(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089698
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】リーブオン消毒剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240627BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240627BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240627BHJP
A01N 31/14 20060101ALI20240627BHJP
A01N 31/04 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q19/10
A01P3/00
A01N31/14
A01N31/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205041
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野 和希
(72)【発明者】
【氏名】角田 千里
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮介
【テーマコード(参考)】
4C083
4H011
【Fターム(参考)】
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC122
4C083AD041
4C083AD042
4C083BB48
4C083CC23
4C083EE07
4H011AA03
4H011AA04
4H011BB03
4H011BC03
4H011BC18
4H011DA13
4H011DD07
4H011DG01
(57)【要約】
【課題】殺菌性能を有し、対象物に適用した際には殺菌成分を対象物表面に長時間残留させることが可能であって、皮膚に適用した際には皮膚表面になじみやすいリーブオン消毒剤組成物を提供する。
【解決手段】成分(A):殺菌性能を有するポリオール、及び成分(B):前記成分(A)以外の化合物(但し、水及び低級アルコールを除く)、を含有するリーブオン消毒剤組成物であって、前記成分(B)は、前記成分(A)のオクタノール/水分配係数をlogPA、前記成分(B)のオクタノール/水分配係数をlogPBとした場合に、logPBとlogPAとの差分(logPB-logPA)が-2.20以上3.00以下であり、前記組成物中の前記成分(A)及び前記成分(B)の合計含有量が3.0質量%以上10質量%以下であり、前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比[(A)/(B)]が7.5以下である、リーブオン消毒剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):殺菌性能を有するポリオール、及び
成分(B):前記成分(A)以外の化合物(但し、水及び低級アルコールを除く)、
を含有するリーブオン消毒剤組成物であって、
前記成分(B)は、前記成分(A)のオクタノール/水分配係数をlogPA、前記成分(B)のオクタノール/水分配係数をlogPBとした場合に、logPBとlogPAとの差分(logPB-logPA)が-2.20以上3.00以下であり、
前記組成物中の前記成分(A)及び前記成分(B)の合計含有量が3.0質量%以上10質量%以下であり、
前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比[(A)/(B)]が7.5以下である、リーブオン消毒剤組成物。
【請求項2】
前記logPAが-3.00以上である、請求項1に記載のリーブオン消毒剤組成物。
【請求項3】
前記成分(A)が炭素数4以上12以下の鎖状ポリオールである、請求項1又は2に記載のリーブオン消毒剤組成物。
【請求項4】
前記成分(A)がジプロピレングリコール及び1,2-ヘキサンジオールからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のリーブオン消毒剤組成物。
【請求項5】
前記成分(B)の沸点BPBと前記成分(A)の沸点BPAとの差分(BPB-BPA)が-30℃以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のリーブオン消毒剤組成物。
【請求項6】
前記成分(B)がヒドロキシ基を有する分子量1,000以下の化合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載のリーブオン消毒剤組成物。
【請求項7】
前記成分(B)中のヒドロキシ基数が2以上4以下である、請求項6に記載のリーブオン消毒剤組成物。
【請求項8】
さらに水以外の水性媒体を含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のリーブオン消毒剤組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のリーブオン消毒剤組成物を皮膚に適用する工程を含む、皮膚の消毒方法。
【請求項10】
殺菌性能を有するポリオール(A)の殺菌効果を持続させる方法であって、
前記方法は、前記成分(A)と、前記成分(A)以外の化合物(B)(但し、水及び低級アルコールを除く)とを用いる工程を含み、
前記成分(B)は、前記成分(A)のオクタノール/水分配係数をlogPA、前記成分(B)のオクタノール/水分配係数をlogPBとした場合に、logPBとlogPAとの差分(logPB-logPA)が-2.20以上3.00以下であり、
前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比[(A)/(B)]が7.5以下である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーブオン消毒剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の調査によれば、人の日常生活における菌又はウイルスの感染経路としては接触感染が多いことが知られてきている。接触感染は主として、菌又はウイルスの感染者、ドアノブ、ハンドル、食器、玩具、その他日用品、内装品等の被接触物に手指が接触することにより起こる。
【0003】
このような日常生活での接触行動による菌又はウイルスの接触感染を予防する方法が求められている。
手指を介しての菌又はウイルスの接触感染を予防する方法として、手指にアルコール系消毒剤等を適用して殺菌消毒する方法が知られている。しかしながら殺菌乃至消毒成分として用いられるエタノール等のアルコールは揮発性が高く、皮膚表面に長時間残留させることが難しいため、殺菌性能の持続性が充分ではなかった。
【0004】
そこで、エタノール以外の殺菌成分を配合したリーブオン型の皮膚用消毒剤又は抗菌剤組成物も検討されている。例えば特許文献1には、カチオン殺菌消毒剤、低級アルコール、油性基剤、高級脂肪族アルコール、親油性と親水性の非イオン界面活性剤、水溶性多価アルコール及び精製水を含み、かつ効果持続型の殺菌消毒クリームが、皮膚、手指及び外傷性傷の持続的な消毒効果と手荒れ防止効果を兼ね備えたものであることが開示されている。
特許文献2には、溶解型のアゼライン酸を0.1~10重量%含み、pHが所定の範囲にある抗菌用組成物が、実用上十分な抗菌力を発揮できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-284412号公報
【特許文献2】特開2016-188258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の組成物では、所定の殺菌剤又は抗菌剤が使用されている。しかしながら本発明者らの検討によれば、特許文献1で使用されているカチオン性殺菌剤は、ステンレス、ガラス等の無機物と比較してヒトの皮膚表面に対する殺菌効果が得られ難いという知見が得られている。また特許文献2にも記載されているように、殺菌剤又は抗菌剤は、皮膚刺激性、人体への安全性等の観点から、皮膚用の組成物中への配合量が実質的に制限されることがある。そのため従来技術では、殺菌剤又は抗菌剤による皮膚の殺菌性及びその持続効果は充分なものとはいえず、さらなる改善が望まれていた。特に、皮膚等に適用した後に洗い流さずに用いるリーブオン型の組成物では、殺菌性の持続効果を得るために、殺菌成分を皮膚表面に長時間残留させる技術も重要である。しかしながら特許文献1及び2では該技術については言及されていない。
さらにリーブオン型の組成物においては、皮膚表面に適用した際のなじみやすさも重要であるが、この点については特許文献1及び2では検討されていない。
【0007】
本発明は、殺菌性能を有し、皮膚に適用した際には殺菌成分を皮膚表面に長時間残留させることが可能であって、皮膚表面になじみやすいリーブオン消毒剤組成物の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、殺菌性能を有するポリオールと、該ポリオールと所定の関係性を満たす化合物とを特定割合で含有するリーブオン消毒剤組成物が、上記効果を奏することを見出した。
すなわち本発明は、下記に関する。
[1]成分(A):殺菌性能を有するポリオール、及び成分(B):前記成分(A)以外の化合物(但し、水及び低級アルコールを除く)、を含有するリーブオン消毒剤組成物であって、前記成分(B)は、前記成分(A)のオクタノール/水分配係数をlogPA、前記成分(B)のオクタノール/水分配係数をlogPBとした場合に、logPBとlogPAとの差分(logPB-logPA)が-2.20以上3.00以下であり、前記組成物中の前記成分(A)及び前記成分(B)の合計含有量が3.0質量%以上10質量%以下であり、前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比[(A)/(B)]が7.5以下である、リーブオン消毒剤組成物。
[2]上記[1]に記載のリーブオン消毒剤組成物を皮膚に適用する工程を含む、皮膚の消毒方法。
[3]殺菌性能を有するポリオール(A)の殺菌効果を持続させる方法であって、前記方法は、前記成分(A)と、前記成分(A)以外の化合物(B)(但し、水及び低級アルコールを除く)とを用いる工程を含み、前記成分(B)は、前記成分(A)のオクタノール/水分配係数をlogPA、前記成分(B)のオクタノール/水分配係数をlogPBとした場合に、logPBとlogPAとの差分(logPB-logPA)が-2.20以上3.00以下であり、前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比[(A)/(B)]が7.5以下である、方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、殺菌性能を有し、対象物に適用した際には殺菌成分を対象物表面に長時間残留させることが可能であって、皮膚に適用した際に皮膚表面になじみやすいリーブオン消毒剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[リーブオン消毒剤組成物]
本発明のリーブオン消毒剤組成物(以下、単に「(本発明の)組成物」ともいう)は、成分(A):殺菌性能を有するポリオール、及び成分(B):前記成分(A)以外の化合物(但し、水及び低級アルコールを除く)、を含有するリーブオン消毒剤組成物であって、前記成分(B)は、前記成分(A)のオクタノール/水分配係数をlogPA、前記成分(B)のオクタノール/水分配係数をlogPBとした場合に、logPBとlogPAとの差分(logPB-logPA)が-2.20以上3.00以下であり、前記組成物中の前記成分(A)及び前記成分(B)の合計含有量が3.0質量%以上10質量%以下であり、前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比[(A)/(B)]が7.5以下である。
本発明の組成物は上記構成を有することにより、殺菌性能を有し、対象物に適用した際には殺菌成分を対象物表面に長時間残留させることが可能であって、皮膚に適用した際に皮膚表面になじみやすいリーブオン消毒剤組成物となる。
【0011】
本発明の組成物が上記効果を奏する理由については定かではないが、次のように考えられる。
成分(A)であるポリオールは、親水部であるヒドロキシ基と、炭素原子を含む疎水部とを有する。前記親水部は水分子との親和性が高く相互作用を形成する。一方、前記疎水部は水の三次元水素結合ネットワークを歪ませるないし破壊する。これはエタノール等と同じ作用である。この水の三次元水素結合ネットワークの歪みないし破壊により、菌周囲の水の環境が変化する。この変化により、例えば菌の親水性の膜タンパク質を変性させる作用を有していると考えられる。
【0012】
成分(A)は、皮膚表面へのなじみやすさの観点からは、後述するように低分子ポリオールであることが好ましい。低分子ポリオールである成分(A)は、エタノールよりは揮発性が低いものの、リーブオン消毒剤組成物用の殺菌成分として用いた場合には、皮膚表面に適用した後に経時で揮発し、殺菌性能の持続性が低下するおそれがある。そこで本発明者らが検討した結果、成分(A)とのオクタノール/水分配係数の差が特定の範囲にある化合物(成分(B))を所定の割合で用いることで成分(A)の揮発を抑制できることが見出された。この作用により、組成物を対象物に適用した際に殺菌成分である成分(A)を、対象物表面に長時間残留させることが可能になり、成分(A)による殺菌性能の持続性が向上すると考えられる。
また、組成物中の成分(A)及び成分(B)の合計含有量が3.0質量%以上であることで十分な殺菌性能を確保することができ、10質量%以下であることで、皮膚表面に素早くなじませることができると考えられる。
【0013】
本発明の組成物の適用対象物は、本発明の有用性が高いという観点で、好ましくは皮膚であり、より好ましくは頭皮を除く皮膚である。すなわち本発明の組成物は、好ましくは皮膚用のリーブオン消毒剤組成物である。本明細書において「皮膚用のリーブオン消毒剤組成物」とは、皮膚に適用後、水洗等で除去せずに用いる皮膚用の消毒剤組成物を意味する。
本発明の有用性が高いという観点で、本発明の組成物は、手指用のリーブオン消毒剤組成物であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明の組成物が殺菌性能を発現する対象となる菌としては、該組成物との接触により不活性化又は死滅するものであれば特に制限されず、例えば厚生労働省の保育所における感染症対策ガイドラインに記載の微生物を適用することができる。
具体的には、菌としてはグラム陽性細菌である炭疽菌、結核菌、溶血性レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、腸球菌等、あるいはグラム陰性細菌である野兎病菌、ペスト菌、ブルセラ菌、鼻疽菌、コレラ菌、サルモネラ菌、赤痢菌、大腸菌、百日咳菌等が挙げられる。
【0015】
また、本発明の組成物は、菌だけでなく、ウイルスに対する消毒剤組成物としても使用することができる。該ウイルスとしては、エンベロープウイルスであるアレナウイルス、エボラウイルス、痘そうウイルス、ナイロウイルス、マールブルグウイルス、コロナウイルス、サル痘ウイルス、ベータコロナウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルス、ヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、風しんウイルス、麻しんウイルス等、及びノンエンベロープウイルスであるエンテロウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス等が挙げられる。
なお、本実施例では、腸球菌を例に挙げて殺菌性を評価しているが、本発明の方法が対象とする菌又はウイルスはこれに限定されない。
【0016】
<成分(A):殺菌性能を有するポリオール>
成分(A)として用いられる、殺菌性能を有するポリオールとは、1分子中に2以上のヒドロキシ基を有し、且つ殺菌性能を有する化合物をいう。また、ここでいう「殺菌性能を有する」とは、成分(A)の含有量が0.1~5質量%、残部がエタノールと水からなる組成物を用いて、実施例に記載のEnterococcus hirae Farrow and Collins 1985 NBRC 3181株を用いた殺菌性評価を行い、前記組成物を、成分(A)が0.01mg/cm2となる量用いた場合の菌数の対数減少値aと、前記組成物から成分(A)を除いた組成物を同量用いた場合の菌数の対数減少値bとの差分(a-b)が0.50以上であることをいう。
上記殺菌性能は、具体的には実施例に記載の方法により評価することができる。
【0017】
成分(A)のオクタノール/水分配係数であるlogPAは、殺菌性能を向上させる観点から、好ましくは-3.00以上、より好ましくは-2.50以上、さらに好ましくは-2.00以上、よりさらに好ましくは-1.50以上、よりさらに好ましくは-1.20以上、よりさらに好ましくは-1.00以上、よりさらに好ましくは-0.50以上である。logPAが大きいほど成分(A)の疎水性が高くなり、水の三次元水素結合ネットワークを歪ませるないし破壊する効果が得られやすいと考えられる。
一方で、組成物を皮膚に適用した際の成分(A)の経皮吸収を防ぎ、殺菌性能及びその持続性を向上させる観点から、logPAは、好ましくは3.00以下、より好ましくは2.00以下、さらに好ましくは1.00以下である。
ここで、
PA:1-オクタノールと水の2つの溶媒相中に成分(A)を加えて平衡状態となった時の、その2つの溶媒相における成分(A)の濃度比
logPA=log10(1-オクタノール相中の成分(A)の濃度/水相中の成分(A)の濃度)
である。
成分(A)のlogPAは、ChemDraw Professionalを使用して求めることができる。
【0018】
成分(A)の沸点は特に制限されないが、殺菌性能を向上させる観点、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、よりさらに好ましくは180℃以上、よりさらに好ましくは200℃以上である。また、皮膚表面へのなじみやすさを向上させる観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは270℃以下、さらに好ましくは250℃以下である。
上記沸点は、常圧(1atm)、25℃における沸点である。
【0019】
成分(A)は、組成物の殺菌性能を向上させる観点、及び皮膚表面へのなじみやすさを向上させる観点から、低分子化合物であることが好ましい。具体的には、成分(A)の分子量は、好ましくは1,000以下、より好ましくは800以下、さらに好ましくは500以下、よりさらに好ましくは300以下、よりさらに好ましくは250以下、よりさらに好ましくは200以下である。また、皮膚に適用した際に皮膚表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点から、好ましくは50以上、より好ましくは80以上、さらに好ましくは100以上である。
【0020】
成分(A)の炭素数は、殺菌性能を向上させる観点、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上であり、水の三次元水素結合ネットワークを歪ませるないし破壊することにより殺菌性能を向上させる観点から、好ましくは24以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは16以下、よりさらに好ましくは12以下、よりさらに好ましくは11以下、よりさらに好ましくは8以下である。
また成分(A)中のヒドロキシ基数は、殺菌性能を向上させる観点、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点から、好ましくは2以上5以下であり、より好ましくは2以上4以下、さらに好ましくは2以上3以下、よりさらに好ましくは2である。
【0021】
成分(A)としては、鎖状ポリオール、環状構造を有するポリオールのうち殺菌性能を有するものが挙げられる。鎖状ポリオールにおける「鎖状」には、直鎖及び分岐鎖のいずれも含まれる。
成分(A)は、水の三次元水素結合ネットワークを歪ませるないし破壊することにより殺菌性能を発現させる観点から、好ましくは鎖状ポリオールであり、より好ましくは炭素数4以上12以下の鎖状ポリオールであり、さらに好ましくは、炭素数4以上12以下の鎖状ジオール又はトリオールである。
なお鎖状ポリオールにおいて、ヒドロキシ基の結合位置は特に制限されない。
【0022】
成分(A)としては、ジプロピレングリコール及び1,2-ヘキサンジオールからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
上記の中でも、殺菌性能を向上させる観点、並びに、皮膚表面へのなじみやすさを向上させる観点から、成分(A)は、好ましくはジプロピレングリコールである。
【0023】
<成分(B):成分(A)以外の化合物>
成分(B)は、成分(A)以外の化合物(但し、水及び低級アルコールを除く)であって、成分(A)のオクタノール/水分配係数をlogPA、成分(B)のオクタノール/水分配係数をlogPBとした場合に、logPBとlogPAとの差分(logPB-logPA)が-2.20以上3.00以下である化合物である。
本明細書において「低級アルコール」とは、炭素数4以下のモノアルコールを意味し、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールが含まれる。
前記logPBとlogPAとの差分(logPB-logPA)は、殺菌性能を向上させる観点、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させる観点、並びに、皮膚表面へのなじみやすさを向上させる観点から、好ましくは-2.15以上、より好ましくは-1.80以上、さらに好ましくは-1.60以上、よりさらに好ましくは-1.20以上であり、また、好ましくは2.20以下、より好ましくは1.80以下、さらに好ましくは1.50以下、よりさらに好ましくは1.00以下、よりさらに好ましくは0.60以下、よりさらに好ましくは0.30以下、よりさらに好ましくは0.10以下である。
logPBは前記logPAと同様の方法で求めることができる。
【0024】
成分(B)を2種以上用いる場合、logPBはすべての成分(B)の加重平均をとるものではなく、化合物単独でのlogPBと、logPAとの差分が-2.20以上3.00以下の範囲となる必要がある。
【0025】
また、成分(B)の沸点BPBは、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点から、成分(A)の沸点BPAよりも低すぎないことが好ましい。具体的には、成分(B)の沸点BPBと成分(A)の沸点BPAとの差分(BPB-BPA)は、好ましくは-50℃以上、より好ましくは-30℃以上、さらに好ましくは-20℃以上、よりさらに好ましくは-10℃以上、よりさらに好ましくは-5℃以上である。(BPB-BPA)の上限は特に限定されないが、通常は150℃以下であり、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下である。
上記沸点は、いずれも常圧(1atm)、25℃における沸点である。
【0026】
本発明の組成物は、成分(A)を消毒剤の有効成分として含有する。この観点から、成分(B)は、好ましくは殺菌性能を有さない化合物である。
【0027】
成分(B)は、成分(A)との混和性の観点、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点、並びに、皮膚表面へのなじみやすさを向上させる観点から、好ましくはヒドロキシ基を有する分子量1,000以下の化合物であり、より好ましくは分子量1,000以下のポリオールである。
成分(B)の分子量は、より好ましくは800以下、さらに好ましくは500以下、よりさらに好ましくは300以下である。また、成分(B)の揮発を抑制する観点から、好ましくは50以上、より好ましくは70以上である。
【0028】
成分(B)の炭素数は、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点、並びに、皮膚表面へのなじみやすさを向上させる観点から、好ましくは36以下、より好ましくは28以下、さらに好ましくは24以下、よりさらに好ましくは18以下、よりさらに好ましくは12以下、よりさらに好ましくは8以下である。
また成分(B)中のヒドロキシ基数は、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点、並びに、皮膚表面へのなじみやすさを向上させる観点から、好ましくは2以上5以下であり、より好ましくは2以上4以下、さらに好ましくは2以上3以下である。
【0029】
成分(B)として用いられるポリオールは、鎖状ポリオール、環状構造を有するポリオールが挙げられる。鎖状ポリオールにおける「鎖状」には、直鎖及び分岐鎖のいずれも含まれる。
成分(B)は、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点、並びに、皮膚表面へのなじみやすさを向上させる観点から、好ましくは鎖状ポリオールである。
なお鎖状ポリオールにおいて、ヒドロキシ基の結合位置は特に制限されない。
【0030】
成分(B)として用いられるポリオールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール(1,4-ブタンジオール)、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の直鎖状ジオール;
グリセロール、ジグリセロール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,7-ヘプタントリオール、1,2,8-オクタントリオール、1,2,9-ノナントリオール、1,2,10-デカントリオール等の直鎖状トリオール又はテトラオール;
2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、(ラウリル/ミリスチル)グリコールヒドロキシプロピルエーテル、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカン-1,2,3-トリオール等の分岐鎖状ジオール又はトリオール;及び、
ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、PPG-10ブタンジオール等のポリマー;等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。
上記の中でも、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点、並びに、皮膚表面へのなじみやすさを向上させる観点から、成分(B)は、好ましくはプロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール(1,4-ブタンジオール)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、ジグリセロール、1,2,6-ヘキサントリオール、及び2-エチル-1,3-ヘキサンジオールからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは1,4-ブチレングリコール(1,4-ブタンジオール)及びグリセロールからなる群から選ばれる1種以上である。
【0031】
<含有量>
本発明の組成物中の成分(A)の含有量は、殺菌性能を向上させる観点、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、よりさらに好ましくは0.5質量%以上、よりさらに好ましくは0.7質量%以上、よりさらに好ましくは1.0質量%以上、よりさらに好ましくは2.0質量%以上である。また、組成物の皮膚表面へのなじみやすさを向上させる観点から、好ましくは7.5質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下、よりさらに好ましくは4.0質量%以下である。
【0032】
本発明の組成物中の成分(B)の含有量は、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点から、好ましくは0.4質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、よりさらに好ましくは1.5質量%以上である。また、組成物の皮膚表面へのなじみやすさを向上させる観点から、好ましくは9.9質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下、さらに好ましくは6.0質量%以下、よりさらに好ましくは5.0質量%以下である。
【0033】
本発明の組成物中の成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、殺菌性能を向上させる観点、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点から、3.0質量%以上であり、好ましくは3.4質量%以上、より好ましくは3.75質量%以上、さらに好ましくは4.0質量%以上である。また、組成物の皮膚表面へのなじみやすさを向上させる観点から、10質量%以下であり、好ましくは9.0質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下、さらに好ましくは7.0質量%以下である。
【0034】
本発明の組成物中の成分(B)に対する成分(A)の質量比[(A)/(B)]は、対象物に適用した際に成分(A)を対象物表面に長時間残留させ、組成物の殺菌性能の持続性を向上させる観点から、7.5以下であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。また、組成物の殺菌性能を向上させる観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上、よりさらに好ましくは0.5以上、よりさらに好ましくは0.7以上である。
【0035】
<水>
本発明の組成物は、成分(A)及び成分(B)を溶解させる観点、及び皮膚表面等の対象物に適用しやすくする観点から、さらに水を含有することが好ましい。
本発明の組成物が水を含有する場合、組成物中の水の含有量は、剤型によっても異なるが、成分(A)及び成分(B)を溶解させる観点、及び皮膚表面等の対象物に適用しやすくする観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、また、97質量%以下である。
【0036】
<水性媒体>
本発明の組成物は、成分(A)及び成分(B)を溶解させる観点、及び皮膚表面等の対象物に適用しやすくする観点から、さらに水以外の水性媒体を含有することが好ましい。水性媒体としては、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールが挙げられる。これらの中でも、成分(A)及び成分(B)との混和性の観点からはエタノールが好ましい。
本発明の組成物が水性媒体を含有する場合、組成物中の水性媒体の含有量は、剤型によっても異なるが、成分(A)及び成分(B)を溶解させる観点、及び皮膚表面等の対象物に適用しやすくする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは40質量%以上、よりさらに好ましくは50質量%以上であり、また、97質量%以下である。
組成物中の水及び水性媒体の含有量は、成分(A)及び成分(B)の残部であってもよい。
【0037】
<その他の成分>
本発明の組成物は、前述した成分以外に、必要に応じて他の成分、例えば、界面活性剤、pH調整剤、増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、制汗剤、香料、保湿剤、感触調整剤、抗炎症剤等を含有させることもできる。
【0038】
本発明の組成物は、成分(A)以外の殺菌剤を含有していてもよいが、該含有量が少なくても本発明の効果を奏する。該殺菌剤としては、カチオン殺菌剤、ヨウ素系殺菌剤、フェノール系殺菌剤、ビグアナイド系殺菌剤、テルペノイド系殺菌剤、塩素系殺菌剤、及び両性界面活性剤系殺菌剤からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの殺菌剤は、皮膚外用剤組成物において好適に用いられるものである。
【0039】
カチオン殺菌剤としては、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
ヨウ素系殺菌剤としては、ポビドンヨード、ポリビニルアルコールヨード、シクロデキストリンヨード等が挙げられる。
フェノール系殺菌剤としては、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、フェノキシエタノール等が挙げられる。
ビグアナイド系殺菌剤としては、クロルヘキシジングルコン酸塩等が挙げられる。
テルペノイド系殺菌剤としては、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸ステアリル、β-グリチルレチン酸等が挙げられる。
塩素系殺菌剤としては、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素化イソシアヌル酸等が挙げられる。
両性界面活性剤系殺菌剤としては、アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩、アルキルポリアミノエチルグリシン等が挙げられる。
【0040】
本発明の組成物中の前記殺菌剤の含有量は、皮膚刺激性抑制の観点、及び経済性の観点から、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下、よりさらに好ましくは0.5質量%以下、よりさらに好ましくは0.2質量%以下、よりさらに好ましくは0.1質量%以下、よりさらに好ましくは0.07質量%以下、よりさらに好ましくは0.05質量%以下であり、実質0質量%であってもよい。
【0041】
<剤型>
組成物の剤型は特に制限されないが、対象物への適用しやすさの観点からは、液状、ジェル状、クリーム状であることが好ましい。また、本発明の組成物は乳化組成物の形態であってもよく、該乳化組成物としては水中油型乳化組成物、油中水型乳化組成物のいずれでもよい。
【0042】
本発明の組成物は、前記の通り、皮膚用のリーブオン消毒剤組成物であることが好ましく、手指用のリーブオン消毒剤組成物であることがより好ましい。好ましい剤型としては、例えば、固形状組成物を備えたスティック製剤;液状組成物を充填したロールオン製剤もしくはスプレー製剤;液状、ジェル状又はクリーム状組成物をボトル、チューブ、ディスペンサー式容器等に充填した製剤、組成物を含浸させたシート製品等が挙げられる。
【0043】
[皮膚の消毒方法]
本発明はまた、本発明のリーブオン消毒剤組成物を皮膚に適用する工程を含む、皮膚の消毒方法を提供する。
前記組成物を皮膚に適用する方法は適用部位等に応じて適宜選択でき、例えば、組成物を皮膚表面に塗布、噴霧等して適用することができる。
【0044】
前記方法においては、前記リーブオン消毒剤組成物を皮膚に適用した後に水洗等で該組成物を除去せず、皮膚表面に残留させることが好ましい。該組成物をリーブオン消毒剤組成物として用いて、殺菌成分である成分(A)、並びに成分(B)を皮膚表面に残留させることにより、殺菌性能及びその持続性を発現するためである。
【0045】
組成物を皮膚に適用する工程にいて、組成物の適用量は特に制限されない。高い殺菌性能を発現する観点からは、通常、両てのひらに対し、前記組成物を好ましくは0.1mL以上5mL以下の範囲で適用する。
【0046】
前記組成物は予め水、石鹸、ボディソープ、ハンドソープなどで皮膚を洗浄し、洗浄後の皮膚に適用してもよく、未洗浄の皮膚に適用することもできる。洗浄後の皮膚は、生来存在する皮膚の保護成分が洗い流され、外界に存在する菌やウイルスの防御力が低下している状態であることから、洗浄後の皮膚に前記組成物を適用することがより好ましい。
【0047】
[殺菌効果を持続させる方法]
本発明はさらに、殺菌性能を有するポリオール(A)の殺菌効果を持続させる方法であって、前記成分(A)と、前記成分(A)以外の化合物(B)とを用いる工程を含み、前記成分(B)は、前記成分(A)のオクタノール/水分配係数をlogPA、前記成分(B)のオクタノール/水分配係数をlogPBとした場合に、logPBとlogPAとの差分(logPB-logPA)が-2.20以上3.00以下である方法も提供する。
前記特定のポリオール(A)は、上記化合物(B)と特定割合で組み合わせて用いることにより、前述した作用機構に基づき、殺菌効果を持続させることができる。
上記において、ポリオール(A)、化合物(B)、並びにこれらの好適態様については前記と同じである。
成分(A)と成分(B)とを用いる工程においては、例えば、前述したリーブオン消毒剤組成物を用いることができる。あるいは、該工程においては、成分(A)と成分(B)とを個別に準備し、対象物への適用直前に両者を混合してもよく、対象物に成分(A)と成分(B)とを個別に適用して、対象物表面で両者を接触させてもよい。
【0048】
成分(B)に対する成分(A)の質量比[(A)/(B)]は、成分(A)の殺菌効果を持続させる観点から、7.5以下であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下であり、また、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上、よりさらに好ましくは0.5以上、よりさらに好ましくは0.7以上である。
【0049】
本発明の方法において前記リーブオン消毒剤組成物を用いる場合には、組成物中の成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、好ましくは3.0質量%以上であり、より好ましくは3.4質量%以上、さらに好ましくは3.75質量%以上、よりさらに好ましくは4.0質量%以上である。また、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは9.0質量%以下、さらに好ましくは8.0質量%以下、よりさらに好ましくは7.0質量%以下である。
【実施例0050】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお本実施例において、各種測定及び評価は以下の方法により行った。
【0051】
(成分(A)の残留量)
30℃に設定したホットプレート上にフロストガラスを載せ、各例のリーブオン消毒剤組成物を、スパチュラを用いて該フロストガラスに30秒間かけて塗布した(塗布量:15μL/7.5cm2)。この状態で30分放置した後、フロストガラス上の残存物をエタノール1mLで抽出した。エタノール抽出物をガスクロマトグラフィーで分析し、ガラス表面の成分(A)の残留量(mg/cm2)を求めた。
〔GC測定条件〕
測定装置:Agilent社製GCシステム「Aglient 6850」
カラム:Agilent J&W GC カラムDB-1
キャリアー:ヘリウム
流速:2mL/min
インジェクション量:2μL
カラム温度:60℃で2分間保持した後、15℃/minにて270℃まで昇温し270℃で10分間保持した。
検出器:FID
【0052】
(皮膚へのなじみやすさ)
被験者の両てのひらと手の甲を「ビオレu 泡ハンドソープ」(花王(株)製)にて洗浄した。水気をよく拭き取ってから1~2分ほど待機した。表2~4に記載の組成物1mL(1μL/cm2相当)を両てのひらと手の甲に塗布し、皮膚に馴染んだと感じた時間を測定した。測定された時間を下記のようにスコア付けした。
5:60秒以内に皮膚に馴染んだ
4:80秒以内に皮膚に馴染んだ
3:100秒以内に皮膚に馴染んだ
2:120秒以内に皮膚に馴染んだ
1:120秒以内に皮膚に馴染まなかった
【0053】
参考例1~8(成分(A)の殺菌性能評価)
表1に示す量の各成分を配合し、室温にて混合して、評価用の組成物を調製した。表1に記載した配合量は、各成分の有効成分量(質量%)である。
得られた評価用組成物を用いて、以下の方法により、本実施例で用いる成分(A)の殺菌性能を評価した。
【0054】
(菌液の調製)
殺菌性評価には、下記方法により調製した腸球菌の菌液を用いた。腸球菌としてはEnterococcus hirae Farrow and Collins 1985 NBRC3181株(製品評価技術基盤機構)を用いた。この菌を、LB液体培地にて培養し、遠心により菌体を回収した後、純水を用いてOD600=10になるように調整した。
【0055】
(殺菌性評価)
表1に記載の組成物15μLをフロストガラス表面(7.5cm2の範囲)に均一に塗布して、成分(A)の塗布量が表1に記載の量となるようにした。
5分間静置し乾燥後、前記方法で調製した腸球菌液を、組成物適用後のガラス表面に一定量(7.5μL/7.5cm2)、均一に塗布した。この状態で、10分間静置した後、スワブ2本を用いて塗布した菌液を回収した。
次いで、インキュベーションリーダー「Infinite pro」(TECAN製)を用いて下記方法により生存菌数を測定して、菌数の減少量(生存菌数/初期の生菌数)を確認した。
インキュベーションリーダー「Infinite pro」中で37℃にて液体培養し、波長600nmにおける吸光度(濁度)を経時で測定して、菌液中の生菌数の増殖曲線を作成した。同時に既知の生菌数を有する菌液を段階希釈し、同様に培養及び増殖曲線の作成を行い、一定の濁度に到達する時間と生菌数との検量線を作成した。各サンプルの一定濁度に到達するまでの時間と検量線の関係より、回収した菌液中の生存菌数を推定し、菌数の減少量を確認した。
菌数の減少度合い(対数減少値)については、上記菌数減少量の-log値をとり、この値をaとした。
次に、参考例1~8の組成物から成分(A)を除いた組成物を調製し、上記と同様の方法で殺菌性評価を行い、対数減少値を求めた。この値をbとした。a-bの値を「殺菌活性値」として表1に記載した。この値が大きいほど、殺菌活性が高いことを意味する。
【0056】
【0057】
表1に示すように、本実施例で用いる成分(A)は、0.01mg/cm2となる量用いた場合の菌数の対数減少値aと、前記組成物から成分(A)を除いた組成物を同量用いた場合の菌数の対数減少値bとの差分(a-b)が0.50以上となり(参考例1,7)、殺菌性能を有することがわかる。
【0058】
実施例1~21、比較例1~5(リーブオン消毒剤組成物の調製及び評価)
表2~4に示す量の各成分を配合し、室温にて混合して、各例のリーブオン消毒剤組成物を調製した。表2~4に記載した配合量は、各成分の有効成分量(質量%)である。
得られたリーブオン消毒剤組成物を用いて、前記方法により評価を行った。結果を表2~4に示す。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
表に記載の成分は下記の通りである。
<成分(A)>
*1:ジプロピレングリコール 富士フイルム和光純薬(株)製「ジプロピレングリコール(異性体混合物)」
*2 1,2-ヘキサンジオール 東京化成工業(株)製
【0063】
<成分(B)>
*3:グリセロール 富士フイルム和光純薬(株)製「グリセリン」
*4:1,4-ブタンジオール 富士フイルム和光純薬(株)製
*5:1,3-ブチレングリコール 富士フイルム和光純薬(株)製
*6:トリエチレングリコール 東京化成工業(株)製
*7:ジエチレングリコール 富士フイルム和光純薬(株)製
*8:1,2,6-ヘキサントリオール 富士フイルム和光純薬(株)製
*9:2-エチル-1,3-ヘキサンジオール 富士フイルム和光純薬(株)製「2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(異性体混合物)」
*10:ジグリセロール 東京化成工業(株)製
*11:1,2-プロパンジオール 東京化成工業(株)製
【0064】
<成分(B’):成分(A)、(B)以外の化合物>
*12:1-デカノール 富士フイルム和光純薬(株)製
*13:ソルビトール 三菱商事ライフサイエンス(株)製「ソルビット D-70」(ソルビトール70%,水30%)
【0065】
表2~4より、本実施例のリーブオン消毒剤組成物は、殺菌成分である成分(A)の残留量が多く、且つ、皮膚になじみやすいことがわかる。
本発明によれば、殺菌性能を有し、対象物に適用した際には殺菌成分を対象物表面に長時間残留させることが可能であって、皮膚に適用した際には皮膚表面になじみやすいリーブオン消毒剤組成物を提供できる。