(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089702
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】水処理システム及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20230101AFI20240627BHJP
C02F 1/76 20230101ALI20240627BHJP
C02F 1/20 20230101ALI20240627BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20240627BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240627BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C02F1/42 B
C02F1/76 C
C02F1/20 A
C02F1/469
C02F1/44 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205046
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一重
【テーマコード(参考)】
4D006
4D025
4D037
4D050
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA02
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4D061GC05
(57)【要約】
【課題】難分解性有機物をより効果的に除去する。
【解決手段】水処理システム1は、有機物を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加するハロゲンオキソ酸添加手段12と、ハロゲンオキソ酸添加手段12の下流に位置し、少なくともアニオン交換体が充填されたイオン交換体充填装置14と、を有している。イオン交換体充填装置14に、ハロゲンオキソ酸添加手段12によって添加されたハロゲンオキソ酸の濃度が実質的に維持された被処理水が通水される。イオン交換体充填装置14の入口における被処理水またはイオン交換体充填装置14の出口における処理水のpHは7以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加するハロゲンオキソ酸添加手段と、
前記ハロゲンオキソ酸添加手段の下流に位置し、少なくともアニオン交換体が充填されたイオン交換体充填装置と、を有し、
前記イオン交換体充填装置に、前記ハロゲンオキソ酸添加手段によって添加された前記ハロゲンオキソ酸の濃度が実質的に維持された前記被処理水が通水され、前記イオン交換体充填装置の入口における被処理水または前記イオン交換体充填装置の出口における処理水のpHは7以上である、水処理システム。
【請求項2】
前記イオン交換体充填装置の前記入口における被処理水または前記イオン交換体充填装置の前記出口における処理水のpHは9以上である、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記ハロゲンオキソ酸添加手段は、前記イオン交換体充填装置の前記入口における被処理水の前記ハロゲンオキソ酸の濃度を0.1mg/Cl2以上に調整する、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記イオン交換体充填装置の上流に位置し、前記被処理水のpHを調整するpH調整手段を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記イオン交換体充填装置の上流に位置し、前記被処理水からイオンを除去する脱イオン装置を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記イオン交換体充填装置の上流に位置し、前記被処理水から酸素を除去する脱気装置を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項7】
ハロゲンオキソ酸添加手段によって、有機物を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加することと、
前記ハロゲンオキソ酸添加手段によって添加された前記ハロゲンオキソ酸の濃度が実質的に維持された前記被処理水を、少なくともアニオン交換体が充填されたイオン交換体充填装置に通水することと、を有し、
前記イオン交換体充填装置の入口における被処理水または前記イオン交換体充填装置の出口における処理水のpHが7より高い水処理方法。
【請求項8】
前記ハロゲンオキソ酸は少なくとも次亜臭素酸を含む、請求項7に記載の水処理方法。
【請求項9】
前記被処理水は尿素を含む、請求項7または8に記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システム及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純水水質への高度な要求が顕在化するに伴って、近年、純水中に含まれる微量の有機物、特に尿素などの難分解性有機物を分解し除去する方法が検討されている。特許文献1には、尿素を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加し、この被処理水を少なくともアニオン交換体が充填されたイオン交換体充填装置に通水することで、難分解性有機物を除去する水処理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された水処理システムは、尿素などの難分解性有機物を効果的に分解除去することができる。一方、本願発明者は被処理水のpHによってはイオン交換体を酸化劣化させる可能性があることを見出した。イオン交換体の酸化劣化は難分解性有機物の除去率の低下、イオン交換体充填装置の処理水におけるTOC(全有機体炭素)の増加などをもたらす可能性がある。本発明は、難分解性有機物をより効果的に除去することのできる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水処理システムは、有機物を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加するハロゲンオキソ酸添加手段と、ハロゲンオキソ酸添加手段の下流に位置し、少なくともアニオン交換体が充填されたイオン交換体充填装置と、を有している。イオン交換体充填装置に、ハロゲンオキソ酸添加手段によって添加されたハロゲンオキソ酸の濃度が実質的に維持された被処理水が通水される。イオン交換体充填装置の入口における被処理水またはイオン交換体充填装置の出口における処理水のpHは7以上である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、難分解性有機物をより効果的に除去することのできる水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
【
図2】被処理水のpHと、被処理水のハロゲンオキソ酸濃度と、尿素除去率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の水処理システム及び水処理方法の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る水処理システム1の概略構成を示している。水処理システム1は原水から純水を製造するシステムで、1次システムとも呼ばれる。水処理システム1は下流側のサブシステム(2次システムとも呼ばれる)とともに超純水製造装置を構成する。水処理システム1に供給される原水は尿素などの難分解性有機物を含む有機物を含有している。
【0009】
水処理システム1は、上流側水処理装置11と、イオン交換体充填装置14と、ハロゲンオキソ酸除去手段15と、下流側水処理装置16と、を有している。これらは母管L1に沿って配置され、被処理水の流通方向Dに関し、上流側水処理装置11、イオン交換体充填装置14、ハロゲンオキソ酸除去手段15、下流側水処理装置16の順に配置されている。
【0010】
上流側水処理装置11は少なくとも一つの水処理装置を含んでいる。水処理装置は被処理水に含まれる所定の成分の除去を目的とする装置であり、流量制御、温度制御、計測等を目的とする装置(ポンプ、熱交換器、弁、計器等)は含まない。上流側水処理装置11は例えば以下のように構成されるが、これらに限定されない。A/B/C・・は流通方向Dに関し上流からA,B,C・・の順で配置されることを意味する。
・ろ過装置/活性炭塔/脱イオン装置/脱気装置
・生物処理装置/ろ過装置/脱イオン装置/脱気装置
【0011】
ろ過装置は例えば砂ろ過器のように比較的粒径の大きな塵埃を除去する装置の他、限外ろ過膜装置や精密ろ過膜装置などを含んでもよい。活性炭塔は高分子有機物などの不純物を除去する。脱イオン装置としてはイオン交換体充填装置、逆浸透膜装置などが挙げられ、これらの組み合わせでもよい。脱気装置は被処理水中の溶存酸素や炭酸を除去する。生物処理装置は微生物を用いて有機物を分解する。
【0012】
イオン交換体充填装置14の上流のイオン濃度や溶存酸素濃度が高いと、イオン交換体充填装置14における難分解性有機物の除去効率が低下する。脱イオン装置や、脱気装置等の溶存酸素除去手段を設けることで、イオン交換体充填装置14における難分解性有機物の除去効率の低下を抑制することができる。
【0013】
水処理システム1は、尿素を含有する被処理水にハロゲンオキソ酸を添加するハロゲンオキソ酸添加手段12を有している。ハロゲンオキソ酸はpHによってイオンまたは酸として存在することがある。ハロゲンオキソ酸とはこれらの形態を総称したものであり、本実施形態では、ハロゲンオキソ酸は次亜ハロゲン酸であるが、ハロゲン酸、過ハロゲン酸、亜ハロゲン酸などでもよい。安定性の面で、次亜ハロゲン酸を用いるのが好ましい。また、本実施形態では、次亜ハロゲン酸は次亜臭素酸であるが、次亜塩素酸または次亜ヨウ素酸であってもよい。ハロゲンオキソ酸以外に、例えば結合塩素、または結合臭素など、一般的な残留塩素計にて測定可能な物質を用いることもできるが、尿素の除去効率の面でハロゲンオキソ酸が好ましい。
【0014】
ハロゲンオキソ酸添加手段12は、臭化物塩の貯蔵タンク12aと、酸化剤の貯蔵タンク12bと、臭化物塩と酸化剤の滞留槽12cと、移送ポンプ12dと、を有する。臭化物塩として、臭化ナトリウム(NaBr)や臭化カリウム(KBr)などが挙げられる。酸化剤として、次亜塩素酸塩(例えば、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO))、過マンガン酸塩、過酸化水素、過硫酸塩などが挙げられる。次亜臭素酸は長期間の保存が困難であるため、使用するタイミングに合わせて臭化物塩と酸化剤を混合して生成する。滞留槽12cで臭化物塩と酸化剤とが混合されて生成された次亜臭素酸は、移送ポンプ12dで昇圧され、母管L1を通る被処理水に添加される。臭化物塩と酸化剤を直接母管L1に供給し、母管L1内の被処理水の流れによってこれらを攪拌して、次亜臭素酸を生成してもよい。次亜臭素酸は連続的に被処理水に添加してもよいし、間欠的に被処理水に添加してもよい。あるいは、ラインミキサーや、オリフィスなどを母管L1に設置し、これらの設備で乱流を作り、臭化物塩と酸化剤を混合させて、次亜臭素酸を生成してもよい。添加するハロゲンオキソ酸は1種類だけでもよいし、2種類以上のハロゲンオキソ酸の混合物を添加してもよい。あらかじめ準備された次亜臭素酸を被処理水に添加してもよい。
【0015】
ハロゲンオキソ酸の濃度は被処理水中の難分解性有機物(例えば尿素)の6~200重量倍であることが好ましく、30重量倍以上であることがさらに好ましい。200重量倍を超えるハロゲンオキソ酸を添加すると後段設備の負荷が高くなる。また、ハロゲンオキソ酸よりもイオン交換体による選択性が高い成分、例えば硫酸イオンのような2価以上のアニオンが共存すると処理性能が低下する。従って、被処理水に含まれる2価以上のアニオン濃度は0~0.4mmol/Lの範囲にあることが好ましい。被処理水におけるハロゲンオキソ酸の濃度、難分解性有機物の濃度及び2価以上のアニオンの濃度は、イオン交換体充填装置14の入口における値である。
【0016】
ハロゲンオキソ酸添加手段12の母管L1との接続部、すなわち、ハロゲンオキソ酸の被処理水への添加部は上流側水処理装置11とイオン交換体充填装置14の中間にある。イオン交換体充填装置14は、ハロゲンオキソ酸添加手段12の母管L1との接続部のすぐ下流に位置し、ハロゲンオキソ酸が添加された被処理水は直ちにイオン交換体充填装置14で処理される。「すぐ下流」とは、ハロゲンオキソ酸添加手段12の添加部とイオン交換体充填装置14との間に、水処理装置が設けられていないことを意味する。水処理装置は、有機材料からなる接液部を有する水処理装置(例えば、逆浸透膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜などのろ過膜、イオン交換装置)、脱気装置、紫外線照射装置などを含むが、前述のように熱交換器、ポンプ、弁、計器などは含まない。従って、イオン交換体充填装置14には、ハロゲンオキソ酸添加手段12によって添加されたハロゲンオキソ酸の濃度が実質的に維持された被処理水が供給される。「実質的に維持された」とはハロゲンオキソ酸濃度が大きく変動(特に増加)していないことであり、一例では、イオン交換体充填装置14の入口におけるハロゲンオキソ酸濃度が、ハロゲンオキソ酸添加手段12によって添加されたハロゲンオキソ酸の濃度の90%以上110%以下であることを意味する。
【0017】
水処理システム1は、被処理水のpHを調整するpH調整手段13を有している。pH調整手段13は、ハロゲンオキソ酸添加手段12の母管L1との接続部とイオン交換体充填装置14との間に設けられているが、上流側水処理装置11とハロゲンオキソ酸添加手段12の母管L1との接続部との間に設けられてもよい。すなわち、ハロゲンオキソ酸添加手段12とpH調整手段13は、どちらが上流側にあってもよい。また、pH調整手段13は上流側水処理装置11の一部として設けることもできる
【0018】
pH調整手段13はアルカリ性液の貯蔵タンク13aと、酸性液の貯蔵タンク13bと、移送ポンプ13cと、を有している。また、水処理システム1はpH計17を有している。pH計17の測定値が後述する所定の範囲となるように、貯蔵タンク13aに貯蔵されたアルカリ性液と貯蔵タンク13bに貯蔵された酸性液とが供給される。pH計17の測定値が所定の範囲値となるように、アルカリ性液と酸性液の供給量を制御する制御機構を設けてもよい。あるいは貯蔵タンク13aの弁(図示せず)と貯蔵タンク13bの弁(図示せず)を切り替え、アルカリ性液または酸性液を選択的に供給してもよい。アルカリ性液または酸性液は、移送ポンプ13cで昇圧され、ハロゲンオキソ酸添加手段12の母管L1との接続部とイオン交換体充填装置14との間で、母管L1を通る被処理水に添加される。アルカリ性液として例えばNaOH溶液、酸性液として例えばHCl溶液が用いられる。後述するようにpHの上限を設ける場合は酸性液が用いられることもあるが、通常はアルカリ性液だけが使用される。従って、被処理水のpHによっては酸性液の貯蔵タンク13bは省略することができる。
【0019】
イオン交換体充填装置14は、少なくともアニオン交換体が充填された塔である。イオン交換体充填装置14にはカチオン交換体がさらに充填されていてもよい。この場合、カチオン交換体はアニオン交換体と混床充填されるが、複床充填されてもよく、後者の場合、アニオン交換体がカチオン交換体の上流側にあることが好ましい。尿素除去効率の観点からは、イオン交換体充填装置14にはアニオン交換体だけが充填されていることがより好ましい。一方、カチオン交換体とアニオン交換体を混床充填または複床充填する場合、アニオン交換体から流出する正に帯電した溶出物をカチオン交換体で吸着することができる。アニオン交換体及びカチオン交換体としてはアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂が好適に使用されるが、モノリス状ないし繊維状のアニオン交換体及びカチオン交換体を使用することもできる。イオン交換樹脂は、ゲル型、MR型のどちらでもよい。アニオン交換樹脂は限定されず、強塩基性樹脂、弱塩基性樹脂のどちらでもよく、強塩基性樹脂の場合、OH形でもよいし、Cl形等であってもよい。また、イオン交換体充填装置14は、アニオン交換樹脂を充填した電気式脱イオン水製造装置(EDI)であってもよい。
【0020】
ハロゲンオキソ酸が添加された被処理水を、イオン交換体充填装置14に充填されたアニオン交換体に接触させることで、尿素を短時間で効率的に除去することができる。尿素の大半は、被処理水がイオン交換体充填装置14を通過する数秒~数分程度の時間で除去される。従来、尿素を除去するために反応槽が用いられることがあるが、反応槽は数時間オーダーの滞留時間を要していたことから、反応槽と比べて極めて短時間で尿素を除去することができる。また、反応槽の場合、被処理水の滞留時間を確保するために装置の大型化が避けられないが、イオン交換体充填装置14は一般的なイオン交換装置と同様の構成を有しているため、設置面積の観点からも反応槽より有利である。
【0021】
このようにハロゲンオキソ酸、特に次亜ハロゲン酸が添加された被処理水をアニオン交換体に接触させることで、尿素を短時間で効率的に除去できる理由について、発明者は以下のように考えている。ハロゲンオキソ酸がアニオン交換体に接触することで、ハロゲンオキソ酸イオンがアニオン交換体に捕捉される。この結果、アニオン交換体の内部にハロゲンオキソ酸イオンが濃縮される。また、被処理水はアニオン交換体の空隙(樹脂の場合は、樹脂同士の隙間)に沿って流れるため、アニオン交換体には尿素が滞留しやすい。以上より、ハロゲンオキソ酸イオンが尿素と接触する可能性が高くなり、短時間で尿素を除去することができる。従って、イオン交換体充填装置14には、ハロゲンオキソ酸イオンを捕捉するために、少なくともアニオン交換体が充填されている必要がある。
【0022】
イオン交換体充填装置14と下流側水処理装置16との間に、被処理水中に残存したハロゲンオキソ酸を除去するハロゲンオキソ酸除去手段15が設置されている。ハロゲンオキソ酸除去手段15としては過酸化水素、亜硫酸塩などの還元剤が用いられる。ハロゲンオキソ酸除去手段15は還元剤の貯蔵タンク(図示せず)と、移送ポンプ(図示せず)と、を有している。還元剤は、移送ポンプで昇圧され、イオン交換体充填装置14と下流側水処理装置16との間で、母管L1を通る被処理水に添加される。ハロゲンオキソ酸除去手段15は、同様の効果を有する限り還元剤に限定されず、例えばパラジウム(Pd)等の白金族金属触媒担体、活性炭などを用いることもできる。あるいは、これらのハロゲンオキソ酸除去手段を直列で組み合わせてもよい。
【0023】
下流側水処理装置16は少なくとも一つの水処理装置を含んでいる。下流側水処理装置16は例えば以下のように構成されるが、これらに限定されない。要求水質によっては下流側水処理装置16を省略することもできる。
・脱イオン装置
・脱イオン装置/紫外線照射装置/脱イオン装置/脱気装置
脱イオン装置はイオン交換体充填装置、逆浸透膜装置などが挙げられ、これらの組み合わせでもよい。
【0024】
脱イオン装置は余剰の還元剤(ハロゲンオキソ酸除去手段15として還元剤を用いた場合)を除去する。紫外線照射装置は被処理水に紫外線を照射して有機物を分解する。紫外線照射装置としては、例えば254nm、185nm、172nmの少なくともいずれかの波長を含む紫外線ランプを用いることができる。紫外線照射装置の下流の脱イオン装置は、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とが充填された再生式イオン交換樹脂塔であり、紫外線照射によって被処理水中に発生した有機物の分解生成物を除去する。紫外線照射装置とその下流の脱イオン装置は余剰の還元剤を除去する効果も有している。還元剤の除去手段として白金族金属触媒担体を用いることもできる。脱気装置は、被処理水中の溶存酸素、炭酸等を除去する。
【0025】
次亜臭素酸などのハロゲンオキソ酸は酸化作用が強いため、有機構造体を容易に劣化させる。従って、本来は、本実施形態のようにハロゲンオキソ酸をアニオン交換体などの有機構造体に接触させることは、有機材料の剥離による被処理水の水質低下を招きやすく、望ましくない。一方、ハロゲンオキソ酸が添加された被処理水をアニオン交換体に接触させることによって、尿素を短時間で且つ高効率で除去することが本願発明者により見出された。このため、本実施形態では有機材料の剥離の可能性が高まるという問題点に拘わらず、敢えてハロゲンオキソ酸が添加された被処理水をアニオン交換体に接触させている。そして、その結果発生する可能性のある有機物を下流側水処理装置16で除去する。
【0026】
次に、被処理水のpHについて説明する。上述のようにハロゲンオキソ酸を含む被処理液をアニオン交換体に接触させることで、尿素等の難分解性有機物が効率的に除去される。しかし、発明者は被処理水のpHによって尿素の除去効率が大きく変動することを見出した。具体的には、pHが低い場合尿素の除去効率が低下し、pHが高い場合尿素の除去効率が増加する。詳細は実施例で説明するが、pHは7以上が好ましく、8以上がより好ましく、9以上がさらに好ましい。pHの調整のために添加されるアルカリ成分(Naイオン等)は後段の下流側水処理装置16で除去されるが、下流側水処理装置16の負荷を抑えるため、pHは12以下とすることが好ましい。
【0027】
被処理水のpHが低い場合、次亜ハロゲン酸などのハロゲンオキソ酸の酸化力が増加し、アニオン交換体やカチオン交換体の酸化劣化が生じやすくなる。このため、難分解性有機物の除去効率が低下するとともに、酸化劣化によって生じる生成物によってTOCが増加する。また、酸化劣化によってアニオン交換体やカチオン交換体が膨潤し、イオン交換体充填装置14の通水差圧が増加するため、ポンプ動力費の増加を招く。被処理水のpHを上記の範囲に収めることで、アニオン交換体やカチオン交換体の酸化劣化を防止し、従って、難分解性有機物の除去効率の低下、TOCの増加、及び通水差圧の増加を抑制することができる。
【0028】
pHはイオン交換体充填装置14の入口における被処理水のpHであるが、イオン交換体充填装置14の出口の処理水のpHでもよい。通常はイオン交換体充填装置14の入口と出口のpHに大きな差はない。しかし、イオン交換体の酸化反応によって、被処理水中のアルカリ性物質が中性物質になり(例えば、NaClO→NaCl)、イオン交換体充填装置14の内部でpHが低下することがある。例えば、新品のイオン交換体は酸化劣化反応が進みやすい場合がある。また、他のイオンが被処理水に含まれる場合、ハロゲンオキソ酸がアニオン交換体から離脱し、イオン交換体充填装置14の内部のハロゲンオキソ酸が局所的に高くなることで、pHが低下することがある。すなわち、イオン交換体充填装置14の入口における被処理水のpHが所定の範囲(例えば7以上)にあっても、イオン交換体充填装置14の内部ではこれよりpHが低下している可能性がある。従って、pH計17は本実施形態ではpH調整手段13とイオン交換体充填装置14との間に設けられているが、イオン交換体充填装置14の出口(
図1の破線の位置)に設けることもできる。
【0029】
(実施例)
尿素を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加し、アニオン交換樹脂充填装置(以下、カラムという)にSV120(/h)で通水して、尿素除去率を測定した。尿素の添加量は、尿素濃度が50μg/Lとなるように調整した。ハロゲンオキソ酸として次亜臭素酸を0.1,0.5,1.0mg-Cl2/L(塩素換算濃度)の濃度で添加した。臭化物塩としてNaBrを、酸化剤としてNaClOをそれぞれ選定し、NaBrとNaClOとを混合して次亜臭素酸を生成した。次亜臭素酸を添加後の被処理水に水酸化ナトリウムまたは塩酸を添加して、カラムに供給される被処理水のpHを6~11の間で調整した。なお、被処理水中の塩化物イオン濃度が全ケースで同じとなるように、被処理水にNaClを添加した。尿素除去率は、カラムの入口側における被処理水の尿素濃度をC1,カラムの出口側における処理水の尿素濃度をC2としたときに、(C1-C2)/C1×100(%)として求めた。尿素濃度は液体クロマトグラフィー質量分析法で測定した。次亜臭素酸の濃度は試料水にグリシンを添加し、遊離塩素を結合塩素に変化させた後、遊離塩素試薬にて残塩濃度計(HANNA製)を用いて測定した。
【0030】
表1及び
図2に結果を示す。次亜臭素酸の濃度に拘わらず、pHが7で尿素除去率の改善効果がみられ、pHが8以上で尿素除去率がさらに改善され、pHが9以上で尿素除去率が大きく改善された。ただし、pHが9以上である場合、尿素除去率はpHによってほとんど影響を受けない。また、次亜臭素酸の濃度が高いほど尿素除去率は向上する。次亜臭素酸は少なくとも0.1mg-Cl
2/L以上であることが好ましく、0.5mg-Cl
2/Lであることがより好ましく、1.0mg-Cl
2/L以上であることがさらに好ましい。通水差圧はpH8以下では0.1MPaより大きく、pH9以上では0.01MPaより小さかった。通水差圧の観点からはpHが9以上であることが好ましい。
【0031】
【0032】
以上、実施形態及び実施例によって本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されない。例えば水処理システムは純水製造システム(1次システム)ではなく、超純水を製造するサブシステムであってもよいし、生活で発生した下水等を処理して再利用するシステム(再生水製造システム)や、工場排水等を処理して再利用するシステム(排水回収システム)であってもよい。また、被処理水のpHが高いとき(例えば、pHが9以上である場合)は、pH調整手段13は省略することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 水処理システム
11 上流側水処理装置
12 ハロゲンオキソ酸添加手段
13 pH調整手段
14 イオン交換体充填装置
15 ハロゲンオキソ酸除去手段
16 下流側水処理装置