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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089682
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】高周波整流回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/08 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
H02M7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205015
(22)【出願日】2022-12-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省委託研究「電波資源拡大のための研究開発」のうち「空間伝送型ワイヤレス電力伝送の干渉制御・高度化技術に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】伊東 健治
(72)【発明者】
【氏名】坂井 尚貴
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006CA07
5H006CB01
5H006CB04
5H006CC01
5H006CC02
5H006CC08
(57)【要約】
【課題】高周波電力を直流電力に変換するのに用いられる高周波整流回路において、変換効率の高効率化を図るのに有効な整流回路の提供を目的とする。
【解決手段】高周波の受電電力を直流電力に変換するのに用いられる高周波整流回路であって、高周波の入力側に複数の単位整流回路を(m個)直列接続し、(n個)並列接続してあり、前記(m個)×(n個)の単位整流回路の直流の出力側は全て並列接続してあり、
前記mとnとは、その一方が0でもよい2以上の整数であることを特徴とする。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波の受電電力を直流電力に変換するのに用いられる高周波整流回路であって、
高周波の入力側に複数の単位整流回路を(m個)直列接続し、(n個)並列接続してあり、
前記(m個)×(n個)の単位整流回路の直流の出力側は全て並列接続してあり、
前記mとnとは、その一方が0でもよい2以上の整数であることを特徴とする高周波整流回路。
【請求項2】
前記単位整流回路は、ブリッジ整流回路又は倍電圧整流回路であることを特徴とする請求項1記載の高周波整流回路。
【請求項3】
直流の出力側をチョーク回路を介して並列合成してあることを特徴とする請求項2記載の高周波整流回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波を直流に整流するのに用いられる高周波整流回路に関し、特に高周波整流回路を大電力動作させる際に高効率化を図ることができる整流回路に係る。
【背景技術】
【0002】
高周波の受電電力を直流電力に変換するデバイスとしてレクテナがある。
例えば、図5にブリッジダイオードを用いたレクテナの基本構成例を示す。
図5に示した例はダイポールアンテナにて高周波を受信し、ブリッジダイオードにて直流に整流する例になっていて、アンテナ側に直流成分が跳ね返らないようにDCブロック等を含む整合回路を有し、直流出力側に平滑用キャパシタが接続されている。
近年、レクテナの高電力化が要求されていて、例えば非特許文献1での図6(a)に示すように整流用ダイオードを例えば3つ、あるいはそれ以上を直接的に直列接続し、高耐圧化を図っている。
そのような場合、整流用ダイオードの段数倍だけ出力の直流電圧が高まる。つまり高電力化に伴い出力の直流電圧が高まる。
このようなレクテナを直流の安定化電源として使用する場合には、通常DC/DCコンバータを接続し、5Vあるいは12V等に降圧して用いることになる。
しかし、図6(b)に示すようにDC/DCコンバータの効率は降圧の電圧比が高いほど効率が低下する。
従い、レクテナの高電力化に伴う出力の高直流電圧化に伴いシステム全体の効率が低下する技術的課題がある。
【0003】
また、整流用ダイオードの大電流化の手段として、例えば図7に示すようにダイオードの接合面積を増やす等、ダイオードサイズの大型化が挙げられる。
そのためにはダイオードの電極数を増やしたり、電極面積を増やすため、ダイオード内の高周波電流の分布が不均一になり、全体としての整流効率が低下する技術的課題もある。
【0004】
なお、非特許文献2には、すべての整流器にループアンテナ出力と同じ電圧が並列に印加されているが、微弱な電波を整流するのが目的になっている。
そのため、単位整流器の出力の直流電圧を直列接続し、高電圧とする構成である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】小松郁弥, 桔川洸一, 麦谷彰彦, 坂井尚貴, 伊東健治 : ”放熱機能を有するアンテナを用いる5.8GHz帯5Wレクテナ” 電子情報通信学会 マイクロ波研究会 技術報告MW2021-117, pp. 36-41, 2022年3月
【非特許文献2】J. Kang, P. Chiang and A. Natarajan, "A 3.6cm2 wirelessly-powered UWB SoC with - 30.7dBm rectifier sensitivity and sub-10cm range resolution," 2015 IEEE Radio Frequency Integrated Circuits Symposium (RFIC), 2015, pp. 255-258
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高周波電力を直流電力に変換するのに用いられる高周波整流回路において、変換効率の高効率化を図ることに有効な整流回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る高周波整流回路は、高周波の受電電力を直流電力に変換するのに用いられる高周波整流回路であって、高周波の入力側に複数の単位整流回路を(m個)直列接続し、(n個)並列接続してあり、前記(m個)×(n個)の単位整流回路の直流の接続側は全て並列接続してあり、前記mとnとは、その一方が0でもよい2以上の整数であることを特徴とする。
【0008】
ここで単位整流回路とは、それだけで高周波を直流に変換できる機能を有する整流回路をいい、この単位整流回路を高周波入力端子に(m個)を直列に接続すると、1つの単位整流回路に印加される高周波電圧は1/mになる。直流出力側はそれぞれの単位整流回路の直流出力端子を並列接続する。
これにより出力される直流電流が逓倍されるものの、整流回路全体での出力電圧は1/mになることから、DC/DCコンバータにて降圧する際の効率低下を抑制することができる。
【0009】
一方、この単位整流回路を高周波入力端子に(n個)を並列接続すると、1つの単位整流回路に流入する高周波電流は1/nとなり、それにより個々のダイオード等のサイズも概ね1/nに小型にすることができるので、ダイオード内の高周波電流の分布が不均一となる問題が緩和され、ダイオードのサイズの大型化にともなう効率の低下を抑制することができる。
【0010】
したがって、本発明において高周波側に直列接続する単位整流回路を(m個)とし、並列接続する単位整流回路を(n個)とした場合に「mとnとはその一方が0でもよい2以上の整数である。」と表現したのは上記単位整流回路を複数個(m個)直列接続するケース、単位整流回路を複数個(n個)並列接続するケースの一方又は両方を採用することができる趣旨である。
【0011】
本発明において、前記単位整流回路は、ブリッジ整流回路又は倍電圧整流回路であってよい。
また、直流の出力側をチョーク回路を介して並列合成してあるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る高周波整流回路は、例えば無線電力伝送に用いるレクテナ等の大電力化を図る際に直流電圧の高電圧化によるDC/DCコンバータでの出力効率の低下を抑え、ダイオードの大サイズ化による効率低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】単位整流回路の説明図を示す。(a)は単位整流回路のシンボル図、(b)はブリッジ整流回路の構成例、(c)は倍電圧整流回路の構成例、(d)は不平衝型の倍電圧整流回路の例をそれぞれ示す。
図2】実施例1の構成例を示す。
図3】実施例2の構成例を示す。
図4】実施例3の構成例を示す。
図5】レクテナの基本構成例を示す。
図6】(a)は整流用ダイオードを直列接続した例を示し、(b)はDC/DCコンバータの効率の説明図を示す。
図7】ダイオードの大サイズ化に伴う問題点の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る高周波整流回路の構成例を以下図に基づいて説明する。
【0015】
まず初めに単位整流回路について説明する。
図1(a)に単位整流回路のシンボル図を示し、具体的な単位整流回路の構成例を図1(b),(c),(d)に示す。
図1(b)はブリッジ整流回路を用いた例を示し、図(c)は倍電圧整流回路を用いた例を示す。
これらはダイポールアンテナのような平衝型のアンテナに接続する整流回路の例である。
また、図1(d)はマイクロストリップアンテナやモノポールアンテナのような不平衝型のアンテナに対する倍電圧整流回路を用いた例を示す。
ここで、RF1,RF2は高周波入力端子、DC1,DC2は直流出力端子を示す。
また、CdcはDCカット用キャパシタ、CLは平滑用キャパシタを示し、高周波が直流端子へ漏洩することを抑制するためにバイアスチョーク回路を接続してある。
なお、例えば図1(b)に示したブリッジダイオードは、それぞれ1つのダイオードをブリッジ接続してあるが、それぞれ複数のダイオードを直列接続し、耐圧化を図ったものも含まれる。
【0016】
(実施例1)
実施例1に係る高周波整流回路例を図2に示す。
高周波入力端子(RF1,RF2)に(m個)の単位整流回路を直列接続する。
ダイオード1つに印加される高周波電圧は1/mとなる。
また、各整流回路の直流出力端子(DC1,DC2)の直流電圧は1/mとなる。
各整流回路の直流出力端子(DC1,DC2)を並列接続する。
よって、整流回路全体での直流出力電圧は1/mである。
従来構成の整流回路でのm段直列接続ダイオードでの出力直流電圧と比較し、出力電圧は1/mであり、DC/DCコンバータでの効率低下を抑制する効果が得られる。
これは、ブリッジ整流回路、倍電圧整流回路のいずれであっても同様である。
【0017】
(実施例2)
実施例2に係る高周波整流回路例を図3に示す。
高周波入力端子(RF1,RF2)に(n個)の単位整流回路を並列接続する。
ダイオード1つに流入する高周波電流は1/nとなる。
各整流回路に必要なダイオードサイズは1/nとなり、ダイオード内の高周波電流の分布が不均一となる問題が緩和される。
従い、ダイオードの大サイズ化にともなう効率低下を抑制する効果が得られる。
これは、ブリッジ整流回路、倍電圧整流回路のいずれであっても同様である。
【0018】
(実施例3)
実施例3に係る高周波整流回路例を図4に示す。
本実施例は、(m個)直列及び(n個)並列接続で、m=2,n=2の4つの単位整流回路での接続例を示す。
高周波入力端子に対し、2並列された単位整流回路11・単位整流回路12と、同じく2並列された単位整流回路21・単位整流回路22とを2直列する構成である。
直流出力端子は全て並列接続である。
従い、出力電圧を従来のダイオード直列構成の1/2、ダイオードサイズを1/2とすることができ、効率低下を抑制する効果が得られる。
これは、ブリッジ整流回路、倍電圧整流回路のいずれであっても同様である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7