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特開2024-89681プレスライン制御装置、プレスラインシステム、プレスライン制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089681
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】プレスライン制御装置、プレスラインシステム、プレスライン制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B21J 13/02 20060101AFI20240627BHJP
   B21K 29/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B21J13/02 M
B21K29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205014
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】大西 城輝
(72)【発明者】
【氏名】川上 雅史
(72)【発明者】
【氏名】田幡 諭史
(72)【発明者】
【氏名】仁木 健人
【テーマコード(参考)】
4E087
【Fターム(参考)】
4E087CA11
4E087CB01
4E087CB02
4E087DB15
4E087DB22
4E087EA12
4E087EA15
4E087EB03
4E087EB07
4E087FB06
4E087GA09
4E087GA20
(57)【要約】
【課題】材料の加熱工程を有するプレスラインシステムにおいて省エネルギー化を図る。
【解決手段】プレスライン制御装置は、鍛造プレスの鍛造エネルギーに関する測定値に基づいて、成形前及び成形中の一方又は両方における材料温度に関する制御を行う(ステップS1~S4)。プレスラインシステムは、鍛造プレスと、材料を加熱するヒータ装置と、を少なくとも含み、前記鍛造プレスの鍛造エネルギーに関する測定値に基づいて、成形前及び成形中の一方又は両方における材料温度に関する制御を行う(ステップS1~S4)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍛造プレスの鍛造エネルギーに関する測定値に基づいて、成形前及び成形中の一方又は両方における材料温度に関する制御を行うプレスライン制御装置。
【請求項2】
前記鍛造プレスの鍛造エネルギーが仕様値に近づくように前記材料温度に関する制御を行う、
請求項1記載のプレスライン制御装置。
【請求項3】
前記鍛造プレスと、前記成形前及び前記成形中の一方又は両方において材料を加熱するヒータ装置とを備えたプレスラインシステムを制御する請求項1に記載のプレスライン制御装置であって、
前記測定値に基づいて前記ヒータ装置の加熱温度を制御する、
請求項1記載のプレスライン制御装置。
【請求項4】
前記測定値に基づいて前記ヒータ装置の目標温度又は駆動パラメータを制御する、
請求項3記載のプレスライン制御装置。
【請求項5】
前記測定値は、鍛造エネルギー自体の測定値、又は、鍛造エネルギーと相関する物理量の測定値である、
請求項1記載のプレスライン制御装置。
【請求項6】
複数の装置を含んだプレスラインシステムを制御する請求項1記載のプレスライン制御装置であって、
前記複数の装置には、前記鍛造プレスと、材料を加熱するヒータ装置とが少なくとも含まれ、
前記複数の装置各々の消費エネルギー、あるいは、前記複数の装置の合計の消費エネルギーを表示する、
プレスライン制御装置。
【請求項7】
鍛造プレスと、材料を加熱するヒータ装置と、を少なくとも含み、
前記鍛造プレスの鍛造エネルギーに関する測定値に基づいて、成形前及び成形中の一方又は両方における材料温度に関する制御を行うプレスラインシステム。
【請求項8】
鍛造プレスの鍛造エネルギーに関する測定値に基づいて、成形前及び成形中の一方又は両方における材料温度に関する制御を行うプレスライン制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、
鍛造プレスの鍛造エネルギーに関する測定値に基づいて、成形前及び成形中の一方又は両方における材料温度に関する制御を行う手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスライン制御装置、プレスラインシステム、プレスライン制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヒータ装置と鍛造プレスとを有する熱間鍛造又は温間鍛造のプレスラインシステムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-286975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱間鍛造又は温間鍛造を行うプレスラインシステムでは、ヒータ装置で加熱エネルギーが消費され、鍛造プレスで駆動エネルギーが消費される。従来のプレスラインシステムでは、必要以上に大きなエネルギー消費されていると考えられた。
【0005】
本発明は、材料の加熱工程を有するプレスラインシステムにおいて省エネルギー化を図ることのできるプレスライン制御装置、プレスラインシステム、プレスライン制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプレスライン制御装置は、
鍛造プレスの鍛造エネルギーに関する測定値に基づいて、成形前及び成形中の一方又は両方における材料温度に関する制御を行う。
【0007】
本発明に係るプレスラインシステムは、
鍛造プレスと、材料を加熱するヒータ装置と、を少なくとも含み、
前記鍛造プレスの鍛造エネルギーに関する測定値に基づいて、成形前及び成形中の一方又は両方における材料温度に関する制御を行う。
【0008】
本発明に係るプレスライン制御方法は、
鍛造プレスの鍛造エネルギーに関する測定値に基づいて、成形前及び成形中の一方又は両方における材料温度に関する制御を行う。
【0009】
本発明に係るプログラムは、
コンピュータを、
鍛造プレスの鍛造エネルギーに関する測定値に基づいて、成形前及び成形中の一方又は両方における材料温度に関する制御を行う手段として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、材料の加熱工程を有するプレスラインにおいて省エネルギー化を図ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るプレスラインシステムを示す構成図である。
図2】プレスラインシステムの制御系の構成を示すブロック図である。
図3】連携制御装置が実行する実施形態1の制御処理を示すフローチャートである。
図4】連携制御装置が実行する実施形態2の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るプレスラインシステムを示す構成図である。
【0013】
本実施形態に係るプレスラインシステム10は、加熱工程において材料Hを加熱するヒータ装置100と、材料Hを塑性変形させる鍛造プレス200と、材料Hの成形後の処理を行う後工程装置300とを備える。プレスラインシステム10は、加熱した材料Hを塑性変形させて成形する熱間鍛造又は温間鍛造を行うシステムである。図1中の白矢印は材料Hの移送方向を示す。
【0014】
鍛造プレス200には、上金型21及び下金型22を有する金型20が設置される。鍛造プレス200は、金型20に材料Hを挟んだ状態で、金型20に圧力が加えられることで、材料Hに荷重を及ぼし、材料Hを塑性変形させ、材料Hを成形する。材料Hは例えば金属である。
【0015】
図1の鍛造プレス200は、モータを含んだ駆動機構203によって動力を発生させる機械式プレスである。具体的な一例として、鍛造プレス200は、上金型21が支持されるスライド201と、下金型22を支持する支持台(例えばベッド及びボルスタ)202と、スライド201を昇降駆動する駆動機構203と、これらを支持するフレーム210とを備える。フレーム210は、駆動機構203を支持する上フレーム(例えばクラウン)211と、上フレーム211と支持台202とを締結するサイドフレーム(例えばタイロッドを含んだアプライト)212と、を備える。サイドフレーム212には荷重に応じた歪みが生じることから、歪みセンサにより歪み量を検出することで荷重を測定できる。
【0016】
駆動機構203は、モータとフライホイールとクラッチブレーキとを有し、モータの駆動によりフライホイールに回転エネルギーを蓄積し、当該蓄積した回転エネルギーを用いてスライド201を降下させる。あるいは、駆動機構203は、サーボモータと減速機とを有し、サーボモータが発生しかつ減速機で増幅されたトルクをスライド201の進退動作に変換する構成であってもよい。
【0017】
あるいは、鍛造プレス200は、流体圧(例えば液体圧)によって動力を発生させる流体圧式プレスであってもよい。この場合、ポンプによって圧力が加えられた流体がシリンダピストン(ラムピストンを含む)に供給され、ピストンに固定されたスライドが進退することで、金型20間の材料Hに荷重が及ぼされる。
【0018】
鍛造プレス200には、鍛造エネルギーの仕様値が定められている。当該仕様値とは、鍛造エネルギーの推奨範囲における最大値を意味する。仕様値は、鍛造プレス200のマニュアル等に示される。鍛造エネルギーとは、1回の成形期間(スライド201から材料Hに荷重が加えられる期間)の総エネルギーを意味してもよいし、1回の成形期間中に発生する荷重のピーク値を意味してもよい。
【0019】
ヒータ装置100は、鍛造プレス200の前段で、成形前の材料Hを加熱する装置である。ヒータ装置100は、例えば、材料Hを搬送路に沿って移動させる搬送部110と、搬送路に沿って材料Hに熱を加える加熱炉120とを備える。加熱炉120は、例えば誘導加熱によって材料Hを加熱するが、加熱方式はどのような方式が採用されてもよい。材料Hが加熱炉120を通過する時間、すなわち、1つの材料Hの加熱時間は、鍛造プレス200の1回の処理サイクルよりも長い。そのため、ヒータ装置100には、複数の材料Hが順々に導入され、鍛造プレス200の処理サイクルに合わせて、加熱された材料Hがヒータ装置100から順々に導出される。
【0020】
ヒータ装置100は、目標温度が設定される設定部を有し、材料Hが目標温度になるように加熱炉120が駆動される。すなわち、ヒータ装置100は、材料Hの温度を検出しつつ、温度が目標温度になるように材料Hの加熱量を調整する。当該構成の場合、目標温度の設定値を変えることで、材料Hの加熱温度が変化する。ヒータ装置100は、あるいは、加熱炉120の駆動パラメータ(例えば誘導加熱の電流値)が設定変更可能に構成されてよい。この場合、駆動パラメータが変更されることで、材料Hの加熱温度が変化する。
【0021】
後工程装置300は、例えば、成形後の材料Hを輸送するベルトコンベアである。後工程装置300は、成形後の材料Hに何らかの処理を行う装置であれば、どのような装置であってもよい。
【0022】
ヒータ装置100と鍛造プレス200との間、並びに、鍛造プレス200と後工程装置300との間には、例えばアーム及び把持機構を有する図示略の送り装置が設けられ、材料Hを上記の間で移送する。
【0023】
<制御系の構成>
図2は、プレスラインシステムの制御系の構成を示すブロック図である。プレスラインシステム10は、さらに、プレスラインシステム10の各構成要素を制御するプレスライン制御装置40を備える。プレスライン制御装置40は、ヒータ装置100を制御するヒータ制御装置140と、鍛造プレス200を制御するプレス制御装置240と、後工程装置300を制御する後工程制御装置340と、鍛造プレス200の動作とヒータ装置100の動作とを連携させる連携制御装置440とを含む。
【0024】
ヒータ制御装置140、プレス制御装置240、後工程制御装置340及び連携制御装置440は、制御プログラムを実行することで、各装置を制御するコンピュータである。ヒータ制御装置140、プレス制御装置240、後工程制御装置340及び連携制御装置440は、それぞれが別体のコンピュータから構成されてもよいし、これらのうちの複数又は全部が1台のコンピュータから構成されてもよい。
【0025】
ヒータ制御装置140は、材料Hの温度に関する制御情報が設定され、当該制御情報に基づいて材料Hを加熱する。設定される制御情報としては、目標温度、加熱炉120の駆動パラメータ(例えば誘導加熱の電流値)などが採用できる。
【0026】
ヒータ制御装置140は、プレスラインシステム10の表示器12aにヒータ制御装置140の消費エネルギー(消費電力、その積算値である消費電力量の一方又は両方)を表示出力する機能を有する。表示器12aは、後述する他の表示器12b~12dと統合されて1台の表示器を構成していてもよい。
【0027】
プレス制御装置240は、鍛造プレス200の駆動制御を行う。プレス制御装置240は、外部からスライドモーションを定めるモーションデータが設定され、当該モーションデータに基づいてスライド201を動作させる。モーションデータは、鍛造プレス200の構成又は制御方式によって異なり、例えば、スライド201の時間毎の位置が示されたモーションデータであったり、スライド201を下降させるときのエネルギー(フライホイールの回転速度)が示されたモーションデータであったり、スライド201の位置毎の加圧力(流体圧)が示されたモーションデータであったりする。
【0028】
プレス制御装置240は、さらに、鍛造プレス200の鍛造エネルギーに関する測定を行う。鍛造エネルギーに関する測定とは、例えば、鍛造エネルギー自体の測定であってもよいし、鍛造エネルギーと相関する物理量の測定であってもよい。鍛造エネルギーとは、前述したように、1回の成形期間(スライド201から材料Hに荷重が加えられる期間)の総エネルギーを意味してもよいし、1回の成形期間中に発生する荷重のピーク値を意味してもよい。
【0029】
鍛造エネルギーと相関する物理量の測定としては、例えば、材料Hに加わる荷重値の測定、スライド201の仕事量の測定、モータに出力される電力又は電力量の測定、成形前、成形準備段階又は成形中におけるフライホイールの回転速度の測定、流体圧式プレスである場合には流体圧の測定などを採用できる。荷重値の測定は、例えば、サイドフレーム212に設けられた歪みゲージを用いて行うことができる。スライド201の仕事量は、スライド201の移動量をリニアゲージで測定し、移動量と荷重値との積により測定することができる。
【0030】
プレス制御装置240は、プレスラインシステム10の表示器12bに鍛造プレス200の消費エネルギーを表示出力する機能を有する。
【0031】
後工程制御装置340は、後工程装置300を駆動制御し、プレスラインシステム10の表示器12cに後工程装置300の消費エネルギーを表示出力する機能を有する。
【0032】
連携制御装置440は、プレス制御装置240から鍛造エネルギーに関する測定値を受け、当該測定値に基づいて、ヒータ制御装置140に材料温度に関する制御値(例えば温度補正量)を送信する。制御値は、例えば目標温度の値、ヒータ装置100の電流値などの駆動パラメータの値である。ヒータ制御装置140は、連携制御装置440からの制御値に基づいて、ヒータ装置100を制御することで材料Hの加熱温度を変化させる。
【0033】
連携制御装置440は、ヒータ制御装置140、プレス制御装置240及び後工程制御装置340から、ヒータ装置100、鍛造プレス200及び後工程装置300の消費エネルギーの値をそれぞれ入力する。そして、連携制御装置440は、これらを合算したシステム総合の消費エネルギーを計算し、表示器12dに表示出力する機能を有する。前述したように、表示器12a~12dは1台の表示器に統合されてもよい。
【0034】
<プレスラインの連携動作の説明>
熱間鍛造又は温間鍛造において、材料Hは温度が比較的に高いと少ないエネルギーで塑性変形させることができる。一方、材料Hを高いエネルギーで塑性変形させる場合には材料Hの温度を比較的に低くできる。したがって、材料Hの温度を高くして成形する場合、温度を高くする分、ヒータ装置100の消費エネルギーは高くなる一方、鍛造プレス200の鍛造エネルギーは低くなる。逆に、材料Hの温度を低くして成形する場合、温度を低くする分、ヒータ装置100の消費エネルギーは低くなる一方、鍛造プレス200の鍛造エネルギーは高くなる。
【0035】
また、熱間鍛造又は温間鍛造においては、材料Hが鍛造プレス200に渡された後、材料Hから外界へ熱が放出される。当該熱は、エネルギー損失になる。さらに、放熱量は、材料Hの温度が高いほうが多くなる。すなわち、材料Hの温度が高いと放熱によるエネルギー損失が大きくなる。
【0036】
前述した通り、鍛造プレス200には、鍛造エネルギーの仕様値(推奨範囲における最大値)が定められている。そして、鍛造プレス200が、仕様値より低い鍛造エネルギーで複数の材料Hを、順次、成形処理している場合、材料Hの温度を低下させることで、仕様値に近い鍛造エネルギーで材料Hを成形処理できる。
【0037】
このとき、材料Hの温度が低下するので、ヒータ装置100の消費エネルギーが低減される。一方、鍛造プレス200の鍛造エネルギーの上昇により、鍛造プレス200の消費エネルギーが上がる。しかしながら、材料Hの温度の低下により、鍛造プレス200に渡った後の材料Hの放熱量、すなわち、エネルギー損失が低減される。そして、これらを総合すると、プレスラインシステム10の総合の消費エネルギーを低減することができる。
【0038】
連携制御装置440は、プレスラインシステム10の総合の消費エネルギーを低減させるために、鍛造プレス200の鍛造エネルギーに関する測定値に基づいて、ヒータ装置100による材料Hの温度を変更する制御処理を行う。続いて、当該制御処理について説明する。
【0039】
<制御処理1>
図3は、連携制御装置が実行する実施形態1の制御処理を示すフローチャートである。当該制御処理のプログラム442は、連携制御装置440のハードディスクなどの非一過性の記憶媒体441(non transitory computer readable medium)に記憶されている。連携制御装置440は、可搬型の非一過性の記録媒体に記憶されたプログラムを読み込み、当該プログラムを実行するように構成されてもよい。上記の可搬型の非一過性の記憶媒体は、上述した制御処理のプログラムを記憶していてもよい。当該制御処理によるプレスラインシステム10の制御方法が、本実施形態のプレスライン制御方法に相当する。
【0040】
図3の制御処理は、複数の材料Hの成形処理を順次実行していく連続成形処理の開始とともに連携制御装置440によって開始される。
【0041】
制御処理が開始されると、ステップS1において、連携制御装置440は、プレス制御装置240から鍛造エネルギーに関する測定値を入力する(ステップS1)。そして、連携制御装置440は、過去の測定値を合わせて計算を行い、その時点から過去N回分の成形処理における鍛造エネルギーの平均値を得る(ステップS2)。連続成形処理の開始からN回分の成形処理が完了するまでは、連携制御装置440は、ステップS2に移行せずに、ステップS1の測定値の入力処理をN回実行する。
【0042】
なお、プレス制御装置240から連携制御装置440に送られる測定値が、鍛造エネルギーの測定値であれば、ステップS2において、連携制御装置440は、単なる算術計算によりその平均値を求めることができる。一方、上記測定値が、鍛造エネルギーと相関する別の物理量の測定値である場合には、一旦、相関関係を利用して測定値から鍛造エネルギーを推定し、推定した鍛造エネルギーの平均値を計算することで、ステップS2の処理を実現できる。相関関係を利用した推定処理は、例えばシミュレーション又は実験により、測定値と鍛造エネルギーとの対応関係を示した関数又はデータテーブルを予め作成し、当該関数又はデータテーブルを連携制御装置440に与えておくことで実現できる。
【0043】
次に、連携制御装置440は、次式(1)のように温度補正量を計算する(ステップS3)。
温度補正量 =
(鍛造エネルギー仕様値 - 鍛造エネルギー平均値)×補正係数K …(1)
ここで、補正係数Kは定数である。
【0044】
続いて、連携制御装置440は、材料温度に関する制御値として、温度補正量をヒータ制御装置140へ出力する(ステップS4)。温度補正量が出力されることで、ヒータ装置100の現在の目標温度が、温度補正量の分だけ変化する。あるいは、ヒータ装置100の現在の駆動パラメータ(電流値)が、温度補正量に対応する分だけ変化する。
【0045】
ステップS4の処理により、温度補正量が正の値であれば、ヒータ装置100による材料Hの加熱量が低減され、その後に鍛造プレス200に送られてくる材料Hの温度が低くなる。
【0046】
式(1)によれば、鍛造エネルギーの仕様値よりも鍛造エネルギーが低いほど、大きい温度補正量が計算され、鍛造エネルギーの仕様値に鍛造エネルギーが近づくほど、小さい温度補正量が計算される。したがって、図3の制御処理によって、材料Hの温度が適宜調整され、それに付随して鍛造エネルギーが仕様値に近づいていく。
【0047】
なお、鍛造プレス200が、スライド201の動作開始前に鍛造エネルギーの値を要する構成である場合、温度補正量又は当該温度の補正により必要な鍛造エネルギーがどれだけ変化するかを示す情報が、連携制御装置440からプレス制御装置240に送られてもよい。そして、プレス制御装置240が、温度補正後の材料Hに対して、温度補正に対応した鍛造エネルギーで駆動するように制御されてもよい。
【0048】
その後、連携制御装置440は、連続鍛造処理の終了か否かを判別し、NOであれば、処理をステップS1に戻す。一方、YESであれば、連携制御装置440は、当該制御処理を終了する。
【0049】
<制御処理2>
図4は、連携制御装置が実行する実施形態2の制御処理を示すフローチャートである。当該制御処理のプログラム442は、連携制御装置440のハードディスクなどの非一過性の記憶媒体441(non transitory computer readable medium)に記憶されている。連携制御装置440は、可搬型の非一過性の記録媒体に記憶されたプログラムを読み込み、当該プログラムを実行するように構成されてもよい。上記の可搬型の非一過性の記憶媒体は、上述した制御処理のプログラムを記憶していてもよい。当該制御処理によるプレスラインシステム10の制御方法が、本実施形態のプレスライン制御方法に相当する。
【0050】
図4の制御処理は、ステップS11~S13の処理が、図3のステップS3の処理に代替されている点が異なり、その他は、図3の制御処理と同様である。以下、主に異なるステップについて詳細に説明する。
【0051】
実施形態2の制御処理では、連携制御装置440は、ステップS2で鍛造エネルギーの平均値を計算したら、鍛造エネルギーの仕様値が、鍛造エネルギーの平均値より大きいか判別する(ステップS11)。その結果、YESであれば、連携制御装置440は、温度補正量を補正量Cとする(ステップS12)。補正量Cは、緩やかに温度が変化するように比較的に小さい定数に設定されている。一方、NOであれば、連携制御装置440は、温度補正量をゼロとする(ステップS13)。その後、温度補正量がヒータ制御装置140に送られる(ステップS4)。
【0052】
実施形態2の制御処理によれば、鍛造エネルギーが仕様値から大きく離れていても、近づいていても、同様(略一定)の温度補正量がヒータ制御装置140に送られて、材料Hの温度が調整される。したがって、ヒータ装置100が大幅な温度幅で補正することが困難である構成である場合に適した温度補正を実現できる。
【0053】
以上のように、本実施形態(実施形態1、2)のプレスライン制御装置40、プレスラインシステム10、プレスライン制御方法及びプログラムによれば、連携制御装置440は、鍛造プレス200の鍛造エネルギーに関する測定値に基づいて、成形前の材料温度に関する制御を行う。したがって、従来、互いに連携することなく制御されていたヒータ装置100と鍛造プレス200とを、鍛造エネルギーと材料温度とが関連するように連携させて制御することができる。したがって、ヒータ装置100と鍛造プレス200との総合の消費エネルギーが低減するような連携制御が可能となる。
【0054】
具体的には、連携制御装置440は、鍛造プレス200の鍛造エネルギーが仕様値に近づくように材料温度に関する制御を行う。当該制御によって、ヒータ装置100によって加熱される材料温度を、鍛造プレス200が成形処理可能な範囲で低くすることができる。材料温度が低下するということは、鍛造で消費されるエネルギーが増加し、ヒータ装置100で消費されるエネルギーが低減されることを意味する。一方、材料温度が低下するということは、ヒータ装置100による加熱工程よりも後段の工程において、材料Hから外界に放出される熱量が小さくなり、すなわち、加熱工程よりも後段での総合の熱損失が小さくなることを意味する。したがって、熱損失が小さくなる分、ヒータ装置100の消費エネルギーの減少分のほうが、鍛造プレス200の消費エネルギーの増加分よりも大きくなる。したがって、プレスラインシステム10の総合の消費エネルギーを低減することができる。
【0055】
さらに、本実施形態のプレスライン制御装置40によれば、連携制御装置440は、鍛造エネルギーに関する測定値に基づいてヒータ装置100の加熱温度を制御する。より具体的には、連携制御装置440は、ヒータ装置100の目標温度、又は、加熱炉120の電流値などの駆動パラメータを制御する。このような制御により、材料Hの温度を下げるのに伴って、ヒータ装置100の消費エネルギーを効率的に下げることができる。
【0056】
さらに、本実施形態のプレスライン制御装置40によれば、プレス制御装置240から連携制御装置440へ送られる鍛造エネルギーに関する測定値は、鍛造エネルギー自体の測定値、又は、鍛造エネルギーと相関する物理量の測定値である。上記の物理量としては、例えば、材料Hに加わる荷重値、スライド201の仕事量、モータに出力される電力又は電力量、成形前、成形直前又は成形中におけるフライホイールの回転速度、流体圧式プレスである場合には流体圧などを適用できる。このような構成によれば、連携制御装置440は、成形処理が鍛造プレス200にとって余裕があるものなのか否か、すなわち、材料温度を下げることができるか否かを容易に判断することが可能となる。
【0057】
さらに、本実施形態のプレスライン制御装置40によれば、表示器12a~12dに、ヒータ装置100、鍛造プレス200及び後工程装置300の各消費エネルギーが表示され、さらに、これら総合の消費エネルギーが表示される。当該構成によれば、ユーザは、連携制御装置440の制御によって、どのくらい省エネルギー化が実現したのか容易に認識することができる。なお、消費エネルギーの表示には、上記の全ての表示が含まれる必要はなく、ヒータ装置100の消費エネルギー、あるいは、ヒータ装置100と鍛造プレス200との合計の消費エネルギーが含まれていればよい。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、ヒータ装置100は、成形前の材料Hを加熱するように構成されたが、ヒータ装置100は、成形中の材料Hを加熱する構成であってもよいし、成形前と成形中との両方で材料Hを加熱する構成であってもよい。成形中の材料Hは、金型20を介して加熱することができる。
【0059】
さらに、上記の実施形態では、図3のステップS3、並びに、図4のステップS11において、連携制御装置440は、鍛造エネルギーの仕様値との差分、鍛造エネルギーの仕様値との比較を行っているが、仕様値の代わりに、仕様値より余裕分だけ低くした値を用いてもよいし、仕様値より少し高くした値を用いてもよい。この場合でも、材料Hの温度を適宜調整して、プレスラインシステム10の総合の消費エネルギーの低減を図ることができる。
【0060】
その他、ヒータ装置は金型を介して材料を加熱する構成であってもよく、また、後工程装置は成形後の材料を冷却する機能を有していてもよいなど、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 プレスラインシステム
12a~12d 表示器
20 金型
21 上金型
22 下金型
40 プレスライン制御装置
100 ヒータ装置
110 搬送部
120 加熱炉
140 ヒータ制御装置
200 鍛造プレス
201 スライド
203 駆動機構
240 プレス制御装置
300 後工程装置
340 後工程制御装置
440 連携制御装置
441 記憶媒体
442 プログラム
H 材料
図1
図2
図3
図4