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特開2024-89717印刷装置、印刷制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089717
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/18 20060101AFI20240627BHJP
   A45D 29/00 20060101ALI20240627BHJP
   B41J 29/42 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A45D29/18
A45D29/00
B41J29/42 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205084
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】中川 到
【テーマコード(参考)】
2C061
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AP10
2C061AQ05
2C061AR01
2C061AS11
2C061CQ04
2C061CQ24
2C061CQ34
(57)【要約】
【課題】事前に塗る必要のある所定の色の塗布範囲を提示する。
【解決手段】印刷装置100は、印刷対象の情報である対象情報を取得し、印刷対象に印刷するデザインの情報であるデザイン情報を取得し、対象情報とデザイン情報とに基づいて印刷対象における特定の領域を事前塗布領域として決定し、特定の領域に対して所定の色を塗布することを促す表示を表示部130に表示する、制御部110を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象の情報である対象情報を取得し、
前記印刷対象に印刷するデザインの情報であるデザイン情報を取得し、
前記対象情報と前記デザイン情報とに基づいて前記印刷対象における特定の領域を事前塗布領域として決定し、
前記特定の領域に対して所定の色を塗布することを促す表示を表示部に表示する、
制御部を備える、
印刷装置。
【請求項2】
前記印刷対象は爪である、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記所定の色は白色である、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記特定の領域は、前記デザインにおける前記所定の色の部分に対応する前記印刷対象における領域である、
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記デザインにおける前記所定の色の部分が複数存在する場合、前記複数の部分を全て包含する領域に対応する領域を前記事前塗布領域として決定する、
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記事前塗布領域が前記デザイン全体に対応する領域の内部に収まるように前記事前塗布領域を決定する、
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記事前塗布領域に前記所定の色が塗布されているか否かを判定し、
前記判定した結果に基づいて印刷を行うか否かを決定する、
請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記事前塗布領域に前記所定の色が塗布されていないと判定したら、前記事前塗布領域において前記所定の色が塗布されていない範囲を前記表示部に表示する、
請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記事前塗布領域に前記所定の色が塗布されていると判定したら、前記デザインにおける前記所定の色の部分には印刷を行わない、
請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
制御部を備える印刷装置の印刷制御方法であって、
前記制御部が、
印刷対象の情報である対象情報を取得し、
前記印刷対象に印刷するデザインの情報であるデザイン情報を取得し、
前記対象情報と前記デザイン情報とに基づいて前記印刷対象における特定の領域を事前塗布領域として決定し、
前記特定の領域に対して所定の色を塗布することを促す表示を表示部に表示する、
印刷制御方法。
【請求項11】
印刷装置のコンピュータに、
印刷対象の情報である対象情報を取得し、
前記印刷対象に印刷するデザインの情報であるデザイン情報を取得し、
前記対象情報と前記デザイン情報とに基づいて前記印刷対象における特定の領域を事前塗布領域として決定し、
前記特定の領域に対して所定の色を塗布することを促す表示を表示部に表示する、
処理を行わせるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から指の爪にネイルデザインを印刷する印刷装置が知られている。また、例えば特許文献1には、ネイルデザインを爪に印刷する前に、ユーザの爪の立体的形状に合わせてデザインを補正し、ユーザに対して完成イメージを提示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-194838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術により、ユーザは、爪の立体的形状を考慮して補正されたデザインを事前に確認することができる。しかし、特許文献1に開示されている技術は、爪の立体的形状は考慮しているものの、色については考慮されていない。例えば、YMC(Yellow Magenta Cyan)の3原色のインクで印刷を行う場合、白色を印刷することはできないので、予め爪に白色を塗布しておく必要があるが、どこに白色を塗布すれば良いかをユーザが知ることはできなかった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、事前に塗る必要のある所定の色の塗布範囲を提示することができる印刷装置、印刷制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置は、
印刷対象の情報である対象情報を取得し、
前記印刷対象に印刷するデザインの情報であるデザイン情報を取得し、
前記対象情報と前記デザイン情報とに基づいて前記印刷対象における特定の領域を事前塗布領域として決定し、
前記特定の領域に対して所定の色を塗布することを促す表示を表示部に表示する、
制御部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、事前に塗る必要のある所定の色の塗布範囲を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る印刷装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態1に係る印刷装置の正面図である。
図3】実施形態1に係る印刷装置の上面図である。
図4】実施形態1に係る印刷処理のフローチャートの一例である。
図5】ネイルデザインを選択する画面の一例を示す図である。
図6】プレビュー画面の一例を示す図である。
図7】ネイルデザイン中の白い部分の一例を示す図である。
図8】ネイルデザイン中の白い部分と事前塗布領域の一例を示す図である。
図9】白インクを塗布する領域を提示する画面の一例を示す図である。
図10】爪に白インクが十分に塗布された状態の一例を示す図である。
図11】爪にネイルデザインが印刷された状態の一例を示す図である。
図12】爪に白インクが不十分に塗布された状態の一例を示す図である。
図13】追加塗布領域の一例を示す図である。
図14】白インクを追加で塗布する領域を提示する画面の一例を示す図である。
図15】実施形態2に係る印刷処理のフローチャートの一例である。
図16】ネイルデザインからはみ出さずに白インクが塗布された状態の一例を示す図である。
図17】ネイルデザインからはみ出して白インクが塗布された状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
【0010】
(実施形態1)
実施形態1に係る印刷装置100は、指の爪やネイルチップ等にネイルデザインを印刷することができるインクジェット方式のプリンタである。
【0011】
図1に示すように、印刷装置100は機能構成として、制御部110、記憶部120、表示部130、操作入力部140、画像取得部150、印刷部160、通信部170を備える。
【0012】
制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成される。制御部110は、記憶部120に記憶されているプログラムにより、印刷装置100の各機能を実現する処理や後述する印刷処理等を実行する。
【0013】
記憶部120は、制御部110が実行するプログラムや、必要なデータを記憶する。記憶部120は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等を含み得るが、これらに限られるものではない。記憶部120は、制御部110が実行するプログラム、印刷部160で印刷対象(爪、ネイルチップ等)に印刷するネイルデザインの画像データ等を記憶する。なお、記憶部120は、制御部110の内部に設けられていてもよい。
【0014】
表示部130は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを備え、印刷するネイルデザインを表示したり、操作や設定のエラー告知等を表示したりする。
【0015】
操作入力部140は、押しボタンスイッチ、キーボード、タッチパネル等のユーザインタフェースであり、ユーザからの操作入力を受け付ける。操作入力部140がタッチパネルを備える場合は、表示部130のディスプレイと一体化したタッチパネルであってもよい。操作入力部140は、例えば印刷指示ボタン、カーソルキー、OKボタン、CANCELボタン等を備える。
【0016】
画像取得部150は、カメラやLED(Light Emitting Diode)を備え、印刷対象をLEDで照明してカメラで撮影し、撮影した画像を取得する。
【0017】
印刷部160は、インクを保持するインク保持部、インクを印刷対象に吐出して印刷を行うプリントヘッド、プリントヘッドを移動させる駆動部(X軸駆動部及びY軸駆動部)を備え、印刷対象にネイルデザインを印刷する。インク保持部は少なくとも3色(シアン、マゼンタ、イエロー)分のインクを供給可能なインクカートリッジを備える。
【0018】
通信部170は、印刷装置100が他の装置(サーバ等)と通信を行うためのインタフェースである。印刷装置100は、例えばネイルデザインの画像データを通信部170を介してサーバから取得することができる。
【0019】
次に、印刷装置100の構造について、図2(正面図)及び図3(上面図)を参照して説明する。
【0020】
図2及び図3に示すように、印刷装置100のプリントヘッド161は、プリントヘッド161を左右方向に移動させるX軸駆動部162及びプリントヘッド161を前後方向委移動させるY軸駆動部163により、前後左右に移動可能である。また、印刷対象が爪202の場合、ユーザは指201を、クッション性のある素材でできている指置台148の上に載せ、指押さえ部149で上から押さえることにより印刷対象となる爪202を固定する。指置台148及び指押さえ部149により、指201の爪202の表面は、一定の高さになるように調整される。
【0021】
プリントヘッド161は制御部110による制御にしたがって、駆動部(X軸駆動部162及びY軸駆動部163)で移動し、インク保持部から供給されるインクを印刷対象(爪202等)に吐出することでネイルデザインを印刷対象に印刷する。
【0022】
また、図2に示すように、印刷装置100の天井にはカメラ151が設置されており、カメラ151の周囲にLED152が設置されている。制御部110による制御にしたがって、印刷対象をLED152で照明し、カメラ151で撮影することにより、制御部110は、印刷対象の画像を取得する。そして、この印刷対象の画像を画像認識することで、印刷対象の情報(対象情報)を取得する。対象情報とは、例えば、爪の形状、大きさ、位置、爪における色の分布等である。なお、図3ではプリントヘッド161、X軸駆動部162、指置台148等と重なって見づらくなることを防ぐため、カメラ151及びLED152の記載が省略されている。
【0023】
次に、印刷装置100の印刷処理について、図4を参照して説明する。印刷装置100に対してユーザが印刷を指示する(例えば操作入力部140の印刷指示ボタンを押す)と、印刷処理の実行が開始される。
【0024】
まず制御部110は、印刷するネイルデザインの画像データを取得する(ステップS101)。具体的には制御部110は、例えば、図5に示すように、表示部130にネイルデザインを表示してユーザにネイルデザインの選択を促し、ユーザが選択したネイルデザインの画像データを取得する。ネイルデザインの画像データは、デザイン情報とも呼ばれ、例えば、ネイルデザイン中の所定の色(例えば白色)の部分の位置の情報を含む。
【0025】
図5では、ウサギの絵のネイルデザイン131や、クマの絵のネイルデザイン132が表示部130に表示されているが、これらは一例に過ぎない。そして、ユーザは例えば操作入力部140のカーソルキーにより、カーソル133を動かし、OKボタンを押すことでネイルデザインが選択される。そして、制御部110は、選択されたネイルデザインの画像データ(デザイン情報)を取得する。なお、ネイルデザインの取得は図5に示すような方法に限らない。例えば、制御部110は、ユーザが他の装置(PC(Personal Computer)、タブレット、スマートフォン等)を操作して選択したネイルデザインの画像データを通信部170を介して取得してもよい。
【0026】
次に、制御部110は、指を指置台148に固定するようユーザに促す(ステップS102)。具体的には制御部110は、例えば表示部130に「指を指置台に置いて、指押さえ部で押さえて固定してください」等のメッセージを表示して、指を指置台148に固定するようユーザに促す。なお、煩雑になるため図4では省略しているが、制御部110は、ステップS102の処理の後、指が指置台に固定されていることを判定した後にステップS103に進む。
【0027】
指が指置台148に固定されていることの判定に関して、制御部110は、例えば操作入力部140のOKボタンが押されたら、指が指置台148に固定されたと判定してもよい。また、例えば指置台148又は指押さえ部149が圧力センサ等のセンサを備えており、制御部110は、指が固定されたことを当該センサによる検出値に基づいて判定してもよい。また、この判定をステップS103の後で行うようにし、制御部110は、ステップS103で取得した画像に基づいて、指が指置台148に固定されているか否かを判定し、固定されていなければステップS102に戻るようにしてもよい。
【0028】
そして制御部110は、画像取得部150で爪を撮影して、爪の画像を取得し(ステップS103)、取得した画像について画像認識を行って、爪の情報(対象情報)を取得する(ステップS104)。対象情報は印刷対象(ここでは爪)の大きさ、形状、位置等及び印刷対象における色の分布の情報である。なお、図4では省略したが、制御部110は、ステップS105に進む前に、ステップS104で取得した対象情報に基づいて、ステップS101で取得したネイルデザインの画像データを補正してもよい。
【0029】
そして、制御部110は、ステップS103で取得した爪の画像にネイルデザインの画像データを重ね合わせた画像を爪印刷イメージとして表示部130に表示する(ステップS105)。これにより、例えば図6に示すような印刷イメージ(プレビュー画面)が表示部130に表示される。なお、煩雑になるため図4では省略しているが、制御部110は、ステップS105の処理の後、操作入力部140のOKボタンが押されたのを確認後にステップS106に進む。
【0030】
そして、制御部110は、爪の画像において、ネイルデザイン中の白い部分の全てが白く塗られているか否かを判定する(ステップS106)。具体的には制御部110は、例えば、図7に示す、ネイルデザイン132の目の中の白目の領域181,182と、口の周りの領域183のような、ネイルデザイン中の白い部分について、これらの白い部分が爪の画像において全て白色になっているか(事前に白インクが塗布されているか)を判定する。
【0031】
白く塗られていない部分が存在するなら(ステップS106;No)、制御部110は、図8に示すような、ネイルデザイン中の白い部分(白目の領域181,182と口の周りの領域183。以下「所定の色の部分」と言う。)を全て包含する領域に対応する印刷対象における特定の領域(事前塗布領域184)を決定する(ステップS107)。
【0032】
なお、図8では、事前塗布領域184として楕円形の領域が決定されているが、事前塗布領域184の形状は楕円形に限らない。事前塗布領域184は、所定の色の部分を全て包含する領域に対応する印刷対象における領域であれば任意の形状でよく、例えば長方形でもよい。また、事前塗布領域184は、図8に示すように、所定の色の部分のどの部分からも所定のマージンの余裕を持たせた領域とするのが望ましい。所定のマージンを持たせることで、必要な範囲にインクが塗布される確実性を高めることができる。
【0033】
そして、制御部110は、図9に示すように、爪の画像に事前塗布領域184を重ねた画像を表示部130に表示し、ユーザにこの領域に白インクを塗布するように促し(ステップS108)、ステップS102に戻る。なお、煩雑になるため図4では省略しているが、制御部110は、ステップS108の処理の後、操作入力部140のOKボタンが押されたのを確認後、ステップS102に戻る。
【0034】
ステップS108で出力される画面(図8に示すような画面)を見たユーザは、指を指置台148から抜いて、爪の表面の事前塗布領域184(印刷対象における特定の領域)に白インクを塗ってOKボタンを押し、ステップS102で表示される指示に従って、指を再度指置台148に固定することになる。すると、制御部110は画像取得部150で爪を撮影して(ステップS103)認識し(ステップS104)、プレビュー画面を表示部130に表示する(ステップS105)。
【0035】
そして、制御部110は、再度ネイルデザイン中の白い部分(図7に示す、白目の領域181,182と、口の周りの領域183)に対応する爪の表面の色が白になっているか(白インクが塗布されているか)を判定する(ステップS106)。
【0036】
図10に示すように、爪の領域185に白インクが塗布されたことにより、ネイルデザイン中の白い部分(白目の領域181,182と、口の周りの領域183)に対応する爪の表面が全て白くなっているなら(ステップS106;Yes)、制御部110は、表示部130に「プレプリントコートを塗ってください」等のメッセージを表示して、ユーザにプレプリントコートの塗布を促す(ステップS109)。なお、煩雑になるため図4では省略しているが、制御部110は、ステップS109の処理の後、操作入力部140のOKボタンが押されたのを確認後、ステップS110に進む。
【0037】
そして、制御部110は、表示部130に「指を指置台に置いて、指押さえ部で押さえて固定してください」等のメッセージを表示して、指を指置台148に固定するようユーザに促す(ステップS110)。ステップS110の処理は、ステップS102の処理と同様である。また、制御部110は、ステップS110の処理の後、指が指置台に固定されていることを判定した後にステップS111に進む点もステップS102と同様である。
【0038】
そして、制御部110は、プレプリントコートの上からネイルデザインを印刷し(ステップS111)、印刷処理を終了する。ステップS111の処理により、図11に示すような印刷結果が得られる。なお、制御部110は、ステップS111での印刷の際に、ネイルデザインにおける所定の色(例えば白色)の部分には印刷を行わないように制御してもよい。事前塗布領域184には既に所定の色が塗布されており、所定の色の部分に再度所定の色の印刷を行う必要はないからである。これにより無駄な印刷を行うことを防ぐことができる。
【0039】
一方、ユーザが白インクを塗った後のステップS106での判定の際に、図12に示すように、白インクが塗布されている爪の領域186の外側にも、ネイルデザイン中の白い部分187が残っているなら(ステップS106;No)、制御部110は、図13に示すように、白インクが塗布されていない領域におけるネイルデザイン中の白い部分187を全て包含する領域188を追加塗布領域として決定する(ステップS107)。追加塗布領域も事前塗布領域の一種である。
【0040】
そして、制御部110は、図14に示すように表示部130に追加塗布領域188を表示し、この領域に白インクを塗布するようにユーザに促し(ステップS108)、ステップS102に戻る。なお、追加塗布領域188の位置を分かりやすくするために、制御部110はステップS108では、図14に示すように、既に白インクが塗布されている領域186とともに、追加塗布領域188を表示してもよい。
【0041】
以上説明した印刷処理により、制御部110は、事前に塗る必要のある白インクの塗布範囲を提示することができる。
【0042】
また、制御部110は、ネイルデザインにおける白色の部分が複数存在する場合、複数の部分を全て包含する領域に対応する領域を事前塗布領域として決定して提示する。したがって、ネイルデザインにおいて白色の部分が小さかったり多数存在したりしても、ユーザは1つの事前塗布領域にのみ白インクを塗布すれば済む。
【0043】
また、制御部110は、事前塗布領域に白インクが塗布されているか否かを判定し、判定した結果に基づいて、印刷を行うか否かを決定するので、白インクが塗布されている領域が不十分な場合には、無駄な印刷を行うことを防ぐことができる。
【0044】
また、制御部110は、事前塗布領域に白インクが塗布されていないと判定したら、白インクが塗布されていない範囲を提示するので、ユーザは白インクの塗布が十分か否かを把握することができる。
【0045】
(実施形態2)
上述の実施形態1では、事前塗布領域(より正確には、ネイルデザインにおける白色の部分の全てに対応する爪の表面)に白インクが塗布されていない場合には、追加塗布領域188が提示され、事前塗布領域(ネイルデザインにおける白色の部分)全体が白くなるまで、繰返し追加塗布領域への白インクの塗布が促されることになる。しかし、ネイルデザインが印刷される領域の外側(ネイルデザインの外縁の外側)にまで白インクが塗布された場合のことは考慮されていなかった。そこで、ネイルデザインが印刷される領域の外側にまではみ出して白インクが塗布された場合には、そのはみ出した部分に爪の色を印刷する実施形態2について説明する。
【0046】
実施形態2に係る印刷装置101の機能構成は、図1に示すように、実施形態1に係る印刷装置100と同様である。また、印刷装置101の構造は、図2及び図3に示すように、実施形態1に係る印刷装置100と同様である。
【0047】
印刷装置101の印刷処理について、図15を参照して説明する。印刷装置101に対してユーザが印刷を指示する(例えば操作入力部140の印刷指示ボタンを押す)と、印刷処理の実行が開始される。
【0048】
ステップS201からステップS210までの処理は、印刷装置100の印刷処理(図4)と同様のため、説明を省略する。ただし、ステップS207では制御部110は、ネイルデザイン中の白い部分を全て包含し、かつネイルデザイン全体の領域の内部に収まる領域を事前塗布領域184として決定する。これは、ユーザがネイルデザインの外縁の外側にはみ出た部分に白インクを塗布してしまうことを極力防ぐためである。また、制御部110は、ステップS208において、爪の画像に事前塗布領域184を重ねた画像を表示するだけでなく、爪におけるネイルデザインの外縁が把握できるような表示を行ってもよい。これにより、ユーザがネイルデザインの外縁の外側にはみ出た部分に白インクを塗布してしまうことをより防ぐことができる。
【0049】
ステップS211では、制御部110は、爪の画像において、白く塗られた領域が全てネイルデザインの内部(ネイルデザインの外縁の内側の領域)に入っているか否かを判定する。
【0050】
図16に示すように、ユーザによって白いインクが塗布された領域189が全てネイルデザイン132の内部に入っているなら(ステップS211;Yes)、制御部110は、ネイルデザインを印刷し(ステップS212)、印刷処理を終了する。
【0051】
一方、図17に示すように、ユーザによって白いインクが塗布された領域190がネイルデザイン132からはみ出しているなら(ステップS211;No)、制御部110は、ネイルデザインを印刷するとともに、ネイルデザインから白くはみ出た網掛領域191を爪の色で印刷し(ステップS213)、印刷処理を終了する。
【0052】
以上説明した印刷処理により、制御部110は、事前に塗る必要のある白インクの塗布範囲を(ステップS208で)提示することができるとともに、ユーザが塗布した白インクがネイルデザインの外にはみ出た場合でも(ステップS213で)はみ出た部分を目立たないように印刷することができる。
【0053】
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上述の実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施形態が本発明の範囲に含まれる。
【0054】
例えば、上述の実施形態では、印刷対象を指の爪として説明したが、印刷対象は爪に限らない。印刷対象は、例えばネイルチップでもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、事前に塗布する必要のある所定の色を白色とした。通常、プリンタで用いるYMCの3原色では白を印刷できないので、事前に白インクを塗布するのは合理的だからである。しかし、事前に塗布する色は白色に限らない。例えばネイルデザインによっては、白インクを塗布しなくてもネイルデザインで用いられている色を全て印刷できる場合があるし、ネイルデザイン中で最も多く用いられている色を事前に塗布しておくと、印刷装置での印刷を効率化できる場合があるからである。このような場合、事前に塗る必要のある所定の色のインクとして、白以外のインクを用いても構わない。
【0056】
また、上述の実施形態では、ネイルデザイン中の白い部分の全てに対応する爪の表面の色が全て白になっていない場合には、ユーザに再度白インクの塗布を促すこととしている。しかし、ネイルデザインのサイズを縮小させたり、印刷位置をずらしたりすることによって、ネイルデザイン中の白い部分の全てに対応する爪の表面の色を全て白にすることが可能な場合には、制御部110は、ネイルデザインをそのように変更した場合のプレビュー画面を表示して、ユーザにそのプレビュー画面のような印刷を行ってよいか確認してもよい。このようにすることによって、ユーザが何度も白インクの塗布を繰り返さなければならない事態を防ぐことができる。
【0057】
また、ユーザがネイルデザインの外縁をはみ出して白インクを塗布してしまっても、ネイルデザインのサイズを拡大させたり、印刷位置をずらしたりすることによって、はみ出した白インクの上にネイルデザインを印刷可能な場合には、制御部110は、ネイルデザインをそのように変更した場合のプレビュー画面を表示して、ユーザにそのプレビュー画面のような印刷を行ってよいか確認してもよい。このようにすることによって、ユーザが白インクをネイルデザインからはみ出して塗ってしまった場合に、そのはみ出した部分を爪の色で印刷しなくてもすむようにすることができる。
【0058】
また、上述の実施形態では、印刷装置100,101はインクジェット方式のネイルプリンタだったが、印刷装置はインクジェット方式のネイルプリンタに限らない。事前に塗る必要のある所定の色の範囲を提示する機能を持つ印刷装置においては、同様の考え方で、本発明はネイルプリンタ以外のプリンタや、インクジェット方式以外のプリンタにも適用可能である。
【0059】
また、上述の実施形態では、制御部110のCPUが記憶部120に記憶されたプログラムを実行することによって、印刷装置100,101の各部を制御した。本発明において、制御部110は、シングルプロセッサ、マルチプロセッサ、マルチコアプロセッサ等の任意のプロセッサ単体で構成されるものの他、これら任意のプロセッサの代わりに(又はこれら任意のプロセッサに加えて)、例えばASIC(Application Specifi Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、各種制御回路等の専用のハードウェアを備え、専用のハードウェア(又は専用のハードウェアとプロセッサとの協働)で、印刷装置100,101の各部が制御されてもよい。
【0060】
また、印刷装置100,101は、1つの装置ではなく、制御する装置(例えばPC等の汎用コンピュータ、スマートフォン、タブレット等、制御部110、記憶部120、表示部130、操作入力部140、通信部170を備える装置)と、印刷する装置(画像取得部150、印刷部160、通信部170を備える装置)と、に分離していてもよい。この場合上述の印刷処理は、制御する装置の制御部110が行い、通信部170を介して、印刷する装置の画像取得部150が取得した印刷対象の画像を取得したり、印刷部160に対して印刷を指示したりすることになる。
【0061】
また、制御部110が実行するプログラムの提供方法は任意であり、例えば、コンピュータが読取可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、MO(Magneto-Optical Disc)、メモリカード、USBメモリ等)に格納して配布してもよいし、インターネット等のネットワーク上のストレージにプログラムを格納しておき、これをダウンロードさせることにより提供してもよい。
【0062】
また、上述の処理をOS(Operating System)とアプリケーションプログラムとの分担、又は、OSとアプリケーションプログラムとの協働によって実行する場合には、アプリケーションプログラムのみを記録媒体やストレージに格納してもよい。また、搬送波にプログラムを重畳し、ネットワークを介して配信することも可能である。例えば、ネットワーク上の掲示板(Bulletin Board System:BBS)に上記プログラムを掲示し、ネットワークを介してプログラムを配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。
【符号の説明】
【0064】
100,101…印刷装置、110…制御部、120…記憶部、130…表示部、131,132…ネイルデザイン、133…カーソル、140…操作入力部、148…指置台、149…指押さえ部、150…画像取得部、151…カメラ、152…LED、160…印刷部、161…プリントヘッド、162…X軸駆動部、163…Y軸駆動部、170…通信部、181,182,183,184,185,186,188,189,190,191…領域、187…部分、201…指、202…爪
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