(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008973
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】イオン交換および自動車用ガラスのための細孔充填装飾層
(51)【国際特許分類】
C03C 17/22 20060101AFI20240112BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20240112BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20240112BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C03C17/22 Z
C03C27/12 D
C03C21/00 101
B32B17/06
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023184507
(22)【出願日】2023-10-27
(62)【分割の表示】P 2021559638の分割
【原出願日】2020-04-15
(31)【優先権主張番号】62/834,682
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル べレビ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ レウエデ
(57)【要約】
【課題】イオン交換過程に適合し、自動車用ガラスに適した装飾無機層を有するガラス物品を提供する。
【解決手段】このガラス物品は、第1の主面および第2の主面を有する第1のガラス基板の少なくとも一部に付着され、450℃超のガラス転移温度、650℃未満のガラス軟化温度および複数の細孔を有し、さらに、1モル%未満のNa
2O、10モル%未満のFe
2O
3、または25モル%未満のP
2O
5を有し、少なくとも5%の気孔率を有する多孔質無機層を含む。別の実施形態では、第3の主面および第4の主面を有する第2のガラス基板とポリビニルブチラール層をさらに含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス物品において、
第1の主面および第2の主面を有する第1のガラス基板と、
前記第1のガラス基板の少なくとも一部に付着し、450℃超のガラス転移温度、650℃未満のガラス軟化温度および複数の細孔を有する多孔質無機層であって、1モル%未満のNa2O、10モル%未満のFe2O3、または25モル%未満のP2O5を有し、少なくとも5%の気孔率を有する多孔質無機層
を備えたガラス物品。
【請求項2】
前記多孔質無機層がセラミックエナメルおよび顔料を含む、請求項1記載のガラス物品。
【請求項3】
前記多孔質無機層が少なくとも10%の気孔率を有する、請求項1または2記載のガラス物品。
【請求項4】
前記多孔質無機層が少なくとも20%の気孔率を有する、請求項1または2記載のガラス物品。
【請求項5】
前記多孔質無機層が、Bi、B、Zn、Siの酸化物、またはその任意の組合せを含むガラス融剤を含む、請求項1または2記載のガラス物品。
【請求項6】
第3の主面および第4の主面を有する第2のガラス基板と、
前記第1のガラス基板の前記第2の主面および前記第2のガラス基板の前記第3の主面と接触するポリビニルブチラール層をさらに備え、
前記多孔質無機層は、前記第1のガラス基板の前記第2の主面の少なくとも一部に付着しており、前記ポリビニルブチラール層と接触している、請求項1または2記載のガラス物品。
【請求項7】
前記第1のガラス基板がホウケイ酸ガラスで形成されている、請求項6記載のガラス物品。
【請求項8】
前記第2のガラス基板の前記第3の主面に追加の多孔質無機層が付着している、請求項7記載のガラス物品。
【請求項9】
前記第2のガラス基板がソーダ石灰ガラスで形成されている、請求項8記載のガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2019年4月16日に出願された米国仮特許出願第62/834682号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。また、本出願は、2020年4月15日に出願された特願2021-559638号の分割出願である。
【技術分野】
【0002】
本開示は、イオン交換および自動車用ガラスのための細孔充填装飾層に関する。
【背景技術】
【0003】
フロントガラス、サンルーフおよびリヤ・ウィンドウなどの自動車用ガラスの装飾および着色要素として、フリット層が一般に使用されている。フリットは、装飾として、典型的に、窓ガラスの外縁に沿ったドット勾配および境界の形態をとる。装飾フリット層は、外観を向上させること、および紫外線劣化から下層の接着剤を保護することの両方の機能を果たすことができる。
【0004】
自動車用ガラスは、従来、熱強化されたソーダ石灰シリカガラスから形成されてきた。熱強化は、機械的損傷に対してガラスを強化する表面圧縮応力を生じさせる。しかしながら、その応力および道路固有のリスクのために、従来の自動車用ガラスは、比較的厚く重い必要がある。機械的損傷に対する耐性が増し、厚さと質量が減少した、改善されたガラス物品が、自動車用ガラス業界に必要とされている。
【0005】
イオン交換過程は、一般に、従来のソーダ石灰ガラスと比べて、強度が改善されたか、厚さが減少したガラス物品を提供することができる。それゆえ、イオン交換過程は、自動車用ガラス業界において、特に有用であろう。しかしながら、工業用装飾フリット層は、一般に、イオン交換過程には不適合である。従来、装飾用ガラスフリット層の下には、イオン交換は施されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、イオン交換過程に適した、改善されたフリット層が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、数ある中でも、イオン交換過程に適合し、自動車用ガラスの装飾層として適した無機層の使用を提供する。その無機層は、重合性充填剤成分が中に堆積し、架橋した複数の細孔を含む。
【0008】
本開示は、ガラス基板;そのガラス基板の少なくとも一部に付着し、450℃超のガラス転移温度、650℃未満のガラス軟化温度および複数の細孔を有する多孔質無機層;およびその多孔質無機層の細孔内の架橋済み有機樹脂を備えたガラス物品をさらに提供する。
【0009】
本開示は、多層自動車用ガラスにおいて、第1の主面(S1)および第2の主面(S2)を有するソーダ石灰ガラス基板;第3の主面(S3)および第4の主面(S4)を有する化学強化されたガラス基板;ソーダ石灰ガラス基板の第2の主面および化学強化されたガラス基板の第3の主面と接触するポリビニルブチラール層;および化学強化されたガラス基板の第4の主面の少なくとも一部に付着した多孔質無機層を備え、その多孔質無機層は、450℃超のガラス転移温度、650℃未満のガラス軟化温度および架橋済み有機樹脂を含有する複数の細孔を有する、多層自動車用ガラスも提供する。
【0010】
本開示は、ガラス物品を調製する方法において、セラミックエナメル(ceramic enamel)および顔料を含有する無機混合物を堆積させる工程;多孔質無機層のガラス軟化温度より高い温度でガラス基板および堆積した多孔質無機層を硬化させる工程;装飾多孔質無機層のガラス転移温度(Tg)より低い温度でイオン交換により、硬化したガラス基板および多孔質無機層を化学強化する工程;その化学強化されたガラス基板を、重合性架橋成分を含む充填配合物で処理する工程;およびその重合性架橋成分を硬化させて、多孔質無機層の細孔内に架橋済み有機樹脂を提供する工程を有してなる方法をまたさらに提供する。
【0011】
その内のいくつかは予測されていない利点が、本開示の実施の形態により達成される。例えば、記載された方法には、イオン交換および曲げ過程の前に装飾無機層を堆積させ、よって、スクリーン印刷の使用が可能になり、さらなるフリット処理工程が避けられるという利点がある。いくつかの実施の形態において、この方法には、イオン交換過程に従来適合していない、市販の従来のセラミックエナメルの使用が可能になるという利点もある。さらに、ここに記載された方法および製品は、自動車用ガラスを車両に固定するために典型的に使用されるシリコーンおよびウレタンシーラントなどのシーラント接着剤との適合性が改善された装飾ガラスを提供することができる。例えば、本開示は、シーラント接着剤またはその下塗剤の拡散を被らない細孔充填装飾層を有し、それゆえ、外観が改善され、封止作業がより容易になる物品を提供する。さらに、結果として得られた装飾は、改善された色深度および改善された耐引掻性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面は、概して、限定ではなく、例として、ここに述べられた様々な実施の形態を示す。
【
図1】化学強化されたガラスを備えた多層フロントガラスの説明図
【
図2】多孔質無機層上の下塗剤の拡散およびシーラント接着剤の拡散の問題を実地説明するための同じ試料の2つの写真のような図
【
図3】シリコーンを示さない充填された多孔質無機層およびシリコーン拡散を被る未充填多孔質無機層を比較した写真
【
図4】測色計を使用して明度L
*を測定するための試料を示す写真
【
図5】自動車のフロントガラスに適した装飾デザインを有する多層ガラス物品の写真 本開示の原理の範囲および精神に含まれる、多数の他の改変および実施例が、当業者により想起され得ることを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、その例が添付図面に一部示されている、開示された主題の特定の実施の形態を詳しく参照する。開示された主題は、列挙された請求項に関して記載されるが、例示された主題は、それらの請求項を開示された主題に限定する意図はないことが理解されよう。
【0014】
本開示は、数ある中でも、化学強化されたガラス基板および架橋済み有機樹脂が中に堆積した複数の細孔を有する多孔質無機網状構造を含む装飾フリット層を備えたガラス物品を提供する。
【0015】
化学強化されたガラス基板は、イオン交換強化過程によって処理されたガラス基板を含む。化学強化されたガラス基板は、典型的に、約80×10-7/℃から約100×10-7/℃に及ぶ熱膨張係数(CTE)を有する。このガラス基板は、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸塩ガラス、またはそのアルカリ含有形態であり得る。そのガラス基板の適切な市販の実施の形態の1つは、Corning,Incorporatedにより製造されているGorilla(登録商標)ガラスである。例示の「Gorilla」ガラス組成物が、ここに全てが引用される、米国特許出願公開第2011/0045961号明細書に与えられている。化学強化されたガラス基板は、そのガラス基板の少なくとも一部に延在する特定できる圧縮応力層を有し得る。その圧縮応力層は、30μm超の深さを有することがある。化学強化されたガラス基板は、リング・オン・リング試験(ROR)により規定される曲げ強度値>300MPaを有し得る。化学強化されたガラス基板は、約0.5mmから約5mm、約1mmから約3mm、3mm未満、2mm未満、約0.3mmから約4.0mm、約0.5mmから約2mm、または約0.7mmから約1.5mmの厚さを有し得る。その化学強化されたガラス基板は、どの特定のイオン交換過程にも限定される必要はない。説明の目的で、例示のイオン交換強化過程は、約1時間から約15時間に亘り、約390℃から約500℃、または約410℃から約450℃の温度で行うことができる。
【0016】
ここに開示されたガラス物品は、多孔質無機層であって、その多孔質無機層の細孔内にそれ自体を固定するために架橋した有機充填剤が充填された細孔を有する多孔質無機層を含有する。その無機層は、自動車用ガラスなどのガラス上に堆積されると、装飾フリットの機能を果たすことができる。装飾フリットは、審美的目的、機能的目的、またはその両方の機能を果たすことができる。典型的に、装飾フリットは、魅力的な外観を提供し、可視光および紫外線を遮断するための遮蔽体として働く二重機能を有する。
【0017】
前記多孔質無機層は、イオン交換化学強化過程に適合している。この適合性を達成するために、多孔質無機フリット層のCTE(熱膨張係数)は、製品の破壊や反りを避けるたにガラス基板のCTEとほぼ一致する必要があり、そのガラス転移温度(Tg)は、交換中に装飾の品質を劣化させないように、イオン交換温度より高い必要がある。ガラス基板のCTEと一致するために、この多孔質無機層は、ガラス基板のCTEの10×10-7/℃、または5×10-7/℃以内のCTEを有し得る、またはガラス基板のCTEとほぼ同じである。多孔質無機層は、約450℃、475℃、500℃、525℃、550℃、575℃以上、または約600℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する。それに加え、硬化した多孔質無機層は、曲げ、化学強化、および積層過程のために必要な温度に適合することができる。いくつかの実施の形態において、未硬化の無機層は、別の加工工程の加熱段階の前または最中に硬化されることができ、例えば、硬化工程は、曲げ過程の一部としての、加熱サイクルの一部、例えば、初期加熱の最中に行われることがある。それゆえ、硬化した多孔質無機層、未硬化の無機層、またはその両方は、これらの過程の温度より低い、または750℃未満のガラス軟化温度(Ts)を有する。この多孔質無機層のTsは、約700℃、650℃、600℃、570℃、550℃、525℃、500℃、475℃以下、または約450℃以下であり得る。多孔質無機層が硬化され、ガラス基板が化学強化された後、そのガラス基板は、ガラス基板の少なくとも一部に延在する圧縮応力層を示すことができる。そのような圧縮応力層は、30μm超の深さを有することがある。
【0018】
この多孔質無機層は、ガラス基板の少なくとも1つの表面上に堆積される。例えば、多孔質無機層は、ガラス基板の1つ以上の主面上に堆積させることができる。多孔質無機層は、表面の一部だけ、例えば、境界を構成するように主面の外縁に沿って、堆積させることができる。多孔質無機層は、全表面積の60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、1%、0.1%未満、または0.01%未満の表面の区域を占めることができる。
【0019】
ここに用いられているように、「多孔質無機層」という用語は、有機充填剤が細孔中に堆積されているか否かの文脈に応じて、細孔充填状態または未充填状態を称することができる。細孔を少なくとも部分的に充填するように、有機充填剤が堆積も架橋もされていない場合、その多孔質無機層は、「開放細孔」多孔質無機層と称することができる。細孔が、その中に堆積され架橋された有機充填剤により少なくとも部分的に充填されてる場合、その多孔質無機層は、「細孔充填」多孔質無機層と称することができる。
【0020】
本開示は、2つの一般タイプの多孔質無機層を包含する。
【0021】
多孔質無機層の第1のタイプは、セラミックエナメルと顔料の混合物である。市販のセラミックエナメルは、一般に、イオン交換化学強化過程に適合しておらず、多孔質無機層の下にあるガラス基板のイオン交換を妨げてしまう。ここに、硬化の時点で細孔を形成するために、セラミックエナメルに少なくとも5質量%の顔料が添加される。顔料の質量%は、エナメルと添加顔料の総質量で割った添加顔料の質量を計算することによって、決定することができる。そのような改変により、それゆえ、イオン交換過程に使用するのに以前は適していなかった市販のセラミックエナメルから多孔質無機層を調製することができる。セラミックエナメルは、自動車用板ガラス用途の市販のエナメルから選択することができる。
【0022】
そのセラミックエナメルは、ガラスフリット成分、染料成分、および必要に応じて、添加剤成分を含む。このガラスフリットは、1種類以上のBi、B、Zn、またはSi酸化物を含む。このガラスフリットは、主成分としてのBi、B、Zn、またはSi酸化物の存在により特徴付けることができる。いくつかの実施の形態において、ガラスフリットは、1質量%、5質量%または10質量%以上のBi、B、Zn、またはSi酸化物を有する。いくつかの実施の形態において、ガラスフリットは、1モル%未満のNa2O、10モル%未満のFe2O3、または25モル%未満のP2O5を有する。いくつかの実施の形態において、ガラスフリットは、Na2O、Fe2O3、またはP2O5を含まない。染料成分は、ガラスフリット中に含まれ、1種類以上のCu、Co、Fe、Ni、Mn、またはCr酸化物を含む。いくつかの実施の形態において、染料成分は、非Fe酸化物を含む、またはFe酸化物を含まない。同様に、そのようなエナメルから得られる多孔質無機層は、Bi、B、Zn、Siの酸化物、またはその任意の組合せを含むガラス融剤を含むことになる。さらに、多孔質無機層は、1モル%未満のNa2O、10モル%未満のFe2O3、または25モル%未満のP2O5を有し得る。いくつかの実施の形態において、多孔質無機層は、Na2O、Fe2O3、またはP2O5を含まないことがあり得る。適切なセラミックエナメルの例が、製品番号14316(黒の艶消し色、6分で570~640℃の広い焼成範囲、および比較的高い融点を有する、ビスマス系のフリット系)および製品番号AD3402(7分に亘り約620℃で焼成されることのある黒色エナメル)を含む、Ferro Corporation(オハイオ州、メイフィールドハイツ所在)から入手できる。エナメルは、黒、白、または任意の色、例えば、赤、藍、青、緑、茶、オレンジ、紫、黄であり得る。
【0023】
多孔質無機層は、約40質量%から約95質量%のセラミックエナメル、約50質量%から約90質量%のセラミックエナメル、または約60質量%から約80質量%のセラミックエナメルからなり得る。セラミックエナメルは、多孔質無機層の約40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、65質量%、70質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%または約95質量%であり得る。多孔質無機層は、約5質量%から約60質量%の顔料、約5質量%から約55質量%の顔料、または約20質量%から約30質量%の顔料からなり得る。様々な実施の形態において、セラミックエナメルは、ガラスフリットからそれを機械的に選別または分離することが不可能であろうほど、ガラスフリット中に含まれる染料を含有する。その染料は、セラミックエナメルの15質量%から40質量%であり得る。他方で、添加顔料は、個別の粒子の形態であり得る。例えば、硬化、焼結、または堆積の前に、無機層は、実施の形態において、ばらばらの顔料粒子およびセラミックエナメル粒子の混合物であり得る。適切な顔料の例としては、Shepherd(オハイオ州、シンシナティ所在)からのB1G顔料、30C965(CuCr系顔料)、および20F944(MgFe系顔料)、並びにFerro Corporation(オハイオ州、メイフィールドハイツ所在)からのV7709(CuCr系顔料)および240137(FeCrCoNi系顔料)が挙げられる。顔料は、黒、青、緑、茶、オレンジ、紫、黄、またはその金属のような変種であり得る。様々な実施の形態において、顔料は、エナメルと同じまたは類似の色である。例えば、以下のような所望の色を得るために、以下の主成分を有する顔料が選択されるであろう:黒(CuCrFe、CrFe、マンガンフェライトスピネル、FeCrCoNi)、青(アルミン酸コバルト、コバルトクロマイトスピネル、CoZnCrAl)、緑(チタン酸コバルトグリーンスピネル)、茶(チタン酸アンチモンマンガンバフルチル、亜鉛鉄クロマイトブラウンスピネル。チタン酸鉄ブラウンスピネル)、オレンジ(ルチルスズ亜鉛)、紫(リン酸コバルト)、黄(チタン酸ニッケルアンチモンイエロールチル、ニオブ硫黄スズ亜鉛酸化物)、および金属態様(チタン酸塩、チタン酸塩と酸化スズ、または酸化鉄で覆われたマイカフレーク)。様々な実施の形態において、ガラス物品はフロントガラスであり、顔料は黒である。いくつかの実施の形態において、ガラス物品は、自動車内装を対象としており、顔料は、青、緑、茶、オレンジ、紫、黄またはその金属バージョンである。
【0024】
多孔質無機層の第2のタイプは、Na2O、Fe2O3、およびP2O5を含有するガラスフリットを含む。このガラスフリットは、必要に応じて、無機顔料およびパイン油または酢酸アミルニトロセルロースなどの有機結合剤と混合することができる。Na2O、Fe2O3、およびP2O5を有するこの第2のタイプによる多孔質無機層は、硬化後に結晶化する傾向があり、この結晶化は、気孔率に影響を及ぼし得る。いくつかの実施の形態において、第2のタイプの多孔質無機層は、結晶化多孔質無機層である。第2のタイプによる多孔質無機層は、約0から約10モル%のAl2O3;約0から約10モル%のCoO;約5から約25モル%のNa2O;約0から約15モル%のK2O;約0から約10モル%のV2O5;約0から約8モル%のTiO2;約0から約15モル%のZnO;約0から約10モル%のCaO;約20から約40モル%のFe2O3;および少なくとも約50モル%のP2O5を有し得る。さらに、第2のタイプの多孔質無機層は、約8から約25モル%のR2Oを有し得、ここで、R2Oは、Na2O、K2O、またはその両方であり;この多孔質無機層は、約50から約60モル%のP2O5を有し得;この多孔質無機層は、約0.2から約1のNa2O/Fe2O3のモル%の比を有し得;またはその組合せである。様々な実施の形態において、第2のタイプの多孔質無機層は、シリカを含まないことがあり得る。第2のタイプの多孔質無機層は、ここに全てが引用され、開放細孔を有する多孔質無機層を記載している、国際公開第2014/133932号に記載されている多孔質無機層の改良形態を含む。以前の無機層は、Na2O、Fe2O3、およびP2O5を含む多孔質材料であり、イオン交換強化に適していたが、今では、自動車用ガラスを車両フレームに固定するために一般に使用されるシーラント接着剤、例えば、シリコーンまたはウレタンシーラントに関する問題を被ることが分かっている。対照的に、この中の様々な実施の形態において記載された多孔質無機層は、少なくとも部分的に充填された細孔を有するように改良されており、予期せぬことに、色深度、耐引掻性、およびシリコーンおよびウレタンシーラントとの適合性に関する利点をもたらす。
【0025】
両方のタイプの多孔質無機層について、気孔率のレベルは、フリット組成、粒径、添加顔料の量、および焼成温度の影響を受ける。より多い量の顔料またはより低い焼成温度は、増加した気孔率およびイオン交換過程中のより良好な性能をもたらす。しかしながら、気孔率のレベルを増加させると、層の凝集性が低下し、耐引掻性および色深度が減少してしまう。それと同時に、気孔率のレベルを減少させると、イオン交換が悪化し、積層中に許容できない反りを誘発する、または破壊を受けやすいシートが生じる。それゆえ、多孔質無機層は、ガラスを化学強化するために使用されるイオン交換に適したレベルの気孔率を有するべきである。気孔率は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用し、全表面に対する細孔が占める表面の割合を比較することによって、測定できる。様々な実施の形態において、多孔質無機層は、少なくともまたは約5%、10%、15%、20%、40%、50%、60%、またはそれより大きい気孔率を有し得る。さらに、ここに記載されたガラス物品は、自動車用ガラスに使用することができ、その自動車用ガラスは、典型的に、ポリウレタン系またはシリコーン系シーラント接着剤および下塗剤の使用により、車両に取り付けられる。しかしながら、両方のタイプの多孔質無機層は、開放細孔の形態のままであれば、シーラント接着剤およびシーラント下塗剤の強力な拡散を被り、よって、最終製品の外見の属性を強力に劣化させ、粘着特性を低下させ、自動車フレームに対するガラスの付着を悪化させる。
【0026】
前記ガラス物品は、さらに、湾曲したガラス物品の形態にあり得る。例えば、ガラス基板は、凹面と凸面を有する湾曲シートであり得る。多孔質無機層は、凹面、凸面、またはその両方に付着させることができる。いくつかの実施の形態において、ガラス物品は、凹面上の細孔充填無機層および凸面上の開放細孔無機層を含む。さらなる実施の形態において、ガラス物品は、凹面と凸面の両方に細孔充填無機層を含む。いくつかの実施の形態において、ガラス物品は、多孔質無機層、ガラス基板の凹面、またはその両方の少なくとも一部と接触するシーラント接着剤をさらに含むことがある。またさらなる実施の形態において、ガラス物品は、多孔質無機層、ガラス基板の凹面、またはその両方の少なくとも一部と接触する、ポリビニルブチラール積層体層、またはその前駆体をさらに含むことがある。
【0027】
前記架橋済み有機樹脂は、式:
[A]x[B]y[C]z
を有し得、式中、Aは、3以上の連結基を有する多価モノマー残基を表し、Bは、2の連結基を有する二価モノマー残基を表し、Cは、末端モノマー基を表す。x、yおよびzの合計は1と等しく、xは0.05と1の間の数であり、yは0と1の間の数である。xの値は、有機樹脂中の架橋の程度を表し、yは線状高分子鎖の量を表す。例えば、Aは架橋したポリシルセスキオキサン残基を表すことができ、Bは二価線状ポリアクレート鎖を表すことができ、Cは末端メチルまたはヒドロキシル基を表すことができる。架橋の程度、すなわち、x値は0.05以上であるべきである。様々な実施の形態において、xは0.05から0.7である、xは0.1から0.5である、xは0.1から0.3である、またはxは0.05から0.2である。例えば、架橋済み有機樹脂は、少なくともまたは約5モル%、10モル%、15モル%、または少なくとも約20モル%の架橋モノマー単位を含み得る。さらなる実施の形態において、架橋済み有機樹脂は、少なくともまたは約5モル%、10モル%、15モル%、または少なくとも約20モル%の架橋モノマー単位を含み得る。
【0028】
この架橋済み有機樹脂は、1種類以上のポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、またはポリアミドを含む。様々な実施の形態において、架橋済み有機樹脂は、ポリシロキサンまたはポリシルセスキオキサンなどのシリコーン含有ポリマーを含む。さらなる実施の形態において、架橋済み有機樹脂は、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、またはポリアミドなどの炭素系ポリマーを含み得る。いくつかの実施の形態において、架橋済み有機樹脂は、シリコーンポリマーと、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、またはポリアミドとの両方を含有する。例えば、架橋済み有機樹脂は、架橋済みメチル-シルセスキオキサン、メチル-フェニルシルセスキオキサン、またはその両方の組合せであり得る。様々なさらなる例において、架橋済み有機樹脂は、アリル置換ポリシロキサン、アリル置換ポリシルセスキオキサン、アリル置換ポリアクリレート、アリル置換ポリビニル、アリル置換ポリスチレン、アリル置換ポリカーボネート、アリル置換ポリウレタン、またはアリル置換ポリアミドを含み得る。ここに用いられているように、「有機」という用語は、このように、特に明記のない限り、シリコーン含有化合物、シリコーンを含まない有機化合物、またはその両方を含み得る。
【0029】
様々な実施の形態において、架橋済み有機樹脂および多孔質無機層は、この無機層の向上した色深度をもたらす同様の屈折率値、例えば、0.1以下、または0.01以下しか異ならない値を有する。
【0030】
架橋後、この有機樹脂は、エタノールおよびアセトンなどの洗浄溶剤および拭き取りを使用した多孔質無機層およびガラス表面の洗浄中に除去されないように、その無機層の細孔中に十分に固定化されるようになる。同様に、固定化された樹脂は、シーラント接着剤、シーラント下塗剤、ポリビニルブチラール積層体、またはその前駆体と反応しない。同じように、架橋済み有機樹脂は、劣化または蒸発せずに、積層および他のガラス加工工程に適合するのに十分なガラス転移温度も有する。例えば、ガラス転移温度は、約25℃以上、約30℃以上、約35℃以上、約40℃以上、約45℃以上、約50℃以上、約55℃以上、約60℃以上、約65℃以上、約70℃以上、約75℃以上、約80℃以上、約85℃以上、約90℃以上、約95℃以上、約100℃以上、約105℃以上、約110℃以上、約115℃以上、または約120℃以上である。充填された気孔率は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用し、細孔の総数に対する充填細孔が占める表面の比率を比較することにより、測定できる。様々な実施の形態において、多孔質無機層は、少なくともまたは約5%、10%、15%、20%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれより多い充填気孔率を有し得る。あるいは、充填気孔率の程度は、定量化するためにSEMを使用し、全面積に対する開放細孔が占める面積の比率を比較することによって、測定することができる。様々な実施の形態において、樹脂を堆積し、架橋した後、多孔質無機層は、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、60%未満、50%未満、または40%未満の開放気孔率を有し得る。
【0031】
架橋済み有機樹脂は、充填剤配合物を多孔質無機層上に施し、それに続いて、熱開始またはUV開始剤の添加により、ゾルゲル反応またはフリーラジカル反応によって、その配合物を重合させることによって、調製することができる。この充填剤配合物は、それを多孔質無機層上に吹付け塗り、刷毛塗り、ローラ塗りまたはスクリーン印刷により施すことができる。1つ以上の実施の形態において、充填剤配合物は、有機溶媒および有機充填剤成分を含むことがある。この有機充填剤成分は、シリコーン系成分および非シリコーン系成分を含み得、その各々は、重合可能、架橋可能、またはその両方であり得る。例えば、有機充填剤は、メチル-シルセスキオキサン、メチル-フェニルシルセスキオキサン、またはその両方を含み得る。適切な有機充填剤に、Wacker Chemie AG(独国、ミュンヘン所在)からのWacker Silres H44(フェニル基とメチル基を有するポリシルセスキオキサン)およびWacker Silres MK(メチル基のみを有するポリシルセスキオキサン)がある。
【0032】
別の例として、有機充填剤としては、ヒドロキシル末端シリコーン、メトキシ末端シリコーン、もしくはスチレン、ビニル、アリルまたはアクリレート含有基などの重合性基を末端とするシリコーンが挙げられる。有機充填剤として、架橋剤、二価線状重合体、またはその混合物も挙げられる。いくつかの実施の形態において、有機充填剤は、硬化前に、40℃から60℃のガラス転移温度を有する。
【0033】
様々な実施の形態において、有機溶媒は、Handbook of Solvents、2001年、G.Wypych、ChemTec Publishing、48~50頁にしたがい、基準として酢酸ブチルを使用して、0.8から3に対応する中程度の溶媒蒸発率を有する。例えば、有機溶媒は、エタノール(1.7)、酢酸イソブチル(1.4)、酢酸n-プロピル(2.3)、または有機充填剤に適合し、同様の蒸発率を有する他の溶媒であり得る。適切な有機溶媒のさらなる例に、プロピオン酸ペンチルがある。有機充填剤の濃度は、溶液の10質量%から100質量%、例えば、50質量%であり得る。様々な実施の形態において、有機充填剤は、選択された溶媒中の溶解度限界より低いか、またはそれに近く含まれるべきである。例えば、有機充填剤は、溶解度限界より低いがそれに近い場合、無機層の細孔中に入り込んだ直後に沈殿または集結し始め、それゆえ、後の洗浄工程中に樹脂が除去されるのを防ぐことができる。理論で限定されないが、そのような条件は、細孔内に生じた高い毛管力または沈殿により、樹脂を固定化するのに役立つと考えられる。さらなる実施の形態において、有機充填剤は、中に充填剤が溶解する溶媒の蒸発のために、細孔に入り込んだ後に沈殿し始める。様々なさらなる実施の形態において、有機充填剤は、低粘度を有し、溶媒を用いずに使用することができる。低粘度を有する有機充填剤の例に、Dow Corning(ミシガン州、ミッドランド所在)からのDowsil 2405およびDowsil 2403などの低分子量シルセスキオキサンがある。
【0034】
架橋は、樹脂を堆積させた後に、そして、様々な実施の形態において、残留樹脂および充填剤材料を表面から洗浄した後に行われる。様々な実施の形態において、架橋は、多孔質無機層および堆積した樹脂を、約80℃から約250℃、約100℃から約220℃、約120℃から約180℃、約100℃から約150℃、約220℃、約180℃、約150℃、または約100℃の温度に加熱することによって開始される。いくつかの実施の形態において、架橋工程は、有機充填剤が分解し始める温度を超えない。一例として、有機充填剤は、ヒドロキシ、エトキシまたはメトキシ基を含有するシリコーン樹脂を含有し得、30分間に亘り約150℃の温度で架橋される。架橋のために物品を加熱することには、無機層およびガラスの表面から残留する溶媒が除去されるというさらなる利点があり得る。しかしながら、あまりに遅く蒸発する溶媒、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(0.03の蒸発率および192℃の沸点)は、蒸発が完了する前に、充填剤材料の劣化をもたらし得る。
【0035】
様々なさらなる実施の形態において、有機溶媒は、約70℃以上、約80℃以上、約90℃以上、約100℃以上、約110℃以上、約120℃以上、約130℃以上、約140℃以上、約150℃以上、約160℃以上、約170℃以上、または約180℃以上の沸点を有する。さらに、有機溶媒は、120℃未満、130℃未満、140℃未満、150℃未満、160℃未満、170℃未満、180℃未満、または190℃未満の沸点を有し得る。いくつかの実施の形態において、有機溶媒は、多孔質無機層の表面上に充填剤配合物を堆積させた後、容易に除去される。例えば、いくつかの実施の形態において、溶媒は、乾燥した布またはスキージで無機層の表面を一回または二回拭いて、その後の1分間の蒸発によって、除去することができる。
【0036】
1つ以上の実施の形態において、有機溶媒は、充填剤成分を容易に溶かす。代わりの実施の形態において、充填剤は、水を含む水溶液であるが、そのような実施の形態において、架橋性充填剤は、水溶性の重合性成分である。
【0037】
前記充填剤配合物は、例えば、200mPa・s未満、100mPa・s未満、または50mPa・s未満の低粘度を有する。低粘度は、毛管効果により無機層の細孔中に有機充填剤を運ぶのを促進させることができる。
【0038】
本開示は、第1の(外側)ガラスシート、第2の(内側)ガラスシート、およびポリビニルブチラール積層体層を備えた多層自動車用ガラスも提供する。ガラスシートの内の1つ以上は、化学強化されたガラスシートであることがある。ポリビニルブチラール層は、2つのガラスシートの間に位置している。例えば、第1の(外側)シートは、外面(S1)および最も外側の積層体接触面(S2)を与え、一方で第2の(内側)シートは、最も内側の積層体接触面(S3)および内面(S4)を提供する化学強化シートである。概略図が
図1に与えられている。様々な実施の形態において、第2のガラスシートは化学強化ガラスシートであり、一方で第1のガラスはソーダ石灰ガラスシートまたは化学強化ガラスシートであり得る。
【0039】
様々な実施の形態において、多層自動車用ガラスは、多孔質無機層を備え、これは、第2の(内側)ガラスシート(例えば、化学強化ガラスシート)の内面(S4)、第2の(内側)ガラスシートの積層体接触面(S3)、第1の(外側)ガラスシートの積層体接触面(S2)、またはその任意の組合せの上に堆積される。多孔質無機層は、450℃超のガラス転移温度、650℃未満のガラス軟化温度、および架橋済み有機樹脂を含有する複数の細孔を有する。
【0040】
この多層自動車用ガラスは、湾曲させることができる。例えば、第1の(外側)ガラスシート(例えば、ソーダ石灰ガラスシート)および第2の(内側)ガラスシート(例えば、化学強化ガラスシート)の各々は、各々が凹型主面および凸型主面を有するように、ある軸に沿って曲げることができる。典型的に、化学強化ガラスシートの凹型主面は内面(S4)を提供し、第1の(外側)ガラスシートの凹型主面は外面(S1)を与える。
【0041】
様々な実施の形態において、ポリビニルブチラール積層体層は、少なくとも、多孔質無機層の一部、第2の(内側)ガラスシートの表面の一部、またはその両方と接触している。そのような例において、多孔質無機層は、第2の(内側)ガラスシートの積層体側の表面の少なくとも一部に付着している。前記多層自動車用ガラスは、少なくとも、多孔質無機層の一部、第2の(内側)ガラスシートの内面の一部、またはその両方と接触するシーラント接着剤をさらに備え得る。
【0042】
様々な実施の形態において、ポリビニルブチラール積層体層は、少なくとも、多孔質無機層の一部、化学強化ガラスシートの表面の一部、またはその組合せと接触している。そのような例において、多孔質無機層は、化学強化ガラスシートの積層体側の表面の少なくとも一部に付着している。前記多層自動車用ガラスは、少なくとも、多孔質無機層の一部、化学強化ガラスシートの表面の一部、またはその組合せと接触するシーラント接着剤をさらに備えることができる。
【0043】
さらなる実施の形態において、多層自動車用ガラスは、セラミックエナメルおよび顔料を含有する充填された多孔質無機層を備える。例えば、多孔質無機層は、Bi、B、Zn、Siの酸化物、またはその任意の組合せを含み得る。さらなる例において、多孔質無機層は、1モル%未満のNa、10モル%未満のNa2O、10モル%未満のFe2O3、または25モル%未満のP2O5を有し得る。すなわち、多孔質無機層は、いくつかの実施の形態において、上述した第1のタイプの多孔質無機層に対応し得る。他の例において、多孔質無機層は、上述した第2のタイプの多孔質無機層に対応し得る。各々の場合、多孔質無機層の細孔は、架橋済み有機樹脂が少なくともある程度充填されている。この架橋済み有機樹脂は、1種類以上のポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、またはポリアミドを含む。様々な実施の形態において、架橋済み有機樹脂は、アリル置換ポリシロキサン、アリル置換ポリシルセスキオキサン、アリル置換ポリアクリレート、アリル置換ポリビニル、アリル置換ポリスチレン、アリル置換ポリカーボネート、アリル置換ポリウレタン、またはアリル置換ポリアミドを含み得る。
【0044】
従来の自動車用ガラス製品は、通常、二枚の積層された空冷強化ガラスシート、典型的に、ソーダ石灰ガラスの3mm厚のシートから作られ、結果として、合計厚さが7mm程度になる。ここに記載された自動車用ガラスは、化学強化ガラスのシートを備え、それゆえ、改善された強度対厚さ比を提供することができる。
【0045】
本開示は、数ある中でも、細孔充填装飾層を有するガラス物品を調製する方法を提供する。セラミックエナメルおよび顔料を含有する無機混合物が、ガラス基板上に堆積されて、堆積無機層を提供する。結果として得られた無機層は、セラミックエナメルおよび顔料から多孔質無機層を形成するように、堆積した材料のガラス軟化温度(Ts)より高い温度で、硬化または焼結される。次に、ガラス基板および多孔質無機層は、多孔質無機層のガラス転移温度(Tg)より低い温度でイオン交換により化学強化される。イオン交換後、多孔質無機層の細孔に重合性材料が充填される。1つ以上の実施の形態において、充填剤配合物は、有機溶媒および重合性架橋成分から調製される。その充填剤配合物は、多孔質無機層上に、例えば、吹き付け塗りによって、施され、細孔中に吸収される。様々な実施の形態において、どのような過剰の充填剤も、拭き取りおよび洗浄剤により表面から除去される。次に、結果として得られた材料を、例えば、重合性架橋剤材料の性質に応じて、高温または紫外線処理によって、硬化させて、細孔内で架橋を開始させる。
【0046】
様々な実施の形態において、前記方法は、重合性架橋成分を施した後であるが、架橋を開始する前に、充填剤処理された多孔質無機層の表面を洗浄する工程を含む。例えば、その洗浄する工程は、(a)無機層の表面およびガラス表面を乾燥した布、ティッシュまたは化学雑巾(wipe)で拭き取る工程、(b)溶媒を少なくともある程度または完全に無機層の表面から蒸発させる工程(例えば、1分間待つことにより)、および(c)無機層の表面およびガラス表面を洗浄溶剤で処理し、その後、洗浄溶剤を濯ぎ、蒸発、または加熱により除去する工程を含み得る。1つ以上の実施の形態において、洗浄工程は、アルコール系洗浄剤(エタノール、イソプロパノール、アセトン、エタノール、そのようなアルコールの混合物、およびそのようなアルコールの水との組合せおよび/または混合物を含む洗浄剤など)、またはガラス洗浄剤の使用を含み得る。
【0047】
ガラス物品が、2つの主面(例えば、S3およびS4)を有する化学強化ガラス基板を有し、多孔質無機層をその両面上に形成すべきである場合、前記方法は、他方を硬化させる前に、一方の面上の一方の無機層を硬化させる工程を含む。例えば、ガラス基板が平らである間に、一方の層を硬化させることができ、次に、第2の層を、ガラスを曲げるのと同時に硬化させることができる。この工程の順序には、未硬化の多孔質無機層が、ガラス曲げに使用される型と接触する、またはローラ表面と接触するのを避ける製造過程を可能にするという利点がある。一方の表面のみが多孔質無機層を有する場合、ひいては、前駆体無機層は、曲げと同時に硬化させ、よって、工程の数を減少させ、熱処理を効率よく利用することができる。
【0048】
この方法の様々な実施の形態は、化学強化ガラス上に装飾層を得るための2つの一般手法に関する利点を提示する。例えば、第1の手法は、曲げられたシート、すなわち、イオン交換および曲げ過程が完了した後のシート上に堆積させられるインクを使用することを含む。しかしながら、そのようなインクは、一般に、有機インクまたは有機ハイブリッドインクである。第2の手法は、平らなシート、すなわち、イオン交換および曲げ過程が行われる前のシート上にインクまたは装飾層を堆積させる工程を含む。この第2の手法の主な利点は、スクリーン印刷を使用する可能性であり、スクリーン印刷は、平らな表面を必要とし、曲面または曲がった表面に適合していない。従来、市販のエナメルは、その後のイオン交換および曲げ過程に適合していないので、第2の手法は失敗してきた。
【0049】
ここで、ここに記載された様々な実施の形態の細孔充填無機層は、イオン交換および曲げ過程に適合しており、よって、例えば、スクリーン印刷を使用して、曲げの前にガラスに施すことのできる配合物を提示する。本開示は、様々な実施の形態により、改善された色深度、改善された耐引掻性、並びにシリコーンおよびウレタンのシーラント接着剤および下塗剤との適合性を有する、結果として得られた装飾層も提供する。シリコーンおよびウレタンのシーラント接着剤および下塗剤との適合性は、その実施の形態の重大な利点を提示する。何故ならば、シーラント接着剤は、自動車用ガラスを車両フレームに取り付けるために一般に使用されるからである。様々な実施の形態において、ここに記載された方法には、ガラス成形および曲げ過程に適合しているという利点もある。これらの過程は、軟化温度(Ts)が加工温度より低い、例えば、570℃より低い、無機層の硬化を行える間に、またはその前に、570℃~700℃の温度への加熱を含み得る。
【0050】
多孔質無機層内の樹脂を架橋することは、いくつかの予期せぬ利点も提供できる。架橋の際に、樹脂は、細孔充填無機層の表面およびガラス基板の表面を、標準的な洗浄溶剤(例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノールなど)および最低限の拭き取り(例えば、工業または実験グレードの化学雑巾であってよい、化学雑巾による1、2、3または4回の拭き取り動作)を使用して、容易にかつ迅速に洗浄できるほど十分に固定化されるようになることができる。さらに、架橋は、積層体がガラスとPVBとの間の良好な付着をもたらすように、良好な熱安定性を提供し、蒸発をなくすことによって、積層工程中に充填剤材料を保護する。
【0051】
範囲の形式で表された値は、範囲の限度として明白に挙げられた数値を含むだけでなく、各数値および部分的範囲が明白に挙げられているかのようにその範囲内の全ての個々の数値または包括される部分的範囲を含むように、柔軟な様式で解釈されるべきである。例えば、「約0.1%から約5%」または「約0.1%から5%」の範囲は、約0.1%から約5%だけでなく、この指示範囲内の個々の値(例えば、1%、2%、3%、および4%)および部分的範囲(例えば、0.1%から0.5%、1.1%から2.2%、3.3%から4.4%)も含むと解釈されるべきである。「約XからY」という記述は、特に明記のない限り、「約Xから約Y」と同じ意味を持つ。同様に、「約X、Y、または約Z」という記述は、特に明記のない限り、「約X、約Y、または約Z」と同じ意味を持つ。
【0052】
この文書において、名詞は、文脈がそうではないと明白に示していない限り、1つまたは複数の対象を含むために使用される。「または」という用語は、特に明記のない限り、非排他的な「または」を称するために使用されている。それに加え、ここに用いられ、他の定義されていない言葉遣いまたは専門用語は、限定ではなく、記述目的のためであることを理解すべきである。セクションの見出しのどの使用も、この文書の解釈を補助することを意図するものであって、限定と解釈されるべきではない;セクションの見出しに関連する情報は、特定のセクション内またはその外で存在することがある。さらに、この文書に挙げられた全ての公報、特許、および特許文献は、個別に引用されているかのように、ここに全て引用により含まれる。この文書と、引用により含まれる文献との間に一貫性のない用法がある場合、含まれる文献における用法は、この文書の用法の補足と考えるべきである;矛盾する一貫性のなさについて、この文書の用法が統制する。
【0053】
ここに記載された方法において、その工程は、時系列または操作順序が明白に挙げられている場合を除いて、本開示の原理から逸脱せずに、どの順序で行われても差し支えない。さらに、指定された工程は、明白な請求項の言語が、それらが別々に行われていることを挙げていない限り、同時に行うことができる。例えば、Xを行う請求項の工程およびYを行う請求項の工程は、単一操作内で同時に行うことができ、結果として得られた過程は、請求項の過程の文字通りの範囲内に入る。
【0054】
ここに用いられている「約」または「おおよそ」という用語は、値または範囲のある程度の変動性、例えば、表示された値または範囲の表示された限度の10%以内、5%以内、または1%以内を可能にする。
【0055】
ここに用いられている「実質的に」という用語は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、または少なくとも約99.999%またはそれより大きいにおけるように、その大半またはほとんどを称する。
【実施例0056】
本開示は、実例として提示されている以下の実施例を参照することによって、よりよく理解できる。本開示は、ここに与えられた実施例に限定されない。
【0057】
以下の実施例に使用された出発材料は、表1に述べられた供給業者から商業的に得ることができる。
【0058】
【0059】
実施例A
15の試料ガラス物品(実施例1~15)を表2にしたがって調製した。
【0060】
【0061】
Ferro CorporationからのブラックエナメルAD3402または14316を、Shephardからの銅クロマイトブラックスピネル顔料(B1G)と混合することによって無機ペーストを調製した。このペーストを、Corning Incorporatedから得たアルミノケイ酸塩ガラス基板の表面上に堆積させた。そのガラス基板は、200mm、260mmおよび0.7mmの寸法を有し、
図4に示されるように、100mmおよび100mmの寸法を有する基板の中央の正方形表面部分上にペーストを施した。
【0062】
顔料の使用により、エナメルは、ガラス基板上で硬化されたときに、細孔を生じることができた。
【0063】
結果として得られた多孔質無機層およびガラス基板を、5.5分と10分の間に亘り572℃と635℃の間の硬化温度で焼成した。次に、そのガラス基板を、イオン交換過程を使用して強化した。
【0064】
実施例1~15において、細孔充填剤(例えば、メチル-シルセスキオキサンまたはメチル-フェニル-シルセスキオキサン樹脂)をプロピオン酸ペンチル溶媒などの適切な溶媒中に溶かして、50質量%の溶液を得ることによって、充填配合物を調製した。この充填配合物を、細孔充填剤を含まない試料のものを除いて、多孔質無機層上に吹き付けた。
【0065】
充填物品を30分間に亘り150℃に加熱することによって、架橋を行った。その後、過剰な充填配合物を、そのような配合物が堆積されている表面から洗浄し、充填配合物が堆積されていない区域は、イソプロパノールまたはエタノールを使用して洗浄する。
【0066】
色深度に対応する黒色の明度(L*)は、反射モード、鏡面反射排除、10mmの開口、光源D65-10°の観察者角度で測色計Colori7により測定した。これらの試験は、装飾と反対のガラス基板の表面(すなわち、「ガラス側」)で行った。
【0067】
図3は、シリコーンを示さない充填多孔質無機層およびシリコーン拡散を被る未充填多孔質無機層を比較する写真を提供する。表2の試料5および6は、対応する結果を反映している。試料6において、基板の背面に堆積されたシリコーンは、前面から観察できず、明度のL
*測定値は、17から11への改善を示した。状況について、
図2は、下塗剤およびシーラントの拡散の問題を実証している。
【0068】
実施例16~21は、溶媒を含まない充填配合物を使用して製造されたガラス物品である。実施例16~21を形成するために、Ferroからのブラックエナメル14316を、Shephardからの15%の銅クロマイトブラックスピネル顔料(B1G)と混合することによって、無機ペーストを調製した。このペーストを、Corning Incorporatedから得た未強化のアルミノケイ酸塩ガラス基板の表面上に堆積させた。結果として得られた多孔質無機層およびガラス基板を、7分間に亘り625℃の硬化温度で焼成した。
【0069】
表3に示された充填配合物を、多孔質無機層に吹き付けた。商標名X40-9296で信越化学工業株式会社により供給されるシリコーン樹脂中に、商標名Silres(登録商標)H44でWacker Chemie AGにより供給されているシリコーン樹脂を溶かすことによって、これらの充填配合物を製造した。信越化学工業株式会社により供給されるシリコーン樹脂は、低粘度(すなわち、25℃で20mm2/s)を有し、「Silres」H44シリコーン樹脂と反応するためのメトキシ官能基、およびメタクリル官能基の両方を含有する。このメタクリル官能基は、熱開始剤である過酸化ベンゾイルを使用して重合される。多孔質エナメルは、刷毛塗りにより充填され、表3に示されるように、第1の硬化過程(「予備硬化」)を行った。メタクリル基のみによる樹脂の部分重合は、水による洗浄を支援する。次に、表3に示されるように、シリコーン化合物からのメトキシ基の縮合硬化のために、積層工程中に第2の硬化工程(「最終硬化」)を行う。表3は、充填配合物中に使用された各シリコーン樹脂の量も示している。理論で束縛されるものではないが、これらの例示の溶液は、溶媒が使用されず、硬化工程中に全くまたは非常に限られた蒸発しか生じないので、より高い充填率を有すると考えられる。
【0070】
表3は、実施例16~21から得られた結果を示している。
【0071】
【0072】
実施例16~21の色深度に対応する黒色の明度(L*)は、反射モード、鏡面反射排除、10mmの開口、光源D65-10°の観察者角度で測色計Colori7により測定した。表3に示されるように、測定は、実施例16~21のガラス物品、および充填配合物を含まない比較例の「ガラス側」で行った。実施例21において、ガラス物品は、多孔質無機層がガラス物品の外面上に位置付けられるように、2.1mmの厚さを有するソーダ石灰ケイ酸塩ガラス(SLG)基板に積層させた。この積層体を自動車用板ガラスとして使用する場合、多孔質無機層は、自動車の車内に面するように位置付けられても、自動車の車外に位置付けられても差し支えない。実施例21のL*値は、SLGガラス基板の表面(「S1側」)で測定した。ガラス基板の強化は、測定したL*値に影響しなかったことに留意のこと。
【0073】
実施例B
4層の積層ガラス物品を、表4にしたがって調製した。
【0074】
図1の概略図にしたがって方向付けられた、第1の化学強化ガラス基板、第2のポリビニルブチラール(PVB)層および第3のソーダ石灰ケイ酸塩ガラス(SLG)基板を有する多層ガラス物品または積層体を調製した。
【0075】
【0076】
多孔質無機層は、実施例Aに述べられた一般方法にしたがって、未強化のアルミノケイ酸塩ガラス基板上に形成した。次に、実施例Aと同じ過程を使用して、このガラス基板を強化した。次に、装飾した化学強化ガラス基板に、多孔質無機層が積層体の主面S4(すなわち、化学強化ガラス層の外面)または主面S3(すなわち、化学強化ガラス層の積層体側の面)のいずれかに配置されるように、PVB層を介在させて、SLG基板を積層した。
【0077】
耐引掻性は、直径0.75mmの先端を有するErichsen 318スクレロメーターを使用して測定した(Bosch試験)。実施例22および23の主面S4上に堆積した装飾に、異なる強度(Nで表された)で、1cmと2cmの間の長さのひっかき傷を付けた。各測定値は、装飾の損傷が主面S1から見えない最大値を表す。
【0078】
議論
L*値に対する顔料の含有量の影響が、いくつかの実施例の比較により分かる。例えば、実施例3を実施例5と、実施例4を実施例6と、実施例8を実施例9と、または実施例22を実施例23と比較すると、顔料の含有量を減少させると、黒の着色および色深度が改善される(より低いL*値)ことが分かる。実施例16~21は、測定したL*値のさらにより大きい改善を実証した。
【0079】
それらの結果は、顔料を減少させると、実施例22と実施例23との間の比較に示されるように、耐引掻性が改善され、詳しくは、12から20Nへの改善された耐引掻性を示すことも示している。
【0080】
実施例1を実施例2と、実施例3を実施例4と、実施例5を実施例6と、実施例7を実施例8と、実施例10を実施例11と、実施例13を実施例14と、実施例24を実施例25と比較することにより(S4側)、細孔充填の効果が示される。これらの実施例の各々について、細孔に有機樹脂を充填すると、黒の品質が著しく改善された(より低いL*値)。さらに、ある樹脂は、実施例11を実施例12と、または実施例14を実施例15と比較することにより示されるように、より良好なL*結果を提供する。理論で束縛する意図はないが、樹脂に関するこの結果を説明できる仮説は、重合した樹脂と無機層の屈折率の間により良好な一致があることである。それゆえ、「灰色」の着色の原因となるものなど、散乱光の量を減少させることは、より良好な黒の着色および改善された色深度を生じると考えられる。
【0081】
本開示は以下の実施の形態を提供するが、その番号付けは、重要度のレベルを示すと考えるべきではない。
【0082】
実施の形態1は、ガラス物品において、
化学強化ガラス基板、
前記ガラス基板の少なくとも一部に付着し、450℃超のガラス転移温度、650℃未満のガラス軟化温度および複数の細孔を有する多孔質無機層、および
前記多孔質無機層の細孔内の架橋済み有機樹脂、
を備えたガラス物品に関する。
【0083】
実施の形態2は、前記ガラス基板が、凹面および凸面を有する湾曲シートであり、前記多孔質無機層が該凹面に付着している、実施の形態1のガラス物品に関する。
【0084】
実施の形態3は、前記多孔質無機層、前記ガラス基板の凹面、またはその両方の少なくとも一部と接触するシーラント接着剤をさらに備える、実施の形態2のガラス物品に関する。
【0085】
実施の形態4は、前記ガラス基板が、凹面および凸面を有する湾曲シートであり、前記多孔質無機層が該凸面に付着している、実施の形態1~3のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0086】
実施の形態5は、前記多孔質無機層、前記ガラス基板の凸面、またはその両方の少なくとも一部と接触するポリビニルブチラール層をさらに備える、実施の形態4のガラス物品に関する。
【0087】
実施の形態6は、前記多孔質無機層がセラミックエナメルおよび顔料を含む、実施の形態1~5のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0088】
実施の形態7は、前記多孔質無機層が、Bi、B、Zn、Siの酸化物、またはその任意の組合せを含むガラス融剤、もしくは約0から約10モル%のAl2O3、約0から約10モル%のCoO、約5から約25モル%のNa2O、約0から約15モル%のK2O、約0から約10モル%のV2O5、約0から約8モル%のTiO2、約0から約15モル%のZnO、約0から約10モル%のCaO、約20から約40モル%のFe2O3、および少なくとも約50モル%のP2O5を含む、実施の形態1~6のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0089】
実施の形態8は、前記多孔質無機層が、1モル%未満のNa2O、10モル%未満のFe2O3、または25モル%未満のP2O5を有する、実施の形態1~7のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0090】
実施の形態9は、前記架橋済み有機樹脂が、1種類以上のポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、またはポリアミドを含む、実施の形態1~8のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0091】
実施の形態10は、前記架橋済み有機樹脂が、少なくとも5質量%の架橋モノマー単位および120℃を超えるガラス転移温度を有する、実施の形態1~9のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0092】
実施の形態11は、前記ガラス基板が、約60×10-7/℃から約110×10-7/℃に及ぶ熱膨張係数を有する、実施の形態1~10のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0093】
実施の形態12は、前記多孔質無機層および前記ガラス基板が、10×10-7/℃以下しか異ならない熱膨張係数を有する、実施の形態1~11のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0094】
実施の形態13は、前記ガラス基板がアルミノケイ酸塩ガラスまたはアルミノホウケイ酸塩ガラスである、実施の形態1~12のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0095】
実施の形態14は、前記ガラス基板が、約0.3mmから約4.0mmの厚さを有する、実施の形態1~13のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0096】
実施の形態15は、前記ガラス基板が、第1の軸に沿って2000mm未満かつ100mm超の曲率半径を有する、実施の形態1~14のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0097】
実施の形態16は、前記ガラス基板が、300MPa超または400MPa超のリング・オン・リング試験(ROR)により規定される曲げ強度値を有する、実施の形態1~15のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0098】
実施の形態17は、前記ガラス基板の表面が、前記架橋済み有機樹脂を実質的に含まない、実施の形態1~16のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0099】
実施の形態18は、前記ガラス基板の凸面が、未充填または充填細孔を含有する第2の多孔質無機層を含む、実施の形態1~17のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0100】
実施の形態19は、前記多孔質無機層が装飾フリットである、実施の形態1~18のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0101】
実施の形態20は、前記多孔質無機層がセラミック製自動車用ガラスエナメルである、実施の形態1~19のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0102】
実施の形態21は、前記多孔質無機層が顔料を含む、実施の形態1~20のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0103】
実施の形態22は、ウレタン系シーラント接着剤、またはシリコーン系シーラント接着剤、またはその両方をさらに備える、実施の形態1~21のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0104】
実施の形態23は、自動車用ガラスとして使用するための、実施の形態1~22のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0105】
実施の形態24は、フロントガラスの形態にある、実施の形態1~23のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0106】
実施の形態25は、前記ガラス基板と前記多孔質無機層との間の熱膨張係数値の差が、10×10-7/℃以内である、実施の形態1~24のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0107】
実施の形態26は、前記多孔質無機層が、約60×10-7/℃から約110×10-7/℃に及ぶ熱膨張係数を有する、実施の形態1~25のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0108】
実施の形態27は、圧縮応力層が、前記ガラス基板中に延在し、30μm超の深さを有する、実施の形態1~26のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0109】
実施の形態28は、前記ガラス軟化温度が、約500℃から約650℃である、実施の形態1~27のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0110】
実施の形態29は、前記ガラス軟化温度Tsが約525℃から約600℃である、実施の形態1~28のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0111】
実施の形態30は、前記ガラス転移温度が約450℃から約500℃である、実施の形態1~29のいずれか1つのガラス物品に関する。
【0112】
実施の形態31は、実施の形態1~30のいずれか1つのガラス物品を備えた多層自動車用ガラスに関する。
【0113】
実施の形態32は、多層自動車用ガラスにおいて、
第1の主面(S1)および第2の主面(S2)を有する第1のガラス基板、
第3の主面(S3)および第4の主面(S4)を有する第2のガラス基板、
前記第1のガラス基板の第2の主面および前記第2のガラス基板の第3の主面と接触するポリビニルブチラール層、および
前記第1のガラス基板の第2の主面、前記第2のガラス基板の第3の主面、または該第2のガラス基板の第4の主面の内の1つ以上の少なくとも一部に付着した多孔質無機層、
を備え、
前記多孔質無機層は、450℃超のガラス転移温度、650℃未満のガラス軟化温度および架橋済み有機樹脂を含有する複数の細孔を有する、多層自動車用ガラスに関する。
【0114】
実施の形態33は、前記第1のガラス基板がソーダ石灰ガラス基板である、実施の形態32の多層自動車用ガラスに関する。
【0115】
実施の形態34は、前記第1のガラス基板が化学強化ガラス基板である、実施の形態32の多層自動車用ガラスに関する。
【0116】
実施の形態35は、前記第2のガラス基板が化学強化ガラス基板である、実施の形態32~34のいずれか1つの多層自動車用ガラスに関する。
【0117】
実施の形態36は、前記多孔質無機層が、前記第1のガラス基板の第2の主面および前記第2のガラス基板の第3の主面の少なくとも一部に付着している、実施の形態32~35のいずれか1つの多層自動車用ガラスに関する。
【0118】
実施の形態37は、前記多孔質無機層が、前記第1のガラス基板の第2の主面および前記第2のガラス基板の第4の主面の少なくとも一部に付着している、実施の形態32~36のいずれか1つの多層自動車用ガラスに関する。
【0119】
実施の形態38は、前記第1のガラス基板および前記第2のガラス基板の各々が、凹面および凸面を有する、実施の形態32~37のいずれか1つの多層自動車用ガラスに関する。
【0120】
実施の形態39は、第2の多孔質無機層が、前記第2のガラス基板の第3の主面の少なくとも一部に付着しており、前記ポリビニルブチラール層と接触している、実施の形態32~38のいずれか1つの多層自動車用ガラスに関する。
【0121】
実施の形態40は、前記多孔質無機層、前記第2のガラス基板の第4の主面、またはその両方の少なくとも一部と接触するシーラント接着剤をさらに備える、実施の形態32~39のいずれか1つの多層自動車用ガラスに関する。
【0122】
実施の形態41は、前記シーラント接着剤が、前記第1のガラス基板の第2の主面または前記第2のガラス基板の第3の主面、またはその両方と接触する、実施の形態40の多層自動車用ガラスに関する。
【0123】
実施の形態42は、前記第1のガラス基板の第2の主面、または前記第2のガラス基板の第3の主面、またはその両方が、シーラント接着剤を実質的に含まない、実施の形態40の多層自動車用ガラスに関する。
【0124】
実施の形態43は、前記多孔質無機層が、セラミックエナメルおよび顔料を含む、実施の形態32~42のいずれか1つの多層自動車用ガラスに関する。
【0125】
実施の形態44は、前記多孔質無機層が、Bi、B、Zn、Siの酸化物、またはその任意の組合せを含むガラス融剤を含み、該多孔質無機層が、1モル%未満のNa2O、10モル%未満のFe2O3、または25モル%未満のP2O5を有する、実施の形態32~43のいずれか1つの多層自動車用ガラスに関する。
【0126】
実施の形態45は、前記架橋済み有機樹脂が、1種類以上のポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、またはポリアミドを含む、実施の形態32~44のいずれか1つの多層自動車用ガラスに関する。
【0127】
実施の形態46は、ガラス物品を調製する方法において、
セラミックエナメルおよび顔料を含有する無機混合物をガラス基板上に堆積させて、無機層を提供する工程、
堆積した前記無機層のガラス軟化温度より高い温度で前記ガラス基板および該無機層を硬化させて、多孔質無機層を提供する工程、
前記多孔質無機層のガラス転移温度(Tg)より低い温度でイオン交換により、硬化した前記ガラス基板および該多孔質無機層を化学強化する工程、
化学強化された前記ガラス基板および前記多孔質無機層を、重合性架橋成分を含む充填剤配合物で処理する工程、および
前記重合性架橋成分を硬化させて、前記多孔質無機層の細孔内に架橋済み有機樹脂を提供して、細孔充填装飾層を提供する工程、
を有してなる方法に関する。
【0128】
実施の形態47は、前記堆積した無機層を硬化させるのとほぼ同時に前記化学強化されたガラス基板を曲げる工程を含む、実施の形態46の方法に関する。
【0129】
実施の形態48は、前記充填剤配合物が有機溶媒を含む、実施の形態46~47のいずれか1つの方法に関する。
【0130】
実施の形態49は、充填剤により処理された前記多孔質無機層の表面を洗浄して、該無機層または前記ガラス基板の表面から前記充填剤配合物の成分を除去する工程をさらに含む、実施の形態46~48のいずれか1つの方法に関する。
【0131】
実施の形態50は、前記表面が、アセトン、イソプロパノール、エタノール、水、またはその混合物により洗浄される、実施の形態49の方法に関する。
【0132】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0133】
実施形態1
ガラス物品において、
化学強化ガラス基板、
前記ガラス基板の少なくとも一部に付着し、450℃超のガラス転移温度、650℃未満のガラス軟化温度および複数の細孔を有する多孔質無機層、および
前記多孔質無機層の細孔内の架橋済み有機樹脂、
を備えたガラス物品。
【0134】
実施形態2
前記ガラス基板が、凹面および凸面を有する湾曲シートであり、前記多孔質無機層が該凹面に付着している、実施形態1に記載のガラス物品。
【0135】
実施形態3
前記多孔質無機層、前記ガラス基板の凹面、またはその両方の少なくとも一部と接触するシーラント接着剤をさらに備える、実施形態2に記載のガラス物品。
【0136】
実施形態4
前記ガラス基板が、凹面および凸面を有する湾曲シートであり、前記多孔質無機層が該凸面に付着している、実施形態1に記載のガラス物品。
【0137】
実施形態5
前記多孔質無機層、前記ガラス基板の凸面、またはその両方の少なくとも一部と接触するポリビニルブチラール層をさらに備える、実施形態4に記載のガラス物品。
【0138】
実施形態6
前記多孔質無機層がセラミックエナメルおよび顔料を含む、実施形態1に記載のガラス物品。
【0139】
実施形態7
前記多孔質無機層が、Bi、B、Zn、Siの酸化物、またはその任意の組合せを含むガラス融剤を含む、実施形態1に記載のガラス物品。
【0140】
実施形態8
前記多孔質無機層が、1モル%未満のNa2O、10モル%未満のFe2O3、または25モル%未満のP2O5を有する、実施形態1に記載のガラス物品。
【0141】
実施形態9
前記架橋済み有機樹脂が、1種類以上のポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、またはポリアミドを含む、実施形態1に記載のガラス物品。
【0142】
実施形態10
前記架橋済み有機樹脂が、少なくとも5質量%の架橋モノマー単位および120℃を超えるガラス転移温度を有する、実施形態1に記載のガラス物品。
【0143】
実施形態11
多層自動車用ガラスにおいて、
第1の主面および第2の主面を有する第1のガラス基板、
第3の主面および第4の主面を有する第2のガラス基板、
前記第1のガラス基板の第2の主面および前記第2のガラス基板の第3の主面と接触するポリビニルブチラール層、および
前記第2のガラス基板の第4の主面の少なくとも一部に付着した多孔質無機層、
を備え、
前記第2のガラス基板は化学強化されており、前記多孔質無機層は、450℃超のガラス転移温度、650℃未満のガラス軟化温度および架橋済み有機樹脂を含有する複数の細孔を有する、多層自動車用ガラス。
【0144】
実施形態12
前記第1のガラス基板がソーダ石灰ガラスまたは化学強化ガラスである、実施形態11に記載の多層自動車用ガラス。
【0145】
実施形態13
前記第1のガラス基板および前記第2のガラス基板の各々が、凹面および凸面を有する、実施形態11に記載の多層自動車用ガラス。
【0146】
実施形態14
第2の多孔質無機層が、前記第2のガラス基板の第3の主面の少なくとも一部に付着しており、前記ポリビニルブチラール層と接触している、実施形態11に記載の多層自動車用ガラス。
【0147】
実施形態15
前記多孔質無機層、前記第2のガラス基板の第4の主面、またはその両方の少なくとも一部と接触するシーラント接着剤をさらに備える、実施形態11に記載の多層自動車用ガラス。
【0148】
実施形態16
前記多孔質無機層が、セラミックエナメルおよび顔料を含む、実施形態11に記載の多層自動車用ガラス。
【0149】
実施形態17
前記多孔質無機層が、Bi、B、Zn、Siの酸化物、またはその任意の組合せを含むガラス融剤を含み、該多孔質無機層が、1モル%未満のNa2O、10モル%未満のFe2O3、または25モル%未満のP2O5を有する、実施形態11に記載の多層自動車用ガラス。
【0150】
実施形態18
前記架橋済み有機樹脂が、1種類以上のポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、またはポリアミドを含む、実施形態11に記載の多層自動車用ガラス。
【0151】
実施形態19
ガラス物品を調製する方法において、
セラミックエナメルおよび顔料を含有する無機混合物をガラス基板上に堆積させて、無機層を提供する工程、
堆積した前記無機層のガラス軟化温度より高い温度で前記ガラス基板および該無機層を硬化させて、多孔質無機層を提供する工程、
前記多孔質無機層のガラス転移温度(Tg)より低い温度でイオン交換により、硬化した前記ガラス基板および該多孔質無機層を化学強化する工程、
化学強化された前記ガラス基板および前記多孔質無機層を、重合性架橋成分を含む充填剤配合物で処理する工程、および
前記重合性架橋成分を硬化させて、前記多孔質無機層の細孔内に架橋済み有機樹脂を提供して、細孔充填装飾層を提供する工程、
を有してなる方法。
【0152】
実施形態20
前記充填剤配合物が有機溶媒を含む、実施形態19に記載の方法。
【0153】
実施形態21
充填剤により処理された前記多孔質無機層の表面を洗浄して、架橋の前に、該無機層および前記ガラス基板の表面から前記充填剤配合物の成分を除去する工程をさらに含む、実施形態19または20に記載の方法。
【0154】
実施形態22
前記表面が、アセトン、エタノール、イソプロパノール、水、またはその混合物により洗浄される、実施形態21に記載の方法。
【0155】
実施形態23
ガラス物品において、
化学強化ガラス基板、
前記ガラス基板の少なくとも一部に付着し、450℃超のガラス転移温度、650℃未満のガラス軟化温度および複数の細孔を有する多孔質無機層、および
前記多孔質無機層の細孔内の架橋済み有機樹脂、
を備えたガラス物品。
【0156】
実施形態24
前記ガラス基板が、凹面および凸面を有する湾曲シートであり、前記多孔質無機層が該凹面または該凸面に付着しており、該多孔質無機層、該ガラス基板の凹面、またはその両方の少なくとも一部と接触するシーラント接着剤をさらに備える、実施形態23記載のガラス物品。
【0157】
実施形態25
前記多孔質無機層がセラミックエナメルおよび顔料を含む、実施形態23または24記載のガラス物品。
【0158】
実施形態26
前記多孔質無機層が、Bi、B、Zn、Siの酸化物、またはその任意の組合せを含むガラス融剤を含む、実施形態23から25いずれか1項記載のガラス物品。
【0159】
実施形態27
前記多孔質無機層が、1モル%未満のNa2O、10モル%未満のFe2O3、または25モル%未満のP2O5を有する、実施形態23から26いずれか1項記載のガラス物品。
【0160】
実施形態28
前記架橋済み有機樹脂が、1種類以上のポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、またはポリアミドを含む、実施形態23から27いずれか1項記載のガラス物品。
【0161】
実施形態29
多層自動車用ガラスにおいて、
第1の主面および第2の主面を有する第1のガラス基板、
第3の主面および第4の主面を有する第2のガラス基板、
前記第1のガラス基板の第2の主面および前記第2のガラス基板の第3の主面と接触するポリビニルブチラール層、および
前記第2のガラス基板の第4の主面の少なくとも一部に付着した多孔質無機層、
を備え、
前記第2のガラス基板は化学強化されており、前記多孔質無機層は、450℃超のガラス転移温度、650℃未満のガラス軟化温度および架橋済み有機樹脂を含有する複数の細孔を有する、多層自動車用ガラス。
【0162】
実施形態30
前記第1のガラス基板および前記第2のガラス基板の各々が、凹面および凸面を有する、実施形態29記載の多層自動車用ガラス。
【0163】
実施形態31
前記多孔質無機層が、セラミックエナメルおよび顔料を含み、該多孔質無機層が、Bi、B、Zn、Siの酸化物、またはその任意の組合せを含むガラス融剤を含み、該多孔質無機層が、1モル%未満のNa2O、10モル%未満のFe2O3、または25モル%未満のP2O5を有し、前記架橋済み有機樹脂が、1種類以上のポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、またはポリアミドを含む、実施形態30記載の多層自動車用ガラス。
【0164】
実施形態32
ガラス物品において、
ガラス基板、および
前記ガラス基板の少なくとも一部に付着し、450℃超のガラス転移温度、650℃未満のガラス軟化温度および複数の細孔を有する多孔質無機層であって、1モル%未満のNa2O、10モル%未満のFe2O3、または25モル%未満のP2O5を有する多孔質無機層、
を備えたガラス物品。