(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089690
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】衝突被害軽減機能制御装置及び衝突被害軽減機能制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240627BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20240627BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240627BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/09
B60W50/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205028
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大沼 和親
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA33
3D241BA60
3D241BC01
3D241CC08
3D241CD09
3D241CD12
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3D241DD07Z
5H181AA01
5H181BB15
5H181CC02
5H181CC04
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5H181CC14
5H181FF04
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5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】運転操作への干渉を抑制し、車両の衝突被害軽減機能を適正に制御することができ、衝突する可能性を効果的に低減させる。
【解決手段】車両の衝突被害軽減機能を制御する衝突被害軽減機能制御装置であって、コントローラを含む。コントローラは、車両の走行に対する障害物を識別し、車両の運転者の視線を検出し、運転者の視線が障害物に向けられた累積時間に基づいて衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突被害軽減機能を制御する衝突被害軽減機能制御装置であって、
コントローラを含み、
前記コントローラは、
前記車両の走行に対する障害物を識別し、
前記車両の運転者の視線を検出し、
前記運転者の視線が前記障害物に向けられた累積時間に基づいて前記衝突被害軽減機能の動作態様を変更する、
衝突被害軽減機能制御装置。
【請求項2】
前記動作態様は、衝突に対する警告音量である、
請求項1に記載の衝突被害軽減機能制御装置。
【請求項3】
前記動作態様は、衝突被害軽減に対する前記車両の制動力である、
請求項1に記載の衝突被害軽減機能制御装置。
【請求項4】
前記警告音量は、前記車両と前記障害物との衝突する可能性を示す衝突危険度との関係により決定され、
前記コントローラは、前記累積時間に基づいて警告を開始する前記衝突危険度の閾値を変更する、
請求項2に記載の衝突被害軽減機能制御装置。
【請求項5】
前記制動力は、前記車両と前記障害物との衝突する可能性を示す衝突危険度との関係により決定され、
前記コントローラは、前記累積時間に基づいて衝突被害軽減に対する制動を開始する前記衝突危険度の閾値を変更する、
請求項3に記載の衝突被害軽減機能制御装置。
【請求項6】
前記衝突被害軽減機能は、前記車両と前記障害物との衝突する可能性を示す衝突危険度に応じた衝突被害軽減動作を行い、
前記コントローラは、前記累積時間に基づいて前記衝突危険度を算出する、
請求項1に記載の衝突被害軽減機能制御装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記障害物が複数である場合に、
複数の前記障害物各々に対して個別に前記運転者の視線が前記障害物に向けられた前記累積時間を計測し、
複数の前記障害物各々における衝突危険度と前記累積時間に基づいて複数の前記障害物各々に対する前記衝突被害軽減機能の動作態様を変更する、
請求項1に記載の衝突被害軽減機能制御装置。
【請求項8】
車両の衝突被害軽減機能を制御する衝突被害軽減機能制御方法であって、
前記車両の走行に対する障害物を識別するステップと、
前記車両の運転者の視線が前記障害物に向けられた累積時間を計測するステップと、
前記累積時間に基づいて前記衝突被害軽減機能の動作態様を変更するステップと、
を含む、衝突被害軽減機能制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突被害軽減機能制御装置及び衝突被害軽減機能制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来車両において、障害物を検知し、運転者への警告やブレーキ制御等を行う衝突被害軽減機能を搭載した車両が普及している。例えば、歩行者や自転車等の警告対象が検知された場合に、車両の表示領域に警告画像を表示するに際し、車両と警告対象との距離に応じて警告画像の表示態様を変更する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、衝突する可能性が低い状況において警告を発する場合等、警告が運転者に対して過剰な干渉を行うことがあり、運転者が警告を鬱陶しく感じる、また過剰な警告の干渉に変に慣れて運転者に油断が生じてしまう等の課題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、運転者への過剰な干渉を抑制し、車両の衝突被害軽減機能を適正に制御することができ、衝突する可能性を効果的に低減させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示的な本発明は、車両の衝突被害軽減機能を制御する衝突被害軽減機能制御装置であって、コントローラを含む。前記コントローラは、前記車両の走行に対する障害物を識別し、前記車両の運転者の視線を検出し、前記運転者の視線が前記障害物に向けられた累積時間に基づいて前記衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、運転者への過剰な干渉、例えば過剰な警告や車両走行制御等を抑制し、車両の衝突被害軽減機能を適正に制御することができ、衝突する可能性を効果的に低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の衝突被害軽減機能制御装置を含む車載装置の全体構成図
【
図3】車両の衝突危険度に対して線形的に制御される制動力の動作態様変更の一例を示す模式図
【
図4】車両の衝突危険度に対して線形的に制御される制動力の動作態様変更の一例を示す模式図
【
図5】車両の衝突危険度に対して段階的に制御される警告音量の動作態様変更の一例を示す模式図
【
図6】車両の衝突危険度に対して段階的に制御される警告音量の動作態様変更の一例を示す模式図
【
図7】衝突被害軽減機能制御装置が行う衝突被害軽減機能に対する動作態様変更処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態の内容に限定されるものではない。
【0010】
<1.車載装置>
図1は、実施形態の衝突被害軽減機能制御装置1を含む車載装置の全体構成図である。
図2は、
図1の車両V周辺の状況を示す模式図である。衝突被害軽減機能制御装置1は、例えば車両Vに搭載される。
【0011】
車両Vは、車輪により路面上を走行可能な自動車等であって、駆動力発生装置(不図示)、制動装置2等を備える。駆動力発生装置は、内燃機関またはモータを含む。制動装置2は、所謂ディスクブレーキ装置等で、走行中の車両Vの減速及び停止、並びに停止中の車両Vの停止状態の保持に用いられる。車両Vは、運転者による運転操作に基づいて走行、停止する。
【0012】
なお、衝突被害軽減機能制御装置1は、車両Vのほか、例えば船舶や航空機等の車両以外の移動体に搭載される装置であっても良い。衝突被害軽減機能制御装置1の詳細な構成については後述する。車両Vは、さらに衝突被害軽減制御装置3と、撮影部4と、センサ部5と、スピーカ6と、表示部7と、を備える。
【0013】
衝突被害軽減制御装置3は、車両Vに対する障害物を検知して衝突に対応する装置であって、衝突前に運転者への警告及び制動装置2の制御を行う。例えば、衝突被害軽減制御装置3は、
図2に示す車両Vと前方(進行方向)Fの障害物Tとの相対速度に対する制動回避限界距離及び操舵回避限界距離に基づいて、障害物Tと衝突する可能性を示す衝突危険度を算出する。そして、衝突被害軽減制御装置3は、車両Vと前方Fの障害物Tとの衝突危険度が大きくなり、衝突危険度が予め実験等により適宜設定された所定値に達した場合に、制動装置2を制御する。或いは、衝突被害軽減制御装置3は、衝突危険度が、制動装置2を制御しなければならない所定(予め実験等により適宜設定された安全に停車できるタイミングとなる値)値に達するよりも前のタイミングで、スピーカ6を介して運転者へ衝突を回避するよう警告を報知する。なお、障害物Tは、車両Vの前方Fに存在する物に限定されず、例えばステアリングの操舵角度等に基づき推定される車両の推定進行線周辺に存在する物体等も対象となる。
【0014】
撮影部4は、車両Vの周辺の状況及び車室内の状況を撮影するカメラを含む。本実施形態では、撮影部4は、例えば少なくとも2つの車載カメラを含む。車載カメラの1つは、車両Vの前端に設けられたフロントカメラ41であって、車両Vの前方Fを撮影する。車載カメラの別の1つは、車両Vのフロントガラス或いはダッシュボード付近に設けられた車室内カメラ42であって、運転者の顔を含む車両Vの車室内を撮影する。
【0015】
センサ部5は、車両Vに関する情報を検出する複数のセンサを含む。車両Vに関する情報には、車両自体の情報と、車両周辺の情報とが含まれて良い。センサ部5は、例えば車両Vの速度を検出する車速度センサ、ステアリングの回転角を検出する舵角センサ、車両Vの変速装置のシフトレバーの操作位置を検出するシフトセンサ、車両Vの振動を検出する振動センサ、車両Vの傾きを検出する傾斜センサ等を含む。さらに、センサ部5は、車両V周辺の人や動物、車両、その他の物体を検出する障害物センサ51を含む。
【0016】
障害物センサ51は、例えば超音波センサ、赤外線等を用いた光センサ、レーダなどを利用し、車両V周辺の人や動物、車両、その他の物体を検出することができる。障害物センサ51は、例えば車両Vのフロントバンパー、リアバンパー及びドアなどの複数箇所に埋設される。
図2に示すように、障害物センサ51は、例えば送信波Wtを車両V周辺に向けて送信し、人や他の車両等の障害物Tで反射した反射波Wrを受信することで、人や他の車両等の有無や方向、位置、速度を検出する。
【0017】
スピーカ6及び表示部7は、それらの出力部が車両Vの車室内に臨む。スピーカ6は、衝突被害軽減制御装置3からの報知信号を、警告音または音声として出力する。表示部7は、衝突被害軽減制御装置3からの報知信号を、映像として表示する。なお、スピーカ6及び表示部7は、例えばナビゲーション装置(不図示)等の他の装置に属するものを利用しても良い。ナビゲーション装置は、地図、道路情報及び車両Vの位置を表示部7に表示することができ、さらにスピーカ6から音声で報知することができる。
【0018】
<2.衝突被害軽減機能制御装置>
<2-1.衝突被害軽減機能制御装置の概略>
衝突被害軽減機能制御装置1は、衝突被害軽減制御装置3によって行われる車両Vの衝突被害軽減機能を制御する。なお、衝突被害軽減機能制御装置1は、衝突被害軽減制御装置3に一体的に組み込まれていても良い。衝突被害軽減機能制御装置1は、コントローラ11と、記憶部12と、を含む。
【0019】
コントローラ11は、CPU(Central Processing Unit)によって構成される演算処理部を含む。また、コントローラ11は、例えば不揮発性メモリであって、電気的にデータの書き換えが可能な内部メモリを含む。内部メモリには、衝突被害軽減機能制御装置1の機能を実現するためのプログラムが予め格納される。コントローラ11は、CPUが内部メモリに予め格納された制御用のプログラムに従った演算処理を実行することにより、各種の機能を実現する。
【0020】
記憶部12は、例えば不揮発性メモリであって、電気的にデータの書き換えが可能な記憶装置である。記憶部12は、車両Vの衝突被害軽減機能を制御するための閾値テーブル121及び動作態様情報テーブル122を記憶する。
【0021】
<2-2.衝突被害軽減機能制御装置の詳細>
コントローラ11は、障害物識別部111と、視線検出部112と、計時部113と、動作態様変更部114と、を含む。これらの各構成要素それぞれの機能は、コントローラ11の内部メモリに予め格納された制御用のプログラムに従い、CPUが演算処理を行うことによって実現される。コントローラ11の一部、または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されても良い。
【0022】
障害物識別部111は、撮影部4及びセンサ部5から、車両Vの前方(進行方向)Fの状態及び車両Vの状態に関する情報を取得する。詳細に言えば、障害物識別部111は、撮影部4で撮影された撮影画像を取得し、当該撮影画像の画像解析処理により障害物Tの存在を検出する。また、障害物識別部111は、センサ部5の障害物センサ51を用いて、障害物Tの存在を検出することにしても良い。
【0023】
障害物識別部111は、撮影画像の画像解析処理結果、或いは障害物センサ51から得られる距離情報及び角度情報に基づき、車両Vと障害物Tとの距離が連続して所定値以下となり、且つ車両Vの前方Fから所定角度以下となる範囲に障害物Tが存在することを検出する。そして、障害物識別部111は、所定のトラッキング手法及び予測フィルタ等を用いて、障害物Tの位置、進行方向及び速度を予測する。
【0024】
障害物識別部111は、予測した障害物Tの位置、進行方向及び速度に関する情報と、センサ部5により検出された車両Vの進行方向及び速度に関する情報とに基づき、つまり障害物Tと車両Vの進行予測(将来の各時刻における存在位置の予測)に基づき、車両Vの進行方向と速度で進んだ場合、車両Vと障害物Tとが同一時点において同一地点に位置する可能性を予測する。すなわち、障害物識別部111は、車両Vの走行に対する、注目し対処すべき障害物を識別する。言い換えれば、障害物識別部111は、車両Vが衝突する可能性がある障害物Tを識別する。つまり、障害物識別部111は、衝突被害軽減制御装置3により算出された車両Vと障害物Tとの衝突危険度が予め実験等により適宜定めた所定値を超える障害物を判定対象障害物Tとする。
【0025】
視線検出部112は、撮影部4の車室内カメラ42によって撮影された運転者の顔を含む画像を取得する。そして、視線検出部112は、当該画像に対する画像解析処理を行い、車両Vの運転者の視線を検出する。
【0026】
視線検出部112は、運転者の顔を含む画像から運転者の左右の眼球を検知対象物とした特徴量算出、形状判別等の認識処理を行う。視線検出部112は、当該認識処理の結果に基づき、例えば目頭の位置、眼の虹彩及び瞳孔の中心位置、近赤外照明による角膜反射像(プルキニエ像)の中心位置、眼球の中心位置等を用いた所定の視線検出処理により運転者の視線及び注視点を検知する。運転者の視線は、例えば運転者の前方に運転者と正対する仮想平面に設け、運転者の視線ベクトルが仮想平面を貫く位置の二次元座標で表すことができる。
【0027】
また、視線検出部112は、運転者の顔の車両に対する向きを、運転者の顔を含む画像の画像解析処理により検出する。そして、視線検出部112は、当該検出された運転者の顔の車両に対する向きと、上述の運転者の視線ベクトル(前記二次元座標で示される値)に基づき、車両(の前方)を基準とする運転者の視線方向を検出する。
【0028】
目頭の位置を用いた視線検出処理を行う場合、視線検出部112は、画像に含まれる運転者の目頭及び虹彩をそれぞれ基準点及び動点として設定し、目頭に対する虹彩の位置に基づいて運転者の視線を検出する。
【0029】
角膜反射像(プルキニエ像)の中心位置を用いた視線検出処理を行う場合、例えば撮影部4が、赤外線カメラ及び赤外線LEDを含むように構成する。そして、視線検出部112は、赤外線LEDで照らした運転者の顔を赤外線カメラで撮影することによって得られる赤外画像中の瞳孔と、眼球上の角膜反射像との位置関係に基づき、運転者の視線を検出する。なお、視線検出方法については、上記記載に限定されるものではなく、従来から知られている他の方法であっても良い。
【0030】
計時部113は、現在の日時及び時刻を示す時刻情報を取得する。計時部113は、内部電池を有し、外部から電力供給を受けることなく動作可能である。そして、計時部113は、視線検出部112により検出された車両Vの運転者の視線が、障害物Tに向けられた累積時間を計測する。
【0031】
前述のように、衝突被害軽減制御装置3は、車両Vに対する障害物Tを検知し、衝突前に運転者への警告、及び制動装置2の制御といった衝突被害軽減機能を行う。これに関して、衝突被害軽減制御装置3は、車両Vと障害物Tとの衝突危険度を導出し、衝突危険度が所定値に達した場合に、スピーカ6を介して警告を報知する、或いは制動装置2を制御する。そして、動作態様変更部114は、車両Vの運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間に基づき、衝突被害軽減制御装置3によって行われる車両Vの衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。
【0032】
コントローラ11(動作態様変更部114)による衝突被害軽減機能の動作態様の変更は、運転者の視線の、障害物Tに向けられた累積時間に基づいている。例えば、当該累積時間が長くなるにつれて運転者が障害物Tを強く把握して(認識し、意識して)いるため、衝突被害軽減機能の動作態様の変更は車両Vが障害物Tとの衝突を自身で回避する可能性が高いことに基づいている。また、当該累積時間が短くなるにつれて運転者が障害物を強く把握して(認識し、意識して)いない可能性が高いため、衝突被害軽減機能の動作態様の変更は車両Vが障害物Tとの衝突を自身で回避する可能性が低いことに基づいている。
【0033】
すなわち、衝突被害軽減機能制御装置1によれば、衝突する可能性が低い状況において、運転者に対して警告を発することを抑制でき、車両Vに急制動が作用することを抑制できる。したがって、運転操作への干渉を抑制し、車両Vの衝突被害軽減機能を適正に制御することができ、衝突する可能性を効果的に低減させることが可能になる。
【0034】
<2-3.衝突被害軽減機能の動作態様の変更処理の詳細>
続いて、コントローラ11(動作態様変更部114)による衝突被害軽減機能の動作態様の変更について、詳細に説明する。
【0035】
図3は、車両Vの衝突危険度に対して線形的に制御される警告音量の動作態様変更の一例を示す模式図である。
図3に含まれるグラフの横軸は障害物に対する車両Vの衝突危険度の高さを示し、縦軸はスピーカ6から発せられる警告音量の大きさを示す。
【0036】
図3に示す例の場合、衝突被害軽減制御装置3は、障害物に対する車両Vの衝突危険度が閾値r11に達した場合に、警告音量v11により運転者への報知を開始する。そして、衝突被害軽減制御装置3は、さらに車両Vの衝突危険度が高くなるにつれて、運転者への警告音量を大きくする。すなわち、
図3に示すように、衝突被害軽減制御装置3は、基本的動作として、音量制御線L10で示すように衝突危険度に対して警告音量を線形的に制御する。
【0037】
これに対し、コントローラ11(動作態様変更部114)は、運転者の視線が、車両Vが衝突する可能性がある障害物Tに向けられた累積時間に基づき、衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。コントローラ11(動作態様変更部114)が変更した衝突被害軽減機能の動作態様に関する情報は、衝突被害軽減制御装置3に送信される。
【0038】
詳細に言えば、運転者の視線の、障害物Tに向けられた累積時間が、予め定められた基準値よりも長い場合、コントローラ11(動作態様変更部114)は、
図3に矢印C11で示したように、警告音量に対して音量制御線L11で示す制御を行って警告音量を相対的に小さくして衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。また、運転者の視線の、障害物Tに向けられた累積時間が、予め定められた基準値よりも短い場合、コントローラ11(動作態様変更部114)は、
図3に矢印C12で示したように、警告音量に対して音量制御線L12で示す制御を行って警告音量を相対的に大きくして衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。
【0039】
なお、音量制御線L10は基準となる警告音量の制御線であり、上記で説明した音量制御では用いられない(説明の上で用いている)。
【0040】
また、上記の例では、警告音量を音量制御線L11、L12の2段階で制御しているが、さらに多くの段階で制御しても良く、また運転者の視線の障害物Tに向けられた累積時間に応じた連続的な、例えば線形で変化する音量制御線に基づき制御しても良い。
【0041】
また、上述の例では音量制御線L10(L11、L12)は衝突危険度に対して警告音量を線形的(一次関数直線)に制御する特性の制御線であるが、多次関数曲線等の線形以外の制御線であっても良い。
【0042】
なお、衝突被害軽減機能の各動作態様における動作実現用の制御データは、記憶部12に形成された動作態様情報テーブル122に記憶される。具体的には、動作態様情報テーブル122には、各衝突危険度に対する警告音量の値を示すデータセットが動作態様種別毎に記憶される。
【0043】
また、衝突被害軽減機能の動作態様を決定するための閾値データ等は記憶部12に形成された閾値テーブル121に記憶される。具体的には、閾値テーブル121には、各動作態様種別が選択される運転者の視線の障害物Tに向けられた累積時間の範囲(上限・下限の閾値)のデータが記憶される。言い換えれば(別のデータ形式では)、閾値テーブル121には、運転者の視線の障害物Tに向けられた各累積時間に対する動作態様種別のデータが記憶される。
【0044】
そして、これらの動作態様情報テーブル122及び閾値テーブル121に記憶される各データは、予め実験等に基づき適宜設定される。
【0045】
このように、コントローラ11(動作態様変更部114)は、運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間に基づき、衝突に対する警告音量を可変する。この構成によれば、運転者が障害物Tを注視し、衝突する可能性が低くなる状況において警告音量を小さくすることができ、過剰な警告動作を抑制できる。また、運転者が障害物Tをよく見ておらず、衝突する可能性が高くなる状況において警告音量を大きくすることができ、効果的な警告動作を行うことが可能である。
【0046】
図4は、車両Vの衝突危険度に対して線形的に制御される制動力の動作態様変更の一例を示す模式図である。
図4に含まれるグラフの横軸は障害物に対する車両Vの衝突危険度の高さを示し、縦軸は車両Vに対する制動力の大きさを示す。なお、この制動力は、運転者による手動ブレーキに対するブレーキアシスト(ブレーキブースト)制御における追加の制動力に適用するものである。また、衝突の危険が伴う障害物に対して、自動的に制動を行う自動制御機能における制動力に適用することもできる。
【0047】
図4に示す例の場合、衝突被害軽減制御装置3は、障害物に対する車両Vの衝突危険度が閾値r21に達した場合に、制動力f21により車両Vの制動を開始する。そして、衝突被害軽減制御装置3は、さらに車両Vの衝突危険度が高くなるにつれて、車両Vに対する制動力を大きくする。すなわち、
図4に示すように、衝突被害軽減制御装置3は、基本的動作として、制動制御線L20で示すように衝突危険度に対して制動力を線形的に制御する。
【0048】
これに対し、コントローラ11(動作態様変更部114)は、運転者の視線が、車両Vが衝突する可能性がある障害物Tに向けられた累積時間に基づき、衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。コントローラ11(動作態様変更部114)が変更した衝突被害軽減機能の動作態様に関する情報は、衝突被害軽減制御装置3に送信される。
【0049】
詳細に言えば、運転者の視線の、障害物Tに向けられた累積時間が、予め定められた基準値よりも長い場合、コントローラ11(動作態様変更部114)は、
図4に矢印C21で示したように、制動力に対して制動制御線L21で示す制御を行って制動力を相対的に小さくして衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。また、運転者の視線の、障害物Tに向けられた累積時間が、予め定められた基準値よりも短い場合、コントローラ11(動作態様変更部114)は、
図4に矢印C22で示したように、制動力に対して制動制御線L22で示す制御を行って制動力を相対的に大きくして衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。
【0050】
なお、制動制御線L20は基準となる制動力の制御線であり、上記で説明した制動制御では用いられない(説明の上で用いている)。
【0051】
また、上記の例では、制動力を制動制御線L21、L22の2段階で制御しているが、さらに多くの段階で制御しても良く、また運転者の視線の障害物Tに向けられた累積時間に応じた連続的な、例えば線形で変化する制動制御線に基づき制御しても良い。
【0052】
また、上述の例では制動制御線L20(L21、L22)は衝突危険度に対して制動力を線形的(一次関数直線)に制御する特性の制御線であるが、多次関数曲線等の線形以外の制御線であっても良い。
【0053】
なお、衝突被害軽減機能の各動作態様における動作実現用の制御データは、記憶部12に形成された動作態様情報テーブル122に記憶される。具体的には、動作態様情報テーブル122には、各衝突危険度に対する制動力の値を示すデータセットが動作態様種別毎に記憶される。
【0054】
また、衝突被害軽減機能の動作態様を決定するための閾値データ等は記憶部12に形成された閾値テーブル121に記憶される。具体的には、閾値テーブル121には、各動作態様種別が選択される運転者の視線の障害物Tに向けられた累積時間の範囲(上限・下限の閾値)のデータが記憶される。言い換えれば(別のデータ形式では)、閾値テーブル121には、運転者の視線の障害物Tに向けられた各累積時間に対する動作態様種別のデータが記憶される。
【0055】
そして、これらの動作態様情報テーブル122及び閾値テーブル121に記憶される各データは、予め実験等に基づき適宜設定される。
【0056】
このように、コントローラ11(動作態様変更部114)は、運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間に基づき、車両Vに対する制動力を可変する。この構成によれば、運転者が障害物Tを注視し、衝突する可能性が低くなる状況において制動力を小さくすることができ、過剰な制動動作を抑制できる。また、運転者が障害物Tをよく見ておらず、衝突する可能性が高くなる状況において制動力を大きくすることができ、効果的な制動動作を行うことが可能である。
【0057】
なお、上述の制動制御では、ブレーキアシスト動作における付加制動力を増加するようにしているが、運転者によるブレーキペダルの踏み込み量に対する制動力の比率を、運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間に基づき変更する制御を行っても良い。例えば、当該累積時間が長い程、ブレーキペダルの踏み込み量に対する制動力が小さくなるような比率とする制御を行っても良い。
【0058】
また、上述の
図3に示した音量制御と
図4に示した制動制御とを併用することも効果的である。
【0059】
図5は、車両Vの衝突危険度に対して段階的に制御される警告音量の動作態様変更の一例を示す模式図である。
図5に含まれるグラフの横軸は障害物に対する車両Vの衝突危険度の高さを示し、縦軸はスピーカ6から発せられる警告音量の大きさを示す。
【0060】
図5に示す例の場合、衝突被害軽減制御装置3は、音量制御線L30で示すように、障害物に対する車両Vの衝突危険度が閾値r13以上、閾値r14未満の状態で、警告音量v13により運転者への音声報知を行う。また、衝突被害軽減制御装置3は、車両Vの衝突危険度が閾値r14以上の状態で、警告音量v14により運転者への音声報知を行う。なお、衝突被害軽減制御装置3は、車両Vの衝突危険度が所定の閾値r13未満の状態では、運転者への音声報知は行わない。
【0061】
すなわち、
図5に示すように、衝突被害軽減制御装置3は、基本的動作として、車両Vの衝突危険度に応じて警告音量を段階的に制御する。
【0062】
これに対し、コントローラ11(動作態様変更部114)は、運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間に基づき、衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。コントローラ11(動作態様変更部114)が変更した衝突被害軽減機能の動作態様に関する情報は、衝突被害軽減制御装置3に送信される。
【0063】
詳細に言えば、運転者の視線の障害物Tに向けられた累積時間が、予め定められた基準値よりも長い場合、コントローラ11(動作態様変更部114)は、
図5に矢印C13で示したように、車両Vの衝突危険度が閾値r131以上、閾値r141未満の状態で警告音量v13により警告(音声報知)を行い、車両Vの衝突危険度が閾値r141以上の状態で警告音量v14により警告(音声報知)を行う。つまり、衝突危険度の閾値r13、r14よりも高いr131、r141を閾値とすることで、それぞれの音量v13、v14で行われる警告(音声報知)がより高い衝突危険度の状態で行われるように、衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。
【0064】
また、運転者の視線の、障害物Tに向けられた累積時間が、予め定められた基準値よりも短い場合、コントローラ11(動作態様変更部114)は、
図5に矢印C14で示したように、車両Vの衝突危険度が閾値r132以上、閾値r142未満の状態で警告音量v13により警告(音声報知)を行い、車両Vの衝突危険度が閾値r142以上の状態で警告音量v14により警告(音声報知)を行う。つまり、衝突危険度の閾値r13、r14よりも低いr132、r142を閾値とすることで、それぞれの音量v13、v14で行われる警告(音声報知)がより低い衝突危険度の状態で行われるように、衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。
【0065】
なお、音量制御線L30は基準となる警告音量の制御線であり、上記で説明した音量制御では用いられない(説明の上で用いている)。
【0066】
また、上記の例では、警告音量を閾値r13、r14の2段階で制御しているが、さらに多くの段階、例えば警告音量が変わる衝突危険度の閾値を増やす等により制御しても良い。
【0067】
また、上述の例では音量制御線L30は衝突危険度に対して複数の離散した一定値(水平線)からなる制御線であるが、離散変動値(曲線)からなる制御線であっても良い。
【0068】
なお、衝突被害軽減機能の各動作態様における動作実現用の制御データは、記憶部12に形成された動作態様情報テーブル122に記憶される。具体的には、動作態様情報テーブル122には、各衝突危険度に対する警告音量の値を示すデータセットが動作態様種別毎に記憶される。
【0069】
また、衝突被害軽減機能の動作態様を決定するための閾値データ等は記憶部12に形成された閾値テーブル121に記憶される。具体的には、閾値テーブル121には、各動作態様種別が選択される運転者の視線の障害物Tに向けられた累積時間の範囲(上限・下限の閾値)のデータが記憶される。言い換えれば(別のデータ形式では)、閾値テーブル121には、運転者の視線の障害物Tに向けられた各累積時間に対する動作態様種別のデータが記憶される。
【0070】
そして、これらの動作態様情報テーブル122及び閾値テーブル121に記憶される各データは、予め実験等に基づき適宜設定される。
【0071】
このように、警告音量は、車両Vと障害物Tとの衝突危険度との関係により決定される。そして、コントローラ11は、運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間に基づいて警告を開始する衝突危険度の閾値r13、r14を変更する。言い換えれば、コントローラ11(動作態様変更部114)は、運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間に基づき、さらに衝突危険度に応じて、衝突に対する警告音量を段階的に切り替える。この構成によれば、運転者が障害物Tを注視し、衝突する可能性が低い状況において警告音量を小さくすることができ、過剰な警告動作を抑制できる。また、運転者が障害物Tをよく見ておらず、衝突する可能性が高い状況において警告音量を大きくすることができ、効果的な警告動作を行うことが可能である。
【0072】
また、衝突危険度が各閾値に達する毎に急激に警告音量が変化するので、閾値を効果的に設定することにより、運転者が衝突危険度の節目となる警告音量の変動に気づき易くなる。
【0073】
図6は、車両Vの衝突危険度に対して段階的に制御される制動力の動作態様変更の一例を示す模式図である。
図6に含まれるグラフの横軸は障害物に対する車両Vの衝突危険度の高さを示し、縦軸は車両Vに対する制動力の大きさを示す。なお、この制動力は、運転者による手動ブレーキに対するブレーキアシスト(ブレーキブースト)制御における追加の制動力に適用するものである。また、衝突の危険が伴う障害物に対して、自動的に制動を行う自動制御機能における制動力に適用することもできる。
【0074】
図6に示す例の場合、衝突被害軽減制御装置3は、制動制御線L40で示すように、障害物に対する車両Vの衝突危険度が閾値r23以上、閾値r24未満の状態で、制動力f23により車両Vの制動を行う。また、衝突被害軽減制御装置3は、車両Vの衝突危険度が閾値r24以上の状態で、制動力f24により車両Vの制動を行う。なお、衝突被害軽減制御装置3は、車両Vの衝突危険度が所定の閾値r23未満の状態では、車両Vの制動は行わない。
【0075】
すなわち、
図6に示すように、衝突被害軽減制御装置3は、基本的動作として、車両Vの衝突危険度に応じて制動力を段階的に制御する。
【0076】
これに対し、コントローラ11(動作態様変更部114)は、運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間に基づき、衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。コントローラ11(動作態様変更部114)が変更した衝突被害軽減機能の動作態様に関する情報は、衝突被害軽減制御装置3に送信される。
【0077】
詳細に言えば、運転者の視線の障害物Tに向けられた累積時間が、予め定められた基準値よりも長い場合、コントローラ11(動作態様変更部114)は、
図6に矢印C23で示したように、車両Vの衝突危険度が閾値r231以上、閾値r241未満の状態で制動力f23により車両Vの制動を行い、車両Vの衝突危険度が閾値r241以上の状態で制動力f24により車両Vの制動を行う。つまり、衝突危険度の閾値r23、r24よりも高いr231、r241を閾値とすることで、それぞれの制動力f23、f24で行われる制動がより高い衝突危険度に達した状態で開始されるように、衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。
【0078】
また、運転者の視線の、障害物Tに向けられた累積時間が、予め定められた基準値よりも短い場合、コントローラ11(動作態様変更部114)は、
図6に矢印C24で示したように、車両Vの衝突危険度が閾値r232以上、閾値r242未満の状態で制動力f23により車両Vの制動を行い、車両Vの衝突危険度が閾値r242以上の状態で制動力f24により車両Vの制動を行う。つまり、衝突危険度の閾値r23、r24よりも低いr232、r242を閾値とすることで、それぞれの制動力f23、f24で行われる制動がより低い衝突危険度に達した状態で開始されるように、衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。
【0079】
なお、制動制御線L40は基準となる制動力の制御線であり、上記で説明した制動制御では用いられない(説明の上で用いている)。
【0080】
また、上記の例では、制動力を閾値r23、r24の2段階で制御しているが、さらに多くの段階、例えば制動力が変わる衝突危険度の閾値を増やす等により制御しても良い。
【0081】
また、上述の例では制動制御線L40は衝突危険度に対して複数の離散した一定値(水平線)からなる制御線であるが、離散変動値(曲線)からなる制御線であっても良い。
【0082】
なお、衝突被害軽減機能の各動作態様における動作実現用の制御データは、記憶部12に形成された動作態様情報テーブル122に記憶される。具体的には、動作態様情報テーブル122には、各衝突危険度に対する制動力の値を示すデータセットが動作態様種別毎に記憶される。
【0083】
また、衝突被害軽減機能の動作態様を決定するための閾値データ等は記憶部12に形成された閾値テーブル121に記憶される。具体的には、閾値テーブル121には、各動作態様種別が選択される運転者の視線の障害物Tに向けられた累積時間の範囲(上限・下限の閾値)のデータが記憶される。言い換えれば(別のデータ形式では)、閾値テーブル121には、運転者の視線の障害物Tに向けられた各累積時間に対する動作態様種別のデータが記憶される。
【0084】
そして、これらの動作態様情報テーブル122及び閾値テーブル121に記憶される各データは、予め実験等に基づき適宜設定される。
【0085】
このように、制動力は、車両Vと障害物Tとの衝突危険度との関係により決定される。そして、コントローラ11は、運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間に基づいて衝突被害軽減に対する制動を開始する衝突危険度の閾値r23、r24を変更する。言い換えれば、コントローラ11(動作態様変更部114)は、運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間に基づき、さらに衝突危険度に応じて、車両Vに対する制動力を段階的に切り替える。この構成によれば、運転者が障害物Tを注視し、衝突する可能性が低い状況において制動力を小さくすることができ、過剰な制動制御を抑制できる。また、運転者が障害物Tをよく見ておらず、衝突する可能性が高い状況において制動力を大きくすることができ、効果的な制動動作を行うことが可能である。
【0086】
また、衝突危険度が各閾値に達する毎に急激に制度力が変化するので、閾値を効果的に設定することにより、運転者が衝突危険度の節目となる制度力の変動に気づき易くなる。
【0087】
また、上述の
図5に示した音量制御と
図6に示した制動制御とを併用することも効果的である。
【0088】
また、コントローラ11は、障害物Tの位置、進行方向及び速度に関する情報とセンサ部5により検出された車両Vの進行方向及び速度に関する情報だけでなく、運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間に基づき、車両Vが障害物Tと衝突する可能性を示す衝突危険度を予測することにしても良い。
【0089】
この場合、
図3に示した衝突危険度と警告音量の制御線は制御線L10の1本だけとなり、衝突危険度のデータに運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間の要素が含まれることになる。
【0090】
また、
図4に示した衝突危険度と制動力の制御線は制御線L20の1本だけとなり、衝突危険度のデータに運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間の要素が含まれることになる。
【0091】
また、
図5に示した衝突危険度と警告音量の制御線L30の値が変化する衝突危険度に対する閾値r13、r14は固定値となり、上述の例で変更した閾値r131、r132、r141、r142は用いられなくなる。
【0092】
また、
図6に示した衝突危険度と制動力の制御線L40の値が変化する衝突危険度に対する閾値r23、r24は固定値となり、上述の例で変更した閾値r231、r232、r241、r242は用いられなくなる。
【0093】
このような構成によれば、衝突危険度を利用した各種対衝突制御に対して、運転者の障害物Tへの注視状況に応じた高度な制御への変更を簡単に実現できる。
【0094】
また、障害物識別部111は、車両Vが衝突する可能性がある障害物Tを、複数識別することがある。この場合、視線検出部112は、当該複数の障害物Tの各々に対して、車両Vの運転者の視線が向けられている状態(以降、運転者注視状態と称する)を個別に検出する。計時部113は、車両Vの運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間を、複数の障害物Tの各々に関して個別に計測する。すなわち、コントローラ11は、障害物Tが複数である場合に、複数の障害物Tの各々に対し、個別に運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間を計測する。
【0095】
動作態様変更部114は、車両Vの運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間が、予め定められた基準値よりも長いか、短いかを、複数の障害物Tの各々に関して個別に判定する。そして、動作態様変更部114は、当該累積時間に基づき、衝突被害軽減制御装置3によって行われる車両Vの衝突被害軽減機能の動作態様を変更する。
【0096】
具体的には、音量制御については、各障害物に対する衝突危険度と運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間に応じて、各障害物に対する警告音量を制御する。この場合、警告音声内容に障害物の位置或いは方向を示す内容を加えるのが好ましい。また、制動制御については、各障害物に対する衝突危険度と運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間に応じて、各障害物に対する制動力を制御することになる。しかしながら、制動制御は各障害物別に行うことができないので、最も制動力が大きくなる、つまり衝突危険度が高くなる、また運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間が短い障害物に対する制動力が適用されることになる。
【0097】
なお、衝突被害軽減機能の動作態様の変更に関し、車両Vが衝突する可能性がある障害物Tが複数である場合の、運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間の基準値、衝突危険度の閾値、並びに警告音量及び制動力の大小の程度に関する情報は、記憶部12に形成された閾値テーブル121及び動作態様情報テーブル122に予め記憶される。そして、衝突被害軽減機能における、これらの基準値、閾値情報及び動作態様情報等の動作態様情報は、予め実験等に基づき適宜設定される。
【0098】
上記の構成によれば、障害物Tが複数であっても、個々の障害物Tに対する衝突危険度と運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間とを総合的に考慮して、運転者に対する警告音量及び制動力を制御することができるので、過剰な制御を抑制でき、また障害物Tとの衝突を効果的に防止できる。
【0099】
<2-4.衝突被害軽減機能制御装置の動作例>
続いて、衝突被害軽減機能制御装置1の動作の一例について、
図7を用いて説明する。
図7は、衝突被害軽減機能制御装置1が行う衝突被害軽減機能に対する動作態様変更処理を示すフローチャートである。
図7に示す処理は、衝突被害軽減機能制御装置1のコントローラ11によって実行され、衝突被害軽減機能の動作開始時(エンジン起動時や、運転者による動作開始操作時)に処理が開始され、繰り返し実行される。
【0100】
ステップS101において、コントローラ11(障害物識別部111)は、障害物Tを検出処理を実行し、ステップS102に移る。具体的に言えば、コントローラ11は、撮影部4及びセンサ部5から、車両Vの前方(進行方向)の状態(或いは、左右後方も含んだ車両周囲の状態)及び車両Vの状態に関する情報を取得し、画像処理等により障害物Tの存在を検出する。
【0101】
ステップS102において、コントローラ11(障害物識別部111)は、ステップS101の検出結果に基づき、車両V(自車両)の速度、進行方向データを記憶部12に記憶し、ステップS103に移る。
【0102】
ステップS103において、コントローラ11(障害物識別部111)は、車両Vが衝突する可能性がある障害物Tを識別し、判定対象障害物TとしてステップS104に移る。具体的に言えば、コントローラ11は、障害物Tの進行方向及び速度に関する情報と車両Vの進行方向及び速度に関する情報とに基づき、車両Vと障害物Tとの衝突を予測する。つまり、例えばコントローラ11(障害物識別部111)は、衝突被害軽減制御装置3により算出された車両Vと障害物Tとの衝突危険度が予め実験等により適宜定めた所定値を超える障害物を判定対象障害物Tとする。
【0103】
ステップS104において、コントローラ11(障害物識別部111)は、記憶部12に設けられた判定対象障害物テーブル123に記憶されている各判定対象障害物Tのデータを、ステップS103の識別結果に応じた更新処理を実行し、ステップS105に移る。具体的には、判定対象障害物テーブル123は判定対象障害物T毎に形成されるデータレコードにより構成され、各データレコードには判定対象障害物Tに関する識別データ、進行方向、速度、衝突危険度、当該判定対象障害物Tに対して運転者注視状態の累積時間の各データが記憶されるようになっている。そして、ステップS104においては、判定対象障害物Tに関する識別データ、進行方向、速度、衝突危険度のデータが更新記憶される。
【0104】
なお、新たに識別された判定対象障害物Tの場合は、判定対象障害物テーブル123に当該判定対象障害物Tに対するデータレコードが形成され、ステップS101で検出された当該判定対象障害物Tおよび車両Vに関する各種データに基づき、当該判定対象障害物Tに対する識別データ、進行方向、速度、衝突危険度が算出され、記憶される。また、当該判定対象障害物Tに対する運転者注視状態の累積時間の初期値として0が記憶される。
【0105】
また、過去に存在した判定対象障害物Tが消滅した場合(検出されなくなった場合)は、判定対象障害物テーブル123の当該判定対象障害物Tに対するデータレコードは削除される。
【0106】
ステップS105において、コントローラ11(視線検出部112)は、車両Vの運転者の視線を検出し、各判定対象障害物Tに対する運転者注視状態の時間を計測して、判定対象障害物テーブル123における対応する判定対象障害物Tに対する運転者注視状態の累積時間に当該計測時間を加算し、ステップS106に移る。なお、当該時間計測処理と累積時間の加算処理は、別途サブルーチンとして、短時間周期で繰り返し行う常時処理とする方が精度が上がる。
【0107】
ステップS106において、コントローラ11(動作態様変更部114)は、判定対象障害物テーブル123に記憶された判定対象障害物Tに対する運転者注視状態の累積時間に応じて、衝突被害軽減制御装置3によって行われる車両Vの衝突被害軽減機能の動作態様を設定(変更)し、ステップS107に移る。具体的に言えば、コントローラ11は、判定対象障害物Tに対する運転者注視状態の累積時間と閾値テーブル121の閾値データに基づいて動作態様種別を決定する。
【0108】
なお、コントローラ11(動作態様変更部114)は、複数の判定対象障害物Tに対する各動作態様種別が異なる場合は、最も衝突の危険を回避できる動作態様種別、例えば最も警告音量が高くなる動作態様種別、或いは最も制動力が高くなる動作態様種別を、適用する動作態様種別として決定する。
【0109】
そして、ステップS107において、コントローラ11は、設定した動作態様に基づいて衝突被害軽減制御装置3を制御し、処理を終える。具体的に言えば、コントローラ11は、ステップS106で決定した動作態様種別と動作態様情報テーブル122における動作態様データに基づいて衝突被害軽減制御装置3を動作させる。その結果、衝突被害軽減制御装置3は決定された動作態様で、検出した危険度に応じた動作、例えば
図3から
図6を用いて説明した衝突被害軽減機能の動作態様での動作が実行されることとなる。
【0110】
このような処理により、障害物の衝突危険度に応じた適切な態様で衝突被害軽減制御装置3の動作を制御することができる。また、判定対象障害物テーブル123を用いた処理により、比較的簡単な構成・プログラムで、複数の障害物に対応した衝突被害軽減制御装置3の動作制御を行うことが可能となる。
【0111】
また、上述の障害物T及び自車両Vの状態、そして運転者の視線が障害物Tに向けられた累積時間に基づいて衝突危険度を予測する実施形態の場合、次のように処理を変更すると良い。ステップS106において、コントローラ11(動作態様変更部114)は、判定対象障害物テーブル123に記憶された判定対象障害物Tに対する衝突危険度データを、当該判定対象障害物Tに対する運転者注視状態の累積時間に応じて補正する。この補正処理がいわば動作態様種別の変更と同等の処理となる。そして、ステップS107において、コントローラ11は、補正した衝突危険度データを用いて衝突被害軽減制御装置3を制御し(本処理の場合、動作態様は1つ(固定)である)、処理を終える。
【0112】
<3.留意事項等>
本明細書中で実施形態として開示された種々の技術的特徴は、その技術的創作の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれる。また、本明細書中で示した複数の実施形態は、可能な範囲で適宜組み合わせて実施して良い。
【0113】
また、上記実施形態では、プログラムに従ったCPUの演算処理によってソフトウェア的に各種の機能が実現されていると説明したが、これらの機能のうちの一部は電気的なハードウェア資源によって実現されて良い。また逆に、ハードウェア資源によって実現されるとした機能のうちの一部は、ソフトウェア的に実現されて良い。
【符号の説明】
【0114】
1 衝突被害軽減機能制御装置
2 制動装置
3 衝突被害軽減制御装置
4 撮影部
5 センサ部
6 スピーカ
7 表示部
11 コントローラ
12 記憶部
111 障害物識別部
112 視線検出部
113 計時部
114 動作態様変更部
T 障害物
V 車両