(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089670
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】水圧試験装置および水圧試験方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/12 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
G01M3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007133
(22)【出願日】2024-01-22
(62)【分割の表示】P 2022204843の分割
【原出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(72)【発明者】
【氏名】丸山 明男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸二
(72)【発明者】
【氏名】鹿山 進也
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 敏彰
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 克昌
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 智哉
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA12
2G067BB04
2G067CC02
2G067DD02
(57)【要約】
【課題】管端に対して所定の面積の接触領域を形成して管端の口を液密に封じることができる水圧試験装置および水圧試験方法を実現する。
【解決手段】水圧試験装置(1)は、管固定部(2)と、金属製のテーパ面(30)を管端に対向する部分に有した止水部(3)とを備え、止水部(3)は、管固定部(4)の押圧を受けることによって、管端における管内周面側の領域(107)および管外周面側の領域(108)のうちの一方を変形対象領域としてテーパ面(30)を当接させて変形させ、テーパ面(30)と前記変形対象領域との間に所定面積の接触領域を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水圧試験対象の管を管軸方向に押圧して所定の位置に固定する管固定部と、
前記管の管端と前記管固定部との間に配設された止水部であって、前記管の管軸に対して交差する方向に広がる金属製のテーパ面を前記管端に対向する部分に有した止水部と、
を備え、
前記止水部は、前記管固定部の押圧を受けることによって、前記管端における管内周面側の領域および管外周面側の領域のうちの一方を変形対象領域として前記テーパ面を当接させて変形させ、前記テーパ面と前記変形対象領域との間に所定面積の接触領域を形成する、
ことを特徴とする水圧試験装置。
【請求項2】
前記管を管軸に沿って切断して管軸に対して垂直方向に見た場合に、前記テーパ面が前記変形対象領域に当接を開始した時点で、前記テーパ面と、前記管端における管内周面側の領域および管外周面側の領域のうちで前記変形対象領域でない方との間には、隙間が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の水圧試験装置。
【請求項3】
前記管固定部は、
前記止水部が設置される第1面を含む連結部と、
前記テーパ面が前記管端の前記変形対象領域に沿うように、前記連結部の位置姿勢を調整する調整部と、
を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の水圧試験装置。
【請求項4】
前記調整部は、
前記連結部を前記管軸方向に沿って進退させる位置固定されたシリンダと、
前記シリンダによって進退するピストン部であって、先端部に回動可能に前記連結部を連結したピストン部と、
を有し、
前記変形対象領域に対して前記テーパ面が当接を開始することによって前記連結部が回動して姿勢が制御され、前記テーパ面が前記管端の口の全周に渡って前記変形対象領域と当接する、
ことを特徴とする請求項3に記載の水圧試験装置。
【請求項5】
水圧試験対象の管の管端に対し、前記管の管軸に対して交差する方向に広がる金属製のテーパ面を有した止水部を押圧することによって、前記管端における管内周面側の領域および管外周面側の領域のうちの一方を変形対象領域として前記テーパ面を当接させて変形させ、前記テーパ面と前記変形対象領域との間に所定面積の接触領域を実現する変形ステップと、
前記変形ステップ後の前記管に水を充填して圧をかける水圧負荷ステップと、
を含む、
ことを特徴とする水圧試験方法。
【請求項6】
前記変形ステップでは、前記変形対象領域に前記テーパ面を当接させる際に、前記テーパ面が前記管端の前記変形対象領域に沿うように、前記テーパ面の位置姿勢を調整する調整ステップを含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の水圧試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管の水圧試験を行う水圧試験装置および水圧試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道やガスの輸送用に用いられる管は、工場での製造後に様々な検査が行われ、これらの検査に合格した製品が完成品となる。検査の一つである耐水圧試験では、管の内部に水圧を負荷して外部への漏水の有無を確認する。例えば特許文献1に開示された耐水圧試験装置は、受口と挿口とを有する管に対して、受口側を位置固定の蓋体によって閉塞し、挿口側を硬質の蓋体の円錐面を接当させて閉塞する。このように両端を閉塞した状態の管内に圧力水を供給することによって、水圧試験が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の耐水圧試験装置は、管端の閉塞性(止水性)に課題がある。特許文献1の耐水圧試験装置は、管の挿口側に接当させる硬質の蓋体を、蓋体の挿口側とは反対側に設けられた弾性材を介して、シリンダ装置のラムによって加圧するだけであるため、蓋体の円錐面と管の挿口側の管端との接当領域は僅かな領域に限られてしまい、管端の形状によっては管端の口の全周にわたって均一に接頭しない虞がある。また、特許文献1の構成の場合、蓋体の挿口側とは反対側に弾性材が設けられているため、シリンダ装置による押圧力が十分に蓋体に伝わらず、止水性を十分に確保できない。また、シリンダ装置によって過度に押圧力をかければ、弾性材が潰れてしまう。
【0005】
そこで、本発明の一態様は、管端に対して所定の面積の接触領域を形成して管端の口を液密に封じることができる水圧試験装置および水圧試験方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る水圧試験装置は、水圧試験対象の管を管軸方向に押圧して所定の位置に固定する管固定部と、前記管の管端と前記管固定部との間に配設された止水部であって、前記管の管軸に対して交差する方向に広がる金属製のテーパ面を前記管端に対向する部分に有した止水部と、を備え、前記止水部は、前記管固定部の押圧を受けることによって、前記管端における管内周面側の領域および管外周面側の領域のうちの一方を変形対象領域として前記テーパ面を当接させて変形させ、前記テーパ面と前記変形対象領域との間に所定面積の接触領域を形成する。
【0007】
前記の構成によれば、止水部が、テーパ面を当接させて管端の変形対象領域を変形させることにより、テーパ面と変形対象領域との間に所定の面積の接触領域を形成することができるため、管端の口を液密に封じることができる。そのため、水圧試験において充水させた管に十分な水圧をかけることが可能となる。
【0008】
本発明の一態様に係る水圧試験装置は、前記の構成において、前記管を管軸に沿って切断して管軸に対して垂直方向に見た場合に、前記テーパ面が前記変形対象領域に当接を開始した時点で、前記テーパ面と、前記管端における管内周面側の領域および管外周面側の領域のうちで前記変形対象領域でない方との間には、隙間が形成されていてもよい。
【0009】
前記の構成によれば、前記テーパ面を、前記管端における限られた領域(前記変形対象領域)に当接させることができ、当接領域における面圧を高めて、止水性を向上させることができる。
【0010】
本発明の一態様に係る水圧試験装置は、前記の構成において、前記管固定部は、前記止水部が設置される第1面を含む連結部と、前記テーパ面が前記管端の前記変形対象領域に沿うように、前記連結部の位置姿勢を調整する調整部と、を有していてもよい。
【0011】
前記調整部を具備することにより、前記管端の端面が管径方向に対して傾斜しているような場合でも、前記テーパ面を管端の前記変形対象領域に沿わせることができ、前記テーパ面を前記変形対象領域に正確に当接させることができる。
【0012】
本発明の一態様に係る水圧試験装置は、前記の構成において、前記調整部は、前記連結部を前記管軸方向に沿って進退させる位置固定されたシリンダと、前記シリンダによって進退するピストン部であって、先端部に回動可能に前記連結部を連結したピストン部と、を有し、前記変形対象領域に対して前記テーパ面が当接を開始することによって前記連結部が回動して姿勢が制御され、前記テーパ面が前記管端の口の全周に渡って前記変形対象領域と当接するようにしてもよい。
【0013】
前記の構成により、前記変形対象領域に対して前記テーパ面が当接することによって前記連結部が回動して姿勢が制御され、前記テーパ面が前記管端の口の全周に渡って前記変形対象領域と当接する。これにより、試験作業員の目視による管端の口と止水部の位置調整作業が不要となり、シリンダを制御するという簡易な操作のみで、前記テーパ面を前記変形対象領域に正確に当接させることができる。
【0014】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る水圧試験方法は、水圧試験対象の管の管端に対し、前記管の管軸に対して交差する方向に広がる金属製のテーパ面を有した止水部を押圧することによって、前記管端における管内周面側の領域および管外周面側の領域のうちの一方を変形対象領域として前記テーパ面を当接させて変形させ、前記テーパ面と前記変形対象領域との間に所定面積の接触領域を実現する変形ステップと、前記変形ステップ後の前記管に水を充填して圧をかける水圧ステップと、を含む。
【0015】
前記の構成によれば、止水部が、テーパ面を当接させて管端の変形対象領域を変形させることにより、テーパ面と変形対象領域との間に所定の面積の接触領域を形成することができるため、管端の口を液密に封じることができる。そのため、水圧試験において充水させた管に十分な水圧をかけることが可能となる。
【0016】
本発明の一態様に係る水圧試験方法は、前記の方法において、前記変形ステップでは、前記変形対象領域に前記テーパ面を当接させる際に、前記テーパ面が前記管端の前記変形対象領域に沿うように、前記テーパ面の位置姿勢を調整する調整ステップを含むようにしてもよい。
【0017】
前記調整ステップを含むことにより、前記管端の端面が管径方向に対して傾斜しているような場合でも、前記テーパ面を管端の前記変形対象領域に沿わせることができ、前記テーパ面を前記変形対象領域に正確に当接させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、テーパ面と管端の変形対象領域との間に所定の面積の接触領域を形成することができるため、管端の口を液密に封じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態1に係る水圧試験装置の主要部分の構成を示す側面図である。
【
図2】
図1の水圧試験装置の止水部におけるテーパ面が形成されている側の主面の斜視図である。
【
図3】
図2の切断線A-A´における矢視断面図である。
【
図4】
図1の水圧試験装置の止水部のテーパ面によって管端の管内周側の領域が押圧変形している様子を示した拡大部分断面図である。
【
図5】
図1の水圧試験装置における連結部の位置姿勢の制御機構を説明する図である。
【
図6】
図1の水圧試験装置を用いた実施形態1の水圧試験方法の処理フローを示すフロー図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係る水圧試験装置の主要部分の構成を示す側面図である。
【
図8】本発明の実施形態3に係る水圧試験装置に具備される止水部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態1〕
以下、本発明の水圧試験装置の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態の水圧試験装置1によって管100の両端がクランプされている状態において、管100の挿し口側の様子を示す図である。なお、図面には、必要に応じて、基準軸(管100の管軸100C、後述のシリンダ50によるピストン部51の進退方向)をX軸とし、水平面をXY平面に定め、鉛直方向をZ軸としたXYZ系の三次元座標を併せて示す。
図1は、水圧試験装置1をY軸正方向に見た側面図であると言える。なお、
図1は、説明の便宜上、管100はX軸に沿った断面視で示している。
【0021】
<水圧試験対象の管>
図1に示す水圧試験装置1によって試験される対象となる管100は、例えば水道用管等として利用されるダクタイル鋳鉄管であってよい。ダクタイル鋳鉄管は、鉄管同士を連結する際に、或る鉄管の一端部に設けられた受口に、別の鉄管の他端部に設けられた挿し口を挿入する態様をとることができる。そして、この連結にあたり、鉄管の受口の内面には、連結のための段部や、管同士の水密性確保手段(ゴム輪)装着のための段部や環状溝の凹凸形状を有するものがある。ただし、管100は、受口を有さず、両端が挿し口になっている鉄管でもよい。なお、
図1に示す水圧試験装置1を、管の受口側の閉塞に用いることも可能である。
【0022】
管100は、図示しない管支持装置によって、管軸100Cが略水平になるよう支持さ
れる。なお、この管支持装置も、
図1に示す水圧試験装置1の構成要素としてもよい。
【0023】
<水圧試験装置1>
水圧試験装置1は、管固定部2と、止水部3とを備える。
【0024】
管固定部2は、管100の挿し口100A側を管軸方向(管軸100Cに沿った方向)に押圧して、管100を所定の位置に固定する。ここで、
図1に示す管固定部2は、挿し口100A側から管を固定する手段であるが、管100の受口側(不図示)には、管固定部2による管100の押圧を受ける手段、あるいは、管固定部2の押圧方向に対して反対方向に管100を押圧する手段が設けられている。これにより、いわゆるクランプの態様で管100を挟んで固定することができる。
【0025】
管固定部2は、連結部4と、連結部4の位置姿勢を調整する調整部5とを有する。連結部4は、止水部3が設置される第1面4aを含む。調整部5は、位置固定されたシリンダ50と、シリンダ50によって進退するピストン部51とを有し、ピストン部51の先端部51aに連結部4が連結されている。これにより、調整部5は、連結部4を管軸方向に沿って進退させる。調整部5および連結部4については、後述する。
【0026】
止水部3は、管100の管端と管固定部2との間に配設されている。止水部3は、連結部4の第1面4aに当接する背面31と、背面31の反対側に位置する主面32とを有する。主面32は、管100の管端に対向する面である。背面31と主面32とは共に、基本姿勢においてYZ平面に平行な面である。基本姿勢とは、管100を押圧していない状態の姿勢である。
【0027】
図2は、止水部3を主面32側から見た図である。
図2に示すように、止水部3は、主面32上に、環状に形成された凸部33を有している。環状の凸部33は、
図1および
図2に示すように主面32からX軸負方向に突出しており、環状の凸部33における、管100の挿し口100A側の管端に対向する部分に、テーパ面30が設けられている。要するに、テーパ面30も、主面32上に、環状に形成されている。なお、本実施形態では、主面32から突出した凸部33にテーパ面30を設けた態様としているが、凸部33に代えて主面32に凹部を設け、凹部における管100の挿し口100A側の管端に対向する部分に、テーパ面を設ける態様であってもよい。
【0028】
テーパ面30は管100の管軸100Cに沿った軸に対して交差する方向に広がる面である。
図1には、テーパ面30の面に沿った仮想線を破線で示しており、管奥に向かって延長させて示している。この破線は、管軸100Cに対して交差している。また、
図1において、管軸100Cの位置を挟んで両端に示されているテーパ面30の面に沿った破線同士を、管奥に向かって延長させると、その交点Rは、管軸100C上の、テーパ面30よりも管奥寄りに位置する。
【0029】
テーパ面30は、金属製であり、且つ、管100よりも硬度が高い金属で構成されている。テーパ面30を構成する金属は、SS材(一般構造用圧延鋼材)、S45C(機械構造用炭素鋼)等とすることができる。
【0030】
止水部3は、管固定部2の押圧を受けて、管100の管端にテーパ面30を接触させる。テーパ面30は、このとき、管100の挿し口100A側の管端101における管内周面側の領域107(変形対象領域107)に当接する。これについて、
図3および
図4を用いて説明する。
【0031】
図3は、止水部3のテーパ面30が、管100の管端に当接している状態を、管軸100Cに沿って切断して管軸に対して垂直方向に見たときの拡大断面図である。
図3には、囲みを付して示した部分の更なる拡大断面図も併せて示す。
図3は、止水部3のテーパ面30が、管100の管端に対して当接を開始した時点の状態を示している。
図3の状態において、テーパ面30は、管端101の管内周面側の領域107(変形対象領域107)に当接している。この状態で、テーパ面30は、管固定部2の押圧により、管内周面側の領域107(変形対象領域107)を、所定の圧力で押圧する。テーパ面30は、管100よりも硬度が高い金属で構成されているため、管内周面側の領域107(変形対象領域107)に当接した状態でX軸負方向への押圧をかけ続けることにより、管内周面側の領域107を変形させる。
【0032】
図3に示す当接初期段階では、テーパ面30と、管端101における管外周面側の領域108(変形対象領域でない方)との間に、隙間500が形成されている。これにより、テーパ面30による押圧力が、管内周面側の領域107に集中してかかることを意味する。換言すれば、テーパ面30は、管外周面側の領域108との間に隙間500を形成し、管内周面側の領域107に押圧力をかけることができるように、管100の管端101の端面102に対して傾斜を有していると言える。水圧試験装置1によって水圧試験される管100の管端の端面102は、概して管軸100Cに対して垂直に広がっている。そのため、先述した方向に広がるテーパ面30は、管端101の端面102における管内周面側の領域107のみに当接する。このように管端101の端面102全域に接触せず、端面102のうちの限られた領域(管内周面側の領域107)に接触するテーパ面30を具備することにより、当接領域における面圧を高めることができる。これにより、水圧試験装置1によって水圧試験を行う際に、管100に対する止水性を向上させることができる。
【0033】
テーパ面30と、管端101における管外周面側の領域108との間に形成される隙間500の大きさについては、特に制限はない。
【0034】
図4は、
図3の状態から当接した状態での押圧が進み、テーパ面30が、管100の管端における管内周面側の領域107を変形させている状態を示している。
図4は、
図3の中の部分拡大図に対応する箇所を示している。
図4中、変形している箇所をGで示す。管内周面側の領域107は、
図4に示すように、管100内に向かって変形しており、テーパ面30が管内周面側の領域107に対して十分な押圧力をかけて当接し、管端101の口が液密に封じられている。
【0035】
ところで、水圧試験装置1は、管100の製造工程の途中の一工程において管が規定の強度を有するかを確認するために用いられる。管100は、水圧試験装置1に供される前の鋳造段階で形成される長尺の管体を、所定の長さに切断加工された管である。この切断加工では、切断端面、すなわち管100の管端の端面に相当する部分が、必ずしも管軸に垂直に広がる面になるとは言えない。例えば、
図1において、管軸100Cを基準にして、管軸100CよりもZ軸正方向側にある端面と、管軸100CよりもZ軸負方向側にある端面とが、Z軸に沿った線上に位置していない場合がある。あるいは、管100が何らかの理由で斜めに支持されて、管軸100Cと、水圧試験装置1の進退方向に沿った軸とが平行にならない場合がある。本実施形態の水圧試験装置1は、そのような場合でも止水部3のテーパ面30が、管端の口の全周にわたって管内周面側の領域107に当接し、変形させることができる機構を、管固定部2の調整部5および連結部4が有している。以下、調整部5および連結部4について説明する。
【0036】
調整部5は、テーパ面30が、管端の変形対象領域107に沿うように、連結部4の位置姿勢を調整する。具体的には、
図5に示すように、調整部5は、ピストン部51の先端部51aに、連結部4を回動可能に連結している。これにより、変形対象領域107に対してテーパ面30が当接を開始することによって連結部4が回動して姿勢が制御され、テーパ面30が管端101の口の全周に渡って変形対象領域107と当接する。
【0037】
より詳細に説明すると、ピストン部51の先端部51aには、球面座55が設けられている。また、連結部4にも、ピストン部51の球面座55に対して回動自在に連結する球面座44を有している。これにより、管100の変形対象領域107の一部にテーパ面30が当接したことによる反力によって、連結部4の第1面4aが押し込まれる一方で、シリンダ50がピストン部51を介して連結部4を押圧し続けることに伴って、連結部4は、球面座44を中心に回動する。これにより、テーパ面30を、管端の口の全周に渡って変形対象領域107と当接させることができる。一例として、調整部5は、連結部4が回動して姿勢が制御されることによって、管端101の端面102と、止水部3の主面32とを平行にする。
【0038】
水圧試験装置1は、
図5に示すように、連結部4の下部に車輪6を具備している。車輪6は、シリンダ50によるピストン部51の前後動に倣って、図示しない床面を動く構成となっている。なお、車輪6自体は移動を拘束されない態様であるため、方向を問わず床面を動くことが出来る他、仮に連結部4が球面座44、55によってZ軸正方向に回動した場合には、車輪6が床面から浮く構成となっている。
【0039】
なお、水圧試験装置1は、連結部4が車輪を具備する態様に限らない。例えば、水圧試験装置1の天頂側から連結部4、より具体的には第1面4aを有する面板部分を吊り下げる態様であってもよい、この態様であっても、連結部4は、本実施形態と同様に球面座44、55を中心に回動可能である。
【0040】
以上のように連結部4を回動可能に構成する上では、連結部4は軽量であることが望ましい。そこで、水圧試験装置1は、
図3に示すように、止水部3の主面32側が、断面図において管軸100Cに沿った軸寄りに位置する中央領域39において、主面32から突出していない構造となっている。すなわち、該中央領域39を囲むように、環状に、主面32から突出した凸部33が設けられている。このように中央領域39が突出しておらず、テーパ面30を設ける部分だけを突出させることにより、連結部4自体を軽量にしている。
【0041】
<水圧試験装置1における管100の受口側の構成>
水圧試験装置1における管100の受口側の構成について以下に説明する。
【0042】
水圧試験装置1は、管100を、管軸方向を水平にした状態(管軸100CをX軸に平行にした状態)で挿し口側を上述の止水部3によって止水し、受口側を別の止水機構によって止水し、管の両端が密閉された状態で、受口側から管100内に圧力水を供給して、水圧試験を行う。圧力水を受口側から管100内に供するために、受口側に構成される止水機構には、貯水槽の水を管100に導入するための充水パイプが接続されていてよい。管100の水圧試験自体は、従前と同様の方法を採用することができ、検査員による目視での判別、水圧計による計測値に基づく判定などによって行うことができる。
【0043】
<水圧試験装置1を用いた水圧試験方法>
水圧試験装置1を用いた水圧試験方法としては、
図6に示す処理フローに従って行う。まず、ステップS1の当接ステップである。ステップS1では、管100(
図1)の管端に対し、管100の管軸に対して交差する方向に広がる金属製のテーパ面30を有した止水部3を押圧することによって、管端における管内周面側の領域107(変形対象領域)に前記テーパ面30を当接させる。これについては上述しているため、ここでの説明は省略する。
【0044】
次に、ステップS2の調整ステップでは、ステップS1に続いて、テーパ面が前記管端の前記変形対象領域に沿うように、テーパ面30の位置姿勢を調整する。調整は、先述したように調整部5によって行うことができる。
【0045】
そして、次のステップS3の変形ステップでは、ステップS2において位置姿勢が調整されたテーパ面30によって、
図3に示したように変形対象領域107を変形させて、テーパ面30と変形対象領域107との間に所定の面積の接触領域を実現する。
【0046】
そして、上述のステップS1~S3によって管100の挿し口側が液密に封じられ、これとほぼ同時に受口側も液密に封じられた状態で、次のステップS4の水圧負荷ステップにおいて、管に水を充填して圧をかけ、水圧試験を行う。
【0047】
以上のように本実施形態の水圧試験装置1を用いれば、止水部3が、テーパ面30を当接させて管端の変形対象領域107を変形させることにより、テーパ面30と変形対象領域107との間に所定の面積の接触領域を形成することができるため、管端の口を液密に封じることができる。そのため、水圧試験において充水させた管に十分な水圧をかけることが可能となる。
【0048】
ここで、本実施形態の比較対象として、本実施形態の止水部3とは異なり管端101の口を封じる部材がテーパ面を有しておらず、挿し口側の管端の端面と平行な面を有している場合を仮定する。この場合、当該平行な面を管端の端面に当接させた際に、変形対象領域107に当接する場合に比べて、面圧が十分に高くならない。そのため、管と止水部との密着性が悪く、十分な止水性を得ることができない。これに対して、本実施形態では、テーパ面によって管端の非常に限られた領域である変形対象領域107のみに当接する。このため、面圧を十分に高く実現でき、管と止水部との密着性を高めることに寄与できる。また、別の比較対象として、本実施形態と同様に止水部にはテーパ面と同じ構造のものがある、テーパ面が管の材質よりも硬度が低い材料によって構成されている場合を仮定する。この場合、テーパ面が潰れない程度でのみ、管端にテーパ面を押圧することになることから、十分な密着性を実現することができない。これに対して、本実施形態の場合には、テーパ面が金属製であり、管端の変形対象領域107を変形させることができることから、十分な密着性を実現することができる。
【0049】
〔実施形態2〕
【0050】
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0051】
図7は、本実施形態の水圧試験装置1Aを管軸100Cに沿って切断してY軸正方向に見た断面図である。水圧試験装置1Aは、止水部3Aのテーパ面30Aが、管100の管端101の管外周面側の領域108に当接して、管外周面側の領域108を変形させる態様である点において、上述の実施形態1の水圧試験装置1と異なる。
【0052】
テーパ面30Aは、管100の管軸100Cに沿った軸に対して交差する方向に広がる面である。
図7には、テーパ面30の面に沿った仮想線を破線で示しており、管100の管軸100Cに沿った軸に交差するまで延長させて示している。
図7において、管軸100Cの位置を挟んで両端に示されているテーパ面30Aの面に沿った破線の交点RAは、管軸100C上の、テーパ面30Aよりも管100から離れた側に位置する。
【0053】
図7には、テーパ面30Aと、管端101の管外周面側の領域108との当接初期段階での当接の様子を部分拡大図で示している。当接初期段階においては、テーパ面30Aと、管内周面側の領域107との間には、隙間500が設けられている。テーパ面30Aが管外周面側の領域108に当接して押圧をかけ続けることによって、管外周面側の領域108は管の外側に向かって変形し、管外周面側の領域108側において、テーパ面30Aが高い密着性で管端の口を封じることができる。本実施形態の場合も、連結部4の位置姿勢が制御されるため、管端の口を全周に渡って封じることができ、高い止水性を実現できる。
【0054】
〔実施形態3〕
【0055】
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0056】
図8は、本実施形態の水圧試験装置に設けられた止水部3Bについて、
図3および
図5と同様に断面視した図である。なお、図面の関係上、管固定部2等の構成は図示を省略する。
【0057】
止水部3Bは、管軸100Cに沿った軸を中心として同心円状に径が互いに異なる複数の環状の凸部33C1,33C2,33C3,33C4が設けられており、そのそれぞれの凸部にテーパ面が形成されている。すなわち、環状の凸部33C1にテーパ面30C1が設けられ、環状の凸部33C2にテーパ面30C2が設けられ、環状の凸部33C3にテーパ面30C3が設けられ、環状の凸部33C4にテーパ面30C4が設けられている。このように複数のテーパ面を、管軸100Cを中心に、同心円状に配設することにより、管径が互いに異なる複数の管100(1),100(2),100(3),100(4)に共通して止水部3Cを使用することができる。
【0058】
ここで、
図1に示す止水部3においてテーパ面30が、
図1の交点Rに向かって更に広がって形成されている場合であっても、管径が互いに異なる複数の管の各々の変形対象領域107に当接できる。しかしながら、この場合、管毎に管端の位置がX軸に沿って異なることになり、シリンダ50による連結部4の位置制御が複雑になる。これに対し、本実施形態のように、複数のテーパ面がZ軸に沿って並んでいる態様とすることにより、シリンダ50による連結部4の位置制御が容易になる。
【0059】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1、1A 水圧試験装置
2 管固定部
3、3A、3B、3C 止水部
4 連結部
5 調整部
6 車輪
30、30A、30C1、30C2、30C3、30C4 テーパ面
31 背面
32 主面
33、33C1、33C2、33C3、33C4 凸部
39 中央領域
44、55 球面座
50 シリンダ
51 ピストン部
51a 先端部
100 管
100C 管軸
101 管端
102 端面
107 管内周面側の領域(変形対象領域)
108 管外周面側の領域
500 隙間