装置の構造を示す模式図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態2に係る電力変換装置の構造を示す模式図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態2の変形例1に係る電力変換装置が備えるループアンテナ構造の例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施の形態3に係る電力変換装置が備える整流回路を示す回路図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施の形態3の変形例1に係る電力変換装置が備える整流回路を示す回路図である。
【
図13】
図13は、本発明のその他の実施の形態に係る電力変換装置が備えるループアンテナ、接続配線および整流回路の入力部の断面模式図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施例1で構成した整流回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、図面は模式的なものである。また、本発明は以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置の構造を示す模式図である。
図1に示す電力変換装置10は、電磁波および交流信号から直流電力へと変換する装置である。電力変換装置10は、ループアンテナ11、整流回路12、後段素子13、接続配線14、接続配線15および基板16から構成されている。
【0030】
〔ループアンテナ〕
まず、ループアンテナ11について説明する。ループアンテナ11は、整流回路12の入力側に接続配線14を介して電気的に接続され、整流回路12の出力側には、接続配線15を介して、用途により任意の後段素子13が電気的に接続される。
【0031】
ループアンテナ11と整流回路12との接続方法は、電気的に接続可能であれば、いかなる方法でもよい。その素材は、一般的に使用されうる導電材料であればいかなるものでもよい。また、接続部の幅および厚みは、任意である。例えば、接続配線14は、同一の基板16上または他基板上などの誘電体に接して形成されてなる。このような誘電体に接した接続配線14は、寄生インダクタを打ち消す寄生静電容量が生じるため、寄生成分を極力減らす観点から好ましい形態である。さらに好ましくは、接続配線14の特性インピーダンスがループアンテナ11のインピーダンスと同様の形態である。
【0032】
ループアンテナ11と整流回路12との接続配線14の電気長は、寄生アンテナおよび寄生成分による電力ロスを減らす観点から、より短いことが好ましい。ここで「電気長」とは、対象とする配線や電極の周囲にある媒体の比誘電率や寄生リアクタンス成分による波長の短縮や延長を考慮した長さである。具体的に、接続配線14の電気長は、好ましくは、受電する電磁波の1/8波長以下が好ましく、より好ましくは、1/16波長以下であり、さらに好ましくは、1/32波長以下である。また、整流回路12への入力位相のずれを低減させる観点から、ループアンテナ11と整流回路12を接続するすべての配線は等しい電気長であることが好ましい。
【0033】
ループアンテナ11は、電力変換装置1が電磁波から直流電力へ変換を行うために、電磁波を受電し、高周波電力を整流回路12に供給するものである。ループアンテナ11は、そのインピーダンスのリアクタンス成分が受電する電磁波の周波数において誘導性である。このループアンテナ11の誘導性成分は、整流回路12の静電容量成分と共振することで、整流回路12に対して高い入力電圧を生成することができる。また、ループアンテナ11は、電力変換装置1の用途によっては、電磁波の受電のみならず、情報を含む電磁波を送受信する目的で利用されていてもよい。
【0034】
ループアンテナ11の電気長は、受電する電磁波の1/8波長以上3/4波長以下である。本発明におけるループアンテナ11の電気長とは、整流回路12が接続される給電点間のループアンテナ11を構成する電極の中心を通る線の物理長さを波長短縮率で割った値である。波長短縮率は、基板16や空気などを代表とする、ループアンテナ11が接する媒体の比誘電率によって決まり、高周波シミュレーションなどを用いた計算により求めることができる。ループアンテナ11は、電気長を3/4波長以下とすることで、高周波電力が流れる長さが短くなる。その結果、寄生成分から生じる電力ロスを抑えることができ、高いQ値(quality factor)のアンテナとなる。また、ループアンテナ11の利得を向上させる目的から、ループアンテナ11の電気長は、1/8波長以上である。さらに、ループアンテナ11は、高いQ値を得る観点から、1/2波長以下の電気長がより好ましいが、アンテナ利得およびインピーダンス特性等、電気特性が複数同時に変わるため、整流回路12の出力部の用途により決定される。また、ループアンテナ11は、その電気特性を微調整するために、配線形状を変形してもよい。例えば、ループアンテナ11は、アンテナ配線を蛇行したり、メッシュ状に形成したりしてもよい。
【0035】
〔ループアンテナの構造の詳細〕
ここで、ループアンテナ11の構造の詳細について説明する。
図2は、電力変換装置10が備えるループアンテナ11の構造の例を示す模式図である。
【0036】
図2に示すように、ループアンテナ11は、複数の受電周波数特性を得る目的、および、受電周波数特性の帯域幅を広げる目的から、内部に短絡配線21を設けた構成とすることができる。ループアンテナ11は、短絡配線21と、外側のループ配線22を有し、短絡配線21と外側のループ配線22から成る構造である。
【0037】
短絡配線21は、直線形状であっても、円弧状であってもよく、ループアンテナ11内に複数設けられていてもよい。
【0038】
外側のループ配線22は、短絡配線21を介した内側のループ経路22aと、外側のループ経路22aと、を有する。
図2に示すループアンテナ11の構成では、短絡配線21を介した内側のループ経路22aが外側のループ経路22aと異なる周波数特性を有する。このため、
図2に示すループアンテナ11の構成では、複数の入力を受け取ることが可能となり、受電効率が向上する。ここでの電気長は、内側のループ経路22aと外側のループ経路22aの2通りが存在し、それぞれが共振する受電周波数の電磁波の1/8波長以上3/4波長以下とすることで、高いQ値を維持することができる。
【0039】
ループアンテナ11を構成する材料は、特に限定されないが、その材料から構成されるアンテナ電極の厚みや幅などの物理形状は、ループ構造を乱さない範囲とする。例えば、アンテナ電極の幅もしくは厚みの最大値は、受電する電磁波の1/300波長以上1/20波長以下であることが好ましく、アンテナの周波数特性によって具体的に決定される。さらに、並列共振インピーダンスを高める観点から、より好ましくは、受電する電磁波の1/300波長以上1/60波長以下の最大幅もしくは最大厚みが好ましい。ループアンテナ11の形成方法としては、特に制限はなく、例えば、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、メッキ、CVD、イオンプレーティングコーティング、インクジェット、印刷等の公知技術を用いた方法が挙げられる。また、アンテナを構成する材料からなる塗布液を利用する塗布法も挙げられる。塗布法の具体例としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法等の技術で、絶縁基板上に塗布液を塗布し、オーブン、ホットプレート、赤外線等を用いて乾燥を行い形成する方法等が挙げられる。塗布法は、製造コストや大面積への適合性の観点から、好ましい。さらに、上記方法で作製した導電膜を公知のフォトリソグラフィー法等で所望の形状にパターン形成してもよいし、あるいは、蒸着およびスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターン形成してもよい。
【0040】
また、ループアンテナ11は、表皮効果による電力損失を抑制する目的、もしくは、酸化などに対する環境耐久性を向上させる目的から、その外皮の少なくとも一部の界面に、高い結晶性を有する導電性材料を含むことが好ましい。より好ましい形態としては、外皮全域が高い結晶性を有する導電性材料を含むことであり、さらに好ましくは、外皮の少なくとも一部の界面が、高い結晶性を有する導電性材料で構成されることであり、さらに好ましくは、外皮全域が高い結晶性を有する導電性材料で構成されることである。
【0041】
図3は、電極の断面が直方体であった場合の外皮領域を示す断面模式図である。
図3に示すように、電極30は、外皮31と内部32の領域から成る。本発明における「電極の外皮」とは、電極の表層に対応し、空気や基板といった誘電体もしくは半導体などと接する電極表面から、この電極厚み(t)の1/8に相当する深さ(t/8)以内の箇所を意味する。厚みは、基板16に対して垂直な方向の長さを指す。この電極の外皮に形成される材料は、結晶性の貴金属材料(金、銀、銅など)および炭素材料(カーボンナノチューブ、グラフェン、グラッシーカーボンなど)のいずれか一つ以上を利用することができる。この外皮形成法としては、上記のループアンテナ11と同様の形成法や電界もしくは無電解めっき法、光パルスもしくは加熱プレスによる局所結晶化などが挙げられる。この外皮構成により、受電周波数特性が数百MHz以上の高周波の場合、表皮効果による電力ロスを低減させることができるうえに、環境耐性を向上させることが可能となる。また、
図3は、断面を長方形としているが、円形や多角形であってもよい。また、ループアンテナが中空に形成されている場合は、断面の幾何中心から表面までの最短距離の1/8を外皮とする。
【0042】
このように上記の外皮の形態は、以下で説明する整流回路12を構成する電極および、接続配線14にも適用することで、高周波電力ロスの低減がさらに可能となる。それぞれの組成や結晶性の評価は、X線回折法による組成分析や透過電子顕微鏡による電子回折像の取得から可能となる。
【0043】
〔整流回路〕
次に、整流回路12について説明する。整流回路12は、ループアンテナ11が受電した電磁波を整流して直流電力を生成する。この生成された直流電力は、後段の回路、例えば後段素子13の駆動電力として供給されてもよいし、補助電源用のキャパシタや電池を充電する目的で供給されてもよいし、本発明の電力変換装置1を利用したセンサの出力としてもよい。それぞれの用途に関する詳細は後述する。
【0044】
整流回路12は、半波整流回路または全波整流回路等、いかなる回路の構成でも良い。中でも、整流回路12は、複数のダイオードを設けることで、大電圧からの保護ダイオードを設けたり、出力電圧を向上させる倍電圧整流回路の構造にしたり、N倍電圧全波整流回路の構造にしたりすることが可能となる。
【0045】
図4は、整流回路12に倍電圧整流回路構成を適用した場合の回路図である。
図4に示すように、整流回路12は、倍電圧整流回路40の構成とすることができる。
図4の倍電圧整流回路40は、2つのダイオード41a,41bと2つのキャパシタ42a,42bから構成されている。倍電圧整流回路40の入力端子A、Bには、図示しない接続配線14を介してループアンテナ11が電気的に接続されており、出力端子C,Dには、図示しない接続配線15を介して後段素子13が電気的に接続されている。
【0046】
図5は、整流回路12にN倍電圧全波整流回路を適用した場合の回路図である。
図5に示すように、整流回路12は、出力電圧を向上させる目的などから、N倍電圧全波整流回路(N=4n、nは1以上の整数)の構成としてもよい。N倍電圧全波整流回路50は、N個のTFTダイオード51a
-n,51b
-n,51c
-n,51d
-n、および、N個のキャパシタ52a
-n,52b
-n,52c
-n,52d
-nから構成されている。
【0047】
N倍電圧全波整流回路50を構成する1つのTFTダイオード、および、1つのキャパシタは、それぞれ要求する電気特性を得る目的および負荷電力を分散させる目的から、複数のTFTダイオード、および、複数のキャパシタの並列および直列接続にそれぞれ置き換えられることができる。N倍電圧全波整流回路50の入力端子A、Bには、図示しない接続配線14を介してループアンテナ11が電気的に接続されており、出力端子C,Dには、図示しない接続配線15を介して後段素子13が電気的に接続されている。
【0048】
N倍電圧全波整流回路50は、理論的に、ループアンテナ11から入力される高周波電圧のN倍の直流電圧を生成でき、出力の向上が可能となる。さらに、N倍電圧全波整流回路50の構成では、1つ1つの構成素子(ダイオードやキャパシタ)に係る電力が分散される。そのため、N倍電圧全波整流回路50の構成では、高い高周波電力の入力の際に、構成素子が破壊されることなく、電力変換効率を向上させることができるため、好ましい。最適なN数は、電力変換装置1の利用用途によって適宜調整される。
【0049】
また、整流回路12を構成するダイオードは、TFTから構成された構造であればいかなるものでも良い。ここで、TFTは、絶縁性の高分子ポリマー基板および絶縁性の無機セラミックス基板上に形成された、少なくとも、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、ゲート絶縁層および半導体層から成るトランジスタを指す。代表的なTFTの例としては、絶縁性の高分子ポリマー基板上および絶縁性のセラミックス基板上に形成された、非晶質シリコン、多結晶シリコン、金属酸化物および有機半導体を半導体層に用いた電界効果型トランジスタが代表的なTFTの例であり、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイおよび電子ペーパ―のアクティブマトリクス回路に商用されている。
【0050】
図6は、整流回路12におけるダイオード接続されたTFTの断面図である。
図6に示すダイオード接続された電界効果型トランジスタ60は、ソース電極61、ドレイン電極62、ゲート電極63、絶縁層64、基板65および半導体層66を有する。ゲート電極63は、絶縁層64によりソース電極61と電気的に絶縁されており、ドレイン電極62とは、例えば配線により電気的に接続されている。半導体層66は、ソース電極61およびドレイン電極62の間に形成されている。
【0051】
図6に示すダイオード接続された電界効果型トランジスタ60は、いわゆるトップコンタクトボトムゲート型構造であるが、ボトムコンタクトトップゲート型、ボトムコンタクトボトムゲート型およびトップコンタクトトップゲート型等の他の構造でも良い。各電極、基板、絶縁層の材料は、いかなるものでも良く、それぞれ膜厚、幅などは任意である。各電極形成方法としては、特に制限はないが、上述のループアンテナ11の形成方法と同様の方法が利用できる。
【0052】
本発明における絶縁性の高分子ポリマー基板は、ポリエチレンテレフタラートやポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーなどの一般的なポリマーフィルムであればいかなるものでも良い。また、絶縁性の無機セラミックス基板は、ソーダライムガラスや無アルカリガラス、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス等の一般的なガラス基板であればいかなるものでも良い。
【0053】
絶縁層の形成方法としては、特に制限はないが、例えば、絶縁層を形成する材料を含む組成物を基板に塗布し、乾燥することで得られたコーティング膜を必要に応じ熱処理する方法が挙げられる。塗布方法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法が挙げられる。コーティング膜の熱処理の温度としては、100~300℃の範囲にあることが好ましい。
【0054】
半導体層の材料は、特に限定されず、単体半導体、化合物半導体、有機半導体、ナノカーボン材料等、何であっても良い。良好な電気特性や応答性の速さ、塗布形成による低コスト製造の観点から、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンといいたナノカーボン材料や有機半導体が好ましい。さらに、好ましい形状としては、材料消費が少なく経済的に良好な、膜厚が1μm以下の半導体層が挙げられ、より好ましい形態としては、機械的柔軟性に優れる100nm以下の半導体層が好ましい。
【0055】
半導体層の形成方法としては、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から、塗布法を用いることが好ましい。具体的には、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法等を好ましく用いることができ、塗膜厚み制御および配向制御等、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択できる。また、形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下でアニーリング処理を行ってもよい。
【0056】
また、半導体層の形成方法の調整から、整流回路のインピーダンス特性を調整することが可能である。例えば、インクジェット法により半導体層が形成される場合は、インクジェットのショット数を増やすことや、インク中の半導体層の材料の濃度を高めることなどにより、ダイオードの有するインピーダンス実部やリアクタンスを低減させたりすることができる。これにより、アンテナに最適な入力インピーダンスと、後段素子の入力インピーダンスに適した出力インピーダンスとになるよう適宜調整することで、電力変換装置の高出力化が可能である。
【0057】
TFTの物理形状に関して、ソース電極とドレイン電極の電極幅(TFTのチャネル幅)や電極間距離(TFTのチャネル長)、ゲート絶縁層の膜厚を調整することによって、インピーダンスを調整することが可能である。例えば、電極幅を増加させたり、電極間距離を縮小させたり、ゲート絶縁層を薄膜化することで、ダイオードのインピーダンス実部やリアクタンスを低減させたりすることができる。ただし、ダイオードの駆動限界周波数も変化するため、用途によって最適な形状を適宜選択すればよい。
【0058】
キャパシタは、一般的に使用されるものであればよく、用いられる材料、形状は特に限定されない。キャパシタの形成方法としては、特に制限はないが、例えば、上記の電極および絶縁層の形成方法と同一のものが挙げられる。また、各キャパシタの静電容量値は適宜選択すれば良い。
【0059】
整流回路12は、レギュレータ等を含む電源電圧制御回路をさらに備えていても良い。電源電圧制御回路は、整流回路12で整流された電圧を安定化させ、直流電源電圧を安定化させるものであり、回路構成、材料および形状等は、一般的に使用されるものであればいかなるものでも良い。
【0060】
以上説明した本実施の形態1によれば、ループアンテナ11が整流回路12と共振する周波数で、アンテナから空間への電力反射が抑制され、整流回路12に高周波電力が印加され、整流回路12がその高周波電力を直流電力に変換する。このとき、ループアンテナ11が受電する電磁波の1/8波長以上3/4波長以下であることから、高いQ値を示し、低い電力ロスで高い並列共振インピーダンスが得られる。このときの並列共振インピーダンスは、ループアンテナ11の並列リアクタンス成分と整流回路12の並列リアクタンス成分が共振したときのループアンテナ11側の並列インピーダンス実部を指す。この並列共振インピーダンスは、整流回路12とインピーダンス整合を可能とするほどの高いインピーダンスであり、その結果、整流回路12に高い高周波電力が印加され、より効率の高い直流電力の生成が可能となる。
【0061】
(実施の形態1の変形例1)
次に、実施の形態1の変形例1について説明する。
図7は、実施の形態1の変形例1に係る電力変換装置が備えるループアンテナ構造の例を示す模式図である。
【0062】
実施の形態1の変形例1に係る電力変換装置1は、上述した実施の形態1の円弧状(円環状)であるループアンテナ11に換えて、
図7に示すループアンテナ70に置き換えることができる。
図7に示すループアンテナ70の構造は、開口を有する矩形状(C字形状)をなす。ループアンテナ70の電気長は、受電する電磁波の1/8波長以上3/4波長以下の大きさである。ループアンテナ70は、アンテナ設計の上で、インピーダンスや周波数帯域などの調整のために、辺と辺とが交わる各角において、楕円や円弧状になっていてもよいし、直角形状となっていてもよい。
【0063】
以上説明した実施の形態1の変形例1によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0064】
(実施の形態1の変形例2)
次に、実施の形態1の変形例2について説明する。
図8は、実施の形態1の変形例2に係る電力変換装置の構造を示す模式図である。
【0065】
図8に示す電力変換装置10-1は、ループアンテナ11の円弧内(内側)に、整流回路12、後段素子13、接続配線14および接続配線15が基板16上に形成されてなる。
【0066】
以上説明した実施の形態1の変形例2によれば、ループアンテナ11内に整流回路12を配置することで、短い距離でループアンテナ11と整流回路12を接続することが可能となる。これにより、接続配線14から生じる電力ロスを低減することが可能となる。
【0067】
また、実施の形態1の変形例2によれば、ループアンテナ11内に回路を配置できるため、電力変換装置10-1の占める面積が、上述した実施の形態1に係る電力変換装置1の構造のような外側に形成されている場合に比べて、比較的小さくすることができるため、より省スペース化を図ることができる。
【0068】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図9は、本発明の実施の形態2に係る電力変換装置の構造を示す模式図である。
【0069】
図9に示す電力変換装置1aは、ループアンテナ11a、整流回路12a、後段素子13a、接続配線14a、接続配線15aおよび基板16aから構成されている。本実施の形態2においては、ループアンテナ11aの構成が異なる以外では、上述した実施の形態1に係る電力変換装置10と同様の形態が適用できる。このため、以下においては、詳細な説明を省略する。
【0070】
ループアンテナ11aの電気長は、受電する電磁波の1/8波長以上3/4波長以下の大きさである。また、ループアンテナ11aの形状は、同一平面の基板16aで並列に2つ接続されたアンテナ構造である。即ち、ループアンテナ2つの給電点を同様として縦方向に接続されている。整流回路12aは、中央の給電点を挟んだ中央に配置され、接続配線14aにより接続される。
【0071】
整流回路12a、および、接続配線15aを介して整流回路12の出力部に接続される後段素子13aは、
図9に示すようにループアンテナ11a内に形成されていてもよいし、ループアンテナ11aの基板16aの裏面に形成されていてもよい。
【0072】
以上説明した本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、ループアンテナ11aが上述した実施の形態1のループアンテナ11よりも実効面積が大きくアンテナ利得が高いことから高効率な受電が可能となる。これにより、電力変換装置10aの変換効率向上が可能となる。
【0073】
(実施の形態2の変形例1)
次に、本発明の実施の形態2の変形例1について説明する。
図10は、本発明の実施の形態2の変形例1に係る電力変換装置が備えるループアンテナ構造の例を示す模式図である。
【0074】
本発明の実施の形態2の変形例1では、上述した実施の形態2に係るループアンテナ11aに換えて、ループアンテナ100に置き換えることができる。
図10に示すループアンテナ100は、長方形を開いた形状(C字状)のループアンテナを2つ接続した構造をなす。ループアンテナ100を構成する単位ループアンテナの電気長は、受電する電磁波の1/8波長以上3/4波長以下の大きさである。
【0075】
アンテナ設計の上で、インピーダンスや周波数帯域などの調整のために、ループアンテナ100における辺と辺とが交わる各角において、楕円や円弧状になっていてもよいし、直角形状となっていてもよい。
【0076】
以上説明した本発明の実施の形態2の変形例1によれば、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0077】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
図11は、本発明の実施の形態3に電力変換装置10が備える整流回路を示す回路図である。
【0078】
本発明の実施の形態3に係る電力変換装置10は、
図11に示す回路構造の整流回路110を有する。即ち、実施の形態3に係る電力変換装置は、上述した
図1の整流回路12および
図9の整流回路12aを
図11の整流回路110に置き換えた構成となる。実施の形態3の電力変換装置においては、上述した
図1の整流回路12および
図9の整流回路12aと回路構成が異なる以外は、実施の形態1および実施の形態2に係る電力変換装置と同様の材料や構造を用いて構成することができる。
【0079】
図11に示す整流回路110は、整流に寄与する入力高周波電力を増やすために、回路を構成する各素子(ダイオード111a~111d、キャパシタ112a~112bおよびキャパシタ113)が高周波グラウンドに対して線対称となっている。即ち、ダイオードのアノード同士、あるいは、カソード同士が高周波グラウンドを境に対向する構成となる。ここで、高周波グラウンドとは、整流回路110に高周波電力が入力されたときに、高周波成分が仮想的に打ち消され、直流電位となる部分、あるいは、整流回路110の直流電力出力部分を指す。整流回路110は、回路構成を線対称とすることで、整流回路110の出力部で生じる、電圧揺らぎ、および、高調波成分の生成を抑えることができ、整流効率が向上する。これにより、電力変換装置10の効率が改善するため、
図11のような線対称の整流回路110の構成は、好ましい。
【0080】
以上説明した実施の形態3によれば、整流回路110は、整流に寄与する入力高周波電力を増やすために、回路を構成する各素子が高周波グラウンドに対して線対称となっているため、整流回路110の出力部で生じる、電圧揺らぎ、および、高調波成分の生成を抑えることができ、整流効率が向上する。これにより、電力変換装置10の効率か改善することができる。
【0081】
(実施の形態3の変形例1)
次に、本発明の実施の形態3の変形例1について説明する。
図12は、本発明の実施の形態3の変形例1に係る電力変換装置10が備える整流回路を示す回路図である。
【0082】
本発明の実施の形態に係る電力変換装置10は、
図12に示す整流回路120を有する。即ち、実施の形態3に係る電力変換装置は、上述した
図1の整流回路12および
図9の整流回路12aを
図11の整流回路110に置き換えた構成となる。実施の形態3の変形例1の電力変換装置においては、上述した
図1の整流回路12および
図9の整流回路12aと回路構成が異なる以外は、実施の形態1および実施の形態2に係る電力変換装置と同様の材料や構造を用いて構成することができる。
【0083】
図12に示す例の場合、整流回路120は、複数の整流回路110を入力端子A、Bに対して並列に接続した構成となっている。
【0084】
このように並列に接続することで、接続した数の分だけキャパシタ123-1から123-nまでに等分の電圧が生成され、整流回路の出力電圧を向上させることが可能となる。
【0085】
さらに、実施の形態3と同様に、高周波グラウンドに対して線対称であることから、出力部で生じる、電圧揺らぎや高調波成分の生成を抑えることができ、整流効率が向上する効果も得られる。
【0086】
ただし、本発明の電力変換装置をより広範な用途に展開する観点からは、整流回路110のような1群のみのブリッジ型の整流回路がより好ましい。この1群のみの構成によれば、整流回路の出力インピーダンスが低減し、後段素子の入力インピーダンスの自由度を向上させることが可能となる。これにより、後段素子が入力インピーダンスの低い構成であっても、高い電力を後段素子に入力することが可能となる。
【0087】
くわえて、ブリッジ型の整流回路においては、ループアンテナと共振する整流回路内の並列ダイオードの数が少ないことから、並列共振インピーダンスを高めることができる。これにより、高い電圧を整流回路に入力することが可能となり、電力変換効率を高めることができる。
【0088】
(その他の実施の形態)
上述のように、いくつか例を挙げて説明したが、本発明の実施の形態はこれらに限られることはない。単位構造のループアンテナの形状は、電気長が1/8波長以上3/4波長以下であれば、任意であり、並列に接続されていてもよい。また、本発明の電力変換装置は、様々な電子機器に搭載することができる。以下では、無線通信装置やセンサ、無線給電装置を具体的な実施の形態として例を挙げている。
【0089】
ループアンテナは、立体的に形成されていてもよい。例えば、ループアンテナ11が垂直面に端部が折り曲げられることで、平面状の面積を低減させることができる。
【0090】
また、ループアンテナ11と整流回路12は同一平面上に記載しているが、必ずしも同一平面上である必要はなく、立体的な位置関係になっていても構わない。例えば、ループアンテナ11が含まれる層の上に絶縁層、または絶縁基板が設けられ、その上に整流回路12が配置される構成などであってもよい。これにより、別基板上に形成したループアンテナ11と整流回路12を連結することが可能である。
【0091】
ただし、電力ロスを抑える目的から、ループアンテナ11、接続配線14、および、整流回路12の入力電極が、同層に形成されている電力変換装置ことが好ましい。ここで、本発明における「同層に形成されている」とは、それぞれの部材において、最も薄い部材の厚みの少なくとも半分以内の高さに存在している状態を指す。例えば、
図13に示すような電力変換装置10の断面形態が挙げられる。
【0092】
図13は、電力変換装置10が備えるループアンテナ11、接続配線14および整流回路12の入力部の断面模式図である。
図13に示すように、電力変換装置10のループアンテナ11から整流回路12の入力部の断面130は、配線131、キャパシタ132、および、ダイオード接続された電界効果型トランジスタ60aから形成されている。
【0093】
図13に示すダイオード接続された電界効果型トランジスタ60aは、ソース電極61a、ドレイン電極62a、ゲート電極63a、絶縁層64a、基板65aおよび半導体層66aを有する。また、このダイオード接続された電界効果型トランジスタ60aとキャパシタ132が整流回路12の入力部133に相当する。ここでは、配線131がループアンテナ11、接続配線14および整流回路12のキャパシタ132の下部電極を構成しており、ソース電極61aおよび絶縁層64aがキャパシタ132の上部電極と誘電体層をそれぞれ兼ねている。
【0094】
また、
図13に示す場合では、すべての構成部材が基板65a上に形成されている。この形態では、高周波入力経路134は、基板65aに対して垂直な方向への曲がり箇所がない。そのため、一般的に配線の曲がり角で生じる高周波電力の反射ロスや放射ロスなどを抑制した状態で、ループアンテナ11から整流回路12への高周波入力が可能となり、電力変換効率が向上する。ここでは、ダイオード接続された電界効果型トランジスタや同一基板上への形成を例に挙げたが、これらに制限されるわけではない。また、ループアンテナ11、接続配線14、および、整流回路12の入力電極が、同層に形成されていれば、上記以外の配線位置関係も含みうる。
【0095】
本発明の電力変換装置は、受電する電磁波の周波数に特に制限はないが、13.56MHz付近のHF(High Frequency)帯や~300MHz付近のVHF(Very High Frequency)帯に比べて、比較的小型な形状で形成可能であるUHF(Ultra High Frequency)帯を目的としたループアンテナがより好ましい。これにより、以下で説明する、無線通信装置やセンサ、無線給電装置などを小型携帯装置として形成することができる。
【0096】
なお、上記の実施の形態または変形例の構成図は、ここでは記載していないキャパシタ、抵抗、ダイオード、インダクタ、トランジスタなどの様々な素子や、それらを組み合わせた回路等をさらに含み得るものである。
【0097】
<無線通信装置>
本発明の電力変換装置を有する、本発明の実施の形態に係る無線通信装置について説明する。この無線通信装置は、例えば、商品タグ、万引き防止タグ、各種チケットやスマートカードのような、無線電波を用いて情報の通信を行う装置である。
【0098】
無線通信装置の構成としては、例えば、国際公開第2018/180146号に記載の無線通信装置が挙げられる。アンテナと整流回路を合わせた部分、あるいは、その一部に本発明の電力変換装置を用いることができる。
【0099】
本発明の電力変換装置は、整流回路部が低コストなTFT技術から成るため、より低コストに無線通信装置を供給することが可能となる。
【0100】
<センサ>
本発明の電力変換装置を有する、本発明の実施の形態に係るセンサについて説明する。このセンサは、例えば、ループアンテナ11の電気特性の変動から、整流回路12の出力電圧が変動することを利用した構成が挙げられる。
【0101】
具体的なセンサの構成としては、例えば、国際公開第2019/049758号に記載のセンサが挙げられる。アンテナと整流回路を合わせた部分、あるいは、その一部に本発明の電力変換装置を用いることができる。
【0102】
本発明の電力変換装置をセンサに用いることで、低コストなTFT技術により高性能なセンサを供給することが可能となる。
【0103】
<無線給電装置>
本発明の電力変換装置を有する、本発明の実施の形態に係る無線給電装置について説明する。この無線給電装置は、例えば、電子機器に搭載されており、室内の床や壁面に設置された電力供給装置から空間伝送により電子機器の充電が可能となる装置である。
【0104】
無線給電装置の構成としては、例えば、特許第6401231号に記載の無線給電装置が挙げられる。アンテナと整流回路を合わせた部分、あるいは、その一部に本発明の無線給電装置を用いることができる。
【実施例0105】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。各実施例と比較例における評価法を下記[1]に示す。
【0106】
[1]電力変換装置の出力評価
電波を受電するアンテナを備えた整流回路、すなわち、電力変換装置(後段素子には、負荷抵抗R=390kOhmを接続している)を1Wの空中線電力(750~1000MHzのUHF帯電波)を出力するリーダ/ライタの送信アンテナから距離1mに置き、その際の出力電圧をデジタルマルチメータ2700(ケースレー・インスツルメンツ社製)により、測定した。このとき、受電側に標準ダイポールを用いた場合の、受電力は、およそ6dBmであった。距離が1mより近くに電力変換装置が置かれる場合は、標準ダイポールが6dBmとなるように、送電電力を調整した。すなわち、電波による入力は同等であるため、電力変換装置から高い出力電圧が得られれば、高効率な変換が可能とされていることを意味する。また、電力変換装置のアンテナの向きは、最も利得が高い方向とした。また、本実施例におけるUHF帯電波は、750~1000MHzの電波を指し、以降の「受電波」とは、電力変換装置の出力が最も高くなる周波数を有する電波を指す。
【0107】
[2]アンテナの評価
本発明に係るループアンテナは、平衡系のアンテナであり、公知文献(X.Qing,C.K.Goh,Z.N.Chen,“Impedance Characterization of RFID Tag Antennas and Application in Tag Co-Design.”IEEE Trans.Microw.Theory Techn.5,1268-1274(2009))の手法によって、そのインピーダンス特性を評価した。この評価では、ベクトルネットワークアナライザMS46522B(アンリツ社製)を用いて、アンテナのSパラメータを測定し、Sパラメータから並列共振インピーダンスを算出した。また、室温大気中のUHF帯におけるアンテナの利得は、ソネット技研社製のソフトウェアLevel3 Gold Antennaにより解析し、導出した。
【0108】
(実施例1)
実施例1では、以下に示す材料群(1)~(3)を用いて、工程(4)によりTFTダイオードから成る整流回路を作製した。また、工程(5)によりループアンテナを作製した。工程(6)にて、整流回路とループアンテナを組み合わせることにより、電力変換装置を作製し、種々の評価を行った。
【0109】
(1)ゲート絶縁層材料の作製(絶縁層材料溶液A)
3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(SucSi)13.12g(0.05モル)、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(AcrSi)93.73g(0.40モル)およびフェニルトリメトキシシラン(PheSi)109.06g(0.55モル)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、沸点146℃)215.91gに溶解し、これに、水54.90g、リン酸0.864gを撹拌しながら加えた。得られた溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分を留出せしめた。次いで、バス温130℃で2時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水とメタノールからなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、固形分濃度26.0質量%のポリシロキサン溶液Aを得た。得られたポリシロキサン溶液Aを10gはかり取り、PGMEA0.83gを混合して、室温にて2時間撹拌し、ポリシロキサン溶液A(固形分濃度24質量%)を得た。
【0110】
次いで、ポリシロキサン溶液Aを10gはかり取り、DPHA(商品名「KAYARAD」、日本化薬(株)製;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を1.04g、OXE-01(商品名「イルガキュア」、BASF(株)製)を0.15gとPGMEA4.60gを混合して、室温にて2時間撹拌し、ネガ型感光性を有する絶縁層材料溶液A(固形分濃度23質量%)を得た。
【0111】
(2)電極材料の作製(感光性導電性ペーストA)
共重合比率(質量基準):エチルアクリレート(以下、「EA」)/メタクリル酸2-エチルヘキシル(以下、「2-EHMA」)/スチレン(以下、「St」)/グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」)/アクリル酸(以下、「AA」)=20/40/20/5/15。窒素雰囲気の反応容器中に、150gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「DMEA」)を仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのEA、40gの2-EHMA、20gのSt、15gのAA、0.8gの2,2’-アゾビスイソブチロニトリルおよび10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのGMA、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよび10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、カルボキシル基を有する化合物Aを得た。
【0112】
次いで、100mlクリーンボトルに、上記により得られた化合物Aを10g炭素-炭素二重結合を有する化合物であるライトアクリレートBP-4EA(共栄社化学(株)製)を1.5g、光重合開始剤OXE-01(BASFジャパン株式会社製)0.5g、γ-ブチロラクトン(三菱ガス化学株式会社製)を10g入れ、自転-公転真空ミキサー“あわとり練太郎”(登録商標)(ARE-310;(株)シンキー製)で混合し、感光性樹脂溶液22gを得た。得られた感光性樹脂溶液13.0gと、平均粒子径0.20μmのAg粒子30.0gとを混ぜ合わせ、3本ローラー“EXAKT M-50”(商品名、EXAKT社製)を用いて混練し、43gの感光性導電ペーストAを得た。
【0113】
(3)半導体材料の作製(半導体溶液A)
半導体溶液の作製では、まず、P3HT(アルドリッチ株式会社製、ポリ(3-ヘキシルチオフェン))を2.0mg含有するクロロホルム溶液(10ml)に、CNT(CNI社製、単層CNT、純度95%)を1.0mg加え、氷冷しながら、超音波ホモジナイザー(東京理化器械株式会社製、VCX-500)を用いて出力20%で4時間超音波撹拌した。これにより、CNT分散液A11(溶媒に対するCNT複合体濃度が0.96g/lのもの)を得た。
【0114】
つぎに、メンブレンフィルター(孔径10μm、直径25mm、ミリポア社製オムニポアメンブレン)を用いて、上記CNT分散液A11の濾過を行い、長さ10μm以上のCNT複合体を除去した。これによって得られた濾液に、o-DCB(和光純薬工業株式会社製)を5ml加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて、低沸点溶媒であるクロロホルムを留去し、これにより、溶媒をo-DCBで置換して、CNT分散液B11を得た。CNT分散液B11(1ml)に、o-DCBを3ml加え、これにより、半導体溶液A(溶媒に対するCNT複合体濃度が0.03g/lのもの)を得た。
【0115】
(4)TFTダイオードから成る整流回路の作製
実施例1では、
図1に示す電力変換装置10において、整流回路を構成するダイオードが、トップコンタクトボトムゲート構造のTFTから成るタイプの電力変換装置を作製した。
【0116】
以下では、具体的な整流回路の作製方法を説明する。まず、PETフィルム製の基板(幅35mm、長さ120mm、膜厚50μm)上に、抵抗加熱法により、銅を全面に真空蒸着した。その上にフォトレジスト(商品名「LC100-10cP」、ローム・アンド・ハース(株)製)をスリット塗布で全面印刷し、100℃で4分、熱風乾燥炉にて加熱乾燥した。作製したフォトレジスト膜を、ゲート電極がデザインされたフォトマスクを介して、露光量40mJ/cm2(波長365nm換算)で、全線露光を行った。フォトマスクにデザインされたゲート電極幅は50μmとした。露光した後、2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間現像し、次いで水で1分間洗浄した。その後、混酸(商品名SEA-5、関東化学(株)製)で30秒間エッチング処理した後、水で30秒間洗浄した。フォトレジスト剥離液(商品名AZリムーバ100、メルクパフォーマンスマテリアルズ(株)製)に2分間浸漬してレジストを剥離し、水で30秒間洗浄後、水滴をエアナイフで除去した。その後、80℃で60秒間、熱風乾燥炉にて加熱乾燥することで、ゲート電極を形成した。
【0117】
その後、ゲート絶縁層となるゲート絶縁層溶液Aをスピンコート塗布で印刷し、100℃で2分熱風乾燥炉にて加熱乾燥した。作製したゲート絶縁層膜を、フォトマスクを介して、露光量80mJ/cm2(波長365nm換算)で、全線露光した。露光した後、2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間現像し、次いで水で1分間洗浄し、ゲート絶縁層からコンタクトホール部分の電極を露出させた。その後、IR乾燥炉にて窒素雰囲気下150℃で10分間熱処理することによって、膜厚0.5μmのゲート絶縁層を形成した。
【0118】
上記のようにゲート絶縁層が形成された基板上において、ゲート電極に対する投影上に位置するゲート絶縁層上に、それぞれ100plの半導体溶液Aをインクジェット法で塗布し、IR乾燥炉で窒素気流下、150℃で30分間の熱処理を行うことによって半導体層を形成した。このとき、以下の工程(5)で得られるアンテナの並列共振インピーダンスと背流回路とがインピーダンス整合するように、インクジェットのショット数を調整した。
【0119】
つぎに、上記ゲート絶縁層が形成されたPETフィルム製の基板上に感光性導電性ペーストAをスクリーン印刷にて塗布し、熱風乾燥炉にて100℃で4分間プリベークを行った。その後、ソース電極、ドレイン電極がデザインされたフォトマスクを介して、露光量80mJ/cm2(波長365nm換算)で全線露光を行った。露光した後、0.5%のNa2CO3溶液で30秒間現像し、超純水で60秒間洗浄後、IR乾燥炉にて150℃で10分間キュアを行った。これにより、ソース電極、ドレイン電極を形成した。ソース電極およびドレイン電極の幅は250μmとし、これらの電極間の距離は10μmとした。
【0120】
図14は、実施例1で構成した整流回路を示す回路図である。
図14に示す整流回路140は、4倍電圧全波整流回路構成となっている。回路中のそれぞれの容量は、ゲート電極、ゲート絶縁層およびソース電極(もしくはドレイン電極)から構成された金属/誘電体/金属構造であり、10pF以上20pF以下の範囲となるようにそれぞれの電極面積を調整し、整流回路を形成する際に同時に作製した。最後に、PETフィルム製の基板上の複数の整流回路の内の1つを切り出した。
【0121】
(5)ループアンテナの作製
ループアンテナの作製では、まず膜厚18μmの銅箔テープCU-18C(スリーエム社製)をカッティングプロッタsilhouette CAMEO3(グラフテック社製)を用いて、配線幅が3mm(受電波の1/300波長以上1/60波長以下)であり、電気長がおよそ13.5cm(受電波の1/8波長以上3/4波長以下)である円弧状のループアンテナをくり抜いて形成した。次に、このループアンテナをPETフィルム製の基板(幅55mm、長さ100mm、膜厚50μm)の上に配置し、貼り付けた。
【0122】
(6)電力変換装置の作製と種々の評価
工程(4)で作製した整流回路の入力端子A、B(
図14を参照)に、工程(5)で作製した、配線幅が3mm(受電波の1/300波長以上1/60波長以下)であり、電気長がおよそ13.5cm(受電波の1/8波長以上3/4波長以下)である円弧状のループアンテナを、導電性銀ペーストCW220STP(Chemtronics社製)を用いて、接続間の電気長がおよそ0.1mmで接続し、出力端子C、D間には、前記の銀ペーストを用いて、390kΩのチップ抵抗を接続し、この出力端子C、D間の直流電圧を出力電圧として計測した。また、前記のアンテナの評価方法により、ループアンテナのUHF帯における利得と並列共振インピーダンスを求めた。さらに、その求めたインピーダンスとループアンテナへの入力電力を用いることで、整流回路への入力電圧を算出した。
【0123】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と全く同様にして形成された整流回路を用いており、ループアンテナの構造のみが異なる。実施例2では、配線幅が2mm(受電波の1/300波長以上1/60波長以下)であり、電気長がおよそ13.5cm(受電波の1/8波長以上3/4波長以下)であるループ構造を2つ含むループアンテナ(例えば
図9を参照)を用いて、電力変換装置を形成し、この出力部の電圧を計測した。また、実施例1と同様に、並列共振インピーダンスと整流回路への入力電圧を求めた。
【0124】
(実施例3)
実施例3では、ソース電極とドレイン電極の幅と電極間距離をそれぞれ500μmと6μmとしたことと、配線幅が12.8mm(受電波の1/60波長以上1/20波長以下)であり、電気長がおよそ13.4cm(受電波の1/8波長以上3/4波長以下)であるループアンテナを形成したこと以外、実施例1と全く同様にして、電力変換装置を形成し、この出力部の電圧を計測した。また、実施例1と同様に、利得、並列共振インピーダンスと整流回路への入力電圧を求めた。
【0125】
(実施例4)
実施例4では、ソース電極とドレイン電極間の距離を6μmとしたことと、配線幅が8mm(受電波の1/60波長以上1/20波長以下)、電気長がおよそ13.4cm(受電波の1/8波長以上3/4波長以下)であるループアンテナを形成したこと以外、実施例1と全く同様にして、電力変換装置を形成し、この出力部の電圧を計測した。また、実施例1と同様に、利得、並列共振インピーダンスと整流回路への入力電圧を求めた。
【0126】
(比較例1)
比較例1では、実施例1および実施例2と全く同様にして形成された整流回路を用いており、ループアンテナの構造のみが異なる。比較例1では、電気長がおよそ16.3cm(受電波の1/2波長)であるダイポールアンテナが整流回路の入力部に接続されており、この出力部の電圧を計測した。
表1に、実施例1、2および比較例1の電力変換装置の出力電圧を示す。表1中の「-」は未測定を表す。
【0127】
【表1】
表1のように、実施例1、3、4の単一構造のループアンテナを用いた電力変換装置では、比較例1のダイポールアンテナに比べて、出力電圧が向上した。さらに、実施例2のループ構造を2つ含むループアンテナを用いると、単一のループアンテナに比べて、出力電圧を向上させることができた。さらに、実施例1と実施例2では、実施例3と実施例4に比べて、ループアンテナの配線幅をより狭めることで、並列共振インピーダンスをより高めることができた。これにより、整流回路への入力電圧が比較的向上し、電力変換装置の出力電圧が向上した。
【0128】
以上、本発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、材料、および構成はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値、材料、および構成を用いてもよい。また、上述の実施の形態および実施例において挙げた材料や数値は、本発明の技術的思想の範囲内で適宜種々組み合わせることが可能である。